ジヒドロキシアセトンのポリマー組成物およびその使用
本開示は、切除手術および再建手術後の共通の術後合併症である漿液腫を効率的に予防する、注射可能な、合成の生体分解性高分子生体適合材料を提供する。提供される生体適合材料は物理的に架橋されたヒドロゲルを含有し、これは、チキソトロピー性であり、迅速な鎖緩和を示し、狭ゲージ針から容易に押し出し成型することができ、分解して不活性な生成物となり、柔組織により十分に寛容化され、そして定型的乳房切除術の動物モデルにおいて漿液腫を効率的に予防する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、米国特許法§119(e)の下、2008年11月3日に出願された米国仮出願U.S.S.N.第61/110,734号(この全体の内容は、参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
政府の支援
本発明は、National Science Foundationによって付与された助成金CBET−0642509の下、米国政府の支援によってなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
漿液腫は術後の漿液の蓄積であり、今日の外科手術において最も一般的な合併症の1つである。漿液腫が臨床的問題となる場合には、従来型の創傷管理技術が一般的に適用される。漿液腫用のカテーテルまたはさらなるドレインの埋め込み、ならびに漿液腫のドレナージの繰り返しまたは連続的なドレナージが必要であり得る。そのような合併症は、患者に対して相当量の所得の喪失が生じ、さらには連続的なドレナージが必要なこれらの患者の援助や介護を行う必要のある保険会社および医師に、経費的負担が生じる。そのような合併症はまた創傷の治癒を遅らせ、これにはさらなる外科的処置が伴う場合があり、最終的には、仕事および日常的な機能的活動への患者の復帰を遅らせる。漿液腫の管理にはまたコストがかかり、さらに、医療従事者をさらなる注射針に曝すリスクと関連する結果も生じる可能性がある。
【0004】
漿液腫の形成を減少させるためのいくつかのアプローチが研究されている。手術技法(例えば、縫合糸で漿液腫の空洞を崩壊させること)によって、漿液腫の形成を確実に、そして適切に排除することはできない(Chilson,前出;非特許文献1;非特許文献2)。他の方法(例えば、硬化療法(Tekin,E.,Kocdor,M.A.,Saydam,S.,Bora,S.,Harmancioglu,O.(2001)「Seroma prevention by using Corynebacterium parvum in a rat mastectomy model.」Eur Surg Res 33,245−248;Rice,D.C.,ら(2000)「Intraoperative topical tetracycline sclerotherapy following mastectomy:A prospective,randomized trial.」J Surg Oncol 73,224−227)、圧迫包帯(O’hea,B.J.,Ho,M.N.,Petrek,J.A.(1999)「External compression dressing versus standard dressing after axillary lymphadenectomy.」Am J Surg 177,450−453)、および生物学的接着剤(biological adhesive)、特に、フィブリン糊(Lindsey,W.H.,Masterson,T.M.,Spotnitz,W.D.,Wilhelm,M.C.,Morgan,R.F.(1990)「Seroma prevention using fibrin glue in a rat mastectomy model.」Arch Surg 125,305−307;Harada,R.N.,Pressler,V.M.,McNamara,J.J.(1992)「Fibrin glue reduces seroma formation in the rat after mastectomy.」Surg Gynecol Obstet 175,450−454;Wang,J.Y.,ら(1996)「Seroma prevention in a rat mastectomy model:Use of a light−activated fibrin sealant.」Ann Plast Surg 37,400−405;Sanders,R.P.,ら(1996)「Effect of fibrinogen and thrombin concentrations on mastectomy seroma prevention.」J Surg Res 61,65−70;Carless,P.A.,Henry,D.A.(2006)「Systematic review and meta−analysis of the use of fibrin sealant to prevent seroma formation after breast cancer surgery.」Brit J Surg 93,810−819))は、漿液腫の形成の臨床所見を有意に低下させることはできない。漿液腫を扱う医師が利用できる有効な方法が現在は存在しないことが、漿液腫の予防または処置のための新規の方法の必要性を強調する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Odwyer,P.J.,O’Higgins,N.J.,James,A.G.;「Effect of closing dead space on incidence of seroma after mastectomy.」Surg Gynecol Obstet(1991)172,55〜56
【非特許文献2】Covency,E.C.,O’Dwyer,P.J.,Geraghty,J.G.,O’Higgins,N.J.「Effect of closing dead space on seroma formation after mastectomy − a prospective randomized clinical trial.」Eur J Sur Oncol(1993)19,143−146
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本開示は、ポリジヒドロキシアセトン(pDHA)の組成物、およびそれを使用する方法を提供する。いくつかの実施形態においては、提供される組成物は、pDHAのコポリマーである。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、漿液腫の処置および/または予防に有用である。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、手術後の組織の癒着の処置および/または予防に有用である。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、止血を達成するために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、凍結乾燥されたMPEG−pDHAゲルの走査電子顕微鏡写真(SEM)を示す。(a)5000−3000、(b)5000−5000、(c)5000−7000。pDHA鎖の長さが長ければ長いほど、ヒドロゲルの空隙率が低下する。
【図2】図2は、MPEG−pDHAについての特性評価データを示す。(a)粘性の読み取り値は、MPEG−pDHAヒドロゲルのチキソトロピー性を示す(1%の歪み、28oC)。(b)26G針から押し出し成形したMPEG−pDHA 5000−5000の一例。(c)MPEG−pDHAゲル上での周波数掃引実験により得たG’およびG’’の読み取り値(1%の歪み、28℃)。
【図3】図3は、MPEG−pDHAについてのさらなる特性評価データを示す。(a)水中でのMPEG−pDHAヒドロゲルの重量損失の速度論は、1日以内での100%の分解を示す。(b)D2O中の加水分解されたMPEG−pDHA生成物の1H NMRは、最終生成物がMPEGおよび単量体DHAであることを示す。
【図4】図4は、ラットの乳腺切除モデルによる漿液腫の容積を示す。未処置の対照は、2.28±0.55mLの漿液腫の平均容積(n=6)を示した。MPEG−pDHA 5000−3000で処置したラットは、0.044±0.017mLの漿液腫の平均容積(n=9、p<0.01)を示した。MPEG−pDHA 5000−5000で処置したラットは、2.53±0.70の漿液腫の平均容積(n=8)を示した。MPEG−pDHA 5000−7000で処置したラットは、1.93±0.60(n=8)の漿液腫の平均容積を有していた。加水分解とリジン処理の両方を行ったMPEG−pDHAでの処置は、未処置の対照と比較して漿液腫の容積において統計的に有意な低下を生じなかった(それぞれ、2.6±1.16、n=6、および1.41±0.63、n=6)。
【図5】図5は、7日目での手術部位の光学顕微鏡による外観を示す:(a)対照、(b)MPEG−pDHA 5000−3000、(c)MPEG−pDHA 5000−5000、および(d)MPEG−pDHA 5000−7000。切片は、手術部位に隣接する初期の肉芽組織を示す。全ての画像の最下部には透明な空間がある。H&E染色、100倍の倍率。
【図6】図6は、ポリ(MPEG−b−2−オキシプロピレンカーボネート)、MPEG−pDHA(VII)の合成経路を示す。(a)オルトギ酸トリメチル/p−トルエンスルホン酸、(b)クロロギ酸エチル/トリエチルアミン、(c)オクタン酸第一スズ/100℃、(d)トリフルオロ酢酸/H2O。命名:(I)DHA;(II)DHA二量体;(III)2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジオール;(IV)2,2−ジメトキシ−1,3−プロピレンカーボネート;(V)モノメトキシ−PEG(MPEG);(VI)ポリ(MPEG−b−2,2−ジメトキシ−1,3−プロピレンカーボネート);(VII)ポリ(MPEG−b−2−オキシプロピレンカーボネート)(pDHA)(Zawaneh,下記を参照)。Biomacromolecules 2006,7,3245−3251 Copyright 2006 American Chemical Societyによる認可を受けて複写した。
【図7】図7は、1%の歪みのMPEG−pDHAヒドロゲル上での周波数掃引実験を示す。(a)28℃、(b)37℃。これらの物質は、剪断速度が増大するに伴い粘性が低下する傾向(チキソトロピー性)を示す。温度の上昇は、ヒドロゲルの粘性に影響はない。
【図8】図8は、28℃および1%の歪みでの、MPEG−pDHAヒドロゲル上での周波数掃引実験を示す。(a)5000−3000、(b)5000−5000、(c)5000−7000。G’値は、周波数範囲全体にわたりG’’値より大きく、これは弾性ヒドロゲルに典型的な特徴である。G’値およびG’’値は、ゲルの絡み合い密度(entanglement density)を計算するために使用される。
【図9】図9は、37℃および1%の歪みでの、MPEG−pDHAゲル上での周波数掃引実験を示す。(a)5000−3000、(b)5000−5000、(c)5000−7000。G’値は、周波数範囲全体にわたりG’’値より大きく、これは弾性ヒドロゲルに典型的な特徴である。G’値およびG’’値は、ゲルの絡み合い密度を計算するために使用される。
【図10】図10は、1%の歪みのMPEG−pDHAゲル上での緩和弾性率G(t)の結果を示す。(a)28℃、(b)37℃。これらの結果は、ゲルの緩和速度論を計算するために使用される。
【図11】図11は、D2O*中の(a)MPEGおよび(b)DHAの1H NMRを示す。これらのスペクトルおよび図3bは、pDHAヒドロゲルの分解生成物がMPEGと単量体DHAであることを示す。
【図12】図12は、手術の24時間後の残留MPEG−pDHAを示している摘出腔の写真を示す。
【図13】図13は、手術の72時間後にMPEG−pDHAが存在しないことを示している摘出腔の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(定義)
本発明の化合物は、上記に一般的に記載されたもの、および本明細書中に開示されるクラス、サブクラス、および種によりさらに説明されるものを含む。本明細書中で使用される場合は、特に明記されない限り、以下の定義が適用されるものとする。本発明の目的のために、化学元素が、元素周期表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics,第75版に従って定義される。さらに、有機化学の一般的原理は、Organic Chemistry,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999、およびMarch’s Advanced Organic Chemistry,第5版:Smith,M.B.and March,J.編,John Wiley & Sons,New York:2001(これらの内容全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。
【0009】
用語「アシル」は、単独で、またはより大きな部分の一部として使用され、カルボン酸からヒドロキシ基を除去することにより形成される基をいう。このようなアシル基には、−C(=O)脂肪族、−C(=O)アリール、−C(=O)ヘテロ脂肪族、または−C(=O)ヘテロアリール基が含まれる。例示的なアシル基としては、−C(=O)Me、−C(=O)Et、−C(=O)i−Pr、および−C(=O)CH2Fが挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
用語「脂肪族」または「脂肪族基」は、本明細書中で使用される場合は、完全飽和であるかまたは1つまたは複数の不飽和の単位を含む直鎖(すなわち、非分枝)または分枝状の、置換または非置換の炭化水素鎖、あるいは、完全飽和であるかまたは1つまたは複数の不飽和の単位を含む単環式炭化水素または二環式炭化水素を意味するが、これらは芳香族ではなく、分子の残りの部分に対する連結点を1つ有する。特に明記されない限りは、脂肪族基は、1個〜6個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態においては、脂肪族基は1個〜5個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態においては、脂肪族基は1個〜4個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態においては、脂肪族基は1個〜3個の脂肪族炭素原子を含み、いくつかの実施形態においては、脂肪族基は1個〜2個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態においては、「脂環式」(または「炭素環」もしくは「シクロアルキル」)は、完全飽和であるかまたは1つまたは複数の不飽和の単位を含むが、芳香族ではなく、分子の残りの部分に対する連結点を1つ有する単環C3〜C6炭化水素をいう。適切な脂肪族基としては、直鎖または分枝状の、置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基、ならびにそれらのハイブリッド(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
用語「ヘテロ脂肪族」は、本明細書中で使用される場合は、1つまたは複数の炭素原子が、独立して、酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素からなる群より選択される1つまたは複数の原子で置換されている脂肪族基を意味する。特定の実施形態においては、1個〜6個の炭素原子が、1つまたは複数の酸素、硫黄、窒素、またはリンによって独立して置換されている。ヘテロ脂肪族基は、置換または非置換、分岐状または非分岐状、環状または非環状であり得、これには、飽和、不飽和、または部分不飽和である基が含まれる。
【0012】
用語「不飽和」は、本明細書中で使用される場合は、1つの部分が1つまたは複数の不飽和単位を有することを意味する。
【0013】
用語「アルキレン」は2価のアルキル基をいう。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、すなわち、−(CH2)n−であり、式中、nは、正の整数、好ましくは、1〜6、1〜4、1〜3、1〜2、または2〜3である。置換されたアルキレン鎖は、1つまたは複数のメチレン水素原子が置換基で置換されているポリメチレン基である。適切な置換基としては、置換された脂肪族基について以下に記載される置換基が挙げられる。
【0014】
用語「アリール」は、単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」または「アリールオキシアルキル」などの、より大きな部分の一部として使用され、全部で5個〜14個の環メンバーを有している単環式および二環式環系をいい、ここでは、上記系の中の少なくとも1つの環は芳香族であり、上記系の中の各環は3個〜7個の環メンバーを含む。用語「アリール」は、用語「アリール環」と互換的に使用され得る。
【0015】
用語「アリール」は、単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」または「アリールオキシアルキル」などの、より大きな部分の一部として使用され、全部で5個〜10個の環メンバーを有している単環および二環式環系をいい、ここでは、上記系の中の少なくとも1つの環は芳香族であり、上記系の中の各環は、3個〜7個の環メンバーを含む。用語「アリール」は、用語「アリール環」と互換的に使用され得る。本発明の特定の実施形態においては、「アリール」は、1つまたは複数の置換基を有し得る芳香族環系をいい、これには、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシルなどが含まれるが、これらに限定されない。用語「アリール」の範囲には、これが本明細書で使用される場合は、インダニル、フタルイミジル、ナフトイミジル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロナフチルなどのように、芳香環が、1つまたは複数の非芳香環に縮合されている基も含まれる。
【0016】
用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアル−(heteroar−)」は、単独で、またはより大きな部分の一部として、例えば、「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアラルコキシ」として使用され、5個〜10個の環原子、好ましくは5個、6個、または9個の環原子を有しており、6個、10個、または14個の環状の配置の中で共有されるπ電子を有しており、炭素原子に加えて1個〜5個のへテロ原子を有している基をいう。用語「へテロ原子」は、窒素、酸素、または硫黄をいい、窒素または硫黄の任意の酸化された形態、および塩基性窒素の任意の四級化された形態を含む。ヘテロアリール基としては、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、およびプテリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアル−」は、本明細書中で使用される場合は、ヘテロ芳香族環には、1つまたは複数のアリール、脂環式、またはヘテロシクリル環に縮合されている(そのラジカルまたは連結点はヘテロ芳香族環上にある)基もまた含まれる。限定ではない例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H−キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[2,3−b]−1,4−オキサジン−3(4H)−オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環または二環であり得る。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」、または「ヘテロ芳香族」と互換的に使用され得、これらの用語のいずれにも、必要に応じて置換された環が含まれる。用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリールで置換されたアルキル基をいい、ここでは、上記アルキル部分およびヘテロアリール部分は、独立して、必要に応じて置換されている。
【0017】
本明細書中で使用される場合は、用語「ヘテロ環(heterocycle)」、「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」、「複素環ラジカル(heterocyclic radical)」、および「複素環(heterocyclic ring)」は、互換的に使用され、飽和または部分不飽和のいずれかであり、炭素原子に加えて上記で定義されたような1つまたは複数、好ましくは1個〜4個のへテロ原子を有している安定な5員〜7員の単環または7員〜10員の二環の複素環部分をいう。ヘテロ環の環原子を言及するために使用される場合は、用語「窒素」には、置換された窒素が含まれる。一例として、酸素、硫黄、または窒素より選択される0個〜3個のへテロ原子を有している飽和環または部分不飽和環において、窒素は、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルなど)、NH(ピロリジニルなど)、または+NR(N−置換ピロリジニルなど)であり得る。
【0018】
複素環は、そのペンダント基に、安定な構造をもたらす任意のへテロ原子または炭素原子の位置で連結することができ、いずれの環原子も、必要に応じて置換することができる。このような飽和複素環ラジカルまたは部分不飽和の複素環ラジカルの例としては、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニルピロリジニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル、およびキヌクリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環基」、「複素環部分」および「複素環ラジカル」は、本明細書中では互換的に使用され、インドリニル、3H−インドリル、クロマニル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロキノリニルのように、ヘテロシクリル環に、1つまたは複数のアリール環、ヘテロアリール環または脂環式環に縮合されている(ラジカルまたは連結点はヘテロシクリル環上にある)基も含まれる。ヘテロシクリル基は、単環または二環であり得る。用語「ヘテロシクリルアルキル」は、ヘテロシクリルで置換されたアルキル基をいい、ここでは、アルキル部分およびヘテロシクリル部分は、必要に応じて独立して置換されている。
【0019】
本明細書中で使用される場合は、用語「部分不飽和」は、少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む環部分をいう。用語「部分不飽和」は、複数の不飽和部位を有している環を含むように意図されるが、本明細書中で定義される場合には、アリール部分またはヘテロアリール部分を含むようには意図されない。
【0020】
本明細中で記載される場合は、本発明の化合物は、「必要に応じて置換された」部分を含むことができる。一般的に、用語「置換された」は、用語「必要に応じて」が前にあるかどうかにかかわらず、指定された部分の1つまたは複数の水素が、適切な置換基で置換されていることを意味する。特に明記されない限りは、「必要に応じて置換された」基、は、その基のそれぞれ置換可能な位置に適切な置換基を有することができ、任意の与えられた構造の中の2つ以上の位置が、特定された基から選択される2つ以上の置換基で置換され得る場合は、その置換基は、それぞれの位置ごとに同じであってもまたは異なってもよい。本発明で想定される置換基の組合せは、好ましくは、安定な、または化学的に実行可能な化合物の形成をもたらす組合せである。用語「安定」は、本明細書中で使用される場合は、それらの生成、検出、および、いくつかの実施形態においては、それらの回収、精製、および本明細書に開示される1つまたは複数の目的のための使用を可能にする条件にさらした場合に、実質的に変化しない化合物をいう。
【0021】
「必要に応じて置換された」基の置換可能な炭素原子上の適切な一価の置換基は、独立して、ハロゲン;−(CH2)0〜4R○;−(CH2)0〜4OR○;−O−(CH2)0〜4C(O)OR○;−(CH2)0〜4CH(OR○)2;−(CH2)0〜4SR○;R○で置換することができる−(CH2)0〜4Ph;R○で置換することができる−(CH2)0〜4O(CH2)0〜1Ph;R○で置換することができる−CH=CHPh;−NO2;−CN;−N3;−(CH2)0〜4N(R○)2:−(CH2)0〜4N(R○)C(O)R○;−N(R○)C(S)R○;−(CH2)0〜4N(R○)C(O)NR○2;−N(R○)C(S)NR○2;−(CH2)0〜4N(R○)C(O)OR○;−N(R○)N(R○)C(O)R○;−N(R○)N(R○)C(O)NR○2;−N(R○)N(R○)C(O)OR○;−(CH2)0〜4C(O)R○;−C(S)R○;−(CH2)0〜4C(O)OR○;−(CH2)0〜4C(O)N(R○)2;−(CH2)0〜4C(O)SR○;−(CH2)0〜4C(O)OSiR○3;−(CH2)0〜4OC(O)R○;−OC(O)(CH2)0〜4SR−;SC(S)SR○;−(CH2)0〜4SC(O)R○;−(CH2)0〜4C(O)NR○2;−C(S)NR○2;−C(S)SR○;−SC(S)SR○;−(CH2)0〜4OC(O)NR○2;−C(O)N(OR○)R○;−C(O)C(O)R○;−C(O)CH2C(O)R○;−C(NOR○)R○;−(CH2)0〜4SSR○;−(CH2)0〜4S(O)2R○;−(CH2)0〜4S(O)2OR○;−(CH2)0〜4OS(O)2R○;−S(O)2NR○2;−(CH2)0〜4S(O)R○;−N(R○)S(O)2R○2;−N(R○)S(O)2R○;−N(OR○)R○;−C(NH)NR○2;−P(O)2R○;−P(O)R○2;−OP(O)R○2;−OP(O)(OR○)2;SiR○3;−(C1〜4直鎖または分枝状アルキレン)O−N(R○)2;または−(C1〜4直鎖または分枝状アルキレン)C(O)O−N(R○)2であり、式中、R○は、それぞれ、以下で定義されるように置換することができ、独立して、水素、C1〜8脂肪族、−CH2Ph、−O(CH2)0〜1Ph、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜4個のヘテロ原子を有している5員〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環であり、あるいは上記定義にかかわらず、独立して出現する2つのR○は、それらの間にある原子(単数または複数)と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0個〜4個のへテロ原子を有している、3員〜12員の飽和、部分不飽和、またはアリールの単環式または多環式環を形成し、これらは以下で定義されるように置換され得る。
【0022】
R○(または、独立して出現する2つのR○をそれらの間にある原子と一緒にして形成される環)上の適切な一価の置換基は、独立して、ハロゲン、−(CH2)0〜2R●;−(ハロR●);−(CH2)0〜2OH;−(CH2)0〜2OR●;−(CH2)0〜2CH(OR●)2;−O(ハロR●);−CN;−N3;−(CH2)0〜2C(O)R●;−(CH2)0〜2C(O)OH;−(CH2)0〜2C(O)OR●;−(CH2)0〜4C(O)N(R○)2;−(CH2)0〜2SR●;−(CH2)0〜2SH;−(CH2)0〜2NH2;−(CH2)0〜2NHR●;−(CH2)0〜2NR●2;−NO2;−SiR●3;−OSiR●3;−C(O)SR●;−(C1〜4直鎖または分枝状アルキレン)C(O)OR●;または−SSR●であり、式中、R●は、それぞれ、非置換であるか、あるいは「ハロ」が前に付いている場合は、1つまたは複数のハロゲンのみで置換されており、C1〜4脂肪族、−CH2Ph、−O(CH2)0〜1Ph、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜4個のへテロ原子を有している5員〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環より独立して選択される。R○の飽和炭素原子上の適切な二価の置換基としては、=Oおよび=Sが挙げられる。
【0023】
「必要に応じて置換された」基の飽和炭素原子上の適切な二価の置換基としては、以下が挙げられる:=O、=S、=NNR*2、=NNHC(O)R*、=NNHC(O)OR*、=NNHS(O)2R*、=NR*、=NOR*、−O(C(R*2))2〜3O−、または−S(C(R*2))2〜3S−。式中、R*は、それぞれの出現のたびに、独立して、水素、以下で定義されるように置換することができるC1〜6脂肪族、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜4個のへテロ原子を有している非置換の5員〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環より選択される。「必要に応じて置換された」基の近接の置換可能な隣接炭素に結合された適切な二価の置換基としては、−O(CR*2)2〜3O−が挙げられ、式中、R*は、出現するたびに独立して、水素、以下で定義されるように置換することができるC1〜6脂肪族、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0個〜4個のへテロ原子を有している非置換の5員〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環が挙げられる。
【0024】
R*の脂肪族基上の適切な置換基としては、ハロゲン、−R●、−(ハロR●)、−OH、−OR●、−O(ハロR●)、−CN、−C(O)OH、−C(O)OR●、−NH2、−NHR●、−NR●2、または−NO2が挙げられ、式中、R●は、それぞれ、非置換であるか、あるいは「ハロ」が前に付いている場合は、1つまたは複数のハロゲンのみで置換され、そして独立して、C1〜4脂肪族、−CH2Ph、−O(CH2)0〜1Ph、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0個〜4個のへテロ原子を有している5員〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環である。
【0025】
「必要に応じて置換された」基の置換可能な窒素についての適切な置換基としては、−R†、−NR†2、−C(O)R†、−C(O)OR†、−C(O)C(O)R†、−C(O)CH2C(O)R†、−S(O)2R†、−S(O)2NR†2、−C(S)NR†2、−C(NH)NR†2、または−N(R†)S(O)2R†が挙げられ、式中、R†は、それぞれ独立して、水素、以下で定義されるように置換することができるC1〜6脂肪族、非置換の−OPh、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0個〜4個のへテロ原子を有している非置換の5員〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環であり、あるいは上記定義にかかわらず、独立して出現する2つのR†は、それらの間にある原子(単数または複数)と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0個〜4個のヘテロ原子を有している非置換の3員〜12員の飽和、部分不飽和、またはアリールの単環式環もしくは二環式環を形成する。
【0026】
R†の脂肪族基についての適切な置換基は、独立して、ハロゲン、−R●、−(ハロR●)、−OH、−OR●、−O(ハロR●)、−CN、−C(O)OH、−C(O)OR●、−NH2、−NHR●、−NR●2、または−NO2であり、式中、R●は、それぞれ、非置換であるか、あるいは「ハロ」が前に付いている場合は、1つまたは複数のハロゲンのみで置換され、独立して、C1〜4脂肪族、−CH2Ph、−O(CH2)0〜1Ph、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0個〜4個のへテロ原子を有している5員〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環である。
【0027】
用語「炭水化物」は、糖または糖のポリマーをいう。用語「糖」、「多糖」、「炭水化物」、および「オリゴ糖」は、互換的に使用され得る。ほとんどの炭水化物は、多くのヒドロキシル基、通常は、分子の各炭素原子上に1つのヒドロキシル基を持つ、アルデヒドまたはケトンである。炭水化物は、一般的に、分子式CnH2nOnを有する。炭水化物は、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、または多糖であり得る。最も基本的な炭水化物は、単糖(例えば、グルコース、スクロース、ガラクトース、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース、およびフルクトース)である。二糖は、2つの結合した単糖である。例示的な二糖としては、スクロース、マルトース、セロビオース、およびラクトースが挙げられる。典型的には、オリゴ糖は、3個〜6個の単糖単位を含み(例えば、ラフィノース、スタキオース)、多糖は、6個以上の単糖単位を含む。例示的な多糖としては、デンプン、グリコーゲン、およびセルロースが挙げられる。炭水化物には、修飾された糖単位(例えば、2’−デオキシリボース(ここでは、ヒドロキシル基が除去されている)、2’−フルオロリボース(ここでは、ヒドロキシル基がフッ素で置換されている)、またはN−アセチルグルコサミン、グルコースの窒素含有形態(例えば、2’−フルオロリボース、デオキシリボース、およびヘキソース)が含まれ得る。炭水化物は、多くの様々な形態(例えば、配座異性体、環状形態、非環式形態、立体異性体、互変異性体、アノマー、および異性体)で存在し得る。
【0028】
用語「ポリペプチド」は、一般的に言うと、ペプチド結合により互いに連結された、ひと続きの少なくとも2つのアミノ酸である。いくつかの実施形態においては、ポリペプチドは、少なくとも3個〜5個のアミノ酸を含み、各アミノ酸は、少なくとも1つのペプチド結合により互いに連結されている。当業者は、ポリペプチドに、「非天然」アミノ酸、または必要に応じて、それにもかかわらずポリペプチド鎖に組み込むことができる他の構成要素が含まれる場合があることを理解するであろう。用語「ペプチド」は、一般的には、約100個未満のアミノ酸の長さを有しているポリペプチドのことについていうために使用される。
【0029】
本明細書中で使用される場合は、表現「非天然アミノ酸」は、タンパク質中に自然界に存在している20種類のアミノ酸のリストに含まれないアミノ酸をいう。そのようなアミノ酸としては、20種類の自然界に存在しているアミノ酸の全てのD異性体が挙げられる。非天然アミノ酸にはまた、ホモセリン、オルニチン、ノルロイシン、およびサイロキシンも含まれる。他の非天然アミノ酸側鎖は当業者に周知であり、これには、非天然脂肪族側鎖が含まれる。他の非天然アミノ酸としては、修飾されたアミノ酸が挙げられ、これには、N−アルキル化、環化、リン酸化、アセチル化、アミド化、アジジル化(azidylated)、標識化されたものなどが含まれる。いくつかの実施形態においては、非天然アミノ酸は、D異性体である。いくつかの実施形態においては、非天然アミノ酸は、L異性体である。
【0030】
本明細書中で使用される場合は、用語「タンパク質」は、ポリペプチド(すなわち、ペプチド結合により互いに連結されたひと続きの少なくとも2つのアミノ酸)をいう。タンパク質は、アミノ酸以外の部分を含み得(例えば、糖タンパク質、プロテオグリカンなどであり得る)、そして/または別の方法でプロセシングされる場合も、また、修飾される場合もある。当業者は、「タンパク質」が、細胞により産生されるような(シグナル配列を持つかまたはシグナル配列を持たない)完全なポリペプチド鎖であり得、また、その特徴的な部分でもあり得ることを理解するであろう。当業者は、タンパク質が、(例えば、1つまたは複数のジスルフィド結合により連結されたか、または他の手段により結合された)2つ以上のポリペプチド鎖を含む場合があり得ることを理解するであろう。ポリペプチドは、L−アミノ酸、D−アミノ酸、またはこれらの両方を含み得、そして当該分野で公知のあらゆる様々なアミノ酸の変異体または類似体を含み得る。有用な変異体としては、例えば、末端アセチル化、アミド化などが挙げられる。いくつかの実施形態においては、タンパク質は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、合成アミノ酸、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0031】
用語「適切な有機基(organic group)」は、本明細書中で使用される場合は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、ヘテロアリール、またはアシル基をいう。
【0032】
本明細書中で使用される場合は、用語「ポリオール」は、複数のヒドロキシル官能基を持つ化合物をいう。いくつかの実施形態においては、ポリオールは、ジオール、トリオール、またはテトロールである。いくつかの実施形態においては、ポリオールはアルキレングリコールである。いくつかの実施形態においては、ポリオールは、アルキレントリオールである。
【0033】
本明細書では、用語「ヒドロゲル」は、ポリマー材料であり、典型的には、水中で膨潤するか、または水で膨潤するようになり得るポリマー鎖のネットワークまたはマトリックスをいう。水ですでに膨張したかまたは部分的に膨張したそのようなポリマー材料もまた、ヒドロゲルと呼ぶことができる。ヒドロゲルネットワークまたはマトリックスは、架橋されている場合も、また、架橋されていない場合もあり、架橋された材料は、物理的に架橋されている場合も、および/または、化学的に架橋されている場合もある。ヒドロゲルにはまた、水で膨張することができるポリマー材料および/または水で膨張したポリマー材料も含まれる。ヒドロゲルは、様々な水和状態で存在し得る。いくつかの実施形態においては、ヒドロゲルは水和されていない。いくつかの実施形態においては、ヒドロゲルは部分的に水和されている。いくつかの実施形態においては、ヒドロゲルは完全に水和されている。特定の実施形態においては、ヒドロゲルは、水で膨張したものであると記載され得る。特定の実施形態においては、ヒドロゲルは、水で膨張することができるものであると記載され得る。
【0034】
本明細書中で使用される場合は、用語「漿液腫」は、創傷床(wound bed)または手術部位の中での漿液血漿の蓄積をいう。漿液腫は感染し得るか、または感染した組織を含み得るが、漿液腫が、白血球、細菌、および両方の分解生成物の存在と必ずしも関係があるわけではない。
【0035】
本明細書中で使用される場合は、用語「止血」は、(組織の、もしくは組織中の)出血を止めるまたは減少させる作用をいう。組織は、任意の生物学的組織であり得る。いくつかの実施形態においては、組織は生存している動物組織である。いくつかの実施形態においては、組織は、創傷床の中および/またはその周囲にある。いくつかの実施形態においては、組織は、手術部位の中および/またはその周囲にある。
【0036】
本明細書中で使用される場合は、用語「手術部位」は、手術の間または手術後に、実際のまたは意図された手術操作に隣接する、手術を受ける患者の組織をいう。いくつかの実施形態においては、手術部位は、手術が行われているかまたは手術が行われた皮膚の表面の位置である。手術部位には、手術による切開が意図される部位、ならびに皮膚の創傷部位(例えば、ものによる刺創(puncture wounds by objects))が含まれる。いくつかの実施形態においては、手術部位には、手術部位のすぐ近くから、手術部位から約30cmまでの周辺部が含まれる。いくつかの実施形態においては、手術部位には、手術部位から約3cm〜約30cmまでの周辺部が含まれる。
【0037】
用語「切開」または「外科的切開」は、患者の皮膚の表皮層または真皮層より深い範囲に及ぶ任意の外科的な穿通をいい、これには、例えば、針、ナイフ(外科用メスおよび電気メスを含む)、医療用レーザー、トロカール、およびに穿刺(例えば、静脈内注射、輸血/献血、予防接種、医学的注射(medicament injections)、血液透析などにより生じる穿刺)により作られた切開または穿刺が含まれる。
【0038】
用語「創傷」は、あらゆる創傷またはけがをいい、これには、外科手術による創傷、および偶発的な創傷もしくは外傷による創傷(例えば、複雑骨折、銃創、刺し傷、ペレット弾による傷、汚染創または感染創)が含まれる。用語「創傷床」は、「創傷」と互換的に使用され得る。いくつかの実施形態においては、創傷には、創傷のすぐ近くから、創傷から約30cmまでに及ぶ周辺部が含まれる。いくつかの実施形態においては、創傷には、創傷から約3cm〜約30cmまでの周辺部が含まれる。
【0039】
本明細書中で使用される場合は、用語「被検体」または「患者」は、例えば、実験目的、診断目的、予防目的、および/または治療目的のために本発明の組成物が投与され得る任意の生命体をいう。典型的な被検体としては、動物(例えば、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、ヒト以外の霊長類、およびヒト)が挙げられる。
【0040】
疾患、障害、および/または症状に「罹患している」個体は、疾患、障害、および/もしくは症状の1つまたは複数の症候があると診断されているか、あるいはそれらを示す。
【0041】
疾患、障害、および/または症状に「なりやすい」個体は、疾患、障害、および/または症状を有するとは診断されていない。いくつかの実施形態においては、疾患、障害、および/または症状になりやすい個体は、疾患、障害、および/または症状の症候を示さない場合がある。いくつかの実施形態においては、疾患、障害、および/または症状になりやすい個体は、疾患、障害、および/または症状を発症するであろう。いくつかの実施形態においては、疾患、障害、および/または症状になりやすい個体は、疾患、障害、および/または症状を発症しないであろう。いくつかの実施形態においては、疾患、障害、および/または症状になりやすい個体は、一般的な集団において観察されるよりも、(典型的には、遺伝的素因、環境要因、病歴、またはそれらの組み合わせに基づいて)特定の疾患もしくは障害、またはその症候を発症するより高いリスクを有している個体である。
【0042】
用語「処置」は、本明細書中では、(1)疾患、障害、および/もしくは症状の発症を遅らせるかまたは予防する;(2)疾患、障害、および/もしくは症状の1つまたは複数の症候の進行、重症化、または悪化を遅くするかまたは停止する;(3)疾患、障害、および/または症状の症候の改善をもたらす;(4)疾患、障害、および/もしくは症状の重篤度または発症率を低下させる;ならびに/あるいは、(5)疾患、障害、および/もしくは症状を治癒することを目的とする方法あるいはプロセスを特性決定するために使用される。処置は、予防または防止作用のために、疾患、障害、および/もしくは症状の発症前に投与され得る。あるいは、または加えて、処置は、治療作用のために、疾患、障害、および/または症状の開始後に投与され得る。
【0043】
用語「緩和」は、疾患の症候および/または治療レジュメの副作用を、治癒するのではなく和らげることに焦点を当てた処置をいう。
【0044】
本明細書中および特許請求の範囲の中で使用される場合は、単数形「a」、「an」、および「the」は、その文脈が明らかにそうでないこと示さない限りは、複数の言及を含む。したがって、例えば、「化合物」との言及は、複数のそのような化合物を含む。同様に、「ポリマー」との言及は、複数のそのようなポリマーを含む。
【0045】
表現「薬学的に許容される」は、本明細書中では、合理的な利点/リスク比に見合う、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴うことなくヒトおよび動物の組織と接触させる使用に適している、適正な医学的判断の範囲である、そのような化合物、材料、組成物、および/または投薬形態をいうように使用される。
【0046】
表現「薬学的に許容される担体」は、本明細書中で使用される場合は、本発明の物質の保持または輸送に関係している、薬学的に許容される物質、組成物、または媒体(例えば、液体もしくは固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、または溶媒、カプセル化材料)を意味する。個々の担体は、本発明の化合物および処方物の他の成分と適合するとの意味で「許容され」なければならず、患者にとって有害であってはならない。薬学的に許容される担体となり得る物質のいくつかの例としては以下が挙げられる:糖(例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース);デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、およびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース);粉末状トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、ココアバター、および坐剤用ワックス);油(例えば、ピーナッツ油、菜種油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油);グリコール(例えば、プロピレングリコール);ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール);エステル(例えば、オレイン酸エチル、およびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質が含まれていない水;等張性生理食塩水;Ringer溶液;エチルアルコール;pH緩衝化溶液;ポリエステル、ポリカーボネート、および/またはポリ無水物;ならびに、薬学的処方物において使用される他の毒性がない適合性の物質。
【0047】
(特定の実施形態の詳細な説明)
高分子生体適合材料(Polymeric biomaterials)は、過去数十年間にわたり、医学および外科診療の進歩に有意に貢献してきた。それらの巨大分子構造は、医学的および外科的用途の範囲に必要な化学的、物理的、および生物学的特性の適切な組み合わせをもたらすように合わせることができる。高分子生体適合材料の合理的設計は、薬物および遺伝子送達、整形外科、再生医療、眼科、および一般外科手術を含む多くの分野に影響を与えている(Langer,R.,Tirrell,D.A.(2004)「Designing materials for biology and medicine.」Nature 428,487−492;Putnam,D.(2006)「Polymers for gene delivery across length scales.」Nature Materials 5,439−451;Wong,S.Y.,Pelet,J.M.,Putnam,D.(2007)「Polymer systems for gene delivery−past,present,and future.」Prog Polym Sci 32,799−837)。
【0048】
本開示は、高分子生体適合材料が創傷および術後の手術部位の処置に有用である可能性があることの認識を含む。出願人らの認識について、漿液腫の予防のための合成の生体適合材料について公開しているものは2つしか存在しない。Silvermanらは、ラットの乳腺切除モデルにおいて漿液腫を効果的に減少させた光重合型の材料を報告したが、この研究についての追跡調査は報告されていない(Silverman,R.P.,ら(1999)「Transdermal photopolymerized adhesive for seroma prevention.」Plast Reconstr Surg 103,531−535)。Rubinと共同研究者らは、イヌの漿液腫モデルにおいて有効性を示すウレタン系の材料を開発した。しかし、その結果が期待できるにもかかわらず、この材料には長い硬化時間が必要であり、極めてゆっくりしか分解しないと見られる(Gilbert,T.ら(2008)「Lysine−derived urethane surgical adhesive prevents seroma formation in a canine abdominoplasty model.」Plast.Reconstr.Surg 122,95−102)。漿液腫が患者に相当の死亡率を生じると考えると、これらがバイオマテリアル学会から大きく注目されてこなかったことは興味深い。
【0049】
本開示は、中でも、生体適合性であり、取り扱いおよび適用が容易であり、そして術後の症状および/または合併症の処置に有用である、調節可能な生理化学的特性を持つ新規の外科用生体適合材料を提供する。そのような材料は、コポリマーを含有し、上記コポリマーの物理的およびレオロジー特性は、その構成ブロックの長さを調節することにより細かく調整することができる。特定の実施形態においては、提供される外科用の生体適合材料は、漿液腫、組織癒着、および/または出血の処置に有用である。
【0050】
出願人らは、モノメトキシポリ(エチレングリコール)(MPEG)ブロックと、代謝中間体であるジヒドロキシアセトン(DHA)をベースとするポリカーボネート(pDHA)ブロックとからなる、ジブロックコポリマーMPEG−pDHAの合成の成功ならびに特徴を以前に記載した。Zawaneh,P.N.、Doody,A.M.、Zelikin,A.N.、Putnam,D.(2006)「Diblock copolymers based on dihydroxyacetone and ethylene glycol:Synthesis,characterization,and nanoparticle formulation.」Biomacromolecules 7,3245−3251;および米国特許出願公開番号2008−0194786(これらのそれぞれの内容全体が引用により本明細書中に組み入れられる)を参照のこと。
【0051】
pDHAコポリマーを用いた次の作業により、このようなコポリマーが医学的に有用な特性を有していることを明らかにした。さらに、出願人らは、予想外に、高濃度で、pDHAコポリマーが物理的に架橋されたヒドロゲルを形成し、これが物理的に架橋されていない非ヒドロゲル組成物とは異なる特性を持つことを見出した。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーはチキソトロピー性である。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、迅速な鎖緩和を示す。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは高い空隙率を有する。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、高い水分含量を有する。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは注射可能である。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは粉末である。
【0052】
出願人らは、提供されるコポリマーの濃度および組成を制御することにより、物理的に架橋されたヒドロゲルが形成されることを見出した。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、本明細書中に記載されるような使用について望ましい特徴(例えば、物理的架橋を形成する物理的にもつれた状態のネットワーク)を有する。いくつかの実施形態においては、そのような特徴は、提供されるコポリマーが低濃度である場合には存在しない。いくつかの実施形態においては、ヒドロゲルの形成のような特徴は、提供されるコポリマーが高濃度である場合に存在する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、低濃度でナノ粒子を形成する。
【0053】
いくつかの実施形態においては、本開示は、提供されるヒドロゲル組成物を作製する方法を提供する。
【0054】
特定の実施形態においては、本開示は、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)を含有するコポリマーを提供する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、pDHAのブロックコポリマーである。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、pDHAのジブロックコポリマー(diblock copolymer)である。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、pDHAのトリブロックコポリマー(triblock copolymer)である。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、pDHAのクオードブロックコポリマー(quadblock copolymer)である。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、pDHAのマルチブロックコポリマー(multiblock copolymer)である。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、DHAおよび少なくとも1種類の他の単量体を含有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、DHAとグリセロールを含有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、DHAとアルキレングリコールを含有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、DHAとPEGを含有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、PEG−pDHAジブロックコポリマーである。いくつかの実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(MPEG−b−2−オキシプロピレンカーボネート)である。
【0055】
いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、DHAとポリオールを含有する。いくつかの実施形態においては、ポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール(すなわち、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、または1,3−プロパンジオールを含有するポリマー)、ブチレングリコール(すなわち、1,2−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、または1,4−ブタンジオールを含有するポリマー)、および炭水化物からなる群より選択される。いくつかの実施形態においては、炭水化物ポリオールは、環状の糖である。いくつかの実施形態においては、炭水化物ポリオールは、水素化された糖アルコールである。
【0056】
いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、適切な有機基で終わる。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのアルキレングリコールブロックは、適切な有機基で終わる。いくつかの実施形態においては、適切な有機基は、脂肪族、アシル、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールである。いくつかの実施形態においては、適切な有機基は、炭水化物、タンパク質、またはペプチドである。
【0057】
いくつかの実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ブロックコポリマーである。いくつかの実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ランダムコポリマーである。
【0058】
いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、DHA、グリセロール、およびPEGを含有する。いくつかの実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、PEGの第1のブロックと、DHAおよびグリセロールを含有する第2のブロックを含有する。いくつかの実施形態においては、DHAおよびグリセロールを含有する第2のブロックは、ブロックコポリマーである。いくつかの実施形態においては、DHAおよびグリセロールを含有する第2のブロックは、ランダムコポリマーである。
【0059】
特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)−pDHAジブロックコポリマーである。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(エチレングリコール)−pDHAジブロックコポリマーである。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(プロピレングリコール)−pDHAジブロックコポリマーである。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(グリセロール)−pDHAジブロックコポリマーである。
【0060】
特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのポリ(アルキレン−グリコール)ブロックは線状である。他の実施形態においては、提供されるコポリマーのポリ(アルキレン−グリコール)ブロックは分岐状である。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのPEGブロックは分岐状である。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのPEGブロックは、comb PEGである。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのPEGブロックは、star PEGである。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる3〜200のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる3〜100のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる3〜50のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる3〜40のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる3〜30のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる3〜20のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる10のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる9のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる8のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる7のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる6のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる5のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる4のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる3のPEG鎖を含有する。
【0061】
特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約100ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約1,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約10,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約100,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約100ダルトン〜約100,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約100ダルトン〜約50,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約100ダルトン〜約10,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約1,000ダルトン〜約50,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約1,000ダルトン〜約10,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約1,000ダルトン〜約5,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約2,000ダルトン〜約5,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約2,000ダルトン〜約4,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約2,500ダルトン〜約4,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約2,500ダルトン〜約3,500ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約3,000ダルトンのMwを有する。
【0062】
特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約100ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約1,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約10,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約100,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約100ダルトン〜約100,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約100ダルトン〜約50,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約100ダルトン〜約10,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約1,000ダルトン〜約50,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約1,000ダルトン〜約10,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約1,000ダルトン〜約5,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約2,000ダルトン〜約5,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約3,000ダルトン〜約6,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約2,500ダルトン〜約4,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約2,500ダルトン〜約3,500ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約5,000ダルトンのMwを有する。
【0063】
特定の実施形態においては、提供されるコポリマーはヒドロゲルである。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、架橋されていない。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは架橋されている。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、剪断速度の増大に伴い粘性が低下する特性を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるヒドロゲルは、約100%〜約2,000%の重量増加膨張率を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるヒドロゲルは、約200%〜約1,000%の重量増加膨張率を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるヒドロゲルは、約200%〜約800%の重量増加膨張率を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるヒドロゲルは、約300%〜約700%の重量増加膨張率を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるヒドロゲルは、約400%〜約600%の重量増加膨張率を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるヒドロゲルは、約500%〜約600%の重量増加膨張率を有する。
【0064】
いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、約5×1022m−3〜約5×1026m−3の絡み合い密度を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、約5×1023m−3〜約1×1025m−3の絡み合い密度を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、約5×1024m−3〜約5×1025m−3の絡み合い密度を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、約1×1024m−3〜約5×1024m−3の絡み合い密度を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、約5×1024m−3の絡み合い密度を有する。
【0065】
特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、約30秒〜約1000秒の緩和時間を有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、約100秒〜約500秒の緩和時間を有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、約200秒〜約500秒の緩和時間を有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、約200秒〜約400秒の緩和時間を有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、約200秒〜約350秒の緩和時間を有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、約225秒〜約275秒の緩和時間を有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、約250秒の緩和時間を有する。
【0066】
ジヒドロキシアセトンは、皮膚の上層中のアミノ酸と反応して、色素沈着作用を生じることが知られている。したがって、DHA−皮膚タンパク質反応の生成物は、ポリマーDHAではなく、単量体DHAで官能化されたタンパク質である。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、メイラード反応(すなわち、還元糖とアミノ酸との間での反応)により形成されたDHA−タンパク質結合体を含有しない。
【0067】
特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、式VII−aのコポリマーである:
【0068】
【化1】
式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、C1〜20脂肪族;3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式炭素環;フェニル;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、5員〜6員のヘテロアリール環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有している、8員〜10員の二環式ヘテロアリール環より選択される、必要に応じて置換された基であり;そして、
nおよびmは、それぞれ独立して、1〜2000の範囲である。
【0069】
特定の実施形態においては、R1は、C1〜20脂肪族である。特定の実施形態においては、R1は、C1〜10脂肪族である。特定の実施形態においては、R1は、C1〜6脂肪族である。特定の実施形態においては、R1はメチルである。いくつかの実施形態においては、R1は、適切な有機基である。いくつかの実施形態においては、R1は、炭水化物、タンパク質、およびペプチドからなる群より選択される。
【0070】
いくつかの実施形態においては、R2は、C1〜20脂肪族である。特定の実施形態においては、R2は、C1〜10脂肪族である。特定の実施形態においては、R2は、C1〜6脂肪族である。特定の実施形態においては、R2は、メチルである。
【0071】
いくつかの実施形態においては、nは、1〜2000である。いくつかの実施形態においては、nは、10〜1000である。いくつかの実施形態においては、nは、10〜500である。いくつかの実施形態においては、nは、10〜250である。いくつかの実施形態においては、nは、10〜200である。いくつかの実施形態においては、nは、10〜150である。いくつかの実施形態においては、nは、50〜200である。いくつかの実施形態においては、nは、75〜125である。いくつかの実施形態においては、nは、n個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約200ダルトン〜約20,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、nは、n個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約500ダルトン〜約10,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、nは、n個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約1,000ダルトン〜約10,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、nは、n個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約2,000ダルトン〜約10,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、nは、n個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約3,000ダルトン〜約6,000ダルトンとなるような数である。
【0072】
いくつかの実施形態においては、mは、1〜2000である。いくつかの実施形態においては、mは、2〜2000である。いくつかの実施形態においては、mは、5〜1000である。いくつかの実施形態においては、mは、5〜500である。いくつかの実施形態においては、mは、5〜250である。いくつかの実施形態においては、mは、5〜200である。いくつかの実施形態においては、mは、5〜100である。いくつかの実施形態においては、mは、15〜50である。いくつかの実施形態においては、mは、20〜30である。いくつかの実施形態においては、mは、m個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約200ダルトン〜約20,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、mは、m個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約500ダルトン〜約10,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、mは、m個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約1,000ダルトン〜約10,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、mは、m個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約2,000ダルトン〜約8,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、mは、m個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約3,000ダルトン〜約7,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、mは、m個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約4,000ダルトン〜約6,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、mは、m個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約5,000ダルトンとなるような数である。
【0073】
いくつかの実施形態においては、本明細書中に記載される分子量は、1つの分子または1つ分子の一部分の分子量をいう。いくつかの実施形態においては、本明細書中に記載される分子量は、提供されるポリマーの組成物中の平均分子量をいう。
【0074】
特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、式VII−bのコポリマーである:
【0075】
【化2】
式中、R1、n、およびmのそれぞれは、上記で定義され、そして本明細書中のクラスおよびサブクラスに記載されるとおりである。
【0076】
提供されるpDHAコポリマーが、カルボニル保護基で保護され得るケトン基を含むことが理解されるであろう。例えば、提供されるポリマーは、化学的に保護されているジヒドロキシアセトン単量体および/または二量体を使用して、例えば、保護されたジヒドロキシアセトン単量体(ここでは、単量体のカルボニル基が保護されている)から、例えば、2,2−ジ−C1〜C10アルコキシ−プロパン−1,3−ジオールから、または2,2−ジメトキシ−プロパン−1,3−ジオールから作製され得る。出発材料の他の保護された形態としては、単量体のカルボニル基が、メトキシベンジル、ベンジルオキシ、もしくはアリルオキシで保護されているもの、または二量体のヒドロキシル基が保護されているもの(例えば、2,5−ジ−C1〜C10アルコキシ−2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−[1,4]−ジオキサンに由来する)が挙げられる。2,2−ジメトキシ−プロパン−1,3ジオールは、Ferroni,E.L.,ら,J.Org.Chem 64,4943−4945(1999)に記載されているように、DHA単量体と二量体の組み合わせから容易に作製される。
【0077】
官能化された単量体を重合することに加えて、提供されるpDHAコポリマーは、ポリマー段階で官能化することもできる。そのような官能化は、当該分野でこれまでに実証されている(例えば、米国特許出願公開番号2008−0194786を参照のこと)。例えば、式VII−aの化合物は、1つまたは複数の求核試薬により官能化され得る。特定の実施形態においては、式VII−aの化合物は、アミンと適切な還元剤で処理される。いくつかの実施形態においては、還元剤は、NaBH4、NaBH3CN、またはNaBH(OCOCH3)3より選択される。
【0078】
したがって、特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、式VIIIのコポリマーである:
【0079】
【化3】
式中、R1、R2、n、およびmはそれぞれ、上記で定義され、本明細書中のクラスおよびサブクラスに記載されるとおりであり;そして
R3およびR4は、それぞれ独立して、R5、−OR5、および−N(R5)2からなる群より選択されるか;あるいは:
R3とR4が、必要に応じて、それらの間にある原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;または窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環より選択される、必要に応じて置換された環を形成し;そして
R5は、それぞれ独立して、水素、あるいは、C1−20脂肪族;3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式炭素環;フェニル;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、5員〜6員のヘテロアリール環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有している、8員〜10員の二環式ヘテロアリール環より選択される、必要に応じて置換された基である。
【0080】
いくつかの実施形態においては、R3はR5である。いくつかの実施形態においては、R3は、−OR5である。他の実施形態においては、R3は、−N(R5)2である。いくつかの実施形態においては、R3は、−N(R5)2であり、式中、R5は、それぞれ独立して、C1〜10脂肪族またはフェニルより選択される必要に応じて置換された基である。いくつかの実施形態においては、R3は、−NH(CH2)4CH(NH2)CO2Hである。
【0081】
いくつかの実施形態においては、R4はR5である。いくつかの実施形態においては、R4は、−OR5である。他の実施形態においては、R4は、−N(R5)2である。
【0082】
特定の実施形態においては、R3とR4が、適切なカルボニル保護基を形成する。適切なカルボニル保護基は当該分野で周知であり、これには、Protecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,第3版,John Wiley & Sons,1999(その全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に詳細に記載されているものが含まれる。
【0083】
いくつかの実施形態においては、R3およびR4は、それぞれ独立して、R5、−OR5、および−N(R5)2からなる群より選択される。特定の実施形態においては、R3とR4はそれぞれ、−N(R5)2であり、式中、R5はC1〜20脂肪族である。特定の実施形態においては、R3とR4はそれぞれ、−OR5であり、式中、R5はC1〜20脂肪族である。特定の実施形態においては、R3とR4はそれぞれ、−OR5であり、式中、R5はC1〜10脂肪族である。特定の実施形態においては、R3とR4はそれぞれ、−OR5であり、式中、R5は、C1〜6脂肪族である。特定の実施形態においては、R3とR4はそれぞれ、−OR5であり、式中、R5はエチルである。特定の実施形態においては、R3とR4はそれぞれ、−OR5であり、式中、R5はメチルである。
【0084】
いくつかの実施形態においては、R3とR4は、それらの間にある原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、必要に応じて置換されたスピロ環式の3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環を形成する。いくつかの実施形態においては、R3とR4は、それらの間にある原子と一緒になって、必要に応じて置換された5員〜6員の環状ケタールを形成する。いくつかの実施形態においては、R3とR4は、必要に応じて置換された5員〜6員の環状ケタールを形成するようにそれらの間にある原子と一緒になることはない。
【0085】
特定の実施形態においては、R5は水素である。特定の実施形態においては、R5は、C1〜20脂肪族である。特定の実施形態においては、R5は、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環である。特定の実施形態においては、R5は、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式炭素環である。特定の実施形態においては、R5はフェニルである。特定の実施形態においては、R5は、8員〜10員の二環式アリール環である。特定の実施形態においては、R5は、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環である。特定の実施形態においては、R5は、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環である。特定の実施形態においては、R5は、8員〜10員の二環式アリール環である。特定の実施形態においては、R5は、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、5員〜6員のヘテロアリール環である。特定の実施形態においては、R5は、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有している、8員〜10員の二環式ヘテロアリール環である。
【0086】
特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、式IXのコポリマーである:
【0087】
【化4】
式中、R1、R2、R5、n、およびmはそれぞれ、上記で定義され、そして本明細書中のクラスおよびサブクラスに記載されるとおりである。
【0088】
特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、以下の反復サブユニットを含有する:
【0089】
【化5】
式中、R3とR4はそれぞれ、上記で定義され、そして本明細書中のクラスおよびサブクラスに記載されるとおりである。
【0090】
特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、以下の反復サブユニットを含有する:
【0091】
【化6】
式中、R5は、上記で定義され、そして本明細書中のクラスおよびサブクラスに記載されるとおりである。
【0092】
特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(MPEG−b−2−オキシプロピレンカーボネート)である。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(MPEG−b−2,2,ジ(C1〜12脂肪族)オキシ−1,3−プロピレンカーボネート)である。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(MPEG−b−2,2,ジメトキシ−1,3−プロピレンカーボネート)である。
【0093】
(MPEG−pDHAコポリマー)
上記のように、本開示は、pDHAコポリマーとその使用を提供する。いくつかの実施形態においては、提供されるジブロックコポリマーは、モノメトキシ−ポリエチレングリコールと、ヒトの代謝物であるジヒドロキシアセトンをベースとするポリカーボネートを含有する。
【0094】
ポリエチレングリコール(PEG)系ポリマーは、PEGの好ましい化学的特性および生物学的特性(特に、その確立された生体適合性と低い免疫原性)が原因で、生体適合材料として相当注目されている(Hubbell,J.A.(1998)「Synthetic biodegradable polymers for tissue engineering and drug delivery.」Curr Opin Solid St Mat Sci 3,246−251)。DHAは、解糖経路の中間体代謝物である3炭素のケトースであり、このことから、これは新規の生体適合材料についての見込みのある構成要素となっている(Mathews,C.,Van Holde,K.(1996)Biochemistry(The Benjamin/Cummings Publishing Co,Menlo Park,CA))。さらに、DHAは、コーンシロップとメタノールから発酵産物として容易に製造することができる(Kato,N.,Kobayashi,H.,Shimao,M.,Sakazawa,C.(1986)「Dihydroxyacetone production from methanol by a dihydroxyacetone kinase deficient mutant of hansenula−polymorpha.」Appl Microbiol Biot 23,180−186)。これは、第1級アミンのそのC2カルボニルとの反応によりシッフ塩基を形成するその能力から、サンレスタンニングローション中の有効成分として現在使用されている。(Soler,C.,Soley,M.(1993)「Rapid and delayed−effects of epidermal growth−factor on gluconeogenesis.」Biochem J 294,865−872;Davis,L.(1973)「Structure of dihydroxyacetone in solution.」Bioorg Chem 2,197−201;Nguyen,B.C.,Kochevar,I.E.(2003)「Influence of hydration on dihydroxyacetone−induced pigmentation of stratum corneum.」J Invest Dermatol 120,655−661)。DHAをベースとするポリカーボネート(pDHA)は親水性であるが、水および最も一般的な有機溶媒中では不溶性であり、これはまた、C2カルボニル基での還元的アミノ化による1工程での官能化がしやすい(Zelikin,A.N.,Zawaneh,P.N.,Putnam,D.(2006)「A functionalizable biomaterial based on dihydroxyacetone,an intermediate of glucose metabolism.」Biomacromolecules 7,3239−3244)。
【0095】
特定の実施形態においては、提供されるMPEG−pDHAジブロックコポリマーは、その構成要素である両方のブロックの特性の一部を獲得し、それらを取り込んで水和の際に物理的に架橋されたヒドロゲルを形成する。いずれの特定の理論にも束縛されることは望ましくないが、MPEG−pDHAをベースとするヒドロゲルは、第1級アミン(Zelikin、前出)を結合するpDHAの能力の理由から、詰物および生体接着剤の両方として作用するように創傷床に注入することができ、それにより、ゲルが、たるんだ組織を互いに結び付け、周囲の漏れがある血管およびリンパ管を密閉し、それによって液体貯留を減少させることが可能となると考えられる。
【0096】
上記のように、ゲルの特性と性能は、ポリマーを構成しているブロックの長さを調節することにより制御することができる。実験は、様々な分子量(Mw)のMPEG−pDHAが合成される次の実施例に記載される。これらの特定の実験においては、MPEGのMwは、5000で一定に保った。なぜなら、この低いMwでは、承認されているヒトでの使用についてFDAにより求められる腎クリアランスを受けることができるからである。pDHAのMwを変化させて(3000、5000、および7000)、3種類の所望されるブロックコポリマー(5000−3000、5000−5000、および5000−7000と略す)を生じさせた。pDHAは水中では不溶性であるが、接触角の測定値に基づくと親水性である(Zelikin,前出)ので、MPEGは、水溶性の親水性ポリマーである。これらの特徴は、上記ブロックコポリマーが、水性環境中で低濃度でナノ粒子を形成することを可能にする(Zawaneh,前出)。本開示は、予想外に、高いポリマー濃度で上記ブロックコポリマーが、物理的にもつれた状態のネットワーク持つゲルをを形成することを見出した。このような物理的ゲル化は、選択的溶媒中でマルチブロックコポリマーの特定のゲルを用いて、これまでに観察されている(Wang,L.W.,Venkatraman,S.,Gan,L.H.,Kleiner,L.(2005)「Structure formation in injectable poly(lactide−co−glycolide)depots.II.Nature of the gel.」J Biomed Mater Res 72B,215−222;Nyrkova,I.A.,Khokhlov,A.R.,Doi,M.(1993)「Microdomains in Block−Copolymer and Multiplets in Ionomers − Parallels in Behavior.」Macromolecules 26,3601−3610;He,X.W.,Herz,J.,Guenet,J.M.(1988)「Physical gelation of a multiblock copolymer − Effect of copolymer composition.」Macromolecules 21,1757−1763;He,X.W.,Herz,J.,Guenet,J.M.(1989)「Physical gelation of a multiblock copolymer − Effect of solvent type.」Macromolecules 22,1390−1397)が、任意のどのようなコポリマーについてもヒドロゲルの形成を実現するために必要なプロセスおよび/または条件は予測不可能である。
【0097】
pDHA鎖の長さの増大が、ゲルの物理的架橋を形成する不溶性pDHAドメインの大きさを増大させ、親水性MPEGドメインの相対的寄与を減少させることが、これまでに観察されている(Wang 2005、前出)。いずれの特定の理論にも束縛されることは望ましくないが、増大したpDHA鎖の長さが、続いて、実施例1に示されるように絡み合い密度を増大させ、これは次に、ゲルの空隙率と水分の取り込みに影響を与えると考えられる。高い水分含量と増大した空隙率は、材料の生体適合性を改善する傾向があり、その粘性と弾性の性質にも影響を及ぼし得る(Langer、前出)。
【0098】
特定の実施形態においては、提供されるMPEG−pDHAゲルは、高い水分含量を示し、これは、実施例1の表2に示されるように、pDHA鎖の長さと絡み合い密度の増大に伴って減少する。例えば、図1に示される極低温で凍結した/凍結乾燥させたゲルの走査電子顕微鏡写真(SEM)もまた、pDHA鎖の長さの増大と絡み合い密度の増加に伴って低下する高い程度の空隙率を説明する。
【0099】
新規の生体適合材料に有用であり得る2つの特徴は、分解速度と分解生成物の組成である。実施例2は、ポリカーボネートについて驚くほど迅速であり、pDHAブロックのMwの増大に伴い低下する分解速度を示す、特定のMPEG−pDHAブロックコポリマーについて行ったインビトロでの分解実験を説明する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、24時間で完全に分解する(図3a)。図3bは、特定のブロックコポリマーの分解生成物についての特徴的な1H NMRであり、これは、可溶性ポリマーの分解生成物が、MPEG、単量体DHA、およびおそらく、CO2(CO2は、ポリカーボネートの分解に共通する副生成物である)であることを示す(Tangpasuthadol,V.,Pendharkar,S.M.,Kohn,J.(2000)「Hydrolytic degradation of tyrosine−derived polycarbonates,a class of new biomaterials.Part I:Study of model compounds.」Biomaterials 21,2371−2378;Zhu,K.J.,Hendren,R.W.,Jensen,K.,Pitt,C.G.(1991)「Synthesis,properties,and biodegradation of poly(1,3−Trimethylene Carbonate).」Macromolecules 24,1736−1740)。対照として、図11は、もとのMPEGおよびDHAの1H NMRをそれぞれ含む。図3と図11の比較は、1H NMRのピークが重複することを示し、このことは、MPEG−pDHAの分解生成物が、MPEGと単量体DHAであることを示している。
【0100】
これらのインビトロでの実験に加えて、インビボでの実験を、術後の漿液腫の予防におけるpDHAコポリマーの有効性を決定するために行った。実施例3に記載するように、提供されるpDHAコポリマーは、対照と比較して、漿液腫の平均容積を有意に減少させることに関して有効である。送達(注射)の容易さ、生体組織との適合性、およびインビボでの効力を考慮すると、提供されるコポリマーは、極めて効果的な外科用の生体適合材料であることが実証されている。
【0101】
(使用方法)
いくつかの実施形態においては、本開示のpDHAコポリマーは、医療での使用のために提供される。いくつかの実施形態においては、本開示のpDHAコポリマーは、外科手術での使用のために提供される。特定の実施形態においては、本開示のpDHAコポリマーは、再建手術での使用のために提供される。特定の実施形態においては、本開示のpDHAコポリマーは、漿液腫の予防における使用のために提供される。いくつかの実施形態においては、本開示は、術後の死腔をなくし、漿液腫の形成を減少させるために、提供されるpDHAコポリマーを使用する方法を提供する。
【0102】
いくつかの実施形態においては、本開示は、患者の創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を投与する工程を含む処置方法を提供する。特定の実施形態においては、本開示は漿液腫の予防または処置のための方法を提供し、上記方法は、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を、創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む。特定の実施形態においては、創傷床または手術部位は腹部にある。
【0103】
(漿液腫)
漿液腫は、内部の水膨れ(internal blister)に対して同種である体の組織内での漿液の異常な集積である。術後の漿液の蓄積は、特に、外科的処置に、下層の皮膚組織および深部筋膜から皮膚の比較的大きな組織片を剥がす必要がある(例えば、切除手術および再建手術)場合に、患者において頻繁に起こる。広範囲に及ぶ組織の切開が必要であり、大きな空間を作ってしまう外科手術は、正常なリンパの流れを崩壊させてしまう可能性がある。これに続き、浸出液(transduate fluid)がこれらの排水の悪い「死腔」に集まり、これにより漿液腫の形成が生じる(Agrawal,A.,Ayantunde,A.A.,Cheung,K.L.(2006)「Concepts of seroma formation and prevention in breast cancer surgery.」ANZ J Surg 76,1088−1095;Kuroi,K.,ら(2005)「Pathophysiology of seroma in breast cancer.」Breast Cancer 12,288−293)。漿液腫は、感染、四肢可動性の低下、および再手術のような、有意な疾病構造(patient morbidity)を導き得る(Agrawal,前出;Schwabegger,A.,Ninkovic,M.,Brenner,E.,Anderl,H.(1997)「Seroma as a common donor site morbidity after harvesting the latissimus dorsi flap:Observations on cause and prevention.」Ann Plas Surg 38,594−597;Budd,D.C.,Cochran,R.C.,Sturtz,D.L.,Fouty,W.J.(1978)「Surgical morbidity after mastectomy operations.」Am J Surg 135,218−220)。漿液腫の形成率は、外科的処置の性質により、9.1%〜81%の範囲である(Schwabegger,前出;Woodworth,P.A.,McBoyle,M.F.,Helmer,S.D.,Beamer,R.L.(2000)「Seroma formation after breast cancer surgery:Incidence and predicting factors.」Am Surg 66,444−450;Roses,D.F.,Brooks,A.D.,Harris,M.N.,Shapiro,R.L.,Mitnick,J.(1999)「Complications of level I and II axillary dissection in the treatment of carcinoma of the breast.」Ann Surg 230,194−201;Abe,M.,Iwase,T.,Takeuchi T.,Murai H.,Miura S.(1998)「A randomized controlled trial on the prevention of seroma after partial or total mastectomy and axillary lymph node dissection.」Breast Cancer 5,67−69;Say,C.C.,Donegan,W.(1974)「Biostatistical evaluation of complications from mastectomy.」Surg Gynecol Obstet 138,370−376;Alvandi,R.Y.,Solomon,M.J.,Renwick,S.B.,Donovan,J.K.(1991)「Preliminary results of conservative treatment of early breast cancer with axillary dissection and post operative radiotherapy.A retrospective review of 107 patients.」Aust N Z J Surg 9,670−674;Osteen,R.T.,Karnell,L.H.(1994)「The national cancer data−base report on breast−cancer.」Cancer 73,1994−2000)。特に、改良型の定型的乳房切断術によっては、15%〜38.6%の範囲の漿液腫の形成率が生じるが、定型的乳房切除術については、52%の高い率が報告されている(Budd,前出;Hayes,J.A.,Bryan,R.M.(1984)「Wound−healing following mastectomy.」Aust N Z J Surg 54,25−27;Aitken,D.R.,Hunsaker,R.,James,A.G.(1984)「Prevention of seromas following mastectomy and axillary dissection.」Surg Gynecol Obstet 158,327−330;Chilson,T.R.,Chan,F.D.,Lonser,R.R.,Wu,T.M.,Aitken,D.R.(1992)「Seroma prevention after modified radical−mastectomy.」Am Surg 58,750−754;Terrell,G.S.,Singer,J.A.(1992)「Axillary versus combined axillary and pectoral drainage after modified radical−mastectomy.」Surg Gynecol Obstet 175,437−440)。
【0104】
一例として、定型的乳腺切除術を実施する過程において、執刀医は、胸郭とそれを覆っている皮膚の比較的大きな領域との間にある患者の乳房組織の実質的に全てを除去する。外科手術後、これにより生じる比較的大きな皮膚のたるみを、下層組織とともに治療し、そして下層組織と癒着させる必要がある。しかし、漿液の蓄積は、覆っている皮膚のたるみと下層組織との間に集まる傾向がある。この漿液(serious fluid)の集まりには、皮膚が、皮下組織と深部筋膜とともに癒えることを妨げる傾向があり、これにより、極めて感染しやすい媒体も提供されてしまう。
【0105】
現在の臨床診療では、シリコーン製の外科用ドレインが、異なる位置での刺切を通じて創傷床の中に配置されて、浸出液(transudate fluid)が集められるが、これらは、特に、最初の外科的処置の遅くとも数週間後にそれらを除去する際に、患者に疼痛および不快感をもたらす重要な原因となる可能性がある。さらに、これらの手法は、手術部位の感染のリスクをさらに増大する可能性がある。
【0106】
提供されるpDHAコポリマーは、様々な外科的処置により生じる漿液腫を処置および予防するために使用することができる。そのような処置としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:癌切除および一般外科的処置、例えば、乳房切除術、腫瘍摘出手術、塞栓除去術、;脂肪腫切開、子宮摘出術、美用整形手術(例えば、腹部形成術、前額部フェイスリフト術、バトックリフト術、フェイスリフト術、脂肪吸引術、皮膚移植術、インプラント外科手術(例えば、ふくらはぎ、二頭筋、三頭筋、胸筋、陰茎、皮下、経皮、歯、骨)、皺切除術、または鼻形成術));乳房形成術;生検閉鎖、口蓋裂閉鎖術、瘢痕ヘルニア修復術、リンパ節切除術、鼠径部の修復、帝王切開術、腹腔鏡によるトロカール修復、膣裂傷の修復、整形外科的処置、椎弓切除術、外傷性病変の処置、瘻孔の処置、移植片の固定、神経修復、電気焼灼術、甲状腺または副甲状腺の切除、歯科的処置(例えば、抜歯)、および手の外科手術。提供されるpDHAコポリマーはまた、獣医学的な外科的処置により生じ得る漿液腫の処置および予防においても有用である。
【0107】
(組織癒着)
提供されるpDHAコポリマーは、術後の組織癒着の予防に有用である。形成され得る癒着としては、組織と組織の癒着、または組織と骨との癒着が挙げられる。一般的に知られているように、内臓外科手術後の術後癒着形成の発生が、腹部外科手術における重大な問題である。例えば、組織癒着の合併症は、婦人科の患者においては生殖能力に影響を及ぼし得る。癒着は、婦人科での腹部の外科的処置の約70%において起こるので、上記の癒着、それに伴う合併症および患者の不快感を予防するための適切な方法が必要であることは明らかである。
【0108】
外科手術後の組織再生の間に表面間の接触がないように、メッシュ(mesh)または膜を差し込むことにより隣接する体の内表面を仕切ることは知られている。癒着を防ぐために利用されている1つの物質は、Gore−Tex(登録商標)として知られている、膨張性のあるポリテトラフルオロエチレン材料である。しかし、この物質は止血薬ではなく、ヒトの体により分解されない。したがって、この移植物は体内に留まり、必要であれば、治癒プロセス後に外科手術により取り出さなければならない。別の物質は、Interceed(登録商標)として知られているカルボキシメチルセルロースのメッシュバリアである。しかし、この物質は、血液を多く含む環境には適用できない場合がある。なぜなら、そのような環境下では、この物質はすぐにそのバリア機能を失ってしまうからである。他の研究者らにより、ポリ(エチレンオキサイド)およびポリエチレンテレフタレートの膜が、外科手術による癒着を防ぐためのバリア物質として開示されている(Gilding and Reed,Polymer,第20巻,1454−1458頁(1979年12月)およびPolymer,第22巻,499−504頁(1981年4月)。
【0109】
本開示は、手術後の組織の癒着の予防または処置のための方法を提供する。この方法は、ポリ−ジヒドロキシアセトンコポリマーを含有する物質を、創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む。本開示はまた、止血を達成するための方法も提供する。この方法は、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を、創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む。
【0110】
(止血)
本開示は、止血を達成するための方法を提供する。この方法は、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を、創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む。特定の実施形態においては、創傷床または手術部位は、肝臓表面を含む。特定の実施形態においては、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を投与する工程は、出血している表面に上記物質を振りかけることを含む。
【0111】
特定の実施形態においては、本明細書中に記載される方法は、処置される症状に関して緩和的である。特定の実施形態においては、上記方法は予防的である。特定の実施形態においては、上記方法は治療的である。
【0112】
本開示は、「薬学的に許容される」組成物を提供し、これは、1種類以上の薬学的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤とともに処方された、本明細書中に記載される1種類以上の治療有効量の化合物を含有する。詳細に記載されるように、本開示の薬学的組成物は、以下のために適応させたものを含む、固体または液体の形態での投与のために特別に処方され得る:非経口投与(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、または硬膜外注射)(例えば、滅菌溶液または懸濁液として);局所塗布(例えば、クリーム、軟膏、または徐放パッチ)。
【0113】
本開示はさらに、pDHAコポリマーの組成物を含有するキットを提供する。このキットは、必要に応じて、提供される組成物を調製するおよび/または投与するための説明書を含む。特定の実施形態においては、上記キットは、複数回投与量の組成物を含有する。特定の実施形態においては、上記キットは、組成物の調製および/または投与に有用なさらなる成分および/またはツールを含む。上記キットは、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、数か月に1回、被検体を処置するための十分な量の個々の成分を含有し得る。
【実施例】
【0114】
本明細書中に記載されるものに加えて、ポリ−ジヒドロキシアセトンおよびその誘導体を調製する方法が、米国特許公開番号2008/0194786(その内容全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。
【0115】
(一般的手順)
モノメトキシ−ポリ(エチレングリコール)(MPEG)(Mw 5000)をPolysciences(Warrington,PA)から購入した。使用前に、MPEGをトルエン中での共沸蒸留により乾燥させた。ジヒドロキシアセトン二量体(DHA)、p−トルエンスルホン酸、オルトギ酸トリメチル、Sn(Oct)2、クロロギ酸エチル、および5%のリンタングステン酸は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入し、受け取ったままの状態で使用した。トリエチルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(CH2Cl2)、ジエチルエーテル、メタノール、トルエン、およびTFAは、VWR(West Chester,PA)から購入し、受け取ったままの状態で使用した。注射器とPBS(pH7.4)は、Fisher Scientificから購入した。コラーゲンは、MP Biomedicalsから購入した。
【0116】
1H NMRスペクトルを、Mercury 300分光計で記録した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、PSS SDVカラム500A、50A、およびリニアM(直列(in series))をTHF移動相(1ml/分)とポリスチレン標準とともに使用し、UV(Waters 486)およびRI(Waters 2410)の検出によって行った。レオロジー測定は、Physica Modular Compact 300 Rheometerを使用して行った。走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy)(SEM)測定は、LEICA 440を使用して行った。
【0117】
提供されるポリマーの膨張度(S.D.)は、1.0mLのPBS中の30mgの各MPEG−pDHA分子量(n=4)を、室温で水和することにより得た。ゲルを、過剰量のPBSを排水するための濾紙上におよそ4分間置いた。上記ゲルを秤量して膨張重量(Ws)を得、その後、凍結乾燥して再び秤量し、乾燥重量(Wd)を得た。S.D.を、方程式1を使用して計算した(Barbucci,R.,Rappuoli,R.,Borzacchiello,A.,Ambrosio,L.(2000)「Synthesis,chemical and rheological characterization of new hyaluronic acid−based hydrogels.」J Biomat Sci−Polym E 11,383−399):
S.D.(%)=(Ws/Wd)*100 (1) 。
【0118】
レオロジー試験を、並行平板配置(parallel plate geometry)(8mmの直径の並行平板)を使用し、Physica Modular Compact 300を使用して行った。データは、US200ソフトウェアを使用して記録し、Excel表計算ソフトを使用して分析した。全ての実験を、28℃および37℃で行った。ゲルの粘弾性特性を、1%の歪み振幅と0.1l/s〜100l/sの周波数範囲の振動モードで周波数掃引実験を行うことにより決定した。1%の歪みを用いた段階的歪み実験を行って、ゲルの応力緩和を決定した。
【0119】
絡み合い密度を、プラトー貯蔵弾性率Ge(最大G’、ここでは、G’/G’’>1)を使用して計算した(Rubinstein,M.,Colby,R.(2003)Polymer Physics(Oxford University Press,NYC);Macosko,C.W.(1994)Rheology:Principles,Measurements,and Applications(VCH Publishers,NYC)。方程式2を使用した:
Ge=νkT (2)
式中:
Geは、プラトーG’であり、
νは、絡み合い密度(m−3)であり、
kは、ボルツマン定数(kg.m2.s−2.K−1)であり、そして
Tは、温度(K)である。
【0120】
鎖緩和時間(τ)の計算は、(図10に示すような)小さい段階的歪み後の緩和弾性率(G(t))を計算することにより得た。方程式3を使用した(Rubinstein and Macosko,前出)。
【0121】
G(t)=G(τ)exp−t/τ (3)
式中:
G(t)は、緩和弾性率(Pa)であり、
G(τ)は、定数(Pa)であり、
tは、時間(秒)であり、そして
τは、鎖緩和時間(秒)である。
【0122】
方程式(3)を微分および再配置すると次のようになる:
【0123】
【化7】
方程式4を使用して、tG(t)対tのプロットから、鎖緩和時間(τ)であるt=τに最大があるプロットを得る。
【0124】
(実施例1)
(ポリマーの合成)
ポリ(MPEG−b−2−オキシプロピレンカーボネート)(VII)(MPEG−pDHA)を、以前に記載されたプロトコール(Zawaneh,前出)を使用して合成した。簡単に説明すると、ジヒドロキシアセトン二量体(II)を、オルトギ酸トリメチルp−トルエンスルホン酸を使用したそのC2カルボニル基のジメトキシアセタールへの転換により、その単量体形態に固定した(III)(図6参照)。次いで、これを6員の環式炭化水素に転換した(IV)。IVを、モノメトキシポリ(エチレングリコール)(MPEG)の存在下でSn(Oct)2を使用して重合させて、(VI)を形成させた。MPEGの分子量は5000に固定し、一方、DHAをベースとするポリマー鎖の分子量を、反応物供給比とSn(Oct)2注入条件に応じて変えた(3000、5000、7000、および10000の分子量を合成した)。続いてこのポリマーを、TFA−水混合物(4:1)を使用して脱保護して、所望されるポリマーMPEG−pDHA(VII)を生じさせた。ポリマーの脱保護に必要なTFA−水の量は、pDHAをベースとするセグメントの長さに依存する。表1は、各分子量を合成するために使用した重合条件をまとめる。反応スキームもまた図6に示す。MPEG−pDHA 1H NMR (DMSO−d6) δ:5.00 (s; 4H), 3.50 (s; 4H), 3.24 (s; 3H)
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
(ヒドロゲルの特性決定)
いくつかの実施形態においては、MPEG−pDHAヒドロゲルはチキソトロピー性であり、剪断速度が増大するに伴い粘性が低下する傾向を示す(図2a)。このチキソトロピー性の性質により、ヒドロゲルが、離れた部位での注射によってさえも(例えば、漿液腫に)送達することができる、押し出し成形が可能な物質を形成することが可能となる。pDHA鎖の長さの増大と、それに続く絡み合い密度の増大は、ヒドロゲルの粘性の増大をもたらす(図2a)。図2bは、狭口径の26G皮下注射針から押し出し成型した際のMPEG−pDHA 5000−5000の一例を説明する。28℃および37℃での粘性の測定の一式を図7に提供する。
【0127】
特定の実施形態においては、ヒドロゲルの絡み合い密度の制御は、その粘性と空隙率の制御に有用である。絡み合い密度は、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G’’)の測定(上記に詳細に記載したとおり)から計算し、これはまた、ゲルの弾性の性質に関する知見を提供する。図2cは、MPEG−pDHAヒドロゲル(5000−3000および5000−7000)について得られたような、典型的なG’およびG’’のグラフの一例である。G’値は、極めて低い周波数依存(frequency dependence)を示し、これは周波数範囲全体についてG’’値より大きく、弾性ヒドロゲルの特徴的な傾向である(Vermonden,T.,Besseling,N.A.M.,van Steenbergen,M.J.,Hennink,W.E.(2006)「Rheological studies of thermosensitive triblock copolymer hydrogels.」Langmuir 22,10180−10184;Nowak,A.P.,ら(2002)「Rapidly recovering hydrogel scaffolds from self−assembling diblock copolypeptide amphiphiles.」Nature 417,424−428)。G’値とG’’値もまた、pDHA鎖の長さおよび絡み合い密度の増大とともに増大する。G’およびG’’の測定の一式を、図8および図9に提供する。
【0128】
MPEG−pDHAの鎖緩和時間を、レオロジーデータから計算した。緩和の計算は、段階的歪み後のヒドロゲルの緩和速度の決定に役立つ。これにより、MPEG−pDHAヒドロゲル鎖が、漿液腫部位での注射後にそれらの平衡状態にまで緩和するのに要する時間の長さについての見解を得ることができる。迅速な緩和時間は、生体適合材料がその平衡状態に迅速に確実に戻ることを助け、それに続いて、インビボでの治療用ヒドロゲルの性能に影響を及ぼし得る変数の数を減らす。いくつかの実施形態においては、MPEG−pDHAゲルは、迅速な緩和時間(250秒〜350秒)を示し、これもまた、pDHA鎖の長さと絡み合い密度の増大に伴い増大する(表2参照)(Sahiner,N.,Singh,M.,De Kee,D.,John,V.T.,McPherson,G.L.(2006)「Rheological characterization of a charged cationic hydrogel network across the gelation boundary.」Polymer 47,1124−1131)。MPEG−pDHAヒドロゲル緩和時間を計算するために使用した方程式は、上記に示す。鎖緩和データの一式を、図10および表3に提供する。
【0129】
【表3】
(実施例2)
(インビトロでの加水分解)
インビトロでの分解実験を、MPEG−pDHA 5000−3000、5000−5000、および5000−7000について行った。ポリマー試料を20mgの試料になるように秤量し、1.5mLのエッペンドルフチューブ中の1.0mLのPBS(pH=7.4)の中に入れた。試料を、オービタルシェーカーの上に置き、37℃でインキュベートとした。試料を、選択した時点で各ポリマーについて回収した(n=3)。試料を回収し、DI水で洗浄し、凍結乾燥し、再度秤量した。完全に分解した試料由来の分解生成物を、1H NMRにより特性決定した。1H NMR (D2O) DHA δ:4.40 (s; 4H), 3.55 (s; 6H). 1H MPEG (D2O) DHA δ:3.70(s; 4H)
(実施例3)
(漿液腫に対する有効性(インビボ))
MPEG−pDHAのレオロジー特性および分解特性の決定後、本発明者らは、可能性のある外科的用途である術後の漿液腫の予防において、ヒドロゲルがどのように作用するかを評価した。十分に確立されているラットの乳腺切除モデルを使用して、MPEG−pDHAの有効性を決定し、これにより文献(Silverman、前出)と直接比較できるようにした。図4に示すように、未処置の対照は、2.28±0.55mLの漿液腫の平均容積を示し、一方、MPEG−pDHA 5000−3000で処置したラットは、0.044±0.017mL(p<0.01)の有意に低下した漿液腫の平均容積を示した。興味深いことに、MPEG−pDHA 5000−5000で処置したラット、およびMPEG−pDHA 5000−7000で処置したラットは、それぞれ、2.53±0.70(p=0.8)および1.93±0.60(p=0.2)漿液腫の平均容積を示した。これらは、未処置の対照動物と統計的に同等である。MPEG−pDHA 5000−3000で処置した動物の死体解剖実験は、隆起した皮膚のたるみと胸壁との間の肉眼的な線維素性癒着を明らかにし、一方、他の処置グループまたは対照グループにおいては癒着は明らかではなかった。ポリマーのインビボでの分解を、適用の7日後の創傷床から切除した組織の組織学的試験の際に、残っているポリマー(全ての3種類の組成物)が存在しないことにより確認した。手術の1日後は、MPEG−pDHAが残っていることが明らかであり(図12)、これは、インビボでの分解速度がインビトロで観察されるよりも遅いことを示唆していたが、3日目には、残っているポリマーは見られなかった(図13)。
【0130】
生体適合性に関しては、未処置の対照動物と等しく、正常に見える初期の肉芽組織と、軽度の炎症応答が存在した(図5)。これらの結果は、MPEG−pDHAとその分解生成物が、創傷床の周囲の柔組織により十分に寛容化され、正常な順序の初期の創傷の治癒にネガティブな影響を及ぼさないことを示唆する。
【0131】
(実験)
ポリマーゲルの有効性を評価するために、各MPEG−pDHAをベースとするゲルを、漿液腫の形成についての十分に確立されたラットモデルにおいて評価した(Lindsey,前出)。簡単に説明すると、中線切開後に、皮膚のたるみを右胸の上まで持ち上げ、主要な筋肉である右胸筋を露出させ、次にこれを切開した。次いで、右のリンパ節郭清を手術用顕微鏡下で行った。完全に水和したヒドロゲルを、100mgの凍結乾燥したMPEG−pDHA粉末を滅菌の生理食塩水と濾紙上で混合することによる完全な水和のために新しく調製した。実験用ラットに、0.5ccのMPEG−pDHAヒドロゲルを、閉鎖前の創傷床に投与し、一方、対照には、0.5ccの生理食塩水を、閉鎖前の創傷床に投与した。
【0132】
動物を、手術後7日目に、そのような研究について承認されている組織ガイドライン(institutional guideline)にしたがって、二酸化炭素での窒息、その後の頸椎脱臼により屠殺した。漿液を、18ゲージ針により経皮的に吸引し、容量分析により測定した。その後、この切開部位を開き、残っている漿液を全て、針からの吸引により除去した。ポリマーのインビボでの生体適合性を決定するために、皮膚のたるみと下層の創傷床の切片をひとまとめにして取り出し、適用した領域の中の残っているポリマーと炎症の証拠について組織学的に分析(H+E染色)した。不等分散を用いたスチューデント両側t検定(student two tail t−test)を行って、p値(α=0.05)を決定した。
【0133】
(実施例4)
漿液腫に対する有効性とポリマー構造との間を関係づけるために、本発明者らは、3つの機構による実験(three mechanism−oriented experiments)を行った。最初に、本発明者らは、水中でMPEG−pDHA 5000−3000をオリゴマー生成物に分解して、ポリマー分解生成物が漿液腫の予防における原因であるかどうかを解明した。図4に示すように、加水分解したMPEG−pDHAは効果がなく、このことは、漿液腫に対する活性には、全長のポリマーが、投与の際に必要であることを示唆している。第2に、MPEG−pDHAヒドロゲルを、2倍のモル過剰量のリジン(C2カルボニル基と比較して)の存在下で水和して、C2カルボニルの、組織中の第1級アミンとの反応性が、漿液腫に対する活性に必要であるかどうかを決定した。リジンを付加してC2カルボニル基を占有し、したがって、組織中のアミンとのC2反応性が活性に必要であれば、リジン水和型の処方物はほとんど活性がないはずであった。図4に示すように、リジン水和型の処方物は、低下した漿液腫の容積を示したが、この低下は統計学的には対照と同等であり、このことは、C2カルボニルの反応性が漿液腫の予防に関与していることを示唆していた。第3に、MPEG−pDHAが、組織一体化を促進するための凝固カスケードを開始したかどうかを決定するために、本発明者らは、プロトロンビン時間(PT)と部分トロンボプラスチン時間(PTT)に対するポリマーの効果を測定した。上記結果は、上記生体適合材料がPTおよびPTTに対しては効果がないことを示しており、このことは、凝固カスケードの活性が漿液腫の予防における要因ではないことを示唆している。提供されるコポリマーの止血効果を記載している実験を含むさらなる詳細は、Henderson,P.W.,ら(2009)「A rapidly resorbable hemostatic biomaterial based on dihydroxyacetone.」Journal of Biomedical Materials Research Part A.DOI:10.1002/jbm.a.32586)(その内容全体が引用により本明細書中に組み入れられる)により記載されている。
【0134】
本発明者らは、本発明の多数の実施形態を記載してきたが、本発明者らの基本的な実施例が、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態が提供されるように変更される場合があることは明らかである。したがって、本発明の範囲が、実施例によって示された特定の実施形態ではなく、添付の特許請求の範囲により定義されることが理解されるであろう。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、米国特許法§119(e)の下、2008年11月3日に出願された米国仮出願U.S.S.N.第61/110,734号(この全体の内容は、参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
政府の支援
本発明は、National Science Foundationによって付与された助成金CBET−0642509の下、米国政府の支援によってなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
漿液腫は術後の漿液の蓄積であり、今日の外科手術において最も一般的な合併症の1つである。漿液腫が臨床的問題となる場合には、従来型の創傷管理技術が一般的に適用される。漿液腫用のカテーテルまたはさらなるドレインの埋め込み、ならびに漿液腫のドレナージの繰り返しまたは連続的なドレナージが必要であり得る。そのような合併症は、患者に対して相当量の所得の喪失が生じ、さらには連続的なドレナージが必要なこれらの患者の援助や介護を行う必要のある保険会社および医師に、経費的負担が生じる。そのような合併症はまた創傷の治癒を遅らせ、これにはさらなる外科的処置が伴う場合があり、最終的には、仕事および日常的な機能的活動への患者の復帰を遅らせる。漿液腫の管理にはまたコストがかかり、さらに、医療従事者をさらなる注射針に曝すリスクと関連する結果も生じる可能性がある。
【0004】
漿液腫の形成を減少させるためのいくつかのアプローチが研究されている。手術技法(例えば、縫合糸で漿液腫の空洞を崩壊させること)によって、漿液腫の形成を確実に、そして適切に排除することはできない(Chilson,前出;非特許文献1;非特許文献2)。他の方法(例えば、硬化療法(Tekin,E.,Kocdor,M.A.,Saydam,S.,Bora,S.,Harmancioglu,O.(2001)「Seroma prevention by using Corynebacterium parvum in a rat mastectomy model.」Eur Surg Res 33,245−248;Rice,D.C.,ら(2000)「Intraoperative topical tetracycline sclerotherapy following mastectomy:A prospective,randomized trial.」J Surg Oncol 73,224−227)、圧迫包帯(O’hea,B.J.,Ho,M.N.,Petrek,J.A.(1999)「External compression dressing versus standard dressing after axillary lymphadenectomy.」Am J Surg 177,450−453)、および生物学的接着剤(biological adhesive)、特に、フィブリン糊(Lindsey,W.H.,Masterson,T.M.,Spotnitz,W.D.,Wilhelm,M.C.,Morgan,R.F.(1990)「Seroma prevention using fibrin glue in a rat mastectomy model.」Arch Surg 125,305−307;Harada,R.N.,Pressler,V.M.,McNamara,J.J.(1992)「Fibrin glue reduces seroma formation in the rat after mastectomy.」Surg Gynecol Obstet 175,450−454;Wang,J.Y.,ら(1996)「Seroma prevention in a rat mastectomy model:Use of a light−activated fibrin sealant.」Ann Plast Surg 37,400−405;Sanders,R.P.,ら(1996)「Effect of fibrinogen and thrombin concentrations on mastectomy seroma prevention.」J Surg Res 61,65−70;Carless,P.A.,Henry,D.A.(2006)「Systematic review and meta−analysis of the use of fibrin sealant to prevent seroma formation after breast cancer surgery.」Brit J Surg 93,810−819))は、漿液腫の形成の臨床所見を有意に低下させることはできない。漿液腫を扱う医師が利用できる有効な方法が現在は存在しないことが、漿液腫の予防または処置のための新規の方法の必要性を強調する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Odwyer,P.J.,O’Higgins,N.J.,James,A.G.;「Effect of closing dead space on incidence of seroma after mastectomy.」Surg Gynecol Obstet(1991)172,55〜56
【非特許文献2】Covency,E.C.,O’Dwyer,P.J.,Geraghty,J.G.,O’Higgins,N.J.「Effect of closing dead space on seroma formation after mastectomy − a prospective randomized clinical trial.」Eur J Sur Oncol(1993)19,143−146
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本開示は、ポリジヒドロキシアセトン(pDHA)の組成物、およびそれを使用する方法を提供する。いくつかの実施形態においては、提供される組成物は、pDHAのコポリマーである。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、漿液腫の処置および/または予防に有用である。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、手術後の組織の癒着の処置および/または予防に有用である。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、止血を達成するために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、凍結乾燥されたMPEG−pDHAゲルの走査電子顕微鏡写真(SEM)を示す。(a)5000−3000、(b)5000−5000、(c)5000−7000。pDHA鎖の長さが長ければ長いほど、ヒドロゲルの空隙率が低下する。
【図2】図2は、MPEG−pDHAについての特性評価データを示す。(a)粘性の読み取り値は、MPEG−pDHAヒドロゲルのチキソトロピー性を示す(1%の歪み、28oC)。(b)26G針から押し出し成形したMPEG−pDHA 5000−5000の一例。(c)MPEG−pDHAゲル上での周波数掃引実験により得たG’およびG’’の読み取り値(1%の歪み、28℃)。
【図3】図3は、MPEG−pDHAについてのさらなる特性評価データを示す。(a)水中でのMPEG−pDHAヒドロゲルの重量損失の速度論は、1日以内での100%の分解を示す。(b)D2O中の加水分解されたMPEG−pDHA生成物の1H NMRは、最終生成物がMPEGおよび単量体DHAであることを示す。
【図4】図4は、ラットの乳腺切除モデルによる漿液腫の容積を示す。未処置の対照は、2.28±0.55mLの漿液腫の平均容積(n=6)を示した。MPEG−pDHA 5000−3000で処置したラットは、0.044±0.017mLの漿液腫の平均容積(n=9、p<0.01)を示した。MPEG−pDHA 5000−5000で処置したラットは、2.53±0.70の漿液腫の平均容積(n=8)を示した。MPEG−pDHA 5000−7000で処置したラットは、1.93±0.60(n=8)の漿液腫の平均容積を有していた。加水分解とリジン処理の両方を行ったMPEG−pDHAでの処置は、未処置の対照と比較して漿液腫の容積において統計的に有意な低下を生じなかった(それぞれ、2.6±1.16、n=6、および1.41±0.63、n=6)。
【図5】図5は、7日目での手術部位の光学顕微鏡による外観を示す:(a)対照、(b)MPEG−pDHA 5000−3000、(c)MPEG−pDHA 5000−5000、および(d)MPEG−pDHA 5000−7000。切片は、手術部位に隣接する初期の肉芽組織を示す。全ての画像の最下部には透明な空間がある。H&E染色、100倍の倍率。
【図6】図6は、ポリ(MPEG−b−2−オキシプロピレンカーボネート)、MPEG−pDHA(VII)の合成経路を示す。(a)オルトギ酸トリメチル/p−トルエンスルホン酸、(b)クロロギ酸エチル/トリエチルアミン、(c)オクタン酸第一スズ/100℃、(d)トリフルオロ酢酸/H2O。命名:(I)DHA;(II)DHA二量体;(III)2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジオール;(IV)2,2−ジメトキシ−1,3−プロピレンカーボネート;(V)モノメトキシ−PEG(MPEG);(VI)ポリ(MPEG−b−2,2−ジメトキシ−1,3−プロピレンカーボネート);(VII)ポリ(MPEG−b−2−オキシプロピレンカーボネート)(pDHA)(Zawaneh,下記を参照)。Biomacromolecules 2006,7,3245−3251 Copyright 2006 American Chemical Societyによる認可を受けて複写した。
【図7】図7は、1%の歪みのMPEG−pDHAヒドロゲル上での周波数掃引実験を示す。(a)28℃、(b)37℃。これらの物質は、剪断速度が増大するに伴い粘性が低下する傾向(チキソトロピー性)を示す。温度の上昇は、ヒドロゲルの粘性に影響はない。
【図8】図8は、28℃および1%の歪みでの、MPEG−pDHAヒドロゲル上での周波数掃引実験を示す。(a)5000−3000、(b)5000−5000、(c)5000−7000。G’値は、周波数範囲全体にわたりG’’値より大きく、これは弾性ヒドロゲルに典型的な特徴である。G’値およびG’’値は、ゲルの絡み合い密度(entanglement density)を計算するために使用される。
【図9】図9は、37℃および1%の歪みでの、MPEG−pDHAゲル上での周波数掃引実験を示す。(a)5000−3000、(b)5000−5000、(c)5000−7000。G’値は、周波数範囲全体にわたりG’’値より大きく、これは弾性ヒドロゲルに典型的な特徴である。G’値およびG’’値は、ゲルの絡み合い密度を計算するために使用される。
【図10】図10は、1%の歪みのMPEG−pDHAゲル上での緩和弾性率G(t)の結果を示す。(a)28℃、(b)37℃。これらの結果は、ゲルの緩和速度論を計算するために使用される。
【図11】図11は、D2O*中の(a)MPEGおよび(b)DHAの1H NMRを示す。これらのスペクトルおよび図3bは、pDHAヒドロゲルの分解生成物がMPEGと単量体DHAであることを示す。
【図12】図12は、手術の24時間後の残留MPEG−pDHAを示している摘出腔の写真を示す。
【図13】図13は、手術の72時間後にMPEG−pDHAが存在しないことを示している摘出腔の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(定義)
本発明の化合物は、上記に一般的に記載されたもの、および本明細書中に開示されるクラス、サブクラス、および種によりさらに説明されるものを含む。本明細書中で使用される場合は、特に明記されない限り、以下の定義が適用されるものとする。本発明の目的のために、化学元素が、元素周期表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics,第75版に従って定義される。さらに、有機化学の一般的原理は、Organic Chemistry,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999、およびMarch’s Advanced Organic Chemistry,第5版:Smith,M.B.and March,J.編,John Wiley & Sons,New York:2001(これらの内容全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。
【0009】
用語「アシル」は、単独で、またはより大きな部分の一部として使用され、カルボン酸からヒドロキシ基を除去することにより形成される基をいう。このようなアシル基には、−C(=O)脂肪族、−C(=O)アリール、−C(=O)ヘテロ脂肪族、または−C(=O)ヘテロアリール基が含まれる。例示的なアシル基としては、−C(=O)Me、−C(=O)Et、−C(=O)i−Pr、および−C(=O)CH2Fが挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
用語「脂肪族」または「脂肪族基」は、本明細書中で使用される場合は、完全飽和であるかまたは1つまたは複数の不飽和の単位を含む直鎖(すなわち、非分枝)または分枝状の、置換または非置換の炭化水素鎖、あるいは、完全飽和であるかまたは1つまたは複数の不飽和の単位を含む単環式炭化水素または二環式炭化水素を意味するが、これらは芳香族ではなく、分子の残りの部分に対する連結点を1つ有する。特に明記されない限りは、脂肪族基は、1個〜6個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態においては、脂肪族基は1個〜5個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態においては、脂肪族基は1個〜4個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態においては、脂肪族基は1個〜3個の脂肪族炭素原子を含み、いくつかの実施形態においては、脂肪族基は1個〜2個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態においては、「脂環式」(または「炭素環」もしくは「シクロアルキル」)は、完全飽和であるかまたは1つまたは複数の不飽和の単位を含むが、芳香族ではなく、分子の残りの部分に対する連結点を1つ有する単環C3〜C6炭化水素をいう。適切な脂肪族基としては、直鎖または分枝状の、置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基、ならびにそれらのハイブリッド(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
用語「ヘテロ脂肪族」は、本明細書中で使用される場合は、1つまたは複数の炭素原子が、独立して、酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素からなる群より選択される1つまたは複数の原子で置換されている脂肪族基を意味する。特定の実施形態においては、1個〜6個の炭素原子が、1つまたは複数の酸素、硫黄、窒素、またはリンによって独立して置換されている。ヘテロ脂肪族基は、置換または非置換、分岐状または非分岐状、環状または非環状であり得、これには、飽和、不飽和、または部分不飽和である基が含まれる。
【0012】
用語「不飽和」は、本明細書中で使用される場合は、1つの部分が1つまたは複数の不飽和単位を有することを意味する。
【0013】
用語「アルキレン」は2価のアルキル基をいう。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、すなわち、−(CH2)n−であり、式中、nは、正の整数、好ましくは、1〜6、1〜4、1〜3、1〜2、または2〜3である。置換されたアルキレン鎖は、1つまたは複数のメチレン水素原子が置換基で置換されているポリメチレン基である。適切な置換基としては、置換された脂肪族基について以下に記載される置換基が挙げられる。
【0014】
用語「アリール」は、単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」または「アリールオキシアルキル」などの、より大きな部分の一部として使用され、全部で5個〜14個の環メンバーを有している単環式および二環式環系をいい、ここでは、上記系の中の少なくとも1つの環は芳香族であり、上記系の中の各環は3個〜7個の環メンバーを含む。用語「アリール」は、用語「アリール環」と互換的に使用され得る。
【0015】
用語「アリール」は、単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」または「アリールオキシアルキル」などの、より大きな部分の一部として使用され、全部で5個〜10個の環メンバーを有している単環および二環式環系をいい、ここでは、上記系の中の少なくとも1つの環は芳香族であり、上記系の中の各環は、3個〜7個の環メンバーを含む。用語「アリール」は、用語「アリール環」と互換的に使用され得る。本発明の特定の実施形態においては、「アリール」は、1つまたは複数の置換基を有し得る芳香族環系をいい、これには、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシルなどが含まれるが、これらに限定されない。用語「アリール」の範囲には、これが本明細書で使用される場合は、インダニル、フタルイミジル、ナフトイミジル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロナフチルなどのように、芳香環が、1つまたは複数の非芳香環に縮合されている基も含まれる。
【0016】
用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアル−(heteroar−)」は、単独で、またはより大きな部分の一部として、例えば、「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアラルコキシ」として使用され、5個〜10個の環原子、好ましくは5個、6個、または9個の環原子を有しており、6個、10個、または14個の環状の配置の中で共有されるπ電子を有しており、炭素原子に加えて1個〜5個のへテロ原子を有している基をいう。用語「へテロ原子」は、窒素、酸素、または硫黄をいい、窒素または硫黄の任意の酸化された形態、および塩基性窒素の任意の四級化された形態を含む。ヘテロアリール基としては、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、およびプテリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアル−」は、本明細書中で使用される場合は、ヘテロ芳香族環には、1つまたは複数のアリール、脂環式、またはヘテロシクリル環に縮合されている(そのラジカルまたは連結点はヘテロ芳香族環上にある)基もまた含まれる。限定ではない例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H−キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[2,3−b]−1,4−オキサジン−3(4H)−オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環または二環であり得る。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」、または「ヘテロ芳香族」と互換的に使用され得、これらの用語のいずれにも、必要に応じて置換された環が含まれる。用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリールで置換されたアルキル基をいい、ここでは、上記アルキル部分およびヘテロアリール部分は、独立して、必要に応じて置換されている。
【0017】
本明細書中で使用される場合は、用語「ヘテロ環(heterocycle)」、「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」、「複素環ラジカル(heterocyclic radical)」、および「複素環(heterocyclic ring)」は、互換的に使用され、飽和または部分不飽和のいずれかであり、炭素原子に加えて上記で定義されたような1つまたは複数、好ましくは1個〜4個のへテロ原子を有している安定な5員〜7員の単環または7員〜10員の二環の複素環部分をいう。ヘテロ環の環原子を言及するために使用される場合は、用語「窒素」には、置換された窒素が含まれる。一例として、酸素、硫黄、または窒素より選択される0個〜3個のへテロ原子を有している飽和環または部分不飽和環において、窒素は、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルなど)、NH(ピロリジニルなど)、または+NR(N−置換ピロリジニルなど)であり得る。
【0018】
複素環は、そのペンダント基に、安定な構造をもたらす任意のへテロ原子または炭素原子の位置で連結することができ、いずれの環原子も、必要に応じて置換することができる。このような飽和複素環ラジカルまたは部分不飽和の複素環ラジカルの例としては、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニルピロリジニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル、およびキヌクリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環基」、「複素環部分」および「複素環ラジカル」は、本明細書中では互換的に使用され、インドリニル、3H−インドリル、クロマニル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロキノリニルのように、ヘテロシクリル環に、1つまたは複数のアリール環、ヘテロアリール環または脂環式環に縮合されている(ラジカルまたは連結点はヘテロシクリル環上にある)基も含まれる。ヘテロシクリル基は、単環または二環であり得る。用語「ヘテロシクリルアルキル」は、ヘテロシクリルで置換されたアルキル基をいい、ここでは、アルキル部分およびヘテロシクリル部分は、必要に応じて独立して置換されている。
【0019】
本明細書中で使用される場合は、用語「部分不飽和」は、少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む環部分をいう。用語「部分不飽和」は、複数の不飽和部位を有している環を含むように意図されるが、本明細書中で定義される場合には、アリール部分またはヘテロアリール部分を含むようには意図されない。
【0020】
本明細中で記載される場合は、本発明の化合物は、「必要に応じて置換された」部分を含むことができる。一般的に、用語「置換された」は、用語「必要に応じて」が前にあるかどうかにかかわらず、指定された部分の1つまたは複数の水素が、適切な置換基で置換されていることを意味する。特に明記されない限りは、「必要に応じて置換された」基、は、その基のそれぞれ置換可能な位置に適切な置換基を有することができ、任意の与えられた構造の中の2つ以上の位置が、特定された基から選択される2つ以上の置換基で置換され得る場合は、その置換基は、それぞれの位置ごとに同じであってもまたは異なってもよい。本発明で想定される置換基の組合せは、好ましくは、安定な、または化学的に実行可能な化合物の形成をもたらす組合せである。用語「安定」は、本明細書中で使用される場合は、それらの生成、検出、および、いくつかの実施形態においては、それらの回収、精製、および本明細書に開示される1つまたは複数の目的のための使用を可能にする条件にさらした場合に、実質的に変化しない化合物をいう。
【0021】
「必要に応じて置換された」基の置換可能な炭素原子上の適切な一価の置換基は、独立して、ハロゲン;−(CH2)0〜4R○;−(CH2)0〜4OR○;−O−(CH2)0〜4C(O)OR○;−(CH2)0〜4CH(OR○)2;−(CH2)0〜4SR○;R○で置換することができる−(CH2)0〜4Ph;R○で置換することができる−(CH2)0〜4O(CH2)0〜1Ph;R○で置換することができる−CH=CHPh;−NO2;−CN;−N3;−(CH2)0〜4N(R○)2:−(CH2)0〜4N(R○)C(O)R○;−N(R○)C(S)R○;−(CH2)0〜4N(R○)C(O)NR○2;−N(R○)C(S)NR○2;−(CH2)0〜4N(R○)C(O)OR○;−N(R○)N(R○)C(O)R○;−N(R○)N(R○)C(O)NR○2;−N(R○)N(R○)C(O)OR○;−(CH2)0〜4C(O)R○;−C(S)R○;−(CH2)0〜4C(O)OR○;−(CH2)0〜4C(O)N(R○)2;−(CH2)0〜4C(O)SR○;−(CH2)0〜4C(O)OSiR○3;−(CH2)0〜4OC(O)R○;−OC(O)(CH2)0〜4SR−;SC(S)SR○;−(CH2)0〜4SC(O)R○;−(CH2)0〜4C(O)NR○2;−C(S)NR○2;−C(S)SR○;−SC(S)SR○;−(CH2)0〜4OC(O)NR○2;−C(O)N(OR○)R○;−C(O)C(O)R○;−C(O)CH2C(O)R○;−C(NOR○)R○;−(CH2)0〜4SSR○;−(CH2)0〜4S(O)2R○;−(CH2)0〜4S(O)2OR○;−(CH2)0〜4OS(O)2R○;−S(O)2NR○2;−(CH2)0〜4S(O)R○;−N(R○)S(O)2R○2;−N(R○)S(O)2R○;−N(OR○)R○;−C(NH)NR○2;−P(O)2R○;−P(O)R○2;−OP(O)R○2;−OP(O)(OR○)2;SiR○3;−(C1〜4直鎖または分枝状アルキレン)O−N(R○)2;または−(C1〜4直鎖または分枝状アルキレン)C(O)O−N(R○)2であり、式中、R○は、それぞれ、以下で定義されるように置換することができ、独立して、水素、C1〜8脂肪族、−CH2Ph、−O(CH2)0〜1Ph、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜4個のヘテロ原子を有している5員〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環であり、あるいは上記定義にかかわらず、独立して出現する2つのR○は、それらの間にある原子(単数または複数)と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0個〜4個のへテロ原子を有している、3員〜12員の飽和、部分不飽和、またはアリールの単環式または多環式環を形成し、これらは以下で定義されるように置換され得る。
【0022】
R○(または、独立して出現する2つのR○をそれらの間にある原子と一緒にして形成される環)上の適切な一価の置換基は、独立して、ハロゲン、−(CH2)0〜2R●;−(ハロR●);−(CH2)0〜2OH;−(CH2)0〜2OR●;−(CH2)0〜2CH(OR●)2;−O(ハロR●);−CN;−N3;−(CH2)0〜2C(O)R●;−(CH2)0〜2C(O)OH;−(CH2)0〜2C(O)OR●;−(CH2)0〜4C(O)N(R○)2;−(CH2)0〜2SR●;−(CH2)0〜2SH;−(CH2)0〜2NH2;−(CH2)0〜2NHR●;−(CH2)0〜2NR●2;−NO2;−SiR●3;−OSiR●3;−C(O)SR●;−(C1〜4直鎖または分枝状アルキレン)C(O)OR●;または−SSR●であり、式中、R●は、それぞれ、非置換であるか、あるいは「ハロ」が前に付いている場合は、1つまたは複数のハロゲンのみで置換されており、C1〜4脂肪族、−CH2Ph、−O(CH2)0〜1Ph、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜4個のへテロ原子を有している5員〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環より独立して選択される。R○の飽和炭素原子上の適切な二価の置換基としては、=Oおよび=Sが挙げられる。
【0023】
「必要に応じて置換された」基の飽和炭素原子上の適切な二価の置換基としては、以下が挙げられる:=O、=S、=NNR*2、=NNHC(O)R*、=NNHC(O)OR*、=NNHS(O)2R*、=NR*、=NOR*、−O(C(R*2))2〜3O−、または−S(C(R*2))2〜3S−。式中、R*は、それぞれの出現のたびに、独立して、水素、以下で定義されるように置換することができるC1〜6脂肪族、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜4個のへテロ原子を有している非置換の5員〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環より選択される。「必要に応じて置換された」基の近接の置換可能な隣接炭素に結合された適切な二価の置換基としては、−O(CR*2)2〜3O−が挙げられ、式中、R*は、出現するたびに独立して、水素、以下で定義されるように置換することができるC1〜6脂肪族、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0個〜4個のへテロ原子を有している非置換の5員〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環が挙げられる。
【0024】
R*の脂肪族基上の適切な置換基としては、ハロゲン、−R●、−(ハロR●)、−OH、−OR●、−O(ハロR●)、−CN、−C(O)OH、−C(O)OR●、−NH2、−NHR●、−NR●2、または−NO2が挙げられ、式中、R●は、それぞれ、非置換であるか、あるいは「ハロ」が前に付いている場合は、1つまたは複数のハロゲンのみで置換され、そして独立して、C1〜4脂肪族、−CH2Ph、−O(CH2)0〜1Ph、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0個〜4個のへテロ原子を有している5員〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環である。
【0025】
「必要に応じて置換された」基の置換可能な窒素についての適切な置換基としては、−R†、−NR†2、−C(O)R†、−C(O)OR†、−C(O)C(O)R†、−C(O)CH2C(O)R†、−S(O)2R†、−S(O)2NR†2、−C(S)NR†2、−C(NH)NR†2、または−N(R†)S(O)2R†が挙げられ、式中、R†は、それぞれ独立して、水素、以下で定義されるように置換することができるC1〜6脂肪族、非置換の−OPh、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0個〜4個のへテロ原子を有している非置換の5員〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環であり、あるいは上記定義にかかわらず、独立して出現する2つのR†は、それらの間にある原子(単数または複数)と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0個〜4個のヘテロ原子を有している非置換の3員〜12員の飽和、部分不飽和、またはアリールの単環式環もしくは二環式環を形成する。
【0026】
R†の脂肪族基についての適切な置換基は、独立して、ハロゲン、−R●、−(ハロR●)、−OH、−OR●、−O(ハロR●)、−CN、−C(O)OH、−C(O)OR●、−NH2、−NHR●、−NR●2、または−NO2であり、式中、R●は、それぞれ、非置換であるか、あるいは「ハロ」が前に付いている場合は、1つまたは複数のハロゲンのみで置換され、独立して、C1〜4脂肪族、−CH2Ph、−O(CH2)0〜1Ph、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0個〜4個のへテロ原子を有している5員〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環である。
【0027】
用語「炭水化物」は、糖または糖のポリマーをいう。用語「糖」、「多糖」、「炭水化物」、および「オリゴ糖」は、互換的に使用され得る。ほとんどの炭水化物は、多くのヒドロキシル基、通常は、分子の各炭素原子上に1つのヒドロキシル基を持つ、アルデヒドまたはケトンである。炭水化物は、一般的に、分子式CnH2nOnを有する。炭水化物は、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、または多糖であり得る。最も基本的な炭水化物は、単糖(例えば、グルコース、スクロース、ガラクトース、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース、およびフルクトース)である。二糖は、2つの結合した単糖である。例示的な二糖としては、スクロース、マルトース、セロビオース、およびラクトースが挙げられる。典型的には、オリゴ糖は、3個〜6個の単糖単位を含み(例えば、ラフィノース、スタキオース)、多糖は、6個以上の単糖単位を含む。例示的な多糖としては、デンプン、グリコーゲン、およびセルロースが挙げられる。炭水化物には、修飾された糖単位(例えば、2’−デオキシリボース(ここでは、ヒドロキシル基が除去されている)、2’−フルオロリボース(ここでは、ヒドロキシル基がフッ素で置換されている)、またはN−アセチルグルコサミン、グルコースの窒素含有形態(例えば、2’−フルオロリボース、デオキシリボース、およびヘキソース)が含まれ得る。炭水化物は、多くの様々な形態(例えば、配座異性体、環状形態、非環式形態、立体異性体、互変異性体、アノマー、および異性体)で存在し得る。
【0028】
用語「ポリペプチド」は、一般的に言うと、ペプチド結合により互いに連結された、ひと続きの少なくとも2つのアミノ酸である。いくつかの実施形態においては、ポリペプチドは、少なくとも3個〜5個のアミノ酸を含み、各アミノ酸は、少なくとも1つのペプチド結合により互いに連結されている。当業者は、ポリペプチドに、「非天然」アミノ酸、または必要に応じて、それにもかかわらずポリペプチド鎖に組み込むことができる他の構成要素が含まれる場合があることを理解するであろう。用語「ペプチド」は、一般的には、約100個未満のアミノ酸の長さを有しているポリペプチドのことについていうために使用される。
【0029】
本明細書中で使用される場合は、表現「非天然アミノ酸」は、タンパク質中に自然界に存在している20種類のアミノ酸のリストに含まれないアミノ酸をいう。そのようなアミノ酸としては、20種類の自然界に存在しているアミノ酸の全てのD異性体が挙げられる。非天然アミノ酸にはまた、ホモセリン、オルニチン、ノルロイシン、およびサイロキシンも含まれる。他の非天然アミノ酸側鎖は当業者に周知であり、これには、非天然脂肪族側鎖が含まれる。他の非天然アミノ酸としては、修飾されたアミノ酸が挙げられ、これには、N−アルキル化、環化、リン酸化、アセチル化、アミド化、アジジル化(azidylated)、標識化されたものなどが含まれる。いくつかの実施形態においては、非天然アミノ酸は、D異性体である。いくつかの実施形態においては、非天然アミノ酸は、L異性体である。
【0030】
本明細書中で使用される場合は、用語「タンパク質」は、ポリペプチド(すなわち、ペプチド結合により互いに連結されたひと続きの少なくとも2つのアミノ酸)をいう。タンパク質は、アミノ酸以外の部分を含み得(例えば、糖タンパク質、プロテオグリカンなどであり得る)、そして/または別の方法でプロセシングされる場合も、また、修飾される場合もある。当業者は、「タンパク質」が、細胞により産生されるような(シグナル配列を持つかまたはシグナル配列を持たない)完全なポリペプチド鎖であり得、また、その特徴的な部分でもあり得ることを理解するであろう。当業者は、タンパク質が、(例えば、1つまたは複数のジスルフィド結合により連結されたか、または他の手段により結合された)2つ以上のポリペプチド鎖を含む場合があり得ることを理解するであろう。ポリペプチドは、L−アミノ酸、D−アミノ酸、またはこれらの両方を含み得、そして当該分野で公知のあらゆる様々なアミノ酸の変異体または類似体を含み得る。有用な変異体としては、例えば、末端アセチル化、アミド化などが挙げられる。いくつかの実施形態においては、タンパク質は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、合成アミノ酸、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0031】
用語「適切な有機基(organic group)」は、本明細書中で使用される場合は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、ヘテロアリール、またはアシル基をいう。
【0032】
本明細書中で使用される場合は、用語「ポリオール」は、複数のヒドロキシル官能基を持つ化合物をいう。いくつかの実施形態においては、ポリオールは、ジオール、トリオール、またはテトロールである。いくつかの実施形態においては、ポリオールはアルキレングリコールである。いくつかの実施形態においては、ポリオールは、アルキレントリオールである。
【0033】
本明細書では、用語「ヒドロゲル」は、ポリマー材料であり、典型的には、水中で膨潤するか、または水で膨潤するようになり得るポリマー鎖のネットワークまたはマトリックスをいう。水ですでに膨張したかまたは部分的に膨張したそのようなポリマー材料もまた、ヒドロゲルと呼ぶことができる。ヒドロゲルネットワークまたはマトリックスは、架橋されている場合も、また、架橋されていない場合もあり、架橋された材料は、物理的に架橋されている場合も、および/または、化学的に架橋されている場合もある。ヒドロゲルにはまた、水で膨張することができるポリマー材料および/または水で膨張したポリマー材料も含まれる。ヒドロゲルは、様々な水和状態で存在し得る。いくつかの実施形態においては、ヒドロゲルは水和されていない。いくつかの実施形態においては、ヒドロゲルは部分的に水和されている。いくつかの実施形態においては、ヒドロゲルは完全に水和されている。特定の実施形態においては、ヒドロゲルは、水で膨張したものであると記載され得る。特定の実施形態においては、ヒドロゲルは、水で膨張することができるものであると記載され得る。
【0034】
本明細書中で使用される場合は、用語「漿液腫」は、創傷床(wound bed)または手術部位の中での漿液血漿の蓄積をいう。漿液腫は感染し得るか、または感染した組織を含み得るが、漿液腫が、白血球、細菌、および両方の分解生成物の存在と必ずしも関係があるわけではない。
【0035】
本明細書中で使用される場合は、用語「止血」は、(組織の、もしくは組織中の)出血を止めるまたは減少させる作用をいう。組織は、任意の生物学的組織であり得る。いくつかの実施形態においては、組織は生存している動物組織である。いくつかの実施形態においては、組織は、創傷床の中および/またはその周囲にある。いくつかの実施形態においては、組織は、手術部位の中および/またはその周囲にある。
【0036】
本明細書中で使用される場合は、用語「手術部位」は、手術の間または手術後に、実際のまたは意図された手術操作に隣接する、手術を受ける患者の組織をいう。いくつかの実施形態においては、手術部位は、手術が行われているかまたは手術が行われた皮膚の表面の位置である。手術部位には、手術による切開が意図される部位、ならびに皮膚の創傷部位(例えば、ものによる刺創(puncture wounds by objects))が含まれる。いくつかの実施形態においては、手術部位には、手術部位のすぐ近くから、手術部位から約30cmまでの周辺部が含まれる。いくつかの実施形態においては、手術部位には、手術部位から約3cm〜約30cmまでの周辺部が含まれる。
【0037】
用語「切開」または「外科的切開」は、患者の皮膚の表皮層または真皮層より深い範囲に及ぶ任意の外科的な穿通をいい、これには、例えば、針、ナイフ(外科用メスおよび電気メスを含む)、医療用レーザー、トロカール、およびに穿刺(例えば、静脈内注射、輸血/献血、予防接種、医学的注射(medicament injections)、血液透析などにより生じる穿刺)により作られた切開または穿刺が含まれる。
【0038】
用語「創傷」は、あらゆる創傷またはけがをいい、これには、外科手術による創傷、および偶発的な創傷もしくは外傷による創傷(例えば、複雑骨折、銃創、刺し傷、ペレット弾による傷、汚染創または感染創)が含まれる。用語「創傷床」は、「創傷」と互換的に使用され得る。いくつかの実施形態においては、創傷には、創傷のすぐ近くから、創傷から約30cmまでに及ぶ周辺部が含まれる。いくつかの実施形態においては、創傷には、創傷から約3cm〜約30cmまでの周辺部が含まれる。
【0039】
本明細書中で使用される場合は、用語「被検体」または「患者」は、例えば、実験目的、診断目的、予防目的、および/または治療目的のために本発明の組成物が投与され得る任意の生命体をいう。典型的な被検体としては、動物(例えば、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、ヒト以外の霊長類、およびヒト)が挙げられる。
【0040】
疾患、障害、および/または症状に「罹患している」個体は、疾患、障害、および/もしくは症状の1つまたは複数の症候があると診断されているか、あるいはそれらを示す。
【0041】
疾患、障害、および/または症状に「なりやすい」個体は、疾患、障害、および/または症状を有するとは診断されていない。いくつかの実施形態においては、疾患、障害、および/または症状になりやすい個体は、疾患、障害、および/または症状の症候を示さない場合がある。いくつかの実施形態においては、疾患、障害、および/または症状になりやすい個体は、疾患、障害、および/または症状を発症するであろう。いくつかの実施形態においては、疾患、障害、および/または症状になりやすい個体は、疾患、障害、および/または症状を発症しないであろう。いくつかの実施形態においては、疾患、障害、および/または症状になりやすい個体は、一般的な集団において観察されるよりも、(典型的には、遺伝的素因、環境要因、病歴、またはそれらの組み合わせに基づいて)特定の疾患もしくは障害、またはその症候を発症するより高いリスクを有している個体である。
【0042】
用語「処置」は、本明細書中では、(1)疾患、障害、および/もしくは症状の発症を遅らせるかまたは予防する;(2)疾患、障害、および/もしくは症状の1つまたは複数の症候の進行、重症化、または悪化を遅くするかまたは停止する;(3)疾患、障害、および/または症状の症候の改善をもたらす;(4)疾患、障害、および/もしくは症状の重篤度または発症率を低下させる;ならびに/あるいは、(5)疾患、障害、および/もしくは症状を治癒することを目的とする方法あるいはプロセスを特性決定するために使用される。処置は、予防または防止作用のために、疾患、障害、および/もしくは症状の発症前に投与され得る。あるいは、または加えて、処置は、治療作用のために、疾患、障害、および/または症状の開始後に投与され得る。
【0043】
用語「緩和」は、疾患の症候および/または治療レジュメの副作用を、治癒するのではなく和らげることに焦点を当てた処置をいう。
【0044】
本明細書中および特許請求の範囲の中で使用される場合は、単数形「a」、「an」、および「the」は、その文脈が明らかにそうでないこと示さない限りは、複数の言及を含む。したがって、例えば、「化合物」との言及は、複数のそのような化合物を含む。同様に、「ポリマー」との言及は、複数のそのようなポリマーを含む。
【0045】
表現「薬学的に許容される」は、本明細書中では、合理的な利点/リスク比に見合う、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴うことなくヒトおよび動物の組織と接触させる使用に適している、適正な医学的判断の範囲である、そのような化合物、材料、組成物、および/または投薬形態をいうように使用される。
【0046】
表現「薬学的に許容される担体」は、本明細書中で使用される場合は、本発明の物質の保持または輸送に関係している、薬学的に許容される物質、組成物、または媒体(例えば、液体もしくは固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、または溶媒、カプセル化材料)を意味する。個々の担体は、本発明の化合物および処方物の他の成分と適合するとの意味で「許容され」なければならず、患者にとって有害であってはならない。薬学的に許容される担体となり得る物質のいくつかの例としては以下が挙げられる:糖(例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース);デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、およびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース);粉末状トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、ココアバター、および坐剤用ワックス);油(例えば、ピーナッツ油、菜種油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油);グリコール(例えば、プロピレングリコール);ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール);エステル(例えば、オレイン酸エチル、およびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質が含まれていない水;等張性生理食塩水;Ringer溶液;エチルアルコール;pH緩衝化溶液;ポリエステル、ポリカーボネート、および/またはポリ無水物;ならびに、薬学的処方物において使用される他の毒性がない適合性の物質。
【0047】
(特定の実施形態の詳細な説明)
高分子生体適合材料(Polymeric biomaterials)は、過去数十年間にわたり、医学および外科診療の進歩に有意に貢献してきた。それらの巨大分子構造は、医学的および外科的用途の範囲に必要な化学的、物理的、および生物学的特性の適切な組み合わせをもたらすように合わせることができる。高分子生体適合材料の合理的設計は、薬物および遺伝子送達、整形外科、再生医療、眼科、および一般外科手術を含む多くの分野に影響を与えている(Langer,R.,Tirrell,D.A.(2004)「Designing materials for biology and medicine.」Nature 428,487−492;Putnam,D.(2006)「Polymers for gene delivery across length scales.」Nature Materials 5,439−451;Wong,S.Y.,Pelet,J.M.,Putnam,D.(2007)「Polymer systems for gene delivery−past,present,and future.」Prog Polym Sci 32,799−837)。
【0048】
本開示は、高分子生体適合材料が創傷および術後の手術部位の処置に有用である可能性があることの認識を含む。出願人らの認識について、漿液腫の予防のための合成の生体適合材料について公開しているものは2つしか存在しない。Silvermanらは、ラットの乳腺切除モデルにおいて漿液腫を効果的に減少させた光重合型の材料を報告したが、この研究についての追跡調査は報告されていない(Silverman,R.P.,ら(1999)「Transdermal photopolymerized adhesive for seroma prevention.」Plast Reconstr Surg 103,531−535)。Rubinと共同研究者らは、イヌの漿液腫モデルにおいて有効性を示すウレタン系の材料を開発した。しかし、その結果が期待できるにもかかわらず、この材料には長い硬化時間が必要であり、極めてゆっくりしか分解しないと見られる(Gilbert,T.ら(2008)「Lysine−derived urethane surgical adhesive prevents seroma formation in a canine abdominoplasty model.」Plast.Reconstr.Surg 122,95−102)。漿液腫が患者に相当の死亡率を生じると考えると、これらがバイオマテリアル学会から大きく注目されてこなかったことは興味深い。
【0049】
本開示は、中でも、生体適合性であり、取り扱いおよび適用が容易であり、そして術後の症状および/または合併症の処置に有用である、調節可能な生理化学的特性を持つ新規の外科用生体適合材料を提供する。そのような材料は、コポリマーを含有し、上記コポリマーの物理的およびレオロジー特性は、その構成ブロックの長さを調節することにより細かく調整することができる。特定の実施形態においては、提供される外科用の生体適合材料は、漿液腫、組織癒着、および/または出血の処置に有用である。
【0050】
出願人らは、モノメトキシポリ(エチレングリコール)(MPEG)ブロックと、代謝中間体であるジヒドロキシアセトン(DHA)をベースとするポリカーボネート(pDHA)ブロックとからなる、ジブロックコポリマーMPEG−pDHAの合成の成功ならびに特徴を以前に記載した。Zawaneh,P.N.、Doody,A.M.、Zelikin,A.N.、Putnam,D.(2006)「Diblock copolymers based on dihydroxyacetone and ethylene glycol:Synthesis,characterization,and nanoparticle formulation.」Biomacromolecules 7,3245−3251;および米国特許出願公開番号2008−0194786(これらのそれぞれの内容全体が引用により本明細書中に組み入れられる)を参照のこと。
【0051】
pDHAコポリマーを用いた次の作業により、このようなコポリマーが医学的に有用な特性を有していることを明らかにした。さらに、出願人らは、予想外に、高濃度で、pDHAコポリマーが物理的に架橋されたヒドロゲルを形成し、これが物理的に架橋されていない非ヒドロゲル組成物とは異なる特性を持つことを見出した。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーはチキソトロピー性である。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、迅速な鎖緩和を示す。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは高い空隙率を有する。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、高い水分含量を有する。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは注射可能である。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは粉末である。
【0052】
出願人らは、提供されるコポリマーの濃度および組成を制御することにより、物理的に架橋されたヒドロゲルが形成されることを見出した。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、本明細書中に記載されるような使用について望ましい特徴(例えば、物理的架橋を形成する物理的にもつれた状態のネットワーク)を有する。いくつかの実施形態においては、そのような特徴は、提供されるコポリマーが低濃度である場合には存在しない。いくつかの実施形態においては、ヒドロゲルの形成のような特徴は、提供されるコポリマーが高濃度である場合に存在する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、低濃度でナノ粒子を形成する。
【0053】
いくつかの実施形態においては、本開示は、提供されるヒドロゲル組成物を作製する方法を提供する。
【0054】
特定の実施形態においては、本開示は、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)を含有するコポリマーを提供する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、pDHAのブロックコポリマーである。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、pDHAのジブロックコポリマー(diblock copolymer)である。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、pDHAのトリブロックコポリマー(triblock copolymer)である。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、pDHAのクオードブロックコポリマー(quadblock copolymer)である。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、pDHAのマルチブロックコポリマー(multiblock copolymer)である。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、DHAおよび少なくとも1種類の他の単量体を含有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、DHAとグリセロールを含有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、DHAとアルキレングリコールを含有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、DHAとPEGを含有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、PEG−pDHAジブロックコポリマーである。いくつかの実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(MPEG−b−2−オキシプロピレンカーボネート)である。
【0055】
いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、DHAとポリオールを含有する。いくつかの実施形態においては、ポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール(すなわち、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、または1,3−プロパンジオールを含有するポリマー)、ブチレングリコール(すなわち、1,2−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、または1,4−ブタンジオールを含有するポリマー)、および炭水化物からなる群より選択される。いくつかの実施形態においては、炭水化物ポリオールは、環状の糖である。いくつかの実施形態においては、炭水化物ポリオールは、水素化された糖アルコールである。
【0056】
いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、適切な有機基で終わる。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのアルキレングリコールブロックは、適切な有機基で終わる。いくつかの実施形態においては、適切な有機基は、脂肪族、アシル、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールである。いくつかの実施形態においては、適切な有機基は、炭水化物、タンパク質、またはペプチドである。
【0057】
いくつかの実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ブロックコポリマーである。いくつかの実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ランダムコポリマーである。
【0058】
いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、DHA、グリセロール、およびPEGを含有する。いくつかの実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、PEGの第1のブロックと、DHAおよびグリセロールを含有する第2のブロックを含有する。いくつかの実施形態においては、DHAおよびグリセロールを含有する第2のブロックは、ブロックコポリマーである。いくつかの実施形態においては、DHAおよびグリセロールを含有する第2のブロックは、ランダムコポリマーである。
【0059】
特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)−pDHAジブロックコポリマーである。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(エチレングリコール)−pDHAジブロックコポリマーである。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(プロピレングリコール)−pDHAジブロックコポリマーである。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(グリセロール)−pDHAジブロックコポリマーである。
【0060】
特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのポリ(アルキレン−グリコール)ブロックは線状である。他の実施形態においては、提供されるコポリマーのポリ(アルキレン−グリコール)ブロックは分岐状である。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのPEGブロックは分岐状である。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのPEGブロックは、comb PEGである。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのPEGブロックは、star PEGである。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる3〜200のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる3〜100のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる3〜50のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる3〜40のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる3〜30のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる3〜20のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる10のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる9のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる8のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる7のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる6のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる5のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる4のPEG鎖を含有する。いくつかの実施形態においては、分岐状のPEGブロックは、中心のコア基から生じる3のPEG鎖を含有する。
【0061】
特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約100ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約1,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約10,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約100,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約100ダルトン〜約100,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約100ダルトン〜約50,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約100ダルトン〜約10,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約1,000ダルトン〜約50,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約1,000ダルトン〜約10,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約1,000ダルトン〜約5,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約2,000ダルトン〜約5,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約2,000ダルトン〜約4,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約2,500ダルトン〜約4,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約2,500ダルトン〜約3,500ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーのpDHAブロックは、約3,000ダルトンのMwを有する。
【0062】
特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約100ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約1,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約10,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約100,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約100ダルトン〜約100,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約100ダルトン〜約50,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約100ダルトン〜約10,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約1,000ダルトン〜約50,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約1,000ダルトン〜約10,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約1,000ダルトン〜約5,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約2,000ダルトン〜約5,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約3,000ダルトン〜約6,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約2,500ダルトン〜約4,000ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約2,500ダルトン〜約3,500ダルトンのMwを有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーの非DHAポリオールブロックは、約5,000ダルトンのMwを有する。
【0063】
特定の実施形態においては、提供されるコポリマーはヒドロゲルである。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、架橋されていない。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは架橋されている。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、剪断速度の増大に伴い粘性が低下する特性を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるヒドロゲルは、約100%〜約2,000%の重量増加膨張率を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるヒドロゲルは、約200%〜約1,000%の重量増加膨張率を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるヒドロゲルは、約200%〜約800%の重量増加膨張率を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるヒドロゲルは、約300%〜約700%の重量増加膨張率を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるヒドロゲルは、約400%〜約600%の重量増加膨張率を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるヒドロゲルは、約500%〜約600%の重量増加膨張率を有する。
【0064】
いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、約5×1022m−3〜約5×1026m−3の絡み合い密度を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、約5×1023m−3〜約1×1025m−3の絡み合い密度を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、約5×1024m−3〜約5×1025m−3の絡み合い密度を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、約1×1024m−3〜約5×1024m−3の絡み合い密度を有する。いくつかの実施形態においては、提供されるコポリマーは、約5×1024m−3の絡み合い密度を有する。
【0065】
特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、約30秒〜約1000秒の緩和時間を有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、約100秒〜約500秒の緩和時間を有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、約200秒〜約500秒の緩和時間を有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、約200秒〜約400秒の緩和時間を有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、約200秒〜約350秒の緩和時間を有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、約225秒〜約275秒の緩和時間を有する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、約250秒の緩和時間を有する。
【0066】
ジヒドロキシアセトンは、皮膚の上層中のアミノ酸と反応して、色素沈着作用を生じることが知られている。したがって、DHA−皮膚タンパク質反応の生成物は、ポリマーDHAではなく、単量体DHAで官能化されたタンパク質である。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、メイラード反応(すなわち、還元糖とアミノ酸との間での反応)により形成されたDHA−タンパク質結合体を含有しない。
【0067】
特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、式VII−aのコポリマーである:
【0068】
【化1】
式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、C1〜20脂肪族;3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式炭素環;フェニル;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、5員〜6員のヘテロアリール環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有している、8員〜10員の二環式ヘテロアリール環より選択される、必要に応じて置換された基であり;そして、
nおよびmは、それぞれ独立して、1〜2000の範囲である。
【0069】
特定の実施形態においては、R1は、C1〜20脂肪族である。特定の実施形態においては、R1は、C1〜10脂肪族である。特定の実施形態においては、R1は、C1〜6脂肪族である。特定の実施形態においては、R1はメチルである。いくつかの実施形態においては、R1は、適切な有機基である。いくつかの実施形態においては、R1は、炭水化物、タンパク質、およびペプチドからなる群より選択される。
【0070】
いくつかの実施形態においては、R2は、C1〜20脂肪族である。特定の実施形態においては、R2は、C1〜10脂肪族である。特定の実施形態においては、R2は、C1〜6脂肪族である。特定の実施形態においては、R2は、メチルである。
【0071】
いくつかの実施形態においては、nは、1〜2000である。いくつかの実施形態においては、nは、10〜1000である。いくつかの実施形態においては、nは、10〜500である。いくつかの実施形態においては、nは、10〜250である。いくつかの実施形態においては、nは、10〜200である。いくつかの実施形態においては、nは、10〜150である。いくつかの実施形態においては、nは、50〜200である。いくつかの実施形態においては、nは、75〜125である。いくつかの実施形態においては、nは、n個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約200ダルトン〜約20,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、nは、n個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約500ダルトン〜約10,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、nは、n個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約1,000ダルトン〜約10,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、nは、n個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約2,000ダルトン〜約10,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、nは、n個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約3,000ダルトン〜約6,000ダルトンとなるような数である。
【0072】
いくつかの実施形態においては、mは、1〜2000である。いくつかの実施形態においては、mは、2〜2000である。いくつかの実施形態においては、mは、5〜1000である。いくつかの実施形態においては、mは、5〜500である。いくつかの実施形態においては、mは、5〜250である。いくつかの実施形態においては、mは、5〜200である。いくつかの実施形態においては、mは、5〜100である。いくつかの実施形態においては、mは、15〜50である。いくつかの実施形態においては、mは、20〜30である。いくつかの実施形態においては、mは、m個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約200ダルトン〜約20,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、mは、m個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約500ダルトン〜約10,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、mは、m個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約1,000ダルトン〜約10,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、mは、m個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約2,000ダルトン〜約8,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、mは、m個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約3,000ダルトン〜約7,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、mは、m個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約4,000ダルトン〜約6,000ダルトンとなるような数である。いくつかの実施形態においては、mは、m個の括弧で囲まれたブロックの分子量の合計が、約5,000ダルトンとなるような数である。
【0073】
いくつかの実施形態においては、本明細書中に記載される分子量は、1つの分子または1つ分子の一部分の分子量をいう。いくつかの実施形態においては、本明細書中に記載される分子量は、提供されるポリマーの組成物中の平均分子量をいう。
【0074】
特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、式VII−bのコポリマーである:
【0075】
【化2】
式中、R1、n、およびmのそれぞれは、上記で定義され、そして本明細書中のクラスおよびサブクラスに記載されるとおりである。
【0076】
提供されるpDHAコポリマーが、カルボニル保護基で保護され得るケトン基を含むことが理解されるであろう。例えば、提供されるポリマーは、化学的に保護されているジヒドロキシアセトン単量体および/または二量体を使用して、例えば、保護されたジヒドロキシアセトン単量体(ここでは、単量体のカルボニル基が保護されている)から、例えば、2,2−ジ−C1〜C10アルコキシ−プロパン−1,3−ジオールから、または2,2−ジメトキシ−プロパン−1,3−ジオールから作製され得る。出発材料の他の保護された形態としては、単量体のカルボニル基が、メトキシベンジル、ベンジルオキシ、もしくはアリルオキシで保護されているもの、または二量体のヒドロキシル基が保護されているもの(例えば、2,5−ジ−C1〜C10アルコキシ−2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−[1,4]−ジオキサンに由来する)が挙げられる。2,2−ジメトキシ−プロパン−1,3ジオールは、Ferroni,E.L.,ら,J.Org.Chem 64,4943−4945(1999)に記載されているように、DHA単量体と二量体の組み合わせから容易に作製される。
【0077】
官能化された単量体を重合することに加えて、提供されるpDHAコポリマーは、ポリマー段階で官能化することもできる。そのような官能化は、当該分野でこれまでに実証されている(例えば、米国特許出願公開番号2008−0194786を参照のこと)。例えば、式VII−aの化合物は、1つまたは複数の求核試薬により官能化され得る。特定の実施形態においては、式VII−aの化合物は、アミンと適切な還元剤で処理される。いくつかの実施形態においては、還元剤は、NaBH4、NaBH3CN、またはNaBH(OCOCH3)3より選択される。
【0078】
したがって、特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、式VIIIのコポリマーである:
【0079】
【化3】
式中、R1、R2、n、およびmはそれぞれ、上記で定義され、本明細書中のクラスおよびサブクラスに記載されるとおりであり;そして
R3およびR4は、それぞれ独立して、R5、−OR5、および−N(R5)2からなる群より選択されるか;あるいは:
R3とR4が、必要に応じて、それらの間にある原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;または窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環より選択される、必要に応じて置換された環を形成し;そして
R5は、それぞれ独立して、水素、あるいは、C1−20脂肪族;3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式炭素環;フェニル;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、5員〜6員のヘテロアリール環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有している、8員〜10員の二環式ヘテロアリール環より選択される、必要に応じて置換された基である。
【0080】
いくつかの実施形態においては、R3はR5である。いくつかの実施形態においては、R3は、−OR5である。他の実施形態においては、R3は、−N(R5)2である。いくつかの実施形態においては、R3は、−N(R5)2であり、式中、R5は、それぞれ独立して、C1〜10脂肪族またはフェニルより選択される必要に応じて置換された基である。いくつかの実施形態においては、R3は、−NH(CH2)4CH(NH2)CO2Hである。
【0081】
いくつかの実施形態においては、R4はR5である。いくつかの実施形態においては、R4は、−OR5である。他の実施形態においては、R4は、−N(R5)2である。
【0082】
特定の実施形態においては、R3とR4が、適切なカルボニル保護基を形成する。適切なカルボニル保護基は当該分野で周知であり、これには、Protecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,第3版,John Wiley & Sons,1999(その全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に詳細に記載されているものが含まれる。
【0083】
いくつかの実施形態においては、R3およびR4は、それぞれ独立して、R5、−OR5、および−N(R5)2からなる群より選択される。特定の実施形態においては、R3とR4はそれぞれ、−N(R5)2であり、式中、R5はC1〜20脂肪族である。特定の実施形態においては、R3とR4はそれぞれ、−OR5であり、式中、R5はC1〜20脂肪族である。特定の実施形態においては、R3とR4はそれぞれ、−OR5であり、式中、R5はC1〜10脂肪族である。特定の実施形態においては、R3とR4はそれぞれ、−OR5であり、式中、R5は、C1〜6脂肪族である。特定の実施形態においては、R3とR4はそれぞれ、−OR5であり、式中、R5はエチルである。特定の実施形態においては、R3とR4はそれぞれ、−OR5であり、式中、R5はメチルである。
【0084】
いくつかの実施形態においては、R3とR4は、それらの間にある原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、必要に応じて置換されたスピロ環式の3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環を形成する。いくつかの実施形態においては、R3とR4は、それらの間にある原子と一緒になって、必要に応じて置換された5員〜6員の環状ケタールを形成する。いくつかの実施形態においては、R3とR4は、必要に応じて置換された5員〜6員の環状ケタールを形成するようにそれらの間にある原子と一緒になることはない。
【0085】
特定の実施形態においては、R5は水素である。特定の実施形態においては、R5は、C1〜20脂肪族である。特定の実施形態においては、R5は、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環である。特定の実施形態においては、R5は、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式炭素環である。特定の実施形態においては、R5はフェニルである。特定の実施形態においては、R5は、8員〜10員の二環式アリール環である。特定の実施形態においては、R5は、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環である。特定の実施形態においては、R5は、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環である。特定の実施形態においては、R5は、8員〜10員の二環式アリール環である。特定の実施形態においては、R5は、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、5員〜6員のヘテロアリール環である。特定の実施形態においては、R5は、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有している、8員〜10員の二環式ヘテロアリール環である。
【0086】
特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、式IXのコポリマーである:
【0087】
【化4】
式中、R1、R2、R5、n、およびmはそれぞれ、上記で定義され、そして本明細書中のクラスおよびサブクラスに記載されるとおりである。
【0088】
特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、以下の反復サブユニットを含有する:
【0089】
【化5】
式中、R3とR4はそれぞれ、上記で定義され、そして本明細書中のクラスおよびサブクラスに記載されるとおりである。
【0090】
特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、以下の反復サブユニットを含有する:
【0091】
【化6】
式中、R5は、上記で定義され、そして本明細書中のクラスおよびサブクラスに記載されるとおりである。
【0092】
特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(MPEG−b−2−オキシプロピレンカーボネート)である。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(MPEG−b−2,2,ジ(C1〜12脂肪族)オキシ−1,3−プロピレンカーボネート)である。特定の実施形態においては、提供されるpDHAコポリマーは、ポリ(MPEG−b−2,2,ジメトキシ−1,3−プロピレンカーボネート)である。
【0093】
(MPEG−pDHAコポリマー)
上記のように、本開示は、pDHAコポリマーとその使用を提供する。いくつかの実施形態においては、提供されるジブロックコポリマーは、モノメトキシ−ポリエチレングリコールと、ヒトの代謝物であるジヒドロキシアセトンをベースとするポリカーボネートを含有する。
【0094】
ポリエチレングリコール(PEG)系ポリマーは、PEGの好ましい化学的特性および生物学的特性(特に、その確立された生体適合性と低い免疫原性)が原因で、生体適合材料として相当注目されている(Hubbell,J.A.(1998)「Synthetic biodegradable polymers for tissue engineering and drug delivery.」Curr Opin Solid St Mat Sci 3,246−251)。DHAは、解糖経路の中間体代謝物である3炭素のケトースであり、このことから、これは新規の生体適合材料についての見込みのある構成要素となっている(Mathews,C.,Van Holde,K.(1996)Biochemistry(The Benjamin/Cummings Publishing Co,Menlo Park,CA))。さらに、DHAは、コーンシロップとメタノールから発酵産物として容易に製造することができる(Kato,N.,Kobayashi,H.,Shimao,M.,Sakazawa,C.(1986)「Dihydroxyacetone production from methanol by a dihydroxyacetone kinase deficient mutant of hansenula−polymorpha.」Appl Microbiol Biot 23,180−186)。これは、第1級アミンのそのC2カルボニルとの反応によりシッフ塩基を形成するその能力から、サンレスタンニングローション中の有効成分として現在使用されている。(Soler,C.,Soley,M.(1993)「Rapid and delayed−effects of epidermal growth−factor on gluconeogenesis.」Biochem J 294,865−872;Davis,L.(1973)「Structure of dihydroxyacetone in solution.」Bioorg Chem 2,197−201;Nguyen,B.C.,Kochevar,I.E.(2003)「Influence of hydration on dihydroxyacetone−induced pigmentation of stratum corneum.」J Invest Dermatol 120,655−661)。DHAをベースとするポリカーボネート(pDHA)は親水性であるが、水および最も一般的な有機溶媒中では不溶性であり、これはまた、C2カルボニル基での還元的アミノ化による1工程での官能化がしやすい(Zelikin,A.N.,Zawaneh,P.N.,Putnam,D.(2006)「A functionalizable biomaterial based on dihydroxyacetone,an intermediate of glucose metabolism.」Biomacromolecules 7,3239−3244)。
【0095】
特定の実施形態においては、提供されるMPEG−pDHAジブロックコポリマーは、その構成要素である両方のブロックの特性の一部を獲得し、それらを取り込んで水和の際に物理的に架橋されたヒドロゲルを形成する。いずれの特定の理論にも束縛されることは望ましくないが、MPEG−pDHAをベースとするヒドロゲルは、第1級アミン(Zelikin、前出)を結合するpDHAの能力の理由から、詰物および生体接着剤の両方として作用するように創傷床に注入することができ、それにより、ゲルが、たるんだ組織を互いに結び付け、周囲の漏れがある血管およびリンパ管を密閉し、それによって液体貯留を減少させることが可能となると考えられる。
【0096】
上記のように、ゲルの特性と性能は、ポリマーを構成しているブロックの長さを調節することにより制御することができる。実験は、様々な分子量(Mw)のMPEG−pDHAが合成される次の実施例に記載される。これらの特定の実験においては、MPEGのMwは、5000で一定に保った。なぜなら、この低いMwでは、承認されているヒトでの使用についてFDAにより求められる腎クリアランスを受けることができるからである。pDHAのMwを変化させて(3000、5000、および7000)、3種類の所望されるブロックコポリマー(5000−3000、5000−5000、および5000−7000と略す)を生じさせた。pDHAは水中では不溶性であるが、接触角の測定値に基づくと親水性である(Zelikin,前出)ので、MPEGは、水溶性の親水性ポリマーである。これらの特徴は、上記ブロックコポリマーが、水性環境中で低濃度でナノ粒子を形成することを可能にする(Zawaneh,前出)。本開示は、予想外に、高いポリマー濃度で上記ブロックコポリマーが、物理的にもつれた状態のネットワーク持つゲルをを形成することを見出した。このような物理的ゲル化は、選択的溶媒中でマルチブロックコポリマーの特定のゲルを用いて、これまでに観察されている(Wang,L.W.,Venkatraman,S.,Gan,L.H.,Kleiner,L.(2005)「Structure formation in injectable poly(lactide−co−glycolide)depots.II.Nature of the gel.」J Biomed Mater Res 72B,215−222;Nyrkova,I.A.,Khokhlov,A.R.,Doi,M.(1993)「Microdomains in Block−Copolymer and Multiplets in Ionomers − Parallels in Behavior.」Macromolecules 26,3601−3610;He,X.W.,Herz,J.,Guenet,J.M.(1988)「Physical gelation of a multiblock copolymer − Effect of copolymer composition.」Macromolecules 21,1757−1763;He,X.W.,Herz,J.,Guenet,J.M.(1989)「Physical gelation of a multiblock copolymer − Effect of solvent type.」Macromolecules 22,1390−1397)が、任意のどのようなコポリマーについてもヒドロゲルの形成を実現するために必要なプロセスおよび/または条件は予測不可能である。
【0097】
pDHA鎖の長さの増大が、ゲルの物理的架橋を形成する不溶性pDHAドメインの大きさを増大させ、親水性MPEGドメインの相対的寄与を減少させることが、これまでに観察されている(Wang 2005、前出)。いずれの特定の理論にも束縛されることは望ましくないが、増大したpDHA鎖の長さが、続いて、実施例1に示されるように絡み合い密度を増大させ、これは次に、ゲルの空隙率と水分の取り込みに影響を与えると考えられる。高い水分含量と増大した空隙率は、材料の生体適合性を改善する傾向があり、その粘性と弾性の性質にも影響を及ぼし得る(Langer、前出)。
【0098】
特定の実施形態においては、提供されるMPEG−pDHAゲルは、高い水分含量を示し、これは、実施例1の表2に示されるように、pDHA鎖の長さと絡み合い密度の増大に伴って減少する。例えば、図1に示される極低温で凍結した/凍結乾燥させたゲルの走査電子顕微鏡写真(SEM)もまた、pDHA鎖の長さの増大と絡み合い密度の増加に伴って低下する高い程度の空隙率を説明する。
【0099】
新規の生体適合材料に有用であり得る2つの特徴は、分解速度と分解生成物の組成である。実施例2は、ポリカーボネートについて驚くほど迅速であり、pDHAブロックのMwの増大に伴い低下する分解速度を示す、特定のMPEG−pDHAブロックコポリマーについて行ったインビトロでの分解実験を説明する。特定の実施形態においては、提供されるコポリマーは、24時間で完全に分解する(図3a)。図3bは、特定のブロックコポリマーの分解生成物についての特徴的な1H NMRであり、これは、可溶性ポリマーの分解生成物が、MPEG、単量体DHA、およびおそらく、CO2(CO2は、ポリカーボネートの分解に共通する副生成物である)であることを示す(Tangpasuthadol,V.,Pendharkar,S.M.,Kohn,J.(2000)「Hydrolytic degradation of tyrosine−derived polycarbonates,a class of new biomaterials.Part I:Study of model compounds.」Biomaterials 21,2371−2378;Zhu,K.J.,Hendren,R.W.,Jensen,K.,Pitt,C.G.(1991)「Synthesis,properties,and biodegradation of poly(1,3−Trimethylene Carbonate).」Macromolecules 24,1736−1740)。対照として、図11は、もとのMPEGおよびDHAの1H NMRをそれぞれ含む。図3と図11の比較は、1H NMRのピークが重複することを示し、このことは、MPEG−pDHAの分解生成物が、MPEGと単量体DHAであることを示している。
【0100】
これらのインビトロでの実験に加えて、インビボでの実験を、術後の漿液腫の予防におけるpDHAコポリマーの有効性を決定するために行った。実施例3に記載するように、提供されるpDHAコポリマーは、対照と比較して、漿液腫の平均容積を有意に減少させることに関して有効である。送達(注射)の容易さ、生体組織との適合性、およびインビボでの効力を考慮すると、提供されるコポリマーは、極めて効果的な外科用の生体適合材料であることが実証されている。
【0101】
(使用方法)
いくつかの実施形態においては、本開示のpDHAコポリマーは、医療での使用のために提供される。いくつかの実施形態においては、本開示のpDHAコポリマーは、外科手術での使用のために提供される。特定の実施形態においては、本開示のpDHAコポリマーは、再建手術での使用のために提供される。特定の実施形態においては、本開示のpDHAコポリマーは、漿液腫の予防における使用のために提供される。いくつかの実施形態においては、本開示は、術後の死腔をなくし、漿液腫の形成を減少させるために、提供されるpDHAコポリマーを使用する方法を提供する。
【0102】
いくつかの実施形態においては、本開示は、患者の創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を投与する工程を含む処置方法を提供する。特定の実施形態においては、本開示は漿液腫の予防または処置のための方法を提供し、上記方法は、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を、創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む。特定の実施形態においては、創傷床または手術部位は腹部にある。
【0103】
(漿液腫)
漿液腫は、内部の水膨れ(internal blister)に対して同種である体の組織内での漿液の異常な集積である。術後の漿液の蓄積は、特に、外科的処置に、下層の皮膚組織および深部筋膜から皮膚の比較的大きな組織片を剥がす必要がある(例えば、切除手術および再建手術)場合に、患者において頻繁に起こる。広範囲に及ぶ組織の切開が必要であり、大きな空間を作ってしまう外科手術は、正常なリンパの流れを崩壊させてしまう可能性がある。これに続き、浸出液(transduate fluid)がこれらの排水の悪い「死腔」に集まり、これにより漿液腫の形成が生じる(Agrawal,A.,Ayantunde,A.A.,Cheung,K.L.(2006)「Concepts of seroma formation and prevention in breast cancer surgery.」ANZ J Surg 76,1088−1095;Kuroi,K.,ら(2005)「Pathophysiology of seroma in breast cancer.」Breast Cancer 12,288−293)。漿液腫は、感染、四肢可動性の低下、および再手術のような、有意な疾病構造(patient morbidity)を導き得る(Agrawal,前出;Schwabegger,A.,Ninkovic,M.,Brenner,E.,Anderl,H.(1997)「Seroma as a common donor site morbidity after harvesting the latissimus dorsi flap:Observations on cause and prevention.」Ann Plas Surg 38,594−597;Budd,D.C.,Cochran,R.C.,Sturtz,D.L.,Fouty,W.J.(1978)「Surgical morbidity after mastectomy operations.」Am J Surg 135,218−220)。漿液腫の形成率は、外科的処置の性質により、9.1%〜81%の範囲である(Schwabegger,前出;Woodworth,P.A.,McBoyle,M.F.,Helmer,S.D.,Beamer,R.L.(2000)「Seroma formation after breast cancer surgery:Incidence and predicting factors.」Am Surg 66,444−450;Roses,D.F.,Brooks,A.D.,Harris,M.N.,Shapiro,R.L.,Mitnick,J.(1999)「Complications of level I and II axillary dissection in the treatment of carcinoma of the breast.」Ann Surg 230,194−201;Abe,M.,Iwase,T.,Takeuchi T.,Murai H.,Miura S.(1998)「A randomized controlled trial on the prevention of seroma after partial or total mastectomy and axillary lymph node dissection.」Breast Cancer 5,67−69;Say,C.C.,Donegan,W.(1974)「Biostatistical evaluation of complications from mastectomy.」Surg Gynecol Obstet 138,370−376;Alvandi,R.Y.,Solomon,M.J.,Renwick,S.B.,Donovan,J.K.(1991)「Preliminary results of conservative treatment of early breast cancer with axillary dissection and post operative radiotherapy.A retrospective review of 107 patients.」Aust N Z J Surg 9,670−674;Osteen,R.T.,Karnell,L.H.(1994)「The national cancer data−base report on breast−cancer.」Cancer 73,1994−2000)。特に、改良型の定型的乳房切断術によっては、15%〜38.6%の範囲の漿液腫の形成率が生じるが、定型的乳房切除術については、52%の高い率が報告されている(Budd,前出;Hayes,J.A.,Bryan,R.M.(1984)「Wound−healing following mastectomy.」Aust N Z J Surg 54,25−27;Aitken,D.R.,Hunsaker,R.,James,A.G.(1984)「Prevention of seromas following mastectomy and axillary dissection.」Surg Gynecol Obstet 158,327−330;Chilson,T.R.,Chan,F.D.,Lonser,R.R.,Wu,T.M.,Aitken,D.R.(1992)「Seroma prevention after modified radical−mastectomy.」Am Surg 58,750−754;Terrell,G.S.,Singer,J.A.(1992)「Axillary versus combined axillary and pectoral drainage after modified radical−mastectomy.」Surg Gynecol Obstet 175,437−440)。
【0104】
一例として、定型的乳腺切除術を実施する過程において、執刀医は、胸郭とそれを覆っている皮膚の比較的大きな領域との間にある患者の乳房組織の実質的に全てを除去する。外科手術後、これにより生じる比較的大きな皮膚のたるみを、下層組織とともに治療し、そして下層組織と癒着させる必要がある。しかし、漿液の蓄積は、覆っている皮膚のたるみと下層組織との間に集まる傾向がある。この漿液(serious fluid)の集まりには、皮膚が、皮下組織と深部筋膜とともに癒えることを妨げる傾向があり、これにより、極めて感染しやすい媒体も提供されてしまう。
【0105】
現在の臨床診療では、シリコーン製の外科用ドレインが、異なる位置での刺切を通じて創傷床の中に配置されて、浸出液(transudate fluid)が集められるが、これらは、特に、最初の外科的処置の遅くとも数週間後にそれらを除去する際に、患者に疼痛および不快感をもたらす重要な原因となる可能性がある。さらに、これらの手法は、手術部位の感染のリスクをさらに増大する可能性がある。
【0106】
提供されるpDHAコポリマーは、様々な外科的処置により生じる漿液腫を処置および予防するために使用することができる。そのような処置としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:癌切除および一般外科的処置、例えば、乳房切除術、腫瘍摘出手術、塞栓除去術、;脂肪腫切開、子宮摘出術、美用整形手術(例えば、腹部形成術、前額部フェイスリフト術、バトックリフト術、フェイスリフト術、脂肪吸引術、皮膚移植術、インプラント外科手術(例えば、ふくらはぎ、二頭筋、三頭筋、胸筋、陰茎、皮下、経皮、歯、骨)、皺切除術、または鼻形成術));乳房形成術;生検閉鎖、口蓋裂閉鎖術、瘢痕ヘルニア修復術、リンパ節切除術、鼠径部の修復、帝王切開術、腹腔鏡によるトロカール修復、膣裂傷の修復、整形外科的処置、椎弓切除術、外傷性病変の処置、瘻孔の処置、移植片の固定、神経修復、電気焼灼術、甲状腺または副甲状腺の切除、歯科的処置(例えば、抜歯)、および手の外科手術。提供されるpDHAコポリマーはまた、獣医学的な外科的処置により生じ得る漿液腫の処置および予防においても有用である。
【0107】
(組織癒着)
提供されるpDHAコポリマーは、術後の組織癒着の予防に有用である。形成され得る癒着としては、組織と組織の癒着、または組織と骨との癒着が挙げられる。一般的に知られているように、内臓外科手術後の術後癒着形成の発生が、腹部外科手術における重大な問題である。例えば、組織癒着の合併症は、婦人科の患者においては生殖能力に影響を及ぼし得る。癒着は、婦人科での腹部の外科的処置の約70%において起こるので、上記の癒着、それに伴う合併症および患者の不快感を予防するための適切な方法が必要であることは明らかである。
【0108】
外科手術後の組織再生の間に表面間の接触がないように、メッシュ(mesh)または膜を差し込むことにより隣接する体の内表面を仕切ることは知られている。癒着を防ぐために利用されている1つの物質は、Gore−Tex(登録商標)として知られている、膨張性のあるポリテトラフルオロエチレン材料である。しかし、この物質は止血薬ではなく、ヒトの体により分解されない。したがって、この移植物は体内に留まり、必要であれば、治癒プロセス後に外科手術により取り出さなければならない。別の物質は、Interceed(登録商標)として知られているカルボキシメチルセルロースのメッシュバリアである。しかし、この物質は、血液を多く含む環境には適用できない場合がある。なぜなら、そのような環境下では、この物質はすぐにそのバリア機能を失ってしまうからである。他の研究者らにより、ポリ(エチレンオキサイド)およびポリエチレンテレフタレートの膜が、外科手術による癒着を防ぐためのバリア物質として開示されている(Gilding and Reed,Polymer,第20巻,1454−1458頁(1979年12月)およびPolymer,第22巻,499−504頁(1981年4月)。
【0109】
本開示は、手術後の組織の癒着の予防または処置のための方法を提供する。この方法は、ポリ−ジヒドロキシアセトンコポリマーを含有する物質を、創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む。本開示はまた、止血を達成するための方法も提供する。この方法は、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を、創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む。
【0110】
(止血)
本開示は、止血を達成するための方法を提供する。この方法は、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を、創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む。特定の実施形態においては、創傷床または手術部位は、肝臓表面を含む。特定の実施形態においては、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を投与する工程は、出血している表面に上記物質を振りかけることを含む。
【0111】
特定の実施形態においては、本明細書中に記載される方法は、処置される症状に関して緩和的である。特定の実施形態においては、上記方法は予防的である。特定の実施形態においては、上記方法は治療的である。
【0112】
本開示は、「薬学的に許容される」組成物を提供し、これは、1種類以上の薬学的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤とともに処方された、本明細書中に記載される1種類以上の治療有効量の化合物を含有する。詳細に記載されるように、本開示の薬学的組成物は、以下のために適応させたものを含む、固体または液体の形態での投与のために特別に処方され得る:非経口投与(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、または硬膜外注射)(例えば、滅菌溶液または懸濁液として);局所塗布(例えば、クリーム、軟膏、または徐放パッチ)。
【0113】
本開示はさらに、pDHAコポリマーの組成物を含有するキットを提供する。このキットは、必要に応じて、提供される組成物を調製するおよび/または投与するための説明書を含む。特定の実施形態においては、上記キットは、複数回投与量の組成物を含有する。特定の実施形態においては、上記キットは、組成物の調製および/または投与に有用なさらなる成分および/またはツールを含む。上記キットは、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、数か月に1回、被検体を処置するための十分な量の個々の成分を含有し得る。
【実施例】
【0114】
本明細書中に記載されるものに加えて、ポリ−ジヒドロキシアセトンおよびその誘導体を調製する方法が、米国特許公開番号2008/0194786(その内容全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。
【0115】
(一般的手順)
モノメトキシ−ポリ(エチレングリコール)(MPEG)(Mw 5000)をPolysciences(Warrington,PA)から購入した。使用前に、MPEGをトルエン中での共沸蒸留により乾燥させた。ジヒドロキシアセトン二量体(DHA)、p−トルエンスルホン酸、オルトギ酸トリメチル、Sn(Oct)2、クロロギ酸エチル、および5%のリンタングステン酸は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入し、受け取ったままの状態で使用した。トリエチルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(CH2Cl2)、ジエチルエーテル、メタノール、トルエン、およびTFAは、VWR(West Chester,PA)から購入し、受け取ったままの状態で使用した。注射器とPBS(pH7.4)は、Fisher Scientificから購入した。コラーゲンは、MP Biomedicalsから購入した。
【0116】
1H NMRスペクトルを、Mercury 300分光計で記録した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、PSS SDVカラム500A、50A、およびリニアM(直列(in series))をTHF移動相(1ml/分)とポリスチレン標準とともに使用し、UV(Waters 486)およびRI(Waters 2410)の検出によって行った。レオロジー測定は、Physica Modular Compact 300 Rheometerを使用して行った。走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy)(SEM)測定は、LEICA 440を使用して行った。
【0117】
提供されるポリマーの膨張度(S.D.)は、1.0mLのPBS中の30mgの各MPEG−pDHA分子量(n=4)を、室温で水和することにより得た。ゲルを、過剰量のPBSを排水するための濾紙上におよそ4分間置いた。上記ゲルを秤量して膨張重量(Ws)を得、その後、凍結乾燥して再び秤量し、乾燥重量(Wd)を得た。S.D.を、方程式1を使用して計算した(Barbucci,R.,Rappuoli,R.,Borzacchiello,A.,Ambrosio,L.(2000)「Synthesis,chemical and rheological characterization of new hyaluronic acid−based hydrogels.」J Biomat Sci−Polym E 11,383−399):
S.D.(%)=(Ws/Wd)*100 (1) 。
【0118】
レオロジー試験を、並行平板配置(parallel plate geometry)(8mmの直径の並行平板)を使用し、Physica Modular Compact 300を使用して行った。データは、US200ソフトウェアを使用して記録し、Excel表計算ソフトを使用して分析した。全ての実験を、28℃および37℃で行った。ゲルの粘弾性特性を、1%の歪み振幅と0.1l/s〜100l/sの周波数範囲の振動モードで周波数掃引実験を行うことにより決定した。1%の歪みを用いた段階的歪み実験を行って、ゲルの応力緩和を決定した。
【0119】
絡み合い密度を、プラトー貯蔵弾性率Ge(最大G’、ここでは、G’/G’’>1)を使用して計算した(Rubinstein,M.,Colby,R.(2003)Polymer Physics(Oxford University Press,NYC);Macosko,C.W.(1994)Rheology:Principles,Measurements,and Applications(VCH Publishers,NYC)。方程式2を使用した:
Ge=νkT (2)
式中:
Geは、プラトーG’であり、
νは、絡み合い密度(m−3)であり、
kは、ボルツマン定数(kg.m2.s−2.K−1)であり、そして
Tは、温度(K)である。
【0120】
鎖緩和時間(τ)の計算は、(図10に示すような)小さい段階的歪み後の緩和弾性率(G(t))を計算することにより得た。方程式3を使用した(Rubinstein and Macosko,前出)。
【0121】
G(t)=G(τ)exp−t/τ (3)
式中:
G(t)は、緩和弾性率(Pa)であり、
G(τ)は、定数(Pa)であり、
tは、時間(秒)であり、そして
τは、鎖緩和時間(秒)である。
【0122】
方程式(3)を微分および再配置すると次のようになる:
【0123】
【化7】
方程式4を使用して、tG(t)対tのプロットから、鎖緩和時間(τ)であるt=τに最大があるプロットを得る。
【0124】
(実施例1)
(ポリマーの合成)
ポリ(MPEG−b−2−オキシプロピレンカーボネート)(VII)(MPEG−pDHA)を、以前に記載されたプロトコール(Zawaneh,前出)を使用して合成した。簡単に説明すると、ジヒドロキシアセトン二量体(II)を、オルトギ酸トリメチルp−トルエンスルホン酸を使用したそのC2カルボニル基のジメトキシアセタールへの転換により、その単量体形態に固定した(III)(図6参照)。次いで、これを6員の環式炭化水素に転換した(IV)。IVを、モノメトキシポリ(エチレングリコール)(MPEG)の存在下でSn(Oct)2を使用して重合させて、(VI)を形成させた。MPEGの分子量は5000に固定し、一方、DHAをベースとするポリマー鎖の分子量を、反応物供給比とSn(Oct)2注入条件に応じて変えた(3000、5000、7000、および10000の分子量を合成した)。続いてこのポリマーを、TFA−水混合物(4:1)を使用して脱保護して、所望されるポリマーMPEG−pDHA(VII)を生じさせた。ポリマーの脱保護に必要なTFA−水の量は、pDHAをベースとするセグメントの長さに依存する。表1は、各分子量を合成するために使用した重合条件をまとめる。反応スキームもまた図6に示す。MPEG−pDHA 1H NMR (DMSO−d6) δ:5.00 (s; 4H), 3.50 (s; 4H), 3.24 (s; 3H)
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
(ヒドロゲルの特性決定)
いくつかの実施形態においては、MPEG−pDHAヒドロゲルはチキソトロピー性であり、剪断速度が増大するに伴い粘性が低下する傾向を示す(図2a)。このチキソトロピー性の性質により、ヒドロゲルが、離れた部位での注射によってさえも(例えば、漿液腫に)送達することができる、押し出し成形が可能な物質を形成することが可能となる。pDHA鎖の長さの増大と、それに続く絡み合い密度の増大は、ヒドロゲルの粘性の増大をもたらす(図2a)。図2bは、狭口径の26G皮下注射針から押し出し成型した際のMPEG−pDHA 5000−5000の一例を説明する。28℃および37℃での粘性の測定の一式を図7に提供する。
【0127】
特定の実施形態においては、ヒドロゲルの絡み合い密度の制御は、その粘性と空隙率の制御に有用である。絡み合い密度は、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G’’)の測定(上記に詳細に記載したとおり)から計算し、これはまた、ゲルの弾性の性質に関する知見を提供する。図2cは、MPEG−pDHAヒドロゲル(5000−3000および5000−7000)について得られたような、典型的なG’およびG’’のグラフの一例である。G’値は、極めて低い周波数依存(frequency dependence)を示し、これは周波数範囲全体についてG’’値より大きく、弾性ヒドロゲルの特徴的な傾向である(Vermonden,T.,Besseling,N.A.M.,van Steenbergen,M.J.,Hennink,W.E.(2006)「Rheological studies of thermosensitive triblock copolymer hydrogels.」Langmuir 22,10180−10184;Nowak,A.P.,ら(2002)「Rapidly recovering hydrogel scaffolds from self−assembling diblock copolypeptide amphiphiles.」Nature 417,424−428)。G’値とG’’値もまた、pDHA鎖の長さおよび絡み合い密度の増大とともに増大する。G’およびG’’の測定の一式を、図8および図9に提供する。
【0128】
MPEG−pDHAの鎖緩和時間を、レオロジーデータから計算した。緩和の計算は、段階的歪み後のヒドロゲルの緩和速度の決定に役立つ。これにより、MPEG−pDHAヒドロゲル鎖が、漿液腫部位での注射後にそれらの平衡状態にまで緩和するのに要する時間の長さについての見解を得ることができる。迅速な緩和時間は、生体適合材料がその平衡状態に迅速に確実に戻ることを助け、それに続いて、インビボでの治療用ヒドロゲルの性能に影響を及ぼし得る変数の数を減らす。いくつかの実施形態においては、MPEG−pDHAゲルは、迅速な緩和時間(250秒〜350秒)を示し、これもまた、pDHA鎖の長さと絡み合い密度の増大に伴い増大する(表2参照)(Sahiner,N.,Singh,M.,De Kee,D.,John,V.T.,McPherson,G.L.(2006)「Rheological characterization of a charged cationic hydrogel network across the gelation boundary.」Polymer 47,1124−1131)。MPEG−pDHAヒドロゲル緩和時間を計算するために使用した方程式は、上記に示す。鎖緩和データの一式を、図10および表3に提供する。
【0129】
【表3】
(実施例2)
(インビトロでの加水分解)
インビトロでの分解実験を、MPEG−pDHA 5000−3000、5000−5000、および5000−7000について行った。ポリマー試料を20mgの試料になるように秤量し、1.5mLのエッペンドルフチューブ中の1.0mLのPBS(pH=7.4)の中に入れた。試料を、オービタルシェーカーの上に置き、37℃でインキュベートとした。試料を、選択した時点で各ポリマーについて回収した(n=3)。試料を回収し、DI水で洗浄し、凍結乾燥し、再度秤量した。完全に分解した試料由来の分解生成物を、1H NMRにより特性決定した。1H NMR (D2O) DHA δ:4.40 (s; 4H), 3.55 (s; 6H). 1H MPEG (D2O) DHA δ:3.70(s; 4H)
(実施例3)
(漿液腫に対する有効性(インビボ))
MPEG−pDHAのレオロジー特性および分解特性の決定後、本発明者らは、可能性のある外科的用途である術後の漿液腫の予防において、ヒドロゲルがどのように作用するかを評価した。十分に確立されているラットの乳腺切除モデルを使用して、MPEG−pDHAの有効性を決定し、これにより文献(Silverman、前出)と直接比較できるようにした。図4に示すように、未処置の対照は、2.28±0.55mLの漿液腫の平均容積を示し、一方、MPEG−pDHA 5000−3000で処置したラットは、0.044±0.017mL(p<0.01)の有意に低下した漿液腫の平均容積を示した。興味深いことに、MPEG−pDHA 5000−5000で処置したラット、およびMPEG−pDHA 5000−7000で処置したラットは、それぞれ、2.53±0.70(p=0.8)および1.93±0.60(p=0.2)漿液腫の平均容積を示した。これらは、未処置の対照動物と統計的に同等である。MPEG−pDHA 5000−3000で処置した動物の死体解剖実験は、隆起した皮膚のたるみと胸壁との間の肉眼的な線維素性癒着を明らかにし、一方、他の処置グループまたは対照グループにおいては癒着は明らかではなかった。ポリマーのインビボでの分解を、適用の7日後の創傷床から切除した組織の組織学的試験の際に、残っているポリマー(全ての3種類の組成物)が存在しないことにより確認した。手術の1日後は、MPEG−pDHAが残っていることが明らかであり(図12)、これは、インビボでの分解速度がインビトロで観察されるよりも遅いことを示唆していたが、3日目には、残っているポリマーは見られなかった(図13)。
【0130】
生体適合性に関しては、未処置の対照動物と等しく、正常に見える初期の肉芽組織と、軽度の炎症応答が存在した(図5)。これらの結果は、MPEG−pDHAとその分解生成物が、創傷床の周囲の柔組織により十分に寛容化され、正常な順序の初期の創傷の治癒にネガティブな影響を及ぼさないことを示唆する。
【0131】
(実験)
ポリマーゲルの有効性を評価するために、各MPEG−pDHAをベースとするゲルを、漿液腫の形成についての十分に確立されたラットモデルにおいて評価した(Lindsey,前出)。簡単に説明すると、中線切開後に、皮膚のたるみを右胸の上まで持ち上げ、主要な筋肉である右胸筋を露出させ、次にこれを切開した。次いで、右のリンパ節郭清を手術用顕微鏡下で行った。完全に水和したヒドロゲルを、100mgの凍結乾燥したMPEG−pDHA粉末を滅菌の生理食塩水と濾紙上で混合することによる完全な水和のために新しく調製した。実験用ラットに、0.5ccのMPEG−pDHAヒドロゲルを、閉鎖前の創傷床に投与し、一方、対照には、0.5ccの生理食塩水を、閉鎖前の創傷床に投与した。
【0132】
動物を、手術後7日目に、そのような研究について承認されている組織ガイドライン(institutional guideline)にしたがって、二酸化炭素での窒息、その後の頸椎脱臼により屠殺した。漿液を、18ゲージ針により経皮的に吸引し、容量分析により測定した。その後、この切開部位を開き、残っている漿液を全て、針からの吸引により除去した。ポリマーのインビボでの生体適合性を決定するために、皮膚のたるみと下層の創傷床の切片をひとまとめにして取り出し、適用した領域の中の残っているポリマーと炎症の証拠について組織学的に分析(H+E染色)した。不等分散を用いたスチューデント両側t検定(student two tail t−test)を行って、p値(α=0.05)を決定した。
【0133】
(実施例4)
漿液腫に対する有効性とポリマー構造との間を関係づけるために、本発明者らは、3つの機構による実験(three mechanism−oriented experiments)を行った。最初に、本発明者らは、水中でMPEG−pDHA 5000−3000をオリゴマー生成物に分解して、ポリマー分解生成物が漿液腫の予防における原因であるかどうかを解明した。図4に示すように、加水分解したMPEG−pDHAは効果がなく、このことは、漿液腫に対する活性には、全長のポリマーが、投与の際に必要であることを示唆している。第2に、MPEG−pDHAヒドロゲルを、2倍のモル過剰量のリジン(C2カルボニル基と比較して)の存在下で水和して、C2カルボニルの、組織中の第1級アミンとの反応性が、漿液腫に対する活性に必要であるかどうかを決定した。リジンを付加してC2カルボニル基を占有し、したがって、組織中のアミンとのC2反応性が活性に必要であれば、リジン水和型の処方物はほとんど活性がないはずであった。図4に示すように、リジン水和型の処方物は、低下した漿液腫の容積を示したが、この低下は統計学的には対照と同等であり、このことは、C2カルボニルの反応性が漿液腫の予防に関与していることを示唆していた。第3に、MPEG−pDHAが、組織一体化を促進するための凝固カスケードを開始したかどうかを決定するために、本発明者らは、プロトロンビン時間(PT)と部分トロンボプラスチン時間(PTT)に対するポリマーの効果を測定した。上記結果は、上記生体適合材料がPTおよびPTTに対しては効果がないことを示しており、このことは、凝固カスケードの活性が漿液腫の予防における要因ではないことを示唆している。提供されるコポリマーの止血効果を記載している実験を含むさらなる詳細は、Henderson,P.W.,ら(2009)「A rapidly resorbable hemostatic biomaterial based on dihydroxyacetone.」Journal of Biomedical Materials Research Part A.DOI:10.1002/jbm.a.32586)(その内容全体が引用により本明細書中に組み入れられる)により記載されている。
【0134】
本発明者らは、本発明の多数の実施形態を記載してきたが、本発明者らの基本的な実施例が、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態が提供されるように変更される場合があることは明らかである。したがって、本発明の範囲が、実施例によって示された特定の実施形態ではなく、添付の特許請求の範囲により定義されることが理解されるであろう。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置方法であって、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を、患者の創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
漿液腫の予防または処置のための方法であって、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を、創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む、方法。
【請求項3】
手術後の組織の癒着の予防または処置のための方法であって、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を、創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む、方法。
【請求項4】
止血を達成するための方法であって、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を、創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む、方法。
【請求項5】
前記ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーが粉末である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記創傷床または手術部位が腹部にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記pDHAコポリマーがpDHAのブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記pDHAコポリマーがpDHAのジブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記pDHAコポリマーがpDHAのトリブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記pDHAコポリマーがpDHAのクオードブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記pDHAコポリマーがpDHAのマルチブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記pDHAコポリマーがヒドロゲルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記pDHAコポリマーが架橋されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記pDHAコポリマーが架橋されていない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記pDHAコポリマーが、DHAおよび少なくとも1種類の他の単量体を含有するコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記pDHAコポリマーがDHAおよびグリセロールのコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記pDHAコポリマーがDHAおよびポリオールのコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記pDHAコポリマーがDHAおよびアルキレングリコールのコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記pDHAコポリマーがランダムコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記pDHAコポリマーがブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記pDHAコポリマーがPEG−pDHAジブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記pDHAコポリマーがポリ(プロピレングリコール)−pDHAジブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記pDHAコポリマーがポリ(アルキレングリコール)−pDHAジブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記pDHAコポリマーがポリ(グリセロール)−pDHAジブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのPEGブロックのMwが、100ダルトン〜1,000,000ダルトンである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのPEGブロックのMwが、100ダルトン〜10,000ダルトンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのpDHAブロックのMwが、100ダルトン〜1,000,000ダルトンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのpDHAブロックのMwが、1,000ダルトン〜10,000ダルトンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのpDHAブロックのMwが、2,500ダルトン〜3,500ダルトンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記PEGブロックが線状である、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記PEGブロックが分岐状である、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記分岐状のPEGブロックが、中心のコア基から生じる3〜50のPEG鎖を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記PEGブロックがcomb PEGである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記PEGブロックがstar PEGである、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記star PEGが、中心のコア基から生じる3〜200のPEG鎖を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記アルキレングリコールブロックが適切な有機基で終わる、請求項23に記載の方法。
【請求項37】
前記有機基が、脂肪族、アシル、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記有機基が、炭水化物、タンパク質、およびペプチドからなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記有機基がモノメトキシ(monomethyoxy)である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記pDHAコポリマーが、ポリ(MPEG−b−2−オキシプロピレンカーボネート)である、請求項21に記載の方法。
【請求項41】
前記pDHAコポリマーが、ポリ(MPEG−b−2,2,ジ(C1〜12脂肪族)オキシ−1,3−プロピレンカーボネート)である、請求項21に記載の方法。
【請求項42】
前記pDHAコポリマーが、ポリ(MPEG−b−2,2,ジメトキシ−1,3−プロピレンカーボネート)である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)を含有するコポリマーであって、前記コポリマーが架橋されたヒドロゲルである、コポリマー。
【請求項44】
前記架橋されたヒドロゲルが物理的に架橋されている、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項45】
前記コポリマーがチキソトロピー性である、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項46】
前記コポリマーが、剪断速度の増大に伴い粘性が低下する特性を有する、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項47】
前記pDHAコポリマーが、DHAおよび少なくとも1種類の他の単量体を含有するコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項48】
前記pDHAコポリマーが、DHAおよびグリセロールのコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項49】
前記pDHAコポリマーが、DHAおよびポリオールのコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項50】
前記pDHAコポリマーが、DHAおよびアルキレングリコールのコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項51】
前記pDHAコポリマーが、ランダムコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項52】
前記pDHAコポリマーが、ブロックコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項53】
前記pDHAコポリマーが、PEG−pDHAジブロックコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項54】
前記pDHAコポリマーが、ポリ(プロピレングリコール)−pDHAジブロックコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項55】
前記pDHAコポリマーが、ポリ(アルキレングリコール)−pDHAジブロックコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項56】
前記pDHAコポリマーが、ポリ(グリセロール)−pDHAジブロックコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項57】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのPEGブロックのMwが、100ダルトン〜1,000,000ダルトンである、請求項53に記載のコポリマー。
【請求項58】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのPEGブロックのMwが、100ダルトン〜10,000ダルトンである、請求項57に記載のコポリマー。
【請求項59】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのpDHAブロックのMwが、100ダルトン〜1,000,000ダルトンである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項60】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのpDHAブロックのMwが、1,000ダルトン〜10,000ダルトンである、請求項59に記載のコポリマー。
【請求項61】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのpDHAブロックのMwが、2,500ダルトン〜3,500ダルトンである、請求項60に記載のコポリマー。
【請求項62】
前記PEGブロックが線状である、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項63】
前記PEGブロックが分岐状である、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項64】
前記分岐状のPEGブロックが、中心のコア基から生じる3〜50のPEG鎖を含む、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項65】
前記PEGブロックが、comb PEGである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項66】
前記PEGブロックが、star PEGである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項67】
前記star PEGが、中心のコア基から生じる3〜200 PEG鎖を含む、請求項66に記載のコポリマー。
【請求項68】
前記アルキレングリコールブロックが適切な有機基で終わる、請求項53に記載のコポリマー。
【請求項69】
前記有機基が、脂肪族、アシル、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールである、請求項68に記載のコポリマー。
【請求項70】
前記有機基が、炭水化物、タンパク質、およびペプチドからなる群より選択される、請求項68に記載のコポリマー。
【請求項71】
前記有機基が、モノメトキシ(monomethyoxy)である、請求項69に記載のコポリマー。
【請求項72】
前記pDHAポリマーが、ポリ(MPEG−b−2−オキシプロピレンカーボネート)である、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項73】
前記pDHAポリマーが、ポリ(MPEG−b−2,2,ジ(C1〜12脂肪族)オキシ−1,3−プロピレンカーボネート)である、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項74】
前記pDHAポリマーが、ポリ(MPEG−b−2,2,ジメトキシ−1,3−プロピレンカーボネート)である、請求項73に記載のコポリマー。
【請求項75】
前記コポリマーが、式VII−a:
【化8】
のコポリマーであり、ここで式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、C1〜20脂肪族;3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式炭素環;フェニル;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、5員〜6員のヘテロアリール環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有している、8員〜10員の二環式ヘテロアリール環より選択される、必要に応じて置換された基であり;そして
nおよびmは、それぞれ独立して、1〜2000の範囲である、
請求項43に記載のコポリマー。
【請求項76】
前記コポリマーが式VIII:
【化9】
のコポリマーであり、ここで式中、
R1、R2、n、およびmは、それぞれ、上記で定義し、本明細書中でクラスおよびサブクラスにおいて記載したとおりであり、そして
R3およびR4は、それぞれ独立して、R5、−OR5、および−N(R5)2からなる群より選択されるか;あるいは:
R3とR4とが、必要に応じて、それらの間にある原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環より選択される、必要に応じて置換された環を形成し;そして
R5は、それぞれ独立して、水素、あるいは、C1〜20脂肪族;3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式炭素環;フェニル;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、5員〜6員のヘテロアリール環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有している、8員〜10員の二環式ヘテロアリール環より選択される、必要に応じて置換された基である、
請求項43に記載のコポリマー。
【請求項77】
DHAおよびグリセロールを含有する、コポリマー。
【請求項78】
前記コポリマーがブロックコポリマーである、請求項77に記載のコポリマー。
【請求項79】
前記コポリマーがランダムコポリマーである、請求項77に記載のコポリマー。
【請求項80】
PEGの第1のブロックと、DHAおよびグリセロールを含有するポリマーの第2のブロックとを含有する、DHA含有コポリマー。
【請求項81】
前記第2のブロックがブロックコポリマーである、請求項80に記載のコポリマー。
【請求項82】
前記第2のブロックがランダムコポリマーである、請求項80に記載のコポリマー。
【請求項83】
DHA、グリセロール、およびPEGを含有する、DHA含有ポリマー。
【請求項84】
前記創傷床または手術部位が肝臓表面を含む、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項85】
ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を投与する前記工程が、出血している表面に前記物質を振りかけることを含む、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項86】
ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)を含有するコポリマーであって、前記コポリマーが、反復サブユニット:
【化10】
を含有する架橋されたヒドロゲルであって、ここで式中:
R3およびR4は、それぞれ独立して、R5、−OR5、および−N(R5)2からなる群より選択されるか;または:
R3とR4とが、必要に応じて、それらの間にある原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環より選択される、必要に応じて置換された環を形成し;そして
R5は、それぞれ独立して、水素、あるいは、C1〜20脂肪族;3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式炭素環;フェニル;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、5員〜6員のヘテロアリール環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有している、8員〜10員の二環式ヘテロアリール環より選択される、必要に応じて置換された基である、
コポリマー。
【請求項87】
前記コポリマーが式VIII:
【化11】
のコポリマーであり、ここで式中:
R1およびR2は、それぞれ独立して、C1〜20脂肪族;3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式炭素環;フェニル;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、5員〜6員のヘテロアリール環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有している、8員〜10員の二環式ヘテロアリール環より選択される、必要に応じて置換された基であり;そして
nおよびmは、それぞれ独立して、1〜2000の範囲である、
請求項86に記載のコポリマー。
【請求項1】
処置方法であって、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を、患者の創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
漿液腫の予防または処置のための方法であって、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を、創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む、方法。
【請求項3】
手術後の組織の癒着の予防または処置のための方法であって、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を、創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む、方法。
【請求項4】
止血を達成するための方法であって、ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を、創傷床もしくは手術部位に、またはその近くに投与する工程を含む、方法。
【請求項5】
前記ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーが粉末である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記創傷床または手術部位が腹部にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記pDHAコポリマーがpDHAのブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記pDHAコポリマーがpDHAのジブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記pDHAコポリマーがpDHAのトリブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記pDHAコポリマーがpDHAのクオードブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記pDHAコポリマーがpDHAのマルチブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記pDHAコポリマーがヒドロゲルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記pDHAコポリマーが架橋されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記pDHAコポリマーが架橋されていない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記pDHAコポリマーが、DHAおよび少なくとも1種類の他の単量体を含有するコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記pDHAコポリマーがDHAおよびグリセロールのコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記pDHAコポリマーがDHAおよびポリオールのコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記pDHAコポリマーがDHAおよびアルキレングリコールのコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記pDHAコポリマーがランダムコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記pDHAコポリマーがブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記pDHAコポリマーがPEG−pDHAジブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記pDHAコポリマーがポリ(プロピレングリコール)−pDHAジブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記pDHAコポリマーがポリ(アルキレングリコール)−pDHAジブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記pDHAコポリマーがポリ(グリセロール)−pDHAジブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのPEGブロックのMwが、100ダルトン〜1,000,000ダルトンである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのPEGブロックのMwが、100ダルトン〜10,000ダルトンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのpDHAブロックのMwが、100ダルトン〜1,000,000ダルトンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのpDHAブロックのMwが、1,000ダルトン〜10,000ダルトンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのpDHAブロックのMwが、2,500ダルトン〜3,500ダルトンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記PEGブロックが線状である、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記PEGブロックが分岐状である、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記分岐状のPEGブロックが、中心のコア基から生じる3〜50のPEG鎖を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記PEGブロックがcomb PEGである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記PEGブロックがstar PEGである、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記star PEGが、中心のコア基から生じる3〜200のPEG鎖を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記アルキレングリコールブロックが適切な有機基で終わる、請求項23に記載の方法。
【請求項37】
前記有機基が、脂肪族、アシル、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記有機基が、炭水化物、タンパク質、およびペプチドからなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記有機基がモノメトキシ(monomethyoxy)である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記pDHAコポリマーが、ポリ(MPEG−b−2−オキシプロピレンカーボネート)である、請求項21に記載の方法。
【請求項41】
前記pDHAコポリマーが、ポリ(MPEG−b−2,2,ジ(C1〜12脂肪族)オキシ−1,3−プロピレンカーボネート)である、請求項21に記載の方法。
【請求項42】
前記pDHAコポリマーが、ポリ(MPEG−b−2,2,ジメトキシ−1,3−プロピレンカーボネート)である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)を含有するコポリマーであって、前記コポリマーが架橋されたヒドロゲルである、コポリマー。
【請求項44】
前記架橋されたヒドロゲルが物理的に架橋されている、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項45】
前記コポリマーがチキソトロピー性である、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項46】
前記コポリマーが、剪断速度の増大に伴い粘性が低下する特性を有する、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項47】
前記pDHAコポリマーが、DHAおよび少なくとも1種類の他の単量体を含有するコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項48】
前記pDHAコポリマーが、DHAおよびグリセロールのコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項49】
前記pDHAコポリマーが、DHAおよびポリオールのコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項50】
前記pDHAコポリマーが、DHAおよびアルキレングリコールのコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項51】
前記pDHAコポリマーが、ランダムコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項52】
前記pDHAコポリマーが、ブロックコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項53】
前記pDHAコポリマーが、PEG−pDHAジブロックコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項54】
前記pDHAコポリマーが、ポリ(プロピレングリコール)−pDHAジブロックコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項55】
前記pDHAコポリマーが、ポリ(アルキレングリコール)−pDHAジブロックコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項56】
前記pDHAコポリマーが、ポリ(グリセロール)−pDHAジブロックコポリマーである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項57】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのPEGブロックのMwが、100ダルトン〜1,000,000ダルトンである、請求項53に記載のコポリマー。
【請求項58】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのPEGブロックのMwが、100ダルトン〜10,000ダルトンである、請求項57に記載のコポリマー。
【請求項59】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのpDHAブロックのMwが、100ダルトン〜1,000,000ダルトンである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項60】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのpDHAブロックのMwが、1,000ダルトン〜10,000ダルトンである、請求項59に記載のコポリマー。
【請求項61】
前記PEG−pDHAジブロックコポリマーのpDHAブロックのMwが、2,500ダルトン〜3,500ダルトンである、請求項60に記載のコポリマー。
【請求項62】
前記PEGブロックが線状である、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項63】
前記PEGブロックが分岐状である、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項64】
前記分岐状のPEGブロックが、中心のコア基から生じる3〜50のPEG鎖を含む、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項65】
前記PEGブロックが、comb PEGである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項66】
前記PEGブロックが、star PEGである、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項67】
前記star PEGが、中心のコア基から生じる3〜200 PEG鎖を含む、請求項66に記載のコポリマー。
【請求項68】
前記アルキレングリコールブロックが適切な有機基で終わる、請求項53に記載のコポリマー。
【請求項69】
前記有機基が、脂肪族、アシル、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールである、請求項68に記載のコポリマー。
【請求項70】
前記有機基が、炭水化物、タンパク質、およびペプチドからなる群より選択される、請求項68に記載のコポリマー。
【請求項71】
前記有機基が、モノメトキシ(monomethyoxy)である、請求項69に記載のコポリマー。
【請求項72】
前記pDHAポリマーが、ポリ(MPEG−b−2−オキシプロピレンカーボネート)である、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項73】
前記pDHAポリマーが、ポリ(MPEG−b−2,2,ジ(C1〜12脂肪族)オキシ−1,3−プロピレンカーボネート)である、請求項43に記載のコポリマー。
【請求項74】
前記pDHAポリマーが、ポリ(MPEG−b−2,2,ジメトキシ−1,3−プロピレンカーボネート)である、請求項73に記載のコポリマー。
【請求項75】
前記コポリマーが、式VII−a:
【化8】
のコポリマーであり、ここで式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、C1〜20脂肪族;3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式炭素環;フェニル;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、5員〜6員のヘテロアリール環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有している、8員〜10員の二環式ヘテロアリール環より選択される、必要に応じて置換された基であり;そして
nおよびmは、それぞれ独立して、1〜2000の範囲である、
請求項43に記載のコポリマー。
【請求項76】
前記コポリマーが式VIII:
【化9】
のコポリマーであり、ここで式中、
R1、R2、n、およびmは、それぞれ、上記で定義し、本明細書中でクラスおよびサブクラスにおいて記載したとおりであり、そして
R3およびR4は、それぞれ独立して、R5、−OR5、および−N(R5)2からなる群より選択されるか;あるいは:
R3とR4とが、必要に応じて、それらの間にある原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環より選択される、必要に応じて置換された環を形成し;そして
R5は、それぞれ独立して、水素、あるいは、C1〜20脂肪族;3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式炭素環;フェニル;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、5員〜6員のヘテロアリール環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有している、8員〜10員の二環式ヘテロアリール環より選択される、必要に応じて置換された基である、
請求項43に記載のコポリマー。
【請求項77】
DHAおよびグリセロールを含有する、コポリマー。
【請求項78】
前記コポリマーがブロックコポリマーである、請求項77に記載のコポリマー。
【請求項79】
前記コポリマーがランダムコポリマーである、請求項77に記載のコポリマー。
【請求項80】
PEGの第1のブロックと、DHAおよびグリセロールを含有するポリマーの第2のブロックとを含有する、DHA含有コポリマー。
【請求項81】
前記第2のブロックがブロックコポリマーである、請求項80に記載のコポリマー。
【請求項82】
前記第2のブロックがランダムコポリマーである、請求項80に記載のコポリマー。
【請求項83】
DHA、グリセロール、およびPEGを含有する、DHA含有ポリマー。
【請求項84】
前記創傷床または手術部位が肝臓表面を含む、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項85】
ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)コポリマーを含有する物質を投与する前記工程が、出血している表面に前記物質を振りかけることを含む、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項86】
ポリ−ジヒドロキシアセトン(pDHA)を含有するコポリマーであって、前記コポリマーが、反復サブユニット:
【化10】
を含有する架橋されたヒドロゲルであって、ここで式中:
R3およびR4は、それぞれ独立して、R5、−OR5、および−N(R5)2からなる群より選択されるか;または:
R3とR4とが、必要に応じて、それらの間にある原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環より選択される、必要に応じて置換された環を形成し;そして
R5は、それぞれ独立して、水素、あるいは、C1〜20脂肪族;3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式炭素環;フェニル;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、5員〜6員のヘテロアリール環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有している、8員〜10員の二環式ヘテロアリール環より選択される、必要に応じて置換された基である、
コポリマー。
【請求項87】
前記コポリマーが式VIII:
【化11】
のコポリマーであり、ここで式中:
R1およびR2は、それぞれ独立して、C1〜20脂肪族;3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式炭素環;フェニル;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜2個のヘテロ原子を有している、3員〜7員の飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、7員〜10員の飽和もしくは部分不飽和の二環式複素環;8員〜10員の二環式アリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子を有している、5員〜6員のヘテロアリール環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有している、8員〜10員の二環式ヘテロアリール環より選択される、必要に応じて置換された基であり;そして
nおよびmは、それぞれ独立して、1〜2000の範囲である、
請求項86に記載のコポリマー。
【図5】
【図6】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図6】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2012−508173(P2012−508173A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534893(P2011−534893)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/063177
【国際公開番号】WO2010/062783
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(510296236)コーネル ユニバーシティー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/063177
【国際公開番号】WO2010/062783
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(510296236)コーネル ユニバーシティー (2)
【Fターム(参考)】
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