説明

ジハロゲノアルカジエンの製造方法

【課題】 ポリアミド樹脂やポリウレタン樹脂のモノマー原料および医農薬原料の中間体として有用な、ジハロゲノアルカジエンの製造方法を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表されるアリルハライドと下記一般式(2)で表される環状オレフィンを、メタセシス反応触媒の存在下で開環クロスメタセシス反応を行うジハロゲノアルカジエンの製造方法。


(式中、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)


(式中、mは0〜3の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なジハロゲノアルカジエンの製造方法に関する。さらに詳しくはアリルハライドと環状オレフィンの開環クロスメタセシス反応からなるジハロゲノアルカジエンの製造方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、高耐熱および低吸水性のポリアミド樹脂が鉛フリーハンダ対応の材料として注目されている。一方、無黄変性、耐候性および柔軟性のポリウレタン樹脂が塗料や接着剤用途の材料として注目されている。いずれの樹脂も炭素数6以上で、しかも鎖状構造の脂肪族炭化水素を骨格に持つモノマー原料(末端にアミノ基またはヒドロキシル基等の官能基を持つ)が用いられている。
【0003】
ジハロゲノアルカジエンは炭素鎖の末端にアミノ基やヒドロキシル基に容易に転換可能なハロゲン基を持つことから、上記のポリアミドやポリウレタン樹脂のモノマー原料の中間体として期待されている。ジハロゲノアルカジエンの一つであるジハロゲノノナジエンの製造法は1,6−ヘプタジインを原料に、パラホルムアルデヒドによるホルミル化、還元、次いで塩素化による製造ルートが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この製造方法は入手が難しい1,6−ヘプタジインを用いること、この1,6−ヘプタジインは三重結合を2個有するため取り扱いが難しいこと、還元には取り扱いが難しい液体アンモニアを使う必要があること、さらには多段プロセスを経由しなければならない等の問題があった。
【0005】
【非特許文献1】P.Lennonら、J.Am.Chem.Soc.105、1233−1241(1983)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は入手の容易な原料を用い、しかも1段プロセスで製造できるジハロゲノアルカジエンの新規な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、新規なジハロゲノアルカジエンの製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、下記一般式(1)で表されるアリルハライドと下記一般式(2)で表される環状オレフィンを、メタセシス反応触媒の存在下で開環クロスメタセシス反応を行うことを特徴とするジハロゲノアルカジエンの製造方法である。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、mは0〜3の整数を表す。)
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明は、下記一般式(1)で表されるアリルハライドと下記一般式(2)で表される環状オレフィンを、メタセシス反応触媒の存在下で開環クロスメタセシス反応を行う下記一般式(3)で表されるジハロゲノアルカジエンの製造方法である。
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、mは0〜3の整数を表す。)
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、nは3〜6の整数を表す。)
本発明の製造方法で製造される上記一般式(3)で表されるジハロゲノアルカジエンとしては、例えば、ジハロゲノノナジエン、ジハロゲノデカジエン、ジハロゲノウンデカジエン、ジハロゲノドデカジエン等があげられる。ジハロゲノノナジエンとしては、例えば、1,9−ジクロロ−2,7−ノナジエン、1,9−ジブロモ−2,7−ノナジエン、1,9−ジヨード−2,7−ノナジエン、1−クロロ−9−ブロモ−2,7−ノナジエン、1−クロロ−9−ヨード−2,7−ノナジエン、1−ブロモ−9−ヨード−2,7−ノナジエン、等があげられ、ジハロゲノデカジエンとしては、例えば、1,10−ジクロロ−2,8−デカジエン、1,10−ジブロモ−2,8−デカジエン、1,10−ジヨード−2,8−デカジエン、1−クロロ−10−ブロモ−2,8−デカジエン、1−クロロ−10−ヨード−2,8−デカジエン、1−ブロモ−10−ヨード−2,8−デカジエン等があげられ、ジハロゲノウンデカジエンとしては、例えば、1,11−ジクロロ−2,9−ウンデカジエン、1,11−ジブロモ−2,9−ウンデカジエン、1,11−ジヨード−2,9−ウンデカジエン、1−クロロ−11−ブロモ−2,9−ウンデカジエン、1−クロロ−11−ヨード−2,9−ウンデカジエン、1−ブロモ−11−ヨード−2,9−ウンデカジエン等があげられ、ジハロゲノドデカジエンとしては、例えば、1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエン、1,12−ジブロモ−2,10−ドデカジエン、1,12−ジヨード−2,10−ドデカジエン、1−クロロ−12−ブロモ−2,10−ドデカジエン、1−クロロ−12−ヨード−2,10−ドデカジエン、1−ブロモ−12−ヨード−2,10−ドデカジエン等があげられる。これらのうち、安定性が高いこと等から、上記一般式(3)におけるXが両方とも塩素原子である1,9−ジクロロ−2,7−ノナジエン、1,10−ジクロロ−2,8−デカジエン、1,11−ジクロロ−2,9−ウンデカジエン、1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエン、上記一般式(3)におけるXが両方とも臭素原子である1,9−ジブロモ−2,7−ノナジエン、1,10−ジブロモ−2,8−デカジエン、1,11−ジブロモ−2,9−ウンデカジエン、1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエン、上記一般式(3)におけるXが両方ともヨウ素原子である1,9−ジヨード−2,7−ノナジエン、1,10−ジヨード−2,8−デカジエン、1,11−ジヨード−2,9−ウンデカジエン、1,12−ジヨード−2,10−ドデカジエンが好ましい。特に安定性が高いこと及び原料の入手が容易であること等から、上記一般式(3)におけるXが両方とも塩素原子である1,9−ジクロロ−2,7−ノナジエン、1,10−ジクロロ−2,8−デカジエン、1,11−ジクロロ−2,9−ウンデカジエン、1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエンがさらに好ましい。
【0019】
本発明の製造方法に用いられる上記一般式(1)で表されるアリルハライドは、プロピレンのハロゲン化により工業的に製造されているものであり、容易に入手が可能であり、例えば、アリルクロライド、アリルブロマイド、アリルアイオダイド等があげられる。また、上記一般式(2)で表される環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等があげられる。
【0020】
ここで、開環クロスメタセシス反応とは、環状オレフィンと非環状オレフィンを原料に用い、環状オレフィンの開環反応と非環状オレフィンとのクロスメタセシス反応が同時に起こることによりカップリング生成物を与える反応であり、例えば、「第5版 実験化学講座18 有機化合物の合成VI 金属を用いる有機合成」(日本化学会編・丸善株式会社)第311頁、第322頁に記載されている。
【0021】
本発明の開環クロスメタセシス反応の詳細な反応機構は十分にわかっていないが、アリルハライド同士のメタセシス反応により、1,4−ジハロゲノ−2−ブテンとエチレンが生成し、この1,4−ジハロゲノ−2−ブテンと環状オレフィンとのメタセシス反応により目的のジハロゲノアルカジエンが生成すること等が考えられる。この1,4−ジハロゲノ−2−ブテンとしては、例えば、1,4−ジクロロ−2−ブテン、1,4−ジブロモ−2−ブテン、1,4−ジヨード−2−ブテン、1−クロロ−4−ブロモ−2−ブテン、1−クロロ−4−ヨード−2−ブテン、1−ブロモ−4−ヨード−2−ブテン等があげられる。
【0022】
本発明の製造方法における開環クロスメタセシス反応には、通常、メタセシス反応触媒が用いられる。メタセシス反応触媒は周期表第4〜9族の遷移金属化合物であって、前記のアリルハライドと環状オレフィンとの開環クロスメタセシス反応が進行する触媒であればどのようなものでもよく、メタセシス反応触媒としては、例えば、(i)遷移金属化合物と助触媒として機能するアルキル化剤又はルイス酸との組み合わせによる触媒、(ii)遷移金属−カルベン錯体触媒、(iii)担体に遷移金属化合物を担持した固体触媒等があげられ、例えば、「第5版 実験化学講座18 有機化合物の合成VI 金属を用いる有機合成」(日本化学会編・丸善株式会社)第313頁〜第314頁や、「触媒講座 第8巻(工業触媒反応編2)工業触媒反応I」(触媒学会編・講談社サイエンティフィク)第70〜第71頁に記載されている触媒が使用できる。
【0023】
前記(i)の触媒における遷移金属化合物としては、高い触媒活性と安定性を保持するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、TiCl、TiBr等のチタン化合物類;VOCl、VOBr等のバナジウム化合物類;NbBr、NbCl、Nb(OEt)等のニオブ化合物類;TaBr、TaCl、Ta(OMe)、Ta(OBu)等のタンタル化合物類;MoBr、MoBr、MoBr、MoCl、MoCl、MoF、MoOCl、MoOF等のモリブデン化合物類;WBr、WCl、WBr、WCl、WCl、WCl、WF、WI、WOBr、WOCl、WOF、WCl(OCCl、W(CO)等のタングステン化合物類;CHReO、ReCl、ReCl(CO)等のレニウム化合物類、RuBr、RuCl、Ru(CO)12等のルテニウム化合物類;RhCl等のロジウム化合物類;IrCl等のイリジウム化合物類等があげられる。
【0024】
前記(i)の触媒における助触媒として機能するアルキル化剤又はルイス酸としては、高い触媒活性を発現できるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリへキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、ジ−n−ブチルアルミニウムモノクロリド、ジエチルアルミニウムモノヒドリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等の有機アルミニウム化合物類;テトラメチルスズ、ジエチルジメチルスズ、テトラエチルスズ、ジブチルジエチルスズ、テトラブチルスズ、テトラオクチルスズ、トリオクチルスズフロリド、トリオクチルスズクロリド、トリオクチルスズブロミド、トリオクチルスズアイオダイド、ジブチルスズジフロリド、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジブロミド、ジブチルスズジアイオダイド、ブチルスズトリフロリド、ブチルスズトリクロリド、ブチルスズトリブロミド等の有機スズ化合物類;メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム化合物類;メチルマグネシウムアイオダイド、エチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムブロミド、n−プロピルマグネシウムブロミド、t−ブチルマグネシウムクロリド、アリールマグネシウムクロリド等の有機マグネシウム化合物類;ジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物類;シクロペンチルナトリウム等の有機ナトリウム化合物類;トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、トリ−n−ブチルホウ素、トリフェニルホウ素、トリス(パーフルオロフェニル)ホウ素、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート等の有機ホウ素化合物類;トリフェニルアンチモン等の有機アンチモン化合物類等があげられる。
【0025】
さらに第3成分として、開環クロスメタセシス反応に影響を及ぼさない程度で、メタノール、エタノール等のアルコール、フェノール等を加えても良い。
【0026】
前記(ii)の遷移金属−カルベン錯体触媒としては、高い触媒活性を発現できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、W(N−2,6−Pr)(CHBu)(OBu、W(N−2,6−Pr)(CHBu)(OCMeCF、W(N−2,6−Pr)(CHBu)(OCMe(CF、W(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(OBu、W(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(OCMeCF、W(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(OCMe(CF等のタングステン−カルベン錯体類;Mo(N−2,6−Pr)(CHBu)(OBu、Mo(N−2,6−Pr)(CHBu)(OCMeCF、Mo(N−2,6−Pr)(CHBu)(OCMe(CF、Mo(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(OBu、Mo(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(OCMeCF、Mo(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(OCMe(CF、Mo(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(BIPHEN)、Mo(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(BINO)(THF)等のモリブデン−カルベン錯体類、Re(CBu)(CHBu)(O−2,6−Pr、Re(CBu)(CHBu)(O−2−Bu、Re(CBu)(CHBu)(OCMeCF、Re(CBu)(CHBu)(OCMe(CF、Re(CBu)(CHBu)(O−2,6−Me等のレニウム−カルベン錯体類;ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)(3−メチル−2−ブテンイリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2−オクタヒドロベンズイミダゾールイリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ビス(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)ピリジンルテニウムジクロリド、ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキシル−2−イミダゾリジンイリデン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(t−ブチルビニリデン)(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリド、ベンジリデン−ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムジクロリド、トリシクロヘキシルホスフィン(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムジクロリド、(3−メチル−2−ブテンイリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(3−メチル−2−ブテンイリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド等のルテニウム−カルベン錯体類等があげられる。
【0027】
ここで、上記式中、Prはイソプロピル基を、Buはtert−ブチル基を、Meはメチル基を、Phはフェニル基を、BIPHENは、5,5',6,6'−テトラメチル−3,3'−ジ−tert−ブチル−1,1'−ビフェニル−2,2'−ジオキシ基を、BINOは、1,1'−ジナフチル−2,2'−ジオキシ基を、THFはテトラヒドロフランを、それぞれ表す。
【0028】
前記(iii)の固体触媒における遷移金属化合物としては、安定性が高いものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、V、Nb、Ta、MoO、MoO、WO、Re、ReO、CHReO、RuO、Rh、Ir等の酸化物類;MoS、MoS、WS、Re等の硫化物類等があげられる。また、担体としては、特に限定されるものではないが、例えば、Al、SiO、TiO、MgO、ZrO、Ta、Nb、WO、SnO、SiO−Al等があげられる。
【0029】
これらのメタセシス反応触媒は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。これらのうち、触媒活性が高く且つ取り扱いの安全性に優れることから、遷移金属−カルベン錯体触媒を使用することが好ましく、さらに好ましくはルテニウム−カルベン錯体類が用いられる。
【0030】
メタセシス反応触媒の使用量は特に制限はなく、開環クロスメタセシス反応が効率的に行えることから、原料であるアリルハライド1モルに対して0.000001〜20.0モル%であり、好ましくは0.00001〜10.0モル%、より好ましくは0.0001〜2.0モル%ある。
【0031】
本発明の開環クロスメタセシス反応におけるアリルハライドと環状オレフィンの仕込み比率は、特に制限されないが、触媒活性が高くなることから、アリルハライド1モルに対して環状オレフィンの量は0.001〜400モル、好ましくは0.01〜200モル、より好ましくは0.05〜100モルである。
【0032】
ここで、上記一般式(1)で示されるアリルハライドと一般式(2)で示される環状オレフィンとの開環クロスメタセシス反応は、溶媒中又は無溶媒で行うことができる。そのような溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカヒドロナフタレン等の脂環族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、トリグライム等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。さらに、原料の一方である環状オレフィン、又はアリルハライドを溶媒に用いることも可能である。これらの溶媒は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0033】
開環クロスメタセシス反応における温度は特に制限はなく、例えば−50〜250℃、好ましくは−20〜150℃である。反応圧力は特に制限されないが、通常、絶対圧で0.01〜30kg/cmであり、好ましくは0.1〜3kg/cmである。また、反応時間は温度や原料の基質濃度に左右され、一概に決めることはできないが、通常、5分〜500時間である。反応中の雰囲気は、特に限定されないが、空気と水分を避けて行うことが望ましく、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で反応が行うことが好ましい。また、原料及び溶媒は十分に乾燥しておくことが好ましい。
【0034】
本発明の開環クロスメタセシス反応においては、反応方法に特に制限はなく、原料であるアリルハライド、環状オレフィン、触媒および必要であれば溶媒を一度に反応装置に仕込む回分式、原料であるアリルハライド、環状オレフィンおよび必要であれば溶媒等を連続的に供給すると共に未反応原料、及び反応液を連続的に抜出す固定床または懸濁床の連続式のいずれでも実施できる。また、反応状態は特に制限されず、液相または気相状態、さらに気液混合状態で行うことができる。
【0035】
反応終了後、公知の分離法、例えば、蒸留等の方法によりジハロゲノアルカジエンを回収することができる。また、原料であるアリルハライドや中間生成物である1,4−ジハロゲノ−2−ブテンは公知の分離法、例えば、蒸留等の方法により回収し、原料として再利用することが可能である。
【0036】
本発明のジハロゲノアルカジエンは、アミノ基やヒドロキシル基等に容易に転換可能な官能基を鎖状炭化水素の両末端に持つことから、ポリアミド樹脂やポリウレタン樹脂のモノマー原料および医農薬原料の中間体として、好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、ポリアミドやポリウレタン樹脂のモノマー原料および医農薬原料の中間体として有用なジハロゲノアルカジエンの効率的な製造方法を提供するものであり、工業的にも非常に有用である。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
以下に実施例に用いた測定方法を示す。
【0040】
<ガスクロマトグラフ分析>
反応液に内標としてテトラデカンを加え、ジーエルサイエンス製TC−1カラム(商品名)が備わったガスクロマトグラフ(島津製作所製GC−1700)に反応液0.4μlを注入し、分析を行った。
【0041】
H−核磁気共鳴吸収(以下、NMRと記す)測定>
核磁気共鳴装置(日本電子製、商品名JNMGX400)を用い、H−NMR測定を行った。
【0042】
<GC−MS測定>
ガスクロマトグラフ質量分析計(GC部;ヒューレット・パッカード製、商品名HP6890、MS部;日本電子製、商品名JMS−700)を用い、測定を行った。
【0043】
実施例1
(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムジクロリド(Aldrich製、商品名Hoveyda−Grubbs Catalyst 2nd Generation)6.8mg(10.9μmol)を50mlのシュレンク管に入れた。次いでシクロヘキセン18.0g(220mmol)を加え、さらに、アリルクロライド1.89g(24.7mmol)を加えた。シュレンク管をオイルバス中で80℃に加温し、12時間攪拌することにより開環クロスメタセシス反応を行った。反応終了後、シュレンク管を冷却し、反応液を得た。
【0044】
シリカゲル(和光純薬工業製、商品名ワコーゲル)が充填されたカラムクロマトグラフに反応液を入れ、ヘキサンとジクロロメタンの混合物(体積比2:1)300mlで展開し、反応液から触媒を除去した。得られた液を真空蒸留(40℃、4mmHgにより、無色透明液体を分離した。ガスクロマトグラフ分析から、生成物の純度は98%であった。
【0045】
得られた液体のH−NMR測定およびGC−MS測定を行った。
【0046】
H−NMR(CDCl溶媒)測定の結果、δ1.33〜1.46ppm(m)に炭素鎖中央の4個のメチレン基の内、中央2個のメチレン基に基づくピーク、δ2.01〜2.17ppm(m)に炭素鎖中央の4個のメチレン基の内、二重結合に隣接する2個のメチレン基に基づくピーク、δ4.03ppm(d)に塩素原子に隣接する炭素鎖末端の2個のメチレン基に基づくピーク、δ5.55〜5.82ppm(m)に二重結合部位の4個の水素原子に基づくピークが観察された。
【0047】
また、GC−MS測定の結果、m/e206と208に分子イオンピークが確認された。
【0048】
これらの結果から、この液体は1,10−ジクロロ−2,8−デカジエンと同定された。
【0049】
一方、反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、アリルクロライドの転化率は19.3%、1,10−ジクロロ−2,8−デカジエンの選択率は52.1%、1,4−ジクロロ−2−ブテンの選択率は46.3%であった。これらを表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例2〜4
表1に示すメタセシス反応触媒、アリルクロライドおよび反応条件を用いた以外は、実施例1と同様にして開環クロスメタセシス反応を行い、反応液を得た。
【0052】
反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、1,10−ジクロロ−2,8−デカジエンであると同定でき、アリルクロライドの転化率、1,10−ジクロロ−2,8−デカジエンの選択率、1,4−ジクロロ−2−ブテンの選択率は、それぞれ表1に示す通りであった。
【0053】
実施例5
アリルクロライドの代わりにアリルブロマイド2.98g(24.6mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして開環クロスメタセシス反応を行い、反応液を得た。
【0054】
シリカゲル(和光純薬工業製、商品名ワコーゲル)が充填されたカラムクロマトグラフに反応液を入れ、ヘキサンとジクロロメタンの混合物(体積比2:1)300mlで展開し、反応液から触媒を除去した。得られた液を真空蒸留(40℃、4mmHgにより、無色透明液体を分離した。
【0055】
得られた液体のH−NMR測定およびGC−MS測定を行った。
【0056】
H−NMR(CDCl溶媒)測定の結果、δ1.45〜1.55ppm(m)に炭素鎖中央の4個のメチレン基の内、中央2個のメチレン基に基づくピーク、δ2.05〜2.13ppm(m)に炭素鎖中央の4個のメチレン基の内、二重結合に隣接する2個のメチレン基に基づくピーク、δ3.95ppm(d)に臭素原子に隣接する炭素鎖末端の2個のメチレン基に基づくピーク、δ5.58〜5.71ppm(m)に二重結合部位の4個の水素原子に基づくピークが観察された。
【0057】
GC−MS測定の結果、主成分はm/e294と296に分子イオンピークが確認された。
【0058】
これらの結果から、この液体の主成分は1,10−ジブロモ−2,8−デカジエンと同定された。
【0059】
一方、反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、アリルブロマイドの転化率は18.4%、1,10−ジブロモ−2,8−デカジエンの選択率は53.5%、1,4−ジブロモ−2−ブテンの選択率は44.1%であった。
【0060】
実施例6
(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムジクロリド(Aldrich製、商品名Hoveyda−Grubbs Catalyst 2nd Generation)6.8mg(10.9μmol)とジクロロメタン20mlを50mlのシュレンク管に入れた。次いでシクロペンテン2.11g(31.0mmol)を加え、さらに、アリルクロライド1.84g(24.1mmol)を加えた。シュレンク管をオイルバス中で40℃に加温し、3時間攪拌することにより開環クロスメタセシス反応を行った。反応終了後、シュレンク管を冷却し、反応液を得た。
【0061】
シリカゲル(和光純薬工業製、商品名ワコーゲル)が充填されたカラムクロマトグラフに反応液を入れ、ヘキサンとジクロロメタンの混合物(体積比2:1)300mlで展開し、反応液から触媒を除去した。得られた液を真空蒸留(40℃、4mmHgにより、無色透明液体を分離した。
【0062】
得られた液体のH−NMRおよびGC-MS測定を行った。
【0063】
H−NMR(CDCl溶媒)測定の結果、δ1.46〜1.55ppm(m)に炭素鎖中央の3個のメチレン基の内、中央1個のメチレン基に基づくピーク、δ2.00〜2.10ppm(m)に炭素鎖中央の3個のメチレン基の内、二重結合に隣接する2個のメチレン基に基づくピーク、δ4.06ppm(d)に塩素原子に隣接する炭素差末端の2個のメチレン基に基づくピーク、δ5.60〜5.75ppm(m)に二重結合部位の4個の水素原子に基づくピークが観察された。
【0064】
GC−MS測定の結果、主成分はm/e192と194に分子イオンピークが確認された。
【0065】
これらの結果から、この液体は1,9−ジクロロ−2,7−ノナジエンと同定された。
【0066】
一方、反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、アリルクロライドの転化率は38.3%、1,9−ジクロロ−2,7−ノナジエンの選択率は62.1%、1,4−ジクロロ−2−ブテンの選択率は35.3%であった。
【0067】
実施例7
アリルクロライドの代わりにアリルブロマイド2.90g(24.0mmol)を用いた以外は、実施例6と同様にして開環クロスメタセシス反応を行い、反応液を得た。
【0068】
シリカゲル(和光純薬工業製、商品名ワコーゲル)が充填されたカラムクロマトグラフに反応液を入れ、ヘキサンとジクロロメタンの混合物(体積比2:1)300mlで展開し、反応液から触媒を除去した。得られた液を真空蒸留(40℃、4mmHgにより、無色透明液体を分離した。
【0069】
得られた液体のH−NMRおよびGC-MS測定を行った。
【0070】
H−NMR(CDCl溶媒)測定の結果、δ1.5.0〜1.60ppm(m)に炭素鎖中央の3個のメチレン基の内、中央1個のメチレン基に基づくピーク、δ2.02〜2.13ppm(m)に炭素鎖中央の3個のメチレン基の内、二重結合に隣接する2個のメチレン基に基づくピーク、δ3.95ppm(d)に臭素原子に隣接する炭素鎖末端の2個のメチレン基に基づくピーク、δ5.64〜5.88ppm(m)に二重結合部位の4個の水素原子に基づくピークが観察された。
【0071】
GC−MS測定の結果、主成分はm/e280と282に分子イオンピークが確認された。
【0072】
これらの結果から、この液体の主成分は1,9−ジブロモ−2,7−ノナジエンと同定された。
【0073】
一方、反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、アリルブロマイドの転化率は41.9%、1,9−ジブロモ−2,7−ノナジエンの選択率は66.2%、1,4−ジブロモ−2−ブテンの選択率は31.8%であった。
【0074】
実施例8
(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムジクロリド(Aldrich製、商品名Hoveyda−Grubbs Catalyst 2nd Generation)6.8mg(10.9μmol)とジクロロメタン20mlを50mlのシュレンク管に入れた。次いでシクロヘプテン2.10g(22.0mmol)を加え、さらに、アリルクロライド1.58g(20.7mmol)を加えた。シュレンク管をオイルバス中で80℃に加温し、3時間攪拌することにより開環クロスメタセシス反応を行った。反応終了後、シュレンク管を冷却し、反応液を得た。
【0075】
シリカゲル(和光純薬工業製、商品名ワコーゲル)が充填されたカラムクロマトグラフに反応液を入れ、ヘキサンとジクロロメタンの混合物(体積比2:1)300mlで展開し、反応液から触媒を除去した。得られた液を真空蒸留(40℃、4mmHgにより、無色透明液体を分離した。
【0076】
得られた液体のH−NMR測定およびGC−MS測定を行った。
【0077】
H−NMR(CDCl溶媒)測定の結果、δ1.12〜1.23ppm(m)に炭素鎖中央の5個のメチレン基の内、中央1個のメチレン基に基づくピーク、δ1.36〜1.46ppm(m)に炭素鎖中央の5個のメチレン基の内、中央から2番目の2個のメチレン基に基づくピーク、δ2.00〜2.08ppm(m)に炭素鎖中央の5個のメチレン基の内、二重結合に隣接する2個のメチレン基に基づくピーク、δ4.03ppm(d)に塩素原子に隣接する炭素鎖末端の2個のメチレン基に基づくピーク、δ5.65〜5.77ppm(m)に二重結合部位の4個の水素原子に基づくピークが観察された。
【0078】
GC−MS測定の結果、主成分はm/e220と222に分子イオンピークが確認された。
【0079】
これらの結果から、この液体は1,11−ジクロロ−2,9−ウンデカジエンと同定された。
【0080】
一方、反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、アリルクロライドの転化率は42.4%、1,11−ジクロロ−2,9−ウンデカジエンの選択率は61.5%、1,4−ジクロロ−2−ブテンの選択率は34.7%であった。
【0081】
実施例9
アリルクロライドの代わりにアリルブロマイド2.49g(20.6mmol)を用いた以外は、実施例8と同様にして開環クロスメタセシス反応を行い、反応液を得た。
【0082】
シリカゲル(和光純薬工業製、商品名ワコーゲル)が充填されたカラムクロマトグラフに反応液を入れ、ヘキサンとジクロロメタンの混合物(体積比2:1)300mlで展開し、反応液から触媒を除去した。得られた液を真空蒸留(40℃、4mmHgにより、無色透明液体を分離した。
【0083】
得られた液体のH−NMR測定およびGC−MS測定を行った。
【0084】
H−NMR(CDCl溶媒)測定の結果、δ1.15〜1.25ppm(m)に炭素鎖中央の5個のメチレン基の内、中央1個のメチレン基に基づくピーク、δ1.40〜1.50ppm(m)に炭素鎖中央の5個のメチレン基の内、中央から2番目の2個のメチレン基に基づくピーク、δ1.97〜2.05ppm(m)に炭素鎖中央の5個のメチレン基の内、二重結合に隣接する2個のメチレン基に基づくピーク、δ3.94ppm(d)に臭素原子に隣接する炭素鎖末端の2個のメチレン基に基づくピーク、δ5.63〜5.76ppm(m)に二重結合部位の4個の水素原子に基づくピークが観察された。
【0085】
GC−MS測定の結果、主成分はm/e308と310に分子イオンピークが確認された。
【0086】
これらの結果から、この液体の主成分は1,11−ジブロモ−2,9−ウンデカジエンと同定された。
【0087】
一方、反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、アリルブロマイドの転化率は41.5%、1,11−ジブロモ−2,9−ウンデカジエンの選択率は63.2%、1,4−ジブロモ−2−ブテンの選択率は32.5%であった。
【0088】
実施例10
(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムジクロリド(Aldrich製、商品名Hoveyda−Grubbs Catalyst 2nd Generation)6.8mg(10.9μmol)とジクロロメタン20mlを50mlのシュレンク管に入れた。次いでシクロオクテン2.93g(26.7mmol)を加え、さらに、アリルクロライド1.48g(19.3mmol)を加えた。シュレン管をオイルバス中で80℃に加温し、3時間攪拌することにより開環クロスメタセシス反応を行った。反応終了後、シュレンク管を冷却し、反応液を得た。
【0089】
シリカゲル(和光純薬工業製、商品名ワコーゲル)が充填されたカラムクロマトグラフに反応液を入れ、ヘキサンとジクロロメタンの混合物(体積比2:1)300mlで展開し、反応液から触媒を除去した。得られた液を真空蒸留(40℃、4mmHgにより、無色透明液体を分離した。
【0090】
得られた液体のH−NMR測定およびGC−MS測定を行った。
【0091】
H−NMR(CDCl溶媒)測定の結果、δ1.25〜1.37ppm(m)に炭素鎖中央の6個のメチレン基の内、中央4個のメチレン基に基づくピーク、δ2.05〜2.13ppm(m)に炭素鎖中央の6個のメチレン基の内、二重結合に隣接する2個のメチレン基に基づくピーク、δ4.05ppm(d)に塩素原子に隣接する炭素鎖末端の2個のメチレン基に基づくピーク、δ5.65〜5.78ppm(m)に二重結合部位の4個の水素原子に基づくピークが観察された。
【0092】
反応液のGC−MS測定の結果、主成分はm/e234と236に分子イオンピークが確認された。
【0093】
これらの結果から、この液体は1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエンと同定された。
【0094】
一方、反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、アリルクロライドの転化率は49.6%、1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエンの選択率は51.2%、1,4−ジクロロ−2−ブテンの選択率は45.4%であった。
【0095】
実施例11
アリルクロライドの代わりにアリルブロマイド2.35g(19.4mmol)を用いた以外は、実施例10と同様にして開環クロスメタセシス反応を行い、反応液を得た。
【0096】
シリカゲル(和光純薬工業製、商品名ワコーゲル)が充填されたカラムクロマトグラフに反応液を入れ、ヘキサンとジクロロメタンの混合物(体積比2:1)300mlで展開し、反応液から触媒を除去した。得られた液を真空蒸留(40℃、4mmHgにより、無色透明液体を分離した。
【0097】
得られた液体のH−NMR測定およびGC−MS測定を行った。
【0098】
H−NMR(CDCl溶媒)測定の結果、δ1.27〜1.40ppm(m)に炭素鎖中央の6個のメチレン基の内、中央4個のメチレン基に基づくピーク、δ2.05〜2.13ppm(m)に炭素鎖中央の6個のメチレン基の内、二重結合に隣接する2個のメチレン基に基づくピーク、δ3.90〜3.99ppm(m)に臭素原子に隣接する炭素鎖末端の2個のメチレン基に基づくピーク、δ5.65〜5.77ppm(m)に二重結合部位の4個の水素原子に基づくピークが観察された。
【0099】
GC−MS測定の結果、主成分はm/e322と324に分子イオンピークが確認された。
【0100】
これらの結果から、この液体の主成分は1,12−ジブロモ−2,10−ドデカジエンと同定された。
【0101】
一方、反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、アリルブロマイドの転化率は50.2%、1,12−ジブロモ−2,10−ドデカジエンの選択率は53.3%、1,4−ジブロモ−2−ブテンの選択率は42.7%であった。
【0102】
比較例1
シクロヘキセンを用いなかった以外は、実施例1と同様にして開環クロスメタセシス反応を行い、反応液を得た。
【0103】
反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、1,10−ジクロロ−2,8−デカジエンは得られなかった。その結果を表1に示す。
【0104】
比較例2
シクロペンテンを用いなかった以外は、実施例6と同様にして開環クロスメタセシス反応を行い、反応液を得た。
【0105】
反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、1,9−ジクロロ−2,7−ノナジエンは得られなかった。
【0106】
比較例3
シクロヘプテンを用いなかった以外は、実施例8と同様にして開環クロスメタセシス反応を行い、反応液を得た。
【0107】
反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、1,11−ジクロロ−2,9−ウンデカジエンは得られなかった。
【0108】
比較例4
シクロオクテンを用いなかった以外は、実施例10と同様にして開環クロスメタセシス反応を行い、反応液を得た。
【0109】
反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエンは得られなかった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアリルハライドと下記一般式(2)で表される環状オレフィンを、メタセシス反応触媒の存在下で開環クロスメタセシス反応を行うことを特徴とする下記一般式(3)で表されるジハロゲノアルカジエンの製造方法。
【化1】

(式中、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
【化2】

(式中、mは0〜3の整数を表す。)
【化3】

(式中、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、nは3〜6の整数を表す。)
【請求項2】
一般式(3)におけるXが両方とも塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることを特徴とする請求項1に記載のジハロゲノアルカジエンの製造方法。
【請求項3】
メタセシス反応触媒が遷移金属−カルベン錯体触媒であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のジハロゲノアルカジエンの製造方法。
【請求項4】
遷移金属−カルベン錯体触媒がルテニウム−カルベン錯体類であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のジハロゲノアルカジエンの製造方法。

【公開番号】特開2008−50304(P2008−50304A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228363(P2006−228363)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】