説明

ジエステル類を製造するためのプロセスにおけるポリエチレンナフタレート中に含まれている2,6−ナフタレンジカルボン酸(2,6−NDA)の再生利用

低級アルコール、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステル及びポリエチレンナフタレート含有物質を含む液相反応混合物を所与の温度及び圧力にて、列配置された反応ゾーンを通過させて、続いてナフタレンジカルボン酸及びポリエチレンナフタレート含有物質の低級アルコールとの反応により形成されたジアルキルエステルを含む生成物を反応ゾーンから取り除くことを含む、ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステルを調製するプロセス。本発明は、一連の晶析工程及び蒸留工程及びこれらの組み合わせを含む、ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステル精製品を調製するプロセスにも関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ナフタレンジカルボン酸のジエステル類は、ポリエステル類またはポリアミド類などの種々の高分子材料を調製するために有用である。特に有用なジエステルの一例は、ジメチル−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(DM-2,6-NDC)である。DM-2,6-NDCは、たとえば、エチレングリコールと縮合して、高性能ポリエステル材料であるポリエチレンナフタレート(PEN)を形成する。PENから作られる繊維及びフィルムは、たとえばポリエチレンテレフタレートに比べて有意に改良された強度特性及び優れた熱特性を有する。このため、PENは、たとえば磁気記録テープ及び電子部品の製造に用いることができる薄膜などの商業的物品を調製するための格別の材料である。したがって、ガス拡散、特に二酸化炭素、酸素及び水蒸気の拡散に対する優れた耐性ゆえに、PEN製フィルムは食品容器、特にいわゆる「ホットフィル(熱充填)」食品容器製造に有用である。PENは、たとえばタイヤコード製造に用いることができる高強度繊維の調製にも有用である。
【0002】
商業的用途に適切な高品質PENを調製するために、精製DM-2,6-NDCから開始することが必要である。精製DM-2,6-NDCは、色度が低く、有機及び無機不純物を実質的に含まず、粒子状物質が少なくなくてはならない。
【0003】
DM-2,6-NDCは、2,6-ナフタレンジカルボン酸(2,6-NDA)のメタノールによるエステル化によりもっとも容易に調製される。2,6-NDAは、コバルト、マンガン及び臭素成分を含む触媒により触媒される分子状酸素を用いる2,6-ジアルキル−又は2-アルキル-6-アシルナフタレン化合物の酸化により簡便に調製される。この酸化反応中、6-ホルミル-2-ナフトエ酸(FNA)、トリメリット酸(TMLA)等の不純物及び種々の臭素化化合物が生成される。幾つかの例においてはPENの調製に2,6-NDAを直接使用することが望ましいかもしれないが、2,6-NDAは、高い融点(>300℃で分解を伴う)及び極端に低い通常の溶剤への溶解度ゆえに、蒸留及び再晶析などの標準的な精製技術により許容可能なレベルまで精製することは非常に困難である。2,6-NDA精製におけるこれらの困難性は、2,6-NDAをそのジメチルエステル、DM-2,6-NDCに転化することによって部分的に解決される。DM-2,6-NDCは、メタノールなどの溶剤から、又は1種以上の芳香族溶剤から、蒸留され再晶析され得る。しかし、蒸留又は再晶析などの処理によってDM-2,6-NDCを精製することができたとしても、従来技術においては、上述の製造物品で使用するために許容され得る純度までDM-2,6-NDCを精製することが問題のまま残っている。たとえば、ジアルキルナフタレンの酸化中に生成されるFNAは、2,6-NDAのエステル化中にDM-2,6-NDC中に組み込まれ(メチルエステルとして)、除去又は許容可能な低レベルまで減少させることは非常に困難である。特に、2,6-NDAの調製に用いられるコバルト及びマンガン酸化触媒金属もまた、典型的には、不純物としてエステル化反応に持ち込まれる。これは、所定量の酸化触媒金属がTMLA及び他の酸化副産物に緊密に錯体化され、酸化母液を固体2,6-NDAから分離する際に酸化母液中に取り出されないからである。触媒金属は、たとえば蒸留塔底液で肥厚になり蒸留塔を詰まらせるので、DM-2,6-NDCを精製するために用いられる下流操作に問題を生じさせる。これらの触媒金属は、DM-2,6-NDCの蒸留の前に除去されなければならない。
【0004】
最後に、DM-2,6-NDC中の粒子状汚染物質を排斥するか又は非常に低いレベルまで削減しなければならない。DM-2,6-NDC中の粒子状汚染物質は、DM-2,6-NDCから作られるPEN中の粒子状汚染物質を発生させる。これらの粒子状汚染物質により、たとえば記録テープを調製するために用いられる薄い高強度フィルムを製造するためにPENは不適切となる。1.5ミクロン以下にまで下げられた寸法範囲であるこれらの粒子状不純物は、種々の源から発生し得る。たとえば、それらは酸化触媒粒子であるかもしれない。それらは、また、DM-2,6-NDCを溶剤に溶解し、再晶析させ、再結晶化母液から濾過により分離させ、乾燥させて過剰の溶剤を取り除く濾過・乾燥操作から派生するかもしれない。不可避的に、これらのプロセスにおいて多量の粒子がDM-2,6-NDC生成物を汚染する。源にかかわらず、DM-2,6-NDC生成物中の粒子状汚染物質は望ましくない。
【0005】
PEN又はPENから作られるある種の物質は、「スクラップ」又は規格外材料を比較的高い比率で発生し得る。この物質は、色規格への不適合、分子量又は固有粘度規格への不適合、不正確な結晶化度、高いジエチレングリコール含有量、外来物質による汚染、設備排水からのヒール(heels)及び/又は最終製品中に影響されたPENを用いることを妨げる任意の他の欠陥を含む種々の理由によりスクラップであると判断される。しかし、PENに含まれるナフタレート留分の高い値故に、規格外PENを単純に捨てることは不経済である。よって、当該技術分野では、PENのナフタレート値を経済的かつ簡便に再利用し、同時に、最終DM-2,6-NDC 生成物の厳しい純度要求を満足する必要性がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステルの調製プロセスである。本プロセスは、低級アルコール、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステル及びポリエチレンナフタレート含有物質を含む液相反応混合物を約 500゜F(260℃)〜約700゜F(371℃)の範囲の温度、約5〜約250気圧(絶対)の範囲の圧力で、列配置された反応ゾーンを通して送ることを含む。このプロセス中、ナフタレンジカルボン酸、ポリエチレンナフタレート含有物質及び低級アルコールは、上流反応ゾーンに導入される。ナフタレンジカルボン酸及びポリエチレンナフタレート含有物質の低級アルコールとの反応により形成されたジアルキルエステル生成物は、下流反応ゾーンから取り出される。
【0007】
さらに、本プロセスは、垂直配置仕切型反応器内で生じ得る。仕切型反応器は、少なくとも上部及び下部の区画室を有し、これらの区画室は、反応器区画室間でのエステル化反応混合物の上向き流を可能とする開口を有する分割手段によって分離されている。低級アルコール及びナフタレンジカルボン酸及びポリエチレンナフタレート含有物質は1又は複数の下部区画室に添加され、ナフタレンジカルボン酸のジエステルを含む反応生成物混合物は上部反応器区画室から取り出される。
【0008】
本発明の別の側面は、ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステルを調製するプロセスであり、反応ゾーンからの気相アルコールの除去速度(ポンド/時間:pounds per hour):反応ゾーンへのアルコールの添加速度(ポンド/時間:pounds per hour)の比率が約0.5:1〜約0.99:1となるように、低級アルコールが反応ゾーンに添加され、同時に、反応ゾーンから取り出される。
【0009】
本発明のまた別の側面は、一連の晶析工程及び蒸留工程、及びこれらの組み合わせを含むナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステル精製品を調製するプロセスである。
驚くべきことに、我々は、PEN含有物質が、過剰に存在する低級アルコールと反応して、粗DM-2,6-NDCを形成し、粗DM-2,6-NDCは回収され精製され得ることを知見した。PEN含有物質から誘導される粗DM-2,6-NDCは、低級アルコールの2,6-NDAによる反応から作られた粗DM-2,6-NDCの主流と一緒に処理され得る。エチレングリコール自身又はエチレングリコールと低級アルコールとの反応により誘導されるエチレングリコール副産物及び生成物は、通常の溶剤処理及び適宜技術を用いる不純物パージの結果として、ユニットから取り出されて処理されてもよい。PEN中に存在する他の不純物は、最終形態への主要な通常の処理フローによって生成されたDM-2,6-NDCを精製する同じユニット操作によって経済的に除去される。エステル化反応器内での条件及びエステル化反応器の設計故に、開裂反応及びエステル交換反応を達成するために新たな触媒又は他の成分は必要ではない。このことは利点となる。なぜなら、反応に新たな成分を添加しなければ、続いて除去する必要もないからである。
【0010】
本発明の方法に有用なナフタレンジカルボン酸は、1,2-、1,3-、1,4-、1,5-、1,6-、1,7-、1,8-、2,3-、2,6-または2,7-ナフタレンジカルボン酸から選択されるが、2,6-及び2,7-ナフタレンジカルボン酸が好ましい。最も好ましいのは2,6-ナフタレンジカルボン酸である。これらのナフタレンジカルボン酸を調製する適宜方法を用いることができる。本発明の方法は、ジアルキル−またはアルキル−アシルナフタレン化合物の液相重金属接触酸化により調製されたナフタレンジカルボン酸をエステル化するために特に適切である。液相重金属接触酸化反応により酸化され得るこのようなジアルキルまたはアルキルアシルナフタレン化合物は、下記構造を有する成分を含み、
【0011】
【化1】

【0012】
1〜約6個の炭素原子を有するヒドロカルボニル基、2〜約6個の炭素原子を有するアシル基またはホルミル基から独立に選択される。このようなナフタレン化合物の特定の例としては、2,6-ジメチルナフタレン、2-メチル-6-アセチルナフタレン、2-メチル-6-ブチルナフタレン、1,4-ジメチルナフタレン、2,3-ジメチルナフタレン、2,6-ジエチルナフタレン、2,6-ジイソプロピルナフタレンを挙げることができる。米国特許第5,034,561号明細書、第5,030,781号明細書及び第4,950,825号明細書(Sikkenga, et al )は、ジメチルナフタレンを調製する方法を開示する。米国特許第5,026,917号明細書(Hagen et al)は、2-メチル-6-アセチルナフタレンを調製する方法を開示する。米国特許第4,873,386号明細書(Hagen et al)は、2,6-ジエチルナフタレンを調製する方法を開示する。
【0013】
ナフタレンジカルボン酸を調製するための最も好ましい芳香族供給化合物は2,6-ジメチルナフタレンである。2,6-ジメチルナフタレンの酸化は、2,6-ナフタレンジカルボン酸を製造する。これは上述のように、PEN調製用の適切なモノマーである。さらに、2,6-ジメチルナフタレンは、たとえば2,6-ジエチル-もしくは2,6-ジイソプロピルナフタレンよりも優れている。なぜなら、2,6-ジメチルナフタレンは分子量がより低く、2,6-ジアルキルナフタレン化合物の所定質量当たりの2,6-ナフタレンジカルボン酸の收率は、2,6-ジエチル−もしくは2,6-ジイソプロピルナフタレンに対するよりも2,6-ジメチルナフタレンに対してより大きいからである。
【0014】
上述のナフタレン化合物などのアルキル-もしくはアシル置換芳香族化合物の対応する芳香族カルボン酸への液相重金属接触酸化を行う方法は当該分野で周知である。たとえば、米国特許第4,950,786号明細書、第4,933,491号明細書、第3,870,754号明細書及び第2,833,816号明細書は、そのような酸化方法を開示する。一般に、適切な重金属酸化触媒は、約21〜約82の原子数を有するこれらの金属を包括的に含む。好ましい酸化溶剤は、包括的に2〜約8個の炭素原子を有する低分子量モノカルボン酸であり、好ましくは酢酸又は酢酸と水との混合物である。2〜約6個の炭素原子を有する低分子量ケトン又は1〜約6個の炭素原子を有する低分子量アルデヒドなどの助触媒もまた用いることができる。臭化水素、分子状臭素、臭化ナトリウムなどの当該分野で公知の臭素助触媒化合物もまた用いることができる。分子状酸素源もまた必要であり、典型的には空気が用いられる。
【0015】
ジアルキルもしくはアルキルアシルナフタレン化合物を酸化する特に適切な方法、特に2,6-ジメチルナフタレンをナフタレンジカルボン酸に酸化する方法は、米国特許第4,933,491号明細書(Albertins et al.)に開示されている。ジアルキルもしくはアルキルアシルナフタレン化合物のそのような液相酸化反応に適切な溶剤としては、安息香酸などの低分子量カルボン酸、酢酸、プロピオン酸、n-絡酸、イソ絡酸、n-吉草酸、トリメチル酢酸、カプロン酸などの任意の脂肪族C2〜C6モノカルボン酸及び水を挙げることができる。好ましくは、溶剤は水と酢酸との混合物であり、この混合物は好ましくは1〜20 wt%水である。ジアルキルもしくはアルキルアシルナフタレン化合物のこのような液相酸化に用いられる分子状酸素源は、空気乃至酸素ガスの分子状酸素含量まで変動してもよい。経済的な理由から、空気が好ましい分子状酸素源である。
【0016】
ジアルキルもしくはアルキルアシルナフタレン化合物のそのような酸化に用いられる触媒は、臭素含有化合物及びコバルト又はマンガンの少なくとも一方を含有する化合物を含む。好ましくは、触媒は、コバルト含有成分、マンガン含有成分及び臭素含有成分を含む。液相酸化における触媒のコバルト成分中のコバルト(元素状コバルトとして計算)のジアルキルもしくはアルキルアシルナフタレン化合物に対する比率は、ジアルキルもしくはアルキルアシルナフタレン化合物のグラムモル当たり約0.1〜約100ミリグラム原子(mga)の範囲にある。液相酸化における触媒のコバルト成分中のコバルト(元素状コバルトとして計算)に対する触媒のマンガン成分中のマンガン(元素状マンガンとして計算)の比率は、コバルトのmgaあたり約0.1〜約10 mgaの範囲にある。液相酸化における触媒のコバルト成分及びマンガン成分中コバルト及びマンガン(元素状コバルト及び元素状マンガンとして計算)の総量に対する触媒の臭素成分中臭素(元素状臭素として計算)の比率は、コバルト及びマンガンの総量のmgaあたり約0.1〜約1.5 mgaの範囲にある。
【0017】
コバルト成分及びマンガン成分の各々は、反応器内で溶剤中のコバルト、マンガン及び臭素の可溶性形態を与える公知のイオン形態又は組み合わせ形態のいずれであってもよい。たとえば、溶剤が酢酸媒体である場合、コバルト及び/又はマンガンの炭酸塩、酢酸塩4水和物及び/又は臭化物を用いることができる。臭素:コバルト及びマンガンの総量(ミリグラム原子比)0.1:1.0〜1.5:1.0は、元素状臭素(Br2)、又はイオン性臭化物(例えば、HBr、NaBr、KBr、NH4Brなど)又は酸化操作温度にて臭化物イオンを与えるものとして知られている有機臭化物(例えば、ブロモベンゼン、ベンジルブロマイド、テトラブロモエタン、エチレンジブロマイドなど)などの適切な臭素源により与えられる。分子状臭素及びイオン性臭化物中の総臭素は、0.1:1.0〜1.5:1.0の元素状臭素:コバルト及びマンガンの総量(ミリグラム原子比)の満足度を決定するために用いられる。酸化作用条件にて有機臭化物から放出された臭素イオンは、公知の分析手段により容易に測定することができる。たとえばテトラブロモエタンは、335゜F(168℃)〜440゜F(227℃)の操作温度にて、グラムモルあたり約3有効グラム原子の臭素を得ることがわかっている。
【0018】
操作時に、酸化反応器が維持される最小圧力は、ジアルキルもしくはアルキルアシルナフタレン化合物及び溶剤の少なくとも70 wt%の実質的な液相を維持する圧力である。気化ゆえに液相中にないジアルキルもしくはアルキルアシルナフタレン化合物及び溶剤は、蒸気−ガス混合物として酸化反応器から除かれ、凝縮され、次いで酸化反応器に戻される。溶剤が酢酸−水混合物である場合、酸化反応器内の適切な反応ゲージ圧力は、約0気圧〜約35気圧の範囲、典型的には約10気圧〜約30気圧の範囲にある。酸化反応器内での温度範囲は、一般に250゜F(121℃)から、好ましくは約350゜F(177℃)から約450゜F(232℃)まで、より好ましくは約420゜F(216℃)までである。酸化反応器内の溶剤滞留時間は、一般に約20〜約150分、好ましくは約30〜約120分である。
【0019】
酸化は、バッチ、連続又は半連続モードのいずれで行ってもよい。バッチモードにおいて、ジアルキルもしくはアルキルアシルナフタレン化合物、溶剤及び触媒成分が最初にバッチ態様で反応器に導入され、次いで反応器内容物の温度及び圧力を酸化反応の開始のための所望レベルまで上昇させる。空気は連続的に反応器に導入される。酸化反応の開始後、たとえばジアルキルもしくはアルキルアシルナフタレン化合物の全量が完全に反応器に導入されてしまった後、反応器内容物の温度を上昇させる。連続モードにおいて、ジアルキルもしくはアルキルアシルナフタレン化合物、空気、溶剤及び触媒の各々が連続的に反応器に導入され、溶剤に溶解しているナフタレンジカルボン酸及び触媒成分を含む生成物流が反応器から抜き出される。半連続モードにおいて、溶剤及び触媒が最初に反応器に導入され、次いでジアルキルもしくはアルキルアシルナフタレン化合物及び空気が連続的に反応器に導入される。大規模商業運転のためには、連続酸化プロセスを用いることが好ましい。2,6-ジメチルナフタレンを供給物として使用するそのようなプロセスにおいて、モノカルボン酸溶剤:2,6-ジメチルナフタレンの質量比は、好ましくは約2:1〜約12:1であり、マンガン:コバルトのミリグラム原子比(mga)は約5:1〜約0.3:1であり、臭素:コバルト及びマンガンの総量のミリグラム原子比(mga)は約0.3:1〜約0.8:1であり、元素状コバルト及び元素状マンガンとして計算したコバルト及びマンガンの総量は溶剤の質量を基準として少なくとも約0.40 wt%であり、酸化反応温度は約370゜F(188℃)〜約420゜F(216℃)である。酢酸は、このような好ましい2,6-ジメチルナフタレン連続酸化に対する最も適切な溶剤である。
【0020】
酸化反応に続いて、酸化反応混合物は、典型的には冷却されて、反応混合物からのナフタレンジカルボン酸の晶析を促進する。ナフタレンジカルボン酸は、たとえば遠心分離、濾過などの液相から固体を分離する適宜の手段によって、酸化反応混合物から分別(すなわち分離)される。分離されたナフタレンジカルボン酸は、常温又は好ましくは高められた温度のいずれかで、1種以上の溶剤で洗浄してもよい。最も適切には、洗浄溶剤は、水、酢酸又は他の低分子量脂肪族カルボン酸又は水と低分子量カルボン酸との混合物である。エステル化の前に、粗ナフタレンジカルボン酸を乾燥させてもよい。
【0021】
2,6-ナフタレンジカルボン酸を調製した後、次の工程は、低級アルコールでエステル化して、エステル化2,6-ナフタレンジカルボキシレートを製造することを含む。さらに、PEN含有物質をエステル化反応器への供給物に添加する。本明細書において「PEN含有物質」とは、PENホモポリマー又はPENフィルム材料又はエステル化反応器への供給物に添加される他のPEN含有物質をいう。PEN含有物質は、供給物中に約20 wt%までの2,6-NDAを含む。臭素化2,6-ナフタレンジカルボン酸及び他の臭素化化合物、6-ホルミル-2-ナフトエ酸(FNA)、6-メチル-2-ナフトエ酸、トリメリット酸(TMLA)などのいくらかの不純物及びコバルト触媒及びマンガン触媒が酸化反応混合物からの2,6-NDAの隔離プロセス中に部分的に除かれるが、許容できないレベルの不純物は2,6-NDAと共に残留し、それゆえにエステル化反応に持ち越され、DM-2,6-ナフタレンジカルボキシレートの精製中に除かれなければならない。
【0022】
本発明のエステル化プロセスに有用なアルコールは1〜約6個の炭素原子を有する低級アルコール、たとえば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノールなどである。最も好ましくは、費用及び得られるエステルのより低い分子量ゆえに、ナフタレンジカルボン酸のエステル化に用いられるアルコールはメタノールである。ナフタレンジカルボン酸と反応するメタノール又は他の低級アルコールの量は、ナフタレンジカルボン酸の大部分をジエステルに転化するに十分な量である。たとえば、反応器に添加されるアルコール:ナフタレンジカルボン酸の質量比は、適切には約1:1〜約10:1であり、より好ましくは2:1〜約6:1である。ナフタレンジカルボン酸をジエステルにより完全に転化するために、遊離カルボン酸基に対して大過剰のアルコールを与えてもよい。しかし、大量のアルコールは大量の反応混合物を使用しなければならず、大型反応器又は緩やかな処理を必要とする。さらに、過剰のメタノールは分離して再循環させなければならない。したがって、アルコール:ナフタレンジカルボン酸のより低い質量比、たとえば、約1:1〜約10:1、より好ましくは2:1〜約6:1を用いることがより有利である。
【0023】
アルコール、ナフタレンジカルボン酸及びPEN含有物質は、エステル化反応器に添加され、反応ゾーンから上流の1又は複数の反応ゾーンへ添加され、ここでナフタレンジカルボン酸のジエステルを含む生成混合物が列配置された反応ゾーンから取り出される。アルコール、ナフタレンジカルボン酸及びPEN含有物質は好ましくは混合物として添加される。しかし、ナフタレンジカルボン酸、低級アルコール又はPEN含有物質は別々に添加されてもよい。あるいは、アルコールの一部だけをナフタレンジカルボン酸と共に添加して、アルコールの残りを別に添加してもよい。よって、本発明のプロセスにおいては、エステル化混合物にアルコール及びナフタレンジカルボン酸及びPEN含有物質供給成分を添加する適宜の方法が考えられる。しかし、アルコールとのスラリーとしてナフタレンジカルボン酸及びPEN含有物質を反応混合物に添加することが最も好ましく、スラリーをポンプにより又はその他の方法で反応混合物に添加することができる。アルコールを用いて固体ナフタレンジカルボン酸及びPEN含有物質をスラリー化することにより、ナフタレンジカルボン酸をスラリー化するために再循環ジエステルを用いることなく、ナフタレンジカルボン酸及びPEN含有物質を反応混合物に添加することが可能になる。これは本発明の利点の一つである。アルコール及びナフタレンジカルボン酸を並流よりは向流で添加していた従来のプロセスにおいては、ナフタレンジカルボン酸は比較的多量のジエステルでスラリー化しなければならなかった。その結果、新しいナフタレンジカルボン酸のためのスラリー媒体を提供するために、粗ジエステル生成物の大部分をプロセスの初期段階まで再循環させる必要があった。このような再循環は、非効率的な運転である。対比して、アルコール及びナフタレンジカルボン酸及びPEN含有物質の並流添加による本発明においては、初期上流反応ゾーンにおいて、エステル化反応のための液体媒体を提供するために十分なナフタレンジカルボン酸のジエステルへの転化がある。スラリー中アルコール:ナフタレンジカルボン酸の質量比は、適切には約1:1〜約10:1であり、好ましくは約1.5:1〜約6:1である。
【0024】
アルコールとナフタレンジカルボン酸とPEN含有物質の混合物は、混合物が直列配置エステル化反応ゾーンに添加される前に、最初に予熱される。撹拌槽型反応器、管型熱交換器又はこれらの組み合わせは、予熱器として機能し得る。予熱器は、アルコールとナフタレンジカルボン酸とPEN含有物質の混合物を、典型的にはエステル化温度以下の温度まで加熱する。たとえば約300゜F(149℃)〜約700゜F(371℃)の範囲にある温度が適切である。メタノールが用いられる場合、予熱器の温度は、好ましくはメタノールの臨界温度以下である。予熱器を通して、エステル化反応混合物に仕込んだアルコールの全量を添加することができる。あるいは、予熱器を通して、混合物に仕込んだ総アルコールの一部だけを添加し、残りを直接又は別個の予熱器を通して、エステル化反応混合物に添加する。
【0025】
ナフタレンジカルボン酸及びPEN含有物質もまた、ナフタレンジカルボン酸モノアルキルエステル、ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステル又はナフタレンジカルボン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステルの組み合わせと一緒にエステル化反応混合物又は用いる場合には予熱器に添加することができる。用いる場合には、モノアルキル又はジアルキルナフタレンジカルボン酸エステル(又はこれらの混合物):ナフタレンジカルボン酸の質量比は、適切には約0.01:1〜約1:1であり、より好ましくは約0.1:1〜約0.5:1である。ナフタレンジカルボン酸及びPEN含有物質は、反応器又は予熱器に添加する前に、ナフタレンジカルボン酸のモノアルキルエステル及び/又はジアルキルエステルと予め混合してもよい。あるいは、ナフタレンジカルボン酸及びPEN含有物質をナフタレンジカルボン酸のモノアルキルエステル及び/又はジアルキルエステルの添加とは別に反応器又は予熱器に添加してもよい。
【0026】
約500゜F(260℃)〜約700゜F(371℃)の範囲、好ましくは約540゜F(282℃)〜約660゜F(349℃)の範囲にあるエステル化反応温度は、出発ナフタレンジカルボン酸又はジアルキルエステル生成物の顕著な分解なしに、迅速な反応速度を与える。これらの高い反応温度において、エステル化反応は迅速であり、長い反応滞留時間は必要ではない。各反応ゾーンを同一又は異なる温度で運転してよい。
【0027】
エステル化反応に用いられる圧力は、適切には約5〜約250気圧(絶対)の範囲であり、好ましくは約20〜約150気圧(絶対)の範囲である。本発明のプロセスを実施する際、反応器が完全に液体充填ではない、すなわち、アルコールの全量が液相に存在するよりはむしろ、少なくともいくらかのアルコールが反応器中で気相に存在しているような温度及び圧力などの反応条件を用いることが好ましい。この好ましいモードを実施する際には、ゾーン列ではなく、1の反応ゾーンを用いることができる。しかし、少なくとも2の直列反応ゾーンを用いることが好ましい。よって、好ましい直列配置ゾーンにおいて、1以上の反応ゾーンが、反応ゾーンを通して、好ましくは反応混合物の液体成分を通して移動している気体状アルコール流を含むことが好ましい。ここで、液体成分は、ナフタレンジカルボン酸のモノエステルの可変量を伴う主として生成物ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステル及びPEN含有物質である。アルコールの一部が気相にある条件で運転する場合、我々は、エステル化反応を完了するためにもっと小型の総反応器容積を用いることができることを見出した。アルコールの一部が気相にある条件下で、気体状アルコールは、列配置された反応ゾーンを通して非常に迅速に移動することができ、反応器容積をより効率的に用いることができる。結果的に、もっと小型の反応器容積を用いることができる。さらに、単独の反応ゾーン又は好ましくは列配置された反応ゾーンを通して移動する気体状アルコール、好ましくはメタノールは、エステル化反応中に形成される水の一部を除去し、二酸を所望のジアルキルエステルへより多く転化させる。
【0028】
さらに、我々は、反応混合物に添加されたアルコールの大部分が気体状態にあるようにエステル化反応が行われる場合、ジアルキルエステルが非常にわずかに形成されるだけであることを見出した。明らかに、ジアルキルエステル形成のほとんどは、おそらくは酸性エステル化反応混合物により触媒される液相反応にて生じる。反応温度及び反応圧力などの反応条件を適切に調整することにより、反応混合物に仕込まれたアルコールの約50〜約99%、好ましくは約80〜約98%がエステル化反応器内で液体であるというよりはむしろ蒸気もしくは気体状態にあるように運転することが非常に有利である。よって、反応条件を適切に調整し、エステル化反応で消費されたアルコールを補正した後、エステル化反応ゾーンを上流から下流の反応ゾーンへ、好ましくはエステル化反応混合物の液相を通過する気体状アルコール、好ましくはメタノールの速度(ポンド毎時:pounds per hour):反応混合物へのアルコールの添加速度(ポンド毎時:pounds per hour)の比は、約0.5:1〜約0.99:1であり、好ましくは約0.8:1〜約0.98:1である。換言すれば、エステル化反応器内の反応器ゾーンを出る総アルコールの好ましくは約50〜約99%、より好ましくは約80〜約98%が気体状態にある。このような運転に適切な圧力は、約500゜F(260℃)〜約700゜F(371℃)の範囲にある温度で約5気圧(絶対)〜約250気圧(絶対)の範囲にある。
【0029】
本発明のプロセスによるエステル化反応は、1種以上の標準的なエステル化触媒と共に又は触媒無しに行うことができる。しかし、エステル化触媒を用いないことが好ましい。本発明のプロセスの利点の一つは、エステル化触媒の添加なしにエステル化反応を行うことができることである。よって、実質的にエステル化触媒不在で、より好ましくは完全にエステル化触媒不在で、エステル化反応を行うことが好ましい。1種以上の標準的エステル化触媒を含むべき場合には、三酸化モリブデン、亜鉛、酸化亜鉛、チタン酸エステル又は有機スズ化合物を用いることが好ましい。
【0030】
本発明のプロセスにおけるエステル化反応混合物の液体部分に対する滞留時間は、適切には約0.1時間〜約10時間、好ましくは約0.1時間〜約2時間である。
本発明のプロセスにおいて、直列である2つの反応ゾーンを用いて、エステル化反応を行うことができる。好ましくは約2〜約20、最も好ましくは約3〜約15の反応ゾーンを直列に用いる。反応ゾーンは、エステル化反応混合物が初期反応ゾーンから終止反応ゾーンまでのゾーン間で流れ得るように配備される。少なくとも1の反応ゾーンを撹拌して、反応ゾーン中に存在する固体を懸濁させる。適切な撹拌機又は他の液相を撹拌する手段で、好ましくはすべての反応ゾーンを撹拌する。反応ゾーン内で液相を循環させるポンプもまた、反応ゾーンの内容物を撹拌する作用をし得る。反応ゾーンは、適切には槽型反応器であり、好ましくは撹拌槽型反応器、栓流反応器又はこれらの組み合わせ又はこれらと他の反応器との組み合わせである。詳細は後述するが、列配置された反応ゾーンの特に好ましい形態は、下部区画室から上部区画室へとエステル化反応混合物を通過させる分割板又は他の分離手段によって隔離された2以上の区画室を有する垂直配置仕切型反応器である。詳細は後述するが、複数の区画室を有するこのような仕切型反応器1個を用いることもできる。あるいは、このような仕切型反応器を2個以上直列に用いて、本発明のプロセスによる列配置された反応ゾーンを達成することもできる。反応ゾーンのために用いられる特定の装置にかかわらず、反応器は、本発明のプロセスで用いられる温度及び圧力に耐えることができるものでなければならない。さらに、反応器の構成は、腐食性のエステル化反応混合物に対する暴露効果に耐えるものとすべきである。したがって、エステル化反応混合物に暴露される反応容器の部品は、316ステンレススチールもしくはハステロイC(Hastelloy C)などのニッケル系合金などの材料から製造されてもよい。反応ゾーンは、同一又は異なる容積を有するものでよい。好ましくは、滞留時間がより長く、ナフタレンジカルボン酸及びPEN含有物質からジエステルへの転化がより大きくなるように、第1の反応ゾーンは後続のゾーンよりも大きい。
【0031】
好ましい反応器形態は、各区画室が反応ゾーンとして機能する少なくとも上部区画室及び下部区画室に分割される垂直配置円筒状容器である。好ましくは、容器は約2〜約20、最も好ましくは約3〜約15の区画室に分割される。各区画室は、板もしくは他の反応容器を区画室に分割する適切な手段によって、隣接する区画室から分離されている。各板又は他の分割手段は、エステル化反応混合物の液体、固体及び存在する場合には気体状成分を1の区画室から次の区画室へと通過させ、一方で、エステル化反応混合物を反応容器内で上方向に通過させる少なくとも1の開口を具備する。低級アルコール及びナフタレンジカルボン酸及びPEN含有物質は下部区画室に添加され、ナフタレンジカルボン酸のジエステルを含む反応生成物混合物は上部反応器区画室から取り出される。分割板の面積に対する開口の面積は、エステル化反応混合物が過剰の背圧を生じさせることなく開口を通過でき、また先行する区画室へのエステル化反応混合物の実質的な逆流を防止するようになされている。分割板内の適切な開口は、分割板又は他の分割手段の面積の約0.1〜約10%を占める。好ましくは、撹拌シャフトは反応容器を垂直方向に、好ましくは反応容器の中心線(円筒状容器の場合)に沿って設けられ、少なくとも1の区画室、好ましくはすべての区画室内で少なくとも1の撹拌機が撹拌シャフトに取り付けられている。各区画室内に配置された撹拌機は、反応器容積を減少させ、エステル化反応混合物の流れを大幅に制限し、ついには反応器を詰まらせる堆積を形成するはずのエステル化反応混合物中の不溶性物質を混合及び懸濁させる。反応容器は、1以上の区画室内に位置づけられている邪魔板をさらに具備していてもよい。一形態は、反応器の内面に直交するように位置づけられ、反応器の全長にわたって設けられている邪魔板を有するものである。邪魔板の他の形態もまた適切であり、たとえば、邪魔板を各区画室の底部から離れた一部だけに延在させてもよい。
【0032】
PEN含有物質は、過剰に存在する低級アルコール、好ましくはメタノールと反応して、回収され精製され得る粗DM-2,6-NDCを形成する。PEN含有物質から派生した粗DM-2,6-NDCは、メタノールとNDAとの反応により製造される粗DM-2,6-NDCの主流と一緒に処理されてもよい。エチレングリコール自身又は低級アルコールとの反応から派生するエチレングリコール副産物及び生成物は、適宜技術を用いる不純物の通常の溶剤処理及びパージの結果としてユニットから出て処理されてもよい。DM-2,6-NDC精製工程は、一般に、再晶析、蒸留及びこれらの組み合わせなどの1以上の精製手順を含む。PEN中に存在する他の不純物、たとえば、アンチモンなどの腐食金属又は重合触媒残留物は、主たる通常のプロセスフローにより製造されたDM-2,6-NDCを最終形態まで精製する同じユニット操作で経済的に取り除かれる。
【0033】
種々の汚染物質を含み得るPENの有価値ナフタレート成分は、PEN含有物質をエステル化反応器への供給物に添加することによって回収され得る。PENは、反応器中に存在する過剰のメタノールと反応して、開裂反応及びエステル交換反応によって、粗DM-2,6-NDC及びエチレングリコールを提供する。エステル化反応器内での条件及び反応器設計ゆえに、開裂反応及びエステル交換反応を達成するために、新たな触媒又は他の成分は必要ではない。これは利点である。なぜなら、新たな成分を反応に添加しないのであれば、それらを続いて除去する必要がないからである。
【0034】
反応器内でのPEN転化の程度は、非常に高いようである。しかし、PEN含有物質のDM-2,6-NDCへの転化は、100%未満となるようである。よって、部分的反応生成物、たとえば種々のグリコールエステル又は着色又は灰分もしくは粒子状汚染を引き起こし得る汚染物質を最終精製DM-2,6-NDCから除去することができる能力を有することが必要である。加えて、エチレングリコール副産物及びPEN含有物質中のアンチモンもしくは他の無機残留物などの他の汚染物質は、DM-2,6-NDCを汚染させることはないであろう。反応器工程に続く精製の多数の工程及び溶剤回収及び再循環を与える工程は、これらの機能を経済的に提供する。エステル化区域の精製能力は非常に強いので、新規精製設備を追加する必要はない。
【0035】
エステル化反応生成物混合物は、2,6-NDAに対するメタノールの質量比に依存して、種々のレベルのモノメチル-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(MM-2.6-NDC)とDM-2,6-NDCの混合物を典型的に含む。エステル化反応生成物混合物は、さらに、いくらかの残留PEN又は関連する副産物、エチレングリコール、メタノール、水、有機不純物及び溶解している酸化触媒金属をも含む。DM-2,6-NDCは2,6-NDAよりもメタノール中に溶解するので、DM-2,6-NDCは熱いエステル化反応混合物溶液中にある。MM-2,6-NDCもまた典型的には溶液中にある。
【0036】
エステル化反応が完了した後、エステル化反応混合物は冷却されて、そこに含まれているDM-2,6-NDCを晶析させる。冷却は、適宜手段によって達成され得る。しかし、冷却は、エステル化反応混合物を冷却するメタノールの蒸発を結果として生じる減圧によって最も効果的に達成される。これは、1つのゾーン内で達成されてもよいし、又は一連の冷却ゾーン内で達成されてもよい。バッチモード運転において、エステル化反応容器を用いてDM-2,6-NDCを晶析することができる。エステル化反応混合物が冷却される温度は様々で、部分的にはエステル化反応に用いられる2,6-NDAに対するメタノールの比率及びDM-2,6-NDCがメタノールから晶析されるべき所望の程度に依存するが、エステル化反応混合物は典型的には約50℃以下の温度まで、好ましくは約10℃〜約40℃の範囲の温度まで、最も好ましくは約20℃〜約30℃の温度まで、冷却される。反応混合物をこれらの温度まで冷却することは、エステル化反応混合物を真空に供することによって、つまり蒸発冷却を加速し、メタノールの通常の沸点以下の温度に到達することによって、適切に達成され得る。蒸発させたメタノールの全部又は一部を冷却によって凝縮させて、次いで晶析容器に戻してもよい。しかし、冷水によって冷却された冷却コイルを用いるなどの混合物を冷却する他の適切な方法を用いることもできる。反応混合物をこれらの温度まで冷却することは、DM-2,6-NDCの大部分を溶液から晶析させることを保証する。エステル化反応混合物中のDM-2,6-NDCの好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約90%が溶液から晶析する。
【0037】
DM-2,6-NDCが晶析した後、DM-2,6-NDCをエステル化反応母液から分別する。これは、濾過、遠心分離又は沈降などの液体から固体を分別するための適宜手段によって達成され得る。未反応2,6-ナフタレンジカルボン酸及びMM-2.6-NDCもまた、冷却中に典型的には沈殿し、DM-2,6-NDCと一緒に集められる。
【0038】
エステル化反応母液と一緒に、臭素化生成物、エステル化FNA、溶解した触媒金属、エステル化反応中に製造される水、エチレングリコール、未確認の酸化及びエステル化/エステル交換反応中間体及び反応副産物などの不純物のほとんどは排出される。しかし、エステル化反応母液は、主に、エステル化反応に対して用いられる未反応のメタノールである。このメタノールは、母液から回収することができ、1以上の他の処理工程に再循環されて用いられる。
【0039】
酸化触媒金属がDM-2,6-NDC精製プロセス流中に残存してもよいならば、それらは蒸留塔底液中に濃縮する。DM-2,6-NDCが蒸留塔充填材内でのポイントで蒸留塔に注入されるならば、酸化触媒金属は迅速に且つおそらく不可逆的に蒸留塔を栓塞させるであろう。さらに、酸化触媒金属が蒸留塔底液中に濃縮されるならば、それらは、たとえばパージ流によって容易に除去されない高粘性の物質を製造し得る。したがって、蒸留プロセスの断続を必然的に伴う定期的な洗浄を余儀なくされる。したがって、DM-2,6-NDCの効果的な蒸留のためには、これらの触媒金属は取り除かれなければならない。さらに、蒸留塔底液の少なくとも一部、好ましくは実質的にすべてをエステル化反応器に再循環させて、そこに含まれるDM-2,6-NDC及び/又はMM-2.6-NDCを回収することが望ましい。触媒金属が取り除かれないならば、再循環によって蒸留塔底液中の濃度を増加させるだけで、上述の問題を悪化させるであろう。
【0040】
濾過、遠心分離により集められたか又はエステル化反応母液から晶析生成物を分別するために用いられる他の手段から得られた晶析DM-2,6-NDCは、好ましくはメタノール、メタノールと水の混合物もしくはC5〜C10炭化水素、すなわちペンタン類、ヘキサン類、トルエン、キシレン群、シクロヘキサンなどの他の適切な溶剤で洗浄される。クロロベンゼンなどのC6〜C10ハロゲン化芳香族又は酢酸及びプロピオン酸などのC1〜C4カルボン酸、これらの酸と水との混合物もまた、晶析したエステル類を洗浄するための適切な溶剤である。この洗浄工程は、追加の不純物を取り除き、特にDM-2,6-NDCを洗浄するために用いられる溶剤が昇温された温度にある場合には、結果としてより純粋なDM-2,6-NDCを生じさせる。最も好ましくは、晶析したDM-2,6-NDCを洗浄するために用いられる溶剤は、メタノール又はメタノールと水の混合物である。洗浄に用いられる溶剤、好ましくはメタノール又はメタノール/水混合物:DM-2,6-NDCの質量比は、それぞれ約0.2:1〜約2:1の範囲にある。
【0041】
晶析したDM-2,6-NDCは、好ましくは、さらなる精製のために再晶析手順に供される。再晶析は、DM-2,6-NDCをメタノール又は他の適切な再結晶化溶媒と接触させ、得られる再結晶混合物を昇温された温度に維持して、DM-2,6-NDCの少なくとも一部及び好ましくはDM-2,6-NDCの少なくとも約75%、より好ましくはDM-2,6-NDCの少なくとも約90%を溶解させることによって達成される。圧力容器を用いて、溶剤の通常の沸点を超える温度まで混合物を加熱することができる。再結晶化溶媒:DM-2,6-NDCの適切な質量比は、それぞれ約1:1〜約10:1の範囲、好ましくは約2:1〜約6:1の範囲にある。
【0042】
メタノールは好ましい再結晶化溶媒である。なぜなら、メタノールはエステル化反応中に用いられ、他のメタノールプロセス流と一緒に処理され、再循環され得るからである。メタノールのこれらの量は、一般的に、DM-2,6-NDCを合理的な温度で溶解させ、精製の次のステージに適切な晶析した生成物を提供するために十分な量である。しかし、上述したように、他の再結晶化溶媒も適切である。たとえば、ベンゼン、トルエン、o-、m-又はp-キシレン、キシレン群混合物、エチルベンゼン、クメン、シュードクメンなどのC6〜C10芳香族溶剤もまた再結晶化溶媒として適切である。クロロベンゼンなどのハロゲン化C6〜C10芳香族化合物もまた適切である。キシレン群は、特に好ましい芳香族再結晶化溶媒である。DM-2,6-NDCを再結晶化溶媒中に溶解させるための好ましい温度は、約80℃〜約190℃の範囲にある。
【0043】
DM-2,6-NDCの少なくとも一部が溶解するようにDM-2,6-NDC及び再結晶化溶媒を昇温された温度に維持した後、得られる混合物を再晶析温度まで冷却して、溶解しているDM-2,6-NDCを再晶析させる。冷却は、再晶析に用いられる容器内で冷却コイルを用いるなど適宜手段によって達成される。しかし、プラント運転の経費の観点から、圧力を減少させて、混合物を蒸発冷却により冷却させることが好ましい。再結晶化溶媒中でのDM-2,6-NDCの溶解が再結晶化溶媒の通常の沸点よりも高い温度で達成されるならば、混合物の温度を所望の再晶析温度まで低下させるために圧力を減少させるだけでよい。しかし、蒸発冷却によって溶剤の通常の沸点よりも低い温度を実現することは、再晶析溶液を保持する容器又は装置に真空を付与することを要する。再晶析温度は、DM-2,6-NDCの少なくとも一部を再晶析させる任意の温度である。好ましくは、再晶析温度は、約50℃以下であり、より好ましくは約10℃〜約40℃の範囲にあり、最も好ましくは約20℃〜約30℃の範囲にある。
【0044】
固体DM-2,6-NDCの再晶析時には、固体DM-2,6-NDCは、たとえば沈降、遠心分離、真空又は加圧濾過などの液体から固体を分別するための適宜手段によって再結晶化溶媒(母液)から分別される。メタノールが溶剤として用いられるならば、濾液をエステル化反応器に再循環させてもよい。あるいは、メタノールを取り除くために処理してもよく、残りの高沸点成分をエステル化反応器に再循環させるか又は廃棄してもよい。メタノール以外の溶剤が再結晶化溶媒として用いられるならば、それもまた、重質分を取り除くように処理して、次いで再利用のために精製することができる。濾過、遠心分離などで集められた固体の再晶析DM-2,6-NDCは、好ましくは再晶析工程に用いた溶剤又は晶析したDM-2,6-NDCを洗浄するために用いるとして上述したような他の適切な溶剤で好ましくは洗浄される。特に洗浄溶剤が昇温された温度にある場合に、洗浄は追加の不純物を取り除く。再晶析DM-2,6-NDCを洗浄するために用いる溶剤:DM-2,6-NDCの質量比は、それぞれ適切には約0.2:1〜約2:1の範囲にある。遠心分離機、真空フィルター、加圧フィルター又は他の分別装置内に残るDM-2,6-NDCの時間、付与される圧力(又は真空)、及び再晶析及び/又は洗浄に用いる溶剤などの変数に依存して、DM-2,6-NDC濾過ケーキは可変量の溶剤を含むであろう。所望であれば、空気又は不活性ガスのスイープ(掃引)中の加熱、追加の加熱有り又は無しでの真空の使用、又はDM-2,6-NDCを乾燥させるための適切な他の手段などの1以上の乾燥技術によって、この溶剤を除去してもよい。しかし、場合によっては減圧下で、溶融するようになるまでDM-2,6-NDCを加熱し、同時に過剰の溶剤をDM-2,6-NDCから蒸留することが好ましい。好ましくは再晶析及び/又は洗浄に用いた溶剤の実質的にすべてを含まない溶融したDM-2,6-NDCは、本プロセスの次の工程で蒸留される。
【0045】
1の再晶析工程だけを記載してきたが、所要純度に応じて、1以上の追加の再晶析手順を用いることができることは当業者に自明である。これらの追加の手順は洗浄工程有り又は無しでもよく、同一又は異なる再晶析及び洗浄溶剤を用いてもよい。さらに、DM-2,6-NDCは再結晶化溶媒中溶液であるが、DM-2,6-NDCを安定化させるか又は不純物を取り除くための1以上の物理的手段又は化学的手段で処理してもよい。たとえば、空気、過酸化物、過酸化水素又は過酸などの酸化剤で処理してもよい。還元剤で処理してもよい。アルコキシド、例えば、ナトリウムメトキシド又はカルシウム、ナトリウムもしくはカリウムの水酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩などの塩基で処理してもよい。ナトリウムメトキシドは、再結晶化溶媒中DM-2,6-NDCの質量を基準として約0.1〜約2 wt%の量で添加する場合に、優れた色のDM-2,6-NDCを提供する。
【0046】
溶融再晶析又は再晶析エステルは、少なくとも1の蒸留工程で蒸留される。DM-2,6-NDCの高融点(約190℃)ゆえに、蒸留温度は約190℃を超えることが必要である。さらに、DM-2,6-NDCは、過剰の温度に維持することによって純度が低下し、特に色が低下するので、蒸留は、減圧した圧力で行うことが好ましい。したがって、蒸留塔底液は、適切には約190℃〜約310℃の範囲、好ましくは約210℃〜約290℃の範囲にある。蒸留圧力は、約2.5 torr〜約200 torrの範囲でもよい。好ましくは、蒸留圧力は約6〜約100 torrの範囲にある。
【0047】
蒸留は、単純蒸留でもよい。しかし、DM-2,6-NDCの最高の純度を達成するために、分留塔を用いることが好ましい。分留塔は、塔内での液体−蒸気接触を増加させるように設計されているランダムもしくは構造カラム充填剤で充填されていてもよい。蒸留分野で周知の例えば篩トレイ又はバブルキャップトレイをなどのトレイを有する分別塔もまた適切である。
【0048】
DM-2,6-NDCの蒸留は、残留MM-2.6-NDC、種々の着色副産物、残留触媒金属及びPEN含有物質からの他の潜在的な残留物などの望ましくない重質高沸点不純物を除去する。重要なことに、蒸留は、DM-2,6-NDCから粒子状汚染物質を除去する。粒子状汚染物質は、蒸留工程を用いない限り、DM-2,6-NDCから除去することが困難である。たとえば、DM-2,6-NDCを適切な溶剤に溶解し、ろ過し、再晶析させた場合でも、固体DM-2,6-NDCを濾過又は遠心分離によって集めなければならず、通常は乾燥させて、DM-2,6-NDCから過剰の再結晶化溶媒を取り除く。これらの操作は、粒子状汚染物質をDM-2,6-NDCに導入する。したがって、最終精製手順としての本発明の蒸留手順は、高品質薄膜を加工するために用いることができるPENを製造するために適切である低レベルの粒子状汚染物質をDM-2,6-NDCが含むことを保証する。好ましくは、蒸留工程は、HIAC/ROYCO粒子分析装置で測定した場合に約1.5ミクロンよりも大きなサイズの粒子をDM-2,6-NDCのグラム当り約5000未満、より好ましくは約2000未満含むDM-2,6-NDCを提供する。蒸留された溶融DM-2,6-NDCは、場合によっては、フレーカー(flaker)などの適切な装置内で着色され、固化される。
【0049】
精製DM-2,6-NDCを調製する上述の方法は、各処理工程がバッチ態様又は連続態様のいずれで行われてもよいことは理解されるべきである。大規模商業運転のためには、全処理を連続態様で行うことが好ましく、本明細書に記載の処理を直列配置された反応ゾーン及び処理ゾーン内で行うことが好ましい。
【実施例1】
【0050】
粗2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)の粗ジメチル2,6-ナフタレンジカルボキシレート(DM-2,6-NDC)への高温非接触エステル化反応を同時に達成するバッチ反応器に、特定の選択された条件でのリサイクル用のPEN含有物質を添加することによって、バッチ実験を行った。これらの結果を下記に示す。
a)粗NDA供給物に基づいて5 wt% PENのPENフィルムスクラップの固定濃度での滞留時間の効果。これらの実験は、単離された粗反応生成物中で測定した低濃度グリコールエステルにより評価したところ、すべての滞留時間において高いPENの転化率を示した。単離した粗反応生成物中の検出可能なカルボン酸の欠如により評価したところ、粗NDAの粗DM-2,6-NDCへの転化率もまた高かった。
【0051】
【表1】

【0052】
b)他の変数をすべて一定に保持した場合のPEN濃度の効果。これらの実験は、単離した粗反応生成物中で測定したグリコールエステルの低濃度により評価したところ、すべての濃度及び滞留時間においてPENフィルムスクラップの高い転化率を示した。単離された粗反応生成物中の検出可能なカルボン酸の欠如により評価したところ、粗NDAから粗DM-2,6-NDCへの転化率もまた高かった。
【0053】
【表2】

【0054】
c)他のすべての変数を一定に保持した場合のPENホモポリマースクラップ物理形態の効果は、単離した粗反応生成物の以下の分析により示される。これらの実験は、PENホモポリマースクラップの粒子サイズにかかわらない比較可能な結果を示す。
【0055】
【表3】

【実施例2】
【0056】
約250 ppmw アンチモン及び他の痕跡量の汚染物質を含むPENホモポリマースクラップを粗2,6-ナフタレンジカルボン酸供給物の約 5 wt%で、メタノールとの高温高圧非接触エステル化反応を介してジメチル-2,6-ナフタレンジカルボキシレートを製造する商業的連続反応器に導入した。ユニットは、すべてに関して通常の態様で、反応の工程及び生成物回収、生成物精製及び溶剤回収の後続工程を運転中であった。
【0057】
連続ユニットをラインアウト状態(a lined-out condition)に到達させた後、粗反応器流出スラリーのサンプルを未反応PENの評価のために分析した。結果は、2,6-NDAのDM-2,6-NDCへの通常のエステル化反応とともに、PENの約90%転化率が反応器内で生じたことを示した。未反応PENの評価のために、アンチモン残留物、エチレングリコール及び典型的なDM-2,6-NDCの品質属性について、最終精製生成物DM-2,6-NDCのサンプルを分析した。典型的なDM-2,6-NDCの品質属性は以下のとおりである。有機不純物の合計は、MM-NDC、NDA及びFNAのメチルエステルの測定濃度を集めることによって算出する。酸価は、DM-2,6-NDC生成物中に残存する未エステル化カルボン酸残留物の量の指標である計算値である。生成物中の無機(金属)残留物の指標である灰分は、試料をマッフル炉内で燃焼させ次いで灰化させることによって炭素質残留物に還元させることによって測定した。米国公衆衛生協会(the American Public Health Association (APHA))基準に報告されている色度は、DM-2,6-NDC生成物の白色度の指標である。外来粒子テストは、1.5ミクロンよりも大きな直径を有する粒子による粒子状物質による生成物汚染の程度の測定である。
【0058】
これらの結果は、被験生成物がすべて通常の品質規格に適合し、添加PENホモポリマースクラップの不在下で製造された生成物から識別できなかったことを示す。生成物品質を通常の規格に適合させるように操作するために特別の技術は必要ではなかった。PENメタノリシスからのエチレングリコール残留物はユニットからパージされ、DM-2,6-NDC生成物中で検出可能成分はなくなった。痕跡量の未反応PENによる生成物の汚染の評価であるグリコールエステルは、最終精製DM-2,6-NDC生成物中に検出されなかった。PEN中に含まれる他の残留物、たとえばPEN製造からのアンチモン残留物は、最終精製DM-2,6-NDC生成物中に検出できなかった。この実施例は、本プロセスの優れた反応及び精製能が、追加の費用を生じさせることなく、PENスクラップの開裂及びエステル交換反応を達成し、2,6- NDAからDM-2,6-NDCへの通常の反応を達成し、DM-2,6-NDC品質を維持したことを説明する。
【0059】
【表4】

【0060】
本プロセスを特定の実施形態に関してだけ説明してきた。しかし、本発明の範囲を逸脱しない限り、当業者によって、説明した実施形態に対する種々の変更、追加、改良及び変形がなされてもよいことは認識されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低級アルコール、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステル及びポリエチレンナフタレート含有物質を含む液相反応混合物を約500゜F(260℃)〜約700゜F(371℃)の範囲の温度で、約5〜約250気圧(絶対)の範囲の圧力で、列配置された反応ゾーンを通して送り、一方、ナフタレンジカルボン酸、ポリエチレンナフタレート含有物質及び低級アルコールを上流反応ゾーンに導入し、少なくとも1の反応ゾーンを撹拌し、ナフタレンジカルボン酸及びポリエチレンナフタレート含有物質と低級アルコールの反応によって形成されたジアルキルエステルを含む生成物を下流反応ゾーンから取り出すことを含む、ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステルを調製する方法。
【請求項2】
前記ポリエチレンナフタレート含有物質は、ナフタレンジカルボン酸を約20 wt%以下含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
約2〜約20個の反応ゾーンがある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記低級アルコールはメタノールであり、前記ナフタレンジカルボン酸は2,6-ナフタレンジカルボン酸であり、前記形成されたジアルキルエステルはジメチル-2,6-ナフタレンジカルボキシレートである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記列配置された反応ゾーンに添加されたアルコールのほとんどは気相で反応ゾーン中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
各反応ゾーンは、反応ゾーン中に存在する液相反応混合物を撹拌するための撹拌機を具備する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応ゾーンは、撹拌槽型反応器である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
バッチ又は連続態様で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
エステル化反応混合物の上向き流を反応器区画室間で流すための開口を有する分割手段によって分離されている少なくとも上部区画室及び下部区画室を有する垂直配置仕切型反応器内で、ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステルを含む液体エステル化反応混合物中、約500゜F(260℃)〜約700゜F(371℃)の範囲の温度、約5〜約250気圧(絶対)の範囲の圧力で、低級アルコール、ナフタレンジカルボン酸及びポリエチレンナフタレート含有物質を接触させることを含み、低級アルコール及びナフタレンジカルボン酸及びポリエチレンナフタレート含有物質は単数又は複数の下部区画室に添加され、ナフタレンジカルボン酸のジエステルを含む反応生成物混合物は上部反応器区画室から取り出される、ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステルを調製する方法。
【請求項10】
前記仕切型反応器は、約2〜約20個の区画室を具備する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
全区画室は区画室内に存在する液体反応混合物を撹拌するための撹拌機を具備する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記低級アルコールはメタノールであり、前記ナフタレンジカルボン酸は2,6-ナフタレンジカルボン酸であり、生成混合物はジメチル-2,6-ナフタレンジカルボキシレートを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記仕切型反応器に添加されたアルコールの少なくとも一部は気体状アルコールとして仕切型反応器を通過する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記仕切型反応器に添加されたアルコールのほとんどは液相中にあり、ナフタレンジカルボン酸とのスラリーの形態である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記仕切型反応器は、約3〜約8個の区画室を具備する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記仕切型反応器に添加されたメタノールは、気体状態で前記反応器を通過する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
エステル化反応温度は約540゜F(282℃)〜約660゜F(349℃)の範囲にあり、圧力は約20気圧(絶対)〜約150気圧(絶対)である、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記仕切型反応器に添加されたメタノール:2,6−ナフタレンジカルボン酸の質量比は約1:1〜約10:1の範囲にある、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記仕切型反応器に添加されたメタノールの大部分、2,6−ナフタレンジカルボン酸の大部分及びポリエチレンナフタレート(PEN)含有物質の大部分は、液体メタノール中2,6-ナフタレンジカルボン酸のスラリー形態である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリエチレンナフタレート含有物質は約20 wt%以下のナフタレンジカルボン酸を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
低級アルコールが液相及び気相の両方で反応混合物中に存在し、気相中での反応ゾーンからのアルコールの除去速度(pounds/hour):反応ゾーンへのアルコールの添加速度(pounds/hour)の比率が約0.5:1〜約0.99:1となるように低級アルコールが反応ゾーンに添加され同時に反応ゾーンから取り出される反応条件下で、適切な反応ゾーン中、ナフタレンジカルボン酸の液体ジアルキルエステル、ナフタレンジカルボン酸、ポリエチレンナフタレート含有物質及び低級アルコールを含む反応混合物中で、ナフタレンジカルボン酸及びポリエチレンナフタレート含有物質を低級アルコールと接触させることを含む、ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステルを調製する方法。
【請求項22】
前記アルコールはメタノールであり、前記ナフタレンジカルボン酸は2,6-ナフタレンジカルボン酸であり、前記ナフタレンジカルボン酸の液体ジアルキルエステルはジメチル-2,6-ナフタレンジカルボキシレートである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリエチレンナフタレート含有物質は約20 wt%以下のナフタレンジカルボン酸を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
(a)反応混合物を冷却することによってジアルキルエステルを晶析させ、晶析したジアルキルエステルを可溶化残留酸化触媒含有反応混合物母液から分別し、
(b)晶析したジアルキルエステルを再結晶化溶媒中に約80℃〜約190℃の範囲の温度で溶解させて、再結晶混合物を形成させ、
(c)再結晶混合物を冷却することによって、ジアルキルエステルを再晶析させ、再晶析したジアルキルエステルを再結晶化母液から分別し、
(d)蒸留したジアルキルエステルが、蒸留したジアルキルエステル1グラム当たり約5000粒子未満の約1.5ミクロンよりも大きな寸法の粒子を含むように、再晶析したジアルキルエステルを真空蒸留し、
(e)蒸留したジアルキルエステルを回収する
ことを含む、ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステル精製品を調製する方法。
【請求項25】
反応混合物は、低級アルコール、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステル及びポリエチレンナフタレート含有物質を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記低級アルコールはメタノールであり、前記ナフタレンジカルボン酸は2,6-ナフタレンジカルボン酸であり、前記生成混合物はジメチル-2,6-ナフタレンジカルボキシレートを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
工程(a)の反応混合物を約50℃以下の温度まで冷却して、ジメチル-2,6-ナフタレンジカルボキシレートを晶析させる、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
工程(c)の再結晶混合物を約50℃以下の温度まで冷却する、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記再結晶化溶媒は、メタノール、C6〜C10芳香族又はハロゲン化C6〜C10芳香族である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
工程(a)の後、晶析したジメチル-2,6-ナフタレンジカルボキシレートを溶剤で洗浄する、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
工程(c)の後、分別した再晶析ジメチル-2,6-ナフタレンジカルボキシレートを溶剤で洗浄する、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
真空蒸留は分別塔を用いて行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記分別塔は構造充填材で充填されている、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
バッチ又は連続態様で行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
不純物は工程(a)及び(c)の母液と一緒に排出される、請求項24に記載の方法。
【請求項36】
前記再結晶化溶媒は、工程(a)の前に、反応混合物に再生利用される、請求項29に記載の方法。

【公表番号】特表2007−538076(P2007−538076A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527289(P2007−527289)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/016208
【国際公開番号】WO2005/115965
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】