説明

シール材及びその製造方法

【課題】芯材が所望の位置に確実に配置されたシール材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るシール材の製造方法は、金型100内の成形空間110において芯材10をゴム材料で被覆して、芯材10と、芯材10を被覆するゴム材料からなる被覆部20と、を有するシール材1を製造する方法であって、芯材10を成形空間110の縦方向における所定位置に保持する縦位置決め部210,220と、芯材10を成形空間110の横方向における所定位置に保持する横位置決め部300と、を有する金型100を準備し、金型100の成形空間110において、ゴム材料より硬い材料からなる芯材10を、縦位置決め部200及び横位置決め部300によって、縦方向の所定位置及び横方向の所定位置に保持するとともに、芯材10の周囲に溶融したゴム材料を配置し、次いで、芯材10の周囲でゴム材料を硬化する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材及びその製造方法に関し、特に、芯材をゴム材料で被覆してなるシール材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1において、リング本体と、当該リング本体からガス圧力側となる内周側に向かって二股状に延設されて開口を形成するリップ部とを有するゴム製のリング部と、当該リング部よりも硬質であり且つ圧縮弾性を有し、当該リング部の外周側に固着された平板状で環状のガスケット本体とから構成されており、当該リング部の当該リップ部が、当該ガスケット本体の厚さよりも厚さ方向に突出しているドレッサー型ガス管継手用複合ガスケットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−122373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、上記のような複合ガスケットのガスケット本体が金属製であって、当該複合ガスケットを樹脂製ライナー層で被覆された配管フランジ間に配置してシーリングを行う場合には、当該ガスケット本体との圧接によって当該ライナー層が変形し、当該配管フランジ間におけるシール性が不十分となることがあった。
【0005】
そこで、例えば、ガスケット本体をゴム材料で被覆することが考えられる。しかしながら、芯材をゴム材料で被覆してなるガスケットを量産する場合、例えば、当該ゴム材料内における当該芯材の配置にばらつきが生じると、当該ガスケットによるシール性にもばらつきが生じることとなる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、芯材が所望の位置に確実に配置されたシール材及びその製造方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るシール材の製造方法は、金型内の成形空間において芯材をゴム材料で被覆して、前記芯材と、前記芯材を被覆する前記ゴム材料からなる被覆部と、を有するシール材を製造する方法であって、前記芯材を前記成形空間の縦方向における所定位置に保持する縦位置決め部と、前記芯材を前記成形空間の横方向における所定位置に保持する横位置決め部と、を有する前記金型を準備し、前記金型の前記成形空間において、前記ゴム材料より硬い材料からなる前記芯材を、前記縦位置決め部及び前記横位置決め部によって、前記縦方向の所定位置及び前記横方向の所定位置に保持するとともに、前記芯材の周囲に溶融した前記ゴム材料を配置し、次いで、前記芯材の周囲で前記ゴム材料を硬化することを特徴とする。本発明によれば、芯材が所望の位置に確実に配置されたシール材の製造方法を提供することができる。
【0008】
また、前記金型は、前記芯材を前記縦方向の所定位置に保持するよう前記芯材を挟持する複数の前記縦位置決め部と、前記芯材を前記横方向の所定位置に保持するよう前記芯材の外周に当接する複数の前記横位置決め部と、を有することとしてもよい。また、この場合、前記金型は、その間に前記成形空間が形成されるよう前記縦方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置される第一型及び第二型を有し、複数の前記縦位置決め部は、前記第一型から前記他方側に突出する複数の第一縦位置決め部と、複数の前記第一縦位置決め部に対向するよう前記第二型から前記一方側に突出する複数の第二縦位置決め部と、を有することとしてもよい。また、これらの場合、前記金型の前記芯材の外周に対応する位置に縦方向に複数の穴が形成され、複数の前記横位置決め部は、複数の前記穴に挿通されて前記芯材の外周に当接する複数の部材であることとしてもよい。
【0009】
また、前記芯材はリング状であり、前記被覆部は、前記芯材を被覆する基部と、前記基部と一体的に形成され前記基部の内周側及び/又は外周側に延設された延設部と、を有するリング状であることとしてもよい。また、前記芯材は金属製であることとしてもよい。また、前記シール材はガスケットであることとしてもよい。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るシール材は、前記いずれかの方法により製造され、前記芯材と、前記芯材を被覆する前記ゴム材料からなる被覆部と、を有することを特徴とする。本発明によれば、芯材が所望の位置に確実に配置されたシール材を提供することができる。
【0011】
また、例えば、前記被覆部には、前記縦位置決め部に対応する有底穴と、前記横位置決め部に対応する窪み又は穴が形成されていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、芯材が所望の位置に確実に配置されたシール材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るシール材の一例について、その外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るシール材の一例の平面図である。
【図3】図2に示すIII−III線で切断したシール材の断面図である。
【図4】図3に示す破線IVで囲まれたシール材の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】図3に示す破線Vで囲まれたシール材の一部を拡大して示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るシール材の製造方法の一例において使用される金型の平面図である。
【図7】図6に示すVII−VII線で切断した金型の断面図である。
【図8】図7に示す破線VIIIで囲まれた金型の一部を拡大して示す断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るシール材の製造方法の一例において使用される金型からシール材を取り出す様子を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るシール材の他の例の平面図である。
【図11】図10に示すXI−XI線で切断したシール材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は、本実施形態に限られるものではない。
【0015】
図1は、本実施形態に係るシール材1の一例について、その外観を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係るシール材1の一例の平面図である。図3は、図2に示すIII−III線で切断したシール材1の断面図である。図4は、図3に示す破線IVで囲まれたシール材1の一部を拡大して示す断面図である。図5は、図3に示す破線Vで囲まれたシール材1の一部を拡大して示す断面図である。
【0016】
シール材1は、第一の部材と第二の部材との接続部分において、当該第一の部材と当該第二の部材とに挟持されて、当該接続部分をシールする部材である。ここで、以下の説明において、第一の部材、シール材1及び第二の部材が積層される方向を「縦方向」といい、当該「縦方向」を横切る方向を「横方向」という。また、縦方向における一方側及び他方側をそれぞれ「上側」及び「下側」ということがある。
【0017】
本実施形態において、シール材1は、ガスケットである。すなわち、シール材1は、気体や液体等の流体が保持され又は流通する中空の第一の部材と第二の部材との接続部分をシールするリング状の成形体である。
【0018】
具体的に、シール材1は、例えば、第一の配管と第二の配管との接続部分(より具体的には、例えば、第一の配管の端部に形成されたフランジ(配管フランジ)と、第二の配管の端部に形成されたフランジと、を接続する部分)において、当該第一の配管と当該第二の配管とに挟持されて、当該接続部分をシールする配管用ガスケットである。
【0019】
図1〜図5に示すように、このシール材1は、芯材10と、当該芯材10を被覆するゴム材料からなる被覆部20と、を有している。
【0020】
芯材10は、被覆部20のゴム材料より硬い材料からなる。芯材10を構成する材料は、ゴム材料より硬い材料であれば特に限られず、例えば、ゴム材料より硬く、圧縮弾性を有しない材料とすることができる。具体的に、芯材10の材料としては、例えば、金属(例えば、炭素鋼、ステンレス)、樹脂(例えば、ポリエチレン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン))等の有機材料、無機材料を使用することができる。本実施形態において、芯材10は、金属製である。
【0021】
芯材10の形状は、ゴム材料で被覆可能な形状であれば特に限られない。本実施形態において、芯材10は、その中央に貫通穴が形成されたリング状である。より具体的に、芯材10は、平面視において、その中央に円形の貫通穴が形成された円形リング状であり、その外周10a及び内周10bはいずれも円形である(図2参照)。
【0022】
なお、芯材10がリング状である場合、その平面視における形状は円形に限られない。すなわち、本実施形態において、芯材10の外周10a及び内周10bは同心円となっているが(図2参照)、これに限られず、例えば、それぞれ独立に円形、楕円形、多角形等の任意の形状とすることもできる。
【0023】
本実施形態において、芯材10は、板状体である。すなわち、芯材10は、図3〜図5に示すように、互いに平行な上面10c(縦方向における一方側の表面)及び下面10d(縦方向における他方側の表面)を有する成形体である。なお、リング状の芯材10の断面は、本実施形態において長方形となっているが、これに限られず、例えば、他の四角形、他の多角形、円形、楕円形とすることもできる。
【0024】
被覆部20は、芯材10を被覆するゴム材料からなる。被覆部20を構成するゴム材料は、芯材10を構成する材料より軟らかいゴム材料であれば特に限られず、例えば、加熱により溶融して流動性を示すゴム材料が好ましい。具体的に、被覆部20のゴム材料としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、ポリクロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴムを使用することができる。
【0025】
被覆部20の形状は、芯材10を被覆可能な形状であれば特に限られず、例えば、芯材10に対応する形状とすることができる。すなわち、本実施形態において、被覆部20は、芯材10の形状に対応して、その中央に貫通穴21が形成されたリング状である。より具体的に、被覆部20は、平面視において、その中央に円形の貫通穴21が形成された円形リング状であり、その外周20a及び内周20bはいずれも円形である(図2参照)。
【0026】
なお、被覆部20がリング状である場合、その形状は円形に限られない。すなわち、本実施形態において、被覆部20の外周20a及び内周20bは同心円となっているが(図2参照)、これに限られず、例えば、それぞれ独立に円形、楕円形、多角形等の任意の形状とすることができる。
【0027】
また、本実施形態において、被覆部20は、芯材10を被覆する基部30と、当該基部30と一体的に形成され当該基部30の内周側に延設された延設部(以下、「リップ部40」という。)と、を有するリング状である。
【0028】
基部30は、芯材10の上面10c及び下面10dをそれぞれ被覆するゴム材料からなる。本実施形態において、基部30の形状は、芯材10に対応した形状であり、平面視において、当該基部30の外周(すなわち、被覆部20の外周20a)は円形である(図2参照)。
【0029】
また、本実施形態において、基部30は、板状に成形されている。すなわち、基部30は、互いに平行な上面(芯材10の上面10cを被覆する被覆部20の上面20cの一部)及び下面(芯材10の下面10dを被覆する被覆部20の下面20dの一部)を有している(図3〜図5参照)。さらに、これら基部30の上面及び下面は、それぞれ芯材10の上面10c及び下面10dに平行となっている。
【0030】
リップ部40は、基部30から径方向内側に向けて上方及び下方に傾斜しつつ延びる上リップ部41及び下リップ部42を有している。リップ部40の厚み(上リップ部41の上面から下リップ部42の下面までの距離)は、基部30の厚み(基部30の上面から下面までの距離)よりも大きくなっている(図3〜図5参照)。
【0031】
次に、本実施形態に係るシール材の製造方法(以下、「本方法」という。)について説明する。図6は、本方法の一例において使用される金型100の平面図である。図7は、図6に示すVII−VII線で切断した金型100の断面図である。図8は、図7に示す破線VIIIで囲まれた金型100の一部を拡大して示す断面図である。図9は、金型100からシール材1を取り出す様子を示す断面図である。なお、図6においては、図7に示す上型120を取り外した状態の金型100を図示している。
【0032】
本方法は、金型100内の成形空間110において芯材10をゴム材料で被覆して、当該芯材10と、当該芯材10を被覆する当該ゴム材料からなる被覆部20と、を有するシール材1を製造する方法である。
【0033】
金型100の成形空間110は、芯材10をゴム材料で被覆する成形を行うために金型100内に形成される空間である。成形空間110は、シール材1の外形(すなわち、被覆部20の外形)に対応する形状に形成されている。すなわち、成形空間110の外周110a、内周110b、上面110c及び下面110dは、それぞれ被覆部20の外周20a、内周20b、上面20c及び下面20dに対応する形状に形成されている(図7、図8参照)。
【0034】
そして、本方法において特徴的なことの一つは、芯材10を成形空間110の縦方向における所定位置に保持する縦位置決め部200(図8参照)と、当該芯材10を当該成形空間110の横方向における所定位置に保持する横位置決め部300(図7参照)と、を有する金型100を使用する点にある。
【0035】
縦位置決め部200及び横位置決め部300の形状、配置、数は、芯材10を成形空間110における所定の位置に保持できる範囲であれば特に限られないが、当該芯材10の位置決めを確実に行うためには、複数の縦位置決め部200及び複数の横位置決め部300を設けることが好ましい。
【0036】
そこで、本実施形態に係る金型100は、芯材10を縦方向の所定位置に保持するよう当該芯材10を挟持する複数の縦位置決め部200と、当該芯材100を横方向の所定位置に保持するよう当該芯材10の外周に当接する複数の横位置決め部300と、を有している。
【0037】
すなわち、本方法においては、金型100の複数の縦位置決め部200によって芯材10を縦方向に挟持することにより、成形空間110の当該縦方向における当該芯材10の位置を固定する。
【0038】
また、本方法においては、金型100の複数の横位置決め部300によって芯材10の外周10aを囲むことにより、成形空間110の横方向(芯材10の径方向)における当該芯材10の位置を固定する。
【0039】
縦位置決め部200及び横位置決め部300の数は、複数であれば特に限られないが、芯材10の位置決めを確実に行うためには、それぞれ3つ以上であることが好ましい。本実施形態において、金型100は、6つの縦位置決め部200と、3つの横位置決め部300と、を有している(図6参照)。
【0040】
また、縦位置決め部200及び横位置決め部300の配置は、芯材10を成形空間110における所定の位置に保持できる範囲であれば特に限られないが、当該芯材20の位置決めを確実に行うためには、縦位置決め部200及び横位置決め部300を規則的に配置することが好ましい。
【0041】
すなわち、本実施形態において、複数の縦位置決め部200は、芯材10の上面10c及び下面10d上の同一円周上に等間隔で配置され、複数の横位置決め部300は、当該芯材10の外周10aに沿って等間隔で配置されている(図6参照)。
【0042】
また、本実施形態に係る金型100は、その間に成形空間110が形成されるよう縦方向の一方側(上方側)及び他方側(下方側)にそれぞれ配置される第一型(以下、「上型120」という。)及び第二型(以下、「下型130」という。)を有している。
【0043】
そして、複数の縦位置決め部200は、上型120から下方に突出する複数の第一縦位置決め部(以下、「上位置決め部210」という。)と、複数の当該上位置決め部210に対向するよう下型130から上方に突出する複数の第二縦位置決め部(以下、「下位置決め部220」という。)と、を有している(図7参照)。
【0044】
すなわち、複数の上位置決め部210及び複数の下位置決め部220は、それぞれ成形空間110の上面110c(上型120の下面の一部)及び下面110d(下型130の上面の一部)から互いに対向するように突出している(図7〜図9参照)。そして、複数の上位置決め部210及び複数の下位置決め部220は、それぞれ芯材10の上面10c及び下面10dに当接することにより、当該芯材10を挟持する(図7、図8参照)。
【0045】
上位置決め部210及び下位置決め部220の形状は、芯材10を成形空間110における所定の位置に保持できる範囲であれば特に限られないが、例えば、円柱や多角柱等の柱状とすることができる(図6〜図9参照)。
【0046】
また、上位置決め部210及び下位置決め部220の芯材10に当接する先端部分の形状もまた、当該芯材10を成形空間110における所定の位置に保持できる範囲であれば特に限られない。すなわち、本実施形態において、上位置決め部210及び下位置決め部220の先端部分は、縦方向断面において台形状となっているが(図8参照)、これに限られず、例えば、半球状等の湾曲した形状や他の多角形状とすることもできる。
【0047】
また、金型100の芯材10の外周10aに対応する位置には、縦方向に複数の穴(以下、「挿通穴101」という。)が形成され、複数の横位置決め部300は、複数の当該挿通穴101に挿通されて当該10芯材10の外周10aに当接する複数の部材となっている(図6、図7、図9参照)。
【0048】
すなわち、本実施形態に係る金型100においては、芯材10の外周10aに沿って、上型120から下型130まで貫通する複数の挿通穴101が形成されている(図7参照)。一方、横位置決め部300は、上型120及び下型130とは別体に成形された部材となっている。すなわち、横位置決め部300は、上型120及び下型130に対して着脱可能となっている。
【0049】
そして、複数の横位置決め部300は、複数の挿通穴101に挿通されることにより、芯材10の外周10aに沿って配置される。この結果、複数の横位置決め部300は、成形空間110の外周110aより内側において、芯材10の外周10aに当接する(図6、図7参照)。
【0050】
横位置決め部300の形状は、芯材10を成形空間110における所定の位置に保持できる範囲であれば特に限られないが、例えば、円柱や多角柱等の柱状とすることができる(図6、図7、図9参照)。
【0051】
また、本実施形態に係る金型100は、中型140をさらに有している。中型140は、シール材1の被覆部20の貫通穴21に対応して、成形空間110の中央部分を塞ぐように上型120と下型130とに挟持される(図7参照)。そして、中型140の外周は成形空間110の内周110bを構成する(図7、図8参照)。また、中型140及び下型130の中央部分には、これらを固定するための固定具141が挿通されている(図6、図7参照)。
【0052】
そして、本方法においては、上述のような金型100を準備し、当該金型100の成形空間110において、芯材10を、縦位置決め部200及び横位置決め部300によって、縦方向の所定位置及び横方向の所定位置に保持するとともに、当該芯材10の周囲に溶融した当該ゴム材料を配置し、次いで、当該芯材10の周囲で当該ゴム材料を硬化する。
【0053】
すなわち、本実施形態に係る本方法においては、まず、複数の縦位置決め部200(複数の上位置決め部210及び下位置決め部220)で芯材10を挟持することにより、当該芯材10を成形空間110の縦方向における所定の位置に固定し、且つ複数の横位置決め部300で芯材10の外周10aを囲むことにより、当該芯材10を当該成形空間110の横方向(芯材10の径方向)における所定の位置に固定する。
【0054】
ここで、縦方向において芯材10が保持される位置は、所望の位置とすることができるが、例えば、芯材10は、その上面10c及び下面10dを被覆する被覆部20の上面20c及び下面20dの一部にそれぞれ対応する成形空間110の上面110c及び下面110dが、当該芯材10の上面10c及び下面10dと平行となるように配置される。
【0055】
この場合、複数の上位置決め部210は、被覆部20のうち芯材10の上面10cを被覆する部分の厚み(すなわち、成形空間110の上面110cと芯材10の上面10cとの距離)に等しい高さ(縦方向における長さ)に形成される。同様に、複数の下位置決め部220は、被覆部20のうち芯材10の下面10dを被覆する部分の厚み(すなわち、成形空間110の下面110dと芯材10の下面10dとの距離)に等しい高さに形成される。なお、上位置決め部210と下位置決め部220とは同一の高さに形成されてもよく、互いに異なる高さに形成されてもよい。
【0056】
また、横方向において芯材10が保持される位置もまた、所望の位置とすることができるが、例えば、芯材10は、その中心と、被覆部20の中心と、が一致するように配置される。すなわち、複数の横位置決め部300によって、シール材1における芯材10のセンタリングを行う。この場合、複数の横位置決め部300は、芯材10の外周10a及び成形空間110の外周110aと同心の円周上に配置される(図6参照)。
【0057】
さらに、本方法においては、溶融したゴム材料を芯材10の周囲に配置する。すなわち、例えば、成形空間110において芯材10の上面10c側と下面10d側とにシート状のゴム材料をそれぞれ配置するとともに、金型100を加熱することにより当該ゴム材料を当該成形空間110内で溶融させる。また、例えば、芯材10が所定の位置に固定された成形空間110に、溶融したゴム材料を注入することもできる。そして、閉鎖された成形空間110において、芯材10及び溶融したゴム材料を加圧して保持することにより、当該ゴム材料を当該芯材10の周囲に充填することができる。
【0058】
次いで、本方法においては、芯材10の周囲でゴム材料を硬化させる。すなわち、金型100を冷却して、芯材10の周囲に充填されたゴム材料を硬化させる。このようなプレス成形により、芯材10を被覆するゴム材料からなる被覆部20を形成することができる。
【0059】
さらに、本実施形態においては、図9に示すように、上述のようにして金型100内で成形されたシール材1を、押出部材150を使用して当該金型100から取り出す。すなわち、下型130のうち、中型140の下方の一部には貫通穴(以下、「押出用穴131」という。)が形成されている(図7参照)。一方、押出部材150は、基台部151と、当該基台部151から突出して形成され、下型130の押出用穴131に挿通可能な押出部152と、を有している。
【0060】
そして、シール材1の成形後に、まず上型120を下型130及び中型140から取り外し、次いで、押出部材150の押出部152を下方から押出用穴131に挿入して、当該押出部152で当該中型140を突き上げることにより、当該中型140及びシール材1を当該下型130から取り外す。最後に、シール材1を中型140から取り外す。
【0061】
このような本方法によれば、芯材10が被覆部20内の所望の位置に確実に配置されたシール材1を効率よく製造することができる。
【0062】
すなわち、例えば、金型100の成形空間110において芯材10が確実に固定されていない場合には、当該芯材10の周囲に溶融したゴム材料を加圧充填することにより当該芯材10が浮遊し、当該芯材10の配置を確実に制御することができない。
【0063】
これに対し、本方法においては、縦位置決め部200及び横位置決め部300によって芯材10を所望の位置に固定した上で、当該芯材10の周囲に溶融したゴム材料を加圧充填するため、成形の過程を通じて当該芯材10を所望の位置に確実に保持することができる。
【0064】
したがって、本方法によれば、芯材10の配置にばらつきのないシール材1を量産することができる。すなわち、例えば、本方法によれば、芯材10の上面10c及び下面10dと、当該上面10c及び下面10dを被覆する被覆部20の上面20c及び下面20dの一部と、が平行なシール材1(すなわち、芯材10の上面10c及び下面10dを被覆する被覆部20の厚みが一定のシール材1)を確実に製造することができる。また、例えば、シール材1の中心と芯材10の中心とが一致した(芯材10のセンタリングが確実に達成された)シール材1を確実に製造することができる。このため、ゴム材料による芯材10の所望の被覆を確実に達成することができ、高い歩留まりを達成することができる。
【0065】
また、このようなシール材1によれば、所望のシーリングを確実に達成することができる。すなわち、例えば、第一の配管フランジと第二の配管フランジとの間にシール材1を配置する場合、当該配管フランジとシール材1との相対位置が一定であっても、当該シール材1における芯材10の配置が異なれば、当該配管フランジと当該芯材10との相対位置は異なるものとなり、その結果、当該シール材1によるシール性もまた異なってくる。このため、芯材10の配置にばらつきのあるシール材1を使用すると、所望のシール性を確実に達成することは容易でない。しかしながら、これにも関わらず、不透明な被覆部20内に埋設された芯材10の配置を事前に確認することは容易でない。
【0066】
これに対し、本方法により製造されたシール材1においては、芯材10の配置にばらつきがない。このため、上述の例において配管フランジとシール材1との相対位置が一定であれば、当該配管フランジと芯材10との相対位置も一定となり、所望のシール性を簡便且つ確実に達成することができる。
【0067】
なお、図1〜図9に示す例に係るシール材1は、例えば、第一の部材と第二の部材(例えば、第一の配管と第二の配管)とを固定するための固定具(例えば、固定ボルト)を当該シール材1の被覆部20の外周20aに当接させることにより、当該シール材1の位置決めを行う。したがって、この場合、芯材10が、その外周10aと、被覆部20の外周20aと、が同心となるように確実に配置されたシール材1を使用することにより、所望のシール性を簡便且つ確実に達成することができる。
【0068】
図1〜図9に示す例において、シール材1の被覆部20には、縦位置決め部200に対応する有底穴22,23と、横位置決め部300に対応する窪み(以下、「外周窪み24」という。)、が形成されている。
【0069】
すなわち、芯材10の上面10cを被覆する被覆部20の上面20cの一部、及び当該芯材10の下面10dを被覆する当該被覆部20の下面20dの一部には、複数の上位置決め部210に対応する複数の上有底穴22、及び複数の下位置決め部220に対応する複数の下有底穴23がそれぞれ形成されている(図1〜図3、図5参照)。
【0070】
これら上有底穴22及び下有底穴23の底部22a,23aは、プレス成形時の溶融ゴム材料の僅かな流入により、その全体がゴム材料の薄膜から構成されるものとすることができるが(図5参照)、これに限られず、例えば、当該底部22a,23aの一部に芯材10の上面10c及び下面10dが露出していてもよい。
【0071】
また、芯材10の外周10aを被覆する被覆部20の外周20aの一部には、複数の横位置決め部300に対応する複数の外周窪み24が形成されている(図1〜図4参照)。この外周窪み24は、被覆部20の上面20cから下面20dにわたる切り欠きであり、その最深部24aは、プレス成形時の溶融ゴム材料の僅かな流入により、その全体がゴム材料の薄膜から構成されるものとすることができるが(図4参照)、これに限られず、例えば、当該最深部24aの一部に芯材10の外周10aが露出していてもよい。
【0072】
また、当然ながら、これら有底穴22,23及び外周窪み24の数、配置及び形状は、縦位置決め部200及び横位置決め部300の数、配置及び形状に対応したものとなっている。
【0073】
図10は、本実施形態に係るシール材1の他の例の平面図である。図11は、図10に示すXI−XI線で切断したシール材1の断面図である。
【0074】
この例に係るシール材1の芯材10はリング状であり、被覆部20は、当該芯材10を被覆する基部30と、当該基部30と一体的に形成され当該基部30の外周側に延設された延設部(以下、「フランジ部50」という。)と、を有するリング状である。
【0075】
フランジ部50には、シール材1が第一の部材と第二の部材との間(例えば、第一の配管フランジと第二の配管フランジとの間)に挟持されて、これらの接続部分をシールする場合において、当該第一の部材と第二の部材とを固定する固定具(例えば、固定ボルト)を挿通するための貫通穴51が形成されている。
【0076】
この例に係るシール材1もまた、上述の図6〜図9に示した例と同様の金型100を使用する本方法により製造することができる。すなわち、例えば、図7に示す例では、横位置決め部300より径方向外側に成形空間110は形成されていなかったが、図10及び図11に示すようなフランジ部50を形成する場合には、当該横位置決め部300より径方向外側にも成形空間110が形成された金型100を使用することとなる。
【0077】
そして、この例に係るシール材1の被覆部20には、縦位置決め部200に対応する有底穴22,23と、横位置決め部300に対応する穴(以下、「外周穴25」という。)が形成されている。
【0078】
すなわち、このシール材1には、上述の図1〜図9の例と同様に、複数の上位置決め部210に対応する複数の上有底穴22、及び複数の下位置決め部220に対応する複数の下有底穴23が形成されている。また、芯材10の外周10aに沿った被覆部20の一部には、複数の横位置決め部300に対応する複数の外周穴25が形成されている。
【0079】
上述の図1〜図9の例と同様に、これら有底穴22,23及び外周穴25の数、配置及び形状は、縦位置決め部200及び横位置決め部300の数、配置及び形状に対応したものとなっている。すなわち、図10及び図11に示す例において、外周穴25は、被覆部20の上面20cから下面20dまで貫通する穴であるが、これに限られず、シール材1の製造に使用された横位置決め部300の形状に応じて、例えば、当該上面20c又は下面20dに形成された有底穴とすることもできる。
【符号の説明】
【0080】
1 シール材、10 芯材、10a 外周、10b 内周、10c 上面、10d 下面、20 被覆部、20a 外周、20b 内周、20c 上面、20d 下面、21 貫通穴、22 上有底穴、22a 底部、23 下有底穴、23a 底部、24 外周窪み、24a 最深部、25 外周穴、30 基部、40 リップ部、41 上リップ部、42 下リップ部、50 フランジ部、51 貫通穴、100 金型、101 挿通穴、110 成形空間、110a 外周、110b 内周、110c 上面、110d 下面、120 上型、130 下型、131 押出用穴、140 中型、141 固定具、150 押出部材、151 基台部、152 押出部、200 縦位置決め部、210 上位置決め部、220 下位置決め部、300 横位置決め部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内の成形空間において芯材をゴム材料で被覆して、前記芯材と、前記芯材を被覆する前記ゴム材料からなる被覆部と、を有するシール材を製造する方法であって、
前記芯材を前記成形空間の縦方向における所定位置に保持する縦位置決め部と、前記芯材を前記成形空間の横方向における所定位置に保持する横位置決め部と、を有する前記金型を準備し、
前記金型の前記成形空間において、前記ゴム材料より硬い材料からなる前記芯材を、前記縦位置決め部及び前記横位置決め部によって、前記縦方向の所定位置及び前記横方向の所定位置に保持するとともに、前記芯材の周囲に溶融した前記ゴム材料を配置し、次いで、前記芯材の周囲で前記ゴム材料を硬化する
ことを特徴とするシール材の製造方法。
【請求項2】
前記金型は、前記芯材を前記縦方向の所定位置に保持するよう前記芯材を挟持する複数の前記縦位置決め部と、前記芯材を前記横方向の所定位置に保持するよう前記芯材の外周に当接する複数の前記横位置決め部と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載されたシール材の製造方法。
【請求項3】
前記金型は、その間に前記成形空間が形成されるよう前記縦方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置される第一型及び第二型を有し、
複数の前記縦位置決め部は、前記第一型から前記他方側に突出する複数の第一縦位置決め部と、複数の前記第一縦位置決め部に対向するよう前記第二型から前記一方側に突出する複数の第二縦位置決め部と、を有する
ことを特徴とする請求項2に記載されたシール材の製造方法。
【請求項4】
前記金型の前記芯材の外周に対応する位置に縦方向に複数の穴が形成され、
複数の前記横位置決め部は、複数の前記穴に挿通されて前記芯材の外周に当接する複数の部材である
ことを特徴とする請求項2又は3に記載されたシール材の製造方法。
【請求項5】
前記芯材はリング状であり、
前記被覆部は、前記芯材を被覆する基部と、前記基部と一体的に形成され前記基部の内周側及び/又は外周側に延設された延設部と、を有するリング状である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載されたシール材の製造方法。
【請求項6】
前記芯材は金属製である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載されたシール材の製造方法。
【請求項7】
前記シール材はガスケットである
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載されたシール材の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された方法により製造され、
前記芯材と、前記芯材を被覆する前記ゴム材料からなる被覆部と、を有する
ことを特徴とするシール材。
【請求項9】
前記被覆部には、前記縦位置決め部に対応する有底穴と、前記横位置決め部に対応する窪み又は穴が形成されている
ことを特徴とする請求項8に記載されたシール材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−77877(P2012−77877A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225407(P2010−225407)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】