説明

ジェットグラウト工法による土壌強化で用いるダウンザホールハンマードリルのための設備

本発明は、“ジェットグラウト工法”として公知である方法による特に土壌強化で用いるダウンザホールハンマードリル(1)のための設備に関し、主として円筒状の機械ハウジング(2)と、機械ハウジングに取り付けられ、往復運動を可能にする態様で機械ハウジングのチャック(4)に固定され取り付けられるドリルビット(5)に衝撃を与えるように構成される加圧流体によって推進される衝撃機構(3)と、を含み、機械ハウジングは、衝撃機構への推進流体のための中央の供給ライン(6)を有し、供給ラインにおいてドリルビットのチャネルは、使用される推進流体のための排水口を構成する。ジェットグラウト工法中の効率を改善するために、機械ハウジング(2)には、ジェットグラウト工法のためのグラウトノズル(7)が設けられており、このグラウトノズルは、横方向に向けられ、機械ハウジングの壁(8)の周囲に配置され、前記グラウトノズルに機械ハウジングを通ってグラウト混合物を導くための洗浄チャネル(9)が配置され、グラウト混合物のための洗浄チャネルは、衝撃機構の推進流体のための供給ラインから分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の序文によるダウンザホールハンマードリルのため、特にジェットグラウト工法による土壌強化のための設備に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌強化の間、ドリルストリングを有する種類の削岩設備を含む安定化設備を使用することは普通であり、このドリルストリングは、それらの端部において接続された多数のドリルパイプと、その前端部に取り付けられるドリルビットを有するダウンザホールハンマードリルと、からなる。ドリルストリングは、回転モーター及び送りモーターを用いて送り梁の使用によって従来通りに送り力を与えられる。土壌強化のための技術は、長い間公知であり、それは、土壌及び地上の構造物の固定的な改良に対して使用される。道路及び類似の土木構造物の荷重容量は、土壌強化により著しく向上させられ、土壌強化は、例えばセメントなど結合剤を用いた土壌層の安定化を説明するために使用される用語である。
【0003】
土壌強化を実行するために、“モニター”または“注入ヘッド”として知られているものは、ダウンザホールハンマードリル自体とドリルストリングとの間に配置される。このモニターは、“ノズル”として知られる1つまたは数個のグラウト開口部を支持するユニットであり、グラウト混合物は、このユニットを通じて高速で流動させられる。通常、水の形態での推進液体を含む、推進流体は、掘削工程を実行するために、ドリルストリングにおける中央チャネルを活用してドリルハンマーまで下方へ案内される。前記中央チャネルまたは別個のチャネルは、グラウトモニターにおけるグラウトノズルにグラウト混合物を下方に案内するために使用される。グラウト混合物をセメント及び水の溶液によって構成することは、普通である。ドリルビットがドリル穴におけるその所定の位置に到達すると、土壌におけるジェットグラウト工法は、概ね1メガパスカル(MPa)から数十メガパスカル(MPa)間の規模である圧力で始まり、それによって、ドリルストリングは、穴を後退して上方に引き抜かれながら回転させられる。ある種のバルブ設備が前記モニターにあることは普通であり、削岩設備をジェットグラウト工法のため、且つドリルストリングの中央チャネルを通ってグラウト混合物をモニターのグラウトノズルまで下方に案内するために使用する場合、衝撃ハンマーまで下がる流動経路は、このバルブ設備を用いて塞がれる。ジェットグラウト工法の間、グラウトノズルから流出するグラウト混合物の外側に向けられる流れは、穴の中心から直径約1メートル以内で利用可能である土とともに混ぜ合わせられ、且つドリル穴の深さとおよそ同じ高さである柱または支柱を作り出す。ドリルストリングは、強化工程の後に、ドリル穴から完全に引き抜かれ、その後、追加的なドリル及び強化サイクルにおいて使用される用意がある。
【0004】
土壌強化のための設備は、特許文献1から知られており、この設備のモニターは、ダウンザホールハンマードリルの上で、ドリルストリングに関して一定の距離上に設置される。ジェットグラウト工法を開始する前に、モニターをあらかじめ決定される深さに設置することを確実にするために穴をより深く開けるので、ドリル穴を別に必要以上に大きくさせることが結果として必要であることが理解される。言い換えれば、モニターは、所要の高さの柱又は支柱が形成されるそのような深さに設置される。穴を開ける追加の深さの規模は、通常、1つの追加のハンマーの長さに一致する。
【0005】
土壌強化のための設備は、特許文献2から知られており、この特許文献2は、ハンマーの衝撃機構への推進流体のため且つジェットグラウトノズルへのグラウト混合物のための別個の供給ラインを有する。前記ジェットグラウトノズルは、ドリルビットに近接するダウンザホールハンマードリルの前端部に設置される。ダウンザホールハンマードリルは、衝撃ハンマーのための機械ハウジングを有する。機械ハウジングは、外側パイプの形態での外側ケーシングによって取り囲まれる。ジェットグラウトノズルは、外側ケーシングに配置され、それによって、グラウト混合物は、外側ケーシングと機械ハウジングの外面との間に形成されるチャネルにおいて機械ハウジングの外側にあるグラウトノズルまで前方に案内される。推進流体及びグラウト混合物のための別個の供給ラインがあるという事実と、ジェットグラウトノズルがドリルビットに近接するダウンザホールハンマードリルの前端部に設置されるという事実と、に起因して、この公知の設備は、土壌強化の間、ドリル穴を必要以上に深くすることが必要ないという利点を有する。しかし、外側ケーシング及び前記ケーシングのグラウトノズルの設備は、ダウンザホールハンマーがより大きくなることだけでなく、その設計においてそれがより複雑になることに至る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】スウェーデン特許第512 653号明細書
【特許文献2】特許第06264435号明細書
【特許文献3】欧州特許第0394255号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、ダウンザホールハンマードリルのための設備であって掘削の深さとジェットグラウト工法前の穴の直径とに関して決定されまたはあらかじめ決定されるこれらに非常に近い規模を有するドリル穴を作り出すことを可能にする設備を提供する一方で、同時に、ダウンザホールハンマードリルを従来に公知のダウンザホールハンマードリルよりもより小型且つ簡素な構造にさせることを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、請求項1に明記される特徴及び特性を実際に示すダウンザホールハンマードリルのための設備で達成される。本発明のその他の利点は、従属請求項によって明確にさせられる。
【0009】
本発明は、添付された図面を参照して限定しない実施形態の態様で以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】液体推進ダウンザホールハンマードリルの前端部を通る長手方向の断面図を示す。
【図2】図1における線II−IIに沿う断面図を示す。
【図3】図1における線III−IIIに沿う断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、主として、円対称である、または管状に形成される機械ハウジング2を有するダウンザホールハンマードリル1の前端部を示し、この機械ハウジングには、加圧流体によって推進される衝撃機構3が取り付けられ、この衝撃機構は、往復運動を可能にする態様で、チャック4に固定され取り付けられるドリルビット5に衝撃を与えるように構成される。機械ハウジング2は、推進液体(水)のための中央供給ライン6と、ドリルビット5のチャネル(図示略)と、を有し、このチャネルを通って、使用する推進液体は、流出し、掘削中に発生するこのドリル掘削の効果で、機械ハウジングの外面に沿って後方に推進される。この種類のダウンザホールハンマードリルは、長い間公知であり、例えば特許文献3において説明される種類によって構成される。たとえ本実施形態を液体推進型の衝撃ハンマーに基づいて説明していても、本発明による設備は、この種類のハンマーを用いて使用することを限定されず、任意の適切な加圧媒体、例えば空気などによって推進される衝撃ハンマーのために構成されてもよいことは、理解される。
【0012】
ダウンザホールハンマードリル1の前端部であって、ダウンザホールハンマードリルの中心で始まり、且つドリルビット5に隣接して終わる端部である、前端部において、横向きに面するグラウトノズル7は、セメント液からなるグラウト混合物を外に案内するように構成されている。その上、機械ハウジングを通ってそしてダウンザホールハンマードリルの前端部にあるグラウトノズル7まで外方にグラウト混合物を案内するために、全体的に参照符号9で示される洗浄チャネルは、機械ハウジング2の壁8における一体部分として構成されている。前記洗浄チャネル9は、ドリルハンマー1の長手方向に沿って延在しており、加圧グラウト混合物を供給するための、図面では図示されず且つ別の周知の設備を有する流体移動接続部にグラウトノズル7を設置し、且つそれから取り外すことを確実にする。グラウト混合物は、比較的高圧で、地表面から連結されたドリルパイプからなるドリルストリングを通ってドリルストリングの前端部に取り付けられるダウンザホールハンマードリル1のグラウトノズル7まで下方に案内される。ダウンザホールハンマードリル1には、グラウトノズル7が設けられており、これは、ドリルストリング上に特別なモニター設備が必要でないことを意味する。
【0013】
グラウト混合物の圧力は、通常、1メガパスカル(MPa)から数十メガパスカル(MPa)の間の規模からなり、それによって、機械ハウジング2に配置される洗浄チャネル9の断面積は、過度に大きい流動損失を回避するために、十分に大きい。したがって、洗浄チャネル9の断面積が合計で少なくとも60mm2から160mm2の間の値に達することは、適切である。これと対照的に、グラウトノズル7の開口部は、とても小さいので、外側に流れるグラウト混合物の十分な速度が得られる。排水口の直径が2mmから5mmの間であることは普通であり、それによって、機械ハウジングから径方向外方におけるノズルからの排水速度は、通常、100メートル毎秒(m/s)から数百メートル毎秒(m/s)に達する。排出ノズルの排出面積を変化させることを可能とするために、機械ハウジング2の壁8において、グラウトノズルをねじ穴(ねじ穴は、図示されない)内に螺着されるように設計され交換されるノズルとして構成することは、適切である。全体的な目的は、穴に柱または支柱を形成することを可能にすることであり、これらの半径をジェットグラウト工程の間に約10cmから最大およそ1メートル(m)までの間隔で変化させることができる。支柱の直径が0.4メートルから1.2メートルの間であることは、普通である。
【0014】
洗浄チャネル9は、図2及び図3においてより詳細に示される。機械管2(原文では。“ハウジング”であるべき)の壁8に一体化された洗浄チャネル9が所要の断面積を提供するために、洗浄チャネルは、複数のサブチャネル9’として設計され、このサブチャネルは、機械管(原文では。先と同様)2の周囲に均等に分配され、掘削工程と同様に、ハンマーの軸方向に延在する。本実施形態におけるダウンザホールハンマードリル1の機械ハウジング2には、6つのこのようなサブチャネル9’からなる洗浄チャネル9が設けられている。それぞれの前記サブチャネル9’は、削りくずを取り除く処理によって、2つのパイプ10、11の向かい合う表面の少なくとも一方に形成されるトラックの形態で長手方向の凹部として設計されており、パイプ10、11の一方は、他方の内側に位置付けられる。これらの一方が他方の内側に位置付けられたパイプは、適切な方法、例えば端部で溶接することによってまたは内側管11上に外側管10を収縮嵌合することによってなどで結合される。サブチャネル9’は、リング状区画12に移行し、このリング状区画は、削りくずを取り除く処理によって、外側管10の内側壁に形成される径方向を囲むトラック状の凹部として形成され、グラウトノズル7は、リング状区画12とともにグラウト混合物を前記区画から直接放出するように連通している。グラウト混合物をサブチャネル9’から共通の区画12に集めるという事実に起因して、均一な圧力分布は、達成され、このようにしてダウンザホールハンマードリル1から径方向の外方への均一な流れも達成される。
【0015】
本発明は、上述され且つ図面に示されることに制限されず、添付される特許請求の範囲によって定義される革新的発想の範囲内で種々の異なる方法において変更及び修正されることが可能である。
【符号の説明】
【0016】
1 ダウンザホールハンマードリル、2 機械ハウジング、3 衝撃機構、4 チャック、5 ドリルビット、6 供給ライン、7 グラウトノズル、8 壁、9 洗浄チャネル、9’ サブチャネル、10 パイプ、11 パイプ、12 リング状区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
“ジェットグラウト工法”として公知である方法による特に土壌強化で用いるダウンザホールハンマードリル(1)のための設備であって、
円筒状の機械ハウジング(2)と、前記機械ハウジングに取り付けられ、往復運動を可能にする態様で前記機械ハウジングのチャック(4)に固定され取り付けられるドリルビット(5)に衝撃を与えるように構成される加圧流体によって推進される衝撃機構(3)と、
前記衝撃機構に推進流体を供給する中央の供給ライン(6)であって、当該供給ラインにおいて前記ドリルビットのチャネルが使用される推進流体のための排水口を構成する、供給ラインと、
ジェットグラウト工法のためのグラウトノズル(7)と、
前記機械ハウジングを通ってグラウト混合物を前記グラウトノズルへ導くために配置される洗浄チャネル(9)と、を含み、前記グラウト混合物のための前記洗浄チャネルは、前記衝撃機構の前記推進流体のための前記供給ラインから分離され、
ジェットグラウト工法のための前記グラウトノズル(7)は、横方向に向けられ、且つ前記機械ハウジングの壁(8)の周囲に配置されるので、伝えられる前記グラウト混合物は、前記機械ハウジングから径方向外方に向けられることを特徴とする設備。
【請求項2】
前記グラウトノズル(7)は、前記ドリルビット(5)に近接する前記ダウンザホールハンマードリル(1)の前端部に設置されることを特徴とする請求項1に記載の設備。
【請求項3】
前記洗浄チャネル(9)は、ハンマーの軸方向に直線的に延在し、前記機械ハウジング(2)の前記壁(8)における一体部分として設計されることを特徴とする請求項1または2に記載の設備。
【請求項4】
前記洗浄チャネル(9)は、前記機械ハウジング(2)の周囲に均等に分配される複数のサブチャネル(9’)を含むことを特徴とする請求項3に記載の設備。
【請求項5】
それぞれの前記サブチャネル(9’)は、2つのパイプ(10,11)の向かい合う表面の少なくとも一方に形成されるトラックの形態での長手方向の凹部として設計されており、前記パイプ(10,11)の一方は、他方の内側に位置付けられ、ともに前記機械ハウジングを形成することを特徴とする請求項4に記載の設備。
【請求項6】
前記サブチャネル(9’)は、リング状区画(12)に移行し、前記グラウトノズル(7)は、この区画に連通することを特徴とする請求項4または5に記載の設備。
【請求項7】
一方が他方の内側に設置される前記パイプ(10,11)は、溶接を用いて、または内側管上に外側管を収縮嵌合することによって結合されることを特徴とする請求項5に記載の設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−517540(P2012−517540A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549119(P2011−549119)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050052
【国際公開番号】WO2010/090577
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(511170777)ワッサラ・アーベー (2)
【Fターム(参考)】