説明

ジッタ検出回路及びジッタ検出方法

【課題】PLL回路からの出力に含まれるジッタ成分及びデータパスの電源に含まれる周期的ノイズ成分を低減するクロック信号を生成する。
【解決手段】クロック信号120と変調制御信号127に基づいて生成された信号122とを混合して変調クロック信号123を生成するミキサ110と、遅延制御信号124に基づく遅延ステップで遅延された前記クロック信号若しくは前記変調クロック信号に同期したテストパターン信号と期待値データとが一致するか否かを判定し、判定結果を出力する内蔵自己テスト回路106と、前記判定結果をプロットしてシュムープロットを作成し、一致と不一致の境界線パターンに基づいて前記シュムープロットに含まれるノイズ成分を検出し、前記ノイズ成分と同じ周波数でかつ逆位相の信号を生成するように前記変調制御信号を出力する制御部107と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジッタ検出回路及びジッタ検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PLL(Phase Locked Loop)回路は、基準のタイミング信号(例えば外部からの入力クロック信号)とPLLの出力のタイミング信号(例えば半導体装置内部に供給するクロック信号)とを比較し、位相差がある場合に位相を合わせるように動作する。
【0003】
PLL回路が出力するクロック信号には一般的に信号の時間的揺らぎであるジッタが存在する。クロック信号の供給先であるデータパスでは、ジッタが誤作動の要因となる。このため、クロック信号のジッタ成分を検出し、抑制するジッタ抑制回路が用いられる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかし、クロック信号が供給されるデータパスがPLL回路とは異なる電源を使用し、その電源に固有の周期的ノイズが含まれている場合、従来のジッタ抑制回路から出力されるクロック信号を用いても誤作動を起こす虞がある。
【特許文献1】特開平6−53947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はPLL回路からの出力に含まれるジッタ成分及びデータパスの電源に含まれる周期的ノイズ成分を低減するクロック信号を生成できるジッタ検出回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によるジッタ検出回路は、所定のテストパターン信号を出力するパターン発生部と、変調制御信号に基づいて信号を生成し出力するミキサ制御部と、クロック信号と前記ミキサ制御部の出力信号とを混合して変調クロック信号を生成し出力するミキサと、遅延制御信号に基づく遅延ステップで前記クロック信号若しくは前記変調クロック信号を遅延させて出力する遅延制御部と、遅延された前記クロック信号若しくは前記変調クロック信号に同期した前記テストパターン信号と期待値データとが一致するか否かを判定し、判定結果を出力する内蔵自己テスト回路と、前記遅延制御信号を出力し、前記判定結果に基づいて前記テストパターン信号に含まれるノイズ成分を検出し、前記ノイズ成分と同じ周波数でかつ逆位相の信号を生成するように前記変調制御信号を出力する制御部と、を備えるものである。
【0007】
また、本発明の一態様によるジッタ検出回路は、所定のテストパターン信号を出力するパターン発生部と、変調制御信号に基づいて信号を生成し出力するミキサ制御部と、前記クロック信号と前記ミキサ制御部の出力信号とを混合して変調クロック信号を生成し出力するミキサと、遅延制御信号に基づく遅延ステップで前記クロック信号若しくは前記変調クロック信号を遅延させて出力する遅延制御部と、遅延された前記クロック信号若しくは前記変調クロック信号に同期した前記テストパターン信号と期待値データとが一致するか否かを判定し、判定結果を出力する内蔵自己テスト回路と、前記遅延制御信号を出力し、前記判定結果をプロットしてシュムープロットを作成し、一致と不一致の境界線パターンに基づいて前記シュムープロットに含まれるノイズ成分を検出し、前記ノイズ成分と同じ周波数でかつ逆位相の信号を生成するように前記変調制御信号を出力する制御部と、を備えるものである。
【0008】
本発明の一態様によるジッタ検出方法は、所定のテストパターン信号を出力し、クロック信号を所定ステップで遅延させた遅延クロック信号を生成し、前記遅延クロック信号に同期した前記テストパターン信号と期待値データとが一致するか否かを判定し、判定結果に基づいて前記テストパターン信号に含まれるノイズ成分を検出し、前記ノイズ成分と同じ周波数で逆位相の信号を前記クロック信号に混合させて変調クロック信号を生成するものである。
【0009】
また、本発明の一態様によるジッタ検出方法は、所定のテストパターン信号を出力し、クロック信号を所定ステップで遅延させた遅延クロック信号を生成し、前記遅延クロック信号に同期した前記テストパターン信号と期待値データとが一致するか否かを判定し、判定結果をプロットしてシュムープロットを作成し、前記シュムープロットにおける一致と不一致の境界線パターンに基づいて前記シュムープロットに含まれるノイズ成分を検出し、前記ノイズ成分と同じ周波数で逆位相の信号を前記クロック信号に混合させて変調クロック信号を生成するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、PLL回路からの出力に含まれるジッタ成分及びデータパスの電源に含まれる周期的ノイズ成分を低減するクロック信号を生成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態によるジッタ検出回路を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1に本発明の実施形態に係るジッタ検出回路の概略構成を示す。ジッタ検出回路は、BIST(Built in self test:内蔵自己テスト)パターン発生部101、フリップフロップ102、103、インバータ104、105、BIST回路106、制御部107、遅延制御部108、ミキサ制御部109、ミキサ110、マルチプレクサ111を備える。
【0013】
PLL回路112から出力されたクロック信号120がフリップフロップ102、ミキサ110、マルチプレクサ111に入力される。
【0014】
インバータ104、105、フリップフロップ103、BIST回路106、制御部107はPLL回路112とは異なる電源(例えばデータパス113と同じ電源)で動作する。BISTパターン発生部101、フリップフロップ102、遅延制御部108、ミキサ制御部109、ミキサ110はPLL回路112と同じ電源又は違う電源どちらで動作するようにしても良い。
【0015】
BISTパターン発生部101から出力されたテストパターン信号121はフリップフロップ102、インバータ104、105、フリップフロップ103を介してBIST回路106へ入力される。
【0016】
ミキサ110はPLL回路112から出力されたクロック信号120及びミキサ制御部109の出力信号122が与えられ、これらを混合して生成された変調クロック信号123を遅延制御部108へ出力する。また、この変調クロック信号123はマルチプレクサ111に入力される。
【0017】
遅延制御部108は、制御部107から出力される遅延制御信号124に基づく遅延ステップで変調クロック信号123を遅延し(位相をずらし)ながら、フリップフロップ103へ出力する。遅延制御部108には例えば位相分割器(phase interpolator)を用いることができる。
【0018】
フリップフロップ103はこの遅延された変調クロック信号に同期してデータの保持・出力を行う。
【0019】
BIST回路106は保持している期待値データとフリップフロップ103の出力信号125とが一致するか否かを比較して、フリップフロップ103の出力信号125の良否(Pass/Fail)判定を行い、判定結果126を制御部107へ出力する。
【0020】
フリップフロップ103に与えられるクロック信号(遅延制御部108の出力信号)の位相をずらしていくことで、制御部107はBIST回路106から時間軸方向の判定結果を取得することができる。遅延制御部108によるクロック信号の遅延(位相シフト)はテストパターンの1サイクルより少し長い時間まで行われ、終了後は遅延0に戻り再び同様にクロック信号を遅延させていく。
【0021】
制御部107は例えば図2(a)に示すようなBIST回路106から出力されるシリアルデータである判定結果126を遅延が0になる毎にグルーピングし、図2(b)に示すように列方向に並べてPass/Failのプロット(Shmoo Plot:シュムープロット)を得る。図中では○がPass、×がFailを意味する。
【0022】
PLL回路112から出力されるクロック信号120にジッタ成分が含まれている場合やフリップフロップ103に与えられる電源にノイズ成分が含まれている場合、制御部107で得られるシュムープロットでは、例えば図3(a)や図3(b)に示すようにPass/Failの境界線(包絡線)に揺らぎ等が生じる。
【0023】
このような揺らぎが生じてFail領域が大きくなるのは、インバータ104、105、フリップフロップ103、BIST回路106、制御部107がPLL回路112とは異なる電源(データパス113と同じ電源)で動作することにより、PLL回路112の出力に含まれるジッタ成分やデータパス113の電源に含まれる周期的ノイズ成分が現れるためである。
【0024】
制御部107はこの包絡線の揺らぎからノイズの周波数、位相を検出し、揺らぎを抑えPass領域が最大になるようにミキサ制御部109へ変調制御信号127を出力する。ここで制御部107はノイズの1周期が観測できるような時間分のPass/Fail情報を取得することに留意する。
【0025】
例えば図3(a)ではノイズ成分の周波数は1/(2×(T2−T1))となる。また、図3(b)ではノイズ成分の周波数は1/(T2−T1)となる。
【0026】
制御部107から出力される変調制御信号127に基づいてミキサ制御部109にAC変調がかけられる。AC変調を行う際、振幅は位相シフトのステップ幅、周波数はこのステップ幅を変調する周波数、位相は変調を開始するタイミングで制御することが出来る。
【0027】
このようにしてミキサ制御部109から出力された信号122がミキサ110にてクロック信号120と混合され、変調クロック信号123が生成される。ミキサ110には例えば位相分割器(Phase Interpolator)を用いることができる。
【0028】
制御部107は検出したノイズ成分と同じ周波数で逆位相の信号がクロック信号120に混合されるように変調制御信号127を出力する。
【0029】
変調クロック信号123はノイズ成分を低減するように変調されている。従って制御部107で得られるシュムープロットは図3(a)、(b)からそれぞれ図3(c)、(d)に示すような包絡線の揺らぎがなくPass領域が大きいものになる。
【0030】
マルチプレクサ111は制御部107から出力される選択信号128に基づいてクロック信号120又は変調クロック信号123をデータパス113へ出力する。制御部107はPass/Failのプロットからノイズ成分を十分低減させることができたと判定した場合は、マルチプレクサ111から変調クロック信号123が出力されるように選択信号128を生成、出力する。
【0031】
続いて本実施形態によるジッタ検出方法を図4に示すフローチャートを用いて説明する。
(ステップS401)BISTパターン発生部101がテストパターン信号121を出力する。
(ステップS402)PLL回路112から出力されるクロック信号120に同期するフリップフロップ102がテストパターン信号121を保持・出力する。
(ステップS403)ミキサ110がクロック信号120とミキサ制御部109の出力122とを混合して変調クロック信号123を生成する。
(ステップS404)遅延制御部108が遅延制御信号124に基づく遅延ステップで変調クロック信号を遅延させて出力する。
(ステップS405)フリップフロップ103がフリップフロップ102の出力を遅延制御部108の出力に同期して保持・出力する。
(ステップS406)BIST回路106がフリップフロップ103の出力と期待値データとの一致/不一致を判定し、判定結果126を出力する。
(ステップS407)制御部107が判定結果126を用いてシュムープロットを作成し、一致・不一致の境界線パターンからノイズ成分を検出する。
(ステップS408)ノイズ成分の有無を判定する。ノイズ成分が無い、又は十分低い場合はステップS410へ進み、それ以外の場合はステップS409へ進む。
(ステップS409)ノイズ成分と同じ周波数で逆位相の信号がクロック信号120に混合されるようにミキサ制御部109へ変調制御信号を出力する。
(ステップS410)マルチプレクサ111を介して変調クロック信号123をデータパス113へ供給する。
【0032】
なお、例えばジッタ検出の開始時点ではノイズ成分の有無は検出されておらず、変調クロック信号が生成されていない。従って、ステップS404ではまず遅延制御部108が遅延制御信号124に基づく遅延ステップでクロック信号120を遅延させて出力する。その後、ステップS408でノイズ成分が検出された場合は、遅延制御部108が遅延制御信号124に基づく遅延ステップで変調クロック信号123を遅延させて出力する。
【0033】
このようにして、PLL回路112からの出力に含まれるジッタ成分及びデータパス113の電源に含まれる周期的ノイズ成分を低減する変調クロック信号123をデータパス113に供給することができる。これによりデータパスにおける誤作動の発生を抑制することができる。
【0034】
上記実施形態ではBISTパターン発生部101、PLL回路112が出力するクロック信号120が与えられるフリップフロップ102、インバータ104、105、遅延制御部108、遅延された変調クロック信号が与えられるフリップフロップ103、及びBIST回路106を有する測定部は1つであったが、この測定部を複数設けるようにしても良い。
【0035】
一例として2つの測定部51、52を備えるジッタ検出回路を図5に示す。そして、測定部51が図6(a)に示すPass/Fail判定の前半部分61、測定部52がPass/Failの後半部分62を測定することで、シュムープロット作成に要する時間を短縮することができる。これにより、高周波のジッタ成分や周期的ノイズ成分を検出することができる。
【0036】
ミキサ110は位相分割器ではなく、図7に示すようにDLL(Delayed locked loop)回路710にしてもよい。
【0037】
また、遅延制御部108にDLL回路を用いるようにしても良い。
【0038】
上記実施形態におけるインバータ104、105、フリップフロップ103は回路(データパス113)中のクリティカルパスを用いるようにしても良い。
【0039】
このジッタ検出回路はスタートアップ(POR:パワー・オン・リセット)時のみに使用するようにしても良いし、データパス113の動作中に使用するようにしても良い。
【0040】
データパスの動作中に所定のタイミングでオフする回路ブロックがある場合、その回路ブロックがオフすることで、電源に含まれるノイズ成分が変化することがある。制御部107はノイズ成分の変化に対応したミキサ110での変調パラメータをあらかじめ保持しておき、回路ブロックがオフするタイミングの直前で保持しているパラメータを参照し、変調制御信号を出力するようにしても良い。これにより、データパスの動作状態に対応した最適な変調クロック信号を生成し、データパスに供給することができる。
【0041】
また、電源が複数ある場合は、それぞれの電源系統ごとに上記実施形態によるジッタ検出回路を設けるようにしても良い。電源により含まれるノイズ成分が異なるためである。
【0042】
上述した実施形態は一例であって限定的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係るジッタ検出回路の概略構成図である。
【図2】シュムープロットの説明図である。
【図3】シュムープロットの一例を示す図である。
【図4】同実施形態によるジッタ検出方法のフローチャートである。
【図5】変形例によるジッタ検出回路の概略構成図である。
【図6】変形例によるジッタ検出回路でのシュムープロット作成の説明図である。
【図7】変形例によるジッタ検出回路の概略構成図である。
【符号の説明】
【0044】
101 BISTパターン発生部
102、103 フリップフロップ
104、105 インバータ
106 BIST回路
107 制御部
108 遅延制御部
109 ミキサ制御部
110 ミキサ
111 マルチプレクサ
112 PLL回路
113 データパス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のテストパターン信号を出力するパターン発生部と、
変調制御信号に基づいて信号を生成し出力するミキサ制御部と、
クロック信号と前記ミキサ制御部の出力信号とを混合して変調クロック信号を生成し出力するミキサと、
遅延制御信号に基づく遅延ステップで前記クロック信号若しくは前記変調クロック信号を遅延させて出力する遅延制御部と、
遅延された前記クロック信号若しくは前記変調クロック信号に同期した前記テストパターン信号と期待値データとが一致するか否かを判定し、判定結果を出力する内蔵自己テスト回路と、
前記遅延制御信号を出力し、前記判定結果に基づいて前記テストパターン信号に含まれるノイズ成分を検出し、前記ノイズ成分と同じ周波数でかつ逆位相の信号を生成するように前記変調制御信号を出力する制御部と、
を備えるジッタ検出回路。
【請求項2】
所定のテストパターン信号を出力するパターン発生部と、
変調制御信号に基づいて信号を生成し出力するミキサ制御部と、
前記クロック信号と前記ミキサ制御部の出力信号とを混合して変調クロック信号を生成し出力するミキサと、
遅延制御信号に基づく遅延ステップで前記クロック信号若しくは前記変調クロック信号を遅延させて出力する遅延制御部と、
遅延された前記クロック信号若しくは前記変調クロック信号に同期した前記テストパターン信号と期待値データとが一致するか否かを判定し、判定結果を出力する内蔵自己テスト回路と、
前記遅延制御信号を出力し、前記判定結果をプロットしてシュムープロットを作成し、一致と不一致の境界線パターンに基づいて前記シュムープロットに含まれるノイズ成分を検出し、前記ノイズ成分と同じ周波数でかつ逆位相の信号を生成するように前記変調制御信号を出力する制御部と、
を備えるジッタ検出回路。
【請求項3】
前記クロック信号及び前記変調クロック信号が与えられ、前記制御部から出力される選択信号に基づいていずれか一方を出力するマルチプレクサをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のジッタ検出回路。
【請求項4】
所定のテストパターン信号を出力し、
クロック信号を所定ステップで遅延させた遅延クロック信号を生成し、
前記遅延クロック信号に同期した前記テストパターン信号と期待値データとが一致するか否かを判定し、
判定結果に基づいて前記テストパターン信号に含まれるノイズ成分を検出し、
前記ノイズ成分と同じ周波数で逆位相の信号を前記クロック信号に混合させて変調クロック信号を生成するジッタ検出方法。
【請求項5】
所定のテストパターン信号を出力し、
クロック信号を所定ステップで遅延させた遅延クロック信号を生成し、
前記遅延クロック信号に同期した前記テストパターン信号と期待値データとが一致するか否かを判定し、
判定結果をプロットしてシュムープロットを作成し、
前記シュムープロットにおける一致と不一致の境界線パターンに基づいて前記シュムープロットに含まれるノイズ成分を検出し、
前記ノイズ成分と同じ周波数で逆位相の信号を前記クロック信号に混合させて変調クロック信号を生成するジッタ検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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