説明

ジフルオロメチレンオキシ基を持つ液晶化合物の製造方法

【課題】 ジフルオロメチルエーテル誘導体を、容易に安全にかつ高収率で製造することができる。
【解決の手段】 式1で表されるシクロヘキセニルジフルオロ酢酸エステルを出発原料とする、式2で表されるジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法とする。


式中、RおよびRはそれぞれ独立して、例えば炭素数1〜20のアルキル基であり;Rは、1価の有機基または無機基であり;環A、環A、環A、および環Aはそれぞれ独立して、例えば1,4−シクロヘキシレン基、または1,4−フェニレン基であり;Z、Z、Z、およびZはそれぞれ独立して、例えば炭素数1〜4のアルキレン基であり;Y、Y、Y、およびYはそれぞれ独立して、例えば炭素数1〜10のアルキル基であり;k、l、mおよびnはそれぞれ独立して、0または1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶性化合物として有用なジフルオロメチレンオキシ誘導体の簡便かつ効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は液晶性化合物が有する光学異方性および誘電率異方性を利用するものであり、時計を初めとし、電卓、各種測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、プリンター、パーソナルコンピューター、テレビジョン、携帯電話等に広く利用され、その需要も年々増加傾向にある。液晶相は固体相と液体相の中間に位置し、ネマチック相、スメクチック相、およびコレステリック相に大別される。中でもネマチック相を利用した表示素子が現在最も広く使用されている。一方表示方式はこれまで多数のものが考案され、動的散乱型(DS型)、ゲスト・ホスト型(GH型)、ねじれネマチック型(TN型)、超ねじれネマチック型(STN型)、薄膜トランジスター型(TFT型)、強誘電液晶(FLC)等が知られている。
【0003】
これらの分野における近年の開発傾向は携帯電話に代表されるように液晶表示素子の小型化、低消費電力化および高速応答化を中心に推進されており、これに用いられるためには、すなわちしきい値電圧が低く、粘度も小さい液晶性化合物および液晶組成物であることが要求されている。
【0004】
しきい値電圧(Vth)は、以下の式にて表されるように誘電率異方性(Δε)の関数である(Mol. Cryst. Liq. Cryst., 12, 57 (1970))。
Vth=π(K/ε0Δε)1/2
(式中、Kは弾性定数、ε0は真空の誘電率である。)
この式からわかるように、しきい値電圧を小さくするためには誘電率異方性を大きくする方法、または弾性定数を小さくする方法の2通りの方法が考えられる。しかし、既存の技術では弾性定数のコントロールは困難であることから、誘電率異方性の大きな材料を使用することにより低しきい値電圧の要求に対処している。そのため誘電率異方性の大きな液晶性化合物の開発が活発に行われている。また粘度は液晶分子の電場に対する応答速度を支配する要素であり、高速応答性を示す液晶組成物を調製するためには粘度の小さい液晶性化合物を多量に使用することが好ましい。
【0005】
近年情報端末、携帯ゲーム機等としての用途に液晶表示素子が普及している。これら表示素子は電池での駆動を必然とするため、低いしきい値電圧で駆動し、かつ長時間の使用が可能となるように低消費電力であることが要求される。特に素子自身の消費電力を低くするために、最近ではバックライトを必要としない反射型の表示素子の開発が盛んである。これら反射型の表示素子に使用される液晶組成物にはしきい値電圧が低いことに加え、その光学異方性が小さいことも要求される。このため組成物を構成する液晶材料としても誘電率異方性が大きくかつ光学異方性が小さな液晶性化合物の開発がこの分野の鍵となっている。TFT型の液晶表示素子に使用される、代表的な低電圧駆動用液晶材料として下記の化合物31および32を示すことができる(特許文献1参照。)。
【0006】

式中Rはアルキル基を表す。
【0007】
化合物31および32は何れも分子の末端に3,4,5−トリフルオロフェニル基を有し、低電圧駆動用の液晶材料として期待されているものである。しかし、上述の反射型表示素子用途としては、化合物31は誘電率異方性(Δε=〜10)が小さく、また化合物32は誘電率異方性(Δε=〜12)では満足できるものの、光学異方性が約0.12と大きく、これらの化合物の使用では上述の要求を十分満足できる液晶組成物の調製は困難と考えられていた。
【0008】
しかし、上述の化合物31と同等の透明点、光学異方性および粘度を示しながら、その誘電率異方性(Δε)は約14と化合物31よりも遥かに大きな値を示し、上述の反射型表示素子用液晶材料としての用途の他、種々のTFT方式における低電圧駆動用液晶材料として期待されている、結合基にジフルオロメチレンオキシ基を有する化合物33が開示されている(特許文献2参照。)。
【0009】


式中、Rはアルキル基を示す。
【0010】
上記ジフルオロメチレンオキシ基を結合基に有する化合物の製造方法は三つ知られている。第一の方法は、対応するエステル誘導体をローソン試薬(Fieser13,38)にてチオノエステル誘導体に変換し、酸化剤の存在下、フッ化水素−ピリジンを反応させてフッ素化し製造する方法である(特許文献2、特許文献3参照。)。
【0011】


【0012】
式中、Rはアルキル基であり、環A’、環A’、環A’は1,4−シクロヘキシレン基または1,4−フェニレン基であり、Z’は単結合または−CHCH−である。
【0013】
第二の方法は、対応するカルボン酸誘導体に1,3−プロパンジチオールおよびトリフルオロメタンスルホン酸を反応させてジチアリウムトリフラートに変換した後、3,4,5−トリフルオロフェノール、トリエチルアミン、次いでフッ化水素−トリエチルアミンおよび1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインを反応させて製造する方法である(特許文献4参照。)。
【0014】

【0015】
第三の方法は、対応するα,α−ジフルオロシクロヘキシリデン誘導体に臭素を付加させた後、塩基性条件下で3,4,5−トリフルオロフェノールと反応させ、最後に水素添加させて製造する方法である(特許文献5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平2−233626号公報
【特許文献2】特開平10−204016号公報
【特許文献3】特開平5−255265号公報
【特許文献4】国際公開第01/64667号パンフレット
【特許文献5】特開2002−53513公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、上記の三つの方法は、腐食性が大きいまたは悪臭が強い試薬を使う、収率が高くなく副生成物が多い、スケールアップが容易でないといった課題がある。そこで、液晶化合物として好適な諸物性を発現するジフルオロメチレンオキシ誘導体の、簡便なる製造方法の開発が望まれていた。本発明の目的はジフルオロメチレンオキシ誘導体の簡便かつ効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは前述した課題を解決すべく鋭意検討した結果、シクロヘキセニルジフルオロ酢酸エステル誘導体、シクロヘキシリデンプロピオン酸エステル、またはビニルジフルオロ酢酸エステル誘導体を出発原料として、加水分解し、酸塩化物への変換、脱炭酸臭素化、ウィリアムソンエーテル化、そして水素添加することにより、目的とするジフルオロメチレンオキシ誘導体が高収率で得られることを見出した。
【0019】
また、脱炭酸臭素化した後水素添加し、ウィリアムソンエーテル化によりジフルオロメチレンオキシ誘導体が高収率で得られることも見出した。さらにシクロヘキセニルジフルオロ酢酸エステル誘導体、シクロヘキシリデンプロピオン酸エステル、またはビニルジフルオロ酢酸エステル誘導体に水素原子を付加させ、加水分解、酸塩化物への変換、脱炭酸臭素化、ウィリアムソンエーテル化によりジフルオロメチレンオキシ誘導体が高収率で得られることも見出し、本発明を完成させるに至った。
【0020】
以下、各製造方法での説明では、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドを「DCC」と示し、N−ヒドロキシピリジンチオンを「オマジン」と示し、N−ヒドロキシピリジンチオンナトリウム塩を「ナトリウムオマジン」と示し、4−ジメチルアミノピリジンを「DMAP」と示す。
まず、最初の出発原料を用いた本発明は、式1で表されるシクロヘキセニルジフルオロ酢酸エステルを出発原料とする式2で表されるジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法である。
【0021】

【0022】
式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、または炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基中の任意の−CH−は−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−に置き換えられてもよいが、−O−が連続することはなく、またアルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよく;Rは、1価の有機基または無機基であり;環A、環A、環A、および環Aはそれぞれ独立して、任意の−CH−が−O−、−S−で置き換えられてもよい1,4−シクロヘキシレン基、任意の=CH−が=N−で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、または環上の任意の水素原子がフッ素原子、シアノ基または炭素数1〜10のアルキル基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基であり;Z、Z、Z、およびZはそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜4のアルキレン基であり、アルキレン基中の任意の−CH−は−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−に置き換えられてもよいが、−O−が連続することはなく、またアルキレン基中の任意の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよく;Y、Y、Y、およびYはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、または炭素数1〜10のアルキル基であり;k、l、mおよびnはそれぞれ独立して、0または1である。
【0023】
すなわち本発明に係る製造方法の第1は、工程(1)〜(5)の5つの工程を有する製造方法である。
工程(1):式1で表されるシクロヘキセニルジフルオロ酢酸エステルを、加水分解して式3で表されるカルボン酸を製造する。
工程(2):式3で表されるカルボン酸に、塩化チオニルを反応させて式4で表される酸塩化物を製造する。
工程(3):式4で表される酸塩化物に、ナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて、式5で表されるブロモジフルオロメチル誘導体を製造する。
工程(4):塩基の存在下で、式5のブロモジフルオロメチル誘導体を、式Pで表されるフェノール化合物と反応させて、式6のシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体を製造する。
工程(5):式6で表されるシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体を水素還元して式2で表されるジフルオロメチレンオキシ誘導体を製造する。
【0024】

【0025】
式中、R、R、R、環A、環A、環A、環A、Z、Z、Z、Z、Y、Y、Y、Y、k、l、m、およびnは、それぞれ前記式1、2の意味と同一である。
【0026】
また本発明に係る製造方法の第2は、製造方法の第1において工程(2)および(3)にかわりに工程(2’)を有し、あわせて4つの工程を有する前記製造方法である。
工程(2’):式3で表されるカルボン酸を、DCCおよび塩基の存在下、オマジンとブロモトリクロロメタンと反応させて式5で表されるブルモジフルオロメチル誘導体を製造する。
【0027】

【0028】
また本発明に係る製造方法の第3は、工程(1)〜(3)の後に、工程(6)および(7)を有し、あわせて5つの工程を有する前記製造方法である。
工程(6):式5で表されるブロモジフルオロメチル誘導体を、水素還元して式7で表されるシクロヘキシルブロモジフルオロメタン誘導体を製造する。
工程(7):塩基の存在下で、式7のシクロヘキシルブロモジフルオロメタン誘導体を、前記工程(4)記載の式Pで表されるフェノール化合物と反応させて、式2で表されるジフルオロメチレンオキシ誘導体を製造する。
【0029】

【0030】
式中、R、環A、環A、Z、Z、kおよびlは、それぞれ前記式1、式2の意味と同一である。
【0031】
また本発明に係る製造方法の第4は、製造方法の第3において工程(2)および(3)にかわりに工程(2’)を有し、あわせて4つの工程を有するジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法である。
【0032】
また本発明に係る製造方法の第5は、工程(8)〜(11)の後に、製造方法の第3の工程(7)を有し、あわせて5つの工程を有する前記製造方法である。
工程(8):式1で表されるシクロヘキセニルジフルオロ酢酸エステルを、水素還元して式8で表されるシクロヘキシルジフルオロ酢酸エステル誘導体を製造する。
工程(9):式8で表されるシクロヘキシルジフルオロ酢酸エステル誘導体を加水分解して、式9で表されるカルボン酸誘導体を製造する。
工程(10):式9で表されるカルボン酸誘導体に、塩化チオニルを反応させて式10で表される酸塩化物を製造する。
工程(11):式10で表される酸塩化物に、ナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて式7で表されるシクロヘキシルブロモジフルオロメタン誘導体を製造する。
【0033】

【0034】
式中、R、R、環A、環A、Z、Z、kおよびlは、それぞれ前記式1、2の意味と同一である。
【0035】
また、本発明に係る製造方法の第6は、製造方法の第5において工程(10)および(11)にかわりに工程(10’)を有し、あわせて4つの工程を有する前記製造方法である。
工程(10’):式9で表されるカルボン酸をDCCおよび塩基の存在下オマジンとブロモトリクロロメタンと反応させて式7で表されるブルモジフルオロメチル誘導体を製造する。
【0036】

【0037】
さらには、前記製造方法の第1において、工程(1)〜(4)の4工程を有するシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法である。
【0038】
そして、さらには上記製造方法の第2において、工程(1)、(2’)および(4)の3工程を有するシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法である。
【0039】
また第2の出発原料を用いた本発明は、化合物11で表されるエチレンジフルオロ酢酸エステル誘導体を出発原料とする、式12で表されるジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法である。
【0040】

【0041】
式中、R、R、R、環A、環A、環A、環A、Z、Z、Z、Z、Y、Y、Y、Y、k、l、m、およびnは、それぞれ前記式1、2の意味と同一であり;環Aはそれぞれ独立して、任意の−CH−が−O−、−S−で置き換えられてもよい1,4−シクロヘキシレン基、任意の=CH−が=N−で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、または環上の任意の水素原子がフッ素原子、シアノ基または炭素数1〜10のアルキル基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基であり;oは0〜10の整数である。
【0042】
すなわち本発明に係る製造方法の第7は、工程(12)〜(16)の5つの工程を有する前記製造方法である。
工程(12):式11で表されるエチレンジフルオロ酢酸エステルを、加水分解して式13で表されるカルボン酸を製造する。
工程(13):式13で表されるカルボン酸に、塩化チオニルを反応させて式14で表される酸塩化物を製造する。
工程(14):式14で表される酸塩化物に、ナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて、式15で表されるブロモジフルオロメチル誘導体を製造する。
工程(15):塩基の存在下で、式15で表されるブロモジフルオロメチル誘導体を、前記工程(4)記載の式Pで表されるフェノール化合物と反応させて、式16で表されるシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体を製造する。
工程(16):式16で表されるシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体を水素還元して式12で表されるジフルオロメチレンオキシ誘導体を製造する。
【0043】

【0044】
式中、R、R、R、環A、環A、環A、環A、環A、Z、Z、Z、Z、Y、Y、Y、Y、k、l、m、nおよびoは、それぞれ前記式11、12の定義と同じである。
【0045】
また本発明に係る製造方法の第8は、製造方法の第7において工程(13)および(14)にかわりに工程(13’)を有し、あわせて4つの工程を有する前記製造方法である。
工程(13’):式13で表されるカルボン酸をDCCおよび塩基の存在下オマジンとブロモトリクロロメタンと反応させて式15のブルモジフルオロメチル誘導体を製造する。
【0046】


【0047】
また本発明に係る製造方法の第9は、工程(12)〜(14)の後に、工程(17)および(18)を有し、あわせて5つの工程を有するブルモジフルオロメチル誘導体の製造方法である。
工程(17):式15で表されるブロモジフルオロメチル誘導体を、水素還元して式17で表されるシクロヘキシルブロモジフルオロメチルアルカン誘導体を製造する。
工程(18):塩基の存在下で、式17で表されるシクロヘキシルブロモジフルオロメチルアルカン誘導体を、前記工程(4)記載の式Pで表されるフェノール化合物と反応させて、式2で表されるジフルオロメチレンオキシ誘導体を製造する。
【0048】

【0049】
式中、R、環A、環A、環A、Z、Z、kおよびlは、それぞれ前記式11、12の意味と同一である。
【0050】
また本発明に係る製造方法の第10は、製造方法の第9において工程(13)および(14)にかわりに製造方法の第8の工程(13’)を有し、あわせて4つの工程を有する前記製造方法である。
工程(13’):式13のカルボン酸をDCCおよび塩基の存在下オマジンとブロモトリクロロメタンと反応させて式15のブルモジフルオロメチル誘導体を製造する。
【0051】
また本発明に係る製造方法の第11は、工程(19)〜(22)の後に、製造方法第9の工程(18)を有し、あわせて5つの工程を有する前記製造方法である。
工程(19):式11で表されるシクロヘキセニルジフルオロ酢酸エステルを、水素還元して式18で表されるシクロヘキシルジフルオロ酢酸エステル誘導体を製造する。
工程(20):式18で表されるシクロヘキシルジフルオロ酢酸エステル誘導体を加水分解して、式19で表されるカルボン酸誘導体を製造する。
工程(21):式19で表されるカルボン酸誘導体に、塩化チオニルを反応させて式20で表される酸塩化物を製造する。
工程(22):式20で表される酸塩化物に、ナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて式17で表されるシクロヘキシルブロモジフルオロメタン誘導体を製造する。
【0052】

【0053】
式中、R、R、環A、環A、環A、Z、Z、k、lおよびoは、それぞれ前記式11、12の意味と同一である。
【0054】
また本発明に係る製造方法の第12は、製造方法の第11において工程(21)および(22)にかわりに工程(21’)を有し、あわせて4つの工程を有する前記製造方法である。
工程(21’):式19で表されるカルボン酸をDCCおよび塩基の存在下オマジンとブロモトリクロロメタンと反応させて式17で表されるブルモジフルオロメチル誘導体を製造する。
【0055】

【0056】
さらには上記製造方法の第7において、工程(12)〜(15)の4工程を有するシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法である。
【0057】
そしてさらには上記製造方法の第8において、工程(12)、(13’)および(15)の3工程を有するシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法である。
【0058】
さらに第3の出発原料を用いた本発明は、式21で表されるシクロヘキシリデンジフルオロプロピオン酸エステルを出発原料とする、式22で表されるジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法である。
【0059】

【0060】
式中、R、R、R、環A、環A、Z、Z、Y、Y、Y、Y、k、l、m、およびnは、それぞれ前記式11、12の定義と同じである。
【0061】
すなわち、本発明に係る製造方法の第13は工程(23)〜(27)の5つの工程を有する前記製造方法である。
工程(23):式21で表されるシクロヘキセニルジフルオロ酢酸エステルを、加水分解して式23で表されるカルボン酸を製造する。
工程(24):式23で表されるカルボン酸に、塩化チオニルを反応させて式24で表される酸塩化物を製造する。
工程(25):式24で表される酸塩化物に、ナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて、式25で表されるブロモジフルオロメチル誘導体を製造する。
工程(26):塩基の存在下で、式25で表されるブロモジフルオロメチル誘導体を、前記工程(4)記載の式Pで表されるフェノール化合物と反応させて、式26で表されるシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体を製造する。
工程(27):式6で表されるシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体を水素還元して式22で表されるジフルオロメチレンオキシ誘導体を製造する。
【0062】

【0063】
式中、R、R、R、環A、環A、環A、環A、Z、Z、Z、Z、Y、Y、Y、Y、k、l、m、およびnは、それぞれ前記式1、2の定義と同じである。
【0064】
また本発明に係る製造方法の第14は、製造方法の第13において工程(24)および(25)にかわりに工程(24’)を有し、あわせて4つの工程を有する前記製造方法である。
工程(24’):式23で表されるカルボン酸をDCCおよび塩基の存在下、オマジンとブロモトリクロロメタンと反応させて式25で表されるブルモジフルオロメチル誘導体を製造する。
【0065】

【0066】
また本発明に係る製造方法の第15は、工程(23)〜(25)の後に、工程(28)および(29)を有し、あわせて5つの工程を有する前記製造方法である。
工程(28):式25で表されるブロモジフルオロメチル誘導体を、水素還元して式27で表されるシクロヘキシルブロモジフルオロメタン誘導体を製造する。
工程(29):塩基の存在下で、式27で表されるシクロヘキシルブロモジフルオロメタン誘導体を、前記工程(4)記載の式Pで表されるフェノール化合物と反応させて、式2で表されるジフルオロメチレンオキシ誘導体を製造する。
【0067】

【0068】
式中、R、環A、環A、Z、Z、k、およびlは、それぞれ前記式1、2の定義と同じである。
【0069】
また本発明に係る製造方法の第16は、製造方法の第15において工程(24)および(25)にかわりに製造方法の第13の工程(24’)を有し、あわせて4つの工程を有するジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法である。
【0070】
また本発明に係る製造方法の第17は、(30)〜(33)の後に、請求項22に記載の(29)を有し、あわせて5つの工程を有する前記製造方法である。
工程(30):式21で表されるシクロヘキセニルジフルオロ酢酸エステルを、水素還元して式28で表されるシクロヘキシルジフルオロ酢酸エステル誘導体を製造する。
工程(31):式28で表されるシクロヘキシルジフルオロ酢酸エステル誘導体を加水分解して、式29で表されるカルボン酸誘導体を製造する。
工程(32):式29で表されるカルボン酸誘導体に、塩化チオニルを反応させて式30で表される酸塩化物を製造する。
工程(33):式30で表される酸塩化物に、ナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて式27で表されるシクロヘキシルブロモジフルオロメタン誘導体を製造する。
【0071】

【0072】
式中、R、R、環A、環A、Z、Z、kおよびlは、それぞれ前記式11、12の定義と同じである。
【0073】
また本発明に係る製造方法の第18は、製造方法の第17において工程(32)および(33)にかわりに工程(32’)を有し、あわせて4つの工程を有する前記製造方法である。
工程(32’):式29で表されるカルボン酸をDCCおよび塩基の存在下オマジンとブロモトリクロロメタンと反応させて式27で表されるブルモジフルオロメチル誘導体を製造する。
【0074】

【0075】
さらには上記製造方法の第13に記載の工程(23)〜(26)の4工程を有するシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法である。
【0076】
そしてさらには上記製造方法の第14に記載の工程(23)、(24’)および(26)の3工程を有するシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法である。
【0077】
さらに、本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法を、より好適に行えるのは、式中の、Rが炭素数2〜5の直鎖のアルキル基であり;Rはそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり;Rがメチル基またはエチル基であり;環A1がトランス−1,4−シクロヘキシレン基であり;k=1、l=0であり;YおよびYが水素原子で;YおよびYはそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり;m=n=0である場合である。
【発明の効果】
【0078】
本発明の製造方法を用いることにより、ジフルオロメチルエーテル誘導体を、容易に安全にかつ高収率で製造することができる。腐食性が大きいまたは悪臭が強い試薬を使うことなく、収率が高く副生成物が少ない、スケールアップが容易であるジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法を開発できた。
そして、この液晶性化合物を成分として、その化合物を構成する環、置換基、結合基などを適当に選択することにより、様々な液晶表示素子が所望する最適な物性を有する新たな液晶組成物を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下本発明の製造方法を、シクロヘキセニルジフルオロ酢酸エステルである化合物1を出発原料とする方法Aと、ビニルジフルオロ酢酸エステル11を出発原料とする方法Bと、シクロヘキシリデンプロピオン酸エステル21を出発原料とする方法Cとに分けて説明する。
式1〜式32で表される化合物を「化合物1」〜「化合物32」と表わすことがある。
【0080】
方法A
方法Aによる化合物2の製造方法は、化合物1を出発原料とする。
【0081】

【0082】
式1と式2において、RおよびRは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、または、基中の任意の−CH−は−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−に置き換えられてもよいが、−O−が連続することはなく、また基中の任意の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよい炭素数1〜20のアルキル基である。
およびRとしては、例えば水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオ基、アルキルチオアルキル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケニルチオ基、フッ素置換アルキル基、フッ素置換アルコキシ基、フッ素置換アルコキシアルキル基、フッ素置換アルケニル基、フッ素置換アルケニルチオ基、フッ素置換アルケニルオキシ基が好ましい。
【0083】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基がより好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基が好ましい。アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、プロポキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基がより好ましい。アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基が好ましい。アルキルチオアルキル基としては、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、プロピルチオメチル基、ブチルチオメチル基、メチルチオエチル基、エチルチオエチル基、プロピルチオエチル基、メチルチオプロピル基、プロピルチオプロピル基が好ましい。
【0084】
アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基が好ましい。アルケニルオキシ基としては、アリルオキシ基が好ましい。フッ素置換アルキル基としては、トリフルオロメチル基、フルオロメチル基、2−フルオロエチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2−フルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、4−フルオロブチル基、5−フルオロペンチル基が好ましい。フッ素置換アルコキシ基としては、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ基が好ましい。トリフルオロメトキシメチル基、フッ素置換アルケニル基としては、2−フルオロエテニル基、2,2−ジフルオロエテニル基、1,2,2−トリフルオロエテニル基、3−フルオロ−1−ブテニル基、4−フルオロ−1−ブテニル基が好ましい。フッ素置換アルケニルチオ基としては、トリフルオロメチルチオ基、ジフルオロメチルチオ基、1,1,2,2−テトラフルオロエチルチオ基、2,2,2−トリフルオロエチルチオ基が好ましい。
【0085】
最も好適なRおよびRは、炭素数2〜5の直鎖のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。
【0086】
式1において、Rは一価の有機基または無機基である。
一価の有機基としては、例えば、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオ基、アルキルチオアルキル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケニルチオ基、ハロゲンアルキル基、ハロゲン置換アルコキシ基、ハロゲン置換アルコキシアルキル基、ハロゲン置換アルケニル基、フッ素置換アルケニルチオ基、フッ素置換アルケニルオキシ基などが挙げられる。
一価の無機基としては、例えば、ハロゲン原子、金属原子などが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素が好ましい。金属原子としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムが好ましい。
は、一価の有機基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基およびデシル基がさらに好ましく、メチル基およびエチル基がもっと好ましい。
【0087】
式1と式2において、環A〜Aはそれぞれ独立して、任意の−CH−が−O−、−S−で置き換えられてもよい1,4−シクロヘキシレン基、=CH−が=N−で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、または、環の任意の水素原子がフッ素原子、シアノ基または炭素数1〜10のアルキル基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基である。好ましくは、1、4−フェニレン基であり、さらに好ましくはトランス−1、4−フェニレン基である。
【0088】
式1と式2おいてY、Y、Y、およびYはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基または炭素数1〜10のアルキル基である。RおよびRとしては、例えば水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオ基、アルキルチオアルキル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケニルチオ基、フッ素置換アルキル基、フッ素置換アルコキシ基、フッ素置換アルコキシアルキル基、フッ素置換アルケニル基、フッ素置換アルケニルチオ基、フッ素置換アルケニルオキシ基が好ましい。
【0089】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素がより好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基がより好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基がより好ましい。アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、プロポキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基がより好ましい。アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基がより好ましい。
【0090】
アルキルチオアルキル基としては、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、プロピルチオメチル基、ブチルチオメチル基、メチルチオエチル基、エチルチオエチル基、プロピルチオエチル基、メチルチオプロピル基、プロピルチオプロピル基より好ましい。アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基がより好ましい。アルケニルオキシ基としては、アリルオキシ基がより好ましい。フッ素置換アルキル基としては、トリフルオロメチル基、フルオロメチル基、2−フルオロエチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2−フルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、4−フルオロブチル基、5−フルオロペンチル基がより好ましい。フッ素置換アルコキシ基としては、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ基がより好ましい。トリフルオロメトキシメチル基、フッ素置換アルケニル基としては、2−フルオロエテニル基、2,2−ジフルオロエテニル基、1,2,2−トリフルオロエテニル基、3−フルオロ−1−ブテニル基、4−フルオロ−1−ブテニル基がより好ましい。フッ素置換アルケニルチオ基としては、トリフルオロメチルチオ基、ジフルオロメチルチオ基、1,1,2,2−テトラフルオロエチルチオ基、2,2,2−トリフルオロエチルチオ基がより好ましい。
最も好適なY、Y、Y、およびYは、水素原子、フッ素原子である。
【0091】
式1、式2において、環A〜Aはそれぞれ独立して、任意の−CH−が−O−、−S−で置き換えられてもよい1,4−シクロヘキシレン基、任意の=CH−が=N−で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、または環上の任意の水素原子がフッ素原子、シアノ基または炭素数1〜10のアルキル基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基であり、具体的には(r−1)〜(r−21)で示される環構造のものなどが挙げられる。
環中の黒丸は、六員環の立体配置がトランスであることを示す。
【0092】

【0093】
式1、式2において、Z〜Zはそれぞれ独立して単結合または基中の任意の−CH−が−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−に置き換えられてもよい炭素数1〜4のアルキレン基である。k、l、m、およびnはそれぞれ独立して0または1である。
【0094】
〜Zについては具体的には単結合、1,2−エチレン、1,4−ブチレン、メチレンオキシ、オキシメチレン、プロピレンオキシ、オキシプロピレン、ビニレン、1(E)−1,4−ブテニレン、2(Z)−1,4−ブテニレン、3(E)−1,4−ブテニレン、エチニレン、1,4−ブチニレン、1,1−ジフルオロ−1,2−エチレン、1,1,2,2−テトラフルオロ−1,2−エチレン、1,1−ジフルオロ−1,4−ブチレン等があげられる。
【0095】
本発明の方法Aには、合成経路1〜6が含まれる。
合成経路1は、
工程(1):化合物1を加水分解して化合物3を製造する、
工程(2):化合物3に塩化チオニルを反応させて酸塩化物4を製造する、
工程(3):化合物4にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて化合物5を製造する、
工程(4):化合物5を塩基存在下フェノール化合物Pと反応させて化合物6を製造する、
工程(5):化合物6を水素還元して化合物2を製造する、
の5工程を有する。
【0096】
合成経路2は合成経路1において工程(2)および(3)のかわりに、
工程(2’):DCCおよびDMAPの存在下、化合物3とオマジンおよびブロモトリクロロメタンとを反応させて化合物5を製造する、
の4工程を有する。
【0097】
合成経路3は工程(1)〜(3)の後、
工程(6):化合物5の水素還元して化合物7を製造する、
工程(7):塩基存在下、化合物7をフェノール化合物Pと反応させて化合物2を製造する、
の5工程を有する。
【0098】
合成経路4は合成経路3において工程(2)および(3)のかわりに工程(2’)を有し、あわせて4工程を有する。
【0099】
合成経路5は、
工程(8):化合物1を水素還元して化合物8を製造する、
工程(9):化合物8を加水分解してカルボン酸9を製造する、
工程(10):化合物9に塩化チオニルを反応させて酸塩化物10を製造する、
工程(11):化合物10にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて化合物7を製造する、
工程(7):塩基存在下、化合物7をフェノール化合物Pと反応させて化合物2を製造する、
の5工程を有する。
【0100】
合成経路6は合成経路5において工程(10)および(11)のかわりに、
工程(10’):DCCおよびDMAPの存在下、化合物9とオマジンおよびブロモトリクロロメタンとを反応させて化合物7を製造する、
の4工程を有する。
【0101】
合成経路1について、説明する。
合成経路1は、工程(1)〜(5)の5つの工程を有する。
工程(1)
工程(1)は、化合物1を加水分解して化合物3を製造する。
【0102】
化合物1の製造方法
化合物1は、シクロヘキセニルジフルオロ酢酸エステル誘導体である。
【0103】
本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法における方法Aの出発原料となる化合物1は、当業者であれば容易に製造することができる。たとえば、C. R. Hauser and D. S. Breslow, Org. Syn., Coll. Vol., 3, 408 (1955). に記載の方法に準じて、シクロヘキサノン誘導体34とブロモジフルオロ酢酸エステル35を亜鉛粉末の存在下反応させてシクロヘキサノール誘導体36とした後、たとえば、W. S. Allen and S. Bernstein, J. Am. Chem. Soc., 77, 1028 (1955). に記載の方法に準じて、化合物36に塩化チオニルとピリジンを反応させことにより容易に製造することができる。
【0104】

【0105】
式中、R、R、環A、環A、Z、Z、kおよびlは前記と同一の意味を表し、好ましいもの、具体例なども同じである。
シクロヘキサノン誘導体34は、市販品あるいは新実験化学講座(丸善株式会社出版)等、有機合成の成書に記載されている方法にて容易に得られる。
【0106】
この場合の反応条件としては、加水分解試薬には酸または塩基の水溶液を使用することができる。酸としては塩化水素、臭化水素が好ましく、塩基としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。反応溶媒は水単独でもよいが、前記酸または塩基と反応しない有機溶媒との混合溶媒でもよい。水との混合溶媒として使用可能な有機溶媒としては、芳香族化合物、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族エーテル化合物、環状エーテル化合物、プロトン性有機溶媒、非プロトン性極性溶媒、ハロゲン化炭化水素を使用することが好ましい。芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼンが好ましい。脂肪族炭化水素としては、ヘキサン、ヘプタンが好ましい。脂環式炭化水素としては、シクロヘキサンが好ましい。脂肪族エーテル化合物としては、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。環状エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン(以下THFと示す)、ジオキサンが好ましい。プロトン性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMFと示す)、ジメチルスルホキシド(以下DMSOと示す)、アセトニトリルが好ましい。ハロゲン化炭化水素としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンが好ましい。また前記溶媒を混合しても加水分解反応を実施することができる。より好ましい反応溶媒は、化合物1の溶解度が大きく、かつ水とよく混ざり合う脂肪族エーテル化合物、環状エーテル化合物、あるいはプロトン性有機溶媒である。
【0107】
溶媒の使用量については、反応が安全にかつ安定に実施できる量であればよい。好ましくは化合物1に対して重量で5〜20倍量の範囲である。反応温度は、撹拌を良好に行える温度であればよい。化合物の構造にもよるが、−10℃から80℃までの範囲が好ましい。より好ましくは原料である化合物1または生成物3の−CF−の加水分解を抑制し、かつ転化率を向上させることができる0℃〜40℃の範囲である。酸または塩基の使用量は化合物1に対して当量以上であることが好ましい。より好ましくは、化合物1に対して1.5〜2.0当量の範囲である。該範囲であれば、原料である化合物1を完全に消費させることができる。また、反応時間については化合物の構造、反応温度に大きく依存するが、室温での反応時間は、約30分である。
【0108】
工程(2)
工程(2)は、化合物3に塩化チオニルを反応させて酸塩化物4を製造する工程である。
【0109】
工程(2)の反応条件は、無溶媒または溶媒中でカルボン酸3と塩化チオニルとを混合することにより実施可能である。溶媒については、カルボン酸、塩化チオニルおよび酸塩化物のいずれとも反応しないものであれば使用可能である。反応溶媒としては、芳香族化合物、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族エーテル化合物、環状エーテル化合物、非プロトン性極性溶媒、ハロゲン原子化炭化水素を使用することが好ましい。例えば芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼンが好ましい。脂肪族炭化水素としては、ヘキサン、ヘプタンが好ましい。脂環式炭化水素としては、シクロヘキサンが好ましい。脂肪族エーテル化合物としては、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。環状エーテル化合物としては、THF、ジオキサンが好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、DMF、DMSO、アセトニトリルが好ましい。ハロゲン原子化炭化水素としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンが好ましい。また前記溶媒を混合しても反応を実施することができる。より好ましい反応溶媒は、反応速度を向上させ、短時間に反応を完結させることができ、減圧濃縮での留去が容易な芳香族化合物、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族エーテル化合物、および環状エーテル化合物である。
【0110】
溶媒の使用量については、反応が安全にかつ安定に実施できる量であればよい。好ましくは化合物3に対して重量で5〜20倍量の範囲である。反応温度は、撹拌を良好に行える温度であればよい。化合物の構造にもよるが、20℃〜200℃の範囲が好ましい。より好ましい反応温度は原料である化合物3または生成物である化合物4の−CF−の分解を抑制し、かつ転化率を向上させることができる40℃〜60℃の範囲である。塩化チオニルの使用量は化合物3に対して当量以上であることが好ましい。より好ましくは、化合物1に対して1.05〜2.0当量の範囲である。この範囲であれば、原料である化合物3をほぼ完全に消費させることができる。また、反応時間については化合物の構造、反応温度に大きく依存するが、室温では反応開始後約3時間で反応は完結する。
【0111】
溶媒を使用しない場合は、塩化チオニルを3に対して過剰量使用することになるが、その量は、反応が安全にかつ安定に実施できる量であればよい。好ましくは化合物3に対して1当量以上かつ重量で5〜20倍量の範囲である。反応温度は、撹拌を良好に行える温度であればよい。化合物の構造にもよるが、20℃から塩化チオニルの沸点である79℃までの範囲が好ましい。より好ましくは原料である化合物3または生成物4の−CF−の分解を抑制し、かつ転化率を向上させることができる40℃〜60℃の範囲である。
【0112】
工程(3)
工程(3)は、化合物4にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて、脱炭酸臭素化を行い化合物5を製造する。
工程(3)の反応において、脱炭酸臭素化は、Bartonらの方法 (D. H. R. Barton, B. Lacher, and S. Z. Zard, Tetrahedron, 43, 4321 (1987).) に準じ、無溶媒または溶媒中で酸塩化物4にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンとを反応させて行うことができる。溶媒については、酸塩化物、ナトリウムオマジン、およびブロモトリクロロメタンのいずれとも反応せず、反応中に発生するラジカルにも反応しないものであれば使用可能である。反応溶媒としては、芳香族化合物、完全塩素化炭化水素を使用することが好ましい。例えば芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼンが好ましい。完全塩素化炭化水素としては、四塩化炭素が好ましい。また前記溶媒を混合しても反応を実施することができる。より好ましい反応溶媒は、反応速度を向上させ、短時間に反応を完結させることができ、減圧下での留去が容易なベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、および四塩化炭素である。
【0113】
溶媒の使用量については、反応が安全にかつ安定に実施できる量であればよい。好ましくは化合物4に対して重量で5〜20倍量の範囲である。反応温度は、撹拌を良好に行える温度であればよい。化合物の構造にもよるが、20℃〜200℃の範囲が好ましい。より好ましくは原料である化合物4または生成物5の−CF−の分解を抑制し、かつ転化率を向上させることができる70℃〜120℃の範囲である。ナトリウムオマジンの使用量は化合物4に対して当量以上であることが好ましい。より好ましくは、化合物4に対して1.05〜2.0当量の範囲である。この範囲であれば、原料である化合物4をほぼ完全に消費させることができる。ブロモトリクロロメタンの使用量は化合物4に対して等モル以上であることが好ましい。より好ましくは、化合物4に対して1.05〜5.0当量の範囲である。該範囲であれば、原料である化合物4をほぼ完全に消費させることができる。また、反応時間については化合物の構造、反応温度に大きく依存するが、室温では反応開始後約30分で反応は完結する。
【0114】
溶媒を使用しない場合は、ブロモトリクロロメタンを化合物4に対して過剰量使用することになるが、その量は、反応が安全にかつ安定に実施できる量であればよい。好ましくは化合物3に対して1当量以上かつ重量で5〜20倍量の範囲である。反応温度は、撹拌を良好に行える温度であればよい。化合物の構造にもよるが、70℃からブロモトリクロロメタンの沸点である105℃までの範囲が好ましい。
【0115】
工程(3)の脱炭酸臭素化反応においては、ラジカル開始剤としてアゾ化合物を添加することにより反応速度を向上させることが可能である。アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと示す)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、4,4’−アゾビス(4−シアノ基ペンタン酸)が好ましい。アゾ化合物の添加量は、化合物4に対して0.03当量以上であることが好ましい。より好ましくは、化合物4に対して0.05〜0.3当量の範囲である。
【0116】
工程(4)
工程(4)は、化合物5を塩基の存在下でフェノール化合物Pと反応させて化合物6を製造する。すなわち、エーテル化させる工程である。
【0117】
化合物P
エーテル化反応に使用するフェノール誘導体Pは、R. L. Kidwell等の方法(Org. Syn., Coll. Vol., 5, 918 (1973).)にしたがい製造することができる。まず、ブロモベンゼン誘導体P−1からグリニヤール試薬を調製する。該グリニヤール試薬にホウ酸トリアルキル基を反応させてホウ酸エステル誘導体調製する。これを過酸化物、例えば過酸化水素原子、過酢酸で酸化することによりフェノール誘導体Pを製造することができる。
【0118】

【0119】
式中、R、環A、環A、Z、Z、Y、Y、Y、Y、m、およびnは前記と同一の意味を表し、R10はアルキル基を表す。
【0120】
また特開昭62−11716号公報、J. Fluorine Chem., 67, 41 (1994)、特開平3−246244号公報、特開昭62−207229号公報、および特開平2−34335号公報に記載の方法に準じてもフェノール誘導体Pの製造が可能である。
【0121】
第4工程のエーテル化反応は、一般に知られているウィリアムソン反応の条件下で実施可能である。エーテル化反応に使用できる塩基としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、金属アルコキシド類、アルカリ金属の水素化物、酸化銀等金属酸化物、アミン類が好ましい。例えばアルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。例えばアルカリ金属の炭酸塩としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウムが好ましい。例えば金属アルコキシド類としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−tert−ブトキシドが好ましい。例えばアルカリ金属の水素化物としては、水素化ナトリウムが好ましい。例えば金属酸化物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミンが好ましい。より好ましくは、取り扱いが容易であるアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩である。
【0122】
また塩基の使用量については、化合物5に対して当量以上であることが好ましい。より好ましくは、化合物5に対して2〜5当量の範囲である。該範囲であれば、反応の転化率を向上させることができる。反応溶媒については、化合物5、塩基、およびフェノール化合物Pのいずれとも反応しないものであれば何れも使用できる。反応溶媒としては、芳香族化合物、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族エーテル化合物、環状エーテル化合物、非プロトン性極性溶媒、あるいは水を使用することが好ましい。例えば芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエンが好ましい。脂肪族炭化水素としては、ヘキサン、ヘプタンが好ましい。脂環式炭化水素としては、シクロヘキサンが好ましい。脂肪族エーテル化合物としては、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。環状エーテル化合物としては、THF、ジオキサンが好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、DMF、DMSO、アセトニトリル、1−メチル−2−ピロリジノン(以下、NMPと示す)が好ましい。また前記溶媒を混合してもエーテル化反応を実施することができる。より好ましい反応溶媒は、反応速度を向上させ、短時間に反応を完結させることができる比較的沸点の高い芳香族化合物、環状エーテル化合物、および非プロトン性極性溶媒である。
【0123】
溶媒の使用量については、反応が安全にかつ安定に実施できる量であればよい。好ましくは化合物5に対して重量で5〜20倍量の範囲である。反応温度は、室温〜200℃の範囲が好ましい。より好ましくは、化合物5および生成物6の−CF−基の分解を抑制し、かつ転化率を向上させることができる80℃〜130℃の範囲である。反応時間については、化合物5の種類、反応温度に大きく依存するが、80〜130℃の範囲で実施する場合には1〜10時間が好ましい。第4工程のエーテル化反応においては、ハロゲン化塩または第4級アンモニウム塩を添加することにより反応速度を向上させることが可能である。ハロゲン化塩としては、臭化カリウム、ヨウ化カリウムが好ましい。第4級アンモニウム塩としては、テトラアルキル基アンモニウムハライド、テトラアルキル基アンモニウムテトラフルオロボレートが好ましい。ハロゲン化塩または第4級アンモニウム塩の使用量は、化合物5に対して0.03当量以上であることが好ましい。より好ましくは、化合物5に対して0.05〜0.3当量の範囲である。
【0124】
工程(5)
工程(5)は、化合物6を水素還元して化合物2を製造する。
第5工程での水素還元は、例えば西村重夫、高松弦著、接触水素化触媒(株式会社東京化学同人発行)等成書に記載の種々の金属触媒を使用して行うことができる。金属触媒としては、以下の金属からなる金属触媒が好ましい。例えば、ニッケル、コバルト、鉄、銅、モリブデン、タングステン、ルテニウム、ロジウム、白金、パラジウム、オスミウム、レニウム、イリジウム、クロム、チタン、ジルコニウムである。より好ましくは、ニッケル系触媒とパラジウム系触媒である。どちらも市販されており入手が容易であり、また取り扱いも容易である。ニッケル系触媒としてはラレーニッケル系触媒、パラジウム系触媒としてはパラジウム−炭素触媒がある。また金属触媒の使用量については、化合物6に対して1〜30重量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは、反応を効率的に進め、短時間にて反応を完結させることができる3〜10重量%の範囲である。
【0125】
反応溶媒については、化合物6と反応しないものであれば何れも使用できる。反応溶媒としては、芳香族化合物、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族エーテル化合物、環状エーテル化合物、アルコール類を使用することが好ましい。芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエンが好ましい。脂肪族炭化水素としては、ヘキサン、ヘプタンが好ましい。脂環式炭化水素としては、シクロヘキサンが好ましい。脂肪族エーテル化合物としては、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。環状エーテル化合物としては、THF、ジオキサンが好ましい。アルコール類としては、エタノール、プロパノールが好ましい。より好ましい反応溶媒は、化合物6の溶解度が大きい芳香族化合物、アルコール類である。溶媒の使用量については、反応が安全にかつ安定に実施できる量であればよい。好ましくは化合物6に対して重量で5〜20倍量の範囲である。
【0126】
反応温度は、室温〜200℃の範囲が好ましい。反応温度は、化合物6においてY、Y、Y、およびYの少なくと一つがハロゲン原子である化合物については置換されているハロゲン原子の水素還元を抑制することができる0℃〜室温の範囲であることがより好ましい。また0℃〜室温の範囲であれば、シクロヘキサン環のトランス選択性を向上させることもできる。水素圧については、大気圧〜5MPaの範囲が好ましい。より好ましくは生成する2のシクロヘキサン環のトランス選択性を向上させ、かつ反応時間を短縮することができる0.1〜1MPaの範囲である。反応時間については、化合物6の種類、反応温度に大きく依存するが、0℃〜室温の範囲で反応させる場合には、2〜10時間が好ましい。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0127】
合成経路2
合成経路2は、合成経路1において工程(2)および(3)のかわりに工程(2’)を有する。
工程(1)
前記工程(1)で記載したものと同一である。
【0128】
工程(2’)
工程(2’)はDCCおよび塩基の存在下、カルボン酸3にオマジンとブロモトリクロロメタンとを反応させて化合物(5)を製造する。すなわち、カルボン酸を一段階で、脱炭酸臭素化する工程である。
【0129】
工程(2’)の脱炭酸臭素化は、無溶媒または溶媒中でDCCおよび塩基の存在下、カルボン酸3にオマジンとブロモトリクロロメタンとを反応させて行うことができる。溶媒については、カルボン酸、オマジン、およびブロモトリクロロメタンのいずれとも反応せず、反応中に発生するラジカルにも反応しないものであれば使用可能である。反応溶媒としては、芳香族化合物を使用することが好ましい。例えば芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼンが好ましい。また前記溶媒を混合しても反応を実施することができる。より好ましい反応溶媒は、反応速度を向上させ、短時間に反応を完結させることができ、減圧濃縮での留去が容易なベンゼン、トルエン、およびクロロベンゼンである。塩基については、ブロモトリクロロメタンと反応せず、反応中に発生するラジカルにも反応しないものであれば使用可能である。好ましくはDMAP、ピリジン、2,6−ルチジン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、キノリン、アニリン、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン(以下、DBNと示す)、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン(以下、DBUと示す)、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクテン(以下、DABCOと示す)であり、より好ましくはDMAP、ピリジン、トリエチルアミンである。
【0130】
溶媒の使用量については、反応が安全にかつ安定に実施できる量であればよい。好ましくは化合物3に対して重量で5〜20倍量の範囲である。反応温度は、撹拌を良好に行える温度であればよい。化合物の構造にもよるが、−20℃〜200℃の範囲が好ましい。より好ましくは原料である化合物3または生成物である化合物5の−CF−基の分解を抑制し、かつ転化率を向上させることができる0℃〜70℃の範囲である。オマジンの使用量は化合物3に対して当量以上であることが好ましい。より好ましくは、化合物3に対して1.05〜2.0当量の範囲である。この範囲であれば、原料である化合物3をほぼ完全に消費させることができる。ブロモトリクロロメタンの使用量は化合物3に対して当量以上であることが好ましい。より好ましくは、化合物3に対して1.05〜5.0当量の範囲である。この範囲であれば、原料である化合物3をほぼ完全に消費させることができる。また、反応時間については化合物の構造、反応温度に大きく依存するが、室温では反応開始後約8時間で反応は完結する。
【0131】
溶媒を使用しない場合は、ブロモトリクロロメタンを3に対して過剰量使用することになるが、その量は、反応が安全にかつ安定に実施できる量であればよい。好ましくは化合物3に対して1当量以上かつ重量で5〜20倍量の範囲である。反応温度は、撹拌を良好に行える温度であればよい。化合物の構造にもよるが、0℃からブロモトリクロロメタンの沸点である70℃までの範囲が好ましい。
【0132】
工程(2’)の脱炭酸臭素化反応においては、工程(3)と同様にラジカル開始剤としてアゾ化合物を添加することにより反応速度を向上させることが可能である。アゾ化合物としては、AIBN、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、4,4’−アゾビス(4−シアノ基ペンタン酸)が好ましい。アゾ化合物の添加量は、化合物3に対して0.03当量以上であることが好ましい。より好ましくは、化合物3に対して0.05〜0.3当量の範囲である。
【0133】
加熱やラジカル開始剤を使用するかわりに、またはそれらと併せて光を照射して反応を促進させることが可能である。照射光は紫外および可視光が使用でき、その波長は化合物の構造にもよるが、10〜700nmの範囲が好ましい。光源としては自然光、電灯光はもちろん、光化学反応装置用光源が使用できる。
【0134】
塩基の使用量については、化合物3に対して0〜10mol%が好ましい。より好ましくは、化合物3に対して0.5〜5mol%の範囲である。
【0135】
工程(4)
前記工程(4)で記載したものと同一である。
【0136】
工程(5)
前記工程(5)で記載したものと同一である。
本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80重量%以上の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90重量%以上の生成物を得ることができる。該純度90重量%以上の生成物を再結晶することにより純度95重量%以上の生成物を得ることができる。
【0137】
合成経路3
合成経路3は、化合物5を製造する工程(1)〜(3)までは合成経路1と同じで、化合物5を水素還元して7を製造する工程(6)と、化合物7を塩基の存在下フェノール化合物Pと反応させて化合物2を製造する工程(7)とからなる。
【0138】
工程(1)
前記工程(1)で記載したものと同一である。
【0139】
工程(2)
前記工程(2)で記載したものと同一である。
【0140】
工程(3)
前記工程(3)で記載したものと同一である。
【0141】
工程(6)
工程(6)の水素還元反応は、例えば西村重夫、高松弦著、接触水素化触媒(株式会社東京化学同人発行)等成書に記載の種々の金属触媒を使用して行うことができる。水素還元反応に使用できる触媒をはじめ、水素還元反応の条件は前記合成経路1の工程(5)で記載した条件と同様である。
【0142】
工程(7)
工程(7)は、化合物7を塩基の存在下でフェノール化合物Pと反応させて化合物2を製造する。すなわち、エーテル化させる工程である。
【0143】
化合物P
エーテル化反応に使用するフェノール誘導体Pは、前記合成経路1の工程(4)で記載したフェノール誘導体Pと同様である。
【0144】
工程(5)のエーテル化反応は、一般に知られるウィリアムソン反応の条件下で実施が可能である。エーテル化反応に使用できる塩基をはじめ、エーテル化反応の条件は前記合成経路1の第4工程で記載した条件と同様である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0145】
合成経路4
合成経路4は、合成経路3において工程(2)および(3)のかわりに工程(2’)を有する。
工程(1)
前記工程(1)で記載したものと同一である。
【0146】
工程(2’)
前記工程(2’)で記載したものと同一である。
【0147】
工程(6)
前記工程(6)で記載したものと同一である。
【0148】
工程(7)
前記工程(7)で記載したものと同一である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0149】
合成経路5
合成経路5は、化合物1を水素還元して化合物8を製造する工程(8)と、化合物8を加水分解してカルボン酸誘導体9を製造する工程(9)と、化合物9に塩化チオニルを反応させて酸塩化物10を製造する工程(10)と、化合物10にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて化合物7を製造する工程(11)と、化合物7を塩基存在下フェノール化合物Pと反応させて化合物2を製造する工程(7)とからなる。
【0150】
工程(8)
工程(8)は、化合物1を水素還元して化合物8を製造する。
【0151】
化合物1は、
前記合成経路1で記載の化合物1の製造方法に準じて、製造できる。
工程(8)での水素還元反応は、例えば西村重夫、高松弦著、接触水素化触媒(株式会社東京化学同人発行)等成書に記載の種々の金属触媒を使用して行うことができる。水素還元反応に使用できる触媒をはじめ、水素還元反応の条件は前記合成経路1の工程(5)で記載した条件と同様である。
【0152】
工程(9)
工程(9)は、化合物8を加水分解してカルボン酸9を製造する。
工程(9)の加水分解反応は、一般に知られるエステルの酸またはアルカリ加水分解の条件下で実施が可能である。加水分解反応に使用できる酸および塩基をはじめ、加水分解反応の条件は前記合成経路1の工程(1)で記載した条件と同様である。
【0153】
工程(10)
工程(10)は、化合物9に塩化チオニルを反応させて酸塩化物4を製造する工程である。
工程(10)の反応は、無溶媒または溶媒中でカルボン酸9と塩化チオニルとを混合することにより実施可能である。酸塩化物合成反応の条件は前記合成経路1の工程(2)で記載した条件と同様である。
【0154】
工程(11)
工程(11)は、化合物10にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて脱炭酸臭素化を行い化合物7を製造する。
工程(11)の脱炭酸臭素化は、Bartonらの方法 (D. H. R. Barton, B. Lacher, and S. Z. Zard, Tetrahedron, 43, 4321 (1987).) に準じ、無溶媒または溶媒中で酸塩化物4にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンとを反応させて行うことができる。脱炭酸臭素化反応の条件は前記合成経路1の工程(3)で記載した条件と同様である。
【0155】
工程(7)
前記合成経路3の工程(7)で記載したものと同一である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0156】
合成経路6
合成経路6は、合成経路5において工程(10)および(11)のかわりに工程(10’)を有する。
工程(8)
前記工程(8)で記載したものと同一である。
【0157】
工程(9)
前記工程(9)で記載したものと同一である。
【0158】
工程(10’)
工程(10’)はDCCおよび塩基の存在下、カルボン酸9にオマジンとブロモトリクロロメタンとを反応させて化合物(7)を製造する。すなわち、カルボン酸を一段階で脱炭酸臭素化する工程である。脱炭酸臭素化の反応条件は前記合成経路2の工程(2’)で記載した条件と同様である。
【0159】
工程(7)
前記合成経路5の工程(7)で記載したものと同一である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0160】
方法B
本発明の化合物12の製造方法は、化合物11を出発原料とするものである。
【0161】
本発明の方法Bにより製造可能なジフルオロメチレンオキシ誘導体は化合物12で表される。化合物12において、R、R、環A〜環A、Y〜Y、Z〜Z、k、l、m、およびnは化合物2と同じものを表す。また、環Aは環A〜Aと同様であるが、環A〜環Aとは独立である。oは1〜10の整数を表す。
本発明の方法Bには、 合成経路7〜12が含まれる。
【0162】
合成経路7は
工程(12):化合物11を加水分解してカルボン酸誘導体13を製造する、
工程(13):化合物13に塩化チオニルを反応させて酸塩化物14を製造する、
工程(14):化合物14にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて脱炭酸臭素化を行い化合物15を製造する、
工程(15):化合物15を塩基の存在下フェノール化合物Pと反応させて化合物16を製造する、
工程(16):化合物16を水素還元して化合物12を製造する、
の5工程を有する。
【0163】
合成経路8は合成経路7において工程(13)および(14)のかわりに
工程(13’):DCCおよびDMAPの存在下、化合物13とオマジンおよびブロモトリクロロメタンとを反応させて化合物15を製造する、
の4工程を有する。
【0164】
合成経路9は工程(12)〜(14)の後、
工程(17):化合物15を水素還元して化合物17を製造する、
工程(18):化合物17を塩基の存在下フェノール化合物Pと反応させて化合物12を製造する、
の5工程を有する。
【0165】
合成経路10は合成経路9において工程(13)および(14)のかわりに工程(13’)を有し、あわせて4工程を有する。
【0166】
合成経路11は
工程(19):化合物11を水素還元して化合物18を製造する、
工程(20):化合物18を加水分解してカルボン酸誘導体19を製造する、
工程(21):化合物19に塩化チオニルを反応させて酸塩化物20を製造する、
工程(22):化合物20にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて脱炭酸臭素化を行い化合物17を製造する、
工程(18):化合物17を塩基の存在下フェノール化合物Pと反応させて化合物12を製造する、
の5工程を有する。
【0167】
合成経路12は合成経路11において工程(21)および(22)のかわりに
工程(21’):DCCおよびDMAPの存在下、化合物19とオマジンおよびブロモトリクロロメタンとを反応させて化合物17を製造する、
の4工程を有する。
【0168】
合成経路7
合成経路7は、工程(12)〜(16)の5つの工程とからなる。
【0169】
工程(12)
工程(12)は、化合物11を加水分解してカルボン酸誘導体13を製造する。
【0170】
化合物11
化合物11は、ビニルジフルオロ酢酸エステル誘導体である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法における方法Bの出発原料となる化合物11は、当業者であれば容易に製造することができる。たとえば、C. R. Hauser and D. S. Breslow, Org. Syn., Coll. Vol., 3, 408 (1955). に記載の方法に準じて、シクロヘキシルアセトアルデヒド誘導体37とブロモジフルオロ酢酸エステル35を亜鉛粉末の存在下反応させて化合物38とした後、たとえば、W. S. Allen and S. Bernstein, J. Am. Chem. Soc., 77, 1028 (1955). に記載の方法に準じて、化合物38に塩化チオニルとピリジンを反応さることにより容易に製造することができる。
【0171】

【0172】
式中、R、R、環A、環A、環A、Z、Z、kおよびlは前記と同一の意味を表し、好ましいもの、具体例なども前記と同じである。
シクロヘキサノン誘導体34は、市販品あるいは新実験化学講座(丸善株式会社出版)等、有機合成の成書に記載されている方法にて容易に得られる。
【0173】
加水分解試薬には酸または塩基の水溶液を使用することができる。酸としては塩化水素、臭化水素が好ましく、塩基としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。反応溶媒は、前記方法Aの合成経路1の第1工程で使用することが好ましい反応溶媒として記載したものと同じである。溶媒の使用量、反応温度、酸またはアルカリの使用量および反応時間についても同様である。
【0174】
工程(13)
工程(13)は、化合物13に塩化チオニルを反応させて酸塩化物14を製造する。
工程(13)の反応条件は前記方法Aの合成経路1の工程(2)で記載したものと同様である。
【0175】
工程(14)
工程(14)は、化合物14にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて脱炭酸臭素化を行い化合物15を製造する。
工程(14)の脱炭酸臭素化反応の反応条件は前記方法Aの合成経路1の工程(3)で記載したものと同様である。
【0176】
工程(15)
工程(15)は、化合物15を塩基の存在下フェノール化合物Pと反応させて化合物16を製造する。すなわち、エーテル化させる工程である。
【0177】
化合物P
エーテル化反応に使用するフェノール誘導体Pは、前記方法Aの合成経路1の工程(4)で記載したフェノール誘導体Pと同様である。
工程(15)のエーテル化反応は、一般に知られているウィリアムソン反応の条件下で実施が可能である。エーテル化反応に使用できる塩基をはじめ、エーテル化反応の条件は前記方法Aの合成経路1の工程(4)に記載した条件と同様である。
【0178】
工程(16)
工程(16)は、化合物16を水素還元して化合物12を製造する。
工程(16)での水素還元における触媒およびその使用量ならびに反応溶媒およびその使用量は、前記方法Aの合成経路1の工程(5)で記載した条件と同様である。反応温度は、化合物16においてY、Y、Y、およびYのいづれか一つ以上がハロゲン原子で置換されている化合物については置換されているハロゲン原子の水素還元を抑制することができる0℃〜室温の範囲であることがより好ましい。反応時間については、化合物16の種類、反応温度に大きく依存するが、0℃〜室温の範囲で実施する場合には、2〜10時間が好ましい。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0179】
合成経路8
合成経路8は、合成経路7において工程(13)および(14)のかわりに工程(13’)を有する。
工程(12)
前記合成経路7の工程(12)と同一である。
【0180】
工程(13’)
工程(13’)はDCCおよび塩基の存在下、カルボン酸13にオマジンとブロモトリクロロメタンとを反応させて化合物(15)を製造する。すなわち、カルボン酸を一段階で脱炭酸臭素化する工程である。脱炭酸臭素化の反応条件は前記合成経路2の工程(2’)で記載した条件と同様である。
【0181】
工程(15)
工程(15)は、前記合成経路7に記載の工程(15)と同一である。
【0182】
工程(16)
工程(16)は、前記合成経路7の工程(16)で記載したものと同一である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0183】
合成経路9
合成経路9は、(12)〜(14)までは前記合成経路7と同一で、化合物15を製造し、化合物15を水素還元して化合物17を製造する工程(17)と、化合物17を塩基の存在下でフェノール化合物Pと反応させて化合物12を製造する工程(18)とからなる。
【0184】
工程(12)
前記合成経路7の工程(12)と同一である。
【0185】
工程(13)
前記合成経路7の工程(13)と同一である。
【0186】
工程(14)
前記合成経路7の工程(14)と同一である。
【0187】
工程(17)
工程(17)は、化合物15を水素還元して化合物18を製造する。
工程(17)の水素還元反応は、例えば西村重夫、高松弦著、接触水素化触媒(株式会社東京化学同人発行)等成書に記載の種々の金属触媒を使用して行うことができる。水素還元反応に使用できる触媒をはじめ、水素還元反応の条件は前記合成経路7の工程(16)で記載した条件と同様である。
【0188】
工程(18)
工程(18)は、化合物17を塩基の存在下でフェノール化合物Pと反応させて化合物12を製造する。すなわち、エーテル化させる工程である。
【0189】
化合物P
エーテル化反応に使用するフェノール誘導体Pは、前記合成経路7の工程(15)で記載したフェノール誘導体Pと同様である。
工程(18)のエーテル化反応は、一般に知られるウィリアムソン反応の条件下で実施が可能である。エーテル化反応に使用できる塩基をはじめ、エーテル化反応の条件は前記合成経路7の工程(15)で記載した条件と同様である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0190】
合成経路10
合成経路10は、合成経路9において(13)および(14)のかわりに(13’)を有し、あわせて4つの工程を有する。
【0191】
工程(12)
工程(12)は前記合成経路7の工程(12)と同一である。
【0192】
工程(13’)
工程(13’)はDCCおよび塩基の存在下、カルボン酸13にオマジンとブロモトリクロロメタンとを反応させて化合物15を製造する。すなわち、カルボン酸を一段階で脱炭酸臭素化する工程である。脱炭酸臭素化の反応条件は前記合成経路2の工程(2’)で記載した条件と同様である。
【0193】
工程(17)
工程17は前記合成経路9の工程(17)と同一である。
【0194】
工程(18)
工程18は前記合成経路9の工程(18)と同一である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0195】
合成経路11
合成経路11は、工程(19)〜(22)の後に、工程(18)を有し、あわせて5つの工程を有する。
【0196】
工程(19)
工程(19)では、化合物11を水素還元して化合物18を製造する。
【0197】
化合物11
前記合成経路7で記載したものと同様である。
工程(19)での水素還元反応は、例えば西村重夫、高松弦著、接触水素化触媒(株式会社東京化学同人発行)等成書に記載の種々の金属触媒を使用して行うことができる。水素還元反応に使用できる触媒をはじめ、水素還元反応の条件は前記合成経路7の工程(16)で記載した条件と同様である。
【0198】
工程(20)
工程(20)は、化合物18を加水分解してカルボン酸19を製造する。
工程(20)の加水分解反応は、一般に知られるエステルの酸またはアルカリ加水分解の条件下で実施が可能である。加水分解反応に使用できる酸および塩基をはじめ、加水分解反応の条件は前記合成経路7の工程(12)で記載した条件と同様である。
【0199】
工程(21)
工程(21)は、化合物19に塩化チオニルを反応させて酸塩化物20を製造する工程である。
工程(21)の反応は、無溶媒または溶媒中でカルボン酸19と塩化チオニルとを混合することにより実施可能である。酸塩化物合成反応の条件は前記合成経路7の工程(13)で記載した条件と同様である。
【0200】
工程(22)
工程(22)は、化合物20にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて脱炭酸臭素化を行い化合物17を製造する。
工程(22)の脱炭酸臭素化は、Bartonらの方法 (D. H. R. Barton, B. Lacher, and S. Z. Zard, Tetrahedron, 43, 4321 (1987).) に準じ、無溶媒または溶媒中で酸塩化物20にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンとを反応させて行うことができる。脱炭酸臭素化反応の条件は前記合成経路7の工程(14)で記載した条件と同様である。
【0201】
工程(18)
前記合成経路9工程(18)で記載したものと同一である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0202】
合成経路12
合成経路12は、合成経路11において工程(21)および(22)のかわりに工程(21’)を有し、あわせて4つの工程を有する。
【0203】
工程(19)
工程(19)は前記合成経路11の工程(19)と同一である。
【0204】
工程20
工程(20)は前記合成経路11の工程(20)と同一である。
【0205】
工程21’
工程(21’)はDCCおよび塩基の存在下、カルボン酸19にオマジンとブロモトリクロロメタンとを反応させて化合物17を製造する。すなわち、カルボン酸を一段階で脱炭酸臭素化する工程である。脱炭酸臭素化の反応条件は前記合成経路2の工程(2’)で記載した条件と同様である。
【0206】
工程18
工程(18)は前記合成経路11の工程(18)と同一である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0207】
方法C
本発明の化合物22の製造方法は、化合物21を出発原料とするものである。
【0208】
本発明の方法Cにより製造可能なジフルオロメチレンオキシ誘導体は化合物22で表される。化合物22において、R、R、環A〜環A、Y〜Y、Z〜Z、k、l、m、およびnは化合物2と同じものを表す。oは1〜10の整数を表す。本発明の方法Cには、合成経路13〜18が含まれる。
【0209】
合成経路13は、
工程(23):化合物21を加水分解してカルボン酸誘導体23を製造する、
工程(24):化合物23に塩化チオニルを反応させて酸塩化物24を製造する、
工程(25):化合物24にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて脱炭酸臭素化を行い化合物25を製造する、
工程(26):化合物25を塩基の存在下フェノール化合物Pと反応させて化合物26を製造する、
工程(27):化合物26を水素還元して化合物22を製造する、の5つの工程を有する。
【0210】
合成経路14は合成経路13において工程(24)および(25)のかわりに、
工程(24’):DCCおよびDMAPの存在下、化合物23とオマジンおよびブロモトリクロロメタンとを反応させて化合物25を製造する、
を行うあわせて4工程を有する。
【0211】
合成経路15は工程(23)〜(25)の後、
工程(26):化合物25を水素還元して化合物27を製造する、
工程(27):化合物27を塩基の存在下フェノール化合物Pと反応させて化合物22を製造する、
の5つの工程を有する。
【0212】
合成経路16は合成経路15において工程(24)および(25)のかわりに工程(24’)を有し、あわせて4工程を有する。
【0213】
合成経路17は、
工程(29):化合物21を水素還元して化合物28を製造する、
工程(30):化合物28を加水分解してカルボン酸誘導体29を製造する、
工程(31):化合物29に塩化チオニルを反応させて酸塩化物30を製造する、
工程(32):化合物30にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて脱炭酸臭素化を行い化合物27を製造する、
工程(28):塩基の存在下、化合物27をフェノール化合物Pと反応させて化合物22を製造する、
の5つの工程を有する。
【0214】
合成経路18は合成経路17において工程(31)および(32)のかわりに、
工程(32’):DCCおよびDMAPの存在下、化合物29とオマジンおよびブロモトリクロロメタンとを反応させて化合物27を製造する、
の4工程を有する。
【0215】
合成経路13
合成経路13は、工程(23)〜(27)の5つの工程を有する。
【0216】
工程(23)
工程(23)は、化合物21を加水分解してカルボン酸誘導体23を製造する。
【0217】
化合物21
化合物21は、シクロヘキシリデンジフルオロプロピオン酸エステル誘導体である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法における方法Cの出発原料となる化合物21は、当業者であれば容易に製造することができる。たとえば、C. R. Hauser and D. S. Breslow, Org. Syn., Coll. Vol., 3, 408 (1955). に記載の方法に準じて、シクロヘキサンカルボアセトアルデヒド誘導体39とブロモジフルオロ酢酸エステル35を亜鉛粉末の存在下反応させて化合物40とした後、たとえば、W. S. Allen and S. Bernstein, J. Am. Chem. Soc., 77, 1028 (1955). に記載の方法に準じて、化合物40に塩化チオニルとピリジンを反応さることにより化合物21を容易に製造することができる。
【0218】

【0219】
式中、R、R、R、環A、環A、Z、Z、kおよびlは前記と同一の意味を表わし、好ましいもの、具体例も同じである。
シクロヘキサンカルボアルデヒド誘導体39は、市販品あるいは新実験化学講座(丸善株式会社出版)等、有機合成の成書に記載されている方法にて容易に得られる。
【0220】
加水分解試薬には酸または塩基の水溶液を使用することができる。酸としては塩化水素、臭化水素が好ましく、塩基としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。反応溶媒は、前記方法Aの合成経路1の第1工程で使用することが好ましい反応溶媒として記載したものと同じである。溶媒の使用量、反応温度、酸またはアルカリの使用量および反応時間についても同様である。
【0221】
工程(24)
工程(24)は、化合物23に塩化チオニルを反応させて酸塩化物24を製造する。
工程(24)の反応条件は前記方法Aの合成経路1の第2工程で記載したものと同様である。
【0222】
工程(25)
工程(25)は、化合物24にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて脱炭酸臭素化を行い化合物25を製造する。
工程(25)の脱炭酸臭素化反応の反応条件は、前記方法Aの合成経路1の工程(3)で記載したものと同様である。
【0223】
工程(26)
工程(26)は、化合物25を塩基の存在下フェノール化合物Pと反応させて化合物26を製造する。すなわち、エーテル化させる工程である。
【0224】
化合物P
エーテル化反応に使用するフェノール誘導体Pは、前記方法Aの合成経路1の工程(4)で記載したフェノール誘導体Pと同様である。
工程(26)のエーテル化反応は、一般に知られているウィリアムソン反応の条件下で実施が可能である。エーテル化反応に使用できる塩基をはじめ、エーテル化反応の条件は前記方法Aの合成経路1の工程(4)に記載した条件と同様である。
【0225】
工程(27)
工程(27)は、化合物26を水素還元して化合物22を製造する。
工程(27)での水素還元における触媒およびその使用量ならびに反応溶媒およびその使用量は、前記方法Aの合成経路1の工程(5)で記載した条件と同様である。反応温度は、化合物26においてY、Y、Y、およびYのいづれか一つ以上がハロゲン原子で置換されている化合物については置換されているハロゲン原子の水素還元を抑制することができる0℃〜室温の範囲であることがより好ましい。反応時間については、化合物26の種類、反応温度に大きく依存するが、0℃〜室温の範囲で実施する場合には、2〜10時間が好ましい。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0226】
合成経路14
合成経路14は、合成経路13において工程(24)および(25)のかわりに工程(24’)を有し、あわせて4つの工程を有する。
【0227】
工程(23)
工程(23)は前記合成経路13の工程(23)と同一である。
【0228】
工程24’
工程(24’)はDCCおよび塩基の存在下、カルボン酸23にオマジンとブロモトリクロロメタンとを反応させて化合物25を製造する。すなわち、カルボン酸を一段階で脱炭酸臭素化する工程である。脱炭酸臭素化の反応条件は前記合成経路2の工程(2’)で記載した条件と同様である。
【0229】
工程(26)
前記合成経路13の工程(26)と同一である。
【0230】
工程(27)
前記合成経路13の工程(27)と同一である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0231】
合成経路15
合成経路15は、工程(23)〜(25)の後に、工程(28)および(29)を有し、あわせて5工程を有する。
【0232】
工程(23)
前記合成経路13の工程(23)と同一である。
【0233】
工程(24)
前記合成経路13の工程(24)と同一である。
【0234】
工程(25)
前記合成経路13の工程(25)と同一である。
【0235】
工程(28)
工程(28)は、化合物25を水素還元して化合物27を製造する。
工程(28)の水素還元反応は、例えば西村重夫、高松弦著、接触水素化触媒(株式会社東京化学同人発行)等成書に記載の種々の金属触媒を使用して行うことができる。水素還元反応に使用できる触媒をはじめ、水素還元反応の条件は前記合成経路13の工程(27)で記載した条件と同様である。
【0236】
工程(29)
工程(29)は、化合物27を塩基の存在下で、フェノール化合物Pと反応させて化合物22を製造する。すなわち、エーテル化させる工程である。
【0237】
化合物P
エーテル化反応に使用するフェノール誘導体Pは、前記合成経路13の第4工程で記載したフェノール誘導体Pと同様である。
工程(29)のエーテル化反応は、一般に知られるウィリアムソン反応の条件下で実施が可能である。エーテル化反応に使用できる塩基をはじめ、エーテル化反応の条件は前記合成経路13の工程(26)で記載した条件と同様である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0238】
合成経路16
合成経路16は、合成経路15において工程(24)および(25)のかわりに工程(24’)を有し、あわせて4つの工程を有する。
【0239】
工程(23)
工程(23)は前記合成経路13の工程(23)と同一である。
【0240】
工程(24’)
工程(24’)は前記合成経路13の工程(24’)と同一である。
【0241】
工程(28)
工程(28)は前記合成経路15の工程(28)と同一である。
【0242】
工程(29)
工程(29)は前記合成経路15の工程(29)と同一である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0243】
合成経路17
合成経路17は、工程(29)〜(32)の後に工程(28)を有し、あわせて5つの工程を有する。
【0244】
工程(29)
工程(29)は、化合物21を水素還元して化合物28を製造する。
【0245】
化合物21
前記合成経路13で記載したものと同様である。
工程(29)での水素還元反応は、例えば西村重夫、高松弦著、接触水素化触媒(株式会社東京化学同人発行)等成書に記載の種々の金属触媒を使用して行うことができる。水素還元反応に使用できる触媒をはじめ、水素還元反応の条件は前記合成経路13の工程(27)で記載した条件と同様である。
【0246】
工程(30)
工程(30)は、化合物28を加水分解してカルボン酸29を製造する。
工程(30)の加水分解反応は、一般に知られるエステルの酸またはアルカリ加水分解の条件下で実施が可能である。加水分解反応に使用できる酸および塩基をはじめ、加水分解反応の条件は前記合成経路13の工程(23)で記載した条件と同様である。
【0247】
工程(31)
工程(31)は、化合物29に塩化チオニルを反応させて酸塩化物30を製造する工程である。
工程(31)の反応は、無溶媒または溶媒中でカルボン酸29と塩化チオニルとを混合することにより実施可能である。酸塩化物合成反応の条件は前記合成経路13の工程(24)で記載した条件と同様である。
【0248】
工程(32)
工程(32)は、化合物30にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンを反応させて脱炭酸臭素化を行い化合物27を製造する。
工程(32)の脱炭酸臭素化は、Bartonらの方法 (D. H. R. Barton, B. Lacher, and S. Z. Zard, Tetrahedron, 43, 4321 (1987).) に準じ、無溶媒または溶媒中で酸塩化物20にナトリウムオマジンとブロモトリクロロメタンとを反応させて行うことができる。脱炭酸臭素化反応の条件は前記合成経路13の工程(25)で記載した条件と同様である。
【0249】
工程(28)
前記合成経路15の工程(28)で記載したものと同一である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【0250】
合成経路18
合成経路18は、合成経路17において工程(32)および(33)のかわりに工程(32’)を有し、あわせて4つの工程を有する。
【0251】
工程(30)
工程(30)は前記合成経路17の工程(30)と同一である。
【0252】
工程(31)
工程(31)は前記合成経路17の工程(31)と同一である。
【0253】
工程(32’)
工程(32’)はDCCおよび塩基の存在下、カルボン酸29にオマジンとブロモトリクロロメタンとを反応さて化合物27を製造する。すなわち、カルボン酸を一段階で脱炭酸臭素化する工程である。脱炭酸臭素化の反応条件は前記合成経路2の工程(2’)で記載した条件と同様である。
【0254】
工程(29)
工程(29)は前記合成経路17の工程(29)と同一である。本発明のジフルオロメチレンオキシ誘導体の各製造工程における生成物は通常有機合成で用いられる方法により分離することができる。例えば、反応物に水および抽出用の有機溶媒を加え撹拌する。有機層を分離後、水洗し、乾燥剤例えば無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、減圧下で有機溶媒を留去して、残渣として純度80〜100重量%の生成物を得ることができる。該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理あるいは蒸留することにより純度90〜100重量%の生成物を得ることができる。この生成物を再結晶することにより純度95〜100重量%の生成物を得ることができる。
【実施例】
【0255】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
なお、以下の実施例において、Crは結晶、Smはスメクチック相、Nはネマチック相、Isoは等方性液体を表す。「Cr 43.5 N 103.0 Iso」という表記は、CrとNとの転移点が43.5℃であり、NとIsoとの転移点が103.0℃であることを示す。また、1H-NMRのデータ表示においてsは一重線、dは二重線、tは三重線を表し、GC-MSにおいてMは分子イオンピークを表し、( )内は、最大ピークを100とした時の強度を示す。
【0256】
実施例1
液晶性化合物2の製造方法の例
合成経路1による1−(トランス−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシルジフルオロメトキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン(化合物2においてk=1、l=m=n=0、Rがn−プロピル基、環Aがトランス−1,4−シクロヘキシレン基、Zが単結合、Y、Y共に水素原子、Y、YおよびRが共にフッ素である化合物(化合物番号57))の製造である。
【0257】
出発原料である化合物1の製造工程
窒素雰囲気下、亜鉛粉末13.8g(217mmol) と4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキサノン37.1g(167mmol)をTHF83mlに懸濁させ、室温でブロモジフルオロ酢酸エチル40.9g(202mmol)のTHF(84ml)溶液を30分かけて滴下した。加熱して温度を50℃に保ち5時間撹拌したのち、氷冷して3M塩酸73mlを加え反応を停止した。分液後通常の後処理操作を行い、抽出液を減圧濃縮して粗状態の1−エトキシカルボニルジフルオロメチル−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキサノール 59.9gを得た。粗収率103%。
これを344mlのトルエンに溶解し、ピリジン66.0g(835mmol)、次いで塩化チオニル39.7g(334mmol) を加えて2.5時間80℃で撹拌した。氷浴で冷却後、3M塩酸334mlを加えて通常の後処理を行い抽出液を減圧濃縮し、残渣を減圧蒸留して48.8gの4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロ酢酸エチルを得た。2段階収率89%。
【0258】
工程(1)
4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロ酢酸エチル82.8g(252mmol)のエタノール(504ml)に溶液に1M水酸化ナトリウム水溶液504mlを氷冷しながら7分かけて滴下した。30分間撹拌した後、3M塩酸252mlを加えて通常の後処理を行い、抽出液を減圧濃縮して76.5gの粗生成物を得た。これをヘプタン750mlから再結晶させて70.8gの4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロ酢酸を得た。収率94%。
【0259】
工程(2)
4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロ酢酸24.0g(80mmol)に塩化チオニル160mlを加え5時間還流させた。反応液を減圧濃縮して過剰の塩化チオニルを留去し、残渣を減圧蒸留して4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロアセチルクロリド24.3gを得た。収率95%。
【0260】
工程(3)
ナトリウムオマジン13.4g(90mmol)のブロモトリクロロメタン(90ml)懸濁液を還流させ、これに4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロアセチルクロリド19.1g(60mmol) のブロモトリクロロメタン(90ml)溶液を20分かけて滴下した。さらに10分間還流させた後反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘプタン)で精製して4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−1−ブロモジフルオロメチルシクロヘキセン17.1gを得た。収率85%。
【0261】
工程(4)
3,4,5−トリフルオロフェノール8.15g(55mmol)、炭酸カリウム7.60g(55mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム0.806g(2.5mmol)、および4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−1−ブロモジフルオロメチルシクロヘキセン16.8g(50mmol)のDMF(100ml) 懸濁液を115℃で30分間撹拌した後、冷却して水とトルエンを加えて通常の後処理を行い、抽出液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘプタン)で精製して、1−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキセン−1−イル−ジフルオロメトキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン19.1gを無色結晶として得た。収率95%。
【0262】
工程(5)
1−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキセン−1−イル−ジフルオロメトキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン6.84g(17mmol) のトルエン(17ml)−エタノール(17ml)溶液に5%パラジウム炭素を0.684g加え、室温、水素原子圧0.5MPaで10時間撹拌した。反応液から触媒を濾別し、濾液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘプタン)で精製し、更にヘプタン−エタノールの等量混合液から再結晶させて無色結晶の1−トランス−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル−ジフルオロメトキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン4.81g得た。収率70%であった。
該化合物は液晶相を示し、以下に記す転移点を示した。
Cr 43.5 N 103.0 Iso
なお、各種スペクトルデータの測定結果は該化合物の構造を強く支持した。
1H-NMR (δ ppm, CDCl3): 0.87-1.34 (m, 20H), 1.57-2.02 (m, 7H), 6.82-6.85 (m, 2H)
19F-NMR (δ ppm, CDCl3): -79.33 (d, 2F, -CF2O-), -133.76−133.83 (m, 2F), -165.21−165.31 (m, 1F)
【0263】
実施例2
合成経路2による1−(トランス−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシルジフルオロメトキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン(化合物2においてk=1、l=m=n=0、Rがn−プロピル基、環Aがトランス−1,4−シクロヘキシレン基、Zが単結合、YおよびYが共に水素原子、Y、YおよびRが共にフッ素原子である化合物(化合物番号57)の製造である。
【0264】
工程(1)
前記実施例1工程(1)に準じて、4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロ酢酸を製造した。
【0265】
工程(2’)
4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロ酢酸24.0g(80mmol)、オマジン12.2g(96mmol)およびDMAP0.49g(4mmol)のブロモトリクロロメタン(160ml)溶液を氷冷し、これにDCC19.8g(96mmol)のブロモトリクロロメタン(20ml)溶液を10分かけて滴下した。さらに24時間そのままの温度で反応させた後、70℃で30分撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、不溶物を濾別し、濾液を減圧濃縮し、残渣を減圧蒸留して4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−1−ブロモジフルオロメチルシクロヘキセン17.1gを得た。収率85%。
【0266】
工程(4)
前記実施例1工程(4)に準じて、1−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキセン−1−イル−ジフルオロメトキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼンを無色結晶として得た。収率95%であった。
【0267】
工程(5)
前記実施例1工程(5)に準じて、1−トランス−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル−ジフルオロメトキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン4.81gを得た。収率70%であった。
【0268】
実施例3
合成経路1による1−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシルジフルオロメトキシ)−4−トリフルオロメトキシベンゼン(化合物2においてk=1、l=m=n=0、Rがn−ペンチル基、環Aがトランス1,4−シクロヘキシレン基、Zが単結合、Y、Y、YおよびYが共に水素原子、Rがトリフルオロメトキシ基である化合物(化合物番号58)の製造である。
【0269】
出発原料である化合物1の製造工程
窒素雰囲気下、亜鉛粉末13.8g(217mmol)と4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキサノン41.8g(167mmol)を83mlのTHFに懸濁させ、室温でブロモジフルオロ酢酸エチル40.9g(202mmol)のTHF(84ml)溶液を30分かけて滴下した。加熱して温度を50℃に保ち5時間撹拌したのち、氷冷して3M塩酸73mlを加え反応を停止した。分液後通常の後処理操作を行い、抽出液を減圧濃縮して粗状態の1−エトキシカルボニルジフルオロメチル−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキサノール67.5gを得た。粗収率103%であった。
これをトルエン344mlに溶解し、ピリジン66.0g(835mmol)、次いで塩化チオニル39.7g(334mmol) を加えて2.5時間80℃で撹拌した。氷浴で冷却後、3M塩酸334mlを加えて通常の後処理を行い抽出液を減圧濃縮し、残渣を減圧蒸留して4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロ酢酸エチル55.1gを得た。2段階収率89%。
【0270】
工程(1)
4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロ酢酸エチル83.6g(252mmol)のエタノール(504ml)に溶液に1M水酸化ナトリウム水溶液504mlを氷冷しながら7分かけて滴下した。30分間撹拌した後、3M塩酸252 mlを加えて通常の後処理を行い、抽出液を減圧濃縮して86.4gの粗生成物を得た。これをヘプタン750mlから再結晶させて、4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロ酢酸80.0gを得た。収率94%。
【0271】
工程(2)
4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロ酢酸27.1g(80mmol)に塩化チオニル160mlを加え5時間還流させた。反応液を減圧濃縮して過剰の塩化チオニルを留去し、残渣を減圧蒸留して4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロアセチルクロリド27.5gを得た。収率95%。
【0272】
工程(3)
ナトリウムオマジン13.4g(90mmol) のブロモトリクロロメタン(90ml)懸濁液を還流させ、これに4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロアセチルクロリド21.2g(60mmol) のブロモトリクロロメタン(90ml)溶液を20分かけて滴下した。さらに10分間還流させた後反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して4−(トランス-4-ペンチルシクロヘキシル)−1−ブロモジフルオロメチルシクロヘキセン19.3gを得た。収率85%。
【0273】
工程(4)
4−トリフルオロメトキシフェノール9.80g(55mmol)、炭酸カリウム7.60g(55mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム0.806g(2.5mmol)、および4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−1−ブロモジフルオロメチルシクロヘキセン 19.0g(50mmol)のDMF(100ml)懸濁液を115 ℃で30分間撹拌した後、冷却して水とトルエンを加えて通常の後処理を行い、抽出液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘプタン)で精製して、1−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキセン−1−イルジフルオロメトキシ)−4−トリフルオロメトキシベンゼン21.9gを無色結晶として得た。収率95%。
【0274】
工程(5)
1−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキセン−1−イルジフルオロメトキシ)−4−トリフルオロメトキシベンゼン7.82g(17mmol)のトルエン(17ml)−エタノール(17ml) 溶液に5%パラジウム炭素を0.684g加え、室温、水素原子圧0.5Mpaで10時間撹拌した。反応液から触媒を濾別し、濾液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘプタン) で精製し、更にヘプタン−エタノールの等量混合液から再結晶させて無色結晶の1−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシルジフルオロメトキシ)−4−トリフルオロメトキシベンゼン5.50gを得た。収率70%。該化合物は液晶相を示し、以下に記す転移点を示した。
Cr 35.1 Sm 116.7 N 156.9 Iso
なお、各種スペクトルデータの測定結果は該化合物の構造を強く支持した。
1H-NMR (δ ppm, CDCl3): 0.6-2.2 (m, 31H), 7.19 (bs, 4H)
19F-NMR (δ ppm, CDCl3): -51.68 (s, 3F, -OCF3), -78.77 (s, 2F, -CF2O-)
【0275】
実施例4
合成経路2による1−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシルジフルオロメトキシ)−4−トリフルオロメトキシベンゼン(化合物2においてk=1、l=m=n=0、Rがn−ペンチル基、環Aがトランス−1,4−シクロヘキシレン基、Zが単結合、Y、Y、Y、およびYが共に水素原子、Rがトリフルオロメトキシ基である化合物(化合物番号58)の製造である。
【0276】
工程(1)
前記実施例1の工程(1)により4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロ酢酸を製造した。
【0277】
工程(2’)
4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−1−シクロヘキセニルジフルオロ酢酸24.0g(80mmol)、オマジン12.2g(96mmol)およびDMAP0.49g(4mmol)のブロモトリクロロメタン(160ml)溶液を氷冷し、これにDCC19.8g(96mmol)のブロモトリクロロメタン(20ml)溶液を10分かけて滴下した。さらに24時間そのままの温度で反応させた後、70℃で30分撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、不溶物を濾別し、濾液を減圧濃縮し、残渣を減圧蒸留して4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−1−ブロモジフルオロメチルシクロヘキセン17.1gを得た。収率85%。
【0278】
工程(4)
前記実施例3の工程(4)に準じた方法で、1−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキセン−1−イルジフルオロメトキシ)−4−トリフルオロメトキシベンゼン21.9gを無色結晶として得た。収率95%。
【0279】
工程(5)
前記実施例3の工程(5)に準じた方法で、1−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシルジフルオロメトキシ)−4−トリフルオロメトキシベンゼン5.50gを得た。収率70%。
【0280】
実施例5
合成経路7による1−(3−(トランス4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−1,1−ジフルオロ−2−プロペニルオキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン(化合物16においてk=1、l=m=n=o=0、Rがn−ペンチル基、環A、環Aがともにトランス−1,4−シクロヘキシレン基、Zが単結合、YおよびYがともに水素原子、Y、YおよびRがともにフッ素原子である化合物(化合物番号145)の製造である。
【0281】
出発原料である化合物11の製造工程
窒素雰囲気下、亜鉛粉末13.8g(217mmol)と4−(トラン−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシルアセトアルデヒド46.5g(167mmol)を83mlのTHFに懸濁させ、室温でブロモジフルオロ酢酸エチル40.9g(202mmol)のTHF(84ml)溶液を30分かけて滴下した。加熱して温度を50℃に保ち5時間撹拌したのち、氷冷して3M塩酸73mlを加え反応を停止した。分液後通常の後処理操作を行い、抽出液を減圧濃縮して粗状態の1−エトキシカルボニルジフルオロメチル−2−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)エタノール69.3gを得た。粗収率103%。これを344mlのトルエンに溶解し、ピリジン66.0g(835mmol)、次いで塩化チオニル39.7g(334mmol) を加えて2.5時間80℃で撹拌した。氷浴で冷却後、3M塩酸334mlを加えて通常の後処理を行い抽出液を減圧濃縮し、残渣を減圧蒸留して、E−1−エトキシカルボニルジフルオロメチル−2−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)エチレン59.5gを得た。2段階収率89%。
【0282】
工程(12)
E−1−エトキシカルボニルジフルオロメチル−2−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)エチレン101.0g(252mmol)のエタノール(504ml)に溶液に1M水酸化ナトリウム水溶液504mlを氷冷しながら7分かけて滴下した。30分間撹拌した後、3M塩酸252mlを加えて通常の後処理を行い、抽出液を減圧濃縮して粗生成物86.4gを得た。これをヘプタン750mlから再結晶させて、E−2−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)エテニルジフルオロ酢酸88.2gを得た。収率94%。
【0283】
工程(13)
E−2−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)エテニルジフルオロ酢酸29.8g(80mmol)に塩化チオニル160mlを加え5時間還流させた。反応液を減圧濃縮して過剰の塩化チオニルを留去し、残渣を減圧蒸留してE−2−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)エテニルジフルオロアセチルクロリド29.7gを得た。収率95%。
【0284】
工程(14)
ナトリウムオマジン13.4g(90mmol)のブロモトリクロロメタン(90ml)懸濁液を還流させ、これにE−2−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)エテニルジフルオロアセチルクロリド23.5g(60mmol) のブロモトリクロロメタン(90ml)溶液を20分かけて滴下した。さらに10分間還流させた後反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘプタン)で精製して、E−1−ブロモジフルオロメチル−2−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)エチレン20.8gを得た。収率85%。
【0285】
工程(15)
3,4,5−トリフルオロフェノール8.15g(55mmol)、炭酸カリウム7.60g(55mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム0.806g(2.5mmol)、およびE−1−ブロモジフルオロメチル−2−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)エチレン20.4g(50mmol)のDMH(100ml)懸濁液を115℃で30分間撹拌した後、冷却して水とトルエンを加えて通常の後処理を行い、抽出液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘプタン)で精製して、1−(3−(トランス4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−1,1−ジフルオロ−2−プロペニルオキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン(化合物番号145)22.5gを無色結晶として得た。収率95%。
【0286】
実施例6
合成経路8による1−(3−(トランス4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−1,1−ジフルオロ−2−プロペニルオキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン(化合物16においてk=1、l=m=n=o=0、Rがn−ペンチル基、環A、環Aがともにトランス−1,4−シクロヘキシレン基、zが単結合、YおよびYがともに水素原子、Y、YおよびRがともにフッ素原子である化合物(化合物番号145)の製造である。
【0287】
工程(12)
前記実施例5の工程(12)によりE−2−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)エテニルジフルオロ酢酸を製造した。
【0288】
工程(13’)
E−2−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)エテニルジフルオロ酢酸29.8g(80mmol)、オマジン12.2 g(96mmol) およびDMAP0.49g(4mmol)のブロモトリクロロメタン(160ml)溶液を氷冷し、これにDCC19.8g(96mmol)のブロモトリクロロメタン(20ml)溶液を10分かけて滴下した。さらに24時間そのままの温度で反応させた後、70℃で30分撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、不溶物を濾別し、濾液を減圧濃縮し、残渣を減圧蒸留してE−1−ブロモジフルオロメチル−2−(トランス−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)エチレン20.8gを得た。収率85%。
【0289】
工程(15)
前記実施例5の工程(4)に準じた方法で、1−(3−(トランス4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−1,1−ジフルオロ−2−プロペニルオキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン(化合物番号145)22.5gを無色結晶として得た。収率95%。
【0290】
実施例7
1−(3−(トランス4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル−1,1−ジフルオロプロポキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン(化合物12においてk=1、l=m=n=o=0、Rがn−ペンチル基、環A、環Aがともにトランス−1,4−シクロヘキシレン基、Zが単結合、YおよびYがともに水素原子、Y、YおよびRがともにフッ素原子である化合物(化合物番号106)の製造である。
【0291】
工程(16)
上記実施例5で得られた1−(3−(トランス4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−1,1−ジフルオロ−2−プロペニルオキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン8.07g(17mmol)のトルエン(17ml)−エタノール(17ml)溶液に5%パラジウム炭素0.684gを加え、室温、水素原子圧0.5MPaで10時間撹拌した。反応液から触媒を濾別し、濾液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘプタン)で精製し、更にヘプタン−エタノールの等量混合液から再結晶させて無色結晶の1−(3−(トランス4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル−1,1−ジフルオロプロポキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン5.67gを得た。収率70%。
該化合物は液晶相を示し、以下に記す転移点を示した。
Cr 65.5 (SA 50.76) N 116.9 Iso
なお、各種スペクトルデータの測定結果は該化合物の構造を強く支持した。
1H-NMR (δ ppm, CDCl3): 2.2 (m, 35H), 6.88 (m, 2H)
19F-NMR (δ ppm, CDCl3): -79.26 (t, 2F, -CF2O-), -133.53〜-133.65 (m, 2F), -165.00〜-165.06 (m, 1F)
GC-MS (EI): 460 (M+, 12.5%), 148 (92.4), 97 (93.6), 83 (100), 81 (55), 69 (54.9), 55 (76.4), 41 (30.7)
【0292】
実施例8
合成経路7による1−(3−4’−プロピル−3,5−ジフルオロビフェニル−4−イル)−1,1−ジフルオロプロペニルオキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン(式16においてk=1、l=m=n=o=0、Rがn−プロピル基、環Aが1,4−フェニレン基、環Aが3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、Zが単結合、YおよびYがともに水素原子、Y、Y、およびRがともにフッ素原子である化合物(化合物番号148)の製造である。
【0293】
出発原料である化合物11の製造工程の第1工程
窒素雰囲気下、3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル23.2g(100mmol)のTHF(300ml) 溶液に-70℃でn−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液)69 ml(110mmol)を滴下した。-70℃にて1時間撹拌後、DMF9.3ml(120mmol)のTHF溶液(100ml)を滴下しさらに1時間撹拌した。反応混合物に1N塩酸200mlを注ぎヘプタンで抽出し、有機層を水200ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200 ml、水200mlで順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘプタン:トルエン=4:6)で精製し、3,5−ジフルオロ−4−ホルミル−4’−プロピルビフェニル(無色油状)26.0gを得た。収率100%。
【0294】
出発原料である化合物11の製造工程の第2工程
窒素雰囲気下メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド42.2g(130mmol) のTHF溶液(250ml)に0℃でカリウム-tert-ブトキシド14.6g(130mmol)を少量ずつ添加し、1時間室温で撹拌した。再度0℃に冷却後上記で得た3,5−ジフルオロ−4−ホルミル−4’−プロピルビフェニル26.0g(100mmol) のTHF(150ml)溶液を滴下し、室温で2時間撹拌した。反応混合物を200mlの水に注ぎトルエンで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘプタン:トルエン=1:10)で精製して、反応物(無色油状)28.8 gを得た。これを全量トルエン200mlに溶解し、ギ酸70mlを加えて6時間還流させた。冷却後、反応液を水200mlに注ぎ、トルエン100mlで抽出し、有機層を水(100mlx3)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mlx2)、水(200mlx1)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘプタン:トルエン=1:1)で精製し、2−(3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル−4−イル)アセトアルデヒド(無色油状)26.2gを得た。収率96%。
【0295】
出発原料である化合物11の製造工程の第3工程
窒素雰囲気下、上記で得た2−(3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル−4−イル)アセトアルデヒド45.8g(167mmol)をTHF83mlに懸濁させ、室温でブロモジフルオロ酢酸エチル40.9g(202mmol)のTHF(84ml)溶液を30分かけて滴下した。加熱して温度を50℃に保ち5時間撹拌したのち、氷冷して3M塩酸73mlを加え反応を停止した。分液後通常の後処理操作を行い、抽出液を減圧濃縮して粗状態の4−(3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル−4−イル)−3−ヒドロキシ−2,2−ジフルオロブタン酸エチル68.5gを得た。粗収率103%。これを344mlのトルエンに溶解し、ピリジン66.0g(835mmol)、次いで塩化チオニル39.7g(334mmol) を加えて2.5時間80℃で撹拌した。氷浴で冷却後、3M塩酸334 mlを加えて通常の後処理を行い抽出液を減圧濃縮し、残渣を減圧蒸留して、E−4−(3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ブテン酸エチル56.7gを得た。2段階収率89%。
【0296】
工程(12)
E−4−(3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ブテン酸エチル95.9g(252mmol)のエタノール(504ml)に溶液に1M水酸化ナトリウム水溶液504mlを氷冷しながら7分かけて滴下した。30分間撹拌した後、3M塩酸252mlを加えて通常の後処理を行い、抽出液を減圧濃縮して、粗生成物86.4gを得た。これをヘプタン750mlから再結晶させて、E−4−(3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ブテン酸83.5gを得た。収率94%。
【0297】
工程(13)
E−4−(3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ブテン酸28.2g(80mmol)に塩化チオニル160mlを加え5時間還流させた。反応液を減圧濃縮して過剰の塩化チオニルを留去し、残渣を減圧蒸留してE−4−(3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ブテン酸クロリド30.6gを得た。収率95%。
【0298】
工程(14)
ナトリウムオマジン13.4g(90mmol)のブロモトリクロロメタン(90ml)懸濁液を還流させ、これにE−4−(3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ブテン酸クロリド24.2g(60mmol)のブロモトリクロロメタン(90ml)溶液を20分かけて滴下した。さらに10分間還流させた後反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘプタン) で精製して、E−2−(3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル−4−イル)−1−ブロモジフルオロメチルエチレン20.7gを得た。収率85%。
【0299】
工程(15)
3,4,5−トリフルオロフェノール8.15g(55mmol)、炭酸カリウム7.60g(55mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム0.806g(2.5mmol)、およびE−2−(3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル−4−イル)−1−ブロモジフルオロメチルエチレン21.6g(50mmol)のDMF(100ml)懸濁液を115℃で30分間撹拌した後、冷却して水とトルエンを加えて通常の後処理を行い、抽出液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘプタン)で精製して、1−(3−4’−プロピル−3,5−ジフルオロビフェニル−4−イル)−1,1−ジフルオロプロペニルオキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン(化合物番号148)23.7gを無色結晶として得た。収率95%。
この化合物は液晶相を示し、その転移点を以下に記す。
Cr 47.4 N 51.5 Iso
【0300】
なお、各種スペクトルの測定データはその構造を強く支持した。
1H-NMR (δ ppm CDCl3): 0.97 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.67 (m, 2H), 6.65 (dt, J = 6.8, 16.5 Hz, 1H), 6.94 (dd, J = 6.1, 7.7 Hz, 2H), 7.18 (d, 10.1 Hz, 2H), 7.26 (d, 16.5 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.48 (d, J = 8.0 Hz, 2H)
13C-NMR (δ ppm CDCl3): 14.2, 24.8, 38.1, 107.5 (d, J = 5.7 Hz), 107.7 (d, J = 5.7 Hz), 121.7 (t, J = 261.5 Hz), 123.9 (t, J = 7.5 Hz), 124.2 (tt, J = 8.7, 32.2 Hz), 126.8, 129.8, 135.7, 137.6 (t, J = 15.9 Hz), 139.5 (t, J = 15.0 Hz), 143.3, 144.8 (dd, J = 5.8, 10.8 Hz), 152.4 (dd, J = 5.5, 10.6 Hz), 161.0 (d, J = 7.9 Hz), 163.0 (d, J = 8.1 Hz)
19F-NMR (δ ppm CDCl3): -68.1 (d, J = 6.2 Hz), -111.9 (d, J = 10.4 Hz), -133.2 (m), -164.3 (m)
GC-MS (EI), m/z (%): 454 (M+, 1), 309 (2), 308 (21), 307 (100), 279 (3), 278 (13), 277 (2), 259 (3)
【0301】
実施例9
合成経路8による1−(3−4’−プロピル−3,5−ジフルオロビフェニル−4−イル)−1,1−ジフルオロプロペニルオキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン(式16においてk=1、l=m=n=o=0、Rがn−プロピル基、環Aが1,4−フェニレン基、環Aが3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、Zが単結合、YおよびYがともに水素原子、Y、YおよびRがともにフッ素原子である化合物(化合物番号148)の製造である。
【0302】
工程(12)
前記実施例8工程(12)に準じた方法で、E−4−(3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ブテン酸を製造した。
【0303】
工程(13’)
E−4−(3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ブテン酸28.2g(80mmol)、オマジン12.2g(96mmol)およびDMAP0.49g(4mmol)のブロモトリクロロメタン(160ml)溶液を氷冷し、これにDCC19.8g(96mmol)のブロモトリクロロメタン(20ml)溶液を10分かけて滴下した。さらに24時間そのままの温度で反応させた後、70℃で30分撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、不溶物を濾別し、濾液を減圧濃縮し、残渣を減圧蒸留してE−2−(3,5−ジフルオロ−4’−プロピルビフェニル−4−イル)−1−ブロモジフルオロメチルエチレン20.7gを得た。収率85%。
【0304】
工程(15)
前記実施例8工程(15)に準じた方法で、の1−(3−4’−プロピル−3,5−ジフルオロビフェニル−4−イル)−1,1−ジフルオロプロペニルオキシ)−3,4,5−トリフルオロベンゼン(化合物番号148)23.7gを無色結晶として得た。収率95%。
【0305】
上記実施例1〜4および7に示した方法に準じて、例えば以下のジフルオロメチルエーテル誘導体(化合物番号41〜131)が好適に製造できる。なお、実施例1〜4および7の化合物についても併せて示した。
【0306】

【0307】

【0308】

【0309】

【0310】

【0311】

【0312】

【0313】

【0314】

【0315】

【0316】

【0317】
上記実施例5、6、および実施例8に示した方法に準じ、例えば以下の1,1−ジフルオロ−2−プロペニルオキシ基を結合基に有する化合物(化合物番号132〜182)が好適に製造できる。なお、実施例5、6、および8の化合物についても併せて示した。
【0318】

【0319】

【0320】

【0321】

【0322】

【0323】

【0324】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式21で表されるシクロヘキシリデンジフルオロプロピオン酸エステルを出発原料とする、式22で表されるジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法。



式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、または炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基中の任意の−CH−は−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよいが、−O−が連続することはなく、またアルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよく;Rは、1価の有機基または無機基であり;環A、環A、環A、および環Aはそれぞれ独立して、任意の−CH−が−O−、−S−で置き換えられてもよい1,4−シクロヘキシレン基、任意の=CH−が=N−で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、または環上の任意の水素原子がフッ素原子、シアノ基または炭素数1〜10のアルキル基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基であり;Z、Z、Z、およびZはそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜4のアルキレン基であり、アルキレン基中の任意の−CH−は−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよいが、−O−が連続することはなく、またアルキレン基中の任意の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよく;Y、Y、Y、およびYはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、または炭素数1〜10のアルキル基であり;k、l、m、およびnはそれぞれ独立して、0または1である。
【請求項2】
工程(23)〜(27)の5つの工程を有する請求項1に記載のジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法。
工程(23):式21で表されるシクロヘキセニルジフルオロ酢酸エステルを、加水分解して式23で表されるカルボン酸を製造する。
工程(24):式23で表されるカルボン酸に、塩化チオニルを反応させて式24で表される酸塩化物を製造する。
工程(25):式24で表される酸塩化物に、N−ヒドロキシピリジンチオンナトリウム塩とブロモトリクロロメタンを反応させて、式25で表されるブロモジフルオロメチル誘導体を製造する。
工程(26):塩基の存在下で、式25で表されるブロモジフルオロメチル誘導体を、請求項2に記載の工程(4)で用いる式Pで表されるフェノール化合物と反応させて、式26で表されるシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体を製造する。
工程(27):式6で表されるシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体を水素還元して式22で表されるジフルオロメチレンオキシ誘導体を製造する。



式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、または炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基中の任意の−CH−は−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよいが、−O−が連続することはなく、またアルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよく;環A、環A、環A、および環Aはそれぞれ独立して、任意の−CH−が−O−、−S−で置き換えられてもよい1,4−シクロヘキシレン基、任意の=CH−が=N−で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、または環上の任意の水素原子がフッ素原子、シアノ基または炭素数1〜10のアルキル基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基であり;ZおよびZはそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜4のアルキレン基であり、アルキレン基中の任意の−CH−は−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよいが、−O−が連続することはなく、またアルキレン基中の任意の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよく;Y、Y、Y、およびYはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、または炭素数1〜10のアルキル基であり;k、l、m、およびnはそれぞれ独立して、0または1である。
【請求項3】
請求項2に記載の工程(24)および(25)のかわりに工程(24’)を有し、あわせて4つの工程を有する請求項2に記載のジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法。
工程(24’):式23で表されるカルボン酸に、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび塩基の存在下、N−ヒドロキシピリジンチオンとブロモトリクロロメタンを反応させて、式25で表されるブロモジフルオロメチル誘導体を製造する。


【請求項4】
請求項2に記載の工程(23)〜(25)の後に、工程(28)および(29)を有し、あわせて5つの工程を有する請求項1に記載のジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法。
工程(28):式25で表されるブロモジフルオロメチル誘導体を、水素還元して式27で表されるシクロヘキシルブロモジフルオロメタンン誘導体を製造する。
工程(29):塩基の存在下で式27のシクロヘキシルブロモジフルオロメタン誘導体を、請求項2に記載の工程(4)で用いる式Pで表されるフェノール化合物と反応させて、式2のジフルオロメチレンオキシ誘導体を製造する。



式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、または炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基中の任意の−CH−は−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよいが、−O−が連続することはなく、またアルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよく;環Aおよび環Aはそれぞれ独立して、任意の−CH−が−O−、−S−で置き換えられてもよい1,4−シクロヘキシレン基、任意の=CH−が=N−で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、または環上の任意の水素原子がフッ素原子、シアノ基または炭素数1〜10のアルキル基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基であり;ZおよびZはそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜4のアルキレン基であり、アルキレン基中の任意の−CH−は−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよいが、−O−が連続することはなく、またアルキレン基中の任意の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよく;kおよびlはそれぞれ独立して、0または1である。
【請求項5】
請求項4に記載の工程(24)および(25)のかわりに請求項4に記載の工程(24’)を有し、あわせて4つの工程を有する請求項4に記載のジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法。
【請求項6】
工程(30)〜(33)の後に、請求項4に記載の工程(29)を有し、あわせて5つの工程を有する請求項2に記載のジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法。
工程(30):式21で表されるシクロヘキセニルジフルオロ酢酸エステルを、水素還元して式28で表されるシクロヘキシルジフルオロ酢酸エステル誘導体を製造する。
工程(31):式28で表されるシクロヘキシルジフルオロ酢酸エステル誘導体を加水分解して、式29で表されるカルボン酸誘導体を製造する。
工程(32):式29で表されるカルボン酸誘導体に、塩化チオニルを反応させて式30で表される酸塩化物を製造する。
工程(33):式30で表される酸塩化物に、N−ヒドロキシピリジンチオンナトリウム塩とブロモトリクロロメタンを反応させて式27で表されるシクロヘキシルブロモジフルオロメタン誘導体を製造する。



式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、または炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基中の任意の−CH−は−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよいが、−O−が連続することはなく、またアルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよく;Rは、1価の有機基または無機基であり;環Aおよびはそれぞれ独立して、任意の−CH−が−O−、−S−で置き換えられてもよい1,4−シクロヘキシレン基、任意の=CH−が=N−で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、または環上の任意の水素原子がフッ素原子、シアノ基または炭素数1〜10のアルキル基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基であり;ZおよびZはそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜4のアルキレン基であり、アルキレン基中の任意の−CH−は−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよいが、−O−が連続することはなく、またアルキレン基中の任意の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよく;kおよびlはそれぞれ独立して、0または1である。
【請求項7】
請求項6に記載の工程(32)および(33)のかわりに工程(32’)を有し、あわせて4つの工程を有する請求項6に記載のジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法。
工程(32’):式29で表されるカルボン酸誘導体に、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび塩基の存在下、N−ヒドロキシピリジンチオンとブロモトリクロロメタンを反応させて式27で表されるシクロヘキシルブロモジフルオロメタン誘導体を製造する。


【請求項8】
請求項2に記載の工程(23)〜(26)の4工程を有する式26で表されるシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の工程(24)および(25)のかわりに請求項4に記載の工程(24’)を有し、あわせて3工程を有する請求項8に記載のシクロヘキセニルジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法。
【請求項10】
請求項2〜7記載の式21〜式30中の、Rが炭素数2〜5の直鎖のアルキル基であり;Rが水素原子またはフッ素原子であり;Rがメチルまたはエチルであり;環A1がトランス−1,4−シクロヘキシレン基であり;k=1、l=0であり;YおよびYが水素原子で;YおよびYが、それぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり;m=n=0である、請求項19〜25のいずれか1項記載のジフルオロメチレンオキシ誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2009−132741(P2009−132741A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64948(P2009−64948)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【分割の表示】特願2003−63139(P2003−63139)の分割
【原出願日】平成15年3月10日(2003.3.10)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】