説明

ジフェニルメタン系のジおよびポリアミンの製造方法

本発明は、ジフェニルメタン系のジおよびポリアミンの製造方法、および、これらのジおよびポリアミンからジフェニルメタン系のジおよびポリイソシアネートを製造する方法に関する。ジフェニルメタン系のジおよびポリアミンは、塩酸の存在下でのアニリンとホルムアルデヒドとの反応によって製造される。本発明において、用いられるホルムアルデヒドは、0.001重量%未満の2価および/または2価より高い価数の金属イオンを含む水溶液として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフェニルメタン系のジおよびポリアミンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジフェニルメタン系のジおよびポリアミンは、以下の構造を有する化合物および化合物の混合物を意味するものとして理解される:
【0003】
【化1】

【0004】
式中nは、ゼロに等しいか、または、それより大きい自然数を示す。
ジフェニルメタン系のジおよびポリアミン(または、以下の文中ではMDAと称する)の連続製造、不連続な製造または半連続製造が多くの特許および出版物で説明されている。例えば、H.J.Twitchett,Chem.Soc.Rev.3(2),209(1974),M.V.Moore in Kirk−Othmer Encycl.Chem.Technol.,第3版,ニューヨーク,2,338−348(1978)を参照。これらのポリアミンの製造は、慣習的には、酸性触媒の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させることによって行われている。酸性触媒として、慣習的には、塩酸水溶液が用いられる。従来技術によれば、酸性触媒は、塩基の添加により中和されるため、プロセスの最後に、および、最終的な処理工程(例えば、蒸留による過量のアニリンの除去)の前に使い切られる。慣習的には、ホルムアルデヒドは、工業的には、30〜50重量%の濃度で含まれる水溶液として使用されている。しかしながら、その他の濃度のホルムアルデヒド水溶液、または、メチレン基を供給するその他の化合物を用いることも可能である。上述したようなその他の適切な化合物としては、例えば、ポルオキシメチレングリコール、パラ−ホルムアルデヒド、メチラール、または、トリオキサンが挙げられる。
【0005】
ジフェニルメタン系のジおよびポリイソシアネート(以下の文中ではMDIと称する)は、それに対応するジおよびポリアミン(MDA)のホスゲン化によって製造される。従って、この方法で製造されたジフェニルメタン系のジおよびポリイソシアネートは、それらの製造に用いられたポリアミンと同じ組成物中に様々なイソシアネート異性体、および、それらのより高度な相同体を含む。現行の方法に従って製造されたMDAをMDIに変換するために、あらゆる多種多様なホスゲン化およびそれに伴う処理工程を適用することができる。
【0006】
ポリウレタンまたはその他の材料もしくは生成物の製造におけるその後のポリイソシアネートの使用のために、不純物のレベルが概して低く比較的一貫した濃度であることが重要である。それに関して特に注目すべきことに、塩素化された不純物[いわゆる「イオン化」および「加水分解性」塩素などを産生する]のレベルが、ポリウレタン製造で一般的に使用されているアミン触媒を阻害する可能性がある。
【0007】
MDAの製造過程において、慣習的には、酸性反応混合物を塩基で中和する。中和後に、慣習的には、有機相を分離容器中で水相から分離する。水相中に残留した生成物を含む有機相を分離し、続いて、慣習的には、例えば水で洗浄し、続いて、例えば蒸留、抽出または結晶化によって過量のアニリンおよび混合物中に存在するその他の物質(例えば、さらなる溶媒)を除去することなどのさらなる処理工程で加工する。
【0008】
しかしながら、プラントでの経験から、中和後に生成物を含む有機相から水相を分離すること、および/または、それに続く洗浄は、第三の相(ラグ(rag)またはラグ層(rag layer))が形成されるために著しい損失を引き起こす可能性があることがわかっている。この第三の相は、安定した、場合によっては嵩のある中間相であり、この中間相は、典型的には、水相と有機相との間に生じ相分離を困難にする固体が存在することを特徴とする。極端な例を言えば、この第三の相も相分離を徹底的に妨害する。プラントにおける工程に関する最も不利なケースでは、影響を受ける相分離タンクまたはタンク群を完全に空にして、きれいにしなければならない。続いて相分離タンクまたはタンク群の内容物を多大な努力で処理するか、または廃棄しなければならなず、これはかなりのコストを伴う。ある種の環境下では、それにより連続生産を中断しなければならない事態が生じる可能性もある。
【0009】
中和段階における比較的少量の固体の存在は、必要な分離を行うことができる程度に十分に量が少ない場合、プラント稼働の観点から許容することができる。連続工程において、ラグ層を形成する可能性がある固体の形成速度も、工程を中断しなければならなくなる前に、ある程度の時間、生産が継続できる程度に十分に低いこともある。
【0010】
しかしながら、驚くべきことに、このような固体がMDA生産において問題を引き起こさないレベルでMDA中に存在していたとしても、MDI生産において問題が生じる可能性があり、最終的にはイソシアネート生成物の使用が結果的に起こり得ることが見出された。例えば、MDAをMDIに変換する製造工程において、元のMDAに存在する固体は、これらに限定されないが、例えば上昇薄膜蒸発器、流下薄膜蒸発器、ノズル、蒸留塔のトレイおよび充填材、インラインフィルターなどの各種工程で用いる器具の汚染に寄与する可能性があるか、または、モノクロロベンゼンのホスゲン化溶媒からのジクロロベンゼンの形成のような望ましくない副反応を触媒する可能性がある。さらにその上、MDI生産に用いるためのMDA中にこのような固体が存在することにより生じた問題としては、これらに限定されないが、望ましいポリウレタン生成物の製造で各種ポリエーテルまたはポリエステルポリオールと反応した場合、最終的なMDI生成物の外観が濁っていること、または、様々で予想外の反応性を有することが挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】H.J.Twitchett,Chem.Soc.Rev.3(2),209(1974),M.V.Moore in Kirk−Othmer Encycl.Chem.Technol.,第3版,ニューヨーク,2,338−348(1978)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、ある種の稼働上の問題がなく、反応性などの望ましい特性を有するイソシアネート生成物を産生する、簡単で経済的なジフェニルメタン系のジおよびポリイソシアネートの製造方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、中和および/またはそれに続く洗浄の後に生成物を含む有機相から水相を分離することを、簡単に、且つ問題なく行うことができる、簡単で経済的なジフェニルメタン系のジおよびポリアミンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、塩酸の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させることを含むジフェニルメタン系のジおよびポリアミンの製造方法に関し、ここで用いられるホルムアルデヒドは、0.001重量%未満の2価および/または2価より高い価数の金属イオンを含む水溶液として用いられる。
【0015】
本発明のその他の形態は、これらのジフェニルメタン系のジおよびポリアミンからジフェニルメタン系のジおよびポリイソシアネートを製造する方法である。本方法は、上述の方法によって生産されたジフェニルメタン系のジおよびポリアミンとホスゲンとを反応させ、それに対応するジフェニルメタン系のジおよびポリイソシアネートを産生することを含む。
【0016】
本発明のその他の形態は、ホルムアルデヒド溶液の純度が低い場合に、問題を含むラグ層が形成される前に工程制御が行えるように、用いられたホルムアルデヒド水溶液の純度をモニターするためのオンラインでの解析方法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によれば、0.001重量%未満という限定は、2価の金属イオンおよび/または2価より高い価数の金属イオンの濃度の合計に関連する。好ましくは、本発明で用いられるホルムアルデヒド水溶液は、0.0005重量%未満(すなわち、0以上、0.0005重量%未満)、最も好ましくは0.0003重量%未満(すなわち、0以上、0.0003重量%未満)の2価の金属イオンおよび/または2価より高い価数の金属イオンを含む。
【0018】
MDAの製造に必要なホルムアルデヒドは、様々な源または工程から生じたものであってもよい。好ましくは、ホルムアルデヒド水溶液は、十分な純度を有する水(例えば脱イオン水)にガス状のホルムアルデヒドを吸収させることによって製造される。これに関して、ホルムアルデヒド水溶液は、慣習的には、40〜50重量%のホルムアルデヒド濃度を有するが、それより高い、または、それより低い濃度であることもあり得る。少量の不純物(例えばメタノール)および添加剤(例えば、安定剤としてのポリビニルアルコール)が存在していてもよい。
【0019】
本願で用いられるように、2価および/または2価より高い価数の金属イオンという成句は、元素周期表の主要な2〜6族、亜族1〜8、ランタニド系および/またはアクチニド系に由来する金属の、酸化レベルが+2より大きい、または、+2に等しいイオンを意味するものと理解される。このような金属の例としては、例えば、マグネシウムおよびカルシウムのようなアルカリ土類金属が挙げられ、または、アルミニウムおよび鉄のような金属も挙げられる。本発明におけるホルムアルデヒド水溶液中の個々の金属イオンの濃度は、好ましくは、0.0003重量%未満である。特に、大量の鉄の存在は、ポリウレタン材料の製造においてポリオールとの反応性が制御されないために、ポリイソシアネートの最終的な特性に影響を与える。
【0020】
本発明に係る方法は、連続的および半連続的のいずれで行ってもよく、さらに不連続的、またはバッチ式で行ってもよい。
本発明の方法によって、ジフェニルメタン系のポリアミンは、プロトン付加の程度が15%未満で製造することができるが、それより高い程度のプロトン付加も可能である。これに関して、塩酸が使用されるケースにおいて、用いられる塩酸の量のモル比、および、反応混合物中に存在するアミン基のモル量が、プロトン付加の程度と呼ばれる。
【0021】
ジフェニルメタン系の適切なポリアミン混合物は、慣習的には、アニリンとホルムアルデヒドとを1.5:1〜20:1のモル比で縮合することにより得られる
好ましい実施態様によれば、高純度の塩酸が本発明の方法で用いられ、ここで前記塩酸は、0.001重量%未満の2価の金属イオンおよび/または2価より高い価数の金属イオンを含む。
【0022】
本発明の方法で用いられる塩酸の濃度は、一般的に、30〜37重量%である。
本発明の方法の一実施態様において、本方法は、まず、アニリンと塩酸とを混合すること、続いて、この混合物にホルムアルデヒド水溶液を添加することを含む。しかしながら、加えて、アニリン、ホルムアルデヒド水溶液および塩酸を異なる順番で混合してもよいし、または、これらを同時に混合してもよい。
【0023】
本発明によれば、本方法は、例えば、撹拌タンクにアニリン、ホルムアルデヒド水溶液および塩酸を導入し、これらを混合することを含む手法(任意に、発生する反応と平行して、蒸留によってある程度の水を除去または分離することを含んでいてもよい)によって行うことができる。不連続な方法において、アニリン、ホルムアルデヒド溶液および塩酸は、任意に、時間基準で計量するグラフに応じて添加してもよく、それに伴い、例えば減圧蒸留による抽出物の添加中に、または、その後に、水を分離することも可能である。アニリン、ホルムアルデヒド溶液および塩酸水溶液の混合は、20〜60℃の温度で起こることが好ましい。
【0024】
その他の実施態様において、本発明は、まず、アニリンとホルムアルデヒド水溶液とを混合すること、および、酸性触媒の非存在下で、20℃〜100℃の温度で、好ましくは40℃〜100℃の温度で、および、最も好ましくは60℃〜95℃の温度で反応させることを含む。この手法の最中に、アニリンおよびホルムアルデヒドの縮合生成物(すなわち、いわゆるアミナル(aminal))が形成される。アミナル形成後に、アミナルに含まれる水は、例えば相分離によって、または、例えば蒸留のような、その他の適切な方法によって、少なくとも部分的に除去される。続いて、アミナルと塩酸とを、好ましくは20〜60℃の温度で、および、好ましくは10kW/mより大きい特定の電力を注入しながら混合する。
【0025】
酸性触媒の添加および水の除去は、例えば、塩酸水溶液を生産されたアミナルを含む撹拌タンクに導入し、任意に反応中に蒸留することによってある程度の水を除去して、縮合生成物を得る手法によって行うことができる。
【0026】
上記の実施態様の一つに従って得られた反応混合物のさらなる反応は、従来の反応器具で行われる。例えば、適切な器具としては、撹拌反応器、チューブ型反応器、および/または、例えば、反応器中の滞留時間の特性に効果を有する穴の開いたトレイのような隔壁を有するチューブ型反応器が挙げられる。また数種のタイプの反応器の組み合わせも適切である。
【0027】
好ましくは、反応混合物の温度は、段階的に、または、連続的に、任意に高い圧力下で、110℃〜250℃の温度に、より好ましくは110℃〜180℃の温度に、最も好ましくは110℃〜160℃の温度にされる。必要な滞留時間は、完全な変換が確実に起こるように選択される。
【0028】
また塩酸の存在下でのアニリンとホルムアルデヒドとの反応は、さらなる物質の存在下で行うこともできる。その他の適切な物質としては、例えば、塩、有機酸または無機酸が挙げられる。
【0029】
全てのケースにおいて、ホルムアルデヒド水溶液中の2価および/または2価より高い価数の金属イオンをオンラインでモニターすることは、好ましくは、その他のあらゆる反応物または反応混合物にホルムアルデヒド水溶液を添加する前に、ホルムアルデヒド水溶液に対して行われる。適切な解析方法としては、多様な範囲の電磁スペクトルで金属イオン内で起こる特徴的な電子遷移に基づく方法が挙げられる。従って、原子吸光もしくは発光分光分析(AASまたはAES)のような方法、または、X線放射または吸収に基づく方法が好ましい。また、例えば誘導結合プラズマを用いた質量分析技術(ICP−MS)も使用できる。オンラインでの解析のために、このような選択された技術は、適切なサンプリングおよびサンプル調整システムを利用して使用できるが、このようなサンプリングおよびシステムの多くは従来技術で説明されている。あるいは、従来のサンプリングおよび実験室ベースの解析を用いてもよい。オンラインでの解析は、分析データの提供がより迅速であり、従って、工程制御(手動での制御、または、自動制御システムを介した制御のいずれか)の機会が増加するために好ましい。
【0030】
酸性の反応混合物を処理するために、反応混合物は、慣習的には、塩基で中和される。従来技術によれば、中和は、慣習的には、例えば90〜100℃の温度で、さらなる物質を添加することなく行われる。(H.J.Twitchett,Chem.Soc.Rev.3(2),223(1974)を参照)。しかしながら、中和は、問題のある副産物の分解を促進するために、その他の温度レベルで行うこともできる。適切な塩基としては、例えば、アルカリおよびアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。好ましくは、NaOH水溶液が用いられる。
【0031】
中和に用いられる塩基は、好ましくは、用いられた酸性触媒を中和するのに化学量論的に必要な量の100%より多い量で用いられ、より好ましくは105%〜120%で用いられる。過量分を最小化することは、経済的な理由から有益なのは明らかである。
【0032】
中和後、有機相は、慣習的には、分離タンク中で水相から分離される。続いて、水相を分離した後に残った生成物を含む有機相は、慣習的には、追加の処理工程(例えば、水での洗浄)で加工され、続いて、例えば蒸留抽出または結晶化のような適切な方法によって、過量のアニリンおよび混合物中にに存在するその他の物質(例えば、追加の溶媒)を除去する。
【0033】
本発明によれば、0.001重量%未満の2価および/または2価より高い価数の金属イオンを含むホルムアルデヒド水溶液の使用によって、中和、および/または、それに続く洗浄後のMDAを含む有機相からの水相の分離を、簡単に、且つ問題なく行うことができる。これは、ホルムアルデヒド水溶液中の2価および/または2価より高い価数の金属イオンの含量が低いためであり、それにより、相分離を妨げるか、または、相分離を困難にする第三の相(すなわちラグまたはラグ層)が形成されなくなる作用がある。
【0034】
この方法で製造されたジおよびポリアミンを、既知の方法によって不活性な有機溶媒中でホスゲンと反応させて、それに対応するジフェニルメタン系のジおよびポリイソシアネート、すなわちMDIを産生することができる。未精製のMDAのホスゲンに対するモル比は、便宜上、反応混合物中に、NH基1モルあたり適切には1〜10モル、好ましくは1.3〜4モルのホスゲンが存在するように選択される。塩素化した芳香族炭化水素、例えばモノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、それに対応するトルエンおよびキシレン、ならびにクロロエチルベンゼンなどが、適切な不活性溶媒であることが証明されている。不活性な有機溶媒として、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、または、これらのクロロベンゼンの混合物が好ましく用いられる。溶媒の量は、反応混合物が、反応混合物の総重量に基づいて、適切には2〜50重量%、好ましくは5〜25重量%のイソシアネート含量を有するように選択される。ホスゲン化が終了したら、過量のホスゲン、不活性な有機溶媒および/またはそれらの混合物を蒸留によって反応混合物から分離する。
【0035】
二核の、および、二つより多い核を有するジフェニルメタン系のジおよびポリイソシアネートを含む高分子MDI系の生成物、および、ジフェニルメタン系の二核のジイソシアネートを含むモノマーMDI系の生成物は、得られた未精製のMDIから製造することができる。具体的には、25℃で80〜3000mPasの高粘度の高分子MDIタイプ、工業グレードの4,4’−MDI、および/または、工業グレードの2,4’−MDI、加えてそれらの混合された形態を製造することができる。これらの生成物は、従来技術に従って、例えば蒸留によって、未精製のMDIから分離することができる。これらの生成物は、ポリウレタン製造の原材料として、ポリオールとの反応により、ポリマーおよびプレポリマーの形態で使用するのに適している。
【0036】
本発明に従って、特許請求された低いレベルの2価または2価より高い価数の金属と共にホルマリンを用いて製造された生成物は、これらのポリオールとの制御された反応性を示し、これは、これらの金属をより高レベルで含むホルマリンを用いて製造された生成物とは対照的である。
【0037】
以下の実施例で、本発明の方法の詳細をさらに説明する。本発明を前述の開示で示したが、これらの実施例によって本質または範囲のいずれも限定されることはない。当業者であれば、以下の手法に関する条件に関して知られている変動を使用してもよいことは容易に理解できるであろう。特に他の規定がない限り、全ての温度はセルシウス度であり、全てのパーセントは重量パーセントである。
【実施例】
【0038】
ガラス製の三つ口フラスコ中に、還流冷却器で撹拌しながらアニリン(111,756g)(1.2モル)を入れた。このアニリン溶液に、30℃で撹拌しながら37重量%濃度の塩酸水溶液11.82g(0.12モル)を添加した。続いてこの混合物を50℃で20分間撹拌した。ホルムアルデヒドを水溶液として用いた(これは、一般的にホルマリンと呼ばれる)。2種類のグレードのホルムアルデヒド溶液を用いた:
1)高い安定性のグレード(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)):37重量%濃度のホルムアルデヒド水溶液40.58g(0.5モル)、これは、貯蔵中の重合度を制限するため約10重量%メタノールを含む;
2)低い安定性のグレード;47重量%濃度のホルムアルデヒド水溶液31.95g(0.5モル)、これは、重合度を制限するための約1重量%メタノール、および、安定剤を含む。
【0039】
上記ホルムアルデヒド溶液をアニリン/HCl混合物に滴下漏斗を用いて30分間にわたり一滴ずつ添加し、温度を80℃以下に維持した。立証のために、金属イオンを塩化物塩の形態で高純度のホルマリンに添加した。表1に、各ホルムアルデヒド溶液中に存在する金属イオンの量を示す。添加が完了した後、この混合物を、100℃でさらに4時間、還流下で撹拌し、90℃で一晩オーブン中に置き、次の日この混合物を、33重量%の水酸化ナトリウム溶液17.45gで中和した。
【0040】
以下の表に結果を示す。
以下の表から、ホルムアルデヒド溶液中の金属イオン含量合計が3×10−4重量%未満の場合、固体もラグ層も形成されなかったことが観察できる。それよりもわずかに高いレベルの場合、少量の固体物質を観察することができたが、これは、実質的なラグ層を形成するには不十分であり、実際には、この程度の量ではラージスケールの生産プラントの稼動に関して重篤な問題を引き起こさないと予想され、従って、長期間にわたり運転を継続することができる。
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させることを含むジフェニルメタン系のジおよびポリアミンの製造方法であって、用いられるホルムアルデヒドが、0.001重量%未満の2価および/または2価より高い価数の金属イオンを含む水溶液として用いられることを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
前記用いられるホルムアルデヒドが、0.0005重量%未満の2価および/または2価より高い価数の金属イオンを含む水溶液として用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記用いられるホルムアルデヒドが、0.0003重量%未満の2価および/または2価より高い価数の金属イオンを含む水溶液として用いられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記2価および/または2価より高い価数の金属イオンそれぞれの濃度が、0.0003重量%未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記用いられるホルムアルデヒドが、Ca2+、Mg2+、Al3+、および、Fe2+からなる群より選択される金属イオンを含む水溶液として用いられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記塩酸が、0.001重量%未満の2価および/または2価より高い価数の金属イオンを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記塩酸の存在下でのアニリンとホルムアルデヒドとの反応が、プロトン付加の程度が20%未満で行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
その後、前記反応混合物が塩基で中和される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
その後、前記有機相が、水相から分離される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
その後、前記ジフェニルメタン系のジおよびポリアミンが、ホスゲンと反応させることによってそれに対応するジフェニルメタン系のジおよびポリイソシアネートに変換される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程のモニター、または、用いられたホルムアルデヒド水溶液の純度の工程制御のために、金属イオン内で起こる特徴的な電子遷移を用いる方法、または、質量分析技術に基づくオンラインでの解析が用いられる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−529065(P2010−529065A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510723(P2010−510723)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056019
【国際公開番号】WO2008/148631
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(500030150)ハンツマン・インターナショナル・エルエルシー (56)
【Fターム(参考)】