説明

シール構造

【課題】ガスや流体のリークが発生しにくいシール構造を提供することを目的とする。
【解決手段】シール部材300を介して第1の部材100と第2の部材100の接合面をシールするシール構造であって、前記シール部材300を収納するために前記第1の部材の接合面に設けられた溝110を有し、前記溝110の側面120に凹部122が形成されている、シール構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材を用いたシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
Oリングシール構造は、2つの部材の接合部において、ガスや流体のリークを抑制するために用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−69792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のOリングシール構造は、高圧下で用いると、Oリングが溝から2つの部材の隙間にはみ出し、Oリングに亀裂が生じ、その結果、ガスや流体がリークするという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも1つを解決し、ガスや流体のリークが発生しにくいシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
シール部材を介して第1の部材と第2の部材の接合面をシールするシール構造であって、前記シール部材を収納するために前記第1の部材の接合面に設けられた溝を有し、前記溝の側面に凹部が形成されている、シール構造。
この適用例によれば、シール部材は、押されて溝の凹部に収まるので、溝から2つの部材の隙間にシール部材がはみ出しにくくなる。したがって、シール部材が損傷しにくく、ガスや流体のリークが発生しにくくすることが可能となる。
【0008】
[適用例2]
適用例1に記載のシール構造において、前記溝は、高圧側の側面と低圧側の側面とを有し、前記凹部は、前記低圧側の側面に形成されている、シール構造。
シール部材は、高圧側から低圧側に押される。この適用例によれば、凹部は低圧側の側面にあるので、押されたシール部材を、凹部に収めることが可能となる。
【0009】
[適用例3]
適用例2に記載のシール構造において、さらに、前記凹部の底と前記低圧側の外部空間とをつなぐバイパス通路を備える、シール構造。
この適用例によれば、凹部の底を低圧にできるので、シール部材は、凹部に収まりやすくなる。
【0010】
[適用例4]
適用例1から適用例3のいずれかに記載のシール構造において、前記凹部の曲率と前記シール部材の曲率は、同じ大きさである、シール構造。
この適用例によれば、シール部材は凹部に収まるときに変形をしないので、シール部材が溝から2つの部材の隙間にはみ出しにくくなる。
【0011】
[適用例5]
適用例1から適用例4のいずれかに記載のシール構造において、前記溝の側面は、前記凹部と前記接合面との間に、前記接合面に対して垂直な垂直側面有する、シール構造。
この適用例によれば、第1の部材からシール部材へのダメージを抑えることが可能となる。
【0012】
[適用例6]
適用例5に記載のシール構造において、前記垂直側面と前記凹部との境界において、前記凹部を為す面と前記垂直側面との為す角が鈍角である、シール構造。
この適用例によれば、シール部材が傷つきにくい。
【0013】
[適用例7]
適用例1から適用例6のいずれかに記載にシール構造において、さらに、前記溝の底面に、第2の凹部が形成されている、シール構造。
この適用例によれば、シール部材は、第2の凹部方向にも押されるので、溝から2つの部材の隙間にはみ出しにくくなる。
【0014】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、シール構造の他、リーク抑制方法、様々な形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1の実施例:
図1は、2つの配管の接合部の構造を模式的に示す説明図である。図1(a)は、配管の方向と平行な面で切った断面図であり、図1(b)は、2つの配管を図1(a)の下方から見た平面図である。図1には、2つの配管100、200と、Oリング300と、ボルト400と、ナット410とが表されている。2つの配管100、200は、フランジ105、205を有している。ボルト400とナット410は、フランジ105、205において、2つの配管100、200を接合している。一方の配管100の、配管200との接合面150には、溝110が設けられている。Oリング300は、溝110に収納されている。Oリング300は、ボルト400とナット410による締め付けにより、配管100と配管200の両方に接し、配管100、200を流れる流体のリークを抑制している。
【0016】
図2は、Oリング近傍を詳しく説明する説明図である。図2(a)に示す実施例では、溝110は、接合面150に形成されている。溝110は、2つの側面120、130と底面140により形成されている。側面120は、低圧側の側面であり、側面130は、高圧側の側面である。低圧側の側面120には、凹部122が形成されている。溝110の内部には、Oリング300が収納されている。Oリング300は、配管100内外の圧力差により生じる力Fにより、低圧側の側面120に押されている。ここで、側面120には、凹部122が形成されているため、Oリング300の一部が、凹部122に嵌っている。また、Oリング300の配管200近傍の一部302は、配管100と配管200の隙間500にはみ出ている。
【0017】
図2(b)は、比較例を示している。比較例では、側面120に凹部122が形成されていない点が異なる。Oリング300は、側面120方向に押されて、押し潰されている。また、Oリング300の配管200近傍の一部302bは、配管100と配管200の隙間500にはみ出ている。このとき、比較例における一部302bのはみ出しの大きさは、実施例における一部302のはみ出しの大きさよりも大きくなっている。すなわち、実施例の方が比較例よりOリング300が隙間500にはみ出しにくい。したがって、Oリング300に亀裂などの損傷が発生しにくく、ガスや流体のリークが発生しにくい。
【0018】
実施例の方が比較例よりOリング300が隙間500にはみ出しにくい理由については、明確にはわかっていないが、例えば、以下の理由が考えられる。(1)比較例では、図2(b)に示すように、Oリング300がW、X、Yの3点で支持されているのに対し、実施例では、図2(a)に示すように、Oリング300が、W、X、Y、Zの4点で支持されている。その結果、Oリング300にかかる応力が分散する。(2)比較例では、圧力差により生じる力Fは、隙間500方向への力F1に集中するのに対し、実施例では、圧力差により生じる力Fは、隙間500方向への力F1と、凹部122方向への力F2に分散される。(3)Oリング300が潰されて変形すると、その変形分は隙間500方向に流れるが、実施例では、側面120に凹部122があるため、Oリング300が変形しにくく、隙間500方向に流れる変形分が少ない。
【0019】
図3は、隙間500と凹部122の間の構造を説明する説明図である。凹部122は、接合面150から長さL1の間隔を空けて形成されている。ここで接合面150と凹部122の間の部分を側面部分124(「垂直側面」とも呼ぶ)と呼ぶ。側面部分124の長さはL1である。ここで、側面部分124の長さが0であると、凹部122と接合面150の境目の形状が楔形となり、側面部分124がOリング300を傷つける恐れがあるが、本実施例では、側面部分124の長さがL1あるので、側面部分124がOリングを傷つけにくい。したがって、ガスや流体のリークを発生しにくくすることが可能となる。また、凹部122と側面部分124の境界を点126と呼ぶ。点126において、凹部122と側面部分124の為す角θは鈍角となっていてもよい。これにより、本実施例では、点126において、Oリング300を傷つきにくくすることが可能である。したがって、ガスや流体のリークを発生しにくくすることが可能である。なお、点126は、角が落ちて丸まった形状をしていてもよい。
【0020】
以上、第1の実施例によれば、溝110の側面120に凹部122が形成されているので、Oリング300が損傷しにくく、ガスや流体のリークを発生しにくくすることが可能となる。また、凹部122が形成されている側面は、低圧側の側面120であってもよい。
【0021】
また、本実施例によれば、凹部122は、接合面150から長さL1の間隔を空けて形成されている。これにより、側面部分124がOリングを傷つけにくい。したがって、ガスや流体のリークを発生しにくくすることが可能となる。さらに、本実施例では、点126において、凹部122と側面部分124の為す角θは鈍角となっている。これにより、点126において、Oリング300を傷つきにくくすることが可能である。
【0022】
第2の実施例:
図4は、第2の実施例の構成を示す説明図である。図4(a)は配管の方向と平行な面で切った断面図であり、図4(b)は、配管100を接合面500方向から見た平面図である。第2の実施例は、凹部122の底と接合面150とをつなぐバイパス通路160を備えている点が第1の実施例と異なる。第2の実施例では、バイパス通路により、凹部122の底の圧力を下げることができる。Oリング300を凹部122に逃がすことが容易になるので、Oリング300の隙間500へのはみ出しを抑えることが出来る。その結果、Oリングの亀裂等による損傷を抑制することが出来、ガスや流体のリークを発生しにくくすることが可能となる。
【0023】
なお、バイパス通路160は、接合面150から斜めにドリルで穴を空けることにより、形成することが可能である。ここで、ドリルが接合面150で滑りやすい場合には、接合面150から垂直に浅い穴を掘り、当該穴からドリルで斜めの穴を空けることにより、バイパス通路160を形成することが可能である。
【0024】
第3の実施例:
図5は、第3の実施例の構成を示す説明図である。第3の実施例は、溝110の底面140に第2の凹部142が形成されている点が第1の実施例と異なる。第3の実施例では、溝110の底面140に第2の凹部142が形成されているので、Oリング300を第2の凹部142に逃がすことが可能となる。これにより、Oリング300の隙間500へのはみ出しを抑えることが可能となる。なお、Oリングシール構造では、Oリング300につぶし代を与えることにより接触圧力を生じさせる。そして、Oリングシール構造の最大接触圧力はこの接触圧力に密閉すべき圧力を加えたものになる。したがって、底面140に第2の凹部142が形成されていても、第2の凹部142の大きさが、第2の凹部142とOリング300との間に接触圧力が生じるような大きさであれば、シールは可能である。
【0025】
変形例:
図6は、凹部122の形状のバリエーションを示す説明図である。本実施例では、凹部122の形状が三角形(図6(a))であったが、他の形状であってもよい。例えば、図6(b)に示す矩形、図6(c)に示す台形、図6(d)に示す円弧形であってもよい。なお、円弧形の場合には、円弧の曲率と、Oリングの曲率が同じであることが好ましい。こうすると、Oリング300が凹部122に抑えられたときにOリング300が変形しにくいので、Oリング300の隙間500へのはみ出しを抑えることが出来る。
【0026】
本実施例では、シール部材としてOリング300を用いたが、シール部材の形状は他の形状であってもよい。シール部材としては、Oリング300の他に、例えば、Cリング、Dリング、Xリングなど様々な形状のシール部材を用いることが可能である。
【0027】
本実施例では、バイパス通路160は、凹部122の底と接合面150とをつないでいるが、凹部122の底と配管100の低圧側の外部とをつなぐ通路であれば、接合面150以外の場所であってもよい。
【0028】
本実施例では、配管100と配管200の接合部を例にとり説明したが、例えば、配管と燃料電池の接合部、燃料電池のセパレータ膜電極接合体の接合部にも適用することが可能である。また、本実施例では、内部側が高圧になる場合を説明したが、逆に、内部側が低圧になる場合であっても用いることができる。例えば、上記説明した構造を、防水シールの構造として用いることも可能である。
【0029】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】2つの配管の接合部の構造を模式的に示す説明図である。
【図2】Oリング近傍を詳しく説明する説明図である。
【図3】隙間500と凹部122の間の構造を説明する説明図である。
【図4】第2の実施例の構成を示す説明図である。
【図5】第3の実施例の構成を示す説明図である。
【図6】凹部122の形状のバリエーションを示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
100…配管
105…フランジ
110…溝
120…側面
122…凹部
124…側面部分
126…点
130…側面
140…底面
142…第2の凹部
150…接合面
160…バイパス通路
200…配管
300…Oリング
302…一部
302b…一部
400…ボルト
410…ナット
500…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール部材を介して第1の部材と第2の部材の接合面をシールするシール構造であって、
前記シール部材を収納するために前記第1の部材の接合面に設けられた溝を有し、
前記溝の側面に凹部が形成されている、シール構造。
【請求項2】
請求項1に記載のシール構造において、
前記溝は、高圧側の側面と低圧側の側面とを有し、
前記凹部は、前記低圧側の側面に形成されている、シール構造。
【請求項3】
請求項2に記載のシール構造において、さらに、
前記凹部の底と前記低圧側の外部空間とをつなぐバイパス通路を備える、シール構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のシール構造において、
前記凹部の曲率と前記シール部材の曲率は、同じ大きさである、シール構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のシール構造において、
前記溝の側面は、前記凹部と前記接合面との間に、前記接合面に対して垂直な垂直側面有する、シール構造。
【請求項6】
請求項5に記載のシール構造において、
前記垂直側面と前記凹部との境界において、前記凹部を為す面と前記垂直側面との為す角が鈍角である、シール構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載にシール構造において、さらに、
前記溝の底面に、第2の凹部が形成されている、シール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−53990(P2010−53990A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220838(P2008−220838)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】