説明

ジアルデヒドおよびその関連化合物の新規製造方法

次の式(I)


[式中、Rは水素原子または低級アシル基であり、Rは水素原子、低級アシル基等であり、Rは低級アルキル基であり、Rは水素原子、低級アシル基等であり、Rは水素原子、低級アシル基等である]で表される化合物またはその塩の製造方法であって、
式(II)


[式中、R、R、R、R、Rは式(I)と同意義である。]で表される化合物またはその塩をオゾン酸化する工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、マクロライド系抗生物質に代表される大環状化合物を提供する際の新規製造方法に関する。さらに詳しくは、大環状化合物あるいはその誘導体を一度開環させてジアルデヒド化合物を得て、さらに当該ジアルデヒドと別の反応種を用いて再閉環する、新規かつ有用な製造方法に関する。
【背景技術】
黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、溶連菌などのグラム陽性菌、ブランハメラ菌、インフルエンザ菌などのグラム陰性菌、マイコプラズマ、および、クラミジアに有効なマクロライド系抗生物質は、安全性が高く、経口投与が可能であり、臨床上重要な抗感染症薬に分類される。天然物としてのマクロライド系抗生物質は薬物動態学的に改善の余地があったことから、これまでに薬物動態が改善されたロキタマイシン、ミオカマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシンなど優れた半合成マクロライド系抗生物質が上市された。
しかしながら、近年病原菌の遺伝子の一部に変異をもたらす耐性菌や、薬剤を病原菌の外部に排出することが可能な耐性菌が臨床現場にて出現し、抗生物質の有効性を低下させている。これに対し、半合成14員環マクロライド系抗生物質に関しては、Bioorg.Med.Chem.Lett.,44,3075〜3080,1999、J.Med.Chem.,43,1045〜1049,2000およびJ.Med.Chem.,44,4137〜4156,2001に記載の通り、構成型耐性肺炎球菌に有効な新規物質が創出されている。
これまでのマクロライド系抗生物質の誘導体研究を概観すると、アジスロマイシンを除いては天然物の骨格を抜本的に変換した化合物は殆ど知られておらず、既存の炭素骨格に付加的な化学修飾を加えることで新規有用物質を創出してきた。しかしながら、Org.Lett.,5,(4),443〜445,2003に記載の通り、最近、16員環マクロライドを骨格変換反応に付し、14員環マクロライドを構築する手法が報告された。
本発明者らも、WO03/72589に記載の通り、最近、16員環マクロライドを骨格変換反応に付して15員環アザライドを構築する手法を見出し、新規有用半合成15員環アザライド系抗生物質と共に特許出願した。

本発明者らにより報告された骨格変換反応をより詳しく説明すると、WO03/72589に記載の通り、天然物より化学誘導される16員環ラクトンを開環、再閉環を経て新規15員環アザライドを製造する際、式(VIII)で表される共役二重結合のテトラオール化、式(IX)で表されるテトラオールの酸化的開裂により式(X)で表されるジアルデヒド化合物を製造し、これを鍵中間体として用いていた。しかしながら、テトラオールに酸化する際は、環境面および健康管理面で必ずしも課題がないわけではない四酸化オスミウムを反応試薬として用いており、テトラオールの酸化的開裂に際しては、環境面および健康管理面で必ずしも課題がないわけではない四酢酸鉛を反応試薬として用いていた。また、テトラオールの酸化的開裂反応では、隣接する極性官能基を有する部位が反応点となる可能性があるため、場合によってアミノ糖部分の2位(2’位)および/または3位(3’位)は保護する必要があった。WO03/72589に記載の通り、本発明者らは、アミノ糖部分の2位(2’位)をアセチル基に代表されるアシル系置換基にて保護していた。
また、WO03/14136には、11a−アザライド化合物とその製造方法が開示されている。この方法では、エリスロマイシン誘導体の11,12位炭素−炭素結合を酸化的に切断し11a−アザライドへ導いているが、酸化剤として四酢酸鉛、過ヨウ素酸塩等の酸化剤を用いており、環境面でも、健康面でも課題が残る。さらに酸化的に切断後、部分構造変換を行い、分子内環化反応を行い目的の11a−アザライド化合物に導いている。
よって、安全な試薬を用いるか、または環境面、健康面で課題のある試薬は用いず、かつ短工程でアザライド化合物、その他関連化合物を得るための合成中間体、及び製造方法が望まれている。
【発明の開示】
本発明は、環境面、健康面で課題の残る反応試薬を用いることなく、有用な15員環アザライド化合物あるいはそれ以外にも新規で有用なマクロライド系化合物を製造するための鍵中間体であるジアルデヒド化合物およびその類縁物質を製造する新しい方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記の期待に応えるべく鋭意研究を重ねた結果、保護された16員環マクロライド誘導体をオゾン酸化に付し、環境面、健康面で課題の残る反応試薬を用いることなく、新規有用アザライド化合物を製造するために重要なジアルデヒド化合物を製造する方法を見出し、本発明の完成に至った。これまで、二重結合あるいは共役二重結合を有する化合物をオゾン酸化反応に付しアルデヒド化合物を合成した例は、多く知られているが、16員環マクロライド誘導体に当該酸化反応を応用し、さらに本法で得られたジアルデヒド化合物を用いて、再閉環を達成した事実は知られていない。
すなわち、本発明は、
(1)次の式(I)

[式中、Rは水素原子または低級アシル基であり、Rは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、または水酸基の保護基であり、Rは低級アルキル基であり、但し−CH(ORがジオキソランまたはジオキサンなどの環状構造を形成していてもよく、Rは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、または水酸基の保護基であり、Rは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、水酸基の保護基、または保護されていてもよいマイカロースである]で表される化合物またはその塩の製造方法であって、式(II)

[式中、R、R、R、R、Rは式(I)と同意義である]で表される化合物またはその塩をオゾン酸化する工程を含む方法、
(2)次の式(III)

[式中、Rは水素原子またはアセチル基であり、Rは水素原子またはアセチル基]で表される化合物またはその塩の製造方法であって、式(IV)

[式中、RおよびRは式(III)と同意義である]で表される化合物またはその塩を一段階でオゾン酸化する工程を含む方法、
(3)次の式(V)

[式中、Rは水素原子または低級アシル基であり、Rは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、または水酸基の保護基であり、Rは低級アルキル基であり、但し−CH(ORがジオキソランまたはジオキサンなどの環状構造を形成していてもよく、Rは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、または水酸基の保護基であり、Rは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、水酸基の保護基、または保護されていてもよいマイカロースであり、Rは低級アルキル基またはアラルキル基]で表される化合物またはその塩の製造方法であって、式(II)

[式中、R、R、R、R、Rは前述と同意義である]で表される化合物またはその塩にオゾン酸化反応及びそれに続く再閉環反応を行う工程を含む方法、
(4)次の式(VI)

[式中、Rは水素原子またはアセチル基であり、Rは水素原子またはアセチル基であり、Rは水素原子またはアセチル基であり、Rは低級アルキル基またはアラルキル基]で表される化合物またはその塩の製造方法であって、式(VII)

[式中、R、R、Rは式(VI)と同意義である]で表される化合物またはその塩にオゾン酸化反応及びそれに続く再閉環反応を行う工程を含む方法、
を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
本明細書において、「低級アルキル基」とは、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖の飽和基を表し、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどであり、好ましくは、メチル、エチルが挙げられ、さらに好ましくはメチルが挙げられる。本明細書において、メチル基を「Me」と記載することがあり、エチル基を「Et」と記載することがある。
本明細書において、「低級アシル基」とは、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイルなどであり、好ましくは、アセチル、プロピオニルが挙げられる。本明細書において、アセチル基を「Ac」と記載することがある。
本明細書において、「アラルキル基」とは、例えば、基の一部のアルキル基がC1〜6の直鎖または分岐鎖の飽和基を表し、基の一部のアリール基が、フェニル基、キノリニル基、イソキノリル基を表す基を示す。例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、キノリニルメチル基、キノリニルエチル基、キノリニルプロピル基、キノリニルブチル基、キノリニルペンチル基、キノリニルヘキシル基、イソキノリニルメチル基、イソキノリニルエチル基、イソキノリニルプロピル基、イソキノリニルブチル基、イソキノリニルペンチル基、イソキノリニルヘキシル基が挙げられる。好ましくは、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、キノリニルプロピル基、キノリニルブチル基、キノリニルペンチル基、イソキノリニルプロピル基、イソキノリニルブチル基、イソキノリニルペンチル基が挙げられ、さらに好ましくは、フェニルブチル基、キノリニルブチル基、イソキノリニルブチル基が挙げられる。
本明細書において、「水酸基の保護基」とは、例えば、t−ブチルジメチルシリル基のようなシリル保護基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、トリクロルエチルオキシカルボニル基のような炭酸エステル型保護基、アセチル基やベンゾイル基のようなアシル型保護基、1−エトキシエチル、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基のようなアセタール系保護基のごとく一般に水酸基の保護基として用いられる基であり、好ましくは、アセタール系保護基が挙げられ、さらに好ましくは1−エトキシエチル挙げられる。
本明細書において、―CH(ORが環状構造を形成していてもよく、例えば、環状構造の例としては、例えば、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
本明細書において、「保護されていてもよいマイカロース」とは、3’’位、4’’位のどちらか一方、あるいは両方の水酸基がアシル化されているか、上記水酸基の保護基で保護されていてもよく、マイカロースの1’’位で式(I)、(II)、(V)のRに結合しているものを表す。好ましい水酸基の保護基は、例えば、低級アシル基であり、さらに好ましくは、アセチル基、プロピオニル基、イソバレリル基が挙げられる。
本明細書において「塩」とは、例えば、薬学的に許容可能な塩であり、塩の形態としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ヨウ化水素酸等のハロゲン化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩等の無機酸塩、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、安息香酸、マンデル酸、酪酸、マレイン酸、プロピオン酸、蟻酸、リンゴ酸等のカルボン酸塩、アルギニン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸塩等のアミノ酸塩、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸塩等があげられる。
とりうる溶媒和物の形態としては、溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、などのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類などがあげられる。
本明細書における化学式中、不斉炭素に結合した点線又は実線で表される化学結合は化合物の絶対配置に従った表記であり、通常の立体表記と同じである。
次に、本発明の製造方法について述べる。
始めに、共役二重結合を有する16員環ラクトンのオゾンを用いる開環反応について述べる。当該オゾン酸化反応は、アルコール、酢酸エチルなどの通常の有機溶媒中で行うことができ、好ましくはメタノールの如き低級アルコール中で行うと良い。また反応温度は室温からより低温で行うことができ、好ましくはマイナス30℃以下の低温で行うと良い。
反応の終点には、一般的なオゾン酸化反応と同様に、例えば、ジメチルスルフィドにより反応を停止することができるが、本剤の代わりにトリフェニルフォスフィンなどのトリアリールフォスフィンまたはトリノルマルブチルフォスフィンなどのトリアルキルフォスフィンを用いてもよく、好ましくはジメチルスルフィドを低温で作用させると良い。
次に、ジアルデヒド化合物を鍵中間体として用いた再閉環反応について述べる。
この反応には、新たに構築するアザラクトン環の構成原子の一つである窒素原子を含むアミン成分を加える必要がある。通常のアルキルアミンの他、例えばフェネチルアミンなどのアラルキルアミンを用いることができる。
「アラルキルアミン」の「アラルキル」とは、基の一部のアルキル基がC1〜6の直鎖または分岐鎖の飽和基を表し、基の一部のアリール基が、フェニル基、キノリニル基、イソキノリニル基を表す基を示す。例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、キノリニルメチル基、キノリニルエチル基、キノリニルプロピル基、キノリニルブチル基、キノリニルペンチル基、キノリニルヘキシル基、イソキノリニルメチル基、イソキノリニルエチル基、イソキノリニルプロピル基、イソキノリニルブチル基、イソキノリニルペンチル基、イソキノリニルヘキシル基が挙げられる。好ましくは、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、キノリニルプロピル基、キノリニルブチル基、キノリニルペンチル基が挙げられ、さらに好ましくは、フェニルブチル基、キノリニルブチル基、イソキノリニルブチル基が挙げられる。
「アラルキルアミン」としては、フェニルアルキルアミン、キノリニルアルキルアミン、イソキノリニルアルキルアミンなどが挙げられ、例えば、フェニルプロピルアミン、フェニルブチルアミン、フェニルペンチルアミン、キノリニルプロピルアミン、キノリニルブチルアミン、キノリニルペンチルアミン、イソキノリニルプロピルアミン、イソキノリニルブチルアミン、イソキノリニルペンチルアミンが挙げられる。好ましくはフェニルブチルアミン、キノリニルブチルアミン、イソキノリニルブチルアミンが挙げられる。
さらに、置換されたヒドラジンなどの種々のアミン成分を用いることも可能である。
「置換されたヒドラジン」としては、例えば、N,N’−ジメチルヒドラジン、N,N’−ジエチルヒドラジン、N,N’−ジベンジルヒドラジン、N,N’−ビス(フェニルブチル)ヒドラジンなどが挙げられ、好ましくはN,N’−ジメチルヒドラジン、N,N’−ジエチルヒドラジンが挙げられる。
還元的アミノアルキル化反応には、メタノール、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、1,2−ジクロロエタンなどの一般的な有機溶媒を単一で、あるいは混合して用いることができ、好ましくはメタノールを単一で用いると良い。反応系に酢酸などの有機酸を添加しておくことにより反応収率の向上が観察されることがある。また、当該還元的アミノアルキル化反応には、通常の還元的アミノアルキル化反応に用いることのできるヒドリド試薬を用いることが可能であり、好ましくはシアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを用いると良い。
なお、これらの製造を実施する過程において、一部で水酸基の保護基が除去されることがある。第一の製造工程であるオゾン酸化および第二の製造工程である還元的アミノアルキル化において、反応溶媒にメタノールを用いた場合は、アミノ糖部分の2位(2’位)のアセチル基は反応中に完全に、あるいは部分的に除去される。また第二の製造工程である還元的アミノアルキル化の際は、再閉環に用いるアミン成分によっては、9位のアセチル基が完全に、あるいは部分的に除去される。実際にアミン成分として4−フェニルブチルアミンを用いた場合、9位のアセチル基は当該工程においてほぼ完全に除去される。なお、これらの製造工程を通して、3位、3″位、および4″位のアシル基は通常変化を受けることは少ない。
さらに、本製造方法が包含する範囲について言及する。オゾン酸化によるジアルデヒドおよびその関連化合物の当該新規製造方法は、式(I)または(III)で表される化合物の製造に適用されるだけではなく、式(I)または(III)で表される化合物を単離して、あるいは単離することなく経由して調製されるこれら以外の合成中間体の製造に関しても適用される。また、本明細書においては、ジアルデヒド化合物を経由して製造できる有用化合物の一例として、新規15員環アザライド化合物を例示したが、本明細書は、ジアルデヒド化合物を鍵中間体として製造できる新規有用物質を限定するものではなく、ジアルデヒドの関連化合物を中間体として製造できる15員環アザライド以外の新規有用化合物の製造にも適用され、16員環ジアザライド各種のアザライドの合成をはじめ、種々の新規で有用な骨格変換成績体の製造に用いることができる。
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
参考例1
式(VII)において、R=アセチル基、R=アセチル基、R=アセチル基である化合物の製造方法
式(VII)において、R=アセチル基、R=水素原子、R=アセチル基である化合物(WO02/64607に記載)64.2gにアセトニトリル610mlを加え溶解し、無水酢酸7.8mlを加え、40℃で24時間攪拌した。反応液を減圧濃縮した後、酢酸エチル660mlを加え、有機層を飽和重曹水300mlで2回、飽和食塩水300mlで順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、これを濾過し、濾液を減圧濃縮して表記化合物を67.0gを得た。
[実施例1]
式(VI)において、R=水素原子、R=水素原子、R=アセチル基、R=4−フェニルブチルである化合物の製造方法
式(VII)において、R=アセチル基、R=水素原子、R=アセチル基である化合物(MW.944.11)(150mg,0.159mmol)(WO02/64607)を無水メタノール(5mL)に溶解し、−78℃に冷却したのち、オゾンガスを溶液に導入して反応を行った。メタノール溶液が薄い青色を帯びるまで(約15分)反応を続けたのち、酸素ガスにて過剰のオゾンの追い出しを行った(約5分)。その後、還元剤としてジメチルスルフィド(1mL)を加えて、同−78℃にて30分攪拌を続け、系中にてジアルデヒド中間体を発生させた。引き続いて、4−フェニルブチルアミン(28μl,0.175mmol)、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(100mg,0.472mmol)を加えて徐々に室温まで昇温した。メタノールを減圧溜去して液量をほぼ半分とし、飽和重曹水を加えて反応液を中和、酢酸エチルで抽出した。芒硝乾燥後、溶媒を減圧溜去して濃縮し、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/5〜1/1)にて精製して、標記化合物を収率8%(13.0mg,0.0127mmol)で得た。
(1)分子式:C538817
(2)マススペクトル(FAB):m/z 1025(M+H)
(3)H NMRスペクトル(300MHz,CDCl)δ(ppm):0.95(d,18−H),1.07(d,6’’−H),1.11(t,3−OCOCHCH),1.18(t,4’’−OCOCHCH),1.19(d,6’−H),1.24(d,15−H),1.40(s,3’’−CH),1.68(dd,2’’−Hax),1.87(br dd,16−H),2.00(s,3’’−OCOCH),2.53(s,3’−N(CH),2.79(dd,2−H),3.11(s,17−OCH),3.21(d,2’’−Heq),3.24(s,17−OCH),3.38(dd,2’−H),3.54(brd,4−H),3.58(s,4−OCH),3.87(br d,5−H),4.47(d,1’−H),4.51(dq,5’’−H),4.57(d,4’’−H),4.78(m,14−H),4.84(d,1’’−H),5.20(br dd,3−H),7.16(m,C),7.26(m,C).
[実施例2]
式(VI)において、R=水素原子、R=水素原子、R=アセチル基、R=4−フェニルブチルである化合物の製造方法
参考例1で得られた式(VII)において、R=アセチル基、R=アセチル基、R=アセチル基である化合物(160mg,0.163mmol)を無水メタノール(5mL)に溶解し、−78℃に冷却したのち、オゾンガスを溶液に導入して反応を行った。メタノール溶液が薄い青色を帯びるまで(約20分)反応を続けたのち、酸素ガスにて過剰のオゾンの追い出しを行った(約10分)。その後、還元剤としてジメチルスルフィド(1mL)を加えて、同−78℃にて30分攪拌を続け、系中にてジアルデヒド中間体を発生させた。引き続いて、4−フェニルブチルアミン(28μl,0.175mmol)、ナトリウムシアノボロヒドリド(26mg,0.413mmol)、酢酸(136ml,2.38mmol)を加えて徐々に室温まで昇温した。室温に昇温後、ナトリウムシアノボロヒドリド(26mg,0.413mmol)を加え、さらに1時間後ナトリウムシアノボロヒドリド(13mg,0.207mmol)を加え2時間反応させた。メタノールを減圧溜去して液量をほぼ半分にし、飽和重曹水を加えて反応液を中和、酢酸エチルで抽出した。芒硝乾燥後、溶媒を減圧溜去して濃縮し、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/5〜1/1)にて精製して、標記化合物を収率7%(11.5mg,0.0117mmol)で得た。
実施例1と同一化合物であることをH NMRにて確認をおこなった。
【産業上の利用可能性】
マクロライド誘導体の共役二重結合部分を酸化的に開裂するために、これまでは、環境面、健康面で課題の残る四酸化オスミニウム、四酢酸鉛、過ヨウ素酸塩などの試薬を用いて製造されており、かつ工程数も複数であった。
本発明の方法によれば、当該ジアルデヒドの製造に際して、オゾン酸化反応を用いることにより、環境面および健康管理面で課題の残る試薬を使わずに、重要鍵中間体であるジアルデヒド化合物の製造が可能になる。さらにアミノ糖部分の2位(2’位)水酸基の保護が完全に不要となり、工程数も共役二重結合体より2工程で目的とする化合物(再閉環体)へ導くことができ、収率も改善される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)

[式中、Rは水素原子または低級アシル基であり、Rは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、または水酸基の保護基であり、Rは低級アルキル基であり、但し−CH(ORがジオキソランまたはジオキサンなどの環状構造を形成していてもよく、Rは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、または水酸基の保護基であり、Rは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、水酸基の保護基、または保護されていてもよいマイカロースである]で表される化合物またはその塩の製造方法であって、式(II)

[式中、R、R、R、R、Rは式(I)と同意義である]で表される化合物またはその塩をオゾン酸化する工程を含む方法。
【請求項2】
次の式(III)

[式中、Rは水素原子またはアセチル基であり、Rは水素原子またはアセチル基]で表される化合物またはその塩の製造方法であって、式(IV)

[式中、RおよびRは式(III)と同意義である]で表される化合物またはその塩を一段階でオゾン酸化する工程を含む方法。
【請求項3】
次の式(V)

[式中、Rは水素原子または低級アシル基であり、Rは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、または水酸基の保護基であり、Rは低級アルキル基であり、但し−CH(ORがジオキソランまたはジオキサンなどの環状構造を形成していてもよく、Rは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、または水酸基の保護基であり、Rは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、水酸基の保護基、または保護されていてもよいマイカロースであり、Rは低級アルキル基またはアラルキル基]で表される化合物またはその塩の製造方法であって、式(II)

[式中、R、R、R、R、Rは前述と同意義である]で表される化合物またはその塩にオゾン酸化反応及びそれに続く再閉環反応を行う工程を含む方法。
【請求項4】
次の式(VI)

[式中、Rは水素原子またはアセチル基であり、Rは水素原子またはアセチル基であり、Rは水素原子またはアセチル基であり、Rは低級アルキル基またはアラルキル基]で表される化合物またはその塩の製造方法であって、式(VII)

[式中、R、R、Rは式(VI)と同意義である]で表される化合物またはその塩にオゾン酸化反応及びそれに続く再閉環反応を行う工程を含む方法。

【国際公開番号】WO2005/007666
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【発行日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511931(P2005−511931)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010551
【国際出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】