説明

ジベンゾジアゼピノンアナログ、その製造方法及び医薬品としての使用

本発明は、式I
【化1】



で表される生物学的活性のあるジベンゾジアゼピノンアナログ(式中、Rは直鎖C1−10アルキルであり、ファルネシル部分は水素化若しくはヒドロアルコキシル化された二重結合を1、2、又は3個有する。)又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ、これらの化合物を含む医薬組成物、その製造方法、及びその腫瘍状態の治療のための薬剤の調整への使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物1の化学的誘導体である改良された特性をもつジベンゾジアゼピノンアナログに関する。本発明はさらに、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、及びプロドラッグに関し、また、前記化合物を得る方法に関する。前記誘導体を得る1つの方法は、化合物1の生合成後化学修飾を含む。本発明はさらに、ジベンゾジアゼピノンアナログ及びその薬学的に許容される塩、溶媒和物、並びにプロドラッグの薬剤としての使用に関し、特に、癌細胞の成長阻害剤、哺乳類リポキシゲナーゼ阻害剤として、及び急性又は慢性炎症の治療へのそれらの使用、並びにジベンゾジアゼピノンアナログ又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
真正放線菌(euactinomycetes)は、放線菌(actinomycetes)として知られる大きく複雑なグラム陽性細菌のサブセットである。二次代謝産物として治療に有用な多くの化合物、特に抗生物質を生成することから、土壌に豊富に存在するこれらの生物は、過去数十年にわたり、商業的に、また科学的に重要な興味を人々に抱かせてきた。新規の抗生物質を生成することのできる株が徹底的に探索された結果、数百の新種が同定された。
【0003】
多くの真生放線菌、特にストレプトミセス族(Streptomyces)及び近縁種であるSaccharopolyspora属が鋭意研究されてきた。これら2つの属は、非常に多様な生物学的活性のある代謝産物を生成する。これらの化合物が商業的に重要であることから、これらの生物の遺伝学的特徴や生理機能については、多くが知られている。その他の代表的な真正放線菌属であるMicromonosporaも人々に商業的な興味を抱かせてきた。例えば、米国特許第5,541,181号(Ohkuma et al.)はジベンゾジアゼピノン化合物を開示している。具体的には、既知の真正放線菌株であるMicromonospora sp.M990−6(ATCC 55378)によって生成される5−ファルネシル−4,7,9−トリヒドロキシ−ジベンゾジアゼピン−11−オン(「BU−4664L」と命名)を開示している。カナダ特許第2,466,340号はECO4601(化合物1)、及びMicromonospora sp.株046−ECO11並びに[S01]046を開示しており、PCT/CA2005/000751はその癌治療への使用を開示している。
【0004】
【化1】

【0005】
カナダ公開特許出願第2,248,820号は、抗ヒスタミン特性をもつとして合成ジベンゾジアゼピノンアナログを開示している。
【0006】
生物活性をもつ多くの化合物が細菌から同定されてきたが、依然として、より強化された特性をもつ新規の化合物を得ることが必要とされている。したがって、薬学的活性のある化合物を高収量且つ費用効率の高い方法で得る、然るべき必要性がある。本発明は、新規の治療用化合物及びその化合物の生合成後化学修飾による製造方法を提供することによって、これらの問題を解決する。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,541,181号(Ohkuma et al.)
【特許文献2】カナダ特許第2,466,340号
【特許文献3】PCT/CA2005/000751
【特許文献4】カナダ特許出願第2,248,820号
【発明の開示】
【0008】
本発明の1つの観点では、ジベンゾジアゼピノンアナログは、以下で定義される式Iの化合物又は水素化若しくはヒドロアルコキシ化ファルネシル誘導体で表されるか、式Iの化合物の薬学的に許容される塩,溶媒和物、又はプロドラッグである。別の実施形態では、ジベンゾジアゼピノンアナログは以下で定義される化合物2〜27のいずれかで表されるか、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ、或いは化合物2〜25のいずれかのプロドラッグの塩である。さらなる実施形態では、ジベンゾジアゼピノンアナログは、以下で定義される化合物2〜5、7,13,14,15,18、21、及び22のいずれかで表されるか、又は化合物2〜5、7,13,14,15,18、21、及び22のいずれか1つの薬学的に許容される溶媒和物若しくはプロドラッグである。
【0009】
本発明のまた別の観点では、ジベンゾジアゼピノンアナログは、以下で定義される化合物23〜25のいずれかで表される化合物、又は化合物23〜25のいずれかの薬学的に許容される溶媒和物若しくはプロドラッグである。
【0010】
本発明はさらに以下のステップを含む方法で得られたジベンゾジアゼピノンアナログを包含する:(a)ECO−4601を単離された形態で準備する、(b)化合物1を化学修飾する。別の実施形態では、ジベンゾジアゼピノンアナログは、式Iの化合物若しくはその水素化若しくはヒドロアルコキシ化ファルネシル誘導体であるか、又はその薬学的に許容される塩,溶媒和物、若しくはプロドラッグである。別の実施形態では、化学修飾のステップ(b)は、N−アルキル化、O−トリアセチル化、アリール臭素化、及びファルネシル水素化又はヒドロアルコキシ化から選択される1つ以上のステップである。別の実施形態では、ジベンゾジアゼピノンアナログは化合物2〜27から選択される。別の実施形態では、ジベンゾジアゼピノンアナログは化合物2〜5、7、13、14、15、18、21及び22から選択される。別の実施形態では、ジベンゾジアゼピノンアナログは化合物23〜25から選択される。
【0011】
本発明は更にジベンゾジアゼピノン化合物の製造方法を包含するし、かかる方法はファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物の化学修飾、及び、場合によって、生産されたジベンゾジアゼピノン化合物の単離並びに精製を含む。1つの実施形態では、化学修飾のステップは、N−アルキル化、O−トリアセチル化、アリール臭素化、及びファルネシル側鎖二重結合の水素化並びにヒドロアルコキシ化などによる修飾から選択される少なくとも1つのステップを含む。かかる実施形態のサブクラスでは、ファルネシル側鎖の修飾反応は部分的である(1つ又は2つの二重結合が修飾されている)か、完全である(3つ全ての二重結合が修飾されている)。
【0012】
本発明は更に、哺乳類の前癌又は癌状態の治療のための抗腫瘍薬剤としての、式Iの化合物又は水素化若しくはヒドロアルコキシ化ファルネシル誘導体、或いはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、又はプロドラッグの使用を包含する。1つの実施形態では、前記化合物は化合物2〜27から選択される。別の実施形態では、前記化合物は化合物2〜5、7、13、14、15、18、21及び22から選択される。別の実施形態では、前記化合物は化合物23〜25から選択される。
【0013】
本発明は更に、哺乳類の増殖性疾患治療のための抗新生物剤としての、式Iの化合物又は水素化若しくはヒドロアルコキシ化ファルネシル誘導体、或いはそれらの薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグの使用を包含する。1つの実施形態では、前記化合物は化合物2〜27から選択される。別の実施形態では、前記化合物は化合物2〜5、7、13、14、15、18、21及び22から選択される。別の実施形態では、前記化合物は化合物23〜25から選択される。
【0014】
本発明は更に、哺乳類の前癌又は癌状態治療のための薬剤の調製における、式Iの化合物又は水素化若しくはヒドロアルコキシ化ファルネシル誘導体、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグの使用を包含する。1つの実施形態では、前記化合物は化合物2〜27から選択される。別の実施形態では、前記化合物は化合物2〜5、7、13、14、15、18、21及び22から選択される。別の実施形態では、前記化合物は化合物23〜25から選択される。
【0015】
本発明は更に、式Iの化合物又は水素化若しくはヒドロアルコキシ化ファルネシル誘導体、或いはそれらの薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグと、腫瘍又は前癌若しくは癌状態の治療における使用方法を一緒にした商業用パッケージを包含する。1つの実施形態では、前記化合物は化合物2〜27から選択される。別の実施形態では、前記化合物は化合物2〜5、7、13、14、15、18、21及び22から選択される。別の実施形態では、前記化合物は化合物23〜25から選択される。
【0016】
1つの実施形態では、上述の使用において、癌細胞、新生物、及び前癌状態又は癌状態は、白血病、メラノーマ、乳癌、肺癌、膵臓癌、卵巣癌、腎臓癌、結腸癌、結腸直腸癌、前立腺癌、及び中枢神経系癌から選択される.別の実施形態では、上述の方法及び使用において、癌細胞、及び前癌状態又は癌状態は、白血病、乳癌、前立腺癌、及び中枢神経系癌から選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は改善された特性を有する新規のジベンゾジアゼピノンアナログに関し、本明細書中では式Iの化合物及び水素化又はヒドロアルコキシ化ファルネシル誘導体、並びに化合物2〜27として言及されている。本発明は更に、ジベンゾジアゼピノン化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物,及びプロドラッグに関する。本発明は更に、化合物1の化学修飾によって前記アナログを得る方法に関する。化合物1は、PCT/CA04/000069に開示されているように、放線菌Micromonospora sp. 046−ECO11(046(ECO11)ともいう)又は[S01]046株から単離される。
【0018】
本発明は又、発酵及び単離によって得られたファルネシルジベンゾジアゼピノンを化学修飾することによる新規ジベンゾジアゼピノンアナログの製造方法にも関する。かかる実施形態のサブクラスにおいては、製造される化合物は、式Iの化合物、又はその水素化若しくはヒドロアルコキシ化されたファルネシル誘導体化合物、或いは化合物23〜27から選択される化合物である。
【0019】
本発明はまた、式I及び化合物2〜27の化合物、並びにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物及び誘導体を含有する医薬組成物にも関する。前記化合物は薬剤として有用であり、特に腫瘍細胞成長抑制剤としての使用に有用である。
【0020】
以下の詳細な開示は、腫瘍の成長を抑制するためのジベンゾジアゼピノンアナログ及びこれらの化合物を含む組成物の製造方法及び使用方法を開示している。
【0021】
したがって、本発明のある観点は、本発明のジベンゾジアゼピノン化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物、及び前癌又は癌状態を治療するための前記医薬組成物の使用方法に関する。
【0022】
I.定義
本明細書中で使用される科学技術用語は、本発明の属する技術分野の当業者が通常理解しているのと同じ意味を有している。便宜上、本明細書、実施例、及び添付の請求の範囲で用いられる特定の用語及びフレーズの意味を以下に示す。
【0023】
本明細書で使用されているように「ファルネシルジベンゾジアゼピノン」という用語は化合物1、すなわち10−ファルネシル−4,6,8−トリヒドロキシ−5,10−ジヒドロジベンゾ[b、e][1,4]ジアゼピン−11−オンを指し、ECO−4601とも呼ぶ。
【0024】
本明細書中で使用されているように、「本発明の化合物」、「ジベンゾジアゼピノンアナログ」、「ジベンゾジアゼピノン化合物」、及び同等の表現は、ファルネシル部分を含むか又はファルネシル部分から誘導されたジベンゾジアゼピノン化合物群及びその薬剤的に許容される塩、溶媒和物、並びにプロドラッグを指す。かかる用語は、式Iの化合物、化合物2〜27から選択される化合物若しくは本発明中で例示されている化合物2〜5、7、13、14、15、18、及び21〜25の化合物、又は上記化合物のいずれかの薬学的に許容される塩、溶媒和物,若しくはプロドラッグを含む。本明細書中で使用されるように、「ジベンゾジアゼピノンアナログ」という用語は、化学合成の中間体として使用されるこの属の化合物及び及び原子の最も豊富に存在する同位体と異なる同位体を含む変種(例えば,HがDで置換されている、12Cが13Cで置換されている等)を含む。本発明の前記化合物は、「活性成分」と言及されていることもある。
【0025】
本明細書中で使用されているように、「化学修飾」という用語は、化学合成によってジベンゾジアゼピノン化合物(出発原料と言及されている)を修飾する1つ以上のステップを指す。化学修飾の過程において出発原料として使用される好ましい化合物は化合物1である。化学修飾ステップの例は、N−アルキル化、O−アシル化、芳香族臭素化、及び水素化並びにヒドロアルコキシ化を含むファルネシル側鎖二重結合の修飾を含む。側鎖の修飾反応は部分的(1つ又は2つの二重結合が修飾されている)又は完全(3つの二重結合が修飾されている)であってよい。化学修飾ステップはセクション3Bのスキームにおいて定義されており、又、実施例4〜8で例示されている。
【0026】
「エステル」という用語は、以下のスキーム1(b)で定義されるO−アシル化反応によってアルコールの水素原子をC(O)R’’置換基で置換することで得られるジベンゾジアゼピノンアナログを指す(スキーム中、C(O)R’’はCに結合したアミノ酸でも良い)。エステルという用語はまた、限定されるものではないが、炭酸エステル、カルバミン酸エステル等のエステル均等物も包含する。特に、「エステル」という用語は、4、6、及び8位のアルコールのエステルを包含する(原子の番号付けは実施例3〜8を参照)。
【0027】
「N−アルキル化誘導体」という用語は、下のスキーム2(a)で定義されるN−アルキル化によって、窒素原子に結合した水素原子をR置換基で置換することで得られるジベンゾジアゼピノンアナログを指す。特に,「N−アルキル化誘導体」という用語は5位の窒素が置換された誘導体を包含する(原子の番号付けは実施例3〜8を参照)。
【0028】
本明細書中で使用されているように、「水素化又はヒドロアルコキシ化ファルネシル誘導体」という用語は、1〜3箇所に修飾があるファルネシル側鎖を有する化合物を指し、かかる修飾は飽和(水素原子2個の付加)又はアルコール分子(水素原子及びOC1−6アルキル)の付加によるものであり、それぞれスキーム3(a)及び3(b)で定義され」、より具体的には実施例4及び7で定義される。
【0029】
本明細書中で使用されているように、略語は通常の意味を有している。別に注記されていない限り、略語「Ac」、「Me」、「Et」、「Pr」、「i−Pr」、「Bu」、「Bz」、「Bn」及び「Ph」はぞれぞれ、アセチル、メチル、エチル、プロピル(n−又はiso−プロピル)、iso−プロピル、ブチル(n−、iso−、sec−、又はtert−ブチル)、ベンゾイル、ベンジル、及びフェニルを指す。計測単位、技術、特性,又は化合物に対する本明細書中の略語は以下の通りである:「RT」及び「Rt」は保持時間、「min」は分、「h」は時間、「μL」はマイクロリットル、「mL」はミリリットル、「mM」はミリモルの、「M」はモルの、「mmole」はミリモル、「eq」はモル当量を意味する。「高圧液体クロマトグラフィー」又は「高速液体クロマトグラフィー」はHPLCと略した。
【0030】
「アルキル」という用語は、直鎖、分岐,又は環状の飽和炭化水素基を指す。アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、 n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘキシメチルなどが挙げられる。アルキル基は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、オキソ、グアニジノ、及びホルミルから選択される置換基によって置換されていてもよい。
【0031】
nが2〜12の整数である「C1−nアルキル」という用語は、1〜指定される「n」個の炭素を有するアルキル基を指す。前記C1−nアルキルは環状又は直鎖若しくは分岐鎖であってよい。
【0032】
nが2〜10の整数である「直鎖C1−nアルキル」という用語は、1〜指定される「n」個の炭素を有し且つ直鎖状であるアルキル基、すなわち結合した原子(本明細書では窒素)の周辺において環状又は分岐状ではないアルキル基を指す。前記C1−nアルキルは、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、及びアルコキシのような基によって置換されていてもよい。
【0033】
「アルケニル」という用語は、直鎖、分岐,又は環状の、1〜6個の炭素−炭素二重結合を含む不飽和炭化水素基を指す。アルケニル基の例としては、限定するものではないが、ビニル、1−プロペン−2−イル、1−ブテン−4−イル、2−ブテン−4−イル、及び1−ペンテン−5−イルなどが挙げられる。アルケニル基は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、ホルミル、オキソ、及びグアニジノから選択される置換基によって置換されていてもよい。不飽和炭化水素鎖の二重結合部分は、シス又はトランス立体配置のどちらでもよい。
【0034】
nが3〜12の整数である「C2−nアルケニル」という用語は、2〜指定される「n」個の炭素を有するアルケニル基を指す。C2−nアルケニルは、環状又は直鎖若しくは分岐鎖であってよい。
【0035】
「アルキニル」という用語は、直鎖,分岐鎖,又は環状の、少なくとも一個の炭素−炭素三重結合を含む不飽和炭化水素鎖を指す。アルキニル基の例としては、限定するものではないが、エチニル、1−プロピン−3−イル、1−ブチン−4−イル、2−ブチン−4−イル、及び1−ペンチン−5−イルなどが挙げられる。アルキニル基は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、ホルミル、オキソ、及びグアニジノから選択される置換基によって置換されていてもよい。
【0036】
nが3〜12の整数である「C2−nアルキニル」という用語は、2〜指定される「n」個の炭素を有するアルキニル基を指す。C2−nアルキニルは、環状又は直鎖若しくは分岐鎖であってよい。
【0037】
「シクロアルキル」又は「シクロアルキル環」という用語は、上で定義したアルキル基でさらに、3〜15個の環員を有する単一又は縮合炭素環系中において飽和又は部分的に不飽和の炭素環を有するアルキル基を指す。シクロアルキル基の例としては、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテン−1−イル、シクロペンテン−2−イル、シクロペンテン−3−イル、シクロヘキシル、シクロヘキセン−1−イル、シクロヘキセン−2−イル、シクロヘキセン−3−イル、シクロヘプチル、ビシクロ[4,3,0]ノナニル、及びノルボルニルなどが挙げられる。シクロアルキル基は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、及びホルミルから選択される置換基によって置換されていてもよい。
【0038】
nが4〜15の整数である「C3−nシクロアルキル」という用語は、3個〜指定される「n」個の炭素を有するシクロアルキル環又はシクロアルキル環系を指す。
【0039】
「へテロシクロアルキル」、「複素環式」、又は「ヘテロシクロアルキル環」という用語は、上記で定義したシクロアルキル基でさらに、3〜15個の環員(例えば、テトラヒドロフラニルは、1個の酸素原子を含む5個の環員をもつ)を有する単一若しくは縮合複素環系中に1〜4個のヘテロ原子(例えば、N、O、S、P)又はヘテロ基(例えば,NH、NR、PO、SO、SO)を含むシクロアルキル基を指す(例えば、テトラヒドロフラニルは、1個の酸素原子を含む5個の環員をもつ)。へテロシクロアルキル、複素環式、又はヘテロシクロアルキル環の例としては、限定するものではないが、ピロリジノ、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロジチエニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニン、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3,1,0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4,1,0]ヘプタニル、3H−インドリル、およびキノリジニルが挙げられる。前述のヘテロシクロアルキル基は、上記の化合物から派生するときに、可能な場所において炭素又は窒素が結合していてもよい。ヘテロシクロアルキル、複素環式、又はヘテロシクロアルキル環は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、オキソ、チオカルボニル、イミノ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル及びホルミルから選択される置換基によって置換されていてもよい。
【0040】
nが4〜15の整数である「C3−nヘテロシクロアルキル」という用語は、環の中に3〜指定される「n」個の原子及び少なくとも1つの上で定義したヘテロ基を有するヘテロシクロアルキル基を指す。
【0041】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は臭素、塩素、フッ素、又はヨウ素の置換基である。
【0042】
「アリール」又は「アリール環」という用語は、共役した単環系又は多環系において「4n+2」(nは1〜3の整数)個のΠ(パイ)電子を有し且つ5〜14個の環原子を有する通常の芳香族基である。アリールは直接、若しくはC1−3アルキル基を介して結合していてもよい(アラルキルともいう)。アリールの例としては、限定するものではないが、フェニル、ベンジル、フェネチル、1−フェニレチル、トリル、ナフチル、ビフェニル、及びテルフェニルなどが挙げられる。アリール基は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、アジド、アルキチオ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、及びホルミルから選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0043】
nが5〜14の整数である「C5−nアリール」という用語は、炭素、窒素、酸素、及び硫黄を含む原子を5〜指定される「n」個有するアリール基を指す。前記C5−nアリールは単環又は多環でもよい。
【0044】
「ヘテロアリール」又は「ヘテロアリール環」という用語は、上で定義したアリール環でさらに、酸素,窒素、硫黄又はリンから選択されるヘテロ原子を1〜4個含むものを指す。ヘテロアリールの例としては、限定するものではないが、ピリジル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、チアゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンジミダゾリル、ベンゾフラニル、シノリニル、イミダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、チアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、及びフロピリジニル基が挙げられる。ヘテロアリールは、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、アジド、アルキチオ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、及びホルミルから選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい。ヘテロアリールは、直接又はC1−3アルキル基を介して結合していてもよい(ヘテロアラルキルともいう)。前述のヘテロアリール基は、上記の化合物から派生するときに、可能な場所において炭素又は窒素が結合していてもよい。
【0045】
nが5〜14の整数である「C5−nヘテロアリール」という用語は、炭素,窒素、酸素、及び硫黄を含む原子を5〜指定される「n」個有するヘテロアリール基を指す。前記C5−nヘテロアリールは単環又は多環でもよい。
【0046】
「アミノ酸」という用語は、アミノ基を有する有機酸を指す。この用語は天然及び合成アミノ酸の両方を含む。したがって、アミノ基は、それを要件とするわけではないが、前記酸に隣接する炭素に結合していてもよい。炭素共役アミノ酸置換基は、カルボン酸官能基を介して親分子のへテロ原子(窒素又は酸素)に結合している。炭素共役アミノ酸は親分子と、ヘテロ原子が酸素のときエステルを形成し、ヘテロ原子が窒素のときアミドを形成する。アミノ酸の例として、限定されるものではないが、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、ヒスチジン、リシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、デスモシン、オルニチン、2−アミノ酪酸、シクロヘキシルアラニン、ジメチルグリシン、フェニルグリシン、ノルバリン、ノルロイシン、ヒドロキシリシン、アロ−ヒドロキシリシン、ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、エチルグリシン、ベータ−アラニン、アミノアジピン酸、アミノ酪酸、エチルアルパラギン、及びN−メチルアミノ酸。アミノ酸は、純粋なL又はD異性体でもよいし、L異性体とD異性体の混合物であってもよい。
【0047】
本発明の化合物は1つ以上の不斉炭素を含有してもよく、ラセミ化合物又は非ラセミ化合物の混合物を形成する光学異性体として存在してもよい。本発明の化合物は、単一の異性体として、又は立体化学異性体の混合物として有用である。ジアステレオ異性体、すなわち重ね合わせることができない立体化学異性体は、クロマトグラフィー、蒸留、結晶化,又は昇華のような従来技術によって分離できる。光学異性体は、従来技術に従いラセミ混合物を分割することで得られる。かかる従来技術は、キラルクロマトグラフィー(例えばHPLC)、イムノアッセイ、又は共有結合で結合したキラル試薬(例えば、モッシャー法のエステル)若しくは非共有結合で結合したキラル試薬(例えば、キラル塩)の使用を含む。かかるキラル試薬は、それぞれジアステレオマーエステル若しくはジアステレオマー塩を形成し、クロマトグラフィー、蒸留、結晶化,又は昇華のような従来技術によってさらに分離することができる。前記キラルエステル又はキラル塩はその後,求める異性体に復元するために、従来技術により開裂又は置換される。
【0048】
本発明は、単離又は精製された化合物を包含する。「単離された」又は「精製された」化合物とは、重量で混合物の少なくとも10%、20%、50%、80%、又は90%を構成する化合物を指す。ただし、本発明の化合物を含む混合物は、当業者に知られている従来の生物検定において、実証可能な(すなわち、統計的に有効な)、細胞増殖抑制、細胞毒性、酵素阻害,受容体結合作用などの生物学的活性を有する。
【0049】
「薬学的に許容される塩」という用語は、従来の化学的方法によって、塩基性又は酸性部分を有する化合物から合成された非毒性の塩を指す。一般的に、そのような塩は、これらの化合物の酸性型又は塩基性型を、水中又は有機溶媒中、若しくはその混合物中(一般的に、エーテル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルのような非水性溶媒が好まれる。)で化学量論的量の適当な塩基又は酸と反応させることで調製される。塩を調製する別の方法は、イオン交換樹脂の使用である。「薬学的に許容される塩」という用語は、酸付加塩及び塩基付加塩の両方、親化合物又はプロドラッグのいずれか、又はそれらの溶媒和物を含む。薬学的に許容されるのであれば、塩の性質は重要ではない。酸付加塩に使用される酸の例としては、限定するものではないが、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸,炭酸、硫酸、スルホン酸、リン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、シュウ酸、リンゴ酸、グルタミン酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、マレイン酸、エンボン酸、(パモン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファニル酸、メシル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルゲン酸、β−ヒドロキシ酪酸、マロン酸、ガラクタル酸、及びガラクツロン酸などが挙げられる。好ましい薬学的に許容される塩基付加塩は、限定するものではないが、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、及び亜鉛からできる金属塩、又はN,N,−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、リシン及びプロカインなどからできる有機塩を含む。薬学的に許容される塩の追加例は、Berge et al (1977), Journal of Pharmaceutial Sciences, vol 66, no 1, pp 1-19,に挙げられており、その内容全体を本願に引用して援用する。
【0050】
「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物と1つ以上の溶媒分子(有機でも無機でも)との物理的会合を指す。かかる物理的会合は水素結合を含む。ある場合においては、例えば1つ以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子中に組み込まれているとき、溶媒和物は分離可能である。「溶媒和物」は、液相及び分離可能な溶媒和物の両方を含む。溶媒和物の例としては、水和物、エタノール溶媒和物、メタノール溶媒和物、及びヘミエタノール溶媒和物などが挙げられる。
【0051】
「薬学的に許容されるプロドラッグ」という用語は、本発明の化合物のあらゆる薬学的に許容されるエステル、エステル塩、又はその他のあらゆる誘導体を指す。これらは、対象(recipient)に投与されることで、直接又は間接的に本発明の化合物又はその生物学的に活性な代謝産物若しくはその残留物を提供することを可能とする。特に好ましい塩又はプロドラッグは、それが哺乳類に投与されたとき、本発明の化合物の溶解性、効果、又は生物学的利用能のような特性が強化される(例えば、経口投与した化合物の血中への吸収をより容易にする)ものであるか、親化合物の、その関連する生物学的な区画(例えば、脳やリンパ系)への送達を向上させるものである。本明細書中で使用されるように、プロドラッグは、担体に共有結合で結合した1つ以上の官能基を有するドラッグであり、かかる担体は、哺乳類対象に投与されたときにイン・ビボで代謝によって又は化学的にドラッグをリリースする。本発明の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグは、限定されるわけではないが、アシルオキシメチル、アシルオキシエチル並びにアシルチオエチルエーテル、エステル、アミノ酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸並びに硫酸エステル、及びそれらの金属塩などのようなヒドロキシル基誘導体を含む。
【0052】
II.本発明の化合物
1つの観点では、本発明は、本明細書中で本発明の化合物と呼んでいる新規のジベンゾジアゼピノンアナログ、及びその薬学的に許容される塩、溶媒和物並びにプロドラッグに関する。
【0053】
本発明の化合物である化合物2〜5、7、13、14、15、18、及び21〜25は、実施例4〜8に詳述されるように、マススペクトルやNMRスペクトルのような物理化学的特性及びスペクトル特性のいずれかによって特徴付けられる。
【0054】
別の観点では、本発明の化合物は、式Iによって特徴付けられる化合物、又は式Iのファルネシル基が1、2、若しくは3個の水素化若しくはヒドロアルコキシ化二重結合を有するファルネシル誘導体、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグである。
【0055】
【化2】

【0056】
[式中、Rは直鎖C1−10アルキルである。]
【0057】
1つの実施形態では、Rは直鎖C1−10アルキルであり、他の全ての基はすでに開示された通りである。かかる実施形態のサブクラスでは、アルキル基は任意選択でハロ、フルオロ、アミノ及びカルボキシから選択される置換基で置換されているか、又はそれらの薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、Rはメチルである。別の実施形態では、Rはエチルである。別の実施形態では、Rはn−プロピルである。別の実施形態では、Rはn−ブチルである。別の実施形態では、Rはn−ペンチルである。別の実施形態では、Rはn−ヘキシルである。別の実施形態では、Rはメチルであり、ファルネシルが完全に水素化(すなわち、飽和)されている。別の実施形態では、Rはメチルであり、ファルネシルの二重結合の1つが水素化されている。別の実施形態では、R1はメチルであり、ファルネシルの二重結合の2つが水素化されている。別の実施形態では、Rは直鎖C1−10アルキルであり、ファルネシルの二重結合の1つが水素化されている。別の実施形態では、Rは直鎖C1−10アルキルであり、ファルネシルの二重結合の2つが水素化されている。別の実施形態では、Rは直鎖C1−10アルキルであり、ファルネシルが完全に水素化(すなわち、飽和)されている。別の実施形態では、Rは直鎖C1−10アルキルであり、ファルネシルの二重結合の1つがヒドロメトキシ化されている。別の実施形態では、Rは直鎖C1−10アルキルであり、ファルネシルの二重結合の2つがヒドロメトキシ化されている。別の実施形態では、Rはメチルであり、ファルネシルの二重結合の1つがヒドロアルコキシ化されている。別の実施形態では、Rはメチルであり、ファルネシルの二重結合の2つがヒドロアルコキシ化されている。別の実施形態では、Rはエチルであり、ファルネシルの二重結合の1つがヒドロアルコキシ化されている。別の実施形態では、Rはエチルであり、ファルネシルの二重結合の2つがヒドロアルコキシ化されている。本発明は、前述の化合物の全てのエステル又はN−アルキル化誘導体、及び薬学的に許容される塩、溶媒和物、並びにプロドラッグを包含する。
【0058】
以下は本発明の化合物の例である。ここに挙げた化合物は、いかなる点においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0059】
A.N−アルキル化産物
【0060】
【化3】

【0061】
【化4】

【0062】
B.N−アルキル化産物の水素化誘導体
【0063】
【化5】

【0064】
C.N−アルキル化産物のヒドロアルコキシ化誘導体
【0065】
【化6】

【0066】
D.その他の選択
【0067】
【化7】

【0068】
又は化合物2〜27のいずれかの薬学的に許容される塩、溶媒和物、又はプロドラッグ。
【0069】
本発明はさらに、前述の化合物のいずれのエステル又はN−アルキル化誘導体をも提供する。ある実施形態においては、1つ以上の式Iの化合物が明示的に除外されている。
【0070】
本発明の化合物のプロドラッグは、4、6及び8−ヒドロキシ基の1つ以上の基又は分子上のその他のヒドロキシル基が、何らかの基に結合しており、哺乳類対象に投与されたときにその基が開裂されて遊離ヒドロキシル基を形成することを特徴とする化合物を含む。プロドラッグの例として、限定されるものではないが、ヒドロキシ基官能基の酢酸塩、ギ酸塩、ヘミコハク酸塩、安息香酸塩、ジメチルアミノ酢酸塩、及びリン酸オキシカルボニル誘導体や、ヒドロキシル基官能基のジメチルグリシンエステル、アミノアルキルベンジルエステル、アミノアルキルエステル、又はカルボキシアルキルエステルを含む。ヒドロキシ基のカルバメート誘導体及び炭酸塩誘導体も含まれる。さらに包含されるヒドロキシル基アナログとして、アシル基が、限定されるわけではないが、エーテル,アミノ、及びカルボン酸などの官能基で置換されていてもよいアルキル基を含むか、又はアシル基がアミノ酸エステルであることを特徴とする(アシルオキシ)メチル及び(アシルオキシ)エチルエーテルがある。また、リン酸及びホスホン酸エステル、硫酸エステル、スルホン酸エステルも含まれ、これらはアルキル化状態(例えば、ビス−ピバロイルオキシメチル(POM)リン酸トリムエステル、つまり−P(O)OEt)又は塩状態(例えば、リン酸ナトリウムエステル(−P(O)ONa))で存在する。抗癌治療に使われるプロドラッグ及びその代謝についての更なる例として、本願に引用して援用するRooseboom et al (2004), Phamacol.Rev., vol56, 53-102を参照のこと。プロドラッグが酸性若しくは塩基性部分を含むとき、かかるプロドラッグはその薬学的に許容される塩として調製されてもよい。
【0071】
本発明の化合物は、本発明の化合物からなる医薬組成物と、下のセクションIVに議論されているように、薬学的に許容される担体との組み合わせで処方されてもよい。
【0072】
III. ジベンゾジアゼピノンアナログの製造方法
A.発酵
「ファルネシルジベンゾジアゼピノン生産微生物」及び「ファルネシルジベンゾジアゼピノン生産菌」という用語は、本明細書中で使用されているように、ファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物の生産に必要な遺伝情報を有する微生物を指し、かかる生物が天然に前記化合物を生産しているかどうかにかかわらない。該用語は、ファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物の生産に必要な遺伝情報を自然の環境で有する前記生物、及び組換え技術により遺伝情報を導入した生物に等しく適用される。
【0073】
化合物は、本願に全体を引用して援用する米国特許出願第10/762,107号に記載されているように、Micromonospora株046−ECO11及び[S01]046の発酵培養液の単離によって生産される。化合物1の生産は、特定の株046−ECO11及び[S01]046の使用だけに限定されるわけではない。むしろ、X線照射、紫外線照射、ナイトロジェンマスタード処理、ファージ感染、及び抗生物質耐性選択などの公知の方法による、若しくは組換え遺伝子工学技術の利用による、前記生物に由来する046−ECO11及び[S01]046の変異体若しくはバリアントのような他のECO−4601生産生物が使われてもよい。例えば,Manual of Industrial Microbiology and biotechnology, Demain and Solomon, American Society for Microbiology, Washington D.C., 1986、Hesketh et al. (1997), J. Antibiotics, vol 50, no6, 532-535、 及びHosoya et al. (1998), Antimicrobial Agents and Chemotherapy, vol 42, no 8,2041-2047)を参照。これらの内容の全体を本願に引用し援用する。
【0074】
前記ファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物はさまざまに微生物に生合成され得る。ファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物を合成し得る微生物には、限定されるわけではないが、Actinomycetales目(actinomycetesとも呼ぶ)の細菌が含まれる。Actinomycetes属に属するメンバーの例として、限定されないが、Nocardia, Geodermatophilus, Actinoplanes, Micromonospora, Nocardioides, Saccharothrix, Amycolatopsis, Kutzneria, Saccharomonospora, Saccharopolyspora, Kitasatospora, Streptomyces, Microbispora, Streptosporangium、及びActinomaduraが含まれる。actinomycetesの分類法は複雑であり、本発明の化合物を合成し得る属の参照として、Goodfellow, SupragenericClassification of Actinomycetes (1989)、Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology, Vol. 4 (Williams and Wilkins, Baltimore, pp. 2322-2339)及びEmbley and Stackebrandt, “The molecular phylogeny and systematics of the actinomycetes,” Annu. Rev. Microbiol. (1994) 48:257-289を用いた。これらの参照文献の内容全体を引用して援用する。
【0075】
ファルネシルジベンゾジアゼピノン生産微生物は、actinomycetesの既知の栄養源を含む培地で培養した。そのような培地は、pH約6〜約9において、代謝可能な炭素源、窒素源、場合により無機塩、及びその他の成長因子を含む。好適な培地として、限定されるわけではないが、表1に示される増殖培地がある。微生物は約18℃〜約40℃、約3〜約40日間培養された。
【0076】
【表1】

【0077】
別記されていない限り、全ての成分はg/lである。
*pHは、CaCOの添加前に表示通り合わせた。
*微量元素溶液は以下を含む:ZnCl 40mg;FeCl6HO(200mg);CuCl2HO(10mg);MnCl.4HO;Na.10HO(10mg);(NHMO24.4HO(10mg)/l
【0078】
ファルネシルジベンゾジアゼピノン生産微生物を植菌した培地は、攪拌(例えば、回転振盪機、振盪恒温槽での振盪又はファーメンターの使用)して通気してもよい。空気、酸素、又は適当な混合気体を培養中の培地に通すことで通気してもよい。培養後、例えば遠心、クロマトグラフィー、吸着、濾過などの当業者に知られている技術及び/又は本明細書中で開示されている技術を用いて、培養を行った培地からファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物を抽出及び単離することができる。例えば,培養培地は、任意選択で酸性化してからメタノール、エタノール、n−ブタノール、酢酸エチル、n−ブチル酢酸又は4−メチル−2−ペンタノンのような適切な有機溶媒と混合してもよい。かかる有機相は、例えば遠心及びデカンテーション又はろ過によって菌糸体から分離することができる。任意選択で前記菌糸体をさらに有機溶媒で抽出して、前記有機抽出物と一緒にしてもよい。任意選択で、有機相をさらに、例えば水洗、沈殿生成、及び濾過などの処理をし、次いで、例えば真空下で蒸発乾燥させることによって溶媒を除去する。生じた残留物は、場合によって、例えば水、エチルエーテル、エタノール、酢酸エチル,メタノール又はそれらの混合物で再構成し、ヘキサン、四塩化炭素、塩化メチレン又はそれらの混合物のような適切な有機溶媒を用いた二相系で再抽出することができる。溶媒除去後、化合物はさらに、順相又は逆相液体クロマトグラフィー、結晶化,昇華、吸着、及び質量排除クロマトグラフィーのような標準的技術で精製することができる。
【0079】
B. 化学修飾:
ファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物1は微生物によって生合成され、本明細書及びカナダ特許第2,466,340号(及びPCT/CA04/000069)に記載されている通りに単離される。化合物1は、誘導体又は構造アナログを形成するために、ランダム及び/又は直接に化学修飾を受ける。相同な機能的活性を有するこのような誘導体又は構造アナログは、本発明の範囲内に含まれる。ファルネシルジベンゾジアゼピノンは、この技術分野で既知の方法及び本明細書記載の方法を用いて、1つ以上の化学修飾ステップにより修飾されてもよい。化学修飾方法の例は実施例4〜8に提供されている。
【0080】
化合物1の誘導体であるジベンゾジアゼピノンアナログ(例えば,本明細書中で、式Iの化合物及びその誘導体、及び化合物2〜27として同定されている化合物)は標準的な有機化学の手法で製造される。本明細書に記載されている化合物を製造及び加工するために必要な、官能基、反応性、及び一般的なプロトコールを含む、有機化学の一般原則は、例えば、”Advanced Organic Chemistry,” 4thEdition by Jerry March (1992), Wiley-Interscience, USAに記載されており、この文献の全体を本願に引用して援用する。加えて,当業者は、本明細書に記載の合成方法は保護基を使用してもよいと、それが明示的に記載されていなくても、理解するだろう。本明細書で使用されているとおり、「保護基」とは、多官能基化合物において、反応が選択的に別の反応部位で行われるように、酸素,硫黄、又は窒素を有する反応基などの1つ以上の官能性部分を遮断するために使用される部分を意味する。保護基の使用のための一般原則、特定の官能基へのその適用可能性、及び使用法は,例えば,T. H. Greene and P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rdEdition, John Wiley & Sons, New York (1999)に記載されており、この文献の全体を本願に引用して援用する。
【0081】
アルコール及びフェノールは、必要があれば、例えばシリルエーテル(TMS:トリメチルシリル、TIPS:トリイソプロピルシリル)、アセタール(MOM:メチルオキシメチル、BOM:ベンジルオキシメチル)、エステル(酢酸、ベンゾイル)、及びエーテル(Bn:ベンジル)で保護される。アルコールは、シリルエーテルにはTBAF(フッ化テトラブチルアンモニウム)、アセタール及びエーテルには酸性水溶液触媒、エステルにはケン化、Bn及びBOMには加水素分解のような条件下で脱保護される。アミンは、必要があれば、例えばカルバメート(例、tert−ブチル(BOC)及びベンジル(CBZ))、並びにフルオレン誘導体(例、FMOC:N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−)などの、標準的なアミノ酸保護基を用いて保護される。アミンは、例えばBOCには酸加水分解、CBZには加水素分解、又はFMOCには塩基処理のような条件下で脱保護される。全ての保護及び脱保護条件は、上記のGreene et alの文献に従って実施される。
【0082】
当業者は、化合物1の派生体を生産するのに多くの化学合成過程が使用できることを認識するだろう。以下のスキームは、本発明の化合物を生成するのに使われてもよい通常の化学修飾の例である。本明細書に記載されている構造を提供するどんな化学修飾方法も使用されてよいし、それらは本発明に含まれる。
【0083】
スキーム1:アルコール修飾(O−アシル化)
【0084】
【化8】

【0085】
スキーム中、R’’は酢酸塩である。
【0086】
スキーム1において、フェノールアルコールは、カップリング剤(例:EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−ジイソプロピルエチルカルボジイミド塩酸塩;又はHATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩))と塩基(例として、ピリジン又はN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA))及び任意でHOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物)並びに/又はDMAP(4−(ジメチルアミノ)ピリジン)などの非触媒とで活性化した酸ハロゲン化物、無水物、N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル、又はカルボン酸のような、活性カルボン酸(R’’C(O)X)と反応させることでエステルに変換される。同じ反応は、ファルネシル修飾反応(スキーム3)で形成されたアルコールに対してなされてもよい。
【0087】
スキーム1は,例えば化合物1から化合物25を得るために、及び本発明の化合物のエステルを生成するために利用される。
【0088】
スキーム2:アミン修飾(N−アルキル化)
【0089】
【化9】

【0090】
スキーム中、Rは任意に置換されている直鎖C1−10アルキルから選択される。
【0091】
スキーム2において、5位(位置は実施例3参照)のアミン基がアルキル化される。スキーム2(a)において、ジアルキル硫酸及びハロゲン化アルキルのようなRXアルキル化剤を用いて、好ましくは塩基(例、重炭酸ナトリウム及びピリジンなど)存在下で、アミンがアルキル化される。
【0092】
スキーム2は、例えば化合物1から化合物2〜13、及び化合物23から化合物14を調製するために、及びN−アルキル基を含む式Iの化合物のいずれかを生成するために利用される。
【0093】
スキーム3:二重結合修飾
【0094】
【化10】

【0095】
式中、RはOC1−6アルキルである。
【0096】
スキーム3において、二重結合は(a)水素化、及び(b)ヒドロアルコキシ化、によって修飾される。(a)において水素化は、水素源(例、水素、ギ酸)及び触媒(例えばロジウム、白金、又はパラジウム)を用いて行われる。(b)において、酸性条件下(例えば、p−トルエンスルホン酸、及びアルキル硫酸/NaHCO/MeOHなど)のプロトン付加によるカルボカチオンの形成及びアルコール(C1−6アルキルアルコール、ヒドロアルコキシ化)による前記カルボカチオンの捕獲によって、二重結合への求電子付加が達成される。
【0097】
スキーム3は、例えば(a)は化合物1から化合物23、並びに化合物2から化合物14〜16を得るために、(b)は化合物2から化合物17〜19、化合物3から化合物20〜22を得るために利用される。スキーム3(a)及び(b)はまた、式Iの化合物の水素化又はヒドロアルコキシ化ファルネシル誘導体のいずれかを生産するのにも利用される。
【0098】
スキーム4:芳香族置換
【0099】
【化11】

【0100】
式中、XはBrである。
【0101】
スキーム4において、アリール基は芳香族置換によって修飾される(臭素化)。臭素化剤は、臭素、N−ハロアミド(例えば、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、ポリハロゲン化テトラアルキルアンモニウム)などを含む。
【0102】
スキーム4は、化合物1から化合物24を、化合物2から化合物26を、及び化合物14から化合物27を調製するのに利用される。
【0103】
プロドラッグは、上記のJerry Marchに記載されているような通常の化学修飾によって調製され、かかる修飾は、エステル化(スキーム1)及びアルキル化反応、すなわち活性酸若しくは混合酸無水物の使用(ハロゲン化アシルなど、カップリング試薬の使用、)及びアルキル化剤(R−X、式中Xはジアゾのような脱離基で、Rは目的とする基)の使用を含む。リン酸塩プロドラッグは、例えばジアルキル亜リン酸で、Silverberg et al. (1996), Tet. Lett., Vol. 37, 711-774、 U.S. patent 5,561,122 (Pettit et al) 及びHwang and Cole (2004), Org. Lett., vol 6, no 10, 1555-1556 ((POM)2phosphate triester from (POM)2phosphoryl chloride)に記載されているような手法でリン酸化することで調製される。これらの文献の内容全体を本願に引用し援用する。
【0104】
IV. 本発明の化合物を含む医薬組成物
本発明は、薬学的に許容される担体と組み合わせられた、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩,溶媒和物、若しくはプロドラッグを含む医薬組成物提供する。ジベンゾジアゼピノンアナログを含有する医薬組成物は、腫瘍状態のような制御不能な細胞成長及び細胞増殖に関連した疾患や障害を治療するのに有用である。該医薬組成物はまた、炎症,自己免疫疾患、感染症、神経変性疾患及びストレスを含むその他の疾患や障害の治療にも有効である。ジベンゾジアゼピノンアナログを含む該医薬組成物は、該医薬組成物及び腫瘍状態を治療するためのその使用法を記載した書面のような必要なものを適切な容器に入れて提供する便利な商業用パッケージにされていてもよい。
【0105】
本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグは、腫瘍及び増殖性の疾患及び障害の治療的又は予防的処置のために、経口、舌下、経鼻腔、眼内、経直腸、経皮、粘膜、局所、又は非経口投与に処方できる。非経口による投与の例として、限定されるわけではないが、皮内、皮下(s.c.、s.q.、sub−Q、Hypo)、筋肉内(i.m.)、静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)、動脈内、髄内、心臓内、関節内(関節)、骨液内(関節液)、脳内又は頭蓋内、髄腔内、大槽内、及び鞘内(髄液)が挙げられる。製剤の非経口的注射又は注入に有用な既知の装置は、非経口投与に用いられ得る。経口又は非経口投与のためには、本発明の化合物は、従来の薬剤担体及び賦形剤と混合でき、液剤、乳剤、錠剤、カプセル剤、ソフトゲル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、及びウエハースなどの形態であってよい。本発明の化合物を含む組成物は、重量で約0.1%〜約99%、約1%〜約98%、約5%〜約95%、約10%〜約80%、約15%〜約60%の有効成分を含む。
【0106】
本明細書に記載されている薬剤調製は標準的手法に従い調製され、癌を減少、予防、又は解消するように選択された投与量で投与される(ヒトの治療に用いるさまざまな薬剤の投与法についての一般的記載は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PA;及びGoodman and Gilman, Pharmaceutical Basis of Therapeutics, Pergamon Press, New York, NY参照。これらの文献の内容を本願に引用して援用する。)。
【0107】
本明細書中で使用されているように、「単位投与量」という用語は、ヒト対象及びその他の動物への単位投与量として適した、固体に個別の単位量を指し、各単位量は、求める治療効果を発揮するように計算された規定量のジベンゾジアゼピノンアナログを薬学的に許容される適切な担体と共に含有する。1つの実施形態では、単位投与量は10〜3000mgの有効成分を含有する。別の実施形態では、単位投与量は20〜1000mgの有効成分を含有する。本発明の組成物は、制御放出(例、カプセル剤)又は徐放性送達システム(例、生分解性マトリックス)を用いて運搬されてよい。本発明の組成物の投与に適した薬物送達の遅延放出送達システムの例は、米国特許第4,452,775号(Kentに付与)、第5,039,660号(Leonardに付与)、及び第3,854,480号(Zaffaroniに付与)に記載されている。これらの文献の全体を本願に引用して援用する。
【0108】
本発明の薬学的に許容される組成物は、1つ以上の非毒性で薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤及び/又はアジュバント及び/又は賦形剤(本明細書中では、これらをまとめて「担体」材料と呼ぶ)、並びにもしあれば所望のその他の有効成分と共に、1つ以上の本発明の化合物を含んでいる。薬学的に許容される担体には、例えば溶剤(solvents)、運搬体(vehicles)、又は溶媒(medium)があり、それらの例として、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール,エタノール、プロピレングリコール、ポリソルベート80(Tween−80TM)、ポリ(エチレン)グリコール300及び400(PEG300及び400)、ペグ化ヒマシ油(例、Cremophor EL)、ポロキサマー407及び188、疎水性担体、並びにそれらの組合せが挙げられる。疎水性担体には、例えば脂肪乳液、脂質、ペグ化リン脂質、ポリマーマトリックス、生体適合性ポリマー、脂質小胞(liposphere)、小胞、粒子、及びリポソームがある。該用語は特に細胞培養培地を含まない。
【0109】
製剤に含まれる賦形剤(excipient)又は添加剤(additive)は、例えば薬の性質や投与方法などによって異なる目的をもっている。一般的に使用される賦形剤の例として、限定されるわけではないが、安定剤、可溶化剤又は界面活性剤、緩衝液、酸化防止剤並びに保存剤、等張化剤、充填剤、平滑剤、乳化剤、沈殿防止剤若しくは増粘剤、不活性希釈剤、増量剤、崩壊剤、結合剤、湿潤剤、平滑剤、抗菌剤、キレート剤、甘味料、香剤、香味剤、着色剤、投与補助剤、及びその組合せが挙げられる。
【0110】
前記組成物は、コーンスターチ若しくはゼラチン、ラクトース、スクロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸二カルシウム、塩化ナトリウム、及びアルギン酸などの一般的な担体及び賦形剤を含有していてよい。組成物は、クロスカルメロースナトリウム、微結晶セルロース、ナトリウムスターチグリコレート、及びアルギン酸を含有していてもよい。
【0111】
非経口投与用の製剤は、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを含む水性若しくは非水性の等張性無菌注射溶液、懸濁液、又は脂肪乳液の形態であってよい。注射に使われる非経口用の形態は容易に注射可能な程度に流動的でなければならない。これらの溶液又は懸濁剤は無菌の濃縮液体、散剤、又は顆粒剤から調製される。化合物は、溶剤や媒体のような担体、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、ベンジルアルコール、グリコフロール、N,N−ジメチルアセトアミドN−メチルピロリドン、グリセリン、生理食塩液、デキストロース、水、グリセロール、疎水性担体、及びその組合せに溶かすしてよい。
【0112】
非経口用の調製に使用される賦形剤の例として、限定されるわけではないが,安定剤(例えば炭水化物、アミノ酸,及びポリソルベート)、可溶化剤(例えばセトリミド、ドキュセートナトリウム、グリセリルモノオレエート、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びポリエチレングリコール(PEG))、界面活性剤(例えばポリソルベート、トコフェロール、ペグコハク酸、ポロキサマー、及びCremophorTM)、緩衝剤(例えば酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、及びアミノ酸など)、抗酸化剤並びに保存剤(例えばBHA、BHT、ゲンチシン酸、ビタミンE、アスコルビン酸、並びに硫黄含有薬剤として亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩、チオグリセロール、及びチオグリコレートなど)、等張化剤(生体適合性を調節するため)、懸濁若しくは増粘剤、抗菌性物質(例えばチメルソール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール並びにクロロブタノール)、キレート剤、及び投与補助剤(局所麻酔薬、抗炎症剤、抗凝固剤、長引かせるための血管収縮薬、並びに組織浸透性を上昇させるための薬剤)、及びその組合せが挙げられる。
【0113】
疎水性担体を用いた非経口用製剤には、例えば脂肪乳液があり、又、脂質、油相(liposphere)、小胞、粒子、及びリポソームを含有する製剤もある。脂肪乳液は、上述した賦形剤に加え、脂質相並びに水相、及び例えば乳化剤(例、リン脂質、ポロキサマー、ポリソルベート及びポリオキシエチレンヒマシ油)並びに浸透物質(例、塩化ナトリウム、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、及びグルコース)のような添加剤を含有する。リポソームは、天然又は派生リン脂質、及び任意でコレステロールのような安定化剤を含む。
【0114】
別の実施形態では、本化合物の非経口単位投与量の形態は、適切な担体中ですぐに使用できる本化合物の溶液として、無菌密封アンプル中にあるか若しくは無菌的に注射筒に充填されていてよい。適切な担体は上述の賦形剤のいずれかを任意選択で含んでいてよい。
【0115】
あるいは、本発明の化合物の単位投与量は、薬学的に許容される担体中で、送達のときにその場で再構成されるように濃縮液体、パウダー、又は顆粒の形態をしていてよい。上述の賦形剤に加えて、パウダー剤は充填剤(例、マンニトール、グリシン、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストリン、ヒドロキシエチルデンプン、フィコール、及びゼラチン)及び凍結防止剤又は溶解剤を任意で含んでいてよい。
【0116】
例えば、静脈内(IV)での使用において、式Iの化合物の無菌製剤、及び任意選択で、溶解剤又は界面活性剤を含む1つ以上の添加物は、一般的に使用される静脈輸液のどれにでも溶解又は懸濁され、注入によって投与されてよい。静脈輸液の例として、限定されるものではないが、生理食塩液、リン酸緩衝食塩水、5%グルコース又はリンゲル液TMが挙げられる。
【0117】
別の実施形態では、筋肉内用の製剤において、本発明の化合物、又は本化合物を形作る好適な可溶性塩若しくはプロドラッグの無菌製剤は、例えば注射用蒸留水(WFI)、生理食塩液、又は5%グルコースのような薬学的希釈剤に溶かして投与されてよい。本化合物の適切な不溶性形態は、水性溶剤又は薬学的に許容される油性溶剤中に懸濁液として調製して投与されてもよい。かかる油性溶剤の例として、例えばエチルオレエートのような、長鎖脂肪酸のエステルがある。
【0118】
経口での使用には、錠剤及びカプセル剤のような固形製剤が特に有効である。徐放性又は腸溶性コーティングされた製剤が考案されてもよい。小児や高齢者に適用するには、懸濁剤、シロップ剤、及びチュアブル錠が特に好ましい。医薬組成物は経口投与のために、例えば錠剤、カプセル剤、懸濁剤若しくは液状シロップ又はエリキシル剤、及びウエハースなどの形態をとる。一般的な経口投与に用いられる賦形剤又は添加剤の例として、限定されるものではないが、不活性希釈剤、増量剤、崩壊剤、結合剤、湿潤剤、平滑剤、甘味剤、着香剤、着色剤、及び保存剤が挙げられる。
【0119】
前記経口用医薬組成物は、好ましくは治療有効量の有効成分を含む単位投与量の形態で作られる。そのような投与量単位の例として錠剤及びカプセル剤がある。治療目的のために、錠剤及びカプセル剤は有効成分に加えて公知の担体を含有できる。かかる担体の例として、不活性希釈剤(例、炭酸ナトリウム並びに炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム並びにリン酸カルシウム、及びラクトース)、結合剤(例、アカシアガム、デンプン、ゼラチン、スクロース、ポリビニルピロリドン(プロビドン)、ソルビトール、又はトラガカントメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びエチルセルロース)、増量剤(例、リン酸カルシウム、グリシン、ラクトース、トウモロコシデンプン、ソルビトール、又はスクロース)、潤滑剤若しくは平滑剤(例、ステアリン酸マグネシウム若しくはその他の金属のステアリン酸塩、ステアリン酸、ポリエチレングリコース、ろう、オイル、シリカ、並びにコロイカルシリカ、シリコン溶液又はタルク)、崩壊剤(例、ジャガイモでんぷん、コ−ンスターチ、及びアルギン酸)、着香剤、着色剤、又は許容される湿潤剤が挙げられる。担体は、消化管での吸収を遅らせるために、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルのようなコーティング兼賦形剤を含有していてよい。
【0120】
経口用液体製剤は、一般的に水溶液又は油性溶液、懸濁液、乳液、シロップ又はエリキシル剤の形態であって、公知の添加物、例えば懸濁剤、乳化剤、非水性溶剤(non-aqueous agent)、保存剤、着色剤、及び着香剤などを含有していてもよい。液体製剤の添加剤の例として、アカシア、アーモンド油、エチルアルコール、分留ヤシ油、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、食用硬化油、レシチン、メチルセルロース、パラヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル、プロピレングリコール、ソルビトール、又はソルビン酸が挙げられる。
【0121】
液体及び固体の経口用製剤に、ペパーミント、ウィンターグリーンオイル、チェリー、ブドウ、又は果物着香料などの着香剤なども使われてよい。また、剤形の外見をきれいにするために若しくは製品を識別しやすいように着色剤を加えることが望ましいこともある。局所的な使用には、本発明の化合物は、皮膚又は鼻やのどの粘膜に適用するのに適した形態で調剤されてもよいし、クリーム、軟膏、液体スプレー若しくは吸入剤、ロゼンジ、又はのど用塗り薬の形態であってもよい。そのような局所的な製剤はさらに、有効成分の表面浸透を促進するために、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような化学化合物を含有してよい。眼や耳への適用するために、本発明の化合物は、軟膏剤、クリーム、ローション剤、塗り薬、又は散剤として、親水性基材又は疎水性基材中に、液状又は半液状で含まれてよい。経直腸投与のために、本発明の化合物は、ココア脂、ろう、又はその他のグリセリドのような公知の担体と混合して坐剤の形状で投与されてもよい。
【0122】
V. 腫瘍治療における医薬用途
1つの観点では、本発明は、哺乳類における癌細胞の成長及び/又は増殖の抑制方法に関する。別の観点では、本発明は哺乳類の腫瘍状態の治療方法を提供する。哺乳類には、有蹄動物(例、ヒツジ、ヤギ、牝牛、ウマ、ブタ)、並びに、齧歯動物、ネコ科、イヌ科及び霊長類(すなわち、ヒト及び非ヒト霊長類)を含む非有蹄動物が含まれる。好ましい実施形態では、哺乳類はヒトである。
【0123】
本発明のジベンゾジアゼピノンアナログは、他の癌関連タンパク質及びポリペプチドに結合又は相互作用してもよい。このようなタンパク質及びポリペプチドの例として、限定されるものではないが、癌遺伝子にコードされるポリペプチド、血管形成を誘導するポリペプチド、転移及び/又は侵食の過程に関わるタンパク質、並びにアポトーシス及び細胞周期を調節するプロテアーゼが挙げられる。作用機序に関わらず、本発明のジベンゾジアゼピノンアナログは、インビトロ及びインビボにおいて抗癌活性が実証された。出願人は、かかる発見に基づいて腫瘍の治療方法を開発した。
【0124】
本明細書中で使用されているように、「新生物(neoplasm)」、「腫瘍疾患(neoplastic disorder)」、「新組織形成(neoplasia)」、「癌」、「腫瘍」及び「増殖性疾患」という用語は、自律的に増殖できる細胞、すなわち、急速に増殖する細胞成長を特徴とする異常状態を指す。このような急速に増殖する細胞成長は、はっきりと識別できる塊を一般的に形成し、構造的な組織化や正常細胞との機能的連携が、一部又は完全に失われている。前記用語は、固形腫瘍(例、肉腫又は癌腫)に加えて造血器腫瘍(例、リンパ腫瘍、又は白血病)も包含し、組織病理学上の侵襲性の種類又は段階に関係なく、全ての種類の前癌及び癌成長、又は発癌過程、転移組織、若しくは悪性形質転換した細胞、組織又は器官を含む。造血器腫瘍は、造血機構(血球形成に関する機構)及び免疫系に影響する悪性腫瘍であり、脊髄、リンパ系若しくは赤血球系統、及び(リンパ球に関係する)リンパ腫から生じる(血中及び骨髄中の白血球及びその前駆体に関係する)白血病を含む。固形腫瘍としては、例えば筋肉、軟骨、血管、繊維組織、脂肪、又は骨などの結合組織から生じる悪性腫瘍である肉腫がある。また、固形腫瘍の例としてさらに、上皮構造(外部の上皮(例えば皮膚、消化管上皮、肺上皮、並びに頚部上皮)、及びさまざまな腺(例えば乳腺、膵臓腺、甲状腺)に並んでいる内部上皮を含む)から発生する悪性新生物である癌腫がある。本発明の方法による治療に特に影響を受けやすい新生物の例として、白血病、肝細胞癌、肉腫、血管内皮癌、乳癌、中枢神経系癌(例えば星状細胞腫、神経膠肉腫、神経芽細胞肉腫、乏突起膠腫、及びグリア芽腫)、前立腺癌、肺並びに気管支癌、喉頭癌、食道癌、結腸癌、結腸直腸癌、消化管癌、メラノーマ、卵巣並びに子宮内膜癌、腎臓並びに膀胱癌、肝臓癌、内分泌癌(例えば甲状腺)、及び膵臓癌がある。
【0125】
ジベンゾジアゼピノンアナログは、癌細胞又は癌組織に接触又は導入される。一般的に、本発明の化合物をインビボで送達するための本発明の方法は、当該技術分野で認識されている治療薬剤を送達するためのプロトコールを利用し、実質的な変更は、前記プロトコールの治療薬剤を本発明のジベンゾジアゼピノンアナログに替えることだけである。ジベンゾジアゼピノンが投与される経路は、製剤、担体又は媒体もだが、新生物の種類及び場所に依存する。多種多様な投与経路が使用可能である。ジベンゾジアゼピノンアナログは、静脈内又は腹腔内に、注入又は注射によって投与してもよい。例えば、接近可能な固形腫瘍に対しては、本発明の化合物を腫瘍内に直接注射してもよい。造血器腫瘍に対しては、化合物を静脈内又は血管内投与してもよい。転移や脳腫瘍のように体内で容易に接近できない新生物に対しては、本化合物は、哺乳類の体を系統的に輸送されて新生物及び離れた転移に到達するように投与してよい。その例としては髄腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、又は経口投与がある。又、本化合物を腫瘍に直接投与してもよい。本化合物の投与は又、皮下、髄腔内、腹腔内、局所(例えばメラノーマに対して)、経直腸(例えば結腸直腸腫瘍に対して)、経膣(例えば子宮頚又は膣腫瘍に対して)、鼻腔内又は吸入スプレー(例えば肺腫瘍に対して)による投与であってよい。
【0126】
ジベンゾジアゼピノンアナログは、腫瘍細胞の増殖若しくは成長の抑制又は腫瘍疾患の治療に十分な量で投与される。「抑制」という用語は、癌細胞の抑制、死滅、停滞、又は破壊を指す。本方法による哺乳類癌細胞の成長抑制は複数の方法で観察できる。インビトロで成長させた癌細胞を本化合物で処置して、同じ細胞を本化合物の非存在下で培養したものと比較して、その成長又は死滅をモニターすることができる。成長停止又は成長速度(すなわち、倍加時間)の低下(例えば100mMで50%以上)は、癌細胞の抑制を示している(Anticancer Drug Development Guide: preclinicalscreening, clinical trials and approval; B.A. Teicherand P.A. Andrews, ed., 2004, Humana Press, Totowa, NJ参照)。また、本化合物を関心のある癌のモデル動物に投与することで、癌細胞抑制をモニターすることができる。実験的非ヒト動物癌モデルの例は当該分野で知られており、以下及び本明細書中の実施例に記載されている。本化合物で処置していない対照動物と比べて、本化合物で処置した動物で腫瘍の成長が停止(すなわち、それ以上サイズが大きくならないこと)又は腫瘍サイズが縮小(すなわち、腫瘍体積で最低58%分)していれば、それは有意な腫瘍成長抑制を示している(Anticancer Drug Development Guide: preclinicalscreening, clinical trials and approval; B.A. Teicherand P.A. Andrews, ed., 2004, Humana Press, Totowa, NJ参照)。
【0127】
「治療(treatment)」という用語は、哺乳類にジベンゾジアゼピノンアナログを適用又は投与すること、若しくは腫瘍疾患、腫瘍疾患の症状、又は腫瘍疾患になりやすい性質をもつ哺乳類から単離された組織又は細胞株に、疾患、疾患の症状、又は疾患になりやすい性質を治療、治癒、軽減、緩和、改変、改良、改善、調節する目的で、ジベンゾジアゼピノンアナログを適用又は投与することを指す。「治療している(treating)」という用語は、哺乳類の新生物細胞を予防、縮小、又は消失するのに十分な量(「治療有効量」)のジベンゾジアゼピノンアナログを哺乳類に投与すること、と定義する。治療に有効な投与の量及び時期は個別の基準で決定され、またそれは、少なくとも一部において、適用対象の年齢、体重、性別、食習慣、及び一般的な健康状態の考慮、疾患状態の属性並びに重篤性、及び以前の治療並びにその他のもっている疾患に基づいていてよい。また、その他のファクターとして、投与の経路並びに頻度、投与された化合物の活性、代謝安定性、化合物の作用期間並びに排出期間、薬の組合せ、化合物に対する適用対象の耐性、及び腫瘍又は増殖疾患の種類が挙げられる。1つの実施形態において、本化合物の治療有効量は、哺乳類の体重に対して約0.01〜約750mg/kgの範囲にある。別の実施形態において、治療有効量は、1日あたり、体重に対して約0.01〜約300mg/kgの範囲にある。さらに別の実施形態において、治療有効量は1日あたり、体重に対して10〜約50mg/kgの範囲にある。上記実施例の治療有効投与量はまた、ヒト患者の場合には、ミリグラム/平方メートル(mg/m)で表されてもよい。異なる哺乳類種への換算係数は、Freireich et al, Quantitative comparison of toxicity of anticancer agents in mouse, rat, dog, monkey and man, Cancer Chemoth. Report, 1966, 50(4): 219-244に見出され、その全体を本願に引用して援用する。(例えば小児患者に対して)特別な必要があるときには、上記の治療有効量は本明細書中で述べられている範囲から外れてもよい。そのような、上記範囲を上回る又は下回る投与量は本発明の範囲内である。
【0128】
ヒトの腫瘍治療の効果をモニターするには、治療開始の前後で腫瘍サイズ及び/又は腫瘍形態を計測し、もし腫瘍サイズがさらなる成長を停止したか、若しくは、例えば少なくとも10%以上(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%、つまり腫瘍の消滅であれ)腫瘍サイズが縮小していれば、治療は有効であるとみなされる。生存、発症進行、部分反応、及び客観的反応割合の延長は、治験薬の臨床活性の代替尺度となる。腫瘍の縮小は、治療特異的な反応とみなされる。このシステムには、正確な測定が可能な内臓塊を患者がもっている必要があるという制限がある。インビボにおける腫瘍サイズの決定方法は、腫瘍の種類によって異なり、組織学的方法及びフローサイトメトリーに加えて、例えばメディカルイメージング又は腫瘍学の分野(MRI、CAT、PETなど)で良く知られているさまざまなイメージング技術が含まれる。ある種類の癌では、反応の評価に血清腫瘍マーカーの評価が利用されている(例、前立腺癌に対して前立腺特異的抗原(PSA)、結腸癌に対して癌胎児性抗原(CEA))。癌の成長をモニターするためのその他の方法として、血中細胞計数(例、白血病)、又は骨痛の緩和(例、前立腺癌)がある。
【0129】
ジベンゾジアゼピノン化合物は1日1回投与してもよいし、1日を通して適切な間隔で2回、3回、4回、又はそれ以上の回数に分割投与してもよい。その場合、それに対応して、各分割投与に含有されるジベンゾジアゼピノン化合物を、1日の総投与量を達成するように、少なくする必要がある。投与量単位は、数日間に渡って送達されるように混合されてもよく、例えば公知の徐放性製剤を用いて数日間に渡ってジベンゾジアゼピノン化合物を持続放出することができる。徐放性製剤は当該分野でよく知られている。かかる実施例では、対応して、投与量単位は、1日投与量の複数倍を含有する。有効投与量は、一度に投与されてもよい(例、ボーラス注入法)し、例えば30分〜約24時間かけてゆっくり注射若しくは注入によって投与してもよい。本化合物は、治療薬として、30日間まで投与してもよい。さらに、治療有効量での化合物で対象の処置には、一度の処置、又は一連の処置(例、4週間の処置を2ヶ月おきに3回)が含まれる。本発明に包含されるジベンゾジアゼピノン化合物の有効投与量、毒性、及びインビボでの半減期は、公知の方法を用いるか若しくは適切なモデル動物を利用したインビボでの試験に基づいて評価することができる。
【0130】
ジベンゾジアゼピノン化合物は、放射線治療のような公知の抗癌治療又はその他の公知の抗癌化合物や化学療法薬と組み合わせて又はそれに加えて投与してもよい。そのような薬剤の例として、限定するものではないが、5−フルロウラシル、マイトマイシンC、メトトレキサート、ヒドロキシウレア、シクロフォスファミド、ダカルバジン、ミトキサントロン、アントラサイクリン(エピルビシン及びドキソルビシン)、エトポシド、プレグナソーム(pregnasome)、カルボプラチン及びシスプラチンのような白金化合物、パクリタキセルTM(PaclitaxelTM)及びドセタキセルTM(DocetaxelTM)などのタキサン類;タモキシフェン及び抗エストロゲン剤のなどのホルモン療法;ハーセプチン及びイレッサなどの受容体抗体;アロマターゼ阻害剤、黄体ホルモン薬及びLHRHアナログ;IL12及びインターフェロンのような生物反応修飾物質;シクロスプリンアナログPSC833などの多剤克服剤が挙げられる。
【0131】
ジベンゾジアゼピノン化合物の毒性及び治療効果は、細胞培養又は実験動物における標準的薬学的手法によって決定できる。治療効果は、上述したモデル動物及び本明細書中の実施例によって決定される。毒性試験によって、実験された動物の10%が致死する、致死投与量(LD10)が決定される。動物は最大耐量(MTD)(致死又は20%を超える体重の減少をもたらさない、最大の投与量)で処置される。化合物の治療指数を決定するための腫瘍モデルにおいて、有効投与量(ED)はMTDに関係する。1.0に近い治療指数(MTD/ED)がいくつかの化学療法薬に許容されることが知られており、標準的な化学治療薬に好ましい治療指数は1.25以上である。
【0132】
細胞培養試験及び動物実験から得られたデータは、ヒトに使用するための投与量の範囲を決定するのに使用することができる。本発明の化合物の投与量は一般的に血中濃度の範囲内となり、MTDを含む。投与量はこの範囲内で、選んだ投与剤形及び利用される投与経路によって変わり得る。本発明の方法で使用されるどの化合物の治療有効量も、初めに細胞培養試験によって評価することができる。モデル動物で化合物の循環血漿濃度の範囲を得るために1回分の投与量が処方されてよい。そのような情報は、ヒトにおける有効な投与量をより正確に決定するのに利用できる。血漿中濃度は、例えばHPLCによって計測できる。
【0133】
化合物の抗腫瘍効果を決定するためのモデル動物は、一般的にマウスである。マウスの後脇腹(hind flank)に同じ種(同種モデル)由来のマウス腫瘍細胞を、皮下接種するか、若しくはヒト腫瘍細胞を重症複合免疫不全症(SCID)マウス又はその他の免疫不全マウス(ヌードマウス)(異種移植モデル)の後脇腹に皮下接種する。
【0134】
マウス遺伝学の進歩は、癌を含むさまざまなヒト疾患を研究するための多くのモデルマウスを産み出してきた。国立癌研究所が出資するMMHCC(Mouse models of Human Cancer Consortium)のウェブページ(emice.nci.nih.gov)では、NCI−MMHCCマウスレポジトリーに加えて、疾患部位特異的な公知の癌モデルマウスの抄録を提供しており、検索可能なCancer Models Database(cancermodels.nci.nih.gov)へのリンクがある。また、マウスレポジトリーは、The Jackson Laboratory, Charles River Laboratories, Taconic, Harlan, Mutant Mouse Regional Resource Center (MMRRC) National Network及びEuropean Mouse Mutant Archiveにもある。このようなモデルは治療有効量を決定するためや、ジベンゾジアゼピノン化合物のインビボ実験に使用できる。
【0135】
本発明の化合物に加えて、該化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、又はプロドラッグもまた、上述の疾患を治療又は予防するために組成物中に用いられてもよい。
【実施例】
【0136】
他に記載がない限り、全ての試薬はSigma Chemical Co.(St. Louis, MO)Aldrich社から購入した。
【0137】
全てのNMRスペクトルは,Varian 500TM Spectrometer(HNMR、500MHz;13C NMR、125MHz)を用いて重水素化溶媒中で測定した。UV及びマススペクトルの計測には、フォトダイオードアレイ(PDA、210−400nm)検出器を使用したWaters 2690TM HPLCをWaters MicromassTMZQTMマス検出器に連結して用いた。
【0138】
他に示されていない限り、本明細書及び請求項中で使用されている成分量、分子量、反応条件、モル当量(eq)、結合並びに/又は阻害パーセンテージ、GI50、及びIC50などの属性を表す数字は全て、「約」という用語によってあらゆる場合において変更可能であると解釈される。したがって、別に示されていない限り、本明細書及び添付の請求項で説明されている数値パラメータは概数である。最低でも、請求項範囲の均等論の適用を制限するものではないが、各数値パラメータは最低でも、有効桁数を考慮にいれて、通常の四捨五入の方法を適用して解釈されるべきである。本発明の広い範囲を説明している数値範囲並びにパラメータは概数であるが、実施例、表並びに図で示されている数値は可能な限り正確に報告されている。いずれの数値にも本質的に、実験、試験測定法、及び統計分析などのばらつきによって生じる誤差が含まれることがある。
【0139】
以下のセクションで、実施例は、本発明の代表的化合物の化学合成を詳細に記載する。これらの手法は例であって、実施例で示された化学反応及び条件によって、本発明が限定されて解釈されるべきではない。これらの反応で得られる収率を最適化するための試みはされていないが、反応時間、温度、溶媒及び/又は試薬を変更すれば収率が増すことがあることは当業者には明らかである。
【0140】
加えて、材料、方法、及び例えばインビボ並びにインビトロでの効果、生物学的利用能、毒性、及び薬理学的特性を含む実施例、はただの例であり、限定する意図はない。本明細書に記載されている方法及び材料の類似物又は均等物は、本発明の実施又は試験に使用可能であるが、好ましい方法及び材料は以下に記載されているものである。本明細書中で言及する全ての印刷物、特許出願、特許、及びその他の参照文献は、その全体を本願に引用して援用する。不一致があった場合、定義を含め、本明細書に従う。
【0141】
実施例1:発酵による化合物1の生産
発酵手順例
a)発酵方法
Micromonospora sp.(登録アクセッション番号IDAC 070303−01)を、ISP2寒天(Difco Laboratories社製、Detroit, MI)を用いた寒天培地上に静置した。寒天培地の表面に成長したMicromonospora sp.を、グルコース10g、ポテトデキストリンタイプIV(Sigma社製)20g、酵母エキス5g、NZAmine−A5g、CaCO1gを水道水で1Lにメスアップした無菌培地25ml(pH7.0)の入った125mlフラスコに移すことで、生産段階での接種材料を準備した。その培養液を、250rpmにセットしたロータリーシェーカー上で、約28℃、およそ70〜72時間培養を行った。培養後、培養液10mlを、ポテトデキストリンタイプIV(Sigma社製)20g/L、グリセロール30g/L、バクトペプトン2.5g/L、酵母エキス8.34g/L、CaCO3g/Lを含むpH7.0の無菌生産培地600mLの入った2Lのバッフル付きフラスコに移した。発酵培地は、250rpmにセットしたロータリーシェーカー内で、約28℃、5日間培養することで調製した。
【0142】
b)代替方法:
2004年1月21日付けで提出されているカナダ特許出願2,466,340に記載の改良された方法を用いて、10Lを一度に14.5Lの発酵槽(BioFlo 110TM Fermentor、 New Brunswick Scientific社製、Edison, NJ, USA)で発酵させることができた。
【0143】
Micromonospora sp.(登録アクセッション番号IDAC 070303−01)を、ISP2寒天(Difco Laboratories社製、Detroit, MI)を用いた寒天培地上に静置した。寒天培地の表面に成長したMicromonospora sp.を、グルコース10g、ポテトデキストリン20g、酵母エキス5g、NZAmine−A5g、CaCO1gを水道水で1Lにメスアップした無菌培地500ml(pH7.0)の入った2Lフラスコに移すことで、生産段階での接種材料の準備した。その培養液を、250rpmにセットしたロータリーシェーカー上で約28℃でおよそ70時間培養を行った。培養後、培養液300mLを、無菌生産培地10Lの入った14.5Lの発酵槽に移した。生産培地はリッター当たり、ポテトデキストリン20g、グリセロール30g、バクトペプトン2.5g、酵母エキス8.34g、シリコーン消泡剤オイル(Chem Service社製)0.3mL、Proflo oilTM(Traders protein社製)0.05mL、CaCO3gを含有し、これらは蒸留水で1Lにし、pH7.0に調整した。培養液は、循環ループ(cascade loop)中で25%に調節された溶存酸素(dO)と共に、320〜600RPMの間で振盪し、且つ0.5v/v/mに固定しエアレーションを行い、28℃で培養した。
【0144】
上記の培地に加えて、発酵による化合物1の生産に好ましいその他の培地を表1に示した(QB、MA、KH、RM、JA、FA、CL)。Micromonospora sp.046−ECO11又は[S01]046のいずれもこれらの方法例に使用されてよい。
【0145】
実施例2:化合物1の単離
単離方法の例
a)単離方法1:
上記の実施例1に記載の通り調製された発酵培地500mLに酢酸エチル500mLを加えた。オービタルシェーカーで200rpm、30分間、混合液を攪拌し、乳濁液にした。遠心及びデカントにより、相を分離した。有機相に4〜5gの無水MgSOを添加し、濾過後、減圧下で溶媒を除去した。
【0146】
2Lの発酵液からの酢酸エチル抽出物を、300mLの水中でHP−20樹脂(100mL;Mitsubishi Kasei Corp.社製、日本、東京)と混合した。酢酸エチルを減圧除去し、樹脂をブフナー漏斗で濾過して濾液を捨てた。その後、吸着させたHP−20樹脂を、50%アセトニトリル水溶液125mLで2回、75%アセトニトリル水溶液125mLで2回、及びアセトニトリル125mLで2回、続けて洗った。
【0147】
化合物1を含む画分を蒸発乾燥し、100gをクロロホルム、シクロヘキサン、メタノール、水を体積比5:2:10:5で調製した混合液の上相5mL中で処理した。該試料を、200mLのカートリッジの取り付け及び2相系の上相の充填がされている高速向流クロマトグラフィー(HSCC)システム(KromatonTechnologies社製、Angers, France)を用いた遠心分配クロマトグラフィーに供した。HSCCは下相を移動性として行い、化合物1はおよそ1.5カラム体積で溶出された。画分を集め、市販のKieselgel 60F254上で各画分のTLCを行い、化合物1を検出した。化合物は、紫外線下で乾燥プレートを観察するか、バニリン(0.75%)及び濃硫酸(1.5%、v/v)のエタノールを含むスプレーをプレートに噴霧後にプレートを加熱することで可視化できた。画分には強く色が着いていたが、実質的に純粋な化合物1を含んでいた。以下に示すように、HPLCによるクロマトグラフィーで鈍黄色の試料が得られた。
【0148】
試料6mgをアセトニトリルに溶解し、分取HPLCカラム(XterraTM ODS(10μm)、19×150mm、Waters Co.社製、Milford, MA)に注入した。流速は9mL/minとし、300nmにおけるUVピークを検出した。カラムは、表2で示したグラジエントにしたがって、アセトニトリル/緩衝液(5mM NHHCO)で溶出した。
【0149】
【表2】

【0150】
化合物1を含む画分を混合、濃縮、及び凍結乾燥し、3.8mgの化合物が得られた。
【0151】
b)単離方法2:
化合物1はまた、以下の代替プロトコールでも単離された。培養期間の終わりに、実施例1のバッフル付きフラスコの発酵培地を遠心し、菌糸を含む沈殿から上清をデカントした。該菌糸沈殿に100%MeOH100mLを加え、試料を10分間攪拌後、15分間遠心した。メタノールの上清をデカントし、保存した。菌糸沈殿にアセトンを100mL加え、10分間攪拌後、15分間遠心した。アセトン上清をデカントで前記メタノール上清と混ぜた。最後に、菌糸沈殿に20%MeOH/HOを加え、10分間攪拌後、15分間遠心した。上清を、アセトン及びメタノール上清と混ぜた。
【0152】
混合した上清を、400mLのHP−20樹脂を含有する水1000mLに加え、有機物を減圧除去した。それによって生じたスラリーをブフナー漏斗で濾過し、濾液を捨てた。HP−20樹脂を、500mLの50%MeOH/HOで2回、500mLの75%MeOH/HOで2回、500mLのMeOHで2回続けて洗った。
【0153】
各洗液を別々に集めて、上述したようにTLCで分析した。化合物1を含む画分は、蒸発させてほぼ乾燥させてから、凍結乾燥した。凍結物をメタノールに溶かして、分取HPLCカラム(XterraTM ODS(10μm)、19×150mm、Waters Co.社製、Milford,MA)に注入した。流速を9mL/min、ピークの検出を300nmで行った。
【0154】
カラムは、表3で示したグラジエントにしたがって、アセトニトリル/緩衝液(5mM NHHCO)で溶出した。
【0155】
【表3】

【0156】
化合物1を含む画分を混合、濃縮、及び凍結乾燥し、約33.7mgの化合物が得られた。
【0157】
c)単離方法3:
実施例1の全培地10リットルを等容量の酢酸エチルで2回抽出し、抽出物を合わせてから濃縮乾燥させた。乾燥抽出物の重量を測り、1gにつき、MeOH−HO(2:1 v/v)100mL及びヘキサン100mLを加えた。この混合液を穏やかによく回転させ溶解させた。2つの相を分離し、水相を100mLのヘキサンで洗浄した。2つのヘキサン相を合わせ、その溶液をメタノール:水(2:1、v/v)100mLで洗浄した。2つのメタノール:水相を合わせ、EtOAc200mLと水400mLで処理した。相を分離し、EtOAc200mLで水相をさらに2回洗浄した。EtOAc相を合わせ、濃縮した。得られた残留物(220mg)は、上述したHSCC又はHPLCによる最終精製に適していた。本抽出法では、(a)又は(b)で用いた抽出法の10倍の精製物が得られた。
【0158】
実施例3:化合物1の構造の解明
【0159】
【化12】

【0160】
化合物1の主要同位体の計算上の分子量(462.25)及び式(C2834)は、マススペクトル解析によって確認された。負イオン化によって461.2の(M−H)分子イオン、正イオン化によって463.3の(M−H)分子イオンが生じた。UVMAXは230nmであり、290nmに肩をもっていた。
【0161】
プロトン及び炭素NMRスペクトル解析を表4に示す。NMRのデータは、プロトン、炭素、及び多次元パルスシークエンスgDQCOSY、gHSQC、gHMBC、並びにNOESYを含有するMeOH−d4に溶解して収集した。化合物1の二次元スペクトルにおける多くのクロスピークが構造決定の鍵である。例えば、ファルネシル鎖は、4.52ppmにおける該鎖の末端メチレンのプロトンシグナルとgHMBCの実験における170ppmにおけるアミドカルボニル基に由来する炭素の間の強いクロスピークによって、アミド窒素上に位置され、この結論は、NOESYスペクトルでの、4.52ppmにおける同じメチレンシグナルと6.25ppmにおける4置換ベンゼノイド環の2つのプロトンのうちの1つに由来する芳香族プロトンシグナルの間のクロスピークによって確認された。プロトン及び炭素シグナルの帰属を表4に示す。
【0162】
【表4】

【0163】
マス、UV、及びNMRスペクトル分析法のデータに基づいて、該化合物の構造が上記の化合物1の構造であると決定された。
【0164】
実施例4:ジアルキル硫酸反応
a) 化合物2及び18の合成及び構造解析
【0165】
【化13】

【0166】
化合物2、すなわち10−ファルネシル−4,6,8−トリヒドロキシ−5−メチル−5,10−ジヒドロージベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−オン及び
【0167】
【化14】

【0168】
化合物18、すなわち10−(7−メトキシ−3,7,11−トリメチルドデカ−2,10−ジエニル)−4,6,8−トリヒドロキシ−5−メチル−5,10−ジヒドロ−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−オンの調製及び同定は以下のようにされた。
【0169】
調製:
化合物1(500.0mg)をメタノール(MeOH、20mL)に溶かし、硫酸ジメチル(0.5mL)及びNaHCO(250mg)と共に、室温で48hrs、攪拌した。反応混合液に水を加えて200mLに希釈し、酢酸エチル(EtOAc、300mL×3)で抽出した。有機相を分離、減圧乾燥し、MeOHに再び溶かして、0.45μm13mmのAcrodiscTM GHPシリンジフィルター濾過した。濾液をNova-PackTM HR C18 6μm 25×200mmカラムにマルチプルインジェクションし(20mL/min、HO/CHCNグラジエント80:20〜30:70、0〜8分;30:70〜0:100、8〜18分)、14.5及び16.8分に、それぞれ化合物18(12.1g)及び化合物2(308.5mg)が溶出され、単離された。
【0170】
化合物2及び18の構造解析:
化合物2の主要同位体の計算上の分子量(476.27)及び式(C2936)は、マススペクトル解析によって確認された。負イオン化によって475.6の(M−H)分子イオン、正イオン化によって499.4の(M+Na)分子イオンが生じた。プロトン及び炭素NMRスペクトル解析を表5に示す。シグナルは、化合物1の構造知見に基づいて容易に帰属された。化合物18の主要同位体の計算上の分子量(508.29)及び式(C3040)は、マススペクトル解析によって確認された。負イオン化によって507.3の(M−H)分子イオン、正イオン化によって509.3の(M+H)分子イオンが生じた。メタノールを加えたことによる、特徴的なファルネシル鎖上のN−メチル(シグナル5)、メトキシ(シグナル7’−OMe)、及びメチレン基(6’)は容易に表5に示すように帰属された。
【0171】
【表5】

【0172】
N/A:非適用、分子中に基が存在しない
a.化合物2中ではCH、化合物18中ではCH
b.4’、5’、8’及び9’のシグナルは非常に近接している;帰属は化合物1に基づいた
【0173】
b) 化合物3、21及び22の合成及び構造解析
【0174】
【化15】

【0175】
化合物3:10−ファルネシル−4,6,8−トリヒドロキシ−5−エチル−5,10−ジヒドロ−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−オン;
【0176】
【化16】

【0177】
化合物21:10−(11−メトキシ−3,7,11−トリメチル−2,6−ドデカジエニル)−4,6,8−トリヒドロキシ−5−エチル−5,10−ジヒドロ−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−オン;
【0178】
【化17】

【0179】
化合物22:10−(7,11−ジメトキシ−3,7,11−トリメチル−2−ドデセニル)−4,6,8−トリヒドロキシ−5−エチル−5,10−ジヒドロ−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−オン
【0180】
調製:
化合物1(85,3mg)を、硫酸ジエチル(2.0mL)及びNaHCO(99.9mg)を含むMeOH(2mL)の混合液中で、室温、72時間攪拌した。できた混合液を0.45μm13mmのAcrodiskTM GHPシリンジフィルターで濾過した。溶液を分取HPLCにより精製し(NovaPackTM HR C−18 25×200mmカラムにマルチプルインジェクションを用い(20mL/min、HO/CHCNグラジエント80:20〜30:70、0〜8分;30:70〜0:100、8〜18分)、4つの主要なピークを生じた:化合物3(20.0mg及びいくらかの不純物、RT:16.6min)、化合物21(17.54mg、RT:14.3min)、及び化合物22(7.82mg、RT:12.6min)が得られた。化合物21及び22の非エチル化アナログを含む画分も、それぞれ5.65mg(RT:11.6min)及び2.20mg(RT:10.3min)単離された。化合物3を含む画分をさらに同じカラム(20mL/min、HO/CHCNグラジエント80:20〜30:70、0〜8min;30:70〜0:100、8〜18min、曲線7)を用いたHPLCで精製し、実質的に純粋な化合物3(13.85mg、RT:17.9min)を得た。
【0181】
化合物3,21及び22の構造解析:
化合物3の主要同位体の計算上の分子量(490.28)及び式(C3038)は、マススペクトル解析によって確認された。負イオン化によって489.3の(M−H)分子イオン、正イオン化によって491.3の(M+H)分子イオンが生じた。プロトンNMRシグナルは、化合物1及び2の構造の知見に基づいて容易に帰属された。特徴的なN−エチル基(5−N−Et)は容易に表6に示すように帰属された。
【0182】
化合物21の主要同位体の計算上の分子量(522.31)及び式(C3142)は、マススペクトル解析によって確認された。負イオン化によって521.3の(M−H)分子イオン、正イオン化によって523.5の(M+H)分子イオンの他に491.3の(M+H−HOCH分子イオンを有する断片が生じた。特徴的なN−エチル基(5−N−Et)、及びメタノールを加えたことによるファルネシル鎖上のメトキシ基(11’−OMe)並びにメチレン(10’)基は容易に表6に示すように帰属された。
【0183】
化合物22の主要同位体の計算上の分子量(554.34)及び式(C3246)は、マススペクトル解析によって確認された。負イオン化によって553.4の(M−H)分子イオン、正イオン化によって555.4の(M+H)分子イオンの他にそれぞれ523.5並びに491.3の(M+H−HOCH並びに(M+H−HOCH−HOCH分子イオンを有する断片が生じた。特徴的なN−エチル基(5−N−Et)、及びメタノール2分子を加えたことによるファルネシル鎖上のメトキシ(7’−OMe及び11’−OMe)基は容易に表6に示すように帰属された。メチレン基(5’、6’、8’、9’、及び10’)は全て類似した化学シフトを示し、これは飽和アルキル基と一致する。
【0184】
【表6】

【0185】
N/A:非適用、分子中に基が存在しない
**1.22〜1.49ppmのシグナル、10個のプロトン
a.化合物3及び21中ではCH、化合物22中ではCH
b.化合物3中ではCH、化合物21及び22中ではCH
【0186】
c) 化合物4の合成及び構造解析
【0187】
【化18】

【0188】
化合物4、すなわち10−ファルネシル−4,6,8−トリヒドロキシ−5−n−プロピル−5−10−ジヒドロ−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−オンの調製及び同定は以下の通り行った。
【0189】
調製:
化合物1(46.7mg)を、ジプロピル硫酸(0.5mL)及びNaHCO(46.3mg)を含むMeOH(3mL)の混合液中で、72hrs室温で攪拌した。できた混合液を0.45μm 13mmのAcrodiskTM GHPシリンジフィルターで濾過した。溶液を分取HPLC(NovaPackTM HR C−18 25×200mmカラムにマルチプルインジェクションを用い20mL/min、HO/CHCNグラジエント80:20〜30:70、0〜8min;30:70〜0:100、8〜18min)で精製し、実質的に純粋な化合物4を得た(18.0mg,RT:17.3min)。
【0190】
化合物4の構造解析:
化合物4の主要同位体の計算上の分子量(504.30)及び式(C3140)は、マススペクトル解析によって確認され、負イオン化によって503.4の(M−H)分子イオン、正イオン化によって505.5の(M+H)分子イオンが生じた。プロトンNMRシグナルは、化合物1及び2の構造の知見に基づいて容易に帰属された。特徴的なN−プロピル基(5−N−Pr(C1〜C3))は容易に以下の表7に示すように帰属された。
【0191】
d)化合物13の合成及び解析
【0192】
【化19】

【0193】
化合物13:10−ファルネシル−4,6,8−トリヒドロキシ−5−(トリジュウテリオメチル)−5−10−ジヒドロ−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−オン
【0194】
調製:
化合物(121.3mg)を、ジメチル硫酸−d(150μL、CDN isotpes Inc.社製)及びNaHCO(58.1mg)を含むMeOH(3.0mL)に溶かし、反応液を室温で一晩攪拌した。その反応混合液を濾過し、濾液をWaters社製のHPLCで精製し(NovaPackTM HR C−18 25×200mmカラムにマルチプルインジェクションし、20mL/min、HO/CHCNグラジエント70:30〜20:80、0〜4min;20:80〜0:100、4〜9min、100%CHCN、9〜12min)、化合物13を得た(82.7mg、RT:9.4min)。
【0195】
構造解析:
化合物13の主要同位体の計算上の分子量(479.29)及び式(C2933)は、マススペクトル解析によって確認され、負イオン化によって478.5の(M−H)分子イオン、正イオン化によって480.6の(M+H)分子イオンが生じた。さらに、以下の表7に示すように、プロトンNMRによって構造を確認した。
【0196】
【表7】

【0197】
N/A:非適用、分子中に基が存在しない
a.化合物4ではCH、化合物13ではCD
【0198】
実施例5:ハロゲン化アルキル反応
a)化合物5の合成及び構造解析
【0199】
【化20】

【0200】
化合物5、すなわち10−ファルネシル−4,6,8−トリヒドロキシ−5−n−ブチル−5−10−ジヒドロ−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−オンを以下の通り調製及び同定した。
【0201】
調製:
化合物1(43.5mg)を、ピリジン(50μL)を含む1−ブロモブタン(2.0mL)中で、80℃、一晩攪拌した。この反応混合液をMeOH(1.0mL)で希釈し、濾過後、上述したように(実施例4(c))Waters HPLCにかけ、半精製された化合物5を得た(RT:18.1min)。かかる半精製化合物を同じ条件(曲線7を除く)でさらに精製し、実質的に純粋な化合物5(10.5mg、RT:17.9min)を得た。
【0202】
構造解析:
化合物5の主要同位体の計算上の分子量(518.31)及び式(C3242)は、マススペクトル解析によって確認され、負イオン化によって517.4の(M−H)分子イオン、正イオン化によって519.5の(M+H)分子イオンが生じた。特徴的なN−n−ブチル基(5−N−アルキル(C1−C4))が容易に以下の表8に示すように帰属された。
【0203】
b)化合物7の合成及び構造解析
【0204】
【化21】

【0205】
化合物7、すなわち10−ファルネシル−4,6,8−トリヒドロキシ−5−n−ヘキシル−5−10−ジヒドロ−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−オンの調製及び同定は以下の通り行った。
【0206】
調製:
化合物1(39.2mg)を、ピリジン(50μL)を含む1−ブロモヘキサン(2.0mL)中で、80℃、一晩攪拌した。この反応混合液をMeOH(1.0mL)で希釈し、濾過後、Waters HPLCにかけ(NovaPackTM HR C−18 25×200mmカラムへのマルチプルインジェクション:20mL/min、HO/CHCNグラジエント80:20〜30:70、0〜8min;30:70〜0:100、8〜18min、均一濃度CHCN18〜24min)、実質的に純粋な化合物7(14.0mg、RT:20.1min)を得た。
【0207】
構造解析:
化合物7の主要同位体の計算上の分子量(546.35)及び式(C3446)は、マススペクトル解析によって確認され、負イオン化によって545.6の(M−H)分子イオン、正イオン化によって547.6の(M+H)分子イオンが生じた。プロトンNMRシグナルは化合物1及び2の構造の知見に基づいて容易に帰属された。特徴的なN−n−ヘキシル基(5−N−アルキル(C1−C6))が容易に下の表8に示すように帰属された。
【0208】
c)化合物2〜4、6、及び8〜12の合成
化合物2〜4、6、及び8〜12は、a)及びb)に記載の方法で、使用するアルキル化剤をそれぞれ以下のアルキル化剤に変えることで生産される:ヨードメタン、ブロモエタン、1−ブロモプロパン、1−ブロモペンタン、1−ブロモヘプタン、1−クロロオクタン、ヨウ化トリフオロメチル、ヘプタフルオロ−1−ヨードプロパン、及び2−ヨード−1,1,1−トリフルオロエタン。
【0209】
【表8】

【0210】
N/A:非適用、分子中に基が存在しない
a. 4’,5’,8’、及び9’のシグナルは非常に近接している;化合物1に基づいて帰属された。
b. 化合物5中ではCH、化合物7中ではCH
【0211】
実施例6:O―アシル化
化合物25(O−アセチル化)の合成及び構造解析
【0212】
【化22】

【0213】
化合物25:4,6,8−トリアセトキシ−10−ファルネシル−5−10−ジヒドロ−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−オンを以下の方法で調製及び同定した。
【0214】
調製:
化合物1(120.5mg)をピリジン(Aldrich社製)6滴を含む無水酢酸(720μL、29eq、Aldrich社製)と一晩攪拌した。この反応混合液をHPLC分離に供した。WatersTM RCM Nova-Pak HRTMC18、6μm、60A 25×200mmカラムへのマルチプルインジェクションによる精製によって(20mL/min、HO/CHCN80:30〜70:75、0〜8min;30:70〜0:100、8〜18min、100%CHCN、18〜20min)、保持時間18.5minに化合物25(91.2mg)を得た。保持時間16.2、17.6、18.0に、それぞれ4,8−ジアセトキシ(11.4mg)、4,6−ジアセトキシ(9.2mg)、及び6.8−ジアセトキシ(11.4mg)が単離された。
【0215】
構造解析:
化合物25の主要同位体の計算上の分子量(588.28)及び式(C3440)は、マススペクトル(MS)解析によって確認された。化合物25のMSにおいて、負イオン化では587.6の(M−H)分子イオンが、正イオン化では611.5の(M+Na)分子イオンが生じた。化合物25のプロトンNMRスペクトル解析を表9に示す。シグナルは化合物1のスペクトルとの比較に基づいて容易に帰属された。
【0216】
【表9】

【0217】
N/A:非適用、分子中に基が存在しない。
a.4’、5’、8’、及び9’のシグナルは非常に近接している;化合物1に基づいて帰属された。
【0218】
実施例7:ファルネシル側鎖修飾
a)化合物14の合成及び構造解析
【0219】
【化23】

【0220】
化合物14、すなわち10−(3,7,11−トリメチルドデシル)−4,6,8−トリヒドロキシ−5−メチル−5,10−ジヒドロ−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−オンを以下のように調製及び同定した。
【0221】
調製:
MeOH(2.0mL)に化合物2(23.7mg)を溶かした溶液を、水素ガス及び触媒としての酸化白金(PtO、10mg、触媒)存在下で一晩攪拌した。この反応混合液を濾過及び減圧濃縮することで21.6mgの化合物14が得られた。
【0222】
構造解析:
化合物14の計算上の分子量(482.31)及び式(C2942)は、マススペクトル解析によって確認され、負イオン化によって481.3の(M−H)分子イオン、正イオン化によって483.3の(M+H)分子イオンが生じた。ファルネシルオレフィンプロトンのNMRスペクトルは、約0.76〜1.86ppm付近の脂肪族プロトンシグナルとして現れ、積分値は3CH、7CHの17個のプロトンを示した。特徴的なN−メチル基(5−N−Me)が下の表10に示すように容易に帰属された。
【0223】
b)化合物15の合成及び構造解析
【0224】
【化24】

【0225】
化合物15、すなわち、10−(3,7,11−トリメチル−2−ドデセニル)−4,6,8−トリヒドロキシ−5−メチル−5−10−ジヒドロ−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−オンを以下のように調製及び同定した。
【0226】
調製:
MeOH(220mL)に化合物2(308.5mg)を溶かした溶液を、水素ガス及び触媒として酸化白金(PtO、10mg)存在下で一晩攪拌した。この反応混合液を濾過し、実施例4(c)記載の方法に従ってHPLCによる精製を行い、純粋な化合物15(82.3mg、RT:17.0min)が得られた。
【0227】
構造解析:
化合物15の計算上の分子量(480.30)及び式(C2940)は、マススペクトル解析によって確認され、負イオン化によって479.3の(M−H)分子イオン、正イオン化によって481.6の(M+H)分子イオンが生じた。NMRスペクトル解析は化合物2及び14の構造解析に基づいて行った。結果を表10に示す。NMRスペクトル上の6’〜7’位及び10’〜11’のファルネシルオレフィンプロトンシグナルは脂肪族のプロトンで置換されており、5’、8’、及び9’位の脂肪族プロトンと共に1.07〜1.51ppmの範囲に観察された。その積分値は12個の水素、2CH、5CHを示した。2’位(CH)のファルネシルオレフィンプロトンは、NMR上で5.41ppmの化学シフトを示した。4’位のメチレン基は2.03ppmに示された。特徴的な5−N−メチル基は2.93ppmの化学シフトに容易に帰属された。
【0228】
c)化合物23の合成及び構造解析
【0229】
【化25】

【0230】
化合物23:10−(3,7,11−トリメチルドデシル)−4,6,8−トリヒドロキシ−5,10−ジヒドロジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン―11―オンは以下の手法に従って調製及び同定した。
【0231】
調製:
51.1mgの化合物1をMeOH3.0mLに溶かした溶液を、水素ガス及び触媒として酸化白金(PtO、10mg、0.4eq)存在下で一晩攪拌した。反応混合液を濾過し、Phenomenex SynergiTM MAX RP 21.2×200mmカラムを用いた直接分取HPLCにより精製した(20mL/min、HO/CHCNグラジエント30:70〜30:70、0〜2分;30:70〜0:100、2〜20min)。保持時間12.8minの画分を合わせ、45.2mgの化合物23を得た。
【0232】
構造解析
主要同位体の計算上の分子量(468.30)及び式(C2840)を、マススペクトル解析によって確認した。化合物23のマススペクトルは、負イオン化によって467.4の(M−H)分子イオン、正イオン化によって469.4の(M+H)分子イオンを生じた。化合物23のプロトンNMRスペクトル解析を下の表10に示す。シグナルは化合物1の構造の知見に基づいて容易に帰属された。予測通り、2’位〜11’の脂肪族プロトンシグナルは全て、1〜1.75ppmの範囲に非常に近接した化学シフトをもっており(プロトン17個分)、12’及び1’’〜3’’位のメチルプロトンも非常に近接していた(0.8〜0.95ppmのシフト。プロトン12個分)。又、混合物中に3’位と7’位の2つのジアステレオマーが異なる比率で存在することから、これらのシグナルは複雑になっている。NMRは重メタノール中で行ったので、不安定なプロトンは観察されなかった。
【0233】
【表10】

【0234】
N/A:非適用、分子中に基が存在しない。
a.シグナルは非常に近接している。
b.異性体混合物
c.化合物14及び23では3CH、7CH(17H);化合物15では5.41ppmに2’(CH)、2.03ppmに4’(CH)、1.07〜1.51ppmに5’〜11’(12H)
d.化合物14及び23では4CH(12H);化合物15では1.75ppmに1’’(CH)、0.88〜0.80ppmに2’’、3’’、及び12’(9H)。
【0235】
実施例8:芳香族置換反応
a)化合物24の臭素化による合成及び構造解析
【0236】
【化26】

【0237】
化合物24:10−(ファルネシル)−7−ブロモ−4,6,8−トリヒドロキシ−5、10−ジヒドロジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−オンは以下の手法に従い調製及び同定した。
【0238】
調製:
化合物1(116.0mg)とN―ブロモスクシンイミド(NBS、45.5mg)をテトラヒドロフラン(THF3.0mL)に溶かし、室温で4日間攪拌した。反応混合液を濾過し、Waters HPLCでの精製に供し(Nova-PackTMHR C−18 25×200mmカラム:20mL/min、HO/CHCNグラジエント80:20〜30:70、0〜8min;30:70〜0:100、8〜18min)、化合物24(13.6mg)及びいくらかの不純物を得た。かかる半精製試料をさらにHPLCで精製し(SymmetryTM C−18 25×100mmカラム:20mL/min、HO/CHCN、グラジエント70:30〜30:70、0〜15min)、純粋な化合物24(9.5mg、RT13.0min)を得た。
【0239】
構造解析
化合物24の主要同位体の計算上の分子量(540.16及び542.16)及び式(C2833BrN)は、マススペクトル解析によって確認された。負イオン化では539.2及び541.1の(M−H)分子イオンが、正イオン化では541.3及び543.2の(M+H)分子イオンが生じた。各マススペクトルに2つの分子イオンが存在することから、ブロム基が分子中に存在することが確認された。下の表11に示す通り、プロトンNMRスペクトルで芳香族(7’位)シグナルが無いことから構造がさらに確認された。
【0240】
【表11】

【0241】
b)化合物26の合成
化合物2及びN−ブロモスクシンイミドをテトラヒドロフランに溶かし、室温で4日間攪拌した(条件は(a)記載の通り)。この反応混合液を濾過し、HPLC精製して純粋な化合物26を得た。
【0242】
c)化合物27の合成
化合物14及びN−ブロモスクシンイミドをテトラヒドロフランに溶かし、室温で4日間攪拌した(条件は(a)記載の通り)。この反応混合液を濾過し、HPLC精製して純粋な化合物27を得た。
【0243】
実施例9.本発明化合物のインビトロにおける特性分析
(a)4つの細胞株に対する式Iの化合物のインビトロ抗癌活性:
実施例に挙げた化合物のインビトロにおける細胞毒性活性、及び各化合物の溶血作用を表12に示す。化合物は4つの細胞株、HT−29(結腸直腸癌)、SF268(CNS)、MDA−MB−231(哺乳類腺癌)、及びPC−3(前立腺癌)で試験した。各試験に用いた手法を以下に示す。
【0244】
【表12】

【0245】
a.方法(a)で得られた結果。
b.方法(b)で得られた結果。
c.平均GI50値(単位はμM)。
【0246】
表12に示した全ての化合物は、化合物1よりも高い抗癌活性を示した.これらの化合物には化合物2〜5、7、13、14、15、18、及び21〜25が含まれる。化合物2〜5、7、13、14、15、18、21、及び22は化合物1のN−直鎖アルキル誘導体であり、式I及びその水素化若しくはヒドロキシル化ファルネシル誘導体に包含される。水素化ファルネシル派生化合物23、臭素化アリール派生化合物24、及びトリアセチル化化合物25も一般に、化合物1よりも活性が高かった。
【0247】
方法(a)
細胞増殖を50%抑制するのに必要な化合物1、23及び25の濃度(GI50)を求めることで、各化合物のインビトロにおける細胞毒性活性を決定した。GI50値では時間ゼロにおける細胞カウントの正確性が重要であり、7つの吸収測定[時間ゼロ、(Tz)コントロールの成長、(C)、及び5種類の薬剤濃度下における成長、(Ti)]を用いて、GI50は[(Ti−Tz)/(C−Tz)]×100=−50として計算される。これは、薬剤インキュベート期間中に、非処理のコントロール細胞に比べて純DNA量が50%減少する薬剤濃度である。
【0248】
化合物をDMSOに10mMで溶かした。媒体(vehicle)中の濃度が、30、10、3、1及び0.3μMである希釈液を、試験の直前に調製した。細胞株の成長特性によって、4000〜10000細胞を2つの96ウェルプレートに蒔いて(0日目)、16時間インキュベートした。次の日、2つのプレートのうちの1つにヨウ化プロピジウムを加え、蛍光を測定した(Tz)。試験物質及び媒体単独を、2番目のプレートに加え、細胞をさらに96時間インキュベートした。各化合物を、各濃度において、3つ試験した。ヨウ化プロピジウム添加後、蛍光によるシグナルを測定することで等量の細胞数を決定した(Cはコントロール)。GI50の結果は上記の式を用いて計算し、表12に示した。
【0249】
方法(b):
化合物1、2〜5、7、13、14、15、18、21、22、及び24のインビトロにおける細胞毒性活性(GI50)は、50%成長抑制を生じる濃度の薬剤としてヨウ化プロピジウム(PI)を用いて、以下の方法で決定した。
【0250】
各細胞株を適切な接種濃度(HT29:3,000;SF268:3,000;PC−3:3,000;及びMDA−MB−231:7,500細胞)で、各細胞株のデータシートに従って、2つの96ウェルプレートに同じように播種した(列A〜G、各ウェルに培地75μL)。列Hは培地のみで満たした(150μL、ネガティブコントロール培地)。プレートを適切な温度及びCO濃度で24hrsインキュベートした。
【0251】
試験化合物は、適切な培地中に15×ストック溶液として、450、45、0.45、0.045、及び0.0045μMで調製した(実験当日に調製した)。それぞれを適切な実験培地中に7.5倍希釈し、6つの2×濃度溶液(60、6、0.6、0.06、0.006、及び0.0006μM)を1組作製した。各濃度75μLずつを、2つ目のプレートの対応するウェル(列A〜F)に加えた。列Gは培地/0.6%DMSO(ネガティブコントロール細胞)75μLのみで満たした。2つ目のプレートを適切な温度、CO2の濃度で96hrsインキュベートした。
【0252】
1つ目のプレート:PI(30μL、50μg/mL)を、1つ目のプレートの各ウェルに、培養培地を除去せずに加えた。プレートを3500rpm/10min遠心した(Sorvall Legend-RT,スウィングバケット)。蛍光強度(Thermo, varioskan、λex:530nm;λem:620nm)を測定し、1回目測定値(死細胞)を得た(TにおけるDC;凍結前)。凍結(−80℃)/解凍(37℃)を2回行い、蛍光強度を決定し、2回目測定値(全細胞)を得た(TにおけるTC;凍結/解凍後)。
【0253】
2つ目のプレートに、凍結/解凍を2回の代わりに3回行った以外は1つ目のプレートと同じ処置を行った。1回目測定で処理死細胞値(TDC)を、2回目の測定で処理総細胞値(TTC)を得た。両方の値は、それぞれの処理ウェル及びコントロール(CTC及びCDC)で集めた。
【0254】
各値(DC、TC、TDC、TTC、CTC、及びCDC)からバックグラウンド値(培地のみ)を引いて値を修正し(FUDC(T=0)、FUTC(T=0)、FUTDC、FUTTC)、FUCTC、FUCDC)、それぞれの濃度におけるT/C(%)(処理/コントロール)の計算に用いた。各濃度のT/C(%)は以下の式を用いて計算した:
【0255】
【数1】

【0256】
GI50値では、細胞の生存のために、時間ゼロにおける細胞数の正確性が重要である。T/C値をグラフで入れ換えて、T/Cが50%であるときの濃度であるGI50値を決定した。
【0257】
(b)36細胞株に対する化合物2の抗癌活性特性の分析(IC50):
培養条件、及び36癌細胞株に対する化合物2の活性評価は、実施例9(a)の方法(a)の通り行ったが、結果は細胞成長を50%抑制する薬剤濃度(IC50、次の式を用いて計算した:[Ti/C]×100=−50)で表示した。表13で示された、マイクロモルからナノモルレベルという低いIC50値は、さまざまな36個の腫瘍タイプに対する化合物2の細胞毒性の薬理学的関連性を実証している。かかる腫瘍タイプには、メラノーマ、膵臓、肺、結腸、胃、膀胱、直腸、CNS、頭並びに首、前立腺、子宮、卵巣、及び乳癌が含まれる。
【0258】
【表13】

【0259】
ca=癌腫;pd=分化低い;pap=乳頭;md=分化中程度;wd=分化高い;mm=悪性メラノーマ;nd=未決定
【0260】
実施例10:インビボにおける化合物1及び2の効果
グリア細胞腫における化合物1及び2のインビボ活性
本研究の目的は、化合物1及び2が、C6グリア芽腫を有するマウスの腫瘍成長を予防又は遅延させるかどうかを試験し、効果的な用法を決定することである。
【0261】
動物: 体重18〜25gの、全部で60頭の6週齢の雌マウス(ヌードマウスMus musculus)を処置前7日間観察した。動物実験は、動物実験の倫理的指針(Charte du comite d’ethiquedu CNRS, juillet 2003)及び英国の腫瘍実験における動物の福祉に関する指針(WORKMAN, P., TWENTYMAN,P., BALKWILL, F., et al.(1998).United Kingdom CoordinatingCommittee on Cancer Research(UKCCCR) Guidelines for the welfare of animals in experimental neoplasia(Second Edition, July 1007; British Journal of Cancer, 77:1-10))に沿って行われた。死亡した、又は明らかに病気のマウスは速やかに取り除き、健康なマウスと換えた。病気のマウスはケージから取り除いてすぐに安楽死させた。温度(23±2℃)、湿度(45±5%)、光周期(12hrs明期、12hrs暗期)、及び空気交換の条件を保った部屋で動物は飼育された。動物は、餌及び水を供するように装備されたポリカーボネートのケージで飼育された(5頭/ケージ)。動物の床敷には無菌木屑を用い、1日おきに取り替えた。餌は、ケージの上部の金属のふた(metal lid)の中に置いて、常時供された。オートクレーブした水道水が常に供されていた。水のボトルには、ゴムのストッパーと吸うためのチューブがついていた。水のボトルは週に1回、綺麗にして滅菌して取り替えた。両耳に刻印した2つの異なる数字を用いて動物を識別した。各ケージには個別のコードを付した。
【0262】
腫瘍細胞株:一連の交互培養(alternate culture)及び動物継代の後、Premont et al.(Premont J, Benda P, Jard S., [3H] norepinephrinebinding by rat glial cells in culture. Lack of correlation between binding and adenylate cyclase activation. Biochim Biophys Acta. 1975 Feb 13;381(2):368-76.)に従って、N−ニトロメチル尿素(NMU)で誘導したラットグリア腫瘍からC6細胞株をクローン化した。細胞は、37℃の湿った大気中(5%CO、95%空気)で接着性の単層状に成長した。培養培地は、2mM L−グルタミン及び10%ウシ胎児血清を補充したDMEMである。実験に使用するために、トリプシンベルセンで10min処理して、培養フラスコから腫瘍細胞を剥がした。血球計算版中の細胞を計測し、0.25%トリパンブルー染色によって生存率を評価した。
【0263】
被検物質の調製:被検物質に対して、以下の操作を行い再構成した(注射の直前に行われた)。媒体(vehicle)は、ベンジルアルコール(1.5%)、エタノール(8.5%)、プロピレングリコール(27%)、PEG400(27%)、ジメチルアセトアミド(6%)、及び水(30%)の混合物から成る。最初に、均一な液体にするために、媒体溶液を激しくボルテックスした。ボルテックスされた媒体溶液0.6mLを被検物質(化合物1)を含む各バイアルに加えた。バイアルを1分間ボルテックスし、激しく振って、完全に混合した。バイアルは、各動物に注射する前に再度混合した。
【0264】
動物への腫瘍細胞接種:実験は0日目(D)に始めた。Dで、C6腫瘍細胞(5×10細胞)を含む0.1mLのDMEM完全培地を、マウスの右前肢上部に筋肉表層内注射した。
【0265】
治療計画及び結果
実験第1群
実験第1群においては、C6細胞接種後24hrsに処置を始めた。C6細胞接種後24hrsで処置を開始した。処置の日に、各マウスに100μLの被検物質又は対照物質をゆっくり腹腔経路で注射した。全てのグループにおいて、生理食塩液処置グループ(グループ1)の腫瘍体積が約3cmになるまで(約16日目)、処置を行った。グループ1のマウスは、等浸透圧の生理食塩液で16日間毎日処置した。グループ2のマウスは、媒体溶液で16日間毎日処置された。グループ3のマウスは、10mg/kgの化合物1で16日間毎日処置された。グループ4のマウスは、30mg/kgの化合物1で1日おきに8回処置した。グループ5のマウスは、30mg/kgの化合物1で2日おきに6回処置した。腫瘍体積の測定は、腫瘍が知覚できるようになるとすぐに開始し(>100mm;接種後11日目)、処置の終わりまで1日おきに、キャリパーを用いて評価した。表14及び図1に示されるとおり、化合物1処置グループ(6マウス/グループ)の全てで腫瘍体積の平均値が優位に減少したことが、一元配置分散分析(Anova)法及びダネットのノンパラメトリック多重比較検定で処置グループと生理食塩液グループを比較することで実証された。表14のP値の欄のアスタリスクは統計的に有意な値を意味し、「ns」は有意でないことを示す。
【0266】
【表14】

【0267】
実験第2群:
実験第2群では、C6細胞接種後10日目の、腫瘍が知覚できる(約100〜200mm)ようになったときに処置を開始した。処置は連続5日間、毎日続けて行った。処置日に、各マウスに100mMの化合物1を腹腔経路でゆっくり注射した。グループ1のマウスは、等浸透圧の生理食塩液で毎日処置した。グループ2のマウスは、媒体溶液で毎日処置した。グループ3のマウスは、20mg/kgの化合物1を毎日処置した。グループ4のマウスは、30mg/kgの化合物1を毎日処置した。マウスの処置は、生理食塩液処置の対照マウス(グループ1)の腫瘍体積が約4cmに達するまで行った。腫瘍体積の測定は、処置の終わりまで1日おきに、キャリパーを用いて行った。表15及び図2に示されるとおり、化合物1処置グループ(6マウス/グループ)の全てにおいて、腫瘍体積の平均値が有意に減少していることが、一元配置分散分析(Anova)法及びダネットのノンパラメトリック多重比較検定で処置グループと生理食塩液グループを比較することで実証された。表15のP値の欄のアスタリスクは統計的に有意な値を意味し、「ns」は有意でないことを示す。
【0268】
腫瘍切片の組織学的解析により、化合物1処置マウスの腫瘍と対照グループの腫瘍の間で顕著な形態的変化が示された。化合物1(20〜30mg/kg)で処置したマウスの腫瘍では、細胞濃度が減少し、残った腫瘍細胞の核は大きくなっており且つ濃縮されていた。媒体で処置したマウスの腫瘍ではこのような変化はみられなかった(図3)。
【0269】
【表15】

【0270】
化合物2のインビボにおける抗腫瘍効果:
雌のスイス系ヌードマウスへのラットグリア芽腫(C6)異種移植に対する化合物2の抗腫瘍効果が、上述の方法で確認された。この結果及び用法の概要を、図4に示す。75mg/kg(qd5/2/qd5)の用法での静脈内投与後、有意な効果が示された。
【0271】
実施例11:薬物動態分析
エタノール(5%)、ポリソルベート80(15%)、PEG400(5%)、及びデキストロース(5%)に、化合物1及び2を別々に最終濃度6mg/mlで溶かした(全ての非経口投与経路に対して)。経口投与用には、Cremophor EL/エタノール(50%:50%)に化合物1を最終濃度6mg/mlで溶かした。投与に先立って、動物(雌Crl:CD1マウス;6週齢、22〜24g)の体重を量り、ランダムに選び、異なる処置グループに割り振った。化合物1を、割り振った動物に、静脈内(iv)、皮下(sc)、腹腔内(ip)、又は経口(po)経路で投与した。化合物2は、割り振った動物に、静脈内(iv)、又は腹腔内(ip)経路で投与された。化合物1及び2の投与体積は、体重1kgあたり5mLとした。動物は出血の前に、5%イソフルランで麻酔された。血液は、抗凝固剤KEDTAを含むマイクロティナチューブ(microtainer tube)に、各出血時間(2min、5min、15min、30min、1h、2h、4h、及び8h)につき4動物から、心臓穿刺によって採血された。採血後、各試料を遠心し、各試料から得られた血漿を再生後、分析まで凍結保存した(約−80℃)。5min及び30minの時点で、各動物から以下の臓器を摘出した:脳、肺、骨格筋、脂肪組織、腎臓、脾臓、胸腺及び肝臓。組織は分析まで冷凍(約−80℃)された。試料はLC/MS/MSで分析された。検量線の範囲は25〜2000ng/mLで、定量限界(LOQ)≧25ng/mL、検出限界(LOD)10ng/mLであった。
【0272】
定量限界(LOQ)を下回った化合物1及び2の血漿値をゼロにセットした。平均濃度及び標準偏差(SD)を薬物動態研究の各時点で計算した(n=4動物/時点)。以下の薬物動態パラメータを計算した:時間ゼロ〜最後の計測可能な時点までの血漿濃度−時間曲線の下の面積(AUC0−t)、無限大に外挿した血漿濃度−時間曲線の下の面積(AUCinf)、観測された血漿濃度の最大値(Cmax)、血漿濃度が最大のときの時間(tmax)、見かけの一次消失速度定数(first-order terminal elimination rate constant)(kel)、0.693/kel(t1/2)で計算される見かけの一次消失半減期(first-order terminal elimination half-life)。化合物1の静脈内投与後の全身クリアランス(CL)は、Dose/AUCinfを用いて計算した。薬物動態パラメータの計算にはKineticaTM 4.1.1(InnaPhase Corporation社製、Philadelphia, PA)を用いた。
【0273】
結果:
30mg/kgの化合物1を静脈内(iv)、腹腔内(ip)、皮下(sc)、及び経口(po)投与した後の化合物1の平均血漿濃度を図5に示した。30mg/kgの化合物2をiv及びip投与した後の化合物2の平均血漿濃度を、同じ経路で投与した化合物1と比較して、図6に示した。iv投与において、化合物2では、AUCは92.08μM・hであり、Cmaxは105μg/mLであったのに対し、化合物1ではAUCは40.4μM・hであり、Cmaxは130μg/mLであった。ip投与においては、化合物2では、AUCは58.75μM・hであり、Cmaxは5.8μg/mLであったのに対し、化合物1ではAUCは9.5μM・hであり、Cmaxは2.25μg/mLであった。
【0274】
用量30mg/kgの化合物1のI.V.投与後の平均(±SD)プラズマ濃度は、2変数の指数関数(biexponential)的に急速に減少し、半減期が非常に短かった(t1/2α及びβはそれぞれ4.6min及び2.56hであった。)。腹腔内投与及び皮下投与後の化合物1、並びに腹腔内投与及び皮下投与後の化合物2の薬物動態学は、ゆっくりした放出を示唆するPKを示した。これらの投与経路では、化合物の血漿濃度は持続され、8時間以上、治療に関係するレベルが維持されていた。化合物2はIP及びIV投与の両方の後で、40時間以上の半減期(t1/2)を示した。化合物1の経口投与においては、中程度ではあるが薬物レベルは持続された。これらのデータは、化合物1が経口で5〜8%レベルの生体利用性をもつことを示している。
【0275】
30mg/kgの静脈内(iv)、腹腔内(ip)、又は皮下(sc)投与後30minにおける化合物1の平均組織濃度を図7に示す。30minの時点を選んだのは、3つ全ての投与経路で、血漿濃度が類似していたからである。化合物1は、iv及びip投与後、よく分散されている。驚くべきことに、ip及びsc投与ではPKの特性が類似していたにも関わらず、sc投与後の組織レベルは有意に低かった。これは、iv及びip投与と比べたときに、sc投与後にはピークレベルがないことで説明され得る。
【0276】
同じ製剤を用いた、CD−1nu/nuマウスにおける化合物2の急性毒性試験は、MTD≧50mg/kg(ip、NOAEL:30mg/kg)及び≧100mg/kg(ip、NOAEL:75mg/kg)となり、注射後数日での体重減少は7%であった。化合物1はMTDは、iv投与では150mg/kgであった。急性毒性試験の結果、化合物46のMTDは30mg/kgであった(ip)。
【0277】
本明細書で引用したすべての特許、特許出願、及び発行されている参照文献の全体を本明細書に引用し援用する。本発明を特にその好ましい実施形態に即して示し、述べてきたが、当業者ならば、添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、そこに形態及び細部の様々な変更を行なってもよいことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0278】
【図1】C6グリア芽腫を有するマウスに対して腫瘍細胞接種1日後に10〜30mg/kgの化合物1をボーラス投与したことによる、腫瘍成長抑制を示す図。
【図2】C6グリア芽腫を有するマウスに対して腫瘍細胞接種10日後に20〜30mg/kgの化合物1をボーラス投与したことによる、腫瘍成長抑制を示す図。
【図3】生理食塩液又は化合物1で処置したC6グリア芽腫を有するマウスの腫瘍切片の顕微鏡写真。化合物1で処置された腫瘍の細胞密度が明らかに減少し、腫瘍細胞の核が大きくなり、濃縮されていることから、細胞毒性効果が示唆される。
【図4】処置11日目〜20日目における、C6グリア芽腫を有するマウスに対する20〜75mg/kgの化合物2ボーラス投与による腫瘍成長抑制を示す図。
【図5】スイスマウスにおける、30mg/kgの静脈内(iv)、腹腔内(ip)、皮下(sc)及び経口(po)ボーラス投与後の、化合物1の平均(±SD)血漿濃度を示す図。
【図6】CD−1マウスにおける、30mg/kgの静脈内(iv)及び腹腔内(ip)ボーラス投与後の、化合物1及び2の平均(±SD)血漿濃度を示す図。
【図7】30mg/kgの静脈内(iv)、腹腔内(ip)、及び皮下(sc)ボーラス投与30分後の、様々な組織における化合物1の平均濃度を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、又は式Iのファルネシル基が1、2、若しくは3個の水素化若しくはヒドロアルコキシ化二重結合を有するファルネシル誘導体、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ。
【化1】

[式中、Rは直鎖C1−10アルキルである。]
【請求項2】
が直鎖C1−10アルキルであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項3】
化合物が一水素化ファルネシル誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項4】
化合物が二水素化ファルネシル誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項5】
化合物が全水素化ファルネシル誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項6】
が直鎖C1−10アルキルであり、且つファルネシルが全水素化されていることを特徴とする請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項7】
が直鎖C1−6アルキルであることを特徴とする請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項8】
が直鎖C1−6アルキルであり、且つファルネシルが全水素化されていることを特徴とする請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項9】
がメチルであることを特徴とする請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項10】
がエチルであることを特徴とする請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項11】
がn−プロピルであることを特徴とする請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項12】
がn−ブチルであることを特徴とする請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項13】
がn−ヘキシルであることを特徴とする請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項14】
化合物が化合物2〜22から選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【化2】

【化3】

【化4】

【請求項15】
化合物が化合物2〜5、7、13、14、15、18、21、及び22から選択されることを特徴とする請求項14記載の化合物、又はその薬学的に許容される溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項16】
化合物が化合物2〜5、及び7から選択されることを特徴とする請求項15記載の化合物、又はその薬学的に許容される溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項17】
化合物が化合物2〜13から選択されることを特徴とする請求項14記載の化合物、又はその薬学的に許容される溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項18】
化合物が化合物14〜22から選択されることを特徴とする請求項14記載の化合物、又はその薬学的に許容される溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項19】
化合物23〜27から選択される化合物、又はその薬学的に許容される溶媒和物若しくはプロドラッグ。
【化5】

【請求項20】
化合物が化合物23であることを特徴とする請求項19記載の化合物、又はその薬学的に許容される溶媒和物若しくはプロドラッグ。
【請求項21】
化合物24、26又は27から選択される化合物であることを特徴とする請求項19記載の化合物、又はその薬学的に許容される溶媒和物若しくはプロドラッグ。
【請求項22】
化合物が化合物25であることを特徴とする請求項19記載の化合物又はその薬学的に許容される溶媒和物若しくはプロドラッグ。
【請求項23】
化合物1を化学修飾することを含む、請求項1〜18いずれか記載の化合物を生産する方法で、前記化学修飾がN−アルキル化の化学的ステップを含む方法。
【化6】

【請求項24】
ファルネシル水素化又はファルネシルヒドロアルコキシ化ステップが部分的又は完全であることを特徴とする、前記ファルネシル水素化又はファルネシルヒドロアルコキシ化いずれかのステップをさらに含むことを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
N−アルキル化の化学反応段階が、請求項23に記載されている化合物1の反応において化合物1をジアルキル硫酸又はハロゲン化アルキルいずれかのアルキル化剤と反応させることを含む、請求項23記載の方法。
【請求項26】
化合物1を化学修飾することを含む、請求項18〜22いずれか記載の化合物を生産する方法で、前記方法がO−アシル化、芳香族ハロゲン化、及び完全なステップであることを特徴とするファルネシル水素化からなる群から選択される一つのステップを含むことを特徴とする前記方法。
【化7】

【請求項27】
化学修飾がファルネシル水素化ステップを含むことを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
治療に有効な量の請求項1記載の化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項29】
治療に有効な量の請求項2〜14いずれか記載の化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項30】
治療に有効な量の請求項15〜18いずれか記載の化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項31】
治療に有効な量の請求項19記載の化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項32】
治療に有効な量の請求項20〜22いずれか記載の化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項33】
腫瘍細胞の成長を抑制するための、請求項1記載の化合物の使用。
【請求項34】
腫瘍細胞の成長を抑制するための、請求項2〜13いずれか記載の化合物の使用。
【請求項35】
腫瘍細胞の成長を抑制するための、請求項14〜18いずれか記載の化合物の使用。
【請求項36】
腫瘍細胞の成長を抑制するための、請求項19〜22いずれか記載の化合物の使用。
【請求項37】
腫瘍細胞の成長を抑制するための、請求項1記載の化合物の使用。
【請求項38】
腫瘍状態を治療するための薬剤の調製における、請求項2〜13いずれか記載の化合物の使用。
【請求項39】
腫瘍状態を治療するための薬剤の調製における、請求項14〜18いずれか記載の化合物の使用。
【請求項40】
腫瘍状態を治療するための薬剤の調製における、請求項19〜22いずれか記載の化合物の使用。
【請求項41】
腫瘍状態が、白血病、メラノーマ、乳癌、肺癌、膵臓癌、卵巣癌、腎臓癌、結腸又は結腸直腸癌、前立腺癌及び中枢神経系癌から選択されることを特徴とする、請求項37〜40いずれか記載の使用。
【請求項42】
請求項1記載の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグと、腫瘍状態を治療するための前記化合物の使用法を記載した書面とを含む商業用パッケージ。
【請求項43】
請求項2〜13いずれか記載の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグと腫瘍状態を治療するための前記化合物の使用法を記載した書面とを含む商業用パッケージ。
【請求項44】
請求項14〜18いずれか記載の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグと腫瘍状態を治療するための前記化合物の使用法を記載した書面とを含む商業用パッケージ。
【請求項45】
請求項19記載の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグと腫瘍状態を治療するための前記化合物の使用法を記載した書面とを含む商業用パッケージ。
【請求項46】
請求項19〜22いずれか記載の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグと、腫瘍状態を治療するための前記化合物の使用法を記載した書面とを含む商業用パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−514551(P2008−514551A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532739(P2007−532739)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001467
【国際公開番号】WO2006/034574
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(503355580)エコピア バイオサイエンシーズ インク (5)
【Fターム(参考)】