説明

ジェット推進舟艇のトリムおよび後進システム

【課題】好適なジェット推進舟艇のトリムおよび後進システムを提供する。
【解決手段】ジェット推進舟艇16のノズルのトリム、および当該舟艇の後進ゲート20の操作を制御するためのシステムが提供される。第1に、共通作動のトリムおよび後進システム10が提供され、ノズルのトリム角度と後進ゲートの方向との両方が、単一のアクチュエータ18を介して電子的に制御される。第2に、電子支援の後進ゲートシステムが提供され、舟艇の操縦条件が、後進ゲートに与えられる方向の評価の中で考慮される。最後に、操舵角度を考慮してトリム角度を自動的に制御する、自動トリム制御システムがさらに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人用舟艇のようなウォータージェット推進の船に関し、より具体的には、そのような船の鉛直トリムシステムおよび後進ゲートの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェットボートおよび個人用舟艇のようなウォータージェット推進の船は、インペラを通じて船の後方に向かって放出される強力な水流を形成し、したがって、その船を前方へ推進する、ジェット駆動を使用する。インペラの後方に提供された操舵ノズルが、舟艇の操縦者に、ノズルを左右に向け、水流の方向を変化させ、したがって、船自体の方向を変化させることによって、船を操舵することができるようにする。一般的に、操舵ノズルは、船のバランスをとるために鉛直方向にも動くことができる。この鉛直方向制御は、VTS(Vertical Trim System:鉛直トリムシステム)と呼ばれる。
【0003】
一部のウォータージェット推進の船はまた、後進ゲートの提供によって後進方向に移動し得る。後進ゲートはループ状であり、該ループは、操舵ノズルを覆うように下げられて、水流を船の前方へ送り、したがって、船を後方へと推進することができる。この特徴は、一部の状況においては有用であり得るが、従来のジェット推進舟艇に関しては、船の減速または停止に使用するように設計されておらず、また、一部の場合には、これらの目的のうちのいずれか1つにそれを使用する場合、特に個人用舟艇の場合には危険を及ぼし得る。
【0004】
業界では、個人用舟艇などの復原性の改善された制御に対するニーズが存在する。また、このような船に、制動または中立のような、新しい、または改善された機能を提供することは、有益である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1に、ジェット推進舟艇のための共通作動のトリムおよび後進システムによって、上述の欠点のうちの少なくとも一部が緩和され、該舟艇は、可変トリム角度を有するように鉛直方向に旋回可能な操舵ノズルを含み、該舟艇は、可変ゲート方向を有するように旋回可能な後進ゲートをさらに含み、該トリムおよび後進システムは、可動アクチュエータと、アクチュエータに接続され、該アクチュエータの動きの関数として、トリム角度およびゲート方向を調整するように動作可能な運動伝達機構と、トリム角度およびゲート方向の目標設定を評価するための制御電子装置であって、目標設定に基づいてアクチュエータの運動を制御する制御電子装置と、を備える。
【0006】
また、ジェット推進舟艇が提供され、該ジェット推進舟艇は、舟艇からの水流の経路の内外に旋回可能な後進ゲートであって、該後進ゲートは、それによって可変ゲート方向を有する、後進ゲートと、舟艇の操縦者からコマンドを得るための操縦者インタフェースと、該コマンドをそこから受信するために操縦者インタフェースと通信する制御電子装置であって、該制御電子装置は、該コマンドに応答してゲート方向の目標設定を評価し、目標設定は、該舟艇の少なくとも1つの操縦条件に基づいて評価され、該制御電子装置は、該目標設定に基づいて制御信号を発する、制御電子装置と、該制御信号に応答してゲート方向を調整するように動作可能な作動デバイスと、を備える。
【0007】
また、ジェット推進舟艇のためのトリムおよび後進システムが提供され、該舟艇は、可変トリム角度を有するように鉛直方向に旋回可能な操舵ノズルを含み、該舟艇は、可変ゲート方向を有するように旋回可能な後進ゲートをさらに含み、該トリムおよび後進システムは、ノズルおよび後進ゲートに動作的に接続される可動アクチュエータであって、トリム角度およびゲート方向が該アクチュエータの動きの関数として調整される、可動アクチュエータと、トリム角度およびゲート方向の目標設定を評価するための制御電子装置であって、該制御電子装置は該目標設定に基づいてアクチュエータの運動を制御する、制御電子装置と、を備える。
【0008】
第2に、ジェット推進舟艇のための電子支援の後進ゲートシステムによって、上述の欠点のうちの少なくとも一部が緩和され、該舟艇は、舟艇からの水流の経路の内外に旋回可能な後進ゲートを含み、該後進ゲートは、それによって可変ゲート方向を有し、該舟艇は、舟艇の操縦者からコマンドを得るための操縦者インタフェースをさらに含み、該後進ゲートシステムは、該コマンドをそこから受信するために操縦者インタフェースと通信する制御電子装置であって、該制御電子装置は、該コマンドに応答してゲート方向の目標設定を評価し、目標設定は、該舟艇の少なくとも1つの操縦条件に基づいて評価され、該制御電子装置は、該目標設定に基づいて制御信号を発する、制御電子装置と、該制御信号に応答してゲート方向を調整するように動作可能な作動デバイスと、を備える。
【0009】
また、ジェット推進舟艇が提供され、該舟艇は、該舟艇からの水流の経路の内外に旋回可能な後進ゲートであって、該後進ゲートは、それによって可変ゲート方向を有する、後進ゲートと、舟艇の操縦者からコマンドを得るための操縦者インタフェースと、該コマンドをそこから受信するために操縦者インタフェースと通信する制御電子装置であって、該制御電子装置は、該コマンドに応答してゲート方向の目標設定を評価し、目標設定は、該舟艇の少なくとも1つの操縦条件に基づいて評価され、該制御電子装置は、該目標設定に基づいて制御信号を発する、制御電子装置と、該制御信号に応答してゲート方向を調整するように動作可能な作動デバイスと、を備える。
【0010】
第3に、ジェット推進舟艇のための自動トリムシステムによって、上述の欠点のうちの少なくとも一部が緩和され、該舟艇は、フルアップトリム位置とフルダウントリム位置との間で鉛直方向に旋回可能な操舵ノズルを含み、該操舵ノズルは、該フルアップトリム位置に対する可変下向き方向のトリム角度を定義し、該舟艇は、舟艇の操舵角度を測定するための操舵角度センサをさらに含み、該トリムシステムは、該操舵角度をそこから受信し、該操舵角度を監視するための操舵センサと通信する制御電子装置であって、該制御電子装置は、操舵角度に基づいてトリム角度の目標設定を評価し、該制御電子装置は、該目標設定に基づいて制御信号を自動的に発する、制御電子装置と、該制御信号に応答してトリム角度を調整するように動作可能な作動デバイスと、を備える。
【0011】
また、ジェット推進舟艇が提供され、該舟艇は、フルアップトリム位置とフルダウントリム位置との間で鉛直方向に旋回可能な操舵ノズルであって、該操舵ノズルは、該フルアップトリム位置に対する可変下向き方向のトリム角度を定義する、操舵ノズルと、舟艇の操舵角度を測定するための操舵角度センサと、該操舵角度をそこから受信し、該操舵角度を監視するために操舵センサと通信する制御電子装置であって、該制御電子装置は、操舵角度に基づいてトリム角度の目標設定を評価し、該制御電子装置は、該目標設定に基づいて制御信号を自動的に発する、制御電子装置と、該制御信号に応答してトリム角度を調整するように動作可能な作動デバイスと、を備える。
【0012】
有用にも、上述の実施形態は、改善された舟艇の復原性を提供し、制動機能のような種々の機能に対する後進ゲートの使用を可能とし、舟艇を減速または停止させること、あるいは舟艇を中立位置に保持すること、および推進速度を絶対ゼロから、エンジンのアイドリング時の前進または後進推力によって達成される最小速度までの、無段可変推進速度を提供することを可能とする。
【0013】
他の特徴および利点が、添付図面を参照して、その好適な実施形態を読み取ることで、より適切に理解される。
本発明は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
ジェット推進舟艇のための共通作動のトリムおよび後進システムであって、該舟艇は、可変トリム角度を有するように鉛直に旋回可能な操舵ノズルを含み、該舟艇は、可変ゲート方向を有するように旋回可能な後進ゲートをさらに含み、該トリムおよび後進システムは、
可動アクチュエータと、
該アクチュエータに接続され、該アクチュエータの動きの関数として該トリム角度およびゲート方向を調整するように動作可能な、運動伝達機構と、
該トリム角度およびゲート方向の目標設定を評価するための制御電子装置であって、該目標設定に基づいて該アクチュエータの該動きを制御する、制御電子装置と、
を備える、トリムおよび後進システム。
(項目2)
前記運動伝達機構は、前記アクチュエータの前記動きを前記ノズルおよび前記後進ゲートの運動シーケンスに伝達し、該運動シーケンスは、
該ノズルが下方へ向かって旋回し、該後進ゲートが該ノズルを遮らない状態を保持する、トリムセグメントと、
該後進ゲートが、該ノズルから放出される水流の経路内に旋回される、遮断セグメントと、
を含む、項目1に記載のトリムおよび後進システム。
(項目3)
前記運動伝達機構は、
前記アクチュエータが動くときに前記後進ゲートを旋回させるために、該アクチュエータと該後進ゲートとを接続する、駆動部材と、
前記トリム角度を前記ゲート方向と関連付ける、案内配列と、
を備える、項目1に記載のトリムおよび後進システム。
(項目4)
前記アクチュエータの前記動きは、略直線状であり、
前記駆動部材は、略縦方向に平行移動可能な伝達板を備え、該伝達板は、その旋回軸をオフセットする、該アクチュエータに接続された第1の端部と、該後進ゲートに接続された第2の端部とを有する、項目3に記載のトリムおよび後進システム。
(項目5)
前記案内配列は、
前記伝達板から略鉛直方向に突出する側壁であって、案内スロットをその中に備える、側壁と、
該案内スロットと協働するカム従動子であって、該ノズルの旋回に動作的に接続される、カム従動子と、
を備える、項目4に記載のトリムおよび後進システム。
(項目6)
前記運動伝達機構は、
前記舟艇に旋回可能に取り付けられた旋回点と、前記伝達板に旋回可能に接続された上端部とを有する、後進ゲートレバーと、
前記舟艇に取り付けられた旋回点と、該旋回点の両側に上端部および下端部とを有するトリム制御レバーであって、該下端部は、前記ノズルを鉛直に旋回させるために該ノズルに接続され、該上端部は、前記カム従動子を含み、該トリム制御レバーは該後進ゲートレバーによって作動される、トリム制御レバーと、
をさらに備える、項目5に記載のトリムおよび後進システム。
(項目7)
前記アクチュエータの動きは回転運動であり、
前記駆動部材は、前記後進ゲートを旋回させるために該後進ゲートに動作可能に接続された、回転可能な駆動軸を備え、
前記案内配列は、該後進ゲート内に提供された案内スロットと、該案内スロットと協働するカム従動子とを備え、該カム従動子は、前記ノズルの旋回に動作的に接続される、項目3に記載のトリムおよび後進システム。
(項目8)
前記目標設定は、前進設定と、中立設定と、後進設定とを含む、項目1に記載のトリムおよび後進システム。
(項目9)
前記目標設定は、低速モード、制動モード、およびトリム制御モードのうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載のトリムおよび後進システム。
(項目10)
可変トリム角度を有するように、鉛直方向に旋回可能な操舵ノズルと、
可変ゲート方向を有するように、旋回可能な後進ゲートと、
可動アクチュエータと、
該アクチュエータに接続され、該アクチュエータの運動の関数として該トリム角度およびゲート方向を調整するように動作可能な、運動伝達機構と、
該トリム角度およびゲート方向の目標設定を評価するための制御電子装置であって、該目標設定に基づいて該アクチュエータの運動を制御する、制御電子装置と
を備える、ジェット推進舟艇。
(項目11)
前記運動伝達機構は、前記アクチュエータの運動を前記ノズルおよび前記後進ゲートの運動シーケンスに伝達し、該運動シーケンスは、
該ノズルが下方へ向かって旋回し、該後進ゲートは該ノズルを遮らない状態を保持する、トリムセグメントと、
該後進ゲートが、該ノズルから放出された水流の経路内に旋回される、遮断セグメントと、
を含む、項目10に記載のジェット推進舟艇。
(項目12)
前記運動伝達機構は、
前記アクチュエータが動いたときに前記後進ゲートを旋回させるための、該アクチュエータと該後進ゲートとを接続する、駆動部材と、
前記トリム角度を前記ゲート方向と関連付ける、案内配列と、
を備える、項目10に記載のジェット推進舟艇。
(項目13)
前記アクチュエータの動きは、略直線状であり、
前記駆動部材は、略縦方向に平行移動可能な伝達板を備え、該伝達板は、その旋回軸をオフセットする、該アクチュエータに接続された第1の端部と、前記後進ゲートに接続された第2の端部とを有し、
前記案内配列は、該伝達板から略鉛直に突出する側壁を備え、該側壁は、案内スロットをその中に含み、該案内配列は、該案内スロットと協働するカム従動子をさらに備え、該カム従動子は前記ノズルの旋回に動作的に接続される、項目12に記載のトリムおよび後進システム。
(項目14)
前記アクチュエータの動きは回転運動であり、
前記駆動部材は、前記後進ゲートを旋回させるために該後進ゲートに動作可能に接続された、回転可能な駆動軸を備え、
前記案内配列は、該後進ゲート内に提供された案内スロットと、該案内スロットと協働するカム従動子とを備え、該カム従動子は、前記ノズルの旋回に動作的に接続される、項目12に記載のトリムおよび後進システム。
(項目15)
操縦者インタフェースをさらに備える、項目10に記載のジェット推進舟艇であって、該操縦者インタフェースは、前記制御電子装置と通信するFNRセレクタを備え、前記目標設定は、少なくとも該FNRセレクタの状態に基づいて評価された、前進設定、中立設定、および後進設定を含む、舟艇。
(項目16)
操縦者インタフェースをさらに備える、項目10に記載のジェット推進舟艇であって、該操縦者インタフェースは、前記制御電子装置と通信する制動レバーを備え、前記目標設定は、少なくとも該制動レバーの状態に基づいて評価された制動設定を含む、舟艇。
(項目17)
ジェット推進舟艇のためのトリムおよび後進システムであって、該舟艇は、可変トリム角度を有するように鉛直方向に旋回可能な操舵ノズルを含み、該舟艇は、可変ゲート方向を有するように旋回可能な後進ゲートをさらに含み、該トリムおよび後進システムは、
該ノズルおよび該後進ゲートに動作的に接続される可動アクチュエータであって、該トリム角度およびゲート方向が、該アクチュエータの動きの関数として調整される、可動アクチュエータと、
該トリム角度およびゲート方向の目標設定を評価するための制御電子装置であって、該目標設定に基づいて該アクチュエータの該動きを制御する、制御電子装置と
を備える、トリムおよび後進システム。
(項目18)
前記目標設定は、前進設定と、中立設定と、後進設定とを含む、項目10に記載のトリムおよび後進システム。
(項目19)
前記目標設定は、低速モード、制動モード、およびトリム制御モードのうちの少なくとも1つを含む、項目10に記載のトリムおよび後進システム。
(項目20)
ジェット推進舟艇のための電子支援の後進ゲートシステムであって、該舟艇は、該舟艇からの水流の経路の内外に旋回可能な後進ゲートを含み、該後進ゲートは、それによって可変ゲート方向を有し、該舟艇は、該舟艇の操縦者からコマンドを得るための操縦者インタフェースをさらに含み、該後進ゲートシステムは、
該コマンドをそこから受信するために該操縦者インタフェースと通信する制御電子装置であって、該制御電子装置は、該コマンドに応答して該ゲート方向の目標設定を評価し、該目標設定は、該舟艇の少なくとも1つの操縦条件に基づいて評価され、該制御電子装置は、該目標設定に基づいて制御信号を発する、制御電子装置と、
該制御信号に応答して該ゲート方向を調整するように動作可能な作動デバイスと
を備える、後進ゲートシステム。
(項目21)
前記少なくとも1つの操縦条件は、エンジン回転速度、スロットル入力、前記舟艇の操舵角度、該舟艇の前方または後方姿勢、および該舟艇の対水速度または対地速度のうちの少なくとも1つを備える、項目20に記載の後進ゲートシステム。
(項目22)
前記目標設定は、
フル前進設定であって、前記後進ゲートが前記水流の前記経路外の位置にある、フル前進設定と、
フル後進設定であって、該後進ゲートが該水流の該経路内の位置にある、フル後進設定と、
を備える、項目20に記載の後進ゲートシステム。
(項目23)
前記目標設定は、中立設定をさらに含み、該中立設定においては、前記後進ゲートが中間位置に設定され、かつ前記制御電子装置が較正値に基づいて該中間位置を評価する、項目22に記載の後進ゲートシステム。
(項目24)
前記制御電子装置は、エンジン回転速度、トリム角度、および舟艇の姿勢のうちの前記少なくとも1つにさらに基づいて、前記中間位置を評価する、項目23に記載の後進ゲートシステム。
(項目25)
前記制御電子装置は、前記少なくとも1つの操縦条件を監視し、該少なくとも1つ操縦条件を所定の基準と比較し、かつ、該所定の基準が満たされた場合には、前記後進ゲートを前記中立設定に自動的に設定するように、さらに動作可能である、項目23に記載の後進ゲートシステム。
(項目26)
前記所定の基準は、エンジン回転速度の閾値、前記舟艇の速度の閾値、操縦者の落水の検出、スロットル入力、および制動制御の作動のうちの少なくとも1つを備える、項目25に記載の後進ゲートシステム。
(項目27)
前記目標設定は、前記操縦者からの低速モードコマンドに応答する可変位置を備え、前記制御電子装置は、該操縦者からの前進コマンドと後進コマンドとの間の選択に基づいて該可変位置を評価し、該可変位置が基づく前記少なくとも1つの操縦条件は、スロットル入力値を備える、項目20に記載の後進ゲートシステム。
(項目28)
前記制御電子装置は、所望の舟艇速度に対する前記スロットル入力値のスケーリングされたマッピングに基づいて、前記可変位置を評価する、項目27に記載の後進ゲートシステム。
(項目29)
前記可変位置が基づく前記少なくとも1つの操縦条件は、エンジン回転速度をさらに備える、項目27に記載の後進ゲートシステム。
(項目30)
前記目標設定は、前記操縦者からの制動コマンドに応答する制動位置を備え、前記制御電子装置は、前記後進ゲートを該制動位置に設定すべきかどうかを判断するために、前記少なくとも1つの操縦条件を使用する、項目20に記載の後進ゲートシステム。
(項目31)
前記少なくとも1つの操縦条件は、エンジン回転速度、スロットル入力、前記操縦者からの前記制動コマンドのレベル、前記舟艇の操舵角度、該舟艇の前方または後方姿勢、および該舟艇の対水速度または対地速度のうちの少なくとも1つを備える、項目30に記載の後進ゲートシステム。
(項目32)
ジェット推進舟艇であって、該舟艇は、
後進ゲートであって、該舟艇からの水流の経路の内外に旋回可能であり、それによって可変ゲート方向を有する、後進ゲートと、
該舟艇の操縦者からコマンドを得るための、操縦者インタフェースと、
該コマンドをそこから受信するために該操縦者インタフェースと通信する制御電子装置であって、該制御電子装置は、該コマンドに応答して該ゲート方向の目標設定を評価し、該目標設定は、該舟艇の少なくとも1つの操縦条件に基づいて評価され、該制御電子装置は、該目標設定に基づいて制御信号を発する、制御電子装置と、
該制御信号に応答して該ゲート方向を調整するように動作可能な、作動デバイスと、
を備える、舟艇。
(項目33)
前記操縦者インタフェースは、フル前進コマンドと、フル後進コマンと、中立コマンドとの間の選択を前記制御電子装置に提供するためのFNR制御を備え、前記目標設定は、
該フル前進コマンドに応答するフル前進設定であって、前記後進ゲートは、前記水流の経路外の位置にある、フル前進設定と、
該フル後進コマンドに応答するフル後進設定であって、該後進ゲートは、該水流の経路内の位置にある、フル後進設定と、
該中立コマンドに応答する中立設定であって、該後進ゲートは、中間位置に設定され、前記制御電子装置は、較正値に基づいて該中間位置を評価する、中立設定と、
を備える、項目32に記載のジェット推進舟艇。
(項目34)
前記制御電子装置は、エンジン回転速度、トリム角度、および舟艇の姿勢のうちの前記少なくとも1つにさらに基づいて、前記中間位置を評価する、項目33に記載のジェット推進舟艇。
(項目35)
前記制御電子装置は、前記少なくとも1つの操縦条件を監視し、該少なくとも1つの操縦条件を所定の基準と比較し、かつ、該所定の基準が満たされた場合には、前記後進ゲートを前記中立設定に自動的に設定するように、さらに動作可能である、項目33に記載のジェット推進舟艇。
(項目36)
前記所定の基準は、エンジン回転速度の閾値、前記舟艇の速度の閾値、操縦者の落水の検出、スロットル入力、および制動制御の作動のうちの少なくとも1つを備える、項目35に記載のジェット推進舟艇。
(項目37)
前記操縦者インタフェースは、
低速モードコマンドを前記制御電子装置に提供するための低速制御と、
フル前進コマンドとフル後進コマンドとの間の選択を該制御電子装置に提供するための方向制御と、
を備え、前記目標設定は、該低速モードコマンドに応答する可変位置を備え、該制御電子装置は、フル前進コマンドとフル後進コマンドとの間の該選択に基づいて、該可変位置を評価し、該可変位置が基づく前記少なくとも1つの操縦条件は、スロットル入力値を備える、項目32に記載のジェット推進舟艇。
(項目38)
前記制御電子装置は、所望の舟艇速度に対する前記スロットル入力値のスケーリングされたマッピングに基づいて、前記可変位置を評価する、項目37に記載のジェット推進舟艇。
(項目39)
前記操縦者インタフェースは、制動コマンドを前記制御電子装置に提供するための制動制御を備え、前記目標設定は、該制動コマンドに応答する制動位置を備え、該制御電子装置は、前記後進ゲートを該制動位置に設定すべきかどうかを判断するために、前記少なくとも1つの操縦条件を使用する、項目32に記載のジェット推進舟艇。
(項目40)
前記少なくとも1つの操縦条件は、エンジン回転速度、スロットル入力、前記操縦者からの前記制動コマンドのレベル、前記舟艇の操舵角度、該舟艇の操舵角度、該舟艇の前方または後方姿勢、および該舟艇の対水速度または対地速度のうちの少なくとも1つを備える、項目39に記載のジェット推進舟艇。
(項目41)
エンジン回転速度をそれに提供するために前記制御電子装置と通信するエンジンをさらに備える、項目32に記載のジェット推進舟艇であって、該エンジン回転速度は、前記少なくとも1つの操縦条件のうちの1つを定義する、舟艇。
(項目42)
スロットル入力をそれに提供するために前記制御電子装置と通信するスロットル制御をさらに備える、項目32に記載のジェット推進舟艇であって、該スロットル入力は、前記少なくとも1つの操縦条件のうち1つを定義する、舟艇。
(項目43)
それぞれが前記少なくとも1つの操縦条件のうちの1つを感知する、少なくとも1つのセンサをさらに備える、項目32に記載のジェット推進舟艇であって、該センサのそれぞれは、該少なくとも1つの操縦条件のうちの1つに対応するデータをそれに提供するために前記制御電子装置と通信する、舟艇。
(項目44)
前記少なくとも1つのセンサは、姿勢センサ、操舵角度センサ、および速度センサのうちの1つを備える、項目43に記載のジェット推進舟艇。
(項目45)
ジェット推進舟艇のための自動トリムシステムであって、該舟艇は、フルアップトリム位置とフルダウントリム位置との間を鉛直方向に旋回可能な操舵ノズルを含み、該操舵ノズルは、該フルアップトリム位置に対する可変下向き方向のトリム角度を定義し、該舟艇は、該舟艇の操舵角度を測定するための操舵角度センサをさらに含み、該トリムシステムは、
該操舵角度をそこから受信し、かつ該操舵角度を監視するために、該操舵センサと通信する制御電子装置であって、該制御電子装置は、該操舵角度に基づいて該トリム角度の目標設定を評価し、該制御電子装置は、該目標設定に基づいて制御信号を自動的に発する、制御電子装置と、
該制御信号に応答して該トリム角度を調整するように動作可能な、作動デバイスと、
を備える、トリムシステム。
(項目46)
前記トリム角度に対する前記目標設定は、前記操舵角度に略比例する、項目44に記載の自動トリムシステム。
(項目47)
前記目標設定は、前記監視された操舵角度が左右の蛇行の繰り返しを反映する場合には、前記ノズルの前記フルダウントリム位置に対応するように選択される、項目44に記載の自動トリムシステム。
(項目48)
前記制御電子装置は、前記舟艇の速度に基づいて前記目標設定をさらに評価する、項目44に記載の自動トリムシステム。
(項目49)
前記トリム角度に対する前記目標設定は、前記舟艇の前記速度に略反比例する、項目48に記載の自動トリムシステム。
(項目50)
前記制御電子装置は、前記トリム角度に対する前記目標設定を、前記操舵角度に比例し、かつ前記舟艇の前記速度に反比例するように、バランスさせる、項目48に記載の自動トリムシステム。
(項目51)
前記トリム角度に対する前記目標設定は、前記舟艇の姿勢にさらに基づく、項目50に記載の自動トリムシステム。
(項目52)
前記トリム角度に対する前記目標設定は、前記操舵角度の変化率にさらに基づく、項目44に記載の自動トリムシステム。
(項目53)
前記トリム角度に対する前記目標設定は、エンジン回転速度、スロットル入力、および後進ゲートの位置のうちの少なくとも1つにさらに基づく、項目44に記載の自動トリムシステム。
(項目54)
ジェット推進舟艇であって、該舟艇は、
フルアップトリム位置とフルダウントリム位置との間を鉛直方向に旋回可能な操舵ノズルであって、該操舵ノズルは、該フルアップトリム位置に対する可変下向き方向のトリム角度を定義する、操舵ノズルと、
該舟艇の操舵角度を測定するための、操舵角度センサと、
該操舵角度をそこから受信し、かつ該操舵角度を監視するために、該操舵センサと通信する制御電子装置であって、該制御電子装置は、該操舵角度に基づいて該トリム角度の目標設定を評価し、該制御電子装置は、該目標設定に基づいて制御信号を自動的に発する、制御電子装置と、
該記制御信号に応答して該トリム角度を調整するように動作可能な、作動デバイスと、
を備える、舟艇。
(項目55)
前記トリム角度に対する前記目標設定は、前記操舵角度に略比例する、項目54に記載のジェット推進舟艇。
(項目56)
前記目標設定は、前記監視された操舵角度が左右の蛇行の繰り返しを反映する場合には、前記ノズルの前記フルダウントリム位置に対応するように選択される、項目54に記載のジェット推進舟艇。
(項目57)
前記舟艇の速度をそれに提供するために前記制御電子装置と通信する速度センサをさらに備える、項目54に記載のジェット推進舟艇であって、該制御電子装置は、該舟艇の該速度に基づいて該目標設定をさらに評価する、舟艇。
(項目58)
前記トリム角度に対する前記目標設定は、前記舟艇の前記速度に略反比例する、項目57に記載のジェット推進舟艇。
(項目59)
前記制御電子装置は、前記トリム角度に対する前記目標設定を、前記操舵角度に比例し、かつ前記舟艇の前記速度に反比例するように、バランスさせる、項目57に記載のジェット推進舟艇。
(項目60)
前記舟艇の姿勢をそれに提供するために前記制御電子装置と通信する、傾斜センサをさらに備える、項目59に記載のジェット推進舟艇であって、前記トリム角度に対する前記目標設定は、該舟艇の該姿勢にさらに基づく、舟艇。
(項目61)
前記トリム角度に対する前記目標設定は、前記操舵角度の変化率にさらに基づく、項目54に記載のジェット推進舟艇。
(項目62)
前記トリム角度に対する前記目標設定は、エンジン回転速度、スロットル入力、および後進ゲートの位置のうちの少なくとも1つにさらに基づく、項目54に記載のジェット推進舟艇。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、一実施形態による、電子制御のトリムおよび後進システムの機能図である。
【図2A】図2Aは、アクチュエータが引き込み位置にある、一実施形態による、共通作動のトリムおよび後進システムの一部の、右舷の概略図である。
【図2B】図2Bは、アクチュエータが引き込み位置にある、一実施形態による、共通作動のトリムおよび後進システムの一部の、左舷の概略図である。
【図3】図3は、アクチュエータが第1の伸長位置にあり、ノズルが完全に下向きにトリムされた、図2Aのシステムの右舷の概略図である。
【図4】図4は、アクチュエータが第2の伸長位置にあり、ノズルが上向きに動き、後進ゲートが部分的に下げられた、図3のシステムの右舷の図である。
【図5】図5は、アクチュエータが完全伸長位置にあり、ノズルが中立鉛直方向を向き、後進ゲートが完全に下げられた、図4のシステムの右舷の図である。
【図6A】図6Aは、図2A〜図5の実施形態によるシステムをより詳細に表す、斜視図である。
【図6B】図6Bは、図2A〜図5の実施形態によるシステムをより詳細に表す、上面図である。
【図6C】図6Cは、図2A〜図5の実施形態によるシステムをより詳細に表す、右舷の図である。
【図6D】図6Dは、図2A〜図5の実施形態によるシステムをより詳細に表す、左舷の図である。
【図6E】図6Eは、図2A〜図5の実施形態によるシステムをより詳細に表す、後面図である。
【図7A】図7Aは、別の実施形態による、共通作動のトリムおよび後進システムの概略斜視図であり、後進ゲートを完全に上げた状態を示す。
【図7B】図7Bは、別の実施形態による、共通作動のトリムおよび後進システムの概略斜視図であり、後進ゲートを完全に下げた状態を示す。
【図8】図8は、図7Aおよび図7Bのシステムとの協働に適したアクチュエータの斜視図である。
【図9】図9は、前進、後進、および中立設定を提供する一実施形態による、電子支援の後進ゲートシステムを例示する機能図である。
【図10A】図10Aは、「低速」モードを提供する実施形態による、電子支援の後進ゲートシステムを例示する機能図である。
【図10B】図10Bは、「低速」モードを提供する実施形態による、電子支援の後進ゲートシステムを例示する機能図である。
【図11】図11は、制動機能を提供する一実施形態による、電子支援の後進ゲートシステムを例示する機能図である。
【図12】図12は、制動機能の背後にあるロジックの一実施例のブロック図である。
【図13A】図13Aおよび図13Bは、異なる実施形態による、自動トリムシステムを例示する機能図である。
【図13B】図13Aおよび図13Bは、異なる実施形態による、自動トリムシステムを例示する機能図である。
【図14A】図14Aは、本明細書に記載したシステムのうちの少なくとも1つが提供される、ジェット推進舟艇の側面図である。
【図14B】図14Bは、本明細書に記載したシステムのうちの少なくとも1つが提供される、ジェット推進舟艇の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本説明は、概して、ジェット推進舟艇の鉛直方向トリム、そのような舟艇のための後進ゲートの操作、またはその両方を制御するための、電子支援のシステムに関する。
【0016】
本明細書において説明されるシステムは、ジェットボートまたは個人用舟艇のような、ジェット駆動によって推進される任意の舟艇を対象とする。よって、図14Aおよび図14Bを参照すると、舟艇16は、舟艇の後方に放出される強力な水流を形成する、インペラに接続されたエンジンを含み、舟艇は、その反作用で前方へ推進される。操舵およびトリムノズル22は、インペラの後方に提供され、船を操縦する操縦者からのコマンドに応答して、舟艇16を左右に操舵するために、水平に旋回可能である。この目的のために、舟艇は、操縦者からコマンドを受信する操縦者インタフェース12を含む。一般的に、個人用舟艇の場合、船のハンドルは、例えばハンドルを右に回転させるとノズルが左に旋回して、舟艇の方向が右に変わるように、ケーブル連結を介してノズル22に接続される。ノズル22は、舟艇をトリムさせるために鉛直にも旋回可能であり、それによって、トリム角度を定義する。トリム角度は、本明細書では、操舵ノズル22の舟艇の水平軸に対する傾斜の程度であると理解される。舟艇は、水流の反転ループを画定する後進ゲート20をさらに含む。後進ゲート20は、舟艇のノズル22を出た水流の経路の内外に旋回可能であり、したがって、調節可能なゲート方向を有する。「ゲート方向」という表現は、本明細書では、後進ゲート20を、ノズルからの水流の経路内に旋回させる程度のことであると理解される。好適な一実施形態では、以下の説明で分かるように、操縦者はまた、操縦者インタフェースによってトリムおよび/または後進システムを制御し得る。
【0017】
図1を参照すると、ジェット推進舟艇のためのトリムおよび後進システム10の機能図が示されている。
【0018】
図1のトリムおよび後進システム10は、まず、コマンドをそこから受信するために操縦者インタフェース12と通信する制御電子装置14を含む。操縦者からのコマンドは、例えば、全速前進、全速後進、または中立モード、低速モード、制動コマンド等を要求し得る。制御電子装置14は、舟艇16の操縦用構成要素と通信して、舟艇の操縦条件を得ることができる。これらの操縦用構成要素は、例えば、その現在の回転速度を提供するエンジン、操舵角度を提供する操舵角度センサ、舟艇の対水速度または対地速度(SOW/SOG)を提供する速度センサ、前方/後方姿勢を提供する傾斜センサ、スロットル入力を含む。制御電子装置14は、操縦者からのコマンドを、好適にも舟艇の操縦条件をも考慮した制御信号に変換する。
【0019】
アクチュエータ18がさらに提供され、制御電子装置14に接続され、制御信号をそこから受信する。本明細書に記載の実施形態では、単一のアクチュエータが、舟艇のトリムおよび後進機能の両方を制御するために使用されるが、当業者は、2つの別個のアクチュエータが代替的に使用され得ることを理解する。単一のアクチュエータの使用は、有用にもシステムを簡素化し、また、機械的構成要素の数を少なくするので、保守および修理の機会を減らし得る。本発明の例示の実施形態では、アクチュエータ18は、例えば、縦方向経路に沿って直線的に変位可能な平行移動ロッド、または回転駆動軸によって具現化され得る。
【0020】
図1の例示されたトリムおよび後進システム10は、アクチュエータ18、後進ゲート20、およびノズルの鉛直制御26(すなわち「VTS」)への接続が提供される運動伝達機構24をさらに含む。運動伝達機構24は、好適にも機械的構成要素の組み立て体を含み、それは、アクチュエータ18の直線または回転変位を、後進ゲート20、およびノズル22の鉛直制御26の所定の運動シーケンスに沿って変換する。
【0021】
図1のトリムおよび後進システムの種々の局面が、以下に詳述される。
【0022】
(共通作動のトリムおよび後進システム)
図1のシステムの一局面によれば、ノズルのトリム角度および後進ゲートのゲート方向は、共通作動のトリムおよび後進システムによって制御される。本システムは、可動アクチュエータと、該アクチュエータに接続された運動伝達機構とを含む。運動伝達機構は、アクチュエータの動きの関数として、トリム角度およびゲート方向を調整するように動作可能である。制御電子装置が、トリム角度およびゲート方向の目標設定を評価し、これらの目標設定に基づいて、アクチュエータの運動を制御する。
【0023】
図2A、図2B、および図6A〜図6Eを参照すると、運動伝達機構24の好適な実施形態が示されている。しかしながら、この特定の機構が一例として示されたものであり、多数の他の組み立て体および構成要素が、同様な結果を得るために代替的に使用され得ることが、当業者によって明らかに理解される。以下の説明では、「前進」および「後進」という指示は、舟艇の方向に関して使用され、前進方向とは、船の通常の移動方向である。
【0024】
例示の実施形態では、ノズル22は、ブラケット38を介してインペラ40の出力に取り付けられ、水平に伸びるねじ42によって画定される旋回軸の回りに鉛直に旋回可能である。後進ゲート20は、略茶碗形であり、以下に詳述するように伝達機構に旋回可能に接続された上部アーム34と、ノズル22の両側に旋回可能に取り付けられた一対の下部アーム36とを有する。アクチュエータ18は、略縦方向経路に沿って動く平行移動ロッドである。アクチュエータは、水平方向から外れるか、または異なる方向を有し得ることが理解される。
【0025】
運動伝達機構24は好適にも、アクチュエータ18が動いたときに後進ゲート20を旋回させるための、アクチュエータ18と後進ゲート20とを接続する駆動部材を含む。図2Aおよび図2Bの例示の実施形態では、駆動部材は、概ね水平に伸びた伝達板28によって具現化され、該伝達板は、その旋回軸をオフセットする、アクチュエータ18に接続された第1の端部と、後進ゲートに接続された第2の端部とを有する。例示の実施形態では、アクチュエータ18は、アクチュエータに接続するための、伝達板28の前面端部30に取り付けられたカラー50を含む。したがって、伝達板28は、アクチュエータ18がその縦方向経路に沿って変位したときには、水平に近い平面に沿って、縦方向に平行移動される。
【0026】
運動機構は好適にも、トリム制御レバー44と、後進ゲート制御レバー46とをさらに含む。レバー44および46は好適にも、いずれもねじ42の上に旋回可能に載置され、したがって、ノズルと同じ旋回軸の回りに旋回可能である。後進ゲートレバー46がシステム10の両側にレバーアーム48を有するのに対して、トリム制御レバー44は、右舷側のみに伸びていることに留意されたい。
【0027】
後進ゲート制御レバー46は、運動伝達板28の後端部32に旋回可能に取り付けられた上端部52を有する。後進ゲート制御レバー46の上端部は、後進ゲート20の上部アーム34に取り付けられた支持レバー54をも備える。このようにして、運動伝達板28がアクチュエータ18の動作の下で舟艇の後方へと平行移動したときには、後進ゲート制御レバー46の上端部52は後方に旋回し、後進ゲート20の上部アーム34は後方に平行移動し、かつ下方に回転する。この動きは、したがって、後進ゲートを適所に下げて、ノズル22からの水流を逆流させることができる。
【0028】
トリム制御レバー44は、その上端部57に取り付けられたカム従動子56と、運動伝達板28の側壁58内に提供された案内スロット60との共同動作の下で旋回する。例示の実施形態では、カム従動子56および案内スロット60は、舟艇の右舷に提供されているが、当然ながら、それらは他の場所に配置され得る。案内スロット60の形状および運動伝達板28の動きに対するその方向は、トリム制御レバー44の運動パターンを決定し、それは、次に、それに応じてノズル22を旋回させる。トリム角度をゲート方向と関連付ける他の案内配列が、代替的に提供され得ることが理解される。
【0029】
図2Aおよび図3〜図5を参照すると、上述した共通作動のトリムおよび後進システムの実施形態の運動シーケンスが例示されている。運動シーケンスは、アクチュエータ18が舟艇の後方へと平行移動するときに、後進ゲートを位置決めしノズルをトリムするために、システム10の構成要素が動く様子を示す。当然ながら、当業者によって容易に理解されるように、アクチュエータを舟艇の前方へと引き込むことは、関与する構成要素の逆の運動シーケンスをもたらす。また、操縦者によって与えられたコマンドに基づいて、アクチュエータは、所与の時間だけ縦方向の経路の一部に沿って動き得ることが理解される。
【0030】
図2Aは、アクチュエータ18が舟艇の前方へ完全に引き込まれた、運動シーケンスの開始位置を示す図である。この位置では、ノズル22は、その最も上向きのトリム方向にあり、また後進ゲート20も引き込み位置にある。
【0031】
アクチュエータ18が舟艇の後方へと平行移動するときには、運動シーケンスは、好適にも、最初にトリムセグメントを含み、ここでは、ノズル22が下方へ旋回し、後進ゲート20がノズル22を遮らない状態を保持する。例示の実施形態では、このセグメントの間に、カム従動子56は、案内スロット60の急傾斜部分62内を移動するが、これは、トリム制御レバー44の上端部57を舟艇の後方へ旋回させる効果を有し、これは次に、ブラケット38およびノズルを下方へ旋回させる。図3は、このトリムセグメントの終了時のシステムを示し、ノズルがその最も下のトリム位置にある。
【0032】
トリムセグメントの間に、後進ゲート制御レバー46の上端部52がまた、後方への旋回を開始し、後進ゲート20は、その引き込み位置から下降し始める。しかしながら、この動きは、ノズル22のトリムと比較して遅く、トリムセグメントの終了時(図3を参照)には、後進ゲート20は、まだノズル22を遮らない状態を保持する。
【0033】
運動シーケンスは、次いで、遮断セグメントを含み、ここでは、後進ゲート20が水流の経路内に旋回し、ノズル22は最適な後進鉛直方向に旋回する。このセグメントの開始時が図4に示され、その終了時が図5に示される。当然ながら、後進ゲートは、例えば、中立モードを提供するか、または低速モードで速度を制御するために、その間の任意の中間位置に設定され得ることが理解される。
【0034】
このセグメントの間に、カム従動子56は、案内スロット60の緩傾斜部分64に沿って移動するが、これは、最初に、トリム制御レバー44の上端部57を一定方向に保持する効果を有し、次いで、それを舟艇の前部に向かってゆっくりと押し戻し、ノズルを上方へゆっくりと旋回させる。このセグメントの終了時には、図5に示されるように、ノズル22は、舟艇の後進操縦に最適な鉛直位置にあり、すなわち、略水平に伸長する。
【0035】
同時に、後進ゲート制御レバー46の上端部52は、後方への旋回を継続し、後進ゲート20は、ノズル22の直後の適所に旋回する。該ゲートが下がるにつれて、ノズルからの水流のますます多くの部分が、前方へと方向を変えられる。遮断セグメントの終了時(図5を参照)には、後進ゲート20は、したがって、水流の最大部分が前方へと方向を変えられることによって、舟艇の移動方向を逆転するように配置される。
【0036】
図7A、図7B、および図8を参照すると、運動伝達機構24の別の実施形態が示されている。この場合、駆動部材は、後進ゲート20に動作可能に接続された回転可能な駆動軸100によって具現化され、その結果として、駆動軸100を回転することが、直接に後進ゲート20を旋回する。駆動軸100は好適にも、後進ゲート20の旋回軸に沿って伸びる。この場合、トリム角度をゲート方向と関連付ける案内配列は、後進ゲート20内に提供された案内スロット102によって具現化される。例示の実施形態では、一対の案内スロット102がそれぞれ後進ゲート20の両側に提供される。二次軸104のようなカム従動子は、前述の実施形態の案内配列と類似の様態で、案内スロットまたはスロット102と協働する。二次軸104は、ノズル22の旋回と動作的に接続される。図7Aおよび図7Bの実施形態では、二次軸は、ノズル22を囲み、それとともに旋回するブラケット106の両側から突出する。
【0037】
図8は、図7Aおよび図7Bの運動伝達機構の駆動に適切なアクチュエータ28の一実施例を示す。本実施形態のアクチュエータ28は、電気モータ108と、ギアボックス110と、回転運動を駆動軸に伝達するための回転可能なカップリング112とを含む。角度位置センサ114がまた、カップリング112の角度位置を感知するために提供される。
【0038】
この最近の実施形態の利点は、アクチュエータがノズルの側に配置され得ることである。
【0039】
当然ながら、アクチュエータおよび運動伝達機構は、他の任意の適切な要素の組み合わせによって具現化され得る。上述していない任意の関連する構成要素が、記載されたものに追加され得る。アクチュエータおよび制御電子装置は、空間の節約および相互間の通信を容易にするという利益のために、互いに一体化され得る。
【0040】
(電子支援の後進ゲートシステム)
図1のシステムの別の局面に従って、後進ゲートを制御するための有益な電子支援のシステムが提供される。このシステムでは、制御電子装置は、操縦者インタフェースからのコマンドに応答してゲート方向の目標設定を評価し、加えて、この評価の中で船の1つ以上の操縦条件を考慮する。制御電子装置は、次いで、適切な作動デバイスに制御信号を発して、ゲート方向を調整する。作動デバイスは、上述の実施形態のうちの1つに従ったものであり得るが、これに限定されるものではない。図1のシステムのこの局面の場合には、トリムおよび後進ゲートの作動が分離され得ること、またはトリムは全く調節可能でなくても良いことが、留意されるべきである。
【0041】
操縦条件は、例えば、エンジン回転速度、スロットル入力、制動コマンドのレベル、舟艇の操舵角度、舟艇の前方または後方姿勢、舟艇の対水速度または対地速度、あるいは任意の適切なそれらの組み合わせであり得る。
【0042】
このような電子支援の後進ゲートシステムは、従来技術のジェット推進舟艇では容易に利用できなかった種々の機能を、開発または改善する。そのような機能の実施例が、以下の項に示される。
【0043】
(a.前進−中立−後進セレクタ)
後進ゲートの電子制御は、異なる操縦モードを舟艇に提供するために使用され得る。この点に関して、後進ゲートに対する目標設定は、全力前進および全力後進設定を含み得、そこでは、後進ゲートはそれぞれ、水流の経路の外側または内側の位置にある。後進ゲートが中間位置に設定される中立設定が、任意選択で提供され得る。中立設定の中間位置は、工場で較正され、後に販売店または舟艇の所有者によって調整され得る。中間位置はまた、エンジン回転速度(RPM)、トリム角度または舟艇の姿勢、あるいはそれらの組み合わせのうちの1つに沿って、任意選択で補正され得る。
【0044】
レバーによって押したり引いたりされる機械式ケーブルの代わりに、異なる指示モードから選択するための、F−N−Rボタンが操縦者インタフェース上に提供され得る。多くの船舶用エンジンは、パワートレインに滑らかなシフトを提供するために、エンジンRPMを考慮して、所定の期間、エンジン出力のシフトを抑制または減じる。本システムは、エンジンRPM、ボートの速度、およびスロットル入力を考慮して、推進システムの損傷または操縦者の落下を回避する条件に基づいて、シフトを抑制し、または漸進的なシフトを提供し、および/またはエンジントルクを減じるように要求する能力を有する。
【0045】
制御電子装置はまた、舟艇の1つ以上の操縦条件を監視し、それらを所定の基準と比較し、これらの所定の基準が満たされた場合には、後進ゲートを中立設定に自動的に設定し得る。所定の基準は、エンジン回転速度対する閾値、舟艇の速度、スロットル入力、制動入力、および操縦者の落水の検出であり得る。このようにして、自動中立機能が提供される。
【0046】
例えば、そのような自動中立モードは、エンジンを始動している間、またはその後の、不要な、または突然の舟艇の運動を防止するために使用され得る。次いで、上述したように後進ゲートを中立設定に設定することができる。自動中立はまた、エンジンの停止中またはその後に、またはエンジンの起動中に使用され得る。エンジンの始動/停止状態が検出されたとき、例えば、ラニヤードが取り除かれたとき、またはエンジンがストールしたとき、あるいはユーザがそれを要求したときには、制御電子装置は、後進ゲートが中立設定に至るまでの十分な時間のあいだ、アクチュエータに動力を供給し続けるように選択し得る。舟艇が中立モードになると、次いで、電気システムの遮断が確認され得る。自動中立は、スロットル入力が閾値よりも低い低速度で接続され得、また逆に、自動中立は、より良好な再加速を提供する高速度では抑制される。
【0047】
(b.「低速」モード)
典型的な個人用舟艇では、船全体の性能およびアイドリング速度を最適化するために選択された固定ピッチにプロペラを設定し、後進ゲートを水流の経路から離して上昇させることによって、一定の前進推力が得られる。推力が、操縦者の求めるよりも速い前進速度を発生し得る一部の場合には、操縦者にスロットルを「前進」設定と「中立」設定との間で繰り返させて、低速度を達成する。
【0048】
後進で操縦するときには、後進ゲートが水流の経路内に下げられているので、ノズルからの同じアイドリング速度の水推力は、前進設定と同じ縦方向の速度を形成せず、操縦者に後進モードの追加スロットルを使用させ、前進モードのスロットルを解放させて、同じ加速/減速度を達成する。入渠操船中には、必要とされる異なるスロットル設定は、混乱を生じ、危険な状態に至る可能性がある。
【0049】
これらの問題の一部は、「低速」モードを提供することによって緩和され得る。目標設定は、操縦者からの低速モードコマンドに応答する可変位置を含み得る。制御電子装置は、操縦者の前進方向と後進方向との間の選択、およびスロットル入力値に基づいて、この可変位置を評価する。
【0050】
図10Aを参照すると、このような低速モードの好適な実施形態を例示する機能図が示されている。本実施形態では、操縦者インタフェースは、「低速」モードのオン/オフを切り換えることができる制御66を含む。当然ながら、他の任意のタイプの制御が、代替的に使用され得る。操縦者インタフェースはまた、スロットル制御68を含み、操縦者がそれを介してエンジン70の回転速度を制御する。FNRセレクタ72がまた、舟艇が前進、後進、または中立モードにあるかを、制御電子装置に通知する。
【0051】
低速モードが作動されたときには、制御電子装置は、アクチュエータ14を制御して、後進ゲートを中間下降位置に設定し、ノズルからの水流の一部だけの向きを前方に変える。このようにして、結果として得られる舟艇の速度は、後進ゲートを完全に上昇させた場合の速度未満となる。制御電子装置は好適にも、ユーザスロットルおよびエンジン70の回転速度を考慮し、所与のエンジンRPMの値が所定の速度に対応するように、後進ゲートの位置を制御する。
【0052】
舟艇が後進に設定され、低速モードが起動されたときには、制御電子装置は、後進ゲートをフル後進モードのときよりも若干高く設定し、したがって、後進ゲートはノズルの推力の大部分の向きを前方に変えて、所与のエンジンRPMの値での前進速度と同じ後進速度を提供する。
【0053】
好適にも、操縦者がスロットル制御68を介してスロットル入力を変化させた場合には、制御電子装置14は、後進ゲートを調整し、より多く、またはより少ない流れの向きを前方に変えて、前進または後進のいずれかで操縦中の舟艇の速度を、増加または減小し得る。スロットル入力のスケーリングがマッピングされ、標準を超えて拡張された速度/推力分解能を提供し得る。所望の速度に対するスロットル入力のスケーリングされたマッピングは、例えば、0%のスロットル入力が10%の正流に対応し得、50%のスロットル入力が30%の正流に対応し得る、というようなものであり得る。
【0054】
任意選択で、フルスロットルの適用は、最大推力を必要とする非常時の状態と解釈され得、それは、「低速モード」を自動的に無効にして、ノズルと後進ゲートとの完全な接続または完全な離脱を提供し得る。
【0055】
安全機能として、自動低速モードがまた提供され得、例えば、スロットルが所定の秒数を超えて作動されないとき、または制動が加えられたときには、スロットルを自動的に低速モードに戻し得る。例えば、このモードでは、50%のスロットル入力が、わずか10%のスロットル出力を提供するように使用され得、その結果として、50%の位置が実際には10%のスロットルを表す。その50%の値を超えて、スロットルは、時間関連または位置関連の機能を介して正常に戻ることができる。操縦モードでは、操縦者が所定の秒数のあいだスロットルを解放するか、または制動を加えた場合には、アルゴリズムは、制御スロットルの挙動を変化させて、不要な加速を防止し得る。この機能は、有用にも、運転者識別デバイスまたはシステムと連結されて、学習モードまたはバレット(valet)モードを実装し得る。
【0056】
代替的に、EMSにおける適切なスロットル入力とともに、本システムは、エンジンがアイドリングまたは低速の状態で、スロットル入力の特定の部分に対して可変流量制御を提供し得、一方で、スロットル入力範囲の残りの部分は、完全に遮られていないノズルに、フルエンジンRPMの調節能力を提供し得る。例えば、0〜25%のスロットル入力では、制御電子装置によってエンジンはアイドリングされ、一方で、ゲート方向は、中立と前進との間の、低速範囲内で調節され得る。25%〜100%のスロットル入力は、ゲートをフル前進位置に設定し、一方で、エンジン速度はアイドリングから最大回転数までに調節され得る。低速FNR制動の機能図の例が図10Bに示されている。
【0057】
(c.制動モード)
舟艇は、その速度に基づいて、舟艇が部分的に水面上に上昇する滑走モードか、または舟艇の船体の大部分が水中にある排水量モードの、いずれかであり得る。
【0058】
舟艇の減速特性は、その速度によって大きく変化する。例えば、排水量モードでは、船体への水の摩擦のみが、舟艇への停止力として機能するので、スロットルをフェザリングまたはカットした場合、減速は穏やかである。さらに、排除された水の重量が、船に比較的高い慣性を与え、船を減速または停止させることに逆らう。
【0059】
滑走モードでは、舟艇の水との接触面積が大幅に減少し、ドラッグおよび摩擦効果が減少し、また、排水量は著しく少なくなる。スロットルをフェザリングまたはカットした場合、船体は、船体の形状、舟艇の操縦条件、および水の条件のような種々の要因に基づいて、滑走モードから排水モードへと略迅速に移行する。この移行は、短時間のあいだに顕著な減速度を発生し得る。
【0060】
熟練した操縦者の場合を除いて、制動目的でノズルの背後に後進ゲートを下げることは、概して、非常に不得策であると考えられる。一部のエンジンおよびポンプの運転条件は、後進ゲート、運動伝達機構、およびアクチュエータに危険な負荷をかける可能性がある。これは、例えば、舟艇が高いポンプ推力にあり、後進ゲートが水流の経路の内外に動かされる場合である。減速度がすでに顕著である条件下での、後進ゲートの偶発的な操作はまた、危険なものとなり得る。通常の後進操縦の下であっても、一部のエンジン負荷条件は、過度の応力をかけ、後進ゲートおよび関連する構成要素に損傷を与え得る。最後に、ノズルが一方向に向きを変えるときの後進推力の印加は、船の後部をノズルと同じ方向に動かす効果を有し得、それは、最終的に、操舵コマンドの方向とは反対の方向へ舟艇の向きを変えることになり、これは、当然ながら危険なものとなり得る。
【0061】
しかしながら、本発明のシステムは、舟艇の操縦条件を考慮することによって、および安全な状況下だけで後進ゲートを使用することによって、舟艇の制動に後進ゲートを使用することができる。したがって、目標設定は、操縦者からの制動コマンドに応答する制動位置と、後進ゲートをこの制動位置に設定すべきかどうかを判断するために、制御電子装置が操縦条件を使用することと、必要に応じての追加的エンジントルクの自動的な要求と、を含み得る。システムはまた、操舵角度を考慮して、エンジントルクの要求を制限または抑制し、その軌跡に影響を及ぼす可能性のある、その軸の回りの舟艇の回転を回避し得る。
【0062】
図11を参照すると、制動モードで使用される、本発明の好適な一実施形態によるシステムの機能図が示されている。例示のシステムでは、操縦者インタフェースは、制動制御74を含み、それは、レバー、スイッチ、ボタン、または他の適切な手段によって具現化され得る。ユーザからの制動コマンドは、制御電子装置14に転送される。制御電子装置は、エンジン70からのエンジンのRPM、スロットル制御68からのユーザスロットル、操舵角度センサ76からの操舵角度、および感知デバイス78からの種々の船の状態を考慮して、舟艇の操縦条件に照らしてこのコマンドを処理する。
【0063】
図12を参照すると、制御電子装置がどのようにこれらのパラメータの全てを処理するのかを示す図が、一例として示される。制御機能の背後にあるロジックは、舟艇ごとに異なり得ること、および、本発明の範囲を逸脱することなく、多数の他の構成が考慮され得ることが、明らかに理解される。
【0064】
上述のように、制御電子装置は、舟艇の操縦条件を表す種々のパラメータを分析し、それに応じて反応する。RPMの感知は、特定の閾値を超える後進作動を無効にして、システムへの損傷を回避し得る。速度の感知および/または船の姿勢の感知は、後進ゲートの作動を無効にして、最大減速度を超えないようにすべきかどうかを判断するために監視され得る。任意選択で、操舵角度センサからの情報は、船首が操舵方向と反対方向に旋回し得る状態で、制動機能を無効にすべきであると判断し得る。
【0065】
一部の条件では、後進ゲートがノズルを覆うように下げられたときのエンジンのアイドリング速度は、十分な減速度を生じさせるのに十分な後進推力を生成せず、制御電子装置は、これらの状況において、追加の後進推力を発生するために、エンジンRPMを増加し得る。
【0066】
対水速度および/またはボートの姿勢が、船体が滑走モードにあるか、または排水量モードにあるかを評価するために使用され得る。
【0067】
任意選択で、内蔵の加速度計が、実際の減速度と所望の減速度とを比較することによって、追加的な制動力が必要かどうかを知り、必要な場合には、従って、追加的な後進推力が必要かどうかを判断するための手段を、制御電子装置に提供し得る。
【0068】
(自動トリムシステム)
図1のシステムの別の局面に従って、自動トリムシステムが提供される。当業者によって理解されるように、操舵ノズルは、フルアップトリム位置とフルダウントリム位置との間で鉛直方向に旋回可能である。したがって、操舵ノズルは、フルアップトリム位置に対する可変の下向きのトリム角度を定義し、トリム角度が大きくなるにつれて、ノズルはフルダウントリム位置に近づく。
【0069】
舟艇は、舟艇の操舵角度を測定するための操舵角度センサを備え得る。そのようなセンサは、当技術分野において周知である。
【0070】
本明細書に記載の自動トリムシステムでは、制御電子装置は、操舵角度をそこから受信するために操舵角センサと通信し、したがって、この操舵角度を、好適にもリアルタイムの連続的な様式で監視する。制御電子装置は、次いで、操舵角度に基づいて、また任意選択で船の操縦条件に基づいて、トリム角度に対する目標設定を評価する。制御電子装置は、評価された目標設定に基づいて自動的に制御信号を発する。適切な作動デバイスが、これらの制御信号に応答してトリム角度を調整する。この機能に対して、トリムの作動および後進ゲートの作動が分離され得ること、または後進ゲートは全く存在しなくても良いことが、留意されるべきである。
【0071】
ダウントリムすること、すなわち、ノズルを下方へ向けることは、舟艇の船首を下げ、一方で、アップトリムすることは、船首を持ち上げる。低いトリムは、概して、船首を低く保持し、空気を含まない水をポンプ入口に到達させることによって、加速を増加させる。高いトリムは、概して、船体と水との接触面積を減じることによって、より速い最高速度を提供する。高い船首は向かい波にそれほど入り込まず、波に飛び込む前により長く波に乗っているので、より高いトリムはまた、概して、より快適な乗り心地を生じる。
【0072】
舟艇の操舵応答は、低いトリム位置で速く、高いトリムで遅くなる。低いトリム位置で高速で舟艇を操縦することは、非常に鋭敏な操舵応答を提供し、それは、大きく素早い操舵入力が提供された場合には、かなり大きな横方向のGを発生させて、運転者または乗客を放出する可能性がある。
【0073】
トリム制御はまた、重積載の船、例えば乗客または貨物が存在するとき、および浮き輪/スキーヤを牽引するとき、に対して有用である。そのような状態は、通常の状態とは異なる船の姿勢をもたらし、特定のトリム調整を必要とし得る。
【0074】
図13Aおよび図13Bを参照すると、舟艇のトリム制御を管理するための一実施形態によるシステムの使用を例示した機能図が示されている。この場合、操縦者インタフェースは、操縦者によってアップまたはダウンに設定され得る手動トリム制御80を含み得る。制御電子装置14はこの場合も、操舵角度センサ76、エンジン70、および感知デバイス78のうちの少なくとも1つからの情報を考慮して、当該コマンドを実行する。
【0075】
自動トリムのオプションがまた、提供される。操舵角度に関しては、トリム角度に対して評価された目標設定は、好適にも、操舵角度に比例し、すなわち、旋回が大きくなるにつれて、トリムが下がる。また好適にも、左右の蛇行を繰り返す間は、操舵応答を改善するためにノズルは全操舵ロックでフルダウントリムにされる。このようにして、制御電子装置は、舟艇をスピンオフの可能性に備えさせ、かつ再加速のための最適なトリム条件にさせる。トリム位置はまた、操舵角度の操舵変化率に基づいて調整され得、ユーザの選択可能なモードに従って舟艇の挙動を改善する。制御電子装置14は、操舵角度センサ76および/または船の姿勢および速度のセンサから得られたデータの関数として、後進ゲートのアクチュエータシステムを制御して、トリム角度、後進ゲートの位置、またはその両方を調整するアルゴリズムを含み得る。そのような機能は、より良好なターンイン能力または改善された旋回からの加速を通じて、操縦性を改善し得、また、高速での速すぎる操縦応答、または低速でのアンダーステアリングのような、舟艇の望ましくない挙動を防止し得る。自動姿勢と組み合わせて、この機能は、スキーヤを引っ張るとき、または膨張式ボートまたは他の舟艇を曳航するときの操縦性を改善し得る。それはまた、運転者識別デバイスまたはシステムと組み合わされて、学習モードまたはバレットモードを実装し得る。
【0076】
速度に関しては、ノズルは、低速でフルダウントリムにされ得、ハンドリングを改善し、操縦者からの後進コマンドの可能性に備える。好適な実施形態では、トリム機能および後進機能が逐次的に実行されるので、低速でのダウントリムは、ノズルを覆うように後進ゲートを作動させるために必要な時間を短縮する利点を有する。ノズルはまた、スロットルが加えられたときに最適な加速度を提供するために、ダウントリムにされ得る。ノズルはまた、最高速度を改善し操舵応答を弱めるために、舟艇の速度に比例してアップトリムにされ得る。
【0077】
船の姿勢の管理に関しては、姿勢センサが、船の積載条件および水面の条件に従って、事前設定されたトリム対速度テーブルから、トリム角度を修正または最適化するために使用され得る。舟艇の前方/後方姿勢の急激な変化は、プロセッサが、荒れた水面であると判断すること補助し、その場合には、トリム角度は、事前設定された係数によって増加され得る。加速度計、傾斜計、乗客席体重センサ、および燃料レベルセンサから算出された燃料重量がまた、個々に、または種々の組み合わせで使用されて、最適な性能、燃料経済性、または快適性のための最良の姿勢を保持するように、自動的に舟艇をトリムし得る。この機能は、スポーツモード、クルーズモード、エコノミーモード、曳航モード、カスタムモード、などのような、異なるモード選択と連結され得る。この機能は、乗客数、乗客の重量および位置、ならびに、燃料レベル、付属品、貨物重量、および曳航負荷(スキーヤ、舟艇、または膨張式ボート)のような他の船のパラメータに対して、舟艇の挙動を同一に保持するべく補助することを目的とする。
【0078】
当然ながら、保護の範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に対して多数の変更がなされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェット推進舟艇のための電子支援の後進ゲートシステムであって、前記舟艇は、前記舟艇からの水流の経路の内外に旋回可能な後進ゲートを含み、前記後進ゲートは、それによって可変ゲート方向を有し、前記舟艇は、前記舟艇の操縦者からコマンドを得るための操縦者インタフェースをさらに含み、前記後進ゲートシステムは、
前記コマンドをそこから受信するために前記操縦者インタフェースと通信する制御電子装置であって、前記制御電子装置は、前記コマンドに応答して前記ゲート方向の目標設定を評価し、前記目標設定は、前記コマンドに加えて前記舟艇の少なくとも1つの操縦条件に基づいて評価され、前記少なくとも1つの操縦条件は、エンジン回転速度、スロットル入力、前記舟艇の操舵角度、傾斜センサにより測定された前記舟艇の前方または後方姿勢、および前記舟艇の対水速度または対地速度のうちの少なくとも1つを含み、前記制御電子装置は、前記目標設定に基づいて制御信号を発する、制御電子装置と、
前記制御信号に応答して前記ゲート方向を調整するように動作可能な作動デバイスと
を備える、後進ゲートシステム。
【請求項2】
前記目標設定は、
フル前進設定であって、前記フル前進設定においては、前記後進ゲートが前記水流の前記経路外の位置にある、フル前進設定と、
フル後進設定であって、前記フル後進設定においては、前記後進ゲートが前記水流の前記経路内の位置にある、フル後進設定と
を含む、請求項1に記載の後進ゲートシステム。
【請求項3】
前記目標設定は、中立設定をさらに含み、前記中立設定においては、前記後進ゲートが中間位置に設定され、かつ前記制御電子装置が較正値に基づいて前記中間位置を評価する、請求項2に記載の後進ゲートシステム。
【請求項4】
前記制御電子装置は、エンジン回転速度、トリム角度、および舟艇の姿勢のうちの前記少なくとも1つにさらに基づいて、前記中間位置を評価する、請求項3に記載の後進ゲートシステム。
【請求項5】
前記制御電子装置は、前記少なくとも1つの操縦条件を監視することと、前記少なくとも1つ操縦条件を所定の基準と比較することと、前記所定の基準が満たされた場合には、前記後進ゲートを前記中立設定に自動的に設定することとを実行するようにさらに動作可能である、請求項3に記載の後進ゲートシステム。
【請求項6】
前記所定の基準は、前記エンジン回転速度の閾値、前記舟艇の速度の閾値、操縦者の落水の検出、前記スロットル入力、および制動制御の作動のうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の後進ゲートシステム。
【請求項7】
前記目標設定は、前記操縦者からの低速モードコマンドに応答する可変位置を含み、前記制御電子装置は、前記操縦者からの前進コマンドと後進コマンドとの間の選択に基づいて前記可変位置を評価し、前記可変位置が基づく前記少なくとも1つの操縦条件は、スロットル入力値を含む、請求項1に記載の後進ゲートシステム。
【請求項8】
前記制御電子装置は、所望の舟艇速度に対する前記スロットル入力値のスケーリングされたマッピングに基づいて、前記可変位置を評価する、請求項7に記載の後進ゲートシステム。
【請求項9】
前記可変位置が基づく前記少なくとも1つの操縦条件は、前記エンジン回転速度を含む、請求項7に記載の後進ゲートシステム。
【請求項10】
前記目標設定は、前記操縦者からの制動コマンドに応答する制動位置を含み、前記制御電子装置は、前記後進ゲートを前記制動位置に設定すべきかどうかを判断するために、前記少なくとも1つの操縦条件を使用する、請求項1に記載の後進ゲートシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの操縦条件は、前記操縦者からの前記制動コマンドのレベルをさらに含む、請求項10に記載の後進ゲートシステム。
【請求項12】
ジェット推進舟艇であって、前記舟艇は、
後進ゲートであって、前記後進ゲートは、前記舟艇からの水流の経路の内外に旋回可能であり、前記後進ゲートは、それによって可変ゲート方向を有する、後進ゲートと、
前記舟艇の操縦者からコマンドを得るための操縦者インタフェースと、
前記コマンドをそこから受信するために前記操縦者インタフェースと通信する制御電子装置であって、前記制御電子装置は、前記コマンドに応答して前記ゲート方向の目標設定を評価し、前記目標設定は、前記コマンドに加えて前記舟艇の少なくとも1つの操縦条件に基づいて評価され、前記少なくとも1つの操縦条件は、エンジン回転速度、スロットル入力、前記舟艇の操舵角度、傾斜センサにより測定された前記舟艇の前方または後方姿勢、および前記舟艇の対水速度または対地速度のうちの少なくとも1つを含み、前記制御電子装置は、前記目標設定に基づいて制御信号を発する、制御電子装置と、
前記制御信号に応答して前記ゲート方向を調整するように動作可能な作動デバイスと
を備える、舟艇。
【請求項13】
前記操縦者インタフェースは、フル前進コマンドと、フル後進コマンと、中立コマンドとの間の選択を前記制御電子装置に提供するためのFNR(Forward−Neutral−Reverse)制御を備え、前記目標設定は、
前記フル前進コマンドに応答するフル前進設定であって、前記フル前進設定においては、前記後進ゲートは、前記水流の前記経路外の位置にある、フル前進設定と、
前記フル後進コマンドに応答するフル後進設定であって、前記フル後進設定においては、前記後進ゲートは、前記水流の前記経路内の位置にある、フル後進設定と、
前記中立コマンドに応答する中立設定であって、前記中立設定においては、前記後進ゲートは、中間位置に設定され、前記制御電子装置は、較正値に基づいて前記中間位置を評価する、中立設定と
を含む、請求項12に記載のジェット推進舟艇。
【請求項14】
前記制御電子装置は、前記エンジン回転速度、前記トリム角度、および前記舟艇の姿勢のうちの前記少なくとも1つにさらに基づいて、前記中間位置を評価する、請求項13に記載のジェット推進舟艇。
【請求項15】
前記制御電子装置は、前記少なくとも1つの操縦条件を監視することと、前記少なくとも1つの操縦条件を所定の基準と比較することと、前記所定の基準が満たされた場合には、前記後進ゲートを前記中立設定に自動的に設定することとを実行するようにさらに動作可能である、請求項13に記載のジェット推進舟艇。
【請求項16】
前記所定の基準は、前記エンジン回転速度の閾値、前記舟艇の速度の閾値、操縦者の落水の検出、前記スロットル入力、および制動制御の作動のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載のジェット推進舟艇。
【請求項17】
前記操縦者インタフェースは、
低速モードコマンドを前記制御電子装置に提供するための低速制御と、
フル前進コマンドとフル後進コマンドとの間の選択を前記制御電子装置に提供するための方向制御と
を含み、前記目標設定は、前記低速モードコマンドに応答する可変位置を含み、前記制御電子装置は、フル前進コマンドとフル後進コマンドとの間の前記選択に基づいて、前記可変位置を評価し、前記可変位置が基づく前記少なくとも1つの操縦条件は、スロットル入力値を含む、請求項12に記載のジェット推進舟艇。
【請求項18】
前記制御電子装置は、所望の舟艇速度に対する前記スロットル入力値のスケーリングされたマッピングに基づいて、前記可変位置を評価する、請求項17に記載のジェット推進舟艇。
【請求項19】
前記操縦者インタフェースは、制動コマンドを前記制御電子装置に提供するための制動制御を備え、前記目標設定は、前記制動コマンドに応答する制動位置を含み、前記制御電子装置は、前記後進ゲートを前記制動位置に設定すべきかどうかを判断するために、前記少なくとも1つの操縦条件を使用する、請求項12に記載のジェット推進舟艇。
【請求項20】
前記少なくとも1つの操縦条件は、前記操縦者からの前記制動コマンドのレベルをさらに含む、請求項19に記載のジェット推進舟艇。
【請求項21】
前記エンジン回転速度をそれに提供するために前記制御電子装置と通信するエンジンをさらに備え、前記エンジン回転速度は、前記少なくとも1つの操縦条件のうちの1つを定義する、請求項12に記載のジェット推進舟艇。
【請求項22】
前記スロットル入力をそれに提供するために前記制御電子装置と通信するスロットル制御をさらに備え、前記スロットル入力は、前記少なくとも1つの操縦条件のうち1つを定義する、請求項12に記載のジェット推進舟艇。
【請求項23】
少なくとも1つのセンサをさらに備え、前記センサのそれぞれは、前記少なくとも1つの操縦条件のうちの1つを感知し、前記センサのそれぞれは、前記少なくとも1つの操縦条件のうちの対応する1つの操縦条件に関するデータを提供するために前記制御電子装置と通信する、請求項12に記載のジェット推進舟艇。
【請求項24】
前記少なくとも1つのセンサは、姿勢センサ、操舵角度センサ、および速度センサのうちの1つを備える、請求項23に記載のジェット推進舟艇。

【図1】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図14A】
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【図14B】
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【公開番号】特開2013−100102(P2013−100102A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−13946(P2013−13946)
【出願日】平成25年1月29日(2013.1.29)
【分割の表示】特願2009−525880(P2009−525880)の分割
【原出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(509060051)テレフレックス メガテック インコーポレイテッド (2)