説明

ジアクリルアマイド系重合性物質を含むゲルポリマー電解液、及びこれを含む電気化学素子

【課題】液体電解液を含む二次電池とほぼ同一の容量及びサイクル特性を有しながらも、厚さ膨張現象を大いに抑制して漏液を防止し、結果的に電池の寿命及び安全性を大いに向上できるゲルポリマー電解液を含む二次電池を提供する。
【解決手段】架橋重合体を形成するための前駆体として、ジアクリルアマイド系化合物を含んでゲルポリマー電解液を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアクリルアマイド系重合性物質を含むゲルポリマー電解液、及びそれを含む二次電池に関するもので、一層詳細には、電解液溶媒に特定のジアクリルアマイド系重合性物質を含有することで、厚さ膨張現象が大いに減少し、電池の漏液を防止することで、安全性が向上した二次電池を提供する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発及び需要が増加するにつれて、エネルギー源としての電池の需要が急激に増加しており、多様な要求に相応できる電池に対する研究が大いになされている。特に、エネルギー密度、放電電圧、出力安定性などに優れたリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池などのリチウム二次電池に対する需要が高い。
【0003】
一般的に、リチウム二次電池は、電解液の形態によって、液体電解液をそのまま含むリチウムイオン電池と、液体電解液をゲルなどの形態で含むリチウムイオンポリマー電池と、固体電解質のリチウムポリマー電池とに分類される。特に、リチウムイオンポリマー電池(またはゲルポリマー電池)は、液体電解液に比べて漏液可能性が低いので、安全性が高く、電池形状の超薄化及び軽量化が可能であるという長所を有するので、その使用量が増加している。
【0004】
代表的なリチウムイオンポリマー電池の製造方式としては、電解液を含浸する基材の形態によって、非架橋型高分子電池製造方式及び直接架橋型高分子電池方式がある。高分子基材物質としては、ラジカル重合反応性に優れたアクリレート系及びメタクリレート系物質と、電気伝導度に優れたエーテル系物質などが主に用いられている。特に、後者の直接架橋型高分子電池製造方式は、電極板と多孔性分離膜からなるジェリーロールまたはスタック型電極組立体をパウチに入れ、熱によって重合可能なPEO(polyethylene oxide)系単量体またはオリゴマー架橋剤と電解液組成物を注入した後、熱硬化によって電池を製造する方法である。このような電池は、従来のリチウムイオン電池の極板及び分離膜をそのまま使用するという製造工程上の長所を有する。しかしながら、架橋剤が硬化せずに電解質内に残存する場合、粘度増加によって均一な含浸が難しくなるので、電池の特性が大いに低下すると知られている。
【0005】
また、上記のようなゲルポリマー電解液を含む二次電池は、電極組立体に電解液が均一に分布されないことから、充放電時に負極から析出されるリチウム金属によって局部的な電池の厚さ膨張現象(swelling)が発生し、電解液の漏液によって電池の安全性が低下するという問題点を有する(図1を参照)。
【0006】
したがって、電池の性能を維持しながらも厚さ膨張現象を防止することで、電池の安全性を確保できる技術に対し、その必要性が高まりつつある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点及び技術的課題を解決することを目的とする。
【0008】
本出願の発明者たちは、深度ある研究及び多様な実験を繰り広げた結果、ジアクリルアマイド系単量体及び/またはオリゴマーを用いて熱重合によってゲルポリマー電解液を製造する場合、容量面で従来の液体電解液を用いる電池とほぼ同じ性能を有しながら、電池の厚さ膨張現象を大いに抑制して漏液を防止できるので、結果的に電池の安全性を確保できることを確認した。本発明は、このような発見に基づいて完成された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るゲルポリマー電解液は、架橋重合体を形成するための前駆体としてジアクリルアマイド系化合物を含んで構成される。すなわち、前駆体としてのジアクリルアマイド系化合物の架橋重合によって形成された架橋重合体を基材にして、電解液がゲルの形態で含まれることを特徴とする。
【0010】
したがって、電極組立体に対する電解液の分布が均一でないことから、充放電時に負極から析出されるリチウム金属によって表れる厚さ膨張現象を抑制し、漏液を防止することができ、結果として電解液を含む電池の安全性を向上させる。
【0011】
より具体的に、前記ジアクリルアマイド系化合物は、アクリルアマイド基を有するが、ラジカルとの反応性に優れているので、重合反応の進行度向上を通して最終ゲルポリマー電解質の電気化学的な安定性を向上できると推測される。したがって、反復的な充放電時に電極と接触する電解液の接触部位が減少するので、電極と接触する電解液の接触部位減少による電極と電解液との副反応抑制、ゲルポリマー形態に起因した蒸気圧減少などによって厚さ膨張現象を抑制する。
【0012】
また、極性官能基であるアクリルアマイド基によって、従来のゲルポリマー形態の電解質から発生していたリチウムイオンの解離及び移動低下が生じないので、電池の性能低下が最小化される。
【0013】
本発明における前記架橋重合体は、ジアクリルアマイド系単量体、そのオリゴマー、または、これら単量体とオリゴマーとの重合によって形成される架橋物を意味する。すなわち、本発明の架橋重合体は、単量体またはオリゴマー単独で架橋重合によって形成されるか、または、単量体とオリゴマーが同時に架橋重合されて形成される。ここで、“オリゴマー”は、溶液の形態で注入可能な程度の粘度を有する、2個以上の単量体からなる低重合線形高分子を意味する。
【0014】
ただし、オリゴマー化合物のみを単独で用いる場合、物性の調節が容易でなく、単量体を単独で用いる場合、所望の水準の機械的特性を得られないので、高分子状態の化合物と単量体状態の化合物とを混合して用いることが好ましい。この場合、単量体とオリゴマーとの混合比は、重量比を基準にして10:90〜90:10である。
【0015】
前記ジアクリルアマイド系化合物の好ましい例としては、下記の化学式1の単量体またはそのオリゴマーが挙げられるが、これによって限定されることはない。
【化1】

【0016】
上記の式において、R及びRは、それぞれ独立的に水素、置換または非置換のC―Cのアルキル基であり、R及びRは、一緒に結合されて飽和または不飽和環構造を形成することができ、nは、0〜4の整数で、nが0であると直接結合を意味する。
【0017】
特に、前記ジアクリルアマイド系化合物の好ましい例としては、下記の化学式2または3の単量体またはそのオリゴマーが挙げられる。
【化2】

【0018】
本発明に係る前記化合物は、その化学構造式に基づいて当業者が容易に製造できるので、本明細書では、その製造方法に対して別途に説明しない。
【0019】
一つの好ましい例として、架橋重合体を形成するための前駆体として、前記ジアクリルアマイド系化合物と重合可能な化合物をさらに含む。
【0020】
したがって、前記化合物は、ジアクリルアマイド系化合物と重合可能なものであれば特別に制限されなく、(メタ)アクリル酸エステル系化合物、不飽和カルボン酸系化合物、ビニル系化合物、またはこれらの混合物などであることが好ましいが、これらに限定されることはない。
【0021】
前記(メタ)アクリル酸エステル系化合物は、アクリレート基を含むものであれば特別に制限されなく、分子内に2個以上のアクリレート基が含まれたものである。
【0022】
一つの好ましい例として、前記分子内に2個以上のアクリレート基が含まれた(メタ)アクリル酸エステル系化合物は、ジアクリレート系化合物である。
【0023】
本発明者たちが行った実験の結果、ジアクリルアマイド系化合物の他に、ジアクリレート系化合物を一緒に用いてゲルポリマー電解液を製造すると、一層弾力的な物性を得られることが確認された。すなわち、優れた結合力のジアクリルアマイド系化合物と、優れた弾力性のジアクリレート系化合物を一緒に架橋重合体の前駆体として用いることで、各物質の電気化学的特性と機械的特性を相互補完した状態のゲルポリマー電解液を得られる。
【0024】
ここで、ジアクリレート系化合物は、ジアクリルアマイド系化合物とともに、多様な形態の共重合体(例えば、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーなど)を形成することができる。
【0025】
前記ジアクリレート系化合物の好ましい例としては、下記の化学式4の単量体またはそのオリゴマーが挙げられるが、これによって限定されることはない。
【化3】

【0026】
上記の式において、R、R及びRは、それぞれ独立的に水素、置換または非置換のC―Cのアルキル基であり、mは、1〜20の整数である。
【0027】
また、前記分子内に2個以上のアクリレート基が含まれた(メタ)アクリル酸エステル系化合物は、ジエチレングリコールジアクリレート(diethylene glycol diacrylate;Di(EG)DA)、ジエチレングリコールジメタクリレート(diethylene glycol dimethacrylate;Di(EG)DM)、エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate;EGDM)、ジプロピレングリコールジアクリレート(dipropylene glycol diacrylate;Di(PG)DA)、ジプロピレングリコールジメタクリレート(dipropylene glycol dimethacrylate;Di(PG)DM)、エチレングリコールジビニルエーテル(ethylene glycol divinyl ether;EGDVE)、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(ethoxylated(6) trimethylolpropane triacrylate;ETMPTA)、ジエチレングリコールジビニルエーテル(diethylene glycol divinyl ether;Di(EG)DVE)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethylene glycol dimethacrylate;Tri(EG)DM)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(dipentaerythritol pentaacrylate;DPentA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate;TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(trimethylolpropane trimethacrylate;TMPTM)、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(propoxylated(3) trimethylolpropane triacrylate;PO(3)TMPTA)、プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート(propoxylated(6) trimethylopropane triacrylate;PO(6)TMPTA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(poly(ethylene glycol
)diacrylate;PA1、Mn=700、化学式3を参照)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(poly(ethylene glycol)dimethaacrylate)、またはこれらの混合物などであるが、これらに限定されることはない。
【0028】
前記電解液には、重合開始剤、電解液及びリチウム塩が含まれることが好ましい。
【0029】
前記重合開始剤としては、例えば、2,2―アゾビス(2―シアノブタン)、2,2―アゾビス(メチルブチロニトリル)、2,2’―アゾイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスジメチル―バレロニトリル(AMVN)などのアゾ(azo)系列の化合物と、ベンゾイル過酸化物、アセチル過酸化物、ジラウリル過酸化物、ジ―tert―ブチル過酸化物、酸化されたクミル過酸化物、過酸化水素などの過酸化物(peroxy)系列の化合物と、ハイドロ過酸化物類などを用いるが、このうち、AIBN、2,2‘―アゾビス(2,4―ジメチルバレロニトリル)(V65)、ジ―(4―tert―ブチルシクロヘキシル)―パーオキシジカーボネート(DBC)などを用いることが好ましい。
【0030】
前記重合開始剤は、40〜80℃の所定温度で分解してラジカルを形成し、自由ラジカル重合によってモノマーと反応してゲルポリマー電解質を形成することができる。一般的に、自由ラジカル重合は、反応性の強い一時的な分子または活性点が形成される開始反応と、活性連鎖末端に単量体が付加されることで、再び鎖端に活性点が形成される成長反応と、活性点を他の分子に移動させる連鎖移動反応と、活性連鎖中心が破壊される停止反応などの過程を通して行われる。一方、重合開始剤を使用せずにも、重合可能であることは言うまでもない。
【0031】
前記電解液は、可塑剤としての役割も行い、例えば、N―メチル―2―ピロリジノン、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマ―ブチロラクトン、1,2―ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン、2―メチルテトラハイドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3―ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ホルム酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3―ジメチル―2―イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラハイドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が用いられる。これらは、一つまたは二つ以上の混合形態で用いられる。
【0032】
前記リチウム塩は、非水系電解液に溶解されてリチウムイオンが解離される物質であり、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどが用いられる。これらは、一つまたは二つ以上の混合形態で用いられる。
【0033】
また、前記電解液には、充放電特性及び難燃性などを改善するために、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n―グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N―置換オキサゾリジノン、N,N―置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2―メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されることもある。場合によっては、不燃性を与えるために四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒がさらに含まれ、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスがさらに含まれる。
【0034】
本発明に係るゲルポリマー電解液は、液状でないゲルタイプで含まれるので、電解液が電極に均一に塗布されるためには、電解液とジアクリルアマイド系化合物の架橋結合による架橋重合体との比率が重要である。
【0035】
前記ジアクリルアマイド系化合物の含量は、特別に制限されないが、電解液の全体重量を基準にして0.1〜10重量%含まれることが好ましい。
【0036】
架橋重合体の比率が0.1重量%未満である場合、ゲルポリマー形成が容易でないので、液状の電解液を用いるときに発生する電池の膨張現象が著しく表れるとともに、所定の厚さを有する基材の製造が難しくなる。その反対に、架橋重合体の比率が10重量%を超える場合、ゲルポリマーの緻密度増加によってリチウムイオンの伝達速度が減少し、リチウムの析出によって電池性能が低下するとともに、粘度の増加によって該当部位への均一な塗布が難しくなる。これは、ジアクリルアマイド系化合物にジアクリレート系化合物が添加される場合にも同様である。すなわち、ジアクリルアマイド系化合物とジアクリレート系化合物の全体重量は、電解液の全体重量を基準にして1〜10重量%で含まれることが好ましい。
【0037】
また、本発明は、前記ゲルポリマー電解液を含む電気化学素子を提供する。
【0038】
前記電気化学素子は、電気化学反応を行う全ての素子を含み、具体的な例として、全ての種類の1次電池、2次電池、燃料電池、太陽電池またはキャパシタなどであるが、このうち、二次電池であることが好ましい。
【0039】
一般的に、二次電池は、正極と負極との間に分離膜が介在された電極組立体に電解液を含んで構成することで製造される。
【0040】
前記正極は、例えば、正極集電体上に正極活物質、導電剤及びバインダーの混合物を塗布した後、乾燥及びプレッシングして製造されるが、必要によっては、前記混合物に充填剤をさらに添加することもある。
【0041】
一般的に、前記正極集電体は、3〜500μmの厚さで製造される。この正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特別に制限されることなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、塑性炭素、または、アルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが用いられる。また、集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0042】
前記正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や、1またはそれ以上の転移金属に置換された化合物と;化学式Li1+xMn2−x(ここで、xは、0〜0.33である。)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物と;リチウム銅酸化物(LiCuO)と;LiV、LiFe、V、Cuなどのバナジウム酸化物と;化学式LiNi1−x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaで、x=0.01〜0.3である。)で表現されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物と;化学式LiMn2−x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaで、x=0.01〜0.1である。)、またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである。)で表現されるリチウムマンガン複合酸化物と;化学式においてLiの一部がアルカリ土金属イオンに置換されたLiMnと;ジスルフィド化合物と;Fe(MoOなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0043】
通常、前記導電剤は、正極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして1〜50重量%で添加される。この導電剤は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特別に制限されることなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛と;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックと;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維と;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末と;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスカーと;酸化チタンなどの導電性金属酸化物と;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられる。
【0044】
前記バインダーは、活物質と導電剤などの結合と、集電体に対する結合を助ける成分であり、通常、正極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして1〜50重量%で添加される。このバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルローズ、再生セルローズ、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン―プロピレン―ジエン三元重合体(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0045】
前記充填剤は、正極の膨張を抑制する成分として選択的に用いられるもので、当該電池に化学的変化を誘発しない繊維状材料であれば、特別に制限されることなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオリフィン系重合体と、ガラス繊維及び炭素繊維などの繊維状物質が用いられる。
【0046】
前記負極は、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥して製作されるが、必要によっては、上述した成分がさらに含まれる。
一般的に、前記負極集電体は、3〜500μmの厚さで製造される。この負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特別に制限されることなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、塑性炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム―カドミウム合金などが用いられる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられる。
【0047】
前記負極活物質の例としては、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素と;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1−xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物と;リチウム金属と;リチウム合金と;ケイ素系合金と;錫系合金と;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Biなどの金属酸化物と;ポリアセチレンなどの導電性高分子と;Li−Co−Ni系材料などが用いられる。
【0048】
本発明に係る二次電池としては、例えば、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、またはリチウムイオンポリマー二次電池などがある。前記二次電池は、多様な形態で製造されるが、例えば、電極組立体は、ジェリーロール型、スタック型、スタック/フォルディング型などで製作され、電池の形態は、円筒形缶、角形缶、または、金属層及び樹脂層を含むラミネートシートの電池ケースなどに内蔵された形態である。これは、当業界で広く知られたものであるので、それに対する詳細な説明を省略する。
【0049】
上述したように、ゲルポリマー電解液は、電解液が含浸される基材として線形ポリマーを用いる方式と、架橋ポリマーを用いる方式とに区分される。前者の製造方式は、電極の表面にPEO、PAN、PVdFなどの線形ポリマーをコーティングした後、電解液を注入して含浸させる方式であり、後者の製造方式は、電極組立体を組立てた後、単量体及び/またはオリゴマーを含む電解液混合物を注液して高温でゲル化させる方式である。
【0050】
本発明に係る二次電池は、前記後者の方法で製造される。一つの好ましい例として、
(1)電極組立体を電池ケースに装着する段階と、
(2)前記架橋重合性前駆体物質、重合開始剤、電解液及び電解質塩を含む混合液を電池ケースの内部に注液する段階と、
(3)架橋重合性前駆体物質を架橋重合する段階とを含む過程によって製造される。
【0051】
一層具体的に説明すると、まず、電極組立体を電池ケースに装着し、リチウム塩が含まれた電解液(可塑剤)に重合開始剤と所定量の架橋重合性前駆体物質を添加した混合液を、前記電極組立体が装着された電池ケースに注液する。その次に、約60℃で4〜12時間の間加熱して熱重合による架橋反応を誘導すると、電解液がゲルの形態で含まれた二次電池を製造することができる。
【0052】
前記架橋重合反応は、非活性条件で行うことが好ましい。その結果、非活性雰囲気でラジカル消滅剤である大気中の酸素とラジカルとの反応が根本的に遮断されるので、未反応単量体がほとんど存在しない程度に重合反応進行度を増大させることができる。したがって、多量の未反応単量体が電池の内部に残存して生じる充放電性能の低下を防止することができる。
【0053】
前記非活性雰囲気条件は、特別に制限されるものでなく、公知された反応性の低い気体が用いられ、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム及びキセノンからなる群から選択された1種以上が用いられる。
【0054】
前記架橋重合反応によってジアクリルアマイド系化合物のアクリルアマイド基が互いに結合することで、3次元網状構造の架橋高分子が形成され、前記高分子に電解液が均一に含浸される。
【0055】
前記架橋高分子電解質は、電気化学的に安定したものであり、反復的な充放電によっても電池の内部で損傷されずに安定的に存在するので、電池安全性を向上させることができ、延伸及び曲げ特性などの機械的物性に優れている。また、電解液内のリチウムイオンが、極性を帯びるゲルポリマー電解質を通して持続的に移動及び伝達されるので、電池の性能低下が最小化される。
【0056】
また、一つの好ましい例として、上述した段階の他に、
(4)電池を活性化する化成(formation)段階と、
(5)活性化された電池を安定化させるエージング(aging)段階とをさらに含む過程によって製造される。
【0057】
前記化成段階は、反復的な充放電によって電池を活性化する工程であり、充電時に正極として用いられるリチウム金属酸化物から出たリチウムイオンが、負極として用いられるカーボン電極に移動して挿入される。このとき、反応性の強いリチウムとカーボン負極との反応によって形成されたLiCO、LiO、LiOHなどの化合物が、負極表面に固体電解質界面(solid electrolyte interface:SEI)被膜を形成する。また、前記エージング段階は、前記化成段階で活性化された電池を所定時間の間放置して安定化させる工程である。
【0058】
前記化成段階及びエージング段階の条件は、特別に制限されることなく、当業界で広く知られた通常の範囲で調節可能である。
【0059】
具体的な例として、電池ケースに前記混合液が均一に含浸されるように、注液(1次注液)後に所定時間(例えば、3時間)の間放置した後、上記のような条件で熱重合を行って活性化のために電池を充電する。活性化充電段階で、負極の保護膜形成時に発生するガスを除去し、混合液の所定量を2次注液して補充する。その次に、所定時間(例えば、12時間)の間の放置、活性化充電などを再び行い、最終的に電池を製造することができる。
【発明の効果】
【0060】
本発明に係るゲルポリマー電解液を含む二次電池は、液体電解液を含む二次電池とほぼ同一の容量及びサイクル特性を有しながらも、厚さ膨張現象を大いに抑制して漏液を防止し、結果的に電池の寿命及び安全性が大いに向上するという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下、本発明を実施例に基づいて一層詳細に説明するが、本発明の範疇がこれによって限定されることはない。
【0062】
[実施例1]
リチウム塩含有非水系電解質の製造
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を4:3:3の重量比で混合した非水系電解液溶媒にLiPFを1Mの濃度で添加し、電解液の重量を基準にして1.5重量%のビニレンカーボネート(VC)、0.5重量%のプロピレンスルホン(PS)、重合開始剤としての2mol%のAIBN、及び2重量%の前記化学式3のエチレンジアクリルアマイドを添加して非水系電解質を製造した。
【0063】
正極の製造
正極活物質としてLiCoOを使用し、95.4重量%の粒径18μmのLiCoO、1.6重量%のSuper―P(導電剤)、及び3重量%のPVDF(バインダー)組成の正極合剤を、溶剤であるNMP(N―methyl―2―pyrrolidone)に添加して正極スラリーを製造した後、アルミニウム集電体上にコーティングして正極を製造した。
【0064】
負極の製造
負極活物質として黒鉛を使用し、約3.5重量%のPVDFと一緒にNMPに添加して負極スラリーを製造した後、銅集電体上にコーティングして負極を製造した。
【0065】
リチウムイオンポリマー二次電池の製造
上記のように製造された正極と負極との間に分離膜を介在して電極組立体を製造した。その次に、前記電極組立体を角形缶に装着した後、注液口を通して前記混合液2gを注液し、523450角形電池を製造した。この角形電池を、窒素気体に置換された60℃のオーブンで4〜12時間の間加熱して架橋重合した。
【0066】
[実施例2]
エチレンジアクリルアマイドの代わりに、前記化学式2のピペラジンジアクリルアマイドと、ポリエチレングリコールジアクリレート(Mn=700、Aldrich)を2重量%さらに添加した点を除けば、実施例1と同一の方法で電池を製造した。
【0067】
[比較例1]
ピペラジンジアクリルアマイドの代わりに、ポリエチレングリコールジアクリレートを添加した点を除けば、実施例1と同一の方法で二次電池を製造した。
【0068】
[比較例2]
ピペラジンジアクリルアマイドを添加せずに、加熱工程を行っていない点を除けば、実施例1と同一の方法で二次電池を製造した。
【0069】
[実験例1]
上記の実施例1及び2と比較例1及び2でそれぞれ製造された各電池を1C、50mA(cut off)で4.2Vまで充電し、1C放電を3V(cut off)まで行い、常温で500サイクルを繰り返して実施した。一方、前記各電池の容量チェックは、電池製造後、常温で5日間エージングした後で行い、容量チェック直後にサイクルテストを行った。
【0070】
300〜500サイクルの間の充電容量の変化と電池厚さの変化をそれぞれ測定し、その結果を図2に示した。
【0071】
図2に示すように、本発明に係る各電池(実施例1及び2)は、ゲルポリマー電池システムであるにもかかわらず、従来技術の液体電解液電池システムであるリチウムイオン二次電池(比較例2)とほぼ同一の容量を有することが分かる。
【0072】
また、本発明に係る各電池(実施例1及び2)は、従来技術のリチウムイオン二次電池(比較例2)のみならず、ジアクリレート系物質からなる他のリチウムイオンポリマー電池(比較例1)と比較したとき、厚さ膨張が著しく小さいことが分かる。
【0073】
より具体的に説明すると、本発明に係る実施例1及び2の各電池は、200サイクルで約5.65及び5.60mmの厚さを示す反面、比較例1及び2の各電池は、約5.75〜5.80mmの厚さを示すことで、最大0.2mmの大きい厚さ差を示すことが分かる。特に、架橋重合前駆体としてジアクリルアマイド系化合物とジアクリレート系化合物を一緒に用いた実施例2の電池において、厚さ増加が著しく小さいことが分かる。
【0074】
本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、上記の内容に基づいて本発明の範疇内で多様に応用及び変形可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】従来の角形電池においてサイクル進行によって発生する電池厚さ増加現象を示した図である。
【図2】実施例及び比較例で製造された電池を用いた実験例1の実験において、サイクル増加による充電容量の変化及び電池セル厚さの変化を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋重合体を形成するための前駆体として、ジアクリルアマイド系化合物を含む、ゲルポリマー電解液。
【請求項2】
前記架橋重合体が、ジアクリルアマイド系単量体及び/またはオリゴマーの架橋反応によって形成されることを特徴とする、請求項1に記載のゲルポリマー電解液。
【請求項3】
前記ジアクリルアマイド系化合物が、下記の化学式1で表示される単量体またはそのオリゴマーであることを特徴とする、請求項2に記載のゲルポリマー電解液。
【化1】

(上記式1において、
及びRは、それぞれ独立的に水素、置換または非置換のC―Cのアルキル基であり、
及びRは、一緒に結合されて飽和または不飽和環構造を形成することができるものであり、
nは、0〜4の整数であり、nが0である時は直接結合を意味する。)
【請求項4】
前記ジアクリルアマイド系化合物が、下記の化学式2または3の単量体またはそのオリゴマーであることを特徴とする、請求項3に記載のゲルポリマー電解液。
【化2】

【請求項5】
前記ジアクリルアマイド系化合物と重合可能な化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のゲルポリマー電解液。
【請求項6】
前記化合物が、(メタ)アクリル酸エステル系化合物、不飽和カルボン酸系化合物、ビニル系化合物からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項5に記載のゲルポリマー電解液。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸エステル系化合物が、分子内に2個以上のアクリレート基が含まれた(メタ)アクリレート系化合物であることを特徴とする、請求項6に記載のゲルポリマー電解液。
【請求項8】
前記(メタ)アクリレート系化合物が、ジアクリレート系化合物であることを特徴とする、請求項7に記載のゲルポリマー電解液。
【請求項9】
前記ジアクリレート系化合物が、下記の化学式4で表示される単量体またはそのオリゴマーであることを特徴とする、請求項8に記載のゲルポリマー電解液。
【化3】

(上記式4において、
、R及びRは、それぞれ独立的に水素、置換または非置換のC―Cのアルキル基であり、
mは、1〜20の整数である。)
【請求項10】
前記(メタ)アクリル酸エステル系化合物が、ジエチレングリコールジアクリレート(diethylene glycol diacrylate;Di(EG)DA)、ジエチレングリコールジメタクリレート(diethylene glycol dimethacrylate;Di(EG)DM)、エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate;EGDM)、ジプロピレングリコールジアクリレート(dipropylene glycol diacrylate;Di(PG)DA)、ジプロピレングリコールジメタクリレート(dipropylene glycol dimethacrylate;Di(PG)DM)、エチレングリコールジビニルエーテル(ethylene glycol divinyl ether;EGDVE)、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(ethoxylated(6) trimethylolpropane triacrylate;ETMPTA)、ジエチレングリコールジビニルエーテル(diethylene glycol divinyl ether;Di(EG)DVE)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethylene glycol dimethacrylate;Tri(EG)DM)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(dipentaerythritol pentaacrylate;DPentA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate;TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(trimethylolpropane trimethacrylate;TMPTM)、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(propoxylated(3) trimethylolpropane triacrylate;PO(3)TMPTA)、プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート(propoxylated(6) trimethylopropane triacrylate;PO(6)TMPTA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(poly(ethylene glycol)diacrylate;PA1)及びポリエチレングリコールジメタクリレート(poly(ethylene glycol)dimethaacrylate)からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項7に記載のゲルポリマー電解液。
【請求項11】
前記電解液には、重合開始剤、電解液(可塑剤)及びリチウム塩が含まれることを特徴とする、請求項1に記載のゲルポリマー電解液。
【請求項12】
前記化合物が、電解液の全体重量を基準にして1〜10重量%含まれることを特徴とする、請求項1又は10に記載のゲルポリマー電解液。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載されたゲルポリマー電解液を含んで構成されてなる、電気化学素子。
【請求項14】
前記電気化学素子が、二次電池であることを特徴とする、請求項13に記載の電気化学素子。
【請求項15】
電極組立体を電池ケースに装着する段階と、架橋重合性前駆体物質、重合開始剤、電解液及びリチウム塩を含む混合液を電池ケース内部に注液して密封する段階と、架橋重合性前駆体物質を重合する段階とを含む方法で製造されることを特徴とする、請求項14に記載の電気化学素子。
【請求項16】
電池を活性化する化成(formation)段階と、活性化された電池を安定化させるエージング(aging)段階とをさらに含む方法で製造されることを特徴とする、請求項14に記載の電気化学素子。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2008−84838(P2008−84838A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191804(P2007−191804)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【Fターム(参考)】