説明

ジアシルグリセロール・アシルトランスフェラーゼのアッセイ

本発明は、一般に、ジアシルグリセロール・アシルトランスフェラーゼ(DGAT)の生物学的活性の測定方法を提供する。具体的には、本発明は、DGATの生物学的活性を調節することができる化合物の迅速、大量スクリーニングのための方法を提供する。より具体的には、本発明は、FlashPlate(TM)技術とともに特定のミセル(micell)の使用に基づくDGAT活性を測定するためのアッセイ系を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ジアシルグリセロール・アシルトランスフェラーゼ(DGAT)の生物学的活性の測定方法を提供する。具体的には、本発明は、DGATの生物学的活性を調節することができる化合物の迅速、大量スクリーニングのための方法を提供する。より具体的には、本発明は、FlashPlate(TM)技術とともに特定のミセル(micell)の使用に基づくDGAT活性を測定するためのアッセイ系を提供する。
【背景技術】
【0002】
トリグリセリドは真核生物によって蓄えられるエネルギーの主要形態物を表す。トリグリセリド代謝における障害または不均衡は、肥満症、インスリン抵抗性症候群およびII型糖尿病、非アルコール性脂肪肝病および冠状動脈性心臓病の病因ならびにそれらの危険性の増大に係わっている(非特許文献1および非特許文献2、参照)。
さらに、高トリグリセリド血症は、しばしば、がん治療の好ましくない結末である(非特許文献3参照)。
【0003】
トリグリセリドの合成における重要な酵素は、アシルCoA:ジアシルグリセロール・アシルトランスフェラーゼ、またはDGATである。DGATは、哺乳動物組織において広範に発現され、そして小胞体において1,2−ジアシルグリセロール(DAG)と脂肪アシルCoAの結合を触媒してトリグリセリド(TG)を生成するミクロソームの酵素である(非特許文献4および非特許文献5において概説されている)。DGATが、トリグリセリド合成のための2つの主経路、グリセロールリン酸およびモノアシルグリセロール経路におけるジアシルグリセロールのトリグリセリドへのアシル化の最終段階の触媒作用を独特に制御するということが最初に考えられた。トリグリセリドは生存のためには必須であると考えられ、そしてそれらの合成は単一のメカニズムを通して生じると考えられたので、DGATの活性を阻害することによるトリグリセリド合成の阻害が大規模に探求されることはなかった。
【0004】
マウスのDGAT1をコードしている遺伝子および関連するヒトの同族体ARGP1とARGP2が、今日クローン化され、そして特性決定されている(非特許文献6;非特許文献7)。マウスDGAT1の遺伝子は、DGATノックアウトマウスを創製してDGAT遺伝子の機能をより良く解明するために使用された。
予期せぬことに、機能的なDGAT酵素を発現することが不可能なマウス(Dgat−l−マウス)が生存可能であり、そしてなお、トリグリセリドを合成することができるので、このことは、多数の触媒機構がトリグリセリド合成に寄与することを示している(非特許文献8)。トリグリセリド合成を触媒する他の酵素、例えばDGAT2およびジアシルグリセロール・トランスアシラーゼもまた、同定されている(非特許文献9および非特許文献10)。マウスにおける遺伝子ノックアウトの研究は、DGAT2が哺乳動物のトリグリセリド合成において基礎的な役割を演じており、そして生存のために必要であることを明らかにした。DGAT2欠失マウスは脂肪欠乏症となり、そして明らかに、エネルギー代謝のための基質における顕著な減少と皮膚における浸透性バリアー機能の損傷のために、誕生後まもなく死亡する(非特許文献11)。
【0005】
重要なことは、Dgat−l−マウスは、食餌に誘導される肥満症に抵抗性があり、そして痩せたままである。高脂肪食(21%脂肪)を食した場合でさえ、Dgat−l−マウスは通常の食餌(4%脂肪)を食したマウスに匹敵する体重を維持し、そして比較的低い総身体トリグリセリドレベルを有する。Dgat−l−マウスにおける肥満抵抗性は、減少したカロリー摂取によるものではなく、増大したエネルギー消費およびインスリンと
レプチンに対する減少した抵抗性の結果である(非特許文献8;非特許文献4および非特許文献12)。さらに、Dgat−l−マウスはトリグリセリドの低下した吸収率を有する(非特許文献13)。改善されたトリグリセリド代謝に加えて、Dgat−l−マウスはまた、野生型マウスに比較して、グルコース負荷後に、より低いグルコースとインスリンレベルとともに改善されたグルコース代謝を有する(非特許文献4)。
【0006】
多数の酵素がジアシルグリセロールからのトリグリセリドの合成を触媒することに寄与してするという発見は意味のあることである、何故ならば、それは、この生物化学反応の1つの触媒メカニズムを調節して、最少の好ましくない副作用により治療成績を達成する機会を与えるからである。例えば、DGAT1のヒト同族体の活性を特異的に阻害することによって、トリグリセリドへのジアシルグリセロールの変換を阻害する化合物は、肥満症、インスリン抵抗性症候群および明白なII型糖尿病、うっ血性心不全およびアテローム性動脈硬化症におけるトリグリセリドの異常代謝によって惹起される病因的影響ならびにがん治療の結末としての病因的影響を治療学的に克服するために、トリグリセリドの体濃度および吸収を低下させることに用途を見いだすことができる。
【0007】
世界中の社会において肥満症、II型糖尿病、心臓病およびがんの普及が絶えず増大しつつあるので、これらの疾病を効果的に処置および予防するために、新しい療法を開発する逼迫した必要性が存在する。したがって、DGATの活性を強力かつ特異的に阻害することができる化合物を開発することに関心がある。しかしながら、特異的なDGAT阻害剤の単離のための大量スクリーニングは、そのようなアッセイの確立に関連する技術的困難のために、これまで確立されていなかった。
【0008】
慣用のDGATアッセイは、TG pmole/min/ミクロソームタンパク質mgの次数において低い活性を有し、そして数種の他の酵素反応の生成物によって汚染される。さらにまた、DGAT触媒反応の生成物は、通常TLC分析(非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16)によるか、または扱いにくい有機溶媒抽出操作(非特許文献17)を用いることによって解明される。抽出操作および低処理量のTLC分析に伴われる多数の段階があっても、現在利用できるDGATアッセイのいずれも、高処理量スクリーニング型式では有用ではない。
【0009】
利用可能なDGATアッセイを改良する最初の努力では、Ramharack R.R.およびSpahrM.A.(特許文献1および特許文献2)は、アセトンおよびクロロホルムの組み合わせ物を含む溶媒系を使用することによってこの操作を変えた。そのような溶媒系を用いれば、通常の抽出操作は1段階抽出操作に単純化することができる。しかしながら、本発明の目的は、時間を費やす抽出段階の必要性を除くことによって高処理量スクリーニングに一層適する操作になるようアッセイをさらに単純化し、そして単一ウエル型式において実施できるアッセイを提供することである。
【特許文献1】EP 1 219 716
【特許文献2】US 2002/0127627
【非特許文献1】Lewis,et al,Endocrine Reviews(2002)23:201
【非特許文献2】Malloy and Kane,Adv Intern Med(2001)47:111
【非特許文献3】Bast,et al,Cancer Medicine,5th Ed.,(2000)B.C.Decker,Hamilton,Ontario,CA
【非特許文献4】Chen and Farese,Trends Cardiovasc Med(2000)10:188
【非特許文献5】Farese,et al,Curr Opin Lipidol(2000)11:229
【非特許文献6】Cases,et al,Proc Natl Acad sci(1998)95:13018
【非特許文献7】Oelkers,et al,J.Biol Chem(1998)273:26765
【非特許文献8】Smith,et al,Nature Genetics(2000)25:87
【非特許文献9】Buhman,J.Biol Chem,前出
【非特許文献10】Cases,et al,J.Biol Chem(2001)276:38870
【非特許文献11】Farese et al,JBC(2004)279:11767
【非特許文献12】Chen,et al,J Clin Invest(2002)109:1049
【非特許文献13】Buhman,et al,J.Biol Chem(2002)277:25474
【非特許文献14】Cases S.,et al,PNAS(1998)95:13018
【非特許文献15】Cheng D.,et al,Biochem J.(2001)359:707
【非特許文献16】Erickson S.,et al,J.Lipid Res.(1980)21:930
【非特許文献17】Coleman R.A.,et al.,Meth.Enzymology(1992)209:98
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、本発明は、FlashPlate(TM)技術とともに特定のミセルの使用に基づく、化合物の迅速、大量のスクリーニングを可能にするように具体的に適合されたDGATアッセイに関する。
【0011】
したがって、第1の態様では、本発明は、DGAT活性を測定する方法であって、該方法が、少なくとも1種のDGAT基質を含んでなるミセルをミクロソームを含んでなるDGATと接触させ、そしてこのようにして得られた反応混合液におけるトリグリセリドの生成を決定することを含んでなる方法を提供する。
【0012】
本発明の特定の実施態様では、トリグリセリドの生成は、例えばflashplateのようなシンチレートする固体支持システムを用いて決定される。
【0013】
また本発明は、試験化合物がDGAT活性を調節することができるか否かを検証する方法であって、該方法が、試験化合物の存在および不在下で、少なくとも1種のDGAT基質を含んでなるミセルをミクロソームを含んでなるDGATと接触させ、そしてこのようにして得られた反応混合液におけるトリグリセリドの生成を決定することを含んでなり、そしてここで、試験化合物の存在下でのTG生成における変化は、該化合物がDGAT活性を調節することができることを示す方法を提供する。
【0014】
その他の実施態様では、前述のスクリーニングアッセイにおけるトリグリセリドの生成が、例えばflashplateのようなシンチレートする固体支持システムを用いて決定される。
【0015】
本発明の特定の実施態様では、前述のスクリーニングアッセイは、DGATを阻害する試験化合物の能力を決定するために使用され、この場合、試験化合物の存在下でのTG生
成における減少は、該化合物がDGAT阻害剤であることを示す。
【0016】
また、本発明の目的は、本発明による方法においてDGAT基質を含んでなるミセルの使用を提供することである。
【0017】
また本発明は、本発明によるスクリーニング方法において同定された化合物の治療学的に有効な量を、それを必要とする被験者に投与することを含んでなる、DGATに関連する症状および障害を処置または予防する方法を提供する。
【0018】
配列の説明
配列番号:1はヒトDGAT1のヌクレオチド配列である。
配列番号:2はヒトDGAT1のアミノ酸配列である。
配列番号:3はヒトDGAT2のヌクレオチド配列である。
配列番号:4はヒトDGAT2のアミノ酸配列である。
【0019】
本発明は、化合物のジアシルグリセロール・アシルトランスフェラーゼ(DGAT)活性を調節する能力の迅速かつ大量のスクリーニングを可能にするアッセイにおいて、DGATの生物学的活性を測定する方法を提供する。
【0020】
「DGAT」活性とは、1,2−ジアシルグリセロールの3位にコエンザイムA活性化脂肪酸を転移してトリグリセリド分子を生成することを意味する。
【0021】
本明細書で使用されるように、用語「トリグリセリド」(TG,トリアシルグリセロールまたは中性脂肪)はグリセロールの脂肪酸トリエステルを指す。トリグリセリドは、典型的には、非極性で、かつ水不溶性である。ホスホグリセリド(またはグリセロリン脂質)は生体膜の主要脂質成分である。動物における油脂は、豊富にトリグリセリドの混合物を含む。
【0022】
本明細書で使用されるように、用語「調節する(modulate)」は機能を増大または減少させることを意味する。好ましくは、DGAT活性を調節する化合物は、少なくとも10%、より好ましくは、少なくとも25%、もっとも好ましくは、少なくとも50%調節し、そしてDGAT活性の「モジュレーター」として定義することができる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本方法は、一般に、少なくとも1種のDGAT基質を含んでなるミセルとミクロソームを含んでなるDGATとを合わせ、かくして得られた反応混合液を予定された時間インキュベートし、反応を停止し、そしてDGAT活性のインジケーターとして生成されたTGの量を決定する段階を含む。
【0024】
DGAT基質を含んでなるミセルは、好ましくは、ホスファチジルセリン濃度以下かまたはそれに等しいホスファチジルコリン濃度を有する、典型的には、ホスファチジルセリンまたはホスファチジルコリンを含んでなる、より特別には、ホスファチジルセリンとホスファチジルコリンを含んでなる、なおより特別には、ホスファチジルセリンとホスファチジルコリンを3:1のモル比で含んでなる、もっとも特別には、ホスファチジルセリンとホスファチジルコリンを3.5:1.3のモル比で含んでなる、リン脂質リポソームか
らなる。本発明の方法において一般に使用されるDGAT基質は、1,2−ジアシルグリセロール(DAG)、例えば、1−ステアロイル−2−アラキドニル−sn−グリセロールまたは1,2−ジオレオイル−sn−グリセロールおよびコエンザイムA活性化脂肪酸、例えばパルミトイル−CoAまたはオレオイル−CoAである。本発明の特定の実施態様では、DGAT基質を含んでなるミセルは、重量比1:1でホスファチジルセリンとホスファチジルコリンおよびDGAT基質としての1,2−ジオレオイル−sn−グリセロールをを含む。好適な実施態様では、ミセルは、基質としての1.6mMDAGとともにそれぞれ、1.3mMと3.5mMのホスファチジルコリンとホスファチジルセリンからなる。該DGAT基質を含んでなるミセルは、例えば、この後の実施例3において提供されるように調製され、そして後の使用のために−20℃における保存ミセルとして保存することができる。
【0025】
本発明の方法において使用されるようなミクロソームを含んでなるDGATは、昆虫細胞の過剰発現系または組織のミクロソーム調製物のいずれから得られてもよく、好ましくは、活性測定のための酵素起源は昆虫細胞の過剰発現系から得られる。
【0026】
組織のミクロソーム調製物は、典型的には、例えば、Coleman R.によって記述されるように肝臓および腸から得られる(Coleman R.,Diacylglycerol acyltransferase and monoacylglycerol acyltransferase from liver and intestine.Methods in Enzymology 1992,209:98−104)。
【0027】
昆虫細胞の過剰発現系では、例えば、DGAT酵素をコードしている核酸配列を含んでなる、市販のBac−to−Bac Baculovirus発現系のような適当な発現ベクターによりトランスフェクトされた昆虫細胞(sf9,sf21またはHigh Five細胞)の膜調製物が使用される。膜調製物は既知の手法を用いて得られ、典型的には、ホモジナイゼーション装置を用いて細胞を溶解およびホモジナイズし、そして超遠心によって総細胞膜を回収することを含む。かくして得られた膜調製物は一定分量づつ分けられ、そして後の使用のために−80℃において10%グリセロールを用いて保存できる。
【0028】
DGATとその基質との反応は、一般に、コエンザイムA活性化脂肪酸、特にオレオイル−CoAの存在下でミクロソームを含んでなるDGATを先に定義されたミセルと接触させることによって開始されるが、この場合、場合によっては、該コエンザイムA活性化脂肪酸の一部は検出可能に標識される。ここで使用されるような検出可能な標識は、放射性アイソトープ、例えば14CまたはHか、または蛍光標識物、例えばピレンデカン酸を含むことを意味する。したがって、本発明の目的は、本発明による方法における放射能標識または蛍光標識されたコエンザイムA活性化脂肪酸の使用、特に、[14C]−オレオイル−CoAまたは(1−ピレン−1−イル)デカノイル−CoAの使用を提供することである。本発明のより特定の実施態様では、[14C]−オレオイル−CoAの使用。
【0029】
反応混合液は、典型的には、室温から37℃までの範囲の温度で予定された時間、例えば5分〜180分間、より特別には、少なくとも23℃で少なくとも15分間、なおより特別には、37℃で120分間インキュベートされる。
【0030】
DGATとその基質との反応の終了は、例えば、N−エチルマレイミド、N−(7,10−ジメチル−11−オキソ−10,11−ジヒドロ−ジベンゾ[b,f][1,4]オキシアゼピン−2−イル)−4−ヒドロキシ−ベンズアミドまたはOT−13540(Masahiko Ikeda,Chinatsu Suzuki,Yasuhide Inoue:Effects of OT−13540,a potential antiobesity compound,on plasma triglyceride levels in experimental hypertriglyceridemia;XIIIth International Symposium on Atherosclerosis(Kyoto, Japan,)Sep−Oct,2003)のようなDGAT阻害剤の添加によって実施できる。あるいはまた、反応は、変性剤、例えばアルカリ性、エタノール含有停止溶液、すなわち、12.5%無水アルコール、約10%脱イオン水、1NNaOHの約2.5%、および約78.4%イソプロパノール、約19.6%n−ヘプタンおよび約2.0%脱イオン水またはクロロホルム−メタノールを含む溶液の約75%を用いて終了される。本発明の特定の実施態様では、反応は、N−エチルマレイミド、N−(7,10−ジメチル−11−オキソ−10,11−ジヒドロ−ジベンゾ[b,f][1,4]オキシアゼピン−2−イル)−4−ヒドロキシ−ベンズアミドまたはOT−13540、より特にN−エチルマレイミドを用いて終了される。
【0031】
核酸
本発明の方法において使用されるように、DGAT酵素をコードしている核酸配列は、ヒトDGAT1(配列番号:2)またはヒトDGAT2(配列番号:4)のいずれかをコードしている核酸配列、ならびにヒトDGAT1およびDGAT2の他の動物、特に他の哺乳動物、より特別には他の霊長類の同族体をコードしている核酸配列を含むことを意味する。該DGAT同族体は、典型的には、配列番号:2または配列番号:4に対して少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%、95%または98%の配列同一性を有するであろう。ここで使用されるような核酸配列は、DNA(両、ゲノムおよびcDNA)およびRNAを含む。本発明による核酸がRNAを含む場合、付随するリストにおいて示される配列への言及は、Tについて置換されたUを有するRNA等価物を指すと考えられるべきである。
【0032】
本発明の核酸は一本鎖または二本鎖であってもよい。本発明の一本鎖核酸はアンチセンス核酸を含む。かくして、配列番号:1またはその同族体に対する言及は、文脈が明らかに反対ではない限り、相補的配列を含むと理解すべきである。
【0033】
本発明のDGATのcDNA配列は、標準のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技術を用いてクローン化されてもよい。これは、配列番号:1または配列番号:3の反対の鎖において5’および3’末端に対する一対のプライマーを作成し、このプライマーを哺乳動物cDNAライブラリーから得られるmRNAまたはcDNAと接触させ、所望の領域の増幅を生じさせる条件下でポリメラーゼ連鎖反応を実施し、増幅されたフラグメントを単離し(例えば、アガロースゲルにおいて反応混合液を精製することによって)、そして増幅されたDNAを回収することを伴う。プライマーは、増幅されたDNAが適当なクローニングベクター中にクローン化できるように、適当な制限酵素認識部位を含有するよう設計することができる。
【0034】
配列番号:1または配列番号:3の配列に対して100%相同ではないが、配列番号:2または配列番号:4または本発明の他のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドは多数の方法において得ることができる。
【0035】
例えば、配列番号:1または配列番号:3の配列の部位特異的突然変異誘発が実施されてもよい。これは、例えば、ポリヌクレオチド配列が発現されようとしている特定の宿主細胞のためのコドン選択を最適化するために、サイレントコドン変化が配列に対して要求される場合に有用である。他の配列変更は、制限酵素認識部位を導入するため、またはポリヌクレオチドによってコードされているポリペプチドの性質または機能を変えるために所望されてもよい。さらなる変化は、例えば、同類置換を与えるように求められる特定の
コーディング変更を表すために所望されてもよい。
【0036】
本発明の核酸は、5’または3’末端にさらなる配列を含有してもよい。例えば、合成または天然の5’リーダー配列が本発明のポリペプチドをコードしている核酸に結合されてもよい。また付加配列は、特定の宿主細胞における本発明の核酸の転写に必要とされる5’または3’非翻訳領域を含んでもよい。
【0037】
さらに、他の動物、特に哺乳動物(例えばラットまたはウサギ)、より特にマウスを含む霊長類の、DGATの同族体が得られ、そして本発明の方法において使用されてもよい。そのような配列は、作成するか、あるいは分裂細胞から作成されたcDNAライブラリーまたは他の動物種からの組織またはゲノムDNAライブラリーを得て、そしてそのようなライブラリーを、高いストリンジェンシーに対する培地の条件(例えば、約50℃〜約60℃における0.03M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム)下で、配列番号:1または配列番号:3の全部または一部を含むプローブによりプローブすることによって得られてもよい。
【0038】
配列同一性
核酸およびポリペプチド配列の同一性パーセントは、参照配列を疑問配列と比較する市販のアルゴリズムを用いて計算することができる。次のようなプログラム(the National Center for Biotechnology Informationによって提供される)が相同性/同一性を決定するために使用されてもよい:BLAST,gapped BLAST、BLASTINおよびPSI−BLAST、これらはデフォルト(default)パラメーターとともに使用されてもよい。
【0039】
アルゴリズムGAP(Genetics Computer Group,Madison,WI)は、Needleman and Wunschアルゴリズムを使用して、マッチ(match)数を最大化し、ギャップ(gap)数を最小化する2種の完全配列を整列させる。一般に、デフォルトパラメーターは、ギャップ・クリエーション(creation)ペナルティー=12とギャップ・エクステンション(extension)ペナルティー=4により使用される。
【0040】
核酸配列またはその一部分と疑問配列との間の最良の全体的マッチを決定するためのその他の方法は、Brutlagら(Comp.App.Biosci.,6:237−245(1990))のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータープログラムの使用である。このプログラムは総配列の整列を提供する。該総配列の整列の結果は同一性パーセントにある。同一性パーセントを算出するためのDNA配列のFASTDB検索において使用される適当なパラメーターは、Matrix=Unitary、k−tuple=4、Mismatch penalty=1、Joining Penalty=30、Randomization Group Length=0、Cutoff Score=1、Gap Penalty=5、Gap Size Penalty=0.05、およびWindow Size=500またはヌクレオチド塩基における疑問配列長のいずれか短いものである。アミノ酸整列の同一性および類似性パーセントを算出する適当なパラメーターは、Matrix=PAM150、k−tuple=2、Mismatch Penalty=1、Joining Penalty=20、Randomization Group Length=0、Cutoff Score=1、Gap Penalty=5、Gap Size Penalty=0.05、およびWindow Size=500またはヌクレオチド塩基における疑問配列長のいずれか短いものである。
【0041】
ベクター
本発明の核酸配列はベクター、特に発現ベクター中に組み入れられてもよい。ベクターは適合する宿主細胞において核酸を複製するために使用されてもよい。かくして、さらなる実施態様では、本発明は、複製可能なベクター中に本発明のポリヌクレオチドを導入し、ベクターを適合する宿主細胞中に導入し、そしてベクターの複製をもたらす条件下で宿主細胞を増殖させることによって本発明のポリヌクレオチドを作成する方法を提供する。ベクターは宿主細胞から回収することができる。適当な宿主細胞は発現ベクターと関連して以下に記述される。
【0042】
好ましくは、ベクター中の本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコーディング配列の発現の提供を可能にする制御配列に作動可能に連結される、すなわち、ベクターは発現ベクターである。
【0043】
用語「作動可能に連結される」は、記述された成分がそれらの意図された様式での機能を可能にする関係において存在する並置を指す。コーディング配列に「作動可能に連結された」制御配列は、コーディング配列の発現が制御配列に適合する条件下で達成されるように結合されている。
【0044】
適当なベクターは、プロモーター配列、ターミネーターフラグメント、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および他の適当な配列を含む、適当な調節配列を含有するように選択または構築することができる。
【0045】
ベクターは、プラスミド、ウイルスの例えばファージの、ファージミドまたはバクロウイルスの、コスミド、YAC、BAC、または適当なPACであってもよい。ベクターは、遺伝子治療ベクター、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス(例えばHIVまたはMLV)に基づくベクターまたはアルファウイルスベクターを含む。
【0046】
ベクターは、該ポリヌクレオチドの発現のための複製開始点、場合によってはプロモーターおよび場合によってはプロモーターのレギュレーターとともに提供されてもよい。ベクターは1種以上の選択可能なマーカー遺伝子、例えば細菌プラスミドの場合はアンピシリン耐性遺伝子または哺乳動物ベクターのためにはネオマイシン耐性遺伝子を含有してもよい。ベクターは、例えば、RNAの生産のためにはインビトロで使用されてもよく、あるいは宿主細胞をトランスフェクトまたは形質転換するために使用されてもよい。またベクターは、例えば遺伝子治療の方法においてインビボで使用されるように適合されてもよい。種々の異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現のための系は周知である。適当な宿主細胞は、細菌、真核細胞、例えば哺乳動物および酵母、バクロウイルス系を含む。異種ポリペプチドの発現のための当該技術分野において利用できる哺乳動物細胞系は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、乳児ハムスター腎細胞、COS細胞および多くの他の細胞を含む。
【0047】
プロモーターおよび他の発現調節シグナルは、発現ベクターが設計される宿主細胞に適合するように選択されてもよい。例えば、酵母プロモーターは、S.セレビシエ(S.cerevisiae)GAL4およびADHプロモーター、S.ポンベ(S.pombe)nmt1およびadhプロモーターを含む。哺乳動物プロモーターは、カドミウムのような重金属に応答して導入できるメタロチオネイン・プロモーターを含む。ウイルスプロモーター、例えばSV40ラージT抗原プロモーターまたはアデノウイルスプロモーターもまた使用できる。すべてのこれらのプロモーターは当該技術分野では容易に利用できる。
【0048】
ベクターは、ポリペプチドが融合物として生産されるように挿入された核酸、核酸配列
、および/または宿主細胞において生産されたポリペプチドが細胞から分泌されるように分泌シグナルをコードしている核酸の発現を推進するためのプロモーターまたはエンハンサーのような他の配列を含んでもよい。
【0049】
遺伝子治療において使用する本発明のポリペプチドの生産のためのベクターは、本発明のミニ遺伝子配列を担持するベクターを含む。
【0050】
さらなる詳細は、例えば、Molecular Cloning:a Laboratory Manual:2nd edition,Sambrook et al.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、細胞中へのDNAの導入および遺伝子発現における核酸の操作のための多くの既知の技術、ならびにタンパク質の分析は、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.eds.,John Wiley & Sons,1992において詳細に記述されている。
【0051】
ベクターは、本発明のポリペプチドの発現に備えるために前記の適当な宿主細胞中に形質転換されてもよい。かくして、さらなる態様では、本発明は、ポリペプチドをコードしているコーディング配列のベクターによって発現されるような条件下で、前記の発現ベクターによって形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を培養し、そして発現されたポリペプチドを回収することを含む、本発明によるポリペプチドの製造方法を提供する。また、ポリペプチドはインビトロ系、例えば網状赤血球溶解物で発現されてもよい。
【0052】
本発明のさらなる実施態様は、本発明のポリヌクレオチドの複製および発現のためのベクターにより形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。細胞は、該ベクターに適合するように選択でき、そして例えば、細菌、酵母、昆虫または哺乳動物であってもよい。宿主細胞は、コードされたポリペプチドが生産されるような遺伝子発現のための条件下で培養されてもよい。ポリペプチドが適当なシグナルリーダーペプチドに結合されて発現される場合、それは培地中に細胞から分泌される。発現による生産後、ポリペプチドは、宿主細胞および/または場合によっては培地から単離および/または精製され、それに続いて、所望のように、例えば、1種以上のさらなる成分、例えば1種以上の製薬学的に許容できる添加物、媒質または担体を含む製薬学的組成物を含んでもよい組成物の調合において使用されてもよい。
【0053】
また、本発明によるポリヌクレオチドは、アンチセンスRNAまたはリボザイムの生産を提供するために、アンチセンス方向で前記ベクター中に挿入されてもよい。
【0054】
膜調製物
本発明の方法において使用されるような細胞膜を調製する詳細は、ある場合には、続いて起るアッセイの性質によって決定されてもよいが、典型的には、全細胞を収穫し、そして例えば、氷冷バッファー(例えば、20mMTris HCl,1mMEDTA,pH7.4,4℃)における音波処理によって細胞を破砕することを含む。得られる粗細胞溶解物は、続いて、4℃において低速遠心、例えば200xgで5分間の遠心によって細胞破片を除去される。さらなる清澄化および膜の濃厚化は、最終的には、高速遠心段階、例えば4℃で40,000xg、20分間を用いて実施され、そして得られる膜ペレットは氷冷バッファーに懸濁し、そして高速遠心段階を繰り返すことによって洗浄される。最終の洗浄された膜ペレットはアッセイバッファーに再懸濁される。タンパク質濃度は標準としてウシ血清アルブミンを用いるBradford(1976)の方法によって決定される。この膜は直ちに使用されてもよく、また後の使用のために凍結されてもよい。
【0055】
本発明の方法では、膜は、化合物の存在または不在下のいずれかでそれらのDGAT活性を調節する能力を試験するために、前述されたDGAT基質とともにインキュベートされる。DGAT活性はTG生成を測定することによって決定され、この場合、該TG生成は、例えば市販のFlashPlate(TM)のようなシンチレートする固体支持媒体を用いて、本発明のミセルにおける放射能標識されたTGの組み入れを測定することによって決定される。データはGraphPadプリズムを用いて非線形曲線にフィットされる。
【0056】
この方式において、DGAT活性を調節するアゴニストまたはアンタゴニスト化合物が同定できる。本発明の特定の目的は、DGAT活性を阻害することができる化合物を同定する、すなわち、DGATアンタゴニストを同定する方法において膜調製物を使用することである。
【0057】
治療調合物
かくして、さらに本発明は、新規な調節作用物、特に、本発明によるアッセイによって得られるアンタゴニスト、およびそのような作用物を含んでなる組成物を提供する。受容体に結合し、そしてアゴニストまたはアンタゴニスト活性を有してもよい作用物は、病因がDGAT酵素の作用を特徴とする疾病、特に、肥満症および高トリアシルグリセロールに関連する疾病を処置する方法において使用されてもよく、そしてそのような使用は本発明のさらなる態様を形成する。トリグリセリド代謝における障害または不均衡は、肥満症、インスリン抵抗性症候群およびII型糖尿病、非アルコール性脂肪肝病および冠状動脈性心臓病の病因ならびにそれに対する危険性の増大に係わっている(参照、Lewis,et al,Endocrine Reviews(2002)23:201およびMalloy and Kane,Adv Intern Med(2001)47:111)。さらに、高トリグリセリド血症は、しばしば、がん治療の好ましくない結末である(参照、Bast,et al,Cancer Medicine,5th Ed.,(2000)B.C.Decker,Hamilton,Ontario,CA)。
【0058】
また本発明は、本発明の化合物の治療学的に有効な量をそれを必要とする被験者に投与することを含む、肥満症、糖尿病、神経性食欲不振、過食症、悪液質、シンドロームX、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、高血糖症、高尿酸血症、高インスリン血症、高コレステロール血症、高脂血症、異常脂質血症(dyslipidemia)、混合異常脂質血症、高トリグリセリド血症、非アルコール性脂肪肝病、アテローム性硬化症、動脈硬化症、急性心不全、うっ血性心不全、冠状動脈病、心筋症、心筋梗塞、狭心症、高血圧症、低血圧症、卒中、虚血症、虚血性再潅流傷害、動脈瘤、再狭窄、血管狭窄、固形腫瘍、皮膚がん、黒色腫、リンパ腫、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、胃がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がん、肝がん、膀胱がん、頸がん、子宮がん、睾丸がんおよび卵巣がんからなる群から選ばれる症状または障害を処置または予防する方法を提供する。この方法および以下に提供される方法では、若干の実施態様において、本発明の化合物は第2の治療学的作用物と組み合わせて投与することができる。
【0059】
作用物は、本発明の作用物の有効な量において投与されてもよい。多くの前記症状は慢性であり、しばしば治癒不能であるので、「処置」が、一定期間、例えば数時間、数日または数週の間、症候における軽減を達成することを含み、かつ疾病の経過の進行を遅らせることを含むように意図されることは理解できる。
【0060】
そのような作用物は、製薬学的に許容できる担体または希釈剤とともに作用物を含んでなる組成物に調合されてもよい。作用物は、生理学的に機能性の誘導体、例えばエステルまたは塩、例えば酸付加塩または塩基金属塩、またはNまたはSオキシドの形態で存在してもよい。組成物はいかなる適当な投与経路および手段のために調合されてもよい。製薬
学的許容できる担体または希釈剤は、経口、直腸、鼻内、吸入、局所(口腔および舌下を含む)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮膚内、包膜内および硬膜外を含む)投与に適当な調合物において使用されるものを含む。もちろん、担体または希釈剤の選択は、作用物およびその治癒目的に依存してもよい提案される投与経路によって異なるであろう。調合物は、便利には、単位用量形態物において与えられてもよく、そして製薬学の技術において周知のいかなる方法によって製造されてもよい。そのような方法は、有効成分を1種以上の補助成分を構成する担体と混合する段階を含む。一般に、調合物は、有効成分を液状担体または微粉砕した固形担体またはその両者と均質かつ緊密に混合し、次いで、必要ならばその生産物を成形することによって製造される。
【0061】
固形組成物では、例えば、製薬級のマンニトール、ラクトース、セルロース、セルロース誘導体、例えば澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含む、慣用の非毒性固形担体が使用されてもよい。前記活性化合物は、例えば、担体としてのポリアルキレングリコール、アセチル化トリグリセリドなどを用いて坐剤として調合されてもよい。液状の製薬学的に投与できる組成物は、例えば、前記の活性化合物および場合によっては製薬学的補助剤を、担体、例えば水、食塩デキストロース水溶液、グリセロール、エタノールなど中に溶解、懸濁するなどして液剤または懸濁剤を形成することによって製造することができる。所望ならば、投与される製薬学的組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤などのような少量の非毒性補助物質、例えば酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、酢酸トリエタノールアミンナトリウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミンなどをまた含有してもよい。そのような投薬形態物を製造する実際的方法は既知であるか、または当業者には明らかである;例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,Pensylvania,15th Edition,1975、参照。
【0062】
投与される組成物または調合物は、いかなる場合にも、処置されている被験者の症候を緩和するのに有効な量において活性化合物の量を含有できる。
【0063】
非毒性担体から作成されるバランスにより0.25〜95%の範囲における有効成分を含有する投薬形態物または組成物が製造されてもよい。
【0064】
経口投与では、製薬学的に許容できる非毒性組成物は、通常に使用される添加物、例えば、製薬級のマンニトール、ラクトース、セルロース、セルロース誘導体、ナトリウムクロスカルメロース(crosscarmellose)、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどのいずれかを組み入れることによって形成される。そのような組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性調合物などの形態をとる。そのような組成物は、1%〜95%の有効成分、より好ましくは2〜50%、もっとも好ましくは5〜8%を含有してもよい。
【0065】
非経口投与は、一般に、いずれか皮下、筋肉内または静脈内の注射を特徴とする。注射剤は、液状の液剤または懸濁剤として、注射前の、液体における水溶液または懸濁液に適当な固形形態物として、または乳剤として、いずれかの慣用の形態物において製造することができる。適当な添加物は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールまたは類似のものである。さらに、所望ならばまた、投与される製薬学的組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤などのような少量の非毒性補助物質、例えば酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、酢酸トリエタノールアミンナトリウムなどを含有してもよい。
【0066】
そのような非経口組成物に含有される活性化合物のパーセントは、その特定の性質ならびに化合物の活性および被験者の必要性に高く依存する。しかしながら、溶液において0.1%〜10%の有効成分のパーセントが使用可能であり、そして組成物が後に前記パーセントまで希釈される固形物である場合には、より高くすることができる。好ましくは、組成物は溶液において活性作用物の0.2〜2%を含有できる。
【0067】
本発明は、次に続く実験の詳細を参照することによって、より良く理解されるであろうが、これらが、その後に続く請求項においてより完全に記述されるように本発明を単に具体的に説明するものであることを、当業者は容易に評価できる。さらに、この出願を通して、種々の公表物が引用される。これらの公表物の開示は、この出願中に引用によって組み入れられており、本発明が属する当該技術分野の状態をより完全に記述している。
【実施例】
【0068】
次の実施例は本発明を具体的に説明している。他の実施態様は、当業者にとってこれらの実施例に照らして生むことができる。
【0069】
例1:DGATの発現
DGAT、アシル−CoA:ジアシルグリセロール・アシルトランスフェラーゼは、トリグリセリド合成における重要な酵素である。DGATは、その基質としてジアシルグリセロール(DAG)と脂肪アシルCoAを使用することによって、脂肪アシル−CoAからジアシルグリセロールへのアシル残基の転移反応を触媒してTAGを生成する。
【0070】
ヒトDGAT1(配列番号:1)が、翻訳開始点、文献に記述されるようなN末端におけるFLAGタグおよび昆虫細胞における発現を改良するためにATGに先行するウイルスKozak配列(AAX)を含有するpFastBac中にクローン化された。DGATは膜タンパク質であるので、発現は、SF9細胞を用いて文献に記述されるように実施された(Cases,S.,Smith,S.J.,Zheng,Y.,Myers H.M.,Lear,S.R.,Sande,E.,Novak,S.,Collins,C.,Welch,C.B.,Lusis,A.J.,Erickson,S.K.,and Farese,R.V.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98,13018−13023)。
【0071】
例2:DGAT膜の調製
72時間トランスフェクトされたSF9細胞が遠心(13000rpm−15分−4℃)によって回収され、そして2x500mlの溶解バッファー(0.1Mスクロース、50mMKCl,40mMKHPO,30mMEDTA pH7.2)中で溶解された。細胞は細胞破砕器によってホモジナイズされた。遠心、1380rpm−15分−4℃(SN廃棄)後、ペレットは500ml溶解バッファー中に再懸濁され、そして全細胞膜が34000rpm(100000g)で60分間(4℃)超遠心によって回収された。回収された膜は溶解バッファーに再懸濁され、一定分量に分割され、そして10%グリセロールとともに−80℃で使用まで保存された。
【0072】
例3:ミセルの調製
材料
a)1,2−ジオレオイル−sn−グリセロール、10mg/ml(DAG)
窒素下でアセトニトリル溶液を蒸発させ、そして最終濃度10mg/mlにおいて
クロロホルム中で再構成する。
【0073】
b)L−α−ホスファチジルコリン、1mg/ml(PC)
最終濃度1mg/mlにおいてクロロホルム中に溶解し、そして4℃において保存
する。
【0074】
c)L−α−ホスファチジル−L−セリン、1mg/ml(PS)
最終濃度1mg/mlにおいてクロロホルム中に溶解し、そして4℃において保存
する。
【0075】
方法
厚いガラス容器中PCの10mlおよびPSの10mlに1mlDGAを添加する。窒素下で蒸発させ、そして15分間氷上に置く。このようにして得られた懸濁液を氷上で音波処理することによって10mlTris/HCl(10mM,pH7.4)中で再構成する。音波処理方法は、音波処理浴における10秒とそれに続く10秒の冷却の音波処理サイクルからなり、そしてこの音波処理サイクルを均質な溶液が得られるまで繰り返す(約15分かかる)。このようにして得られたミセルは後の使用まで−20℃において保存され、1.61mMの最終濃度でDAGを含有する。
【0076】
DGAT基質を含んでなるミセルにおいてホスファチジルセリンとホスファチジルコリンの重量比で最適な1:1を確認するために、DGATのFlashPlate(TM)アッセイにおいて種々の比率の影響が分析された。
ホスファチジルコリンとホスファチジルセリンの異なる組み合わせについて、別々の混合物が作成された。クロロホルム中ジオレオイル−sn−グリセロール(10mg/ml)、L−α−ホスファチジルコリン(1mg/ml)およびL−α−ホスファチジルセリン(1mg/ml)の保存液の一定分量がガラスバイアルにおいて合わされ、そして窒素下で蒸発され、15分間氷上に置かれた。再構成は氷上で音波処理することによって10mlTris/HCl(10mM,pH7.4)中で実施された。一定分量が−20℃で保存された。
【0077】
第1の実験のセットでは、PCの濃度はPC:PS比を変更するように変えられた。DGAT活性のためのホスファチジルコリンの最適なミセル濃度は、ミセル中3.5mMホスファチジルセリンを有する0.8mM(図2A)であった。不幸にも、この濃度は安定な、または再現可能なミセルをもたらさず、このことは、臨界のミセル濃度が到達されなかったことを示している。脂質は一般にそれらの溶解度特性に基づいて定義される。それらは非極性溶媒には容易に溶解し、実際に水には不溶性である。水における両親媒性分子の溶解度の測定値はそれらの臨界ミセル濃度(CMC)である。これは、凝集形態における分子と平衡関係にある遊離溶液中の分子の濃度として定義される。典型的な洗浄液はmM濃度範囲(3)においてCMCを有する洗剤を含有する。他方、0.8mM以上の濃度を使用することはDGAT活性を減少させる。本発明者らは、この条件では、1.6mMホスファチジルコリンが、許容できるDGAT活性をもつミセルの再現可能な形成のために最適であると結論した。
【0078】
このことは、PSの濃度がPS:PC比を変更するように変えられた第2の実験のセットにおいて確認された。1.6mMジアシルグリセロールを含有するミセルにおけるミセルのホスファチジルセリンの異なる濃度を試験することによって、3.5mMまでのDGAT活性の良好な用量応答が明らかになり、この後に、ほとんど最大のDGAT活性が達成された(図2B)。より少ないホスファチジルセリンを使用することは、活性を低下させるだけでなく、ホスファチジルコリンと類似の低い安定性で再現不可能な結果をもたらした。ホスファチジルセリンを除外することによって、ほとんど全てのDGAT活性は消失したが、このことは、ホスファチジルセリンが活性にとって極めて重要であることを示している。本発明者らは、この条件では、3.5mMホスファチジルセリンが、許容できるDGAT活性をもつミセルの再現可能な形成のために最適であると結論した。
最大活性のみならず、ミセルの形成における安定性および再現性もまた考慮すれば、最適
濃度はホスファチジルコリンとホスファチジルセリンについて、それぞれ1.3mMと3.5mMにおいて達成される。この設定において、ホスファチジルセリンはDGAT活性について、そしてホスファチジルコリンはミセルの安定化と再現性について臨界であると考えられる。
【0079】
例4:DGATのFlashPlate(TM)アッセイ
材料
a)アッセイバッファー
50mMTris−HCl(pH7.4),150mMMgCl,1mMEDT
A,0.2%BSA。
【0080】
b)N−エチルマレイミド,5M
8mlの100%DMSOの最終容量中に5gを溶解し、そして後の使用まで一定分
量づつ−20℃で保存する。
【0081】
c)基質混合液(1384穴プレート用=3840μl)
612μlミセル保存液(51μM最終)
16.6μlオレオイルCoA 9.7mM
23μl[H]−オレオイルCoA(49Ci/mmol,500μCi/ml)
3188.4μl Tris pH7.4,10mM
d)酵素混合液(1384穴プレート用=3520μl)(5μg/ml)
3508μlアッセイバッファーに対してDGAT膜保存液(1500μg/ml保
存液)の11.73μlを添加する。
【0082】
e)停止混合液(1384穴プレート用=7.68ml)(250mM)
3.456mlのDMSO 100%にN−エチルマレイミド(5M)384μlを
添加し、そしてさらに該溶液3.84mlを3.84mlのDMSO 10%により
希釈する。
【0083】
方法
膜調製物中のDGAT活性は、red shifted Basic image FlashPlate(TM)(Perkin Elmer Cat.No.SMP400)を使用して384穴型式において最終容量50μl中50μMDAG,32μg/ml
PC/PSおよび8.4μM[H]−オレオイルCoA(30nCi/ウェルの比活性において)を含有する,50mMTris−HCl(pH7.4),150mMMgCl,1mMEDTAおよび0.2%BSAにおいてアッセイされた。
詳細には、10μl酵素混合液および10μl基質混合液が、場合によっては1μlのDMSO(ブランクおよびコントロール)または試験される化合物1μlの存在下で、アッセイバッファーの30μlに添加された。この反応混合液は37℃で120分間インキュベートされ、そして酵素反応液は停止混合液20μlの添加によって停止された。プレートは密閉され、そして小胞は室温で一夜放置して沈降された。プレートは1500rpmで5分間遠心され、そしてLeadseekerにおいて測定された。
【0084】
考察
現在、真に高処理量に適合するアッセイは市販されていないが、それは多分、伝統的な酵素アッセイが、小胞調製物が膜に包埋されている酵素の自然環境を模倣するように、小胞調製物を使用するという事実によるのであろう。
【0085】
伝統的なTLC分離または溶媒抽出は、生成された放射能標識TGから放射能標識DAGまたはアシルCoAを分離するために必要である。これらの伝統的なアプローチを高処
理量スクリーニングのために不適当にさせる、生成された放射能標識TGの測定前のこのさらなる操作段階は、アッセイのサイクル時間を増加するだけでなく、またアッセイの再現性と首尾一貫した読み取りに影響を与えるかもしれない各段階であった。
【0086】
本発明のDGAT活性スクリーニングは、DGATを含んでなる膜調製物とDGAT基質を含んでなるミセルの両方が使用されるので、なお酵素の自然環境を模倣しているが、それは、放射能標識アシルCoAから生成された放射能標識TGを分離する必要のない、単一のウェル操作であるので、特にDGAT活性の大量スクリーニングのために適合されている。観察される放射ルミネセンスが、溶液中に残る放射能標識アシルCoAに対して、flashplate表面の直近に来る生成された放射活性トリアシルグリセロールからのみ生じるので、この単一のウェルスクリーニング型式が達成される。
【0087】
結論として、本発明は、時間を浪費するTLCと抽出段階の必要を除くことによって、高処理量のスクリーニングのために、より適するプラットホームを提供し、そしてより再現性があり、かつ信頼性がある結果を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】384穴FlashPlate(TM)スクリーニングアッセイを用いるDGAT活性に及ぼす阻害剤の影響。
【図2】FlashPlate(TM)スクリーニングアッセイにおいてDGAT活性に及ぼす、DGAT基質を含んでなるミセル中のホスファチジルセリン(PS)およびホスファチジルコリン(PC)の影響。固定濃度のPS(3.5mM)と種々の濃度のPCにおいて(図2A)、ならびに固定濃度のPC(1.3mM)と種々の濃度のPSにおいて(図2B)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DGAT活性を測定する方法であって、少なくとも1種のDGAT基質を含んでなるミセルをミクロソームを含んでなるDGATと接触させ、そしてこのようにして得られた反応混合液におけるトリグリセリドの生成を決定することを含んでなる、上記方法。
【請求項2】
DGAT基質を含んでなるミセルが、
−ホスファチジルセリンまたはホスファチジルコリンを含んでなるミセル;
−ホスファチジルセリンおよびホスファチジルコリンを含んでなるミセル;または
−ホスファチジルセリンおよびホスファチジルコリンを重量比で1:1において含んでなるミセル:
から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応混合液がさらにコエンザイムA活性化脂肪酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
コエンザイムA活性化脂肪酸が、パルミトイル−CoAまたはオレオイル−CoAから選ばれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該コエンザイムA活性化脂肪酸の一部が検出可能に標識されている、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
該コエンザイムA活性化脂肪酸の一部が放射能標識されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
コエンザイムA活性化脂肪酸がオレオイル−CoAであり、そして該オレオイル−CoAの一部が[H]−オレオイルCoAである、請求項3〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
DGAT基質が、ステアロイル−2−アラキドニル−sn−グリセロールまたは1,2−ジオレオイル−sn−グリセロールからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ミクロソームを含んでなるDGATが、ヒトDGAT1(配列番号:2)タンパク質を発現する昆虫細胞の膜調製物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
トリグリセリドの生成が、シンチレートする固体支持媒体を用いて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
試験化合物がDGAT活性を調節することができるか否かを検証する方法であって、試験化合物の存在および不在下で、少なくとも1種のDGAT基質を含んでなるミセルをミクロソームを含んでなるDGATと接触させ、そしてこのようにして得られた反応混合液におけるトリグリセリドの生成を決定することを含んでなり、そしてここで、試験化合物の存在下でのトリグリセリド生成における変化が、該化合物がDGAT活性を調節することができることを示す、上記方法。
【請求項12】
DGAT基質を含んでなるミセルが、
−ホスファチジルセリンまたはホスファチジルコリンを含んでなるミセル;
−ホスファチジルセリンおよびホスファチジルコリンを含んでなるミセル;
−ホスファチジルセリン濃度以下かまたはそれに等しいホスファチジルコリン濃度を含んでなるミセル;
−ホスファチジルセリンおよびホスファチジルコリンを3:1のモル比で含んでなるミセ
ル;
−ホスファチジルセリンおよびホスファチジルコリンを3.5:1.3のモル比で含んでなるミセル:
から選ばれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
反応混合液がさらにコエンザイムA活性化脂肪酸を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
コエンザイムA活性化脂肪酸が、パルミトイル−CoAまたはオレオイル−CoAから選ばれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該コエンザイムA活性化脂肪酸の一部が検出可能に標識されている、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
該コエンザイムA活性化脂肪酸の一部が放射能標識されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
コエンザイムA活性化脂肪酸がオレオイル−CoAであり、そして該オレオイル−CoAの一部が[H]−オレオイルCoAである、請求項13〜16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
DGAT基質が、ステアロイル−2−アラキドニル−sn−グリセロールまたは1,2−ジオレオイル−sn−グリセロールからなる、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
ミクロソームを含んでなるDGATが、ヒトDGAT1(配列番号:2)タンパク質を発現する昆虫細胞の膜調製物である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
トリグリセリドの生成が、シンチレートする固体支持媒体を用いて決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
病因がDGAT酵素の作用を特徴とする疾病、特に、肥満症および高トリアシルグリセロールに関連する疾病を処置する方法であって、請求項11〜20のいずれか1つに記載の方法を使用して同定された化合物の治療学的に有効な量を、それを必要とする被験者に投与することを含んでなる、上記方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−523836(P2008−523836A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547455(P2007−547455)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056739
【国際公開番号】WO2006/067071
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】