説明

ジェットポンプ検知ライン支持体を補修するための方法及び装置

【課題】ジェットポンプ検知ライン構成要素の補修及び交換のために使用可能なジェットポンプ検知ライン支持クランプ組立体を提供する。
【解決手段】ジェットポンプ検知ライン支持体120のクランプは、検知ラインの補修、交換、及び損傷の防止又は低減のために使用することができる。本クランプは、ジェットポンプ検知ライン支持体120に対して取付け、かつ個々のジェットポンプ検知ラインを拘束することができる。本クランプは、該クランプを通して支持体120内のラインの更なるアクセス又は固定を行うことができる。クランプを取付ける方法は、検知ラインに当接させて該クランプを取付ける段階と該クランプを締付ける段階とを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示的な実施形態は総括的に、原子炉内においてジェットポンプ検知ライン構成要素の補修及び交換のために使用可能なジェットポンプ検知ライン支持クランプ組立体に関する。加えて、例示的な実施形態は、沸騰水型原子炉(BWR)内においてジェットポンプ検知ライン補修装置を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、BWRは、原子炉心を通して冷却材及び減速材を効果的に移動させる再循環システムの一部としてジェットポンプを含む。原子炉心内部の作動状態を評価するためには、ジェットポンプからの冷却材の流量を含む、炉心を通る流量を監視することができるのが好ましい。一般的に、ジェットポンプ検知ラインを使用して、ジェットポンプの入口及びノズル間の圧力差を測定することによって、ジェットポンプからの流量を測定する。
【0003】
図1及び図2は、従来技術のジェットポンプ検知ライン100を示す図であり、このジェットポンプ検知ライン100は、拡散シェル110及びジェットポンプ検知ライン110の両方に溶接された検知ライン支持体120によってジェットポンプの基部において下部ディフューザシェル110に結合される。検知ライン110は一般的に、支持体120に溶接され、従ってジェットポンプにおける流れ誘発振動に曝される。
【0004】
図1及び図2に示したジェットポンプ検知ライン100は一般的に、BWR炉心内部に取付けられ、燃料交換及び補修のための定期プラント停止の間にのみアクセス可能である。これらの停止は数か月の間隔で行われ、従って、ジェットポンプ及びジェットポンプ検知ライン100を含む炉心内部の構成要素は、それら構成要素が点検又は補修されることが可能になる前に長期間にわたって作動しなければならない。
【0005】
さらに、BWR炉心作動条件は、燃料棒内で発生する核分裂による高レベルの放射能を含む。放射能、特に作動している原子炉心で普通生じる中性子束は、時間の経過と共に多くの材料の強度及び弾力性を劣化させる。ジェットポンプ検知ライン100及び検知ライン支持体120を含む炉心内部の構成要素は、放射線被曝により早期脆性化及び割れ発生を生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
流れ誘発振動、長期作動サイクル及び放射線劣化の組合せは、ジェットポンプ検知ライン溶接部を破損させて、ジェットポンプ検知ライン100がそれらの支持体120から脱離した状態になりかつ損傷した状態になり、また/又はその他の炉心構成要素を損傷させることになる可能性がある。従来技術の補修手段には一般的に、プラント停止の間に破損支持体を再溶接することが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例示的な実施形態は、BWRジェットポンプ検知ライン支持クランプとして用いるクランプとジェットポンプ検知ラインの補修方法とを対象としている。本クランプは、非溶接クランプ作用によってジェットポンプ検知ラインをジェットポンプ検知ライン支持体内部に固定するハウジングを含む。ハウジングは、個々の検知ラインに当接して挿着されたパッドを受入れるホールを有することができる。パッドは、ジャックスクリュー及び関連するラチェットロックスプリングを用いて取付けかつ締付けて、ジェットポンプ検知ラインに当接した固有の挿着度合を可能にすることができる。
【0008】
本発明は、例示としてのみ提示しておりかつ従って本明細書の例示的な実施形態を限定するものではない、同様な要素を同じ参照符号で表している添付の図面を参照して、その例示的な実施形態を詳細に記述することによって、一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図3は、例示的な実施形態による、ジェットポンプ検知ライン支持クランプで使用するハウジング200の斜視図である。図7に示すように、ハウジング200は、BWRの作動の間にジェットポンプ検知ライン100が脱離した状態又はそうではなくて損傷した状態になるのを防止するために、ジェットポンプ検知ライン支持体120に対してクランプされる。
【0010】
ハウジング200は、幾つかの取付け方法によって検知ライン支持体120に対してクランプすることができる。例えば、図7に示すように、上部プレート300及び下部プレート310は、ハウジング200及び検知ライン支持体120の両方に対して取付けて、検知ライン支持体120上にハウジング200をクランプしかつジェットポンプ検知ライン100に対する固定及び拘束を行うことができる。ボルト350は、ハウジング内のクリアランスホール250(図3に示す)を貫通して、上部プレート300、ハウジング200及び下部プレート310の各々を取付けることができる。それに代えて、幾つかのボルト350を複数のクリアランスホール250で使用して、検知ライン支持体120との間で所期のクランプを行うことができる。別の実施例として、ボルト350は、上部プレート300内にラチェットロックスプリング(図示せず)と相互作用するラチェットエッジを有していて、該ボルト350の漸増的締付けを行うことができる。それに代えて、ハウジング200は、上部プレート300及び下部プレート310のノッチ内に固定して、支持クランプ構成要素間の半径方向移動又は不均一な接触を防止することができる。
【0011】
例示的なジェットポンプ検知ライン支持クランプの各構成要素は、原子炉環境内で実質的にその物理的特性を維持することになる材料で作製される。例えば、ハウジング200、上部及び下部プレート300及び310並びにボルト350は、オーステナイト系ステンレス鋼及び/又は同様な材料で作製することができる。構成要素に使用する材料を変化させて、腐食及び/又はかじりを減少させることが望ましい場合がある。例えば、ハウジング200並びに上部及び下部プレート300及び310は、316型オーステナイト系ステンレス鋼で作製することができるが、ボルト350は、316型ステンレス鋼との間のかじりを防止するためにXM−19型ステンレス鋼で作製することができる。
【0012】
図7に示すように、検知ライン支持体120の上面又は底面内には、少なくとも1つの溝360を、例えば放電加工によって機械加工するか或いは他の方法によって作製することができ、また上部プレート300又は下部プレート310のいずれかは、溝360と係合するように構成された少なくとも1つのタング365を有することができる。ハウジング200及び支持体120に対してプレート300及び310を固定した時に、タング365及び溝360により、ハウジング200及び支持体120の更なる固定及び整列を行うことができる。
【0013】
図3に示すように、ハウジング200は、個別のジェットポンプ検知ラインと整列し、あらゆるボアホール250から横に位置しかつそれらボアホール250と重ならない一連のアクセスホール210を有することができる。アクセスホール210は、あらゆる寸法のものとすることができ、検知ライン100がハウジング200を通過しかつ脱離した状態になるようにすることなく、ハウジング200を通して支持体120内の検知ライン100にアクセス可能とすることができる。
【0014】
図4〜図6に示すように、アクセスホール210は、他の構成要素がハウジング200を通過しかつ検知ライン100と相互作用することを可能することができる。例えば、ジャックスクリュー400は、アクセスホール210を貫通してパッド450と係合させることができる。パッド450は、ドエルピン420によって個々のジェットポンプ検知ライン100に当接して挿着させて、支持体120内にライン100をさらに固定し、ライン100の振動を減衰させ、かつライン100への他の損傷を防止又は減少させることができる。パッド450は、幾つかの異なる方法でアクセスホール210内に固定することができ、ジャックスクリュー400の使用は、1つのそのような方法の実施例として開示しているに過ぎない。
【0015】
パッド450は、様々な締結及び締付け装置を使用して検知ライン100に当接させて所望の力で締付けることができる。例えば、図4〜図6は、ライン100に当接させてパッド450を漸増的に締付けるのを可能にするためのジャックスクリューラチェットロックスプリング構成を示している。一連のラチェットロックスプリング410は、ジャックスクリュー400のラチェット固定を行うようにハウジング200の溝内に配置するか、或いはジャックスクリュー400と相互作用するようにその他の方法でハウジング200内に挿入することができる。この実施例では、ジャックスクリュー400は、その鋸歯状エッジが、対応するラチェットロックスプリングエッジ上を通過しかつ該ラチェットロックスプリングエッジに当接してロックされるので、漸増的に締付けることができる。
【0016】
パッド450は、様々な方法で検知ライン100に当接させて締付けることができ、必ずしもラチェット装置によるとは限らない。例えば、アクセスホール210は設けないようにすることができ、代わりにパッド450は、支持体120に対してハウジングをクランプする時に検知ライン100を固定するように、ハウジング200に直接締結することができる。さらに、例示的な実施形態では、固定される検知ラインの数、利用できる空間の量又はあらゆるその他の技術的検討事項に応じて、あらゆる数のアクセスホール210及び対応する構成要素を含むことができる。
【0017】
例示的な実施形態内に存在する各締付け構成要素は、実動原子炉内でその物理的特性を維持するように設計された材料で作製される。例えば、ジャックスクリュー400及びパッド450は、オーステナイト系ステンレス鋼で作製することができる。別の実施例として、腐食を防止するために、ジャックスクリュー400及びパッド450は、例えばジャックスクリュー400についてはXM‐19型かつパッド450については316型である異なる種類のオーステナイト系ステンレス鋼で作製することができる。ラチェットロックスプリングは、異なる材料、例えばニッケル−クロム−鉄合金であるインコネルX−750で作製することができる。
【0018】
ジェットポンプ検知ライン支持クランプの構成要素として記述した固有の材料は、単なる実施例である。材料が実動原子炉環境内で作動サイクルにわたって実質的にその物理的特性を維持することになる限り、炉心の化学的性質及び検知ライン要件に応じて、あらゆる材料を使用することができる。
【0019】
支持体に対してジェットポンプ検知ラインを固定する例示的な方法は、ジェットポンプ検知ライン支持体に対して支持クランプ組立体を取付ける段階と、支持クランプ組立体を締付ける段階とを含む。例示的なジェットポンプ検知ライン支持クランプに関して上記した構造的構成部品は、支持体に対してジェットポンプ検知ラインを固定する例示的な方法で使用可能である。
【0020】
例えば、図8に示すように、段階S100において、支持クランプは、ジェットポンプ検知ライン支持体に対して取付けることができる。この段階は、ハウジング及びジェットポンプライン支持体の両方上に上部及び下部プレートを取付けて、ハウジングによって封鎖された特定の溝内にジェットポンプ検知ラインを拘束できるようにする段階を含むことができる。段階S100はさらに、ハウジング及びジェットポンプ検知ライン支持体をさらに係合させかつ整列させるために、ジェットポンプ検知ライン支持体内に適切なタング及び溝を機械加工する段階を含むことができる。
【0021】
段階S200において、次に、ジェットポンプ検知ラインに当接させて支持クランプを締付けて、更なる挿着、保護及び/又は振動減衰を行うようにすることができる。例えば、締付ける段階は、ハウジングのホール内でジャックスクリュー及びラチェットロックスプリングをラチェット係合させて、ジャックスクリューに取付けられたパッドをジェットポンプ検知ラインに当接させて支持体内で漸増的に締付けるようにする段階を含むことができる。
【0022】
様々なかつ新規な構造の詳細及び部品の組合せを含む本発明の上述の及びその他の特徴は、添付図面を参照して今やより詳細に記述されたであろう。この例示的な実施形態の詳細は本発明の例示としてのみかつ非限定的なものとして示していることが分かるであろう。本発明の原理及び特徴は、特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲を逸脱せずに、様々なかつ多数の実施形態として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ジェットポンプ検知ライン支持体によってディフューザシェルに結合されたジェットポンプ検知ラインを備えた従来技術のBWRジェットポンプノズルを示す図。
【図2】図1に示したジェットポンプ検知ライン及び支持体の拡大詳細図。
【図3】ジェットポンプ検知ラインクランプで使用することができるハウジングの斜視図。
【図4】ジャックスクリューを用いて取付けたジェットポンプ検知ライン支持クランプの側面図。
【図5】クランプ内に取付けられたパッドに挿着されるジャックスクリューを示す、図4のA−A線の側面断面図。
【図6】ハウジング内のドエルピンによって固定されたジャックスクリュー及びパッドを示す、図5のB部分の詳細図。
【図7】支持体のEDMスロットにクランプするために使用される上部及び下部プレート並びにボルトを示す、取付けた支持クランプを示す側面図。
【図8】ジェットポンプ検知ライン支持体を補修する例示的な方法のフローチャート。
【符号の説明】
【0024】
100 検知ライン
110 下部ディフューザシェル
120 検知ライン支持体、支持体
200 ハウジング
210 アクセスホール
250 クリアランスホール、ボアホール
300 上部プレート
310 下部プレート
350 ボルト
360 溝
365 タング
400 ジャックスクリュー
410 ラチェットロックスプリング
420 ドエルピン
450 パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接なしで検知ライン支持体(120)に対して取付けられて、少なくとも1つのジェットポンプ検知ライン(100)を該支持体(120)の少なくとも1つの溝(360)内に拘束するように構成されたハウジング(200)を含む、支持クランプ組立体。
【請求項2】
前記ハウジング(200)が、実動原子炉環境内でその物理的特性を実質的に維持可能な材料で製造されることを特徴とする請求項1記載の支持クランプ組立体。
【請求項3】
前記ハウジング内の少なくとも1つのホールであって、その各々が、前記少なくとも1つの溝(360)のある溝(360)に対応するような、少なくとも1つのホールと、
前記少なくとも1つのホールを貫通して前記対応する溝(360)内に達するパッドと、をさらに含み、
前記パッドが、前記少なくとも1つのジェットポンプ検知ライン(100)のうちのジェットポンプ検知ライン(100)を前記対応する溝(360)内に固定し、かつ該少なくとも1つのジェットポンプ検知ライン(100)のうちのジェットポンプ検知ライン(100)の振動を減衰するように構成される、
ことを特徴とする請求項1記載の支持クランプ組立体。
【請求項4】
前記少なくとも1つのホール内に設けられかつ前記対応する溝(360)内で前記パッド(450)に係合するジャックスクリュー(400)と、
前記ジャックスクリュー(400)及び関連するラチェットロックスプリング(410)と、をさらに含み、
前記ラチェットロックスプリング(410)及びジャックスクリュー(400)が、前記対応する溝(360)内で前記ジェットポンプ検知ライン(100)に当接させて該ジャックスクリュー(400)及び前記パッド(450)を締付けるのを可能にするように構成される、
ことを特徴とする請求項3記載の支持クランプ組立体。
【請求項5】
前記ジャックスクリュー(400)及びラチェットロックスプリング(410)が、実動原子炉環境内で実質的にその物理的特性を維持するように構成された材料で作製され、
前記材料が前記ハウジング(200)及び支持体(120)の材料とは異なる、ことを特徴とする請求項4記載の支持クランプ組立体。
【請求項6】
前記材料が、ニッケル−クロム−鉄合金のインコネルX−750であることを特徴とする請求項5記載の支持クランプ組立体。
【請求項7】
前記ハウジング(200)が、上部プレート(300)と、下部プレート(310)と、該ハウジング(200)並びに前記上部プレート(300)及び下部プレート(310)の少なくとも1つを接合する少なくとも1つのボルト350とによって前記支持体(120)に取付けられることを特徴とする請求項1記載の支持クランプ組立体。
【請求項8】
前記上部プレート(300)及び下部プレート(310)が、非溶接法によって前記検知ライン支持体(120)に対して取付けられることを特徴とする請求項7記載の支持クランプ組立体。
【請求項9】
前記上部プレート(300)及び下部プレート(310)が、該上部及び下部プレート(300,310)の各々上の少なくとも1つのタング(365)によって前記検知ライン支持体(120)に取付けられ、
前記少なくとも1つのタング(365)が、前記検知ライン支持体(120)内の対応するノッチに接合される、
ことを特徴とする請求項8に記載の支持クランプ組立体。
【請求項10】
原子炉内のジェットポンプ検知ライン支持体(120)に対してジェットポンプ検知ライン(100)を固定する方法であって、
前記ジェットポンプ検知ライン支持体(120)に対して支持クランプ組立体を取付けて、該ジェットポンプ検知ライン支持体の支持溝(360)に前記ジェットポンプ検知ライン(100)を拘束するようにする段階と、
前記支持クランプ組立体を締付けて、前記ジェットポンプ検知ライン(100)に保持及び振動減衰を与えるようにする段階と、を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−298773(P2008−298773A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137815(P2008−137815)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】