説明

シールド電線及びシールド電線の製造方法

【課題】押出機等を通過するとき等に破断しにくい構成のシールド電線を提供する。
【解決手段】シールド電線25は、心線21と、金属箔テープ22と、絶縁被覆23と、を備える。金属箔テープ22は、心線21の外周面に沿うように配置され、心線21の長手方向に複数枚が並べられる。絶縁被覆23は、電気絶縁性を有しており、金属箔テープ22の外周面に沿うように配置される。また、隣り合う金属箔テープ22同士の境目が螺旋状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、長手方向に複数枚の金属箔テープが配置されたシールド電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、心線(線材、コア線)と、金属箔テープ(シールド箔テープ)と、絶縁被覆と、から構成されるシールド電線が知られている。心線は、例えば被覆付き電線を撚り合わせたもの等で構成される。金属箔テープはこの心線の外側に配置され、例えば銅箔及びアルミ箔等で構成される。絶縁被覆はこの金属箔テープの外側に配置され、合成樹脂等で構成される。
【0003】
この種のシールド電線は、例えば、以下の特許文献1から特許文献4までに開示される製造装置(テープフォーミング装置、絶縁電線の製造装置)を用いて製造することができる。
【0004】
特許文献1のテープフォーミング装置は、ガイドローラと、縦添え円筒成形用パイプと、成形ダイスと、を主要な構成として備えている。ガイドローラは、コア線及び金属箔テープをガイドするためのものである。そして、金属箔テープは、このガイドローラによってコア線の外周面上へ縦添えされるようにガイドされつつ、縦添え円筒成形用パイプに導入される。金属箔テープは、縦添え円筒成形用パイプ中で、コア線を包むように円筒状に仮成形され、その後に成形ダイスで最終的に円筒形状に成形される。そして、押出機等によって金属箔テープの周囲に樹脂を押し出すことで絶縁被覆が成形される。以上のようにして、シールド電線を製造することができる。
【0005】
特許文献2のテープフォーミング装置は、特許文献1と同様の方法でシールド電線を製造する方法を開示する。そして、特許文献2では、フォーミングダイス(成形ダイス)をコア線の引取り方向に角度をもたせて配置することにより、当該引取り方向から見たフォーミングダイスの孔を楕円状にして、コア線に対する金属箔テープの密着力を高くしている。そのため、高速成形時においてもフォーミングダイスの孔内の詰まりが発生すること等を防止できる。
【0006】
また、特許文献3のテープフォーミング装置及び特許文献4の絶縁電線の製造装置においても、特許文献1と同様の方法でシールド電線を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−220159号公報
【特許文献2】特開2007−204204号公報
【特許文献3】特開平10−25065号公報
【特許文献4】特開2009−181844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献3に示すように、金属箔テープはテープパッドから供給されている。このテープパッドは、中央の円筒部材と、この円筒部材に巻き付けられた金属箔テープとから構成されている。そして、円筒部材に巻き付けられた金属箔テープの残量が、シールド電線の製造中に無くなった場合、この金属箔テープの端部と、新しいテープパッドから供給される金属箔テープの端部と、が接続される。このようにして、シールド電線の製造を継続できる。なお、この接続においては、金属箔テープ同士を厚み方向に重ねることはなく、隣り合う金属箔テープは間隔を少し空けて配置される。
【0009】
しかし、この金属箔テープ同士の境目が押出機を通過するときに、シールド電線が破断することがある。以下、この理由を説明する。
【0010】
初めに、シールド電線が押出機を通過するときに受ける力について説明する。シールド電線は、巻取り側から引張り力を受けている。また、シールド電線は押出機から圧迫力を受けており、この圧迫力は、絶縁被覆から内側(金属箔テープ及び心線)に伝達される。従って、絶縁被覆と金属箔テープとの間に摩擦力が発生し、更に、金属箔テープと心線の間に摩擦力が発生する。これらの摩擦力を利用することで、前記引張り力に対して、絶縁被覆、金属箔テープ、及び心線で対抗することができる。
【0011】
しかし、金属箔テープの境目が押出機に差し掛かった場合、この部分には金属箔テープが無いので、前記引張り力に対抗するために金属箔テープに働く摩擦力を利用することができない。従って、この場合は、押出機からの圧迫力が絶縁被覆から直接心線に伝達されて両者が摩擦で一体化することで(即ち、絶縁被覆と心線だけで)、前記引張り力に対抗しなければならない。従って、引張り力に対抗し切れずに金属箔テープの境目でシールド電線が破断することがあった。
【0012】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、押出機等を通過するとき等に破断しにくい構成のシールド電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0014】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のシールド電線が提供される。即ち、このシールド電線は、心線と、金属箔テープと、絶縁被覆と、を備える。前記金属箔テープは、前記心線の外周面に沿うように配置され、前記心線の長手方向に複数枚が並べられる。前記絶縁被覆は、電気絶縁性を有しており、前記金属箔テープの外周面に沿うように配置される。また、隣り合う前記金属箔テープ同士の境目が螺旋状である。
【0015】
即ち、シールド電線の製造時等においては、シールド電線を絶縁被覆の外側から圧迫しつつ、このシールド電線を長手方向に引っ張って走行させることがある。この点、上記の構成によれば、金属箔テープ同士の境目が長手方向に広がりをもつため、当該境目に圧迫箇所が差し掛かった場合に、常に金属箔テープが絶縁被覆及び心線を介して圧迫により一体化されるので、シールド電線の機械的強度が低下しない。従って、シールド電線の製造時等における破断を防止できる。
【0016】
前記のシールド電線において、前記金属箔テープ同士は、当該金属箔テープ同士の境目の傾斜に平行な接合テープにより接続されることが好ましい。
【0017】
これにより、金属箔テープ同士を適切に接続できる。また、接合テープの形状を調整することにより、シールド電線の破断の発生を抑えたり、金属箔テープ同士の接続部分の強度を向上させたりすることができる。
【0018】
本発明の第2の観点によれば、以下のシールド電線の製造方法が提供される。即ち、このシールド電線の製造方法は、金属箔成形工程と、被覆成形工程と、を含む。前記金属箔成形工程では、走行する心線を包むように金属箔テープを成形する。前記被覆成形工程では、前記金属箔テープの周囲に樹脂を押し出して絶縁被覆を成形する。また、前記金属箔成形工程の前段階で少なくとも2枚の前記金属箔テープを当該金属箔テープの長手方向に並べて配置するときにおいて、隣り合う前記金属箔テープ同士の境目は、当該金属箔テープの長手方向に垂直な線に対して傾斜している。
【0019】
即ち、被覆成形工程では、シールド電線を絶縁被覆の外側から圧迫しつつ、このシールド電線を長手方向に引っ張って走行させる。この点、上記の構成によれば、金属箔テープ同士の境目が長手方向に広がりをもつため、当該境目に圧迫箇所が差し掛かった場合に、常に金属箔テープが絶縁被覆及び心線を介して圧迫力により一体化されるので、シールド電線の機械的強度が低下しない。従って、被覆成形工程における破断を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の被覆電線を製造するための電線被覆ラインの全体的な構成を示した概略図。
【図2】心線の外周面に金属箔テープと絶縁被覆とを成形する構成を示した斜視図。
【図3】従来における金属箔テープの境目の形状を示す図。
【図4】本実施形態における金属箔テープの境目の形状を示す図。
【図5】従来及び本実施形態のシールド電線が圧迫力を受けた状態を示す図。
【図6】強度比較に用いた金属箔テープ及び接合テープの形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る押出機を備える電線被覆ライン1の全体的な構成を示した概略図である。図2は、心線21の外周面に金属箔テープ22と絶縁被覆23とを成形する構成を示した斜視図である。
【0022】
図1に示す電線被覆ライン1はシールド電線25を製造するための装置であり、サプライスタンド10と、金属箔テープ供給装置11と、テープ処理装置12と、押出機13と、水槽14と、引取機15と、アキュムレータ16と、把取機17と、を備えている。
【0023】
サプライスタンド10は、心線21を下流側のテープ処理装置12及び押出機13へ向けて送るように構成されている。本実施形態では、この心線21として、一対の被覆付き電線を撚り合わせたものを用いている。
【0024】
金属箔テープ供給装置11は、金属箔テープ22が巻き付けられた円筒部材を有している。そして、この円筒部材に巻き付けられた金属箔テープ22は、テープ処理装置12へ向けて送られる。また、この円筒部材に巻き付けられた金属箔テープ22が無くなったときは、当該金属箔テープ22の端部と、新しい円筒部材に巻き付けられた金属箔テープ22の端部と、が接続される。なお、金属箔テープ22としては、導電箔(例えばアルミ箔又は銅箔等の金属箔)をテープ状にしたものや、導電箔に対してポリエステル等の樹脂フィルムを貼り合わせたものを用いることができる。
【0025】
テープ処理装置12は、金属箔テープ22を心線21の周囲に巻き付けるように構成されている。このテープ処理装置12は、複数のガイドローラ41〜44と、第1ダイス51と、第2ダイス52と、を備えている。
【0026】
ガイドローラ41は心線21をガイドしており、ガイドローラ42は、金属箔テープ22をガイドしている。ガイドローラ43,44は、心線21と金属箔テープ22の位置を固定して引取り方向(長手方向)のズレを防止するために自発的には回転を行わない構成になっている。
【0027】
第1ダイス51は、金属箔テープ22を心線21とともに通過させることで、金属箔テープ22の幅方向両端同士を重ね合わせるようにして円筒状に仮成形する。第2ダイス52は、前記第1ダイス51を通過した後の金属箔テープ22を心線21とともに通過させることで、当該金属箔テープ22を最終的に成形する。以上の構成のテープ処理装置12により、金属箔テープ22を成形する金属箔成形工程が実現されている。
【0028】
押出機13は、心線21の外側に配置された金属箔テープ22の周囲に合成樹脂を押出成形し、被覆(シース)を形成するものである。この押出機13は、図略の混練室と、この混練室内に配置されるスクリューと、前記混練室の一端に接続されるクロスヘッド式の押出ダイス31と、を備えている。
【0029】
この構成により、押出機13に被覆材料としてのコンパウンドが供給されると、当該コンパウンドは混練室の内部でスクリューの駆動によって混練されるとともに図略のヒータによって加熱され、溶融した樹脂が前記押出ダイス31を介して押し出される。
【0030】
この結果、この押出ダイス31を通過する前記金属箔テープ22の周囲に樹脂を押し出して絶縁被覆23を成形することができる。被覆成形工程は、以上のようにして実現される。なお、ここで用いられる樹脂としては、ポリプロピレン及びポリ塩化ビニル等を用いることができる。
【0031】
この被覆成形工程を経ることにより、シールド電線25を製造することができる。このシールド電線25は、内側から順に心線21、金属箔テープ22、及び絶縁被覆23で構成される。そして、押出ダイス31から押し出されたシールド電線25は、水槽14を通過することで冷却され、その後、上流側からシールド電線25を引っ張って走行させるための引取機15を経由して把取機17に送られ、コイル状に整形される。
【0032】
アキュムレータ16はシールド電線25を適宜貯留することができるとともに、その貯留長さを変更可能に構成されている。そして、例えばコイル状の電線を把取機17から取り外すために当該把取機17への電線の供給が停止された場合は、アキュムレータ16でのシールド電線25の貯留長さを増大させることにより、上流側から継続して供給されるシールド電線25の弛みを防止することができる。
【0033】
次に、前記円筒部材に巻き付けられた金属箔テープ22と、新しい円筒部材に巻き付けられた金属箔テープ22と、の境目の形状について説明する。初めに、従来における金属箔テープ同士の境目の形状について、図3を参照して説明する。図3は、従来における金属箔テープ22xの境目の形状を示す図である。なお、以下で説明する従来例において、心線及び絶縁被覆は本実施形態の構成と同等であるため、同一の符号を付している。また、金属箔テープは本実施形態と形状が異なるため、金属箔テープを符号22xで、金属箔テープ22xを備えたシールド電線を符号25xで示すものとする。
【0034】
初めに、従来において、心線21を覆う前の金属箔テープ22xの構成について、図3(a)を参照して説明する。図3(a)は、心線21を覆う前の金属箔テープ22x同士の境目を示す図である。また、この図3(a)及び後述の図4(a)は、心線21を覆う前の金属箔テープを描いたものであるが、シールド電線の金属箔テープを平面状に展開したときの当該金属箔テープ同士の境目を示す図と表現することもできる。
【0035】
図3(a)に示すように、従来では、隣り合う金属箔テープ22xの長手方向の端部は、当該長手方向と直角をなしている。そして、金属箔テープ22xは、この端部同士を向かい合わせるようにして配置されている。この境目の部分においては、金属箔テープ22x同士を厚み方向に重ねることはなく、隣り合う金属箔テープ22xは、シールド電線25xの長手方向に若干の間隔を空けて配置されている。
【0036】
次に、図3(b)及び図3(c)を参照して、シールド電線25xを成形した後の金属箔テープ22xの形状について説明する。図3(b)は、シールド電線25xを長手方向に垂直な方向で見たときの図である。図3(c)は、図3(b)におけるA−A断面図及びB−B断面図である。
【0037】
従来のシールド電線25xの場合は、金属箔テープ同士の境目の部分を除いて、その断面には、図3(c)のA−A断面図に示すように、心線21と、金属箔テープ22xと、絶縁被覆23と、が現れる。なお、金属箔テープ22xが心線21を包むようにテープ処理装置12によって成形されることに伴い、当該金属箔テープ22xの幅方向両端同士は厚み方向に重ね合わせられるが、図3及び図4の断面図においては、そのような重ね合わせの部分は省略されて簡略的に描かれている。
【0038】
そして、シールド電線25xの長手方向で隣り合う金属箔テープ22x同士の境目においては、上述のように、金属箔テープ22x同士がシールド電線25xの長手方向に若干離れている。このため、当該境目においては、図3(c)のB−B断面図に示すように、シールド電線25xの断面には心線21と絶縁被覆23のみが現れる。言い換えれば、筒状に成形された金属箔テープ22x同士の間には円環状の境目(隙間)が形成され、この境目の隙間に絶縁被覆23の樹脂が充填される形となる。
【0039】
次に、本実施形態における金属箔テープ22同士の境目の形状について、図4を参照して説明する。図4は、本実施形態における、金属箔テープ22の境目の形状を示す図である。
【0040】
初めに、図4(a)を参照して、心線21を覆う前の金属箔テープ22について説明する。図4(a)は、心線21を覆う前の金属箔テープ22の境目を示す図である。図4(a)に示すように、それぞれの金属箔テープ22の長手方向の両端部は、従来のように直角ではなく、傾斜した直線状の輪郭を有している。この端部の輪郭は、金属箔テープ22の長手方向に対して傾斜しており、また、金属箔テープ22の長手方向に垂直な線に対しても傾斜している。そして、複数の金属箔テープ22は、この傾斜した端部同士が平行になるように配置されている。なお、金属箔テープ22の端部同士は、後述の接合テープ等によって接続されても良い。
【0041】
次に、図4(b)及び図4(c)を参照して、シールド電線25を成形した後の金属箔テープ22の形状について説明する。図4(b)は、シールド電線25を長手方向に垂直な方向で見たときの図である。図4(c)は、図4(b)におけるC−C断面図及びD−D断面図である。
【0042】
図4(b)に示すように、シールド電線25における金属箔テープ22の境目は螺旋状であり、当該境目の螺旋は、シールド電線25の長手方向での一定範囲内で、心線21の外側をほぼ1周周回している。そのため、本実施形態のシールド電線25において、境目の部分(螺旋の端部を除く。)をシールド電線25の長手方向に垂直に切った断面には、図4(c)に示すように、常に、心線21と、2枚の金属箔テープ22と、絶縁被覆23と、が現れる。なお、この断面において、2枚の金属箔テープ22の間には、螺旋状の境目に対応する箇所に周方向の隙間が生じているが、その大きさは僅かである。
【0043】
次に、図5を参照して、前記被覆工程において、本実施形態のシールド電線25及び従来のシールド電線25xが押出機13を通過するときに発生する断線について説明する。図5は、シールド電線25及びシールド電線25xに圧迫力が掛かった状態を示す図である。
【0044】
前述のようにシールド電線25,25xは、巻取り側から引張り力を受けて走行している。また、シールド電線25,25xは、被覆工程において、クロスヘッド式の押出ダイス31から圧迫力を受けている。この圧迫力は、絶縁被覆23から内側(金属箔テープ22,22x及び心線21)に伝達される。
【0045】
従来の構成のシールド電線25xにおいて、金属箔テープ22xの境目以外の部分(例えば図3(b)のA−A線で示した部分)に前記圧迫力が掛かった場合を考える。この場合、前記圧迫力は、図5(a)の左側の断面図において、絶縁被覆23から金属箔テープ22xに、及び金属箔テープ22xから心線21に、順次伝達される。従って、絶縁被覆23−金属箔テープ22x間、及び、金属箔テープ22x−心線21間において、長手方向のズレに抗する摩擦力が発生する。この結果、絶縁被覆23、金属箔テープ22x、及び心線21が摩擦力で良好に一体化することで、前記引張り力に対して強力に対抗することができる。
【0046】
しかし、図3(b)のB−B線の部分にこの圧迫力が掛かった場合は、この部分では図3(c)に示すように金属箔テープ22xが存在しない。圧迫力は図5(a)の右側に示すように絶縁被覆23から心線21へ伝達され、絶縁被覆23及び心線21が摩擦力によって一体化することで巻取り側の引張り力に抗することになる。従って、シールド電線25xはB−B線の部分で、金属箔テープ22xの抗力を利用できない分だけ引張り強度が局所的に大きく低下してしまい、その部分で破断し易くなっていた。
【0047】
この点、本実施形態のシールド電線25は、金属箔テープ22同士の境目のどの部分においても、図4(c)に示すように、2枚の金属箔テープ22が全体として略360°の円環に近い円弧形状に成形されて、絶縁被覆23と心線21との間で挟まれた状態となっている。従って、前記境目のどの部分に圧迫力が加わった場合でも、絶縁被覆23、2枚の金属箔テープ22、及び心線21が、圧迫によって発生する摩擦力に基づいて良好に一体化して、巻取り側の引張り力に対抗することができる。この結果、金属箔テープ22の境目で引張り強度が局所的に大きく低下することを回避し、被覆工程におけるシールド電線25の破断を防止できる。
【0048】
次に、金属箔テープ22の端部の角度及び境目に貼る接合テープの形状がシールド電線25の強度等に及ぼす影響を調べるために本願発明者が行った実験について、図6を参照して説明する。
【0049】
この実験では、金属箔テープ22同士の境目の角度及び接合テープ60の形状等を変えて、上記で説明した電線被覆ライン1によってシールド電線25の製造を行い、破断が発生する頻度等を調べた。ここで用いた金属箔テープ22及び接合テープ60の一例を、図6の(a)から(e)までに示している。なお、ここで用いた接合テープ60は、全て金属箔テープ22同士の境目の角度と平行に貼付されている。なお、この実験では、樹脂製の接合テープ60を用いている。
【0050】
この結果、従来のシールド電線25xを用いた場合は破断が多発してしまうのに対し、例えば図6の(a)に示す構成(テープの厚み25μm、テープ幅25mm、及びテープ角度(金属箔テープ22同士の境目の角度)45°)では、殆ど断線しなかった。つまり、本発明の効果を確認できたと言うことができる。
【0051】
また、図6の(b)から(e)までの構成では、断線が全く発生しなかった。なお、(d)及び(e)の構成について引張り強度を比較すると、(d)の構成の方が(e)の構成よりも引張り強度が大きかった。
【0052】
また、この実験から、テープ角度(即ち、金属箔テープ22同士の境目の角度)が45°の金属箔テープ22よりは、30°の金属箔テープ22の方が断線の発生を良好に抑制できることが分かった。また、テープ幅が25mmの金属箔テープ22よりは、テープ幅が10mmの金属箔テープ22の方が断線の発生を抑えることができることが分かった。
【0053】
以上に説明したように、本実施形態のシールド電線25は、心線21と、金属箔テープ22と、絶縁被覆23と、を備える。金属箔テープ22は、心線21の外周面に沿うように配置され、心線21の長手方向に複数枚が並べられる。絶縁被覆23は、電気絶縁性を有しており、金属箔テープ22の外周面に沿うように配置される。また、隣り合う金属箔テープ22同士の境目が螺旋状である。
【0054】
また、本実施形態では、以下で示す方法によってシールド電線25が製造される。即ち、この製造方法は、金属箔成形工程と、被覆成形工程と、を含む。金属箔成形工程では、走行する心線21を包むように金属箔テープ22を成形する。被覆成形工程では、金属箔テープ22の周囲に樹脂を押し出して絶縁被覆23を成形する。また、金属箔成形工程の前段階で少なくとも2枚の金属箔テープ22を当該金属箔テープ22の長手方向に並べて配置するときにおいて、隣り合う金属箔テープ22同士の境目は、当該金属箔テープ22の長手方向に垂直な線に対して傾斜している。
【0055】
これにより、金属箔テープ22同士の境目が長手方向に広がりをもつため、当該境目に圧迫箇所が差し掛かった場合に、常に金属箔テープ22が絶縁被覆23及び心線21を介して圧迫により一体化されるので、シールド電線25の機械的強度が低下しない。従って、シールド電線25の製造時等における破断を防止できる。
【0056】
また、本実施形態のシールド電線25において、金属箔テープ22同士は、当該金属箔テープ22同士の境目の傾斜に平行な接合テープにより接続される。
【0057】
これにより、金属箔テープ22同士を適切に接続できる。また、接合テープの形状を調整することにより、シールド電線25の破断の発生を抑えたり、金属箔テープ22同士の接続部分の強度を向上させたりすることができる。
【0058】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0059】
金属箔テープ22同士の境目と、当該金属箔テープ22の長手方向と、がなす角としては、30°が好適であることを実験によって説明したが、それ以外の角度であっても良い。ただし、破断を良好に防止する観点からは、この角度は20°以上かつ40°以下であることが好ましい。
【0060】
サプライスタンド10から供給される心線21は、一対の電線を撚り合わせたものに限らず、他の様々な形態の電線を心線として採用することができる。
【0061】
前記ガイドローラ41〜44に代えて、例えばガイドスリーブ等の適宜のガイド手段によって金属箔テープ22を心線21に対して添えるように案内するように変更することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 電線被覆ライン
11 金属箔テープ供給装置
12 テープ処理装置
13 押出機
21 心線
22,22x 金属箔テープ
23 絶縁被覆
25,25x シールド電線
60 接合テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心線と、
前記心線の外周面に沿うように配置され、前記心線の長手方向に複数枚が並べられる金属箔テープと、
電気絶縁性を有しており、前記金属箔テープの外周面に沿うように配置される絶縁被覆と、
を備え、
隣り合う前記金属箔テープ同士の境目が螺旋状であることを特徴とするシールド電線。
【請求項2】
請求項1に記載のシールド電線であって、
前記金属箔テープ同士は、当該金属箔テープ同士の境目の傾斜に平行な接合テープにより接続されることを特徴とするシールド電線。
【請求項3】
走行する心線を包むように金属箔テープを成形する金属箔成形工程と、
前記金属箔テープの周囲に樹脂を押し出して絶縁被覆を成形する被覆成形工程と、
を含み、
前記金属箔成形工程の前段階で少なくとも2枚の前記金属箔テープを当該金属箔テープの長手方向に並べて配置するときに、隣り合う前記金属箔テープ同士の境目は、当該金属箔テープの長手方向に垂直な線に対して傾斜していることを特徴とするシールド電線の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−4082(P2012−4082A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140935(P2010−140935)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】