説明

ジアミノフェノチアジン組成物およびこの使用

細胞老化は、細胞老化の遅延が必要であると具体的に決定された細胞をジアミノフェノチアジンの有効量と接触させることにより遅延される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
メチレンブルーは、1876年に初めて合成されて以来、多様な医学的用途に用いられてきた。例えば、双極性躁うつ病患者をメチレンブルー300mg/日で1年間治療したところプラセボ15mg/日で治療した場合よりもうつが有意に軽減されたと報告されている(Naylor、1986年)。もう1つの例として、メチレンブルーを用量65mgで1日3回服用すると慢性腎結石症の管理において有益であると報告されている(Smith、1975年)。また、ラットにおいて、メチレンブルーを用量1mg/kgで注射したところ、脳の酸化的代謝および記憶保持が改善したこと(Callaway、2004年)、および老化により増強される酸化ストレスが、血管内皮細胞内のミトコンドリアチトクロームcオキシダーゼの欠乏と関与していること(Xin、2003年)も報告されている。
【発明の開示】
【0002】
発明者らは、しばしばチアジンとも呼ばれるメチレンブルーおよび関連するジアミノフェノチアジンが、以前報告されたメチレンブルーの治療用量よりもより低いオーダーである有効濃度で、細胞を酸化ストレスより保護して細胞老化を遅延させることができることを見出した。
【0003】
発明の要旨
本発明の1つの態様は、細胞老化を遅延させるための方法であり、該方法は、細胞老化を遅延させる必要があると具体的に決定された細胞をジアミノフェノチアジンの有効量と接触させる段階を含み、該ジアミノフェノチアジンは、構造:
【0004】
【化5】

(式中、R、R、R、R、R、R、R’、R’、R’およびR’は独立して水素、メチルまたはエチルである。)、
およびこの互変異性型を有し、該細胞は、1から100nMのジアミノフェノチアジンを含む培地中でインビトロ有糸分裂活性な細胞であり、該接触させる段階は、該細胞を該培地中で少なくとも1週間培養することを含む。
【0005】
1つの実施形態において、R、R、R、R、RおよびRは水素であり、R、R、R’、R’、R’およびR’は独立して水素またはメチルである。
【0006】
もう1つの実施形態において、該ジアミノフェノチアジンは、アズールA、アズールB、アズールC、チオニン、トルイジンブルー、メチレンブルー、ニューメチレンブルーおよび1−9−ジメチルメチレンブルーからなる群より選択される。
【0007】
1つの実施形態において、該培地は、10から100nMメチレンブルーを含む。
【0008】
1つの実施形態において、該接触させる段階は、該細胞を前記培地中で少なくとも4週間培養することを含む。
【0009】
もう1つの実施形態において、該細胞は、N−ヒドロキシルアミン、アセチルカルニチンおよびリポ酸からなる群より選択される1つまたはそれ以上のミトコンドリア保護剤とさらに接触させられる。
【0010】
本発明のもう1つの態様は、細胞老化を遅延させるための方法であり、該方法は、細胞老化を遅延させる必要があると具体的に決定された細胞をジアミノフェノチアジンの有効量と接触させる段階を含み、該アミノフェノチアジンは、式I(式中、R、R、R、R、R、R、R’、R’、R’およびR’は独立して水素、メチルまたはエチルである。)の構造およびこの互変異性型を有し、該細胞は、個体において原位置にあり、該接触させる段階は、該個体に対して該ジアミノフェノチアジンの5から500μg/日の用量を長期経口投与して有効量を提供することを含む。
【0011】
1つの実施形態において、R、R、R、R、RおよびRは、水素であり、R、R、R’、R’、R’およびR’は、独立して水素またはメチルである。
【0012】
もう1つの実施形態において、該ジアミノフェノチアジンは、アズールA、アズールB、アズールC、チオニン、トルイジンブルー、メチレンブルー、ニューメチレンブルーおよび1−9−ジメチルメチレンブルーからなる群より選択される。
【0013】
1つの実施形態において、該用量は、少なくとも30日間毎日投与される。
【0014】
1つの実施形態において、該個体は、40歳を超える年齢である。
【0015】
もう1つの実施形態において、該個体は、診断された急性疾患または急性症状を有していない。
【0016】
1つの実施形態において、該接触させる段階は、該個体にN−ヒドロキシルアミン、アセチルカルニチンおよびリポ酸からなる群より選択される1つまたはそれ以上のミトコンドリア保護剤を長期経口投与することを更に含む。
【0017】
本発明のもう1つの態様は、ジアミノフェノチアジン5から500μgの経口投与用単位用量および薬学的に許容できる賦形剤を含み、該ジアミノフェノチアジンは、式I(式中、R、R、R、R、R、R、R’、R’、R’およびR’は独立して水素、メチルまたはエチルである。)の構造またはこの互変異性型を有する。
【0018】
1つの実施形態において、R、R、R、R、RおよびRは水素であり、R、R、R’、R’、R’およびR’は独立して水素またはメチルである。
【0019】
もう1つの実施形態において、該ジアミノフェノチアジンは、アズールA、アズールB、アズールC、チオニン、トルイジンブルー、メチレンブルー、ニューメチレンブルーおよび1−9−ジメチルメチレンブルーからなる群より選択される。
【0020】
もう1つの実施形態において、該組成物は、ジアミノフェノチアジンを特定するおよびこの薬学的用途を規定するラベルと共に包装され、該用途は、細胞老化を遅延させることを含む。
【0021】
もう1つの実施形態において、該組成物は、N−ヒドロキシルアミン、アセチルカルニチンおよびリポ酸からなる群より選択される1つまたはそれ以上のミトコンドリア保護剤を更に含む。
【0022】
本発明のもう1つの態様は、細胞老化の遅延を必要とする細胞を有すると決定された個体において細胞老化を遅延させるために、有効量のジアミノフェノチアジンの使用を奨励することを含む、医薬組成物を販売するための方法である。
【0023】
本発明のもう1つの態様は、ジアミノフェノチアジン1から100nMを含む細胞培地であり、前記ジアミノフェノチアジンは、式I(式中、R、R、R、R、R、R、R’、R’、R’およびR’は独立して水素、メチルまたはエチルである。)の構造またはこの互変異性型を有する。
【0024】
1つの実施形態において、R、R、R、R、RおよびRは水素であり、R、R、R’、R’、R’およびR’は独立して水素またはメチルである。
【0025】
もう1つの実施形態において、該ジアミノフェノチアジンは、アズールA、アズールB、アズールC、チオニン、トルイジンブルー、メチレンブルー、ニューメチレンブルーおよび1−9−ジメチルメチレンブルーからなる群より選択される。
【0026】
もう1つの実施形態において、該細胞培地は、N−ヒドロキシルアミン、アセチルカルニチンおよびリポ酸からなる群より選択される1つまたは2つまたは3つのミトコンドリア保護剤を更に含む。
【0027】
(本発明の具体的態様の詳細な説明)
本発明は、細胞老化を遅延させる必要があると具体的に決定された細胞を、ジアミノフェノチアジンの有効量と接触させる段階を含む、細胞老化を遅延させるための方法を提供する。
【0028】
本発明のジアミノフェノチアジンは、構造:
【0029】
【化6】

(式中、R、R、R、R、R、R、R’、R’、R’およびR’は、独立して水素、メチルまたはエチルである。)、
およびこの互変異性型を有する。
【0030】
ジアミノフェノチアジンは、電子の非局在化により正に帯電しており、その結果、部分的な正電荷が窒素原子および硫黄原子両方の上に生じる。模式図Aは、最も単純なジアミノフェノチアジンであるチオニンの化学構造、および電子の非局在化により生成されるチオニンの3つの互変異性型を示す。
【0031】
【化7】

【0032】
本発明の1つの実施態様において、該ジアミノフェノチアジンは、式I(式中、R、R、R、R、RおよびRは水素であり、R、R、R’、R’、R’およびR’は独立して水素またはメチルである。)の構造を有する。本発明のもう1つの実施形態において、該ジアミノフェノチアジンは、アズールA、アズールB、アズールC、チオニン、トルイジンブルー、メチレンブルー、ニューメチレンブルーおよび1−9−ジメチルメチレンブルーからなる群より選択される。
【0033】
該ジアミノフェノチアジンは、細胞老化を遅延させるのに十分な量、好ましくは最小有効用量で細胞に投与される。有糸分裂細胞の場合、細胞老化を遅延させることにより細胞が有糸分裂活性のままである期間が延長される結果、該ジアミノフェノチアジンで処理していない同年齢の対照細胞と比較して、個体数が倍増する。静止期細胞の場合、細胞老化を遅延させる結果、該ジアミノフェノチアジンで処理していない同年齢の対照細胞と比較して、酸化ストレスが低減され、または細胞の活力度もしくは生存率が増大する。細胞老化の遅延において有効であるジアミノフェノチアジンの最小用量は一般に、細胞の種類および状態、培養条件、および選択されるジアミノフェノチアジンにより約1から100nMの範囲内である。特定の細胞、組織または器官に対するジアミノフェノチアジンの最適量は、実施例1に記載するような日常的な実験を用いて経験的に決定することができる。
【0034】
細胞老化の遅延が必要であると特に決定される細胞は、細胞老化に関係するいずれかの細胞であってよい。本明細書中において、単数形「1つの」および「該」は、文脈が明らかに別の様に示していない限り、単数並びに複数の両方を表す。例えば用語「細胞」は、単数または複数の細胞を含み、「少なくとも1つの細胞」という句と同等であると見なすことができる。好ましい実施形態において、該細胞は、動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞である。
【0035】
本発明の1つの実施形態において、該細胞は、培地中でインビトロ有糸分裂活性細胞である。培養された細胞の老化の遅延は、培養法の生産性を増加させ、その結果特定の用途のための細胞の数が非常に多数となるためにおよび/または細胞がその意図する用途に適した健康および活力度を有する期間を延長するために必要であり得る。該細胞は、未分化であっても、分化中であってもおよび/または分化されていてもよい。1つの実施形態において、該細胞は、人工皮膚、胚性のまたは成体の前駆細胞または幹細胞、神経細胞、造血細胞、骨髄細胞、筋細胞などのために用いられる、線維芽細胞および/またはケラチノサイトなどの異種細胞移植または自家細胞移植の療法に用いられる。特定の実施形態において、特に幹細胞についての培養条件は、0.1から20%の、好ましくは1から20%の、より好ましくは5から20%の酸素、および/または1から20mMの、好ましくは5から20mMのグルコースを含む。
【0036】
該細胞は、ジアミノフェノチアジン補充培地中で、細胞老化遅延の望ましい程度を達成するのに必要なできるだけ長い期間培養され得る。1つの実施形態において、該細胞は、少なくとも1週間ジアミノフェノチアジン補充培地中で連続的に培養され、必要であれば継代する。さらなる実施形態において、該細胞は、ジアミノフェノチアジン補充培地中で少なくとも2、4、または8週間培養される。1つの実施形態において、該細胞は、ジアミノフェノチアジン補充培地中で少なくとも12週間連続的に培養される。もう1つの実施形態において、該培地は、1から100nMのジアミノフェノチアジンを含み、および接触させる段階は、細胞を培地中で少なくとも1週間培養することを含む。
【0037】
本発明の方法は、細胞老化において得られる遅延を検出する段階をさらに含み得る。インビトロ細胞について、細胞老化における遅延は、実施例1に記載されるように、ジアミノフェノチアジン処理していない同年齢の対照細胞と比較して、ジアミノフェノチアジン処理した細胞の有糸分裂活性の持続時間および/または寿命の増加を測定することにより、直接検出することができる。細胞老化において得られる遅延は、例えば同年齢の対照細胞に対して細胞活力度における増加(例えば、市販の細胞活力度測定キット(例:Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)を用いることによる)、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン、グルタチオン(Atamna、2001年を参照)もしくはニトロチロシン(例えば、OxisResearch、オレゴン州ポートランド)などの酸化的ストレスのマーカーを測定することにより、またはローダミン123の蓄積、チトクロームcオキシダーゼ活性の低減およびミトコンドリアアコニターゼの減衰(Atamna、2000年参照)などの、ミトコンドリアにおける年齢依存的変化の遅延の検出によって推測的に検出することもできる。
【0038】
本発明の1つの実施形態において、該細胞は、ミトコンドリアを保護する用量、好ましくは最小用量の、1つまたはそれ以上のミトコンドリア保護剤とさらに接触させられる。このような薬剤は、N−ヒドロキシルアミン(例えば、Atamna、2000年;Ames,2002年;米国特許第6,455,589号)、アセチルカルニチン、およびリポ酸(例えば、Hagen,2000年)を含み、有効である最小用量は、当分野で認められた文献(本明細書に引用した刊行物など)から容易に、および/または本明細書中に開示した分析法を用いて経験的に、決定される。例として、ヒトにおけるN−ヒドロキシルアミンのミトコンドリア保護用量は、一般に約100ugから1g、好ましくは約10ugから1g、より好ましくは少なくとも100ug、より好ましくは少なくとも1mg、より好ましくは少なくとも10mg、最も好ましくは少なくとも100mgである。1つの実施形態において、該細胞はさらにアセチルカルニチンおよびリポ酸と接触させられる(例:米国特許第5,916,912号)。例として、この組み合わせのミトコンドリア保護用量は、一般にリポ酸約1から50mg/kg宿主/日と一緒のカルニチン約1から50mg/kg宿主/日、好ましくはリポ酸約10mg/kg宿主/日と一緒のカルニチン約10mg/kg宿主/日である。
【0039】
本発明のもう1つの態様は、ジアミノフェノチアジンの約1から100nMを含む細胞培地であり、該ジアミノフェノチアジンは、式I(式中、R、R、R、R、R、R、R’、R’、R’およびR’は独立して水素、メチルまたはエチルである。)の構造またはその互変異性型を有する。1つの好ましい実施態様において、R、R、R、R、RおよびRは水素であり、R、R、R’、R’、R’およびR’は独立して水素またはメチルである。もう1つの実施形態において、該ジアミノフェノチアジンはアズールA、アズールB、アズールC、チオニン、トルイジンブルー、メチレンブルー、ニューメチレンブルーおよび1−9−ジメチルメチレンブルーからなる群より選択される。いずれかの細胞培地(例えば、MEM、DMEM、PRMI−1640、ハムのF−10およびF−12培地など)は、該ジアミノフェノチアジンを補充されてよい。該細胞培地は、N−ヒドロキシルアミン、アセチルカルニチンおよびリポ酸からなる群より選択される1つまたはそれ以上のミトコンドリア保護剤を更に含むことができる。1つの実施形態において、該細胞培地はさらにアセチルカルニチンおよびリポ酸を含む。
【0040】
本発明のもう1つの実施形態において、該細胞は個体において原位置にあり、接触させる段階は、個体に対してジアミノフェノチアジンの5から500μg/日の用量を長期経口投与して有効用量を提供することを含む。原位置にある細胞の老化の遅延は、正常または早期老化に伴う効果を遅延させるために所望され得る。例えば、ヒト皮膚における線維芽細胞の老化は、コラーゲン生成の低下によって引き起こされるしわ形成および弾力性の損失などの老化の徴候を伴っている。さらに、ミトコンドリアにおける加齢による変化は移動活性の低減を伴っている(例えば、Atamna、2001年)。ある実施形態において、該個体は40歳を超える年齢である。さらなる実施形態において、該個体は50、65または70歳を超える年齢である。もう1つの実施形態において、該個体は、ミトコンドリア関連疾患、特に、MELAS、MERRF、NARP、筋神経性胃腸障害および脳症(MNGIE)、ピアソン・マーロー症候群、カーンズ・セイヤー−CPEO、レーバー遺伝性視神経症(LHON)、アミノグリコシド関連聴覚消失、難聴を伴う糖尿病などのミトコンドリア関連疾患である神経障害、心筋症または脳症を有すると診断される。もう1つの実施形態において、該個体は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病などの慢性神経変性疾患または、脳卒中などの急性神経変性疾患を有すると診断される。もう1つの実施形態において、該個体は、インスリン抵抗性または糖尿病、特にII型糖尿病を有するかまたは有すると診断される。もう1つの好ましい実施形態において、該個体は、急性疾患または急性症状、特に、ジアミノフェノチアジン療法が特定的に指示されるかまたは禁忌となる疾患および症状を有していない。このような疾患または症状の例としては、イホスファミドとメチレンブルーとの併用療法(Aeschlimann、1998年)で治療される癌、慢性腎結石症(Smith、1975年)、躁うつ精神病(Naylor、1986年)およびマラリア(Vennerstrom、1995年)が挙げられる。
【0041】
1つの実施形態において、該用量は、0.1から10.0μg/kg体重/日である。1つの好ましい実施形態において、該用量によってジアミノフェノチアジン血中濃度約1.0から100nMを達成する。他の実施形態において、該用量によってジアミノフェノチアジン脳内濃度約1.0から100nMを達成する。体重約160ポンド(lbs)で血液約5リットルを有するヒトに対して、この濃度を達成するために必要なメチレンブルー(分子量319)の1日用量は約1.6から160μgである。該経口用量は、一般に、長期間、通常は少なくとも30日間、毎日1から3回投与される。いくつかの場合において、該経口用量は長期間、すなわち少なくとも3ヶ月間、好ましくは少なくとも6ヶ月間、より好ましくは少なくとも12ヶ月間にわたって定期的に投与され、ここで、定期的とは、週に、少なくとも1回、好ましくは少なくとも2から3回、より好ましくは少なくとも7回(毎日)である。特定の実施形態において、該組成物は1日1回、2回、3回または4回投与される。さらなる実施形態において、該個体は、N−ヒドロキシルアミン、アセチルカルニチンまたはリポ酸などのミトコンドリア保護剤をさらに長期間経口投与される。もう1つの実施形態において、該個体は、アセチルカルニチンおよびリポ酸をさらに長期間経口投与される。
【0042】
ある実施形態において、該方法は、個体における得られた細胞老化の遅延を検出する段階を更に含む。原位置にある細胞に対して、細胞老化の遅延は一般に、例えば処置前と比較して向上した弾力性または増加した皮膚の厚みなどの細胞活力度における上昇;酸化ストレスのマーカーの濃度における低下;チトクロームcオキシダーゼの活性度または濃度の上昇などのミトコンドリアにおける年齢依存的変化の遅延;および/または個体における移動活性の増大;を検出することにより、推測的に検出される。
【0043】
本発明のもう1つの態様は、ジアミノフェノチアジン5から500μgの経口投与用単位用量および薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物であり、該ジアミノフェノチアジンは、式I(式中、R、R、R、R、R、R、R’、R’、R’およびR’は独立して水素、メチルまたはエチルである。)の構造またはこの互変異性型を有する。1つの実施態様において、R、R、R、R、RおよびRは水素であり、R、R、R’、R’、R’およびR’は独立して水素またはメチルである。もう1つの実施形態において、該ジアミノフェノチアジンは、アズールA、アズールB、アズールC、チオニン、トルイジンブルー、メチレンブルー、ニューメチレンブルーおよび1−9−ジメチルメチレンブルーからなる群より選択される。1つの好ましい実施形態において、該ジアミノフェノチアジンはメチレンブルーである。更なる実施形態において、該ジアミノフェノチアジンはメチレンブルーであり、単位用量は、200μg、150μg、100μg、50μg、40μg、25μgおよび10μgから選択される。経口用量は、経口投与に適したいずれかの形態において調製されてよく、その形態は、錠剤、カプセル剤、口中錠、トローチ剤、ハードキャンディ剤、散剤、定量スプレー剤、クリーム、座剤などを含む。該組成物は、ゼラチン、油などの薬学的に許容できる賦形剤と組み合わされ、また更なる有効成分を含むことができる。1つの実施形態において、該医薬組成物は、N−ヒドロキシルアミン、アセチルカルニチンおよびリポ酸からなる群より選択されるミトコンドリア保護剤を更に含む。もう1つの実施形態において、該組成物は、アセチルカルニチンおよびリポ酸を更に含む。
【0044】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、ジアミノフェノチアジンを識別し、酸化による損害および/または細胞老化の軽減のためのその使用を指示するラベルと共に包装される。
【0045】
本発明のもう1つの態様は、上述のジアミノフェノチアジンまたは上述の医薬組成物のいずれかを販売するための方法であり、該方法は、細胞老化の遅延を必要とする細胞を有すると決定された個体における細胞老化を遅延させるためのジアミノフェノチアジンの有効量の使用を促進することを含む。1つの実施形態において、該個体は、40歳を超える年齢である。1つのさらなる実施形態において、該個体は、皮膚弾力性の改善および/またはしわの減少および/またはエネルギーレベルの上昇により皮膚老化の徴候を軽減するためにサプリメントを摂取することを望み、ジアミノフェノチアジンはこうした使用のために販促される。製品ラベル、包装宣伝物、インターネット販売、テレビコマーシャル、新聞および雑誌記事などの従来のいずれかの媒体を、販売のために用いることができる。販売は一般に、細胞老化を遅延させるためのジアミノフェノチアジンの使用およびこのような使用による有望な健康上の利点(改善された皮膚の弾力性、しわの減少および/または上昇したエネルギーレベルなど)の記述を含む。
【実施例1】
【0046】
ジアミノフェノチアジンは、組織培養中のヒト肺の線維芽細胞(IMR90)の老化を遅延させる。
【0047】
正常なヒト上皮の線維芽細胞(IMR90)を、細胞集団倍化数(PDL)10.85にてCoriell Institute for Medical Researchから入手した。PDLを、log(D/D)(DおよびDは、各々採取時および播種時の細胞の密度として定義される。)として算出した。保存培養を、10%(V/V)ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ変法イーグル培地10mL(Hyclone)を含有する100mmコーニング組織培養皿で増殖させた。保存培養を、週に1回集密化に近づいたときに分割した。細胞を、37℃、5分間のトリプシン処理により採取し、速やかに完全ダルベッコ変法イーグル培地5mLに収集し、完全ダルベッコ変法イーグル培地5mLで1回洗浄し、37℃で10から15分間温置して細胞を回収可能にした。
【0048】
複製寿命に対するジアミノフェノチアジンの効果を試験するために、IMR90細胞を空気中、0.5×10/100mm皿に播種した。ジアミノフェノチアジン(メチレンブルーまたはチオニン)を10nM、100nMまたは1000nMの濃度で培地に加えた。培養物を、7日ごとに収穫し、計数し、PDLを算出した。細胞の一部を用いて新たな皿の新鮮な培地(対照)または上述の新鮮なジアミノフェノチアジン補充培地に接種した。細胞を5%酸素で培養した以外は、培養条件および方法を、同濃度のメチレンブルー(および対照条件)を用いて繰り返した。
【0049】
メチレンブルーは、空気中で少なくとも25から30の細胞集団倍化数で播種したIMR90細胞の老化を遅延させた。最適濃度は、10から100nMの間である。チオニンも100nMで有効である。メチレンブルーは、5%酸素で播種したIMR90細胞の老化をも遅延させた。5%酸素中でのPDLにおける増加は10から15の間の範囲であった。空気中の酸素濃度が約20%である一方、酸素5%はほぼ生理学的濃度であり、その結果、通常は培養中のヒト細胞に対するPDLが著しく、より多くなる。
【0050】
IMR90細胞中のミトコンドリア複合体IVの濃度は、サブユニットII(複合体全体を組み立てるために不可欠な中核サブユニット)に対する特異的抗体、ウエスタンブロット法、およびNIH画像を用いるタンパク質密度測定を用いて測定した。メチレンブルーにより、複合体IVの濃度は、同年齢の対照に比べ約30%増加した。メチレンブルーの効果は釣り鐘型であり、1000nMの濃度においてメチレンブルーは、ミトコンドリアからの複合体IVの除去を引き起こした。チオニンによる処置後にも複合体IVの増加が見られた。
【0051】
もう1つの実験において、メチレンブルー処理した細胞の老化に対する過酸化水素(H)の効果を試験した。IMR90細胞を、H処理の前に初期密度0.5×10/皿で播種し、メチレンブルー存在下で2週間増殖させた。その後、細胞を1週間毎に採取し、計数し、メチレンブルーおよび/またはH10μMを添加して、または添加せずに播種した。メチレンブルー処理せずに過酸化水素処理した細胞は、老化が加速した。これらの細胞を100nMのメチレンブルーで連続的に処理した場合、Hにより誘発された老化は、防止された。
【実施例2】
【0052】
ジアミノフェノチアジンは増殖された臍帯血造血幹細胞の老化を遅延させる。
【0053】
ヒト臍帯血(UCB)細胞は、先天性異常または悪性疾患を患う小児において、同種間幹細胞移植のための造血前駆体の魅力的な源となってきた。末梢血幹細胞または骨髄(BM)と比較してのUCB細胞の1つの主要な長所は、臍帯血移植片が引き起こす急性移植片対宿主病の発生率を低減することである。UCB細胞は収集し貯蔵するのが容易であるけれども、成人向け移植プロトコール中への使用は、1件の臍帯血収穫に含まれる前駆細胞の個数を限定することによって制限されてきた。移植までの時間が長いこと、並びに非常に初期段階の造血前駆細胞が存在することにより、血液病専門医は、臨床使用のためのUCB幹細胞用の生体外増殖プロトコールを開発することとなった。
【0054】
幹細胞研究における主な課題の1つは、原始的区画の細胞および前駆細胞を増殖させるために、造血幹細胞のエクスビボ自己複製分裂を刺激することにより、移植可能な造血幹細胞(HSC)の数を増加させることである。UCB細胞は、高い増殖能力を示し、これにより数週間以内に、造血成長因子の種々の組み合わせに応じて細胞の大規模な増殖をもたらす。異なる培地並びに異なる成長因子の最適組み合わせの混合物により、前駆細胞が効率よく増殖する結果となったが、長期間培養を開始する細胞の増幅は、より困難であった。
【0055】
Chivuら(J.Cell Mol.Med.2004 Apr−Jun;8(2):223−31)の報告を応用した一連の実験において、発明者らは、臍帯血幹細胞のインビトロ維持のための数種類の培養プロトコールにおけるジアミノフェノチアジンの有益な使用を実証する。その実証の結果は、ジアミノフェノチアジンを補充したPCMおよびBM一次培養が、インビトロ造血細胞の増殖のための改善されたサポートおよび培養開始細胞を単核細胞(MNC)分画として接種されるように長期間維持することを提供することを示す。
【0056】
細胞
血液を、機関のガイドラインに従い、通常のおよび日常の満期産時に抗凝固剤としてクエン酸リン酸デキストロースアデニンを用いて収集する。単核細胞(MNC)を、Histopaque(Sigma)(密度勾配=1.007g/ml)上で分離し、Iscoveのダルベッコ変法培地(IMDM)中に再懸濁して計数する。
【0057】
増殖培養
低密度MNCを、血清を含まない以下の組成の培地に最終濃度2×10細胞数/mlとなるように再懸濁する。該組成は、1%ウシ血清アルブミン(Merck)、5×10−4M 2−メルカプトエタノール、1%非必須アミノ酸(Gibco Life−Sciences)、2mM L−グルタミンおよび溶解したての10−6M ヒドロコルチゾンを補充したダルベッコ培地である。細胞懸濁液を24ウェルプレート(1ml/ウェル)に添加し、37℃、5%CO雰囲気中で温置する。ヒト成長因子を、滴定試験において最高の細胞増殖を提供する濃度で用いる。滴定試験では、10ng/mlインターロイキン6(Chemicon)、20ng/ml G−CSF(Hoffmann−La Roche)および2U/mlエリスロポエチン(Hoffmann−La Roche)を用いる。第2の増殖混合物は20%胎盤条件培地(PCM)(前述の方法で入手−Chivuら、J.Cell.Mol.Med.,6:609−620,2002)および2%自己血清を基礎としている。8種類のジアミノフェノチアジン(アズールA、アズールB、アズールC、チオニン、トルイジンブルー、メチレンブルー、ニューメチレンブルーおよび1−9−ジメチルメチレンブルー)の各々を、別々に、3つの一連の濃度:1nM、10nMおよび100nMで試験する。3日後、有核細胞および生存細胞の総数を、トリパンブルー排除試験を用いて測定する。
【0058】
フィーダー層の確立
事前に形作る間質を生成するために、長期的骨髄培養をマウス骨髄細胞を用いて確立する。骨髄を、同体積のPBSおよび密度勾配遠心分離により分離される単核細胞と混合する。洗浄した細胞を、間質性培地(10%ウシ胎仔血清、400UI/mlペニシリン、200mg/mlストレプトマイシンおよび1.0μmol/lヒドロコルチゾンを補充したF12培地(Sigma))に再懸濁する。細胞を、培地の半量を週2回交換しながら、37℃、5%CO雰囲気で維持する。2週間後、集密接着層由来の細胞を、トリプシン−EDTA溶液(Sigma−Aldrich)を用いる消化により回収し、更なる実験のために6ウェルプレートに移す。培養物を37℃、5%CO雰囲気中でインキュベートする。集密間質層が形成される場合、培養物を20μg/mLのマイトマイシンC(Sigma)で4時間処理し、次いで、徹底的に洗浄して薬物を除去する。最終的に細胞は生存可能で代謝的に活性であるが、細胞周期が遮断される。成長因子およびPCMを補充した更なる培養物も同様に確立される。
【0059】
フローサイトメトリー分析
標識細胞を、FACScanフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて得る。対照細胞および誘導細胞を収集し、4℃でPBS、BSA0.1%、アジ化ナトリウム0.1%中で2回洗浄し、最終的に1%パラホルムアルデヒド中に固定する。全てのサンプルの分析を、増殖の前後にCD34、CD14、CD45、CD71、HLA−DRに対する抗体(Becton Dickinson)を用いて行い、前駆細胞サブセットを分類する。1万のイベントが得られ、データをWimMDIで分析する。CD34+細胞を、リンパ球ゲートの百分率として測定する(CD45+細胞の低波長側に分布する細胞に照準を合わせ、分析を通してこれを維持する。CD14+細胞を、除外する)。
【0060】
半固形クローン分析
1×10個のUCB細胞を、30%ウシ胎児血清を補充したIMDM、10ng/mlIL−6、20ng/mlG−CSF、2U/mlエリスロポエチン,10−4M/L2−メルカプトエタノールおよび1%ウシ血清アルブミンを含む0.3%寒天培地中に平板接種する。培養皿を37℃、加湿5%CO雰囲気中で温置する。培養物を、14日後に、赤血球バースト形成単位(BFU−E)、コロニー形成単位顆粒球/マクロファージ(CFU−GM)および混合コロニー形成単位(CFU−GEMM)の存在について評価する。
【0061】
統計解析
大部分のパラメータに対して、中央値および範囲を求める。異なる条件を評価する実験を、対応のあるサンプルに対するt−検定を用いて比較する。両側p値が0.05を下回った場合、統計学的に有意であると推定される。
【0062】
CD34+細胞の増殖効率
臍帯血由来のMNCの培養は、フィーダー細胞層、外因性サイトカイン混合物(IL−6,G−CSF、エリスロポエチン)の補充、またはPCMなどの種々の増殖条件の存在下で開始する。増殖効率は、種々の細胞サブセットの増殖倍率として表され、増殖倍率は対照未処理細胞に対する細胞の増加である。
【0063】
CD34+集団のフローサイトメトリー分析により、標準サイトカインに基づくインビトロUCB増殖条件において、PCM中の定量されたナノモル濃度の各々の濃度のジアミノフェノチアジンをフィーダー層との組み合わせで用いることの明らかな利点が実証される。結果は、CD34+細胞個体数および長期培養開始細胞数の対照細胞を上回る増加を示した。ジアミノフェノチアジン処理した培養物は、ジアミノフェノチアジン処理していない同年齢の対照細胞と比較して、一貫して細胞集団倍化数の増加を実証する。
【実施例3】
【0064】
ジアミノフェノチアジンは、増殖ヒト胚性幹細胞の老化を遅延させる。
【0065】
平行した一連の実験において、発明者らは、ヒト胚性幹細胞のインビトロ維持のための培養プロトコールにおける同じジアミノフェノチアジンの有利な使用を実証する。Schuldinerら(2000年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA97,11307−11312)の報告を応用したプロトコールにおいて、ヒトES細胞(H9クローン(Thomsonら、1998、Science282、1145−1147))は、80%KnockOut DMEM(ES細胞用に最適化したダルベッコ変法イーグル培地(/BRL))、20%KnockOut SR(血清を含まない調合物(GIBCO/BRL))、1mMグルタミン(GIBCO/BRL)、0.1mM β−メルカプトエタノール(Sigma)、1%非必須アミノ酸原液(GIBCO/BRL)、4ng/ml塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)(GIBCO/BRL))および10単位/ml LIF(GIBCOBRL))中のマウス胚線維芽細胞上で成長させる。
【0066】
上述のように、8種類のジアミノフェノチアジン(アズールA、アズールB、アズールC、チオニン、トルイジンブルー、メチレンブルー、ニューメチレンブルーおよび1−9−ジメチルメチレンブルー)を、各々別々に一連の4つの濃度:1nM、10nMおよび100nMで試験する。ジアミノフェノチアジン処理した培養物は、ジアミノフェノチアジン処理していない同年齢の対照細胞と比較して、細胞集団倍化数の増加を一貫して実証する。
【実施例4】
【0067】
高齢ラットにおける飼料消費および移動活性、ならびにこれらの肝臓中の加齢による酸化的変化に及ぼす、ジアミノフェノチアジンの効果。
【0068】
方法論は、Atamnaら(2001年)の報告を応用する。若年(月齢3ヶ月、Simonsen、カリフォルニア州ギルロイ)および高齢(月齢24ヶ月、国立加齢研究所動物コロニー)の雄性Fisher344ラットを、対照群およびジアミノフェノチアジン処理群に均等に分割する。試験開始時において、各処理群は、4から5匹のラットから構成され、制御された温度(25℃)および明期/暗期12時間周期(6:00時から18:00時)条件下で、ストレスを最小限にするために大型ケージ内で一緒に飼育する。ラットには標準Purinaげっ歯類固形飼料を自由に摂取させる。メチレンブルーを、2回蒸留した水に加えて最終濃度100nMで25日間ラットに投与するが、これはラットの典型的水消費量に基づいてメチレンブルー約1から2μg/kg/日を提供しなければならない。全群とも飲用水の塩分濃度を、1μmolNaCl/mlに調節し、水酸化ナトリウムを用いて水のpHを6に調節する。メチレンブルーを含むまたは含まない新鮮な水を、毎日供給する。体重を毎週測定し、飼料および水の摂取量を、毎日測定する。飼料または水摂取量を、24時間周期毎の開始および終了時に測定し、その差をケージ内の動物数で割る。実験終了時に、ラットにエーテル麻酔して心穿刺により屠殺する。肝臓を摘出し、210mMマンニトール、70mMショ糖、5mMHEPESおよび1mMEDTAを含むpH7の氷冷ミトコンドリア単離緩衝液(MSH/EDTA)中に入れる。肝臓を直ちに均質化し、ミトコンドリア分画を分画遠心法により単離する。コハク酸塩5mM、リン酸塩(4mM)およびADP(0.15mM)で維持したミトコンドリア呼吸を、125mMKClおよび5mMTris(pH7.4)中でクラーク酸素電極(Yellow Springs Instruments、オハイオ州イエロースプリングス)を用い、4μMロテノンの存在下で測定する。
【0069】
この実験プロトコールを、未処理のまたはメチレンブルーを25日間投与した高齢ラット群(n=10)中で繰り返す。2回の実験結果を貯蔵し、データ分析する。
【0070】
移動活性を測定するために試験21日目にラットを、移動活性の測定のために個別ケージ(長さ48cm×幅25cm×高さ20cm)に移す。ラットを、モニタリング前にその新しい環境に少なくとも4時間気候順応させる。ラットには飼料および水を自由摂取させる。飼育室を、12時間明期/暗期周期とする(点灯は6:00から18:00)。20:00時にラットを、非常に強度の低い光線で照らしてビデオ追跡する。移動活性のモニタリングを、21:00時に開始して4時間続ける。1時間後に低強度光線を消し、標準明暗周期を続ける。各ラットの移動活性を、4連続夜間、記録する。各ケージの真上に吊したカメラからのビデオ信号を、多目的多地帯(Multiple Objects Multiple Zones)ソフトウェア上で動くVideomex−V(Columbus Instruments、オハイオ州コロンバス)コンピュータシステムに接続する。システムは、移動活性パラメータを定量し、校正して移動距離をセンチメートル単位で報告する。
【0071】
ラット肝臓中の遊離GSHおよびタンパク質混合ジスルフィドの濃度を測定するために、肝ホモジネートを200μL分取し、直ちに1Mメタンスルホン酸(MSA)およびDTPA2.5mMの50μL中に移し、分析時まで−80℃で保存する。MSAホモジネート由来タンパク質を高速遠心分離により沈殿させる。遊離GSHの定量のために、上澄みを用いる。ペレットを、氷冷PBS中に再懸濁することにより3回洗浄する。最終的に、ペレットを、氷冷0.1MTrisおよび50mMDTT(pH8.3)100μL中に再懸濁し、氷上で温置する。1時間温置したのち、1MMSAおよび2.5mMDTPA 20μLを加えてタンパク質を沈殿させ、GSHを安定させる。ペレットをタンパク質定量(Bio−Rad protein assay、Bio−Rad)に用いるが、この定量は、上澄みを濾過し、タンパク質中の混合ジスルフィドから遊離するGSHの定量のために用いる。いずれの上澄みとも、HPLCカラムに注入する前に30,000カットオフフィルターで濾過される。注入するタンパク質の量は、GS−SRおよび遊離GSHについて各々、5から10μgまたは1から3μgである。遊離GSHおよびDTTによる還元後にタンパク質混合ジスルフィドから遊離するGSHを、HPLC−EC検出により定量する。グルタミン酸脱水素酵素およびグルコース−6−リン酸脱水素酵素の活性を分析する。
【0072】
上述の実験を、0.1nMから100nMの血中濃度を達成するように濃度を変化させた更なるジアミノフェノチアジン(ニューメチレンブルー、1−9−ジメチルメチレンブルー、およびアズールB)を用いて繰り返す。肝臓におけるGSHレベルの低下で示される高齢ラットにおける飼料消費および移動活性の増加および/または酸化的ストレスにおける軽減をもたらすジアミノフェノチアジン処理は、ヒト臨床治験に適した試薬を提供する。
【実施例5】
【0073】
ジアミノフェノチアジンの長期投与により、50歳以上の患者における皮膚の弾力性および活性レベルが改善する。
【0074】
二重盲検無作為化担体対照試験を、年齢50から65歳の範囲の160名の被験者を対象に実施する。処置群は、25μgジアミノフェノチアジン(アズールA、アズールB、アズールC、チオニン、トルイジンブルー、メチレンブルー、ニューメチレンブルーまたは1−9−ジメチルメチレンブルー)錠剤が1日3回の食事とともに経口摂取で処方される。臨床モニタリング、主観的自己評価、皮膚弾力性、表皮水和量および皮膚表面脂質の客観的測定法を用いて、24週間中4回の来診時に各処置の効果を測定する。臨床モニタリングにはしわの本数、右目周囲のしわの深さの測定、および鼻唇溝の深さを含む。結果から、皮膚における各加齢徴候に対する対抗作用および全般的エネルギーレベルの改善における、プラセボを上回るジアミノフェノチアジン処置の一貫した効果が実証される。
【0075】
前記の実施例および詳細な記述は、例示のために提供されるのであって、制限のためにではない。本明細書中に引用する全ての刊行物および特許出願書は、各個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的および個別的に表示されるかのように、本明細書中に参照により組み込まれる。本発明は前記に、理解を明確にする目的のための例示および例のためにある程度詳細に記述してきたが、本発明を教示する観点より一定の変更および改変が本発明に対して添付の特許請求の範囲の精神または範囲を逸脱することなくなされ得ることが、当業者に容易に明らかになるであろう。
【0076】
参照文献
Aeschlimannら、“Comparative pharmacokinetics of oral and intravenous ifosfamide/mesna/methylene blue therapy.”Drug Metab Dispos.(1998)26:883−90.
AmesとAtamna、(2002)“Primary N−Hydroxylamines”米国特許第6,455,589号.
AmesとHagen,(1999)“Dietary composition for enhancing metabolism and alleviating oxidative stress”米国特許第5,916,912号.
Atamnaら、“A method for detecting abasic sites in living cells:age−dependent changes in base excision repair”Proc Natl Acad Sci USA.(2000)97:686−91.
Atamnaら、“N−t−Butyl hydroxylarnine is an antioxidant that reverses age−related changes in mitochondria in vivo and in vitro.”FASEB J.(2001)Oct;15(12):2196−204.
Callawayら、“Methylene blue improves brain oxidative metabolism and memory retention in rats.”Pharmacol Biochem Behav.(2004)77:175−81.
Hagenら、“Feeding acetyl−L−carnitine and lipoic acid to old rats significantly improves metabolic function while decreasing oxidative stress”Proc Natl Acad Sci USA.(2002)99:1870−5.
Naylorら、“A two−year double−blind crossover trial of the prophylactic effect of methylene blue in manic−depressive psychosis.”Biol Psychiatry 1986Aug;21(10):915−20.
Smith MJ,“Methylene blue in renal calculi. Results of five−year study”Urology(1975)6:676−9.
Vennerstromら、“Antimalarial dyes revisited:xanthenes,azines,oxazines,and thiazines”Antimicrob Agents Chemother.(1995)39:2671−7.
Xinら、“Senescence−enhanced oxidative stress is associated with deficiency of mitochondrial cytochrome c oxidase in vascular endothelial cells.,”Mech Ageing Dev.2003Aug−Sep;124(8−9):911−9.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞老化を遅延させるための方法であり、
前記方法は、細胞老化を遅延させる必要があると具体的に決定された細胞を、ジアミノフェノチアジンの有効量と接触させる段階を含み、前記ジアミノフェノチアジンは、構造:
【化1】

(式中、R、R、R、R、R、R、R’、R’、R’およびR’は、独立して水素、メチルまたはエチルである。)、
およびこの互変異性型を有し、
前記細胞は、1から100nMジアミノフェノチアジンを含む培地中でインビトロ有糸分裂活性な細胞であり、前記接触させる段階は、前記細胞を前記培地中で少なくとも1週間培養することを含む、前記方法。
【請求項2】
、R、R、R、RおよびRが水素であり、R、R、R’、R’、R’およびR’が独立して水素またはメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ジアミノフェノチアジンが、アズールA、アズールB、アズールC、チオニン、トルイジンブルー、メチレンブルー、ニューメチレンブルーおよび1−9−ジメチルメチレンブルーからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ジアミノフェノチアジンがメチレンブルーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
培地が、10から100nMのメチレンブルーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
接触させる段階が、前記細胞を前記培地中で少なくとも4週間培養することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
培地が、N−ヒドロキシルアミン、アセチルカルニチンおよびリポ酸からなる群より選択されるミトコンドリア保護剤の有効量を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
培地が、アセチルカルニチンおよびリポ酸の有効量を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
培地が、N−ヒドロキシルアミンの有効量を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
細胞老化を遅延させる方法であり、
前記方法は、細胞老化を遅延させる必要があると具体的に決定された細胞をジアミノフェノチアジンの有効量と接触させる段階を含み、前記ジアミノフェノチアジンは、構造:
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、R、R’、R’、R’およびR’は、独立して水素、メチルまたはエチルである。)およびこの互変異性型を有し、
前記細胞は、個体において原位置にあり、前記接触させる段階は、前記個体に対して前記ジアミノフェノチアジンの5から500μg/日の用量を長期経口投与して前記有効量を提供することを含む、前記方法。
【請求項11】
、R、R、R、RおよびRが水素であり、R、R、R’、R’、R’およびR’が独立して水素またはメチルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ジアミノフェノチアジンが、アズールA、アズールB、アズールC、チオニン、トルイジンブルー、メチレンブルー、ニューメチレンブルーおよび1−9−ジメチルメチレンブルーからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ジアミノフェノチアジンがメチレンブルーである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
用量が少なくとも30日間毎日投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
個体が40歳を超える年齢である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
個体が、診断された急性疾患または急性症状を有していない、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
接触させる段階が、個体にN−ヒドロキシルアミン、アセチルカルニチンおよびリポ酸からなる群より選択される1つのミトコンドリア保護剤を長期経口投与することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
接触させる段階が、個体にアセチルカルニチンおよびリポ酸を長期経口投与することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
接触させる段階が、個体にN−ヒドロキシルアミンを長期経口投与することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
接触させる段階が、個体にアセチルカルニチン、リポ酸およびN−ヒドロキシルアミンを長期経口投与することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
ジアミノフェノチアジン5から500μgの経口投与用単位用量および薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物であり、前記ジアミノフェノチアジンが、構造:
【化3】

(式中、R、R、R、R、R、R、R’、R’、R’およびR’は、独立して水素、メチルまたはエチルである。)
またはこの互変異性型を有する、前記医薬組成物。
【請求項22】
、R、R、R、RおよびRが水素であり、R、R、R’、R’、R’およびR’が独立して水素またはメチルである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
ジアミノフェノチアジンが、アズールA、アズールB、アズールC、チオニン、トルイジンブルー、メチレンブルー、ニューメチレンブルーおよび1−9−ジメチルメチレンブルーからなる群より選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
ジアミノフェノチアジンがメチレンブルーである、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
ジアミノフェノチアジンを識別するおよびこの薬学的用途を指示するラベルと共に包装され、前記用途が細胞老化を遅延させることを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
N−ヒドロキシルアミン、アセチルカルニチンおよびリポ酸からなる群より選択される1つのミトコンドリア保護剤を更に含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
ジアミノフェノチアジン1から100nMを含む細胞培地を含む組成物であり、前記ジアミノフェノチアジンが、構造:
【化4】

(式中、R、R、R、R、R、R、R’、R’、R’およびR’は独立して水素、メチルまたはエチルである。)、
またはこの互変異性型を有する、前記組成物。
【請求項28】
、R、R、R、RおよびRが水素であり、R、R、R’、R’、R’およびR’が独立して水素またはメチルである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
ジアミノフェノチアジンが、アズールA、アズールB、アズールC、チオニン、トルイジンブルー、メチレンブルー、ニューメチレンブルーおよび1−9−ジメチルメチレンブルーからなる群より選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
ジアミノフェノチアジンがメチレンブルーである、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
N−ヒドロキシルアミン、アセチルカルニチンおよびリポ酸からなる群より選択される1つのミトコンドリア保護剤を更に含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
アセチルカルニチンおよびリポ酸を更に含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項33】
N−ヒドロキシルアミンを更に含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項34】
N−ヒドロキシルアミン、アセチルカルニチンおよびリポ酸を更に含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項35】
組成物中で少なくとも1週間成長させた有糸分裂活性な細胞の群を更に含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項36】
細胞老化の遅延を必要とする細胞を有すると決定された個体において細胞老化を遅延させるためにジアミノフェノチアジンの有効量の使用を奨励することを含む、請求項27に記載の医薬組成物を販売するための方法。

【公表番号】特表2008−530249(P2008−530249A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556421(P2007−556421)
【出願日】平成18年2月18日(2006.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/006320
【国際公開番号】WO2006/089301
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(503037929)チルドレンズ ホスピタル アンド リサーチ センター アット オークランド (6)
【Fターム(参考)】