説明

ジフェニルカーボネートを含有するポリカーボネートおよびこのポリカーボネートを含有するシート

本発明はジフェニルカーボネートを含有するポリカーボネートおよびこのポリカーボネートを含有するプレートに関する。ポリカーボネートは特にビスフェノール−A−ホモポリカーボネートであり、ビスフェノールAは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジフェニルカーボネートを含有するポリカーボネートおよびこのポリカーボネートを含有するシートに関する。ここで、ポリカーボネートは特にビスフェノールAホモポリカーボネートである。ビスフェノールAは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0002】
用語「ジフェノール」はまた、用語「ビスフェノール」のために使用される。
【0003】
ポリカーボネートシートはEP−A 0110221で知られており、種々の用途に提供されている。それらは例えば、ポリカーボネートを含有する組成物(いわゆるポリカーボネート成形組成物)の押出によって製造される。多層シートは、例えば増加した割合のUV吸収剤を含有するポリカーボネート成形組成物を用いた共押出によって得られ得る。
【0004】
ポリカーボネート成形組成物は、ポリカーボネートを含有し、かつ熱可塑的に成形体に形成され得る組成物を意味すると理解される。共押出成形組成物は、共押出方法による多層製品、特に多層シートの製造に使用され得る組成物を意味すると理解される。
【0005】
そのようなシートを押出する時に頻繁に繰り返される問題は、シートを製造するために使用される装置上への、成形組成物からの揮発性成分の沈着(deposition)である。
【0006】
いわゆる多層シート(気泡シート(cellular sheets)としても知られている)を製造する時、沈着物は特にいわゆるキャリブレーター上で発生する。
【0007】
キャリブレーターは押出技術における当業者に知られている。それらは例えば、「Kunststoffhandbuch」第3/1巻、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル、セルロースエステル、1992年、Carl Hanser Verlag、ミュンヘン、ウィーン、251頁以下、3.8.12.2章に記載されている。
【0008】
ソリッドシートを製造する時、沈着物は特にソリッドシートの生産のための装置の構成部品であるローラー上で発生する。
【0009】
これらの沈着物は、シートの表面の欠陥をもたらすかもしれない。
【0010】
沈積し得る揮発性成分は、例えばUV吸収剤、離型剤および使用される成形組成物の他の低分子量成分である。
【0011】
EP−A 0320632は、UV吸収剤および離型剤を含有し得るポリカーボネートの共押出シートについて開示している。欠点は、より長い押出時間の間、特に共押出の間、シートの表面がポリカーボネートの溶融によって放出される蒸気により悪影響を受け得るということである。
【0012】
ポリカーボネート溶融からのUV吸収剤の増加した蒸発は、キャリブレーターまたはローラー上における沈着物の形成、および最後にシート表面の欠陥(例えば白い点(white spots)、しわ(corrugation)等)の形成を引き起こす。ポリカーボネート摩耗はまた、キャリブレーターでの共押出ポリカーボネートシート上に粉体沈着物をもたらす。
【0013】
EP−A 0649724は、コアレイヤーおよびUV吸収剤1〜15重量%を含有する少なくとも1種のトップレイヤーの共押出によって、重量平均分子量Mw27,000〜29,500g/モルを有する、分岐状ポリカーボネートの多層プラスチックパネルの製造方法について開示している。EP−A 0300485に開示されている離型剤、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートおよびそれらとグリセリンモノステアレートとの混合物が、これらのプラスチックパネルの製造のために成形組成物中で主成分として使用されても、シートの表面はやはり長時間にわたって劣化する。
【0014】
ポリカーボネートのシートはまた、EP−A 0735074、DE−A 19727709、WO 2001/05867、WO 200105866、EP−A 0729421、EP−A 0712878、WO 2001/36511、JP−A 200254954、JP−A 2000281817、JP−A 2000302893およびJP−A 2000302894に開示されている。ここでは、ポリカーボネートは、ジフェノール類とカルボン酸ジアリールエステル類からエステル交換によって製造されている。
【0015】
JP−A 07053709は、エステル交換によるポリカーボネートの製造方法を開示しており、そのポリカーボネートはジフェニルカーボネート0.4ppm以下を含有する。
【0016】
WO 00/77073は、溶融時にエステル交換によるポリカーボネートの製造方法を開示しており、そのポリカーボネートはジフェニルカーボネートおよびその他の低分子量化合物5ppm以下を有する。
【0017】
したがって本発明の目的は、ポリカーボネートを含有する組成物であって、その組成物は上記先行技術の欠点がなく、押出または共押出でシートになり得るものを提供する。
【0018】
本発明の目的は、ポリカーボネートおよびジフェニルカーボネート(組成物の質量に対して)50ppm〜300ppmを含有する組成物によって達成することである。この組成物は本発明により提供される。
【0019】
さらに本発明は、エステル交換反応によるジフェノールとカルボン酸ジアリールエステルからのポリカーボネートの生成物を含有する、本発明による組成物の製造方法を提供する。
【0020】
さらに本発明は少なくとも1つのレイヤーAおよび少なくとも1つのレイヤーBを包含し、レイヤーAがポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートを含有し、レイヤーBが本発明による組成物を含む多層製品、好ましくは多層シートを提供する。
【0021】
特定の態様において、レイヤーAはビスフェノールAホモポリカーボネートを含む。
【0022】
さらに本発明は、レイヤーAにおいて包含したポリカーボネートまたはポリエステルカーボネート、およびレイヤーBにおいて包含した組成物の共押出を含有する、本発明による多層製品の製造方法を提供する。
【0023】
本発明による組成物の利点は、押出または共押出により組成物からシートを製造する際、押出シートが、長く、連続的なプロセスの間さえ、良好な表面品質を保持することである。シートの表面の品質を損なう沈着物は発生しない。
【0024】
本発明によるポリカーボネートを含有する組成物は、ジフェニルカーボネート(組成物の質量に対して)50ppm〜300ppm、好ましくは70ppm〜250ppm、特に好ましくは100ppm〜200ppmを包含する。
【0025】
特定の態様において、本発明による組成物は、ポリカーボネート(組成物の質量に対して)少なくとも80重量%の量を包含する。
【0026】
特定の態様において、本発明による組成物は、ビスフェノールAホモポリカーボネートを包含する。
【0027】
特定の態様において、本発明による組成物はさらに、UV吸収剤を含む。これは1種または数種の異なるUV吸収剤であり得る。
【0028】
特定の態様において、UV吸収剤は、組成物の質量に対して0〜1重量%の量で存在する。
【0029】
特定の態様において、本発明による組成物はさらに、低−揮発性UV吸収剤を含む。これは1種または数種の異なる低−揮発性UV吸収剤であり得る。
【0030】
特定の態様において、低−揮発性UV吸収剤は、組成物の質量に対して1〜20重量%の量で存在する。
【0031】
本発明による組成物において包含したポリカーボネートは、常套の方法によって製造され得る。それは例えばジフェノールおよびカルボン酸ジアリールエステルからエステル交換によって製造され得る。それは例えばホスゲンおよびビスフェノールまたはナトリウムビスフェノレート(特に、いわゆる界面プロセスによって)から製造され得る。
【0032】
両方の工程(エステル交換および界面プロセス)はSchnell著、「Chemistry and Physics of Polycarbonates」、Polymer Reviews、第9巻、Interscience Publishers、ニューヨーク、ロンドン、シドニー、1964年、およびD.C. PREVORSEK、B.T. DEBONAおよびY. KESTEN著、Corporate Research Center、Allied Chemical Corporation、モーリスタウン、ニューヨーク、ニュージャージー07960、「Synthesis of Poly(ester)carbonate Copolymers」、Journal of Polymer Science、Polymer Chemistry Edition、第19巻、75〜90頁、1980年、およびD. Freitag、U. Grigo、P.R. Mueller、N. Nouvertne、バイエルアクチェンゲゼルシャフト(BAYER AG)、「Polycarbonates」、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第11巻、第2版、1988年、648〜718頁およびBecker/Braun著、「Kunststoff-Handbuch」、第3/1巻、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル、セルロースエステル、Carl Hanser Verag、ミュンヘン、ウィーン、1992年、117〜299頁中、U. Grigo、K. KircherおよびP.R. Mueller著、「Polycarbonate」に記載されている。
【0033】
本発明による組成物のポリカーボネートは好ましくは、ジフェノールとカルボン酸ジアリールエステルからエステル交換によって製造される。エステル交換は溶融中で起こる。この製造方法で、ポリカーボネートは既にジフェニルカーボネートを含み得る。このように、本発明による組成物は、ポリカーボネートにジフェニルカーボネートを添加する必要なく得られ得る。ジフェニルカーボネートを含まないポリカーボネートを開始材料として使用するならば、少なくともより少ないジフェニルカーボネートが添加される必要がある。
【0034】
ジフェノールとカルボン酸ジアリールエステルのエステル交換反応による、ポリカーボネートの製造のための可能な方法を以下に記載する。ポリエステルカーボネートであってもよいポリカーボネートは、好適な触媒の存在下において、好適なジフェノール類およびカルボン酸ジアリールエステル類の溶融−エステル交換反応によって製造される。ポリカーボネートはまた、ヒドロキシ末端基またはカーボネート末端基を含有するカーボネートオリゴマー類、および好適なジフェノールとカルボン酸ジアリールエステルの縮合によっても得られ得る。
【0035】
界面プロセスによるポリカーボネートの製造は、好ましくは以下で行う。ビスフェノールのアルカリ塩の水性溶液を、有機溶媒、例えばハロゲン化炭化水素中のホスゲンの溶液と激しく接触させる。重縮合は、2相混合物の界面で行う。
【0036】
本発明において好適なカルボン酸ジアリールエステルは、ジ−C〜C14−アリールエステル、好ましくはフェノールのジ−エステルまたはアルキル−置換フェノール、すなわちジフェニルカーボネートおよびジ−4−t−ブチルフェニルカーボネートが挙げられる。ジフェニルカーボネートが最も好ましい。
【0037】
好適なカーボネートオリゴマーは、好ましくは平均分子量220〜15000g/モルを有する。
【0038】
好適なジ−C〜C14−アリールエステルはまた、アリール置換基の混合物を包含する、不斉ジアリールエステルを含む。フェニルクレシルカーボネートおよび4−t−ブチルフェニルフェニルカーボネートは、ここでは特に好ましい。
【0039】
好適なジアリールエステルはまた、1種以上のジ−C〜C14−アリールエステルの混合物を含む。特に好ましい混合物はジフェニルカーボネート、ジクレシルカーボネートおよびジ−4−t−ブチルフェニルカーボネートの混合物である。
【0040】
ジフェノール1モルに対して、カルボン酸ジアリールエステルは1.00〜1.30モルの量、特に好ましくは1.02〜1.20モルの量および最も特に好ましくは1.05〜1.15モルの量で使用され得る。
【0041】
本発明に関して好適なジヒドロキシベンゼン化合物は式(5):
【0042】
【化1】

[式中、Rは置換または非置換フェニル、メチル、プロピル、エチル、ブチル、塩素または臭素であり、かつnは0、1または2を示す。]
に対応するものである。
【0043】
特に好ましいジヒドロキシベンゼン化合物は、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼンおよび1,2−ジヒドロキシベンゼンである。
【0044】
本発明に関して好適なジフェノールは、式(6):
【0045】
【化2】

[式中、ZはC−C−アルキリデンまたはC−C12−シクロアルキリデン、S、SOまたは単結合を示し、および
Rは置換または非置換フェニル、メチル、プロピル、エチル、ブチル、塩素または臭素であり、かつ
nは0、1または2を示す。]
に対応するものである。
【0046】
好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロ−ヘキサン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(3−メチル−1−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−フェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,2−ビス[2−(4−ヒドロキシ−フェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0047】
特に好ましいジフェノールは、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル,1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]ベンゼンである。
【0048】
好適なジフェノールはまた、1種以上のジフェノールの混合物を含む。これはコポリカーボネートを製造する。特に好ましい混合物は、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルおよび2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0049】
ジフェノールは少量の式(5)によるジヒドロキシベンゼンの化合物を含んでもよい。
【0050】
分岐剤、例えば三官能性フェノール系OH基を含有する組成物もまた添加され得る。これはポリマーの分岐をもたらし、その結果ポリマーの非ニュートン流動特性を増加する。
【0051】
好適な分岐剤は、フロログルシノール、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ヘキサキス(hexakis)(4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェニル)オルトテレフタレート、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス(4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ)メタンおよび1,4−ビス((4’,4’’−ジヒドロキシ−トリフェニル)メチル)ベンゼン、イサチンビスクレゾール、ペンタエリスリトール、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸を包含する。
【0052】
本発明によるポリカーボネートの製造に好適な触媒は、例えば一般式(7):
【0053】
【化3】

[式中、R、R、RおよびRは同一または異なってC〜C18−アルキレン類、C〜C10−アリール類またはC〜C−シクロアルキル類を意味し、かつXはアニオンを示す。その場合対応する酸−塩基対(H+X←→HX)はpK<11を有する。]
を有するものである。
【0054】
好ましい触媒は、テトラフェニルホスホニウムフルオリド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートおよびテトラフェニルホスホニウムフェノレートである。
【0055】
テトラフェニルホスホニウムフェノレートが特に好ましい。
【0056】
好ましいホスホニウム塩触媒の量は、ジフェノール1モルあたり10−2〜10−8モルであり、かつ特に好ましい触媒の量は、ジフェノール1モルあたり10−4〜10−6モルである。
【0057】
さらに共触媒は、ホスホニウム塩に加えて、要すれば重合の速度を上昇するのに使用され得る。これらは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、例えばリチウム、ナトリウムおよびカリウムのヒドロキシド、アルコキシドおよびアリーロキシド、好ましくはナトリウムのヒドロキシド、アルコキシドまたはアリーロキシドの塩類を包含する。
【0058】
ナトリウムヒドロキシドおよびナトリウムフェノラートは特に好ましい。
【0059】
共触媒の量は、各々の場合におけるナトリウムとして計算され、例えば1〜200ppb、好ましくは5〜150ppbおよび特に好ましくは10〜125ppbであり得る。
【0060】
ポリカーボネートは、150〜400℃の温度で段階的に行われる;各々の段階における滞留時間が15分〜5時間であり、かつ圧力が1000〜0.01mbarである反応条件下で製造され得る。
【0061】
本発明による組成物は、他の添加物を含有し得る。
【0062】
本発明による組成物(共押出成形組成物)は、ベース材料として、ポリカーボネート成形組成物に利点を提供する。共押出成形組成物およびベース材料が同一の離型剤を用いて提供されるならば、特に利点がある。
【0063】
本発明による組成物は、ソリッドプラスチックシートまたはいわゆる多層シート(気泡シート(cellular sheet)、例えば二層シートとしても知られている)を製造するための共押出成形組成物として使用され得る。
【0064】
シートはまた、片方または両サイドに、特定の含有量のUV吸収剤を有する、本発明による共押出成形組成物を含む別のトップレイヤーを有するものが製造され得る。
【0065】
本発明による組成物はポリカーボネート成形体、特にそれらから製造されたシートおよび成形体(例えば温室用窓パネル、温室、バスシェルター、広告掲示板、標識、安全スクリーン、車窓、窓および屋根材)の製造を促進する。
【0066】
本発明による組成物を用いて塗装した押出体の工程、例えば深絞り(deep drawing)、または表面加工(例えば、耐引掻性ニス、撥水塗料および同様のものを塗装すること)は、さらに可能であり、かつそれらの工程で製造した成形体はまた、本発明によって提供される。
【0067】
共押出は文献公知である(例えばEP−A 0110221およびEP−A 0110238)。この場合、好ましい方法は以下の通りである:
コアレイヤーおよびトップレイヤー(類)の製造のための押出機が、共押出アダプターに接続される。アダプターは、トップレイヤー(類)を形成する溶融物の薄い層がコアレイヤーの溶融に付着して適用されるように構成される。このように製造された多層溶融ストランド(multi-layer melt strand)は、この後に接続されたノズルにおいて、所望の形状(多層またはソリッドシート)に変換される。次いで溶融物は既知の方法(カレンダー(ソリッドシート)または真空キャリブレーション(vacuum calibration)(多層シート))で制御された条件下で冷却され、次いで切断される。キャリブレーションの後、焼戻しオーブンを要すれば用いて、応力を排除する。ノズルの前に装着されたアダプターの代わりに、ノズル自体を、溶融物がそこで組合されるように設計してもよい。
【実施例】
【0068】
以下の実施例は、発明を例示するために用いる。この実施例は、本発明の特定の態様のみである。本発明は、この実施例の範囲に、限定されない。
【0069】
ポリカーボネート1の製造:
ポリカーボネート1を、触媒としてテトラフェニルホスホニウムフェノレートを用いて、溶融中でジフェニルカーボネートとビスフェノールAとの重縮合によって製造した。ポリカーボネート1は、300℃および荷重1.2kgでの溶融流量(MFR)(ISO 1133)5.8g/10分を有する。
【0070】
組成物(コンパウンド)の製造:
配合が以下の表に与えられている物質混合物を混合し、310℃で二軸押出機において押出(コンパウンド)し、次いで粒状化した。割合は全て重量%として与えられる。
【0071】
【表1】

【0072】
*) 2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール];ドイツ、ランぺルトハイム、チバ・スペツィアリテーテンケミーから市販されている。
**) 2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール;ドイツ、ランぺルトハイム、チバ・スペツィアリテーテンケミーから市販されている。
***) ペンタエリスリトールテトラステアレート;ドイツ、デュッセルドルフ、コグニス(Cognis)から市販されている。
【0073】
Makrolon(登録商標)3108は、300℃および荷重1.2kgで溶融流量(MFR)(ISO 1133)6.5g/10分である直鎖状ビスフェノールAホモポリカーボネートである;Makrolon(登録商標)3108は、ドイツ、デー53168レーフェルクーゼン、バイエルAGから市販されている。
【0074】
コンパウンド中のジフェニルカーボネート(DPC)含量を、HPLC(高圧−液体クロマトグラフィー)によって測定した。得られた結果を以下に示す:
【0075】
【表2】

【0076】
コンパウンドEは、配合にればジフェニルカーボネート400ppmが添加されたが、330ppmだけを含有する。ジフェニルカーボネートの一部は、化合物の製造の間揮散したと思われる。
【0077】
二層シート類の製造:
例えばEP−A 0110238に開示されているように、厚さ10mmを有する二層シート(気泡シートとしても知られている)を、以下に示す成形組成物から製造した: Makrolon(登録商標)1243(ドイツ、レーフェルクーゼン、デー53168、バイエルAGから市販されている、300℃および荷重1.2kgでの溶融流量(MFR)(ISO 1133)6.5g/10分である分岐状ビスフェノールAホモポリカーボネート)をベース材料として使用した。これは、上記表において与えられた化合物A、BおよびEとで共押出した。コンパウンドA、BおよびEは、界面プロセスにおいて製造されたポリカーボネート1またはMakrolon(登録商標)3108を含有する。
共押出レイヤーは各々の場合において厚さ50μmであった。
【0078】
ソリッドシート類の製造:
厚さ2mmを有するソリッドシートをMakrolon(登録商標)3103(ドイツ、レーフェルクーゼン、デー53168、バイエルAGから市販されている、300℃および荷重1.2kgでの溶融流量(MFR)(ISO 1133)6.5g/10分である直鎖状ビスフェノールAホモポリカーボネート)から製造した。これは、界面プロセスにおいて製造されたポリカーボネート1またはMakrolon(登録商標)3108に基づいて、表に与えられた化合物BおよびDと共押出した。共押出レイヤーは各々の場合において厚さ約60μmであった。
【0079】
多層シートの生産に用いた機械と装置を以下に記載する:
多層シートの製造装置は以下からなる:
−長さ33Dおよび直径70mmのスクリューを有するベント式主押出機
−共押出アダプター(フィードブロックシステム)
−長さ25Dおよび直径30mmのスクリューを有するトップレイヤーを適用するための共押出機
−幅350mmのスペシャルフラットシートダイ
−キャリブレーター
−ローラートレイン(roller train)
−巻き取り装置(take-off device)
−切断装置(のこぎり(saw))
−受容テーブル
【0080】
以下からなるソリッドシート類の生産装置:
−長さ33Dおよび直径60mmのスクリューを有するベント式主押出機
−共押出アダプター(フィードブロックシステム)
−長さ25Dおよび直径30mmのスクリューを有するトップレイヤーを適用するための共押出機
−幅350mmのスペシャルフラットシートダイ
−研磨スタック(polishing stack)
−ローラートレイン
−巻き取り装置
−切断装置(のこぎり)
−受容テーブル
【0081】
ベース材料のポリカーボネート粒子を、主押出機の充填ホッパーに挿入し、かつ共押出装置のそれにUV−吸収剤を含有する共押出材料を挿入する。各々の材料を溶融し、各々の可塑化システム(シリンダー/スクリュー)上に供給した。2種の材料溶融物を、共押出アダプターにおいて組み合わせて、ノズルを離れ、かつキャリブレーター中で冷却した後にコンパウンドを形成した。その他の装置を、押出したシートを移動、切断および受容するために用いた。
【0082】
共押出試験の評価:
コンパウンドAを用いた共押出(参考):
−2.5時間後に、最初の広範囲にわたる欠陥が起こった
−4時間後に、シート表面が破断した
−したがって全体的な評価成績:不良
【0083】
コンパウンドB(本発明による)を用いた共押出:
−2.5時間後に、最初の小さな沈着物が発生した
−3.5時間後に、最初の広範囲にわたる欠陥が起こった
−シート表面の破断は観察されなかった
−したがって全体的な評価成績:良好
【0084】
コンパウンドCを用いた共押出(参考):
−30分後に、最初のローラー沈着(roller deposits)が発生した。これはシート品質に非常にわずかな消極的影響を及ぼした
−シート表面の視認し得る凹凸と共に、3時間後にローラー上に大きな沈着物が発生した。
−したがって全体的な評価成績:不良
【0085】
コンパウンドD(本発明による)を用いた共押出:
−ローラー沈着物は、4時間の押出時間全てにわたって、コンパウンドCよりかなり低かった。
シートの表面上に有害な影響はなかった
−したがって全体的な評価成績:良好
【0086】
コンパウンドE(参考):
−1.5時間後に、最初の小さな沈着物が発生した
−1時間45分後に、最初の広範囲にわたる欠陥が起こった
−シート表面の破断は観察されなかった
−したがって全体的な評価成績:不良

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートおよびジフェニルカーボネート(組成物の質量に対して)50ppm〜300ppmを含有する組成物。
【請求項2】
組成物が、ポリカーボネート(組成物の質量に対して)少なくとも80重量%を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
組成物が、さらにUV−吸収剤3〜5重量%を含有する、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
ポリカーボネートが、ビスフェノールAホモポリカーボネートである、請求項1〜3いずれかに記載の組成物。
【請求項5】
ビスフェノール類と炭酸ジアリールエステル類とのエステル交換からのポリカーボネートの製造を包含する、請求項1〜4いずれかに記載の組成物の製造方法。
【請求項6】
少なくとも1つのレイヤーAおよび少なくとも1つのレイヤーBを包含し、該レイヤーAがポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートを含有し、該レイヤーBが請求項1〜4いずれかに記載の組成物を含有する、多層製品。
【請求項7】
製品が、レイヤー順B−A−Bを有する、請求項6記載の多層製品。
【請求項8】
レイヤーAが、ビスフェノールAホモポリカーボネートを含有する、請求項6または7記載の多層製品。
【請求項9】
多層製品が、多層シートである、請求項6〜8いずれかに記載の多層製品。
【請求項10】
レイヤーA中のポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートおよびレイヤーB中で含有する組成物の共押出からなる、請求項6〜9いずれかに記載の多層製品の製造方法。

【公表番号】特表2006−503136(P2006−503136A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544092(P2004−544092)
【出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011056
【国際公開番号】WO2004/035674
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】