説明

シール装置

【課題】半径方向のシール部材の利点を、軸方向のシール部材の省スペースの利点と結びつけるようなシール装置を提供する。
【解決手段】シール装置(1)であって、2つの構成部分(2,3)と、弾性的に変形可能なシール部材(4)とを有しており、該シール部材(4)は、前記両構成部分(2,3)の間に配置されていて、両構成部分(2,3)を互いに軸方向にプレス嵌めすることによって、シール作用を有する圧縮された最終状態となるように、軸方向の押込み方向(6)に対して横方向で変形可能である形式のものにおいて、シール部材(4)は軸方向で、比較的細い中央区分(4a)と、比較的太い2つの端部区分(4b)とを有した横断面を有しており、シール部材(4)の圧縮変形された最終状態では中央区分(4a)が、軸方向の押込み方向(6)に対して横方向に変形されていることを特徴とするシール装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式のシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
差込結合部をシールするために、通常、半径方向に作用するシール原理を有するシール装置が使用される。半径方向で使用できる構成スペースが小さすぎる場合、軸方向で作用するシール部材が、半径方向の構成スペースにおいて有利である。半径方向のシール部材では、通常、3つのシールリップが、コネクタ内室のシールを行う。
【0003】
図2aには、リング状の軸方向シール部材21を有した公知のシール装置20が示されている。この軸方向シール部材21は、シールすべき2つの構成部分23,24の間の、例えば差込結合部の雄型コネクタと雌型コネクタとの間のリング室22内に配置されていて、圧縮される。両構成部分23,24を押込み方向25で互いにプレス嵌めすることにより、シール部材21は、押込み方向25に対して横方向で、中間室22をシールする最終状態となるように変形する(図2b)。シールするためには、押込み力Fと極めて僅かな押込み距離Dとが必要である。軸方向シール部材21はブロック状シール部材として形成されていて、これにより、シール作用を得るために、僅かな軸方向の押込み距離しかない。さらに、構成部分23,24にはそれぞれ1つのシールエッジしかない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、半径方向のシール部材の利点を、軸方向のシール部材の省スペースの利点と結びつけるようなシール装置を提供することである。同時に、両シールシステム(半径方向/軸方向)の欠点を回避するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために本発明の構成では、シール部材は軸方向で、比較的細い中央区分と、比較的太い2つの端部区分とを有した横断面を有しており、シール部材の圧縮変形された最終状態では中央区分が、軸方向の押込み方向に対して横方向に変形されているようにした。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の特徴を備えた本発明によるシール装置は以下のような利点を有している。
・押込み距離の延長。
・軸方向で延長された押込み距離と半径方向での誤差範囲にわたる、2つの構成部分の確実なシール。
・複数のシールエッジによるシール作用の向上。
・延長された押込み距離により増大する所要の力が僅かである。
・軸方向及び半径方向での所要スペースが僅かである。
【0007】
詳しく述べるならば、2つの構成部分の間でのシール部材の規定された再現可能なジオメトリックな変形により、所要の力の増大は僅かでありながら押込み距離は延長することができる。それぞれ2つのシールリップを有する輪郭の雄型コネクタと雌型コネクタに対するシール部材の端面の形状により、半径方向での誤差範囲を越えてシール作用が得られる。さらに、このようなシールリップにより、規定された半径方向位置へのシール部材の配向が行われる。
【0008】
シール部材のジオメトリにより、リング室内で、構成部分とシール部材との間に複数のシールエッジが形成される。これにより、差込結合部へのシール作用は著しく向上される。本発明によるシール装置により、軸方向のシール部材により公知の高い差し込み力が回避され、半径方向のシール部材により公知であるような重複したシールエッジが付け加えられる。
【0009】
本発明のさらなる利点及び有利な構成は、明細書、図面、請求の範囲に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に図面につき本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1に示された差込結合部のシール装置1は、互いにガイドし合う2つの構成部分(雄型コネクタと雌型コネクタ)2,3と、弾性的に変形可能なリングシール4とを有している。リングシール4は、両構成部分2,3の間のリング室5に配置されている。図示の実施例では構成部分3(雄型コネクタ)は構成部分(雌型コネクタ)2内でガイドされており、矢印6(図1b)の方向で構成部分2内へと押込み可能である。押込み方向6で互いに向かい合って位置する構成部分2,3の端面は、符号2aと3aで示されており、リング室5を半径方向内側若しくは外側で制限する構成部分2の端壁は符号2bで示されている。
【0012】
リングシール4は四角形リングシールとして形成されており、押込み方向6、即ち軸方向で、細い中央区分4aと太い端部区分4bとを備えたダンベル状の横断面を有している。端部区分4bは、軸方向の端面でそれぞれ2つのシールリップ7を有している。換言すればリングシール4は、軸方向で縦長の四角形リングシールである。
【0013】
図1aに示したように、押込み過程の開始時には、リングシール4は、両端部区分4bで構成部分2,3の端面2a,3aと構成部分2の内側の端壁2bに当接している。両構成部分2,3を互いに押し込むことにより、リングシール4の中央区分4aは半径方向外側へと変形され、これによりリングシール4は、中間室5をシールするように圧縮された最終状態へと変形される(図1b)。この変形により、図2bよりも延長された押込み距離Dでかかる押込み力は僅かにしか上昇しない。即ち、2つの構成部分2,3の間における、このような規定され再生可能なリングシール4のジオメトリックな変形により、僅かな力の増加のもとで、延長された押込み距離Dが得られる。両構成部分2,3は少なくとも、リングシール4の中央区分4aが、両端部区分4bを越えて半径方向外側に突出するまで互いにプレス嵌めされる。図1aに示したように、リング室の半径方向の幅は、プレス変形されていないリングシール4の中央区分4aよりも少なくとも25%、有利には少なくとも50%広い。
【0014】
2つのシールリップ7を備えた輪郭を有する、2つの構成部分2,3に向かうリングシール4の端面の形状は、半径方向での誤差範囲を越えるシール性を提供する。さらにこのようなシールリップ7はリングシール4を所定の半径方向位置へと方向付ける。リングシール4のジオメトリにより、2つの構成部分2,3とリングシール4との間に複数のシールエッジ8が生じる。これにより、差込結合部へのシール作用の著しい向上が得られる。詳しく言うならば、両端部区分4bの両シールリップ7はそれぞれ、シールエッジ8を形成しながら、端面2a,3aに当接し、この場合、半径方向内側のシールリップ7は、さらに別のシールエッジ8を形成しながら、構成部分2の内側の側面2bにも当接する。
【0015】
図示されていない別の構成では、押込み過程の開始時に、リングシール4はその両端部区分4bで構成部分2,3の端面2a,3aと、構成部分2の外側の側壁2bに当接する。両構成部分2,3を互いにプレス嵌めすることにより、リングシール4の中央区分4aは半径方向内側に向かって変形し、これによりリングシール4は、中間室5をシールするように圧縮された最終状態となるように変形する。両端部区分4bの両シールリップ7はそれぞれシールエッジ8を形成しながら端面2a,3aに当接し、この場合、半径方向外側のシールリップ7は、さらに別のシールエッジ8を形成しながら、構成部分2の外側の側面2bにも当接する。
【0016】
軸方向で縦長の四角形リングシール4により、軸方向シールにより公知の高い差し込み力は減じられ、半径方向シールにより公知であるような重複したシールエッジが付け加えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】プレス変形されていないリングシール(図1a)とプレス変形されたリングシール(図1b)を備えた、本発明による差込結合部のシール装置を示した図である。
【図2】プレス変形されていないリング状の軸方向シール部材(図2a)とプレス変形された軸方向シール部材(図2b)とを備えた、先行技術による差込結合部のシール装置を示した図である。
【符号の説明】
【0018】
1 シール装置、 2 構成部分(雌型コネクタ)、 2a 端面、 2b 端壁、 3 構成部分(雄型コネクタ)、 3a 端面、 4 リングシール、 4a 中央区分、 4b 端部区分、 5 リング室、 6 押込み方向、 7 シールリップ、 8 シールエッジ、 20 シール装置、 21 軸方向シール部材、 23,24 構成部分、 25 押込み方向、 D 押込み距離、 F 押込み力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール装置(1)であって、2つの構成部分(2,3)と、弾性的に変形可能なシール部材(4)とを有しており、該シール部材(4)は、前記両構成部分(2,3)の間に配置されていて、両構成部分(2,3)を互いに軸方向にプレス嵌めすることによって、シール作用を有する圧縮された最終状態となるように、軸方向の押込み方向(6)に対して横方向で変形可能である形式のものにおいて、
シール部材(4)は軸方向で、比較的細い中央区分(4a)と、比較的太い2つの端部区分(4b)とを有した横断面を有しており、シール部材(4)の圧縮変形された最終状態では中央区分(4a)が、軸方向の押込み方向(6)に対して横方向に変形されていることを特徴とするシール装置。
【請求項2】
シール部材(4)が両構成部分(2,3)の間で室(5)内に配置されており、該室(5)は、軸方向の押込み方向(6)に対して横方向に、少なくとも25%、有利には少なくとも50%、圧縮変形されていないシール部材(4)の中央区分(4a)よりも幅広である、請求項1記載のシール装置。
【請求項3】
シール部材(4)が環状のシール部材であって、特にリングシールである、請求項1又は2記載のシール装置。
【請求項4】
シール部材(4)の両端部区分(4b)が、両軸方向端面でそれぞれ複数のシールリップ(7)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のシール装置。
【請求項5】
シール部材(4)が、軸方向で縦長の四角形シール部材である、請求項1から4までのいずれか1項記載のシール装置。
【請求項6】
シール部材(4)が、それぞれ複数のシールエッジ(8)で、両構成部分(2,3)の軸方向端面(2a,3a)と、一方の構成部分(2)の側壁(2b)に当接している、請求項1から5までのいずれか1項記載のシール装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−298288(P2008−298288A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140962(P2008−140962)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】