説明

ジオレフィン化合物の選択酸化による二官能性エポキシモノマーの製造方法

【課題】ジオレフィン化合物の選択酸化による二官能性エポキシモノマーの新規製造方法の提供。
【解決手段】下記一般式(A):


{式中、nは1〜3の整数を示し、R1〜R5はそれぞれ独立して同一又は相異なり、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アシロキシ基、等である。}で表される化合物を、ハロゲンフリーおよび無溶媒にて6族金属化合物(モリブデン、タングステン)および硫酸水素第4級アンモニウム存在下、酸化剤として過酸化水素水溶液を使用して酸化して、以下の一般式(B):


{式中、n、R1〜R5は、先に定義したものと同じである。}で表される二官能性エポキシモノマーを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソルダーレジストや層間絶縁膜等の電気絶縁材料、ICや超LSI封止材料、積層板などの分野への利用が期待されるエポキシ基および二重結合を分子内に含む二官能性エポキシモノマーが得られるように、ハロゲンフリー、および無溶媒にてジオレフィン類をエポキシ化する方法に関する。特に、本発明はジオレフィン類と過酸化水素水溶液を触媒であるモリブデンまたはタングステンの酸化物存在下にて反応させ、1つの二重結合を選択的にエポキシ化させる二官能性エポキシモノマーの新規な製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業製品の高機能化、高性能化に伴ってより優れた高分子材料の開発が進められている。そのような材料の中で、エポキシ樹脂は熱硬化性樹脂として、またそれ以外の反応性樹脂として広範囲な工業的用途を有し、様々な分野から検討、開発が行われてきている。産業界において現在最も広く使用されているエポキシ樹脂は、エピクロロヒドリンおよびビスフェノールA、フェノール樹脂から製造されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂であるが、樹脂中に塩素が数10ppm〜数千ppm含まれ、それが電気部品の電気特性を悪くするなどの問題があるほか、誘電率についてもビスフェノールA型、ノボラック型エポキシ樹脂は高い。そのため特に半導体封止材などには塩素を含まず電気特性、耐熱性に優れたエポキシ樹脂が求められている。そのような中でエポキシ基および二重結合を分子内に含む二官能性エポキシモノマーは、二重結合を利用してオリゴマー化を行うことができることからエポキシ樹脂の新たな原料として注目を集めている。
【0003】
エポキシ基および二重結合を分子内に含む二官能性エポキシモノマーは対応するジオレフィン類の1つの二重結合を選択的にエポキシ化(モノエポキシ化)することにより得られるが、選択的にエポキシ化(モノエポキシ化)させる技術は、低反応性、低選択性であったり、適用性がある種の構造体に制限されたりする場合が多い。
【0004】
従来、ジオレフィンの選択的エポキシ化に利用される酸化剤として過酢酸や過安息香酸といった過酸が用いられてきたが (以下の特許文献1、特許文献2、非特許文献1を参照のこと)、これらの手法では副生成物としてジエポキシドの生成を抑制するためジオレフィン類がエポキシ化剤である過酸に対して過剰に必要となる上、酸化剤由来の酸が当量生成するため、装置の腐食などの問題がある。また、金属触媒ならびにケトン存在下、酸素分子を酸化剤としたジオレフィンの選択的エポキシ化方法 (以下の非特許文献2を参照のこと) も知られているが、この反応ではケトンが非常に多く必要(ジオレフィン類に対し2当量)であるほか、モノエポキシ化選択率は非常に高いものの原料転化率が悪いという問題点が挙げられる。最近ではメタルシリケートを触媒としたTBHPをエポキシ化剤とするジオレフィンの選択的エポキシ化方法 (以下の非特許文献3を参照のこと)も報告されているが基質特異性が激しく、また反応操作やコスト面からも工業化に不利であるという問題がある。それに対して過酸化水素水は、安価で腐食性がなく、反応後の副生物は皆無又は水であるために環境負荷が小さく、工業的に利用するには優れた酸化剤である。
【0005】
過酸化水素水をエポキシ化剤としてジオレフィン類の選択的エポキシ化によるニ官能性エポキシモノマーを製造する方法として、 (1) ハロゲン含有ケトンを触媒としたジオレフィンのエポキシ化反応(以下の非特許文献4を参照のこと)、 (2) 第4級アンモニウムケイ素タングステートを触媒としたジオレフィンのエポキシ化反応(以下の非特許文献5を参照のこと)、(3) 第4級アンモニウムリンタングステートを触媒としたジオレフィンのエポキシ化反応(以下の非特許文献6を参照のこと)、(4) 塩化セチルピリジウムおよびリンタングステン酸を触媒としたジオレフィンのエポキシ化反応(以下の非特許文献7を参照のこと)、(5) 結晶性チタン含有分子ふるい触媒を用いたジオレフィンのエポキシ化反応 (以下の特許文献3を参照のこと)、(6) イミダゾール配位子を含んだ6族金属またはチタン錯体触媒を用いたジオレフィンのエポキシ化反応(以下の特許文献4を参照のこと)、(7)有機レニウムオキシドを触媒としてジオレフィンをエポキシ化する方法(以下の非特許文献8を参照のこと)など多数報告されている。しかしながら上記の方法 (1)では反応系中で過酸化物を発生させるため、後処理が煩雑となり、安全性にも問題がある。方法(2)では過酸化水素の量がジオレフィン1当量に対して20%程度であるために、モノエポキシ化選択率は非常に高いものの、未反応のジオレフィンが多く残存するために結果として分離・精製過程に時間、コストがかかり生産性に乏しい。方法(3) 、(4) 、(5)ではジオレフィンの反応転化率、モノエポキシ化選択率ともに良好であるものの、毒性の高い反応溶媒が必要(クロロホルム、ベンゼン)なため環境負荷が大きい上、相間移動触媒として塩素化合物を使用しているため、最終製品であるエポキシ樹脂に塩素が混入する可能性があり、エポキシ樹脂の性能低下の恐れが排除できない。方法(6) 、(7)はジオレフィン類が酸化剤に対して過剰に必要となる上、原料転化率、反応収率が低い。また方法(7) では反応溶媒としてブロモベンゼンやトルエンを用いており環境負荷も大きい。方法(8) はジオレフィンの反応転化率は高いものの、副生成物として二官能性エポキシモノマーが加水分解したジオール化合物が大量に生成し、目的とするモノエポキシ体の収率が低い。また有機レニウムオキシドは非常に高価である為、コスト面からも工業的に不利である。
【0006】
一方で、オレフィン類のエポキシ化反応においては反応系中にハロゲンイオンがはいることよっても反応が大きく阻害され、結果として反応収率および触媒活性の低下につながるとも指摘されており、最近では反応収率・触媒活性の向上のため、アンモニウムハロゲン化物を用いずにアンモニウム硫酸水素塩およびメチル硫酸塩が用いられている(以下の特許文献5、非特許文献9、非特許文献10を参照のこと)。
【0007】
従って温和な条件下、有機溶媒を使用せずに簡便な操作で安全にジオレフィン類から選択的に二官能性エポキシモノマーを収率良く、かつ低コストで製造する方法の開発が強く要望されている。
【0008】
【特許文献1】US Patent 2687406.
【特許文献2】特開昭61-72774
【特許文献3】特開平7-242649.
【特許文献4】特開平6-343872.
【特許文献5】特願2005-143124.
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 1959, 81, 3350.
【非特許文献2】J. Org. Chem., 1993, 58, 6421.
【非特許文献3】Chem. Commun., 1998, 1123.
【非特許文献4】Tetrahedron Lett.,1981, 22, 2089.
【非特許文献5】Journal of Catalysis, 2004, 224, 224.
【非特許文献6】J. Org. Chem., 1988, 53, 1553.
【非特許文献7】J. Org. Chem., 1988, 53, 3587.
【非特許文献8】Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1991, 30, 1638.
【非特許文献9】Organic Process Research & Development, 2004, 8, 524.
【非特許文献10】Chem. Commun., 2003, 16, 1977.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は温和な条件下、エポキシ化反応に有機溶媒およびハロゲン化合物を全く使用せず、ジオレフィン類と過酸化水素水溶液の反応による安全で容易な二官能性エポキシモノマーの新規製造法を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究の結果、有機溶媒を使用せず、硫酸水素第4級アンモニウムおよび6族金属化合物(モリブデン、タングステン)を触媒に用いてジオレフィン類と過酸化水素水溶液の反応を行うと、エポキシ基および二重結合を分子内に含む二官能性エポキシモノマーが高収率で選択的に生成することを発見し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)酸化剤として過酸化水素水溶液を使用して、下記一般式(A):
【化1】

{式中、nは1〜3の整数を示し、R1〜R5はそれぞれ独立して同一又は相異なり、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アシロキシ基、あるいは、R1とR2、R1とR3、R1とR4、R1とR5、R2とR3、R2とR4、R2とR5、R3とR4、R3とR5又はR4とR5が炭素数1〜3の炭素鎖で架橋されたものを示し、これらは独立に炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基で置換されていてもよい。}で表されるジオレフィン化合物を酸化することにより、下記一般式(B):
【化2】

{式中、nは1〜3の整数を示し、R1〜R5はそれぞれ独立して同一又は相異なり、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アシロキシ基、あるいは、R1とR2、R1とR3、R1とR4、R1とR5、R2とR3、R2とR4、R2とR5、R3とR4、R3とR5又はR4とR5が炭素数1〜3の炭素鎖で架橋されたものを示し、これらは独立に炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基で置換されていてもよい。}で表される二官能性エポキシモノマーを製造する方法。
【0012】
(2)触媒として6族金属化合物(モリブデン、タングステン)および硫酸水素第4級アンモニウムを使用することを特徴とする前記(1)に記載の方法。
【0013】
(3)ハロゲンフリーで反応を行うことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の方法。
【0014】
(4)無溶媒で反応を行うことを特徴とする前記(3)に記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により提供される二官能性エポキシモノマーの製造方法は、層間絶縁膜等の電気絶縁材料(ソルダ−レジスト材料)、ICや超LSI封止材料の原料として、また農薬・医薬の中間体や可塑剤、接着剤、塗料樹脂といった各種ポリマーの原料として化学工業をはじめ、各種の産業分野で幅広く用いられる有用な物質である二官能性エポキシモノマーを、対応するジオレフィン類と過酸化水素水溶液の反応により安全、かつ高効率で製造することができる。また本製造法ではハロゲンフリーであるため環境に対する負荷を大幅に軽減できるほか、ハロゲンが最終製品である各種ポリマーに混入する恐れがまったくないため各種ポリマーの性能向上が期待できる。また本製造法では後処理操作を除いて有機溶媒、酸、塩基を使用しないため低コストでの製造が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明における原料のジオレフィン化合物は、例えば下記一般式(A):
【化3】

{式中、nは1〜3の整数を示し、R1〜R5はそれぞれ独立して同一又は相異なり、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アシロキシ基、あるいは、R1とR2、R1とR3、R1とR4、R1とR5、R2とR3、R2とR4、R2とR5、R3とR4、R3とR5又はR4とR5が炭素数1〜3の炭素鎖で架橋されたものを示し、これらは独立に炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基で置換されていてもよい。}で表される化合物である。
【0017】
前記ジオレフィン化合物の具体例としては、例えば、4-ビニル-1-シクロヘキセン、1-メチル-4-ビニル-1-シクロヘキセン、4-メチル-4-ビニル-1-シクロヘキセン、1-フェニル-4-ビニル-1-シクロヘキセン、1,2-ジメチル-4-ビニル-1-シクロシクロヘキセン、3,4-ジエチル-4-ビニル-1-シクロヘキセン、4-ビニル-1-シクロヘプテン、4-メチル-4-ビニル-1-シクロヘプテン、1-フェニル-4-ビニル-1-シクロヘプテン、1,2-ジメチル-4-ビニル-1-シクロシクロヘプテン、3,4-ジエチル-4-ビニル-1-シクロヘプテン4-ビニル-1-シクロオクテン、1-メチル-4-ビニル-1-シクロオクテン、4-メチル-4-ビニル-1-シクロオクテン、1-フェニル-4-ビニル-1-シクロオクテン、1,2-ジメチル-4-ビニル-1-シクロシクロオクテン、3,4-ジエチル-4-ビニル-1-シクロオクテン、5-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、2,3-ジメチル-5-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、2,3,5-トリメチル-5-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、等が挙げられる。
【0018】
本発明における原料のジオレフィン化合物としては、好ましくは4-ビニル-1-シクロヘキセン、1,2-ジメチル-4-ビニル-1-シクロシクロヘキセン、4-ビニル-1-シクロヘプテン、5-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、2,3,5-トリメチル-5-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、等が挙げられる。
【0019】
本発明の製造法において用いられる過酸化水素水溶液の使用量に制限はなく、使用量に応じてジオレフィン類への反応は生起するが、一般的には0.8〜5.0当量、好ましくは1.0〜2.0当量の範囲から選ばれる。
【0020】
本発明の製造法において用いられる過酸化水素水溶液の濃度に制限はなく、濃度に応じてジオレフィン類への反応は生起するが、一般的には1〜80%、好ましくは10〜60%の範囲から選ばれる。
【0021】
硫酸水素第4級アンモニウムとしては、例えば、硫酸水素テトラへキシルアンモニウム、硫酸水素テトラオクチルアンモニウム、硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸水素エチルトリオクチルアンモニウム、硫酸水素セチルピリジニウム、等が挙げられるが、硫酸水素テトラへキシルアンモニウム、硫酸水素テトラオクチルアンモニウム、硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウム等が好ましい。これら硫酸水素第4級アンモニウムは単独で使用しても、二種以上を混合使用しても良い。その使用量は基質のジオレフィン類に対して0.0001〜10モル%、好ましくは0.01〜5モル%の範囲から選ばれる。
【0022】
6族金属化合物としては、モリブデンの場合、水中でモリブデン酸アニオンを生成する化合物であり、例えばモリブデン酸、三酸化モリブデン、三硫化モリブデン、六塩化モリブデン、リンモリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カリウム二水和物、モリブデン酸ナトリウム二水和物等が挙げられるが、モリブデン酸、三酸化モリブデン、リンモリブデン酸が好ましい。タングステンの場合、水中でタングステン酸アニオンを生成する化合物であり、例えばタングステン酸、三酸化タングステン、三硫化タングステン、六塩化タングステン、リンタングステン酸、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸カリウム二水和物、タングステン酸ナトリウム二水和物等が挙げられるが、タングステン酸、三酸化タングステン、リンタングステン酸、タングステン酸ナトリウム二水和物等が好ましい。これら6族金属化合物類は単独で使用しても、二種以上を混合使用してもよい。その使用量は基質のジオレフィン類に対して0.0001〜20モル%、好ましくは0.01〜10モル%の範囲から選ばれる。なおリン酸、ポリリン酸、アミノメチルホスホン酸、リン酸ナトリウムのごとき添加剤を使用することによってこの種の触媒を改質してもよい。
【0023】
本発明の製造法において、反応は通常、30〜100 ℃の範囲で、好ましくは50〜90 ℃の範囲で行われる。
【0024】
本発明の製造法における反応時間は、反応温度により左右され、一概に定めることはできないが、通常は30分〜12時間の範囲で、好ましくは1〜6時間の範囲で行われる。
【0025】
かくして得られる二官能性エポキシモノマーとしては、一般式(B):
【化4】

{式中、nは1〜3の整数を示し、R1〜R5はそれぞれ独立して同一又は相異なり、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アシロキシ基、あるいは、R1とR2、R1とR3、R1とR4、R1とR5、R2とR3、R2とR4、R2とR5、R3とR4、R3とR5又はR4とR5が炭素数1〜3の炭素鎖で架橋されたものを示し、これらは独立に炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基で置換されていてもよい。}で表される化合物である。
【0026】
前記二官能性エポキシモノマーの具体例としては、例えば、4-ビニル-1,2-エポキシシクロヘキサン、1-メチル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロヘキサン、4-メチル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロヘキサン、1-フェニル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-ジメチル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3,4-ジエチル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロヘキサン、4-ビニル-1,2-エポキシシクロヘプタン、4-メチル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロヘプタン、1-フェニル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロヘプタン、1,2-ジメチル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロヘプタン、3,4-ジエチル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロヘプタン、4-ビニル-1,2-エポキシシクロオクタン、1-メチル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロオクタン、4-メチル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロオクタン、1-フェニル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロオクタン、1,2-ジメチル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロオクタン、3,4-ジエチル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロオクタン、6-ビニル-3-オキサ[3.2.1.02,4]オクタン、6-メチル-6-ビニル-3-オキサ[3.2.1.02,4]オクタン、2,3-ジメチル-6-ビニル-3-オキサ[3.2.1.02,4]オクタン、2,3,6-トリメチル-6-ビニル-3-オキサ[3.2.1.02,4]オクタン、等が挙げられる。
【0027】
本発明における二官能性エポキシモノマーとしては、好ましくは-ビニル-1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-ジメチル-4-ビニル-1,2-エポキシシクロヘキサン、4-ビニル-1,2-エポキシシクロヘプタン、6-ビニル-3-オキサ[3.2.1.02,4]オクタン、2,3,6-トリメチル-6-ビニル-3-オキサ[3.2.1.02,4]オクタン、等が挙げられる。
【0028】
かくして生成した目的の二官能性エポキシモノマーは、反応終了後の混合液を濃縮後、蒸留等の通常の方法によって取り出すことが出来る。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。
以下に述べる実施例は本発明の理解を容易にするために代表的な化合物の一例をあげたものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
実施例1
磁気攪拌子を備えた試験管にタングステン酸ナトリウム2水和物 (26.4 mg, 0.08 mmol)、硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウム (14.1 mg, 0.031 mmol)、30%過酸化水素水溶液 (504 mg, 4.4 mmol)をいれ、均一な溶液になるまで室温にて15分間攪拌した(撹拌速度:1000 rpm)。この溶液に4-ビニル-1-シクロヘキセン(432 mg, 4 mmol)を加え室温にて15分間攪拌した後(撹拌速度:1000 rpm)、65℃に昇温し、3.5時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後、チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液(1 ml)をゆっくりと滴下しながら15分程度攪拌し、反応を完全に停止させた。その後、酢酸エチルにて有機物を抽出した(2 ml×3回)。得られた溶液をガスクロマトグラフィーにて測定したところ、原料である4-ビニル-1-シクロヘキセンの転化率 は46%であり、二官能性エポキシモノマーである4-ビニル-1, 2-エポキシシクロヘキサンが40%、副生成物として4-ビニル-1, 2-ジヒドロキシシクロヘキサンがtrace量であることを確認した。その他ジエポキシド化合物等は全く生成しておらず、モノエポキシ選択率は 91%であるという結果が得られた。
【0031】
実施例2
磁気攪拌子を備えた試験管にタングステン酸ナトリウム2水和物 (26.4 mg, 0.08 mmol)、硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウム (12.7 mg, 0.027 mmol)、アミノメチルホスホン酸 (4.2 mg, 0.038 mmol)、30%過酸化水素水溶液 (480 mg, 4.2 mmol)をいれ、均一な溶液になるまで室温にて15分間攪拌した(撹拌速度:1000 rpm)。この溶液に4-ビニル-1-シクロヘキセン(432 mg, 4 mmol)を加え室温にて15分間攪拌した後(撹拌速度:1000 rpm)、65℃に昇温し、3.5時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後、チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液(2 ml)をゆっくりと滴下しながら15分程度攪拌し、反応を完全に停止させた。その後、酢酸エチルにて有機物を抽出した(2 ml×3回)。得られた溶液をガスクロマトグラフィーにて測定したところ、原料である4-ビニル-1-シクロヘキセンの転化率 は75%であり、二官能性エポキシモノマーである4-ビニル-1, 2-エポキシシクロヘキサンが68%、副生成物として4-ビニル-1, 2-ジヒドロキシシクロヘキサンが6%であることを確認した。その他ジエポキシド化合物等は全く生成しておらず、モノエポキシ選択率は 91%であるという結果が得られた。
【0032】
実施例3
磁気攪拌子を備えた試験管にリンタングステン酸n水和物 (16.5 mg)、硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウム (19.8 mg, 0.043 mmol)、アミノメチルホスホン酸 (3.5 mg, 0.032 mmol)、リン酸水素二ナトリウム (60.4 mg, 0.043 mmol)、30%過酸化水素水溶液 (560 mg, 4.9 mmol)をいれ、均一な溶液になるまで室温にて15分間攪拌した(撹拌速度:1000 rpm)。この溶液に4-ビニル-1-シクロヘキセン(432 mg, 4 mmol)を加え室温にて15分間攪拌した後(撹拌速度:1000 rpm)、65℃に昇温し、3.5時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後、チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液(2 ml)をゆっくりと滴下しながら15分程度攪拌し、反応を完全に停止させた。その後、酢酸エチルにて有機物を抽出した(2 ml×4回)。得られた溶液をガスクロマトグラフィーにて測定したところ、原料である4-ビニル-1-シクロヘキセンの転化率 は85%であり、二官能性エポキシモノマーである4-ビニル-1, 2-エポキシシクロヘキサンが71%、副生成物として4-ビニル-1, 2-ジヒドロキシシクロヘキサンが7%であることを確認した。その他ジエポキシド化合物等は全く生成しておらず、モノエポキシ選択率は 83%であるという結果が得られた。
【0033】
比較例1
磁気攪拌子を備えた試験管にタングステン酸ナトリウム2水和物 (26.4 mg, 0.080 mmol)、アミノメチルホスホン酸 (4.5 mg, 0.040 mmol)、30%過酸化水素水溶液 (504 mg, 4.4 mmol)をいれ、均一な溶液になるまで室温にて15分間攪拌した(撹拌速度:1000 rpm)。この溶液に4-ビニル-1-シクロヘキセン(432 mg, 4.0 mmol)を加え室温にて15分間攪拌した後(撹拌速度:1000 rpm)、65℃に昇温し、3.5時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後、チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液(2 ml)をゆっくりと滴下しながら15分程度攪拌し、反応を完全に停止させた。その後、酢酸エチルにて有機物を抽出した(2 ml×3回)。得られた溶液をガスクロマトグラフィーにて測定したところ、原料である4-ビニル-1-シクロヘキセンの転化率 はほぼ0%であり、二官能性エポキシモノマーである4-ビニル-1, 2-エポキシシクロヘキサン、および4-ビニル-1, 2-ジヒドロキシシクロヘキサンはまったく確認できなかった。
【0034】
比較例2
磁気攪拌子を備えた試験管にタングステン酸ナトリウム2水和物 (26.4 mg, 0.080 mmol)、塩化メチルトリオクチルアンモニウム (16.1 mg, 0.040 mmol)、アミノメチルホスホン酸 (4.5 mg, 0.040 mmol)、30%過酸化水素水溶液 (504 mg, 4.4 mmol)を入れ、均一な溶液になるまで室温にて15分間攪拌した(撹拌速度:1000 rpm)。この溶液に4-ビニル-1-シクロヘキセン(432 mg, 4.0 mmol)を加え室温にて15分間攪拌した後(撹拌速度:1000 rpm)、65℃に昇温し、3.5時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後、チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液(2 ml)をゆっくりと滴下しながら15分程度攪拌し、反応を完全に停止させた。その後、酢酸エチルにて有機物を抽出した(2 ml×3回)。得られた溶液をガスクロマトグラフィーにて測定したところ、原料である4-ビニル-1-シクロヘキセンの転化率 は58%であり、二官能性エポキシモノマーである4-ビニル-1, 2-エポキシシクロヘキサンが47%、副生成物として4-ビニル-1, 2-ジヒドロキシシクロヘキサンがtrace量であることを確認した。その他ジエポキシド化合物等は全く生成しておらず、モノエポキシ選択率は 81%であるという結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤として過酸化水素水溶液を使用して、下記一般式(A):
【化1】

{式中、nは1〜3の整数を示し、R1〜R5はそれぞれ独立して同一又は相異なり、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アシロキシ基、あるいは、R1とR2、R1とR3、R1とR4、R1とR5、R2とR3、R2とR4、R2とR5、R3とR4、R3とR5又はR4とR5が炭素数1〜3の炭素鎖で架橋されたものを示し、これらは独立に炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基で置換されていてもよい。}で表されるジオレフィン化合物を酸化することにより、下記一般式(B):
【化2】

{式中、nは1〜3の整数を示し、R1〜R5はそれぞれ独立して同一又は相異なり、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アシロキシ基、あるいは、R1とR2、R1とR3、R1とR4、R1とR5、R2とR3、R2とR4、R2とR5、R3とR4、R3とR5又はR4とR5が炭素数1〜3の炭素鎖で架橋されたものを示し、これらは独立に炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基で置換されていてもよい。}で表される二官能性エポキシモノマーを製造する方法。
【請求項2】
触媒として、6族金属化合物(モリブデン、タングステン)および硫酸水素第4級アンモニウムを使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハロゲンフリーで反応を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
無溶媒で反応を行うことを特徴とする、請求項3に記載の方法。

【公開番号】特開2007−308416(P2007−308416A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138510(P2006−138510)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有害化学物質リスク削減基盤技術研究開発(非フェノール系樹脂原料を用いたレジスト材料の開発)」に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】