説明

ジメチルエーテルの製造方法および製造装置

【課題】本発明はバイオマスを原料としたジメチルエーテルを製造する方法、および当該方法に適用可能なジメチルエーテルの製造装置を提供する。
【解決手段】本発明のジメチルエーテル製造装置は、バイオマスを熱化学的に分解して水素および一酸化炭素を含む合成ガスを生成させるためのガス化部(1)、当該合成ガスに含まれるタール等を除去するためのガス精製部A(2)、当該合成ガスに含まれる二酸化炭素および水蒸気を除去するためのガス精製部B(3)、および当該合成ガスをジメチルエーテル合成触媒上で反応させてジメチルエーテルを合成するためのジメチルエーテル合成部(4)を備える。ガス化部(1)、ガス精製部A(2)、ガス精製部B(3)、およびジメチルエーテル合成部(4)は、大気圧を超える内圧に耐性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを原料としたジメチルエーテルを製造する方法、および当該方法に適用可能なジメチルエーテルの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラルであるバイオマスの利用技術は、地球温暖化防止、循環型社会の構築、中山間地域における新たな産業の創出等の観点から研究開発が進められている。バイオマスの利用としては、例えばバイオマスを燃焼させることによる発電および熱供給や、フィッシャー・トロプシュ合成方法による軽油、メタノール、ジメチルエーテル等の液体燃料製造が挙げられる。
【0003】
ジメチルエーテルの合成は、以下の反応によって行われる。
2H+CO→CHOH・・・(1)
2CHOH→CHOCH+HO・・・(2)
CO+HO→H+CO・・・(3)
ジメチルエーテルの合成法としては、間接法と直接法とがあり、間接法では上記反応式(1)および(2)によってジメチルエーテルが合成される。一方、直接法では上記反応式(1)〜(3)の反応が同時に起こる。上記反応式(1)〜(3)で示される反応をまとめると、下記反応式(4)として示すことができる。
3H+3CO→CHOCH+CO・・・(4)
上記反応式(4)から、ジメチルエーテルの合成において、水素および一酸化炭素の濃度が高い程、ジメチルエーテルの収率が増加することがわかる。またジメチルエーテルの合成反応系中に水蒸気が存在すると、一酸化炭素が減少してしまうことが、上記反応式(3)からわかる。またジメチルエーテルの合成反応系中に二酸化炭素が存在すると、ジメチルエーテルの合成反応が抑制されてしまうことが上記反応式(4)からわかる。
【0004】
バイオマスを用いてジメチルエーテルを合成する方法としては、バイオマスを水(水蒸気を含む)とともに熱処理して水素および一酸化炭素を含むガスを生成し(「ガス化する」という)、このガス(「合成ガス」という)から触媒を用いてジメチルエーテルを合成する方法が知られている。従来のバイオマスを原料とするジメチルエーテルの合成方法は下記の工程によって行われる。まずバイオマスをガス化剤とともに800〜1000℃で加熱しガス化を行う(「ガス化工程」という)。ガス化工程は、通常、大気圧下で行われる(「常圧ガス化」という)。次に、上記ガス化工程によって得られた合成ガスに含まれるタール等の副生成物を除去する(「ガス精製工程」という)。次にガス精製工程を経た合成ガスを数MPaまで圧縮するとともに、200〜300℃まで昇温する(「昇温・圧縮工程」という)。昇温・圧縮工程を経た合成ガスをジメチルエーテル合成触媒の作用によってジメチルエーテルを合成する(「ジメチルエーテル合成工程」という)。
【0005】
ガス化工程としては、上記常圧ガス化の他に、加圧ガス化が挙げられる。常圧ガス化は大気圧下でバイオマスを熱分解してガス化する方法であるのに対して、加圧ガス化は大気圧を超える圧力条件下まで加圧してガス化する方法である。かかるガス化工程においてはタール等が発生する。そしてこのタールがガス化装置における配管の目詰まり等を引き起こすことが問題となっている。なお、加圧ガス化の場合、タールの生成量は常圧ガス化の場合よりも少ないことが報告されている(例えば、非特許文献1を参照のこと)。よって加圧ガス化によれば、タールを除去するためのガス精製装置を常圧ガス化の場合に比して小さくすることができるといえる。
【0006】
ガス化工程において使用されるガス化剤として、空気、水蒸気、二酸化炭素が用いられている。ガス化剤は、バイオマスを熱化学的に分解して合成ガスを生成するための物質である。ガス化剤として空気を用いる場合は、空気中の酸素とバイオマスが反応し、ガス化速度も速く、また設備コストも小さいが、ガス化によって生成されるガス中に窒素が含まれる。窒素はバイオマスのガス化反応に不活性な気体であるため、所望の合成ガス(水素および一酸化炭素)の分圧を減少させてしまう。また、ジメチルエーテルの合成に利用されなかった合成ガスをガス化剤として再利用する場合があり、その場合、窒素の濃度が反応系内に増加し続けてしまう。この場合、反応系内から窒素を除去するためには大きなコストが必要となる。
【0007】
またガス化剤として水蒸気を用いる場合は、ガス化中の水素濃度を増加させることができるというメリットはあるが、反応速度が遅く、水蒸気を発生させるための設備が別途必要となり、さらにエネルギーを投入する必要があるというデメリットがある。また過剰な水蒸気が存在すると、上記反応式(3)の反応が進行し一酸化炭素が減少してしまう。よって、水蒸気を除去する装置が別途必要となる。
【0008】
またガス化剤として二酸化炭素を用いる場合は、ガス化によって合成された合成ガス中に問題となる窒素や過剰な水蒸気もないが、ガス化速度が遅いというデメリットがある。またガス化反応は吸熱反応であるため、外熱を反応系へ投入しなければならない。また反応系内の二酸化炭素濃度が増加するため、水素および一酸化炭素の分圧が減少するとともに、また上記反応式(4)の反応が抑制されてしまう。
【0009】
既述のとおり、バイオマスのガス化で生成するタールを除去するためにガス精製工程が実施される。かかるガス精製工程には、水などを用いてタールを除去する湿式法と、水などを用いない乾式法とがある。上記湿式法では廃水処理が必要であり、またガス化によって得られたガス(一酸化炭素および水素)が100℃以下になってしまい、ジメチルエーテルを合成するために再加熱しなければならないというデメリットがある。また乾式法としては、例えば活性炭を用いた方法が知られているが(例えば特許文献1を参照のこと)、この場合タールの除去が不十分であるため、湿式法を併用しなければならない場合がある。
【0010】
バイオマスのガス化は一般的に常圧ガス化で行われるため、ジメチルエーテルの合成を行う場合、バイオマスのガス化によって生成されたガスを圧縮する必要がある。このため、ガス圧縮機を設置するために設備コストがかかる。またジメチルエーテルの製造装置自体が大きくなってしまう。
【0011】
バイオマスを原料としたジメチルエーテルの製造については、例えば特許文献2〜4に記載されている。特許文献2および3に記載されたジメチルエーテルの製造方法は、バイオマスを常圧ガス化しており、ガス圧縮機によって合成されたガスを圧縮している。特許文献4には、ガス化工程から液体燃料合成工程までを加圧条件下で行うことが記載されているが、ガス化剤として窒素や水蒸気を用いており、バイオマスのガス化から合成されたガス中の水素および一酸化炭素の分圧が低下してしまい、液体燃料の収量が減少してしまうという問題点がある。
【非特許文献1】Okumura,Y. et al., [加圧下におけるバイオマスの熱分解・ガス化特性]日本機会学会論文集(B編), Vol.73, No.731, 1434-1441(2007)
【特許文献1】特開2006−335822号公報(公開日:平成18年(2006)12月14日)
【特許文献2】特開2005-23013号公報(公開日:平成17年(2005)1月27日)
【特許文献3】特開2005−289856号公報(公開日:平成17年(2005)10月20日)
【特許文献4】特開2007−204558号公報(公開日:平成19年(2007)8月16日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のごとく、ガス化剤として、空気を用いると、ガス化して生成した合成ガス中に窒素が存在してしまうため、合成ガス(水素および一酸化炭素)の分圧が低下してしまう。また、ガス化剤として水蒸気を用いた場合、過剰な水蒸気が反応系中に存在すると、上記反応式(3)の反応が進行してしまい、一酸化炭素の濃度が減少し、結果としてジメチルエーテルの収率が低下してしまう。上記事情を含め、バイオマスからジメチルエーテルを合成する場合、バイオマスのガス化から生成される合成ガス成分は、窒素、水蒸気、二酸化炭素、酸素をできるだけ低くくし、合成ガスの濃度ができるだけ高くすることが望まれる。
【0013】
一方、バイオマスを原料としたジメチルエーテルの一般的な合成方法では、常圧ガス化が行われており、ガス化によって得られた合成ガスを圧縮する必要がある。圧縮機を導入すると、圧縮機導入のイニシャルコストがかかるということ、およびジメチルエーテルの製造装置自体が大きくなってしまうこと等の問題が発生する。このため、圧縮工程を省略することが望まれる。
【0014】
またガス精製工程では、タールや硫黄化合物等の副生成物を除去することが重要である。しかし、例えば特許文献1に記載されている乾式法では、タールの除去が十分ではなく、湿式法を併用している。
【0015】
したがって本発明は、これらの問題点を克服するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、バイオマスからジメチルエーテルを製造する際に、ガス化工程で生成した合成ガスを圧縮する圧縮工程および再加熱工程を省略するとともに、ジメチルエーテル合成工程においてジメチルエーテルの収率を低下させる原因となる、窒素、水蒸気、二酸化炭素、酸素などの濃度を低くしたジメチルエーテル製造方法、および当該ジメチルエーテルの製造方法に好ましく用いられるジメチルエーテルの製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、以下に示す本発明にかかる方法によって、上記課題が解決し得ることを発見し本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち本発明にかかるジメチルエーテルの製造方法は、上記課題を解決するために、
(i)二酸化炭素および酸素からなるガス化剤と、バイオマスとを加熱しつつ反応させて、水素および一酸化炭素を含む合成ガスを生成させるガス化工程と、
(ii)前記ガス化工程によって生成した合成ガスに含まれるタール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上を除去するガス精製工程Aと、
(iii)前記ガス精製工程Aによって処理された合成ガスに含まれる二酸化炭素および水蒸気を除去するガス精製工程Bと、
(iV)前記ガス精製工程Bによって処理された合成ガスをジメチルエーテル合成触媒上で反応させてジメチルエーテルを合成するジメチルエーテル合成工程とを含み、
上記ガス化工程、ガス精製工程A、ガス精製工程B、およびジメチルエーテル合成工程は大気圧を超える加圧条件下で行われることを特徴としている。
【0018】
また本発明にかかるジメチルエーテルの製造方法において上記ガス化剤は、ジメチルエーテルの合成反応に不活性な気体の濃度が5体積%未満であり、かつ水蒸気含量が5体積%未満であることが好ましい。さらに上記ガス化剤は、二酸化炭素および酸素のみからなることが好ましい。
【0019】
また本発明にかかるジメチルエーテルの製造方法において上記精製工程Aは、乾式法で行われることが好ましい。
【0020】
また本発明にかかるジメチルエーテルの製造方法において上記ガス化工程は、800〜1200℃の範囲の温度条件で行われることが好ましい。
【0021】
また本発明にかかるジメチルエーテルの製造方法において上記加圧条件下は、0.2〜5MPaの範囲であることが好ましい。
【0022】
一方、本発明にかかるジメチルエーテルの製造装置は、上記課題を解決するために、
(1)大気圧を超える内圧に耐性を有し、バイオマスを熱化学的に分解して水素および一酸化炭素を含む合成ガスを生成させるためのガス化部と、
(2)前記ガス化部から生成した合成ガスが内部に導入可能にガス化部と接続され、当該合成ガスに含まれるタール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上を吸着し得るガス精製剤Aが充填され、かつ大気圧を超える内圧に耐性を有するガス精製部Aと、
(3)前記ガス精製部Aを経由した合成ガスが内部に導入可能にガス精製部Aと接続され、当該合成ガスに含まれる二酸化炭素および水蒸気を吸着し得るガス精製剤Bが充填され、かつ大気圧を超える内圧に耐性を有するガス精製部Bと、
(4)前記ガス精製部Bを経由した合成ガスが内部に導入可能にガス精製部Bと接続され、ジメチルエーテル合成触媒が充填され、かつ大気圧を超える内圧に耐性を有する、当該合成ガスをジメチルエーテル合成触媒上で反応させてジメチルエーテルを合成するためのジメチルエーテル合成部と、を備えることを特徴としている。
【0023】
本発明にかかるジメチルエーテルの製造装置において上記ガス精製剤Aは、活性炭であることが好ましい。
【0024】
本発明にかかるジメチルエーテルの製造装置においては、上記ガス精製剤Bに吸着した二酸化炭素を上記ガス化部に導入可能となっている装置であってもよい。
【0025】
本発明にかかるジメチルエーテルの製造装置においては、上記ジメチルエーテル合成部で合成されたジメチルエーテルに混在する気体を上記ガス化部に導入可能となっている装置であってもよい。
【0026】
本発明にかかるジメチルエーテルの製造装置においては、上記ガス精製剤Bに吸着した二酸化炭素を上記ガス化部に導入可能となっており、かつ、上記ジメチルエーテル合成部で合成されたジメチルエーテルに混在する気体を上記ガス化部に導入可能となっている装置であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、バイオマスを原料としてジメチルエーテルを製造する際に、ガス化工程からジメチルエーテル合成工程までを加圧条件下で行うため、バイオマスのガス化により生成された合成ガスを圧縮する工程を省略することができる。
【0028】
また本発明においてはガス化剤として、二酸化炭素に加えて酸素を供給している。ガス化工程において炭素と二酸化炭素とから一酸化炭素を合成する反応は吸熱反応であるが、ガス化剤として二酸化炭素と同時に酸素を供給することでバイオマスの酸化が起こる。そしてその酸化熱を利用することでガス化工程における熱損失を軽減できる。また加圧ガス化を行っているため、タール等の発生量が低く、活性炭等を用いた乾式法によって精製工程Aを実施し得るため、湿式法を併用する必要がない。このため、湿式法の問題点である合成ガスの温度低下を防ぐことができる。それゆえガス化工程によって得られた合成ガスを再加熱する工程を省略することができる。
【0029】
またガス化剤として、炭素および酸素を含み、かつバイオマスのガス化反応に不活性な気体の濃度が5体積%未満であり、かつ水分含量が5体積%未満であるガス化剤(好ましくは二酸化炭素および酸素からなるガス化剤)を用いてバイオマスをガス化しているため、生成した合成ガス中に窒素や過剰な水蒸気が含まれていない。よって合成ガスの濃度を増加させることが可能となり、ジメチルエーテルの収率が増加することができる。
【0030】
なお、ガス精製工程Bなどで除去した二酸化炭素は、ガス化剤として再利用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中に記載された非特許文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお本明細書中の「★〜☆」は「★以上、☆以下」を示す。
【0032】
<1.本発明のジメチルエーテルの製造装置>
本発明に係るジメチルエーテルの製造方法(以下「本発明のDME製造方法」という)を実施する際に好ましく適用され、かつ本発明に係るジメチルエーテルの製造装置(以下「本発明のDME製造装置」という)を説明する。ただし、本発明のDME製造方法は、本発明のDME製造装置を用いた場合に限定されるものではない。
【0033】
図1は、本発明のDME製造装置の一実施形態にかかるDME製造装置(100)の模式図である。DME製造装置(100)は、ガス化部(1)、ガス精製部A(2)、ガス精製部B(3)、ジメチルエーテル合成部(4)、原料供給部(5)、およびジメチルエーテル回収部(6)から主に構成されている。以下に各構成についてさらに説明する。
【0034】
(1)ガス化部
ガス化部(1)は、バイオマスを熱化学的に分解して水素および一酸化炭素を含む合成ガスを生成させるための手段であって、ガス化部(1)は、原料であるバイオマスおよびガス化剤が仕込まれる炉(1a)と、当該原料が熱分解される温度まで加熱することができる加熱手段(1b)とを少なくとも備えている。また、本発明のDME製造方法では、後述のごとくガス化工程を、大気圧を超える加圧条件下で行うため、ガス化部(1)(特に炉(1a))は大気圧を超える内圧に耐性を有するもので構成されている必要がある。
【0035】
炉(1a)は所定量のバイオマスおよびガス化剤を収納し、大気圧を超える内圧に耐性を有するものであれば特に形状や容量は特に限定されるものではない。また炉(1a)の材質についても、大気圧を超える内圧、ガス化工程における加熱温度に耐え得るものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、石英や、ステンレス、インコネルなどの合金が適宜利用され得る。
【0036】
またガス化部(1)を構成する加熱手段(1b)は、炉(1a)の内部の温度を、ガス化工程を実施し得る温度(800〜1200℃、好ましくは800〜1000℃)に昇温することができる手段であれば、いかなる手段(電気式加熱手段、ガス式加熱手段等)が用いられてもよい。なおガス化工程を実施し得る温度(「ガス化温度」)が高くなると、ガス化率は増加するが、ガス化温度が1000℃以上になると、耐温性の高い材料を用いなければならないため、設備コストが高くなる。そのため、ガス化温度は800〜1000℃がより好ましいといえる。
【0037】
また製造装置(100)における炉(1b)の内部には、目皿(1c)およびアルミナボール(1d)が設置されている。目皿(1c)は炉(1a)の内部を仕切る複数の孔を有する部材である。またアルミナボール(1d)はアルミナ製球状物または略球状物であり、目皿上に堆積されている。かかる目皿(1c)およびアルミナボール(1d)は、炉(1a)内に仕込まれたバイオマスがガス化しないうちにガス化部(1)を通過しないようにするための部材である。特にアルミナボール(1d)には、ガス化における原料の残渣であるチャーや灰分が蓄積する。目皿(1c)における孔の孔径はバイオマスがガス化するまでの間、バイオマスを炉(1a)内部に保持し得る程度であれば特に限定されるものではない。またアルミナボール(1d)の球径および形状についても、バイオマスがガス化するまでの間、バイオマスを炉(1a)内部に保持し得る程度であれば特に限定されるものではない。後述する実施例においては、4mm程度の球径を有するアルミナボールを用いた。なお、製造装置(100)においてアルミナ製球状物または略球状物が用いられているが、これに限定されるものではなく、セラミック製、ガラス製、ドロマイト等の石灰岩製等の球状物または略球状物に置換可能である。
【0038】
(2)ガス精製部A
ガス精製部A(2)は、上記ガス化部(1)から生成した合成ガスに含まれるタール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上を除去するための手段であり、タール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上を吸着し得るガス精製剤Aが充填されている。ガス精製部A(2)と上記ガス化部(1)とは、ガス化部(1)において生成した合成ガスをガス精製部A(2)の内部に導入することが可能なように接続されている。
【0039】
ここで上記ガス精製剤Aとしては、タール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上を吸着し得る物質であれば特に限定されるものではない。ガス精製剤Aとしては、例えば活性炭、チャー、コークス、活性コークス、石炭、木炭、グラファイト(石墨)、黒鉛、フラーレン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。タール、硫黄酸化物、および窒素化合物を高効率で除去することができ、かつ安価であるため、活性炭が特に好ましい。活性炭としては、比表面積が250m2/g以上(好ましくは500m2/g以上)のもの、および/または平均細孔径が0.1nm以上(好ましくは0.5nm以上)のものが好ましい。なお、後述する実施例において使用された活性炭は、比表面積が1,120m2/gであり、平均細孔径が1.7nmであった。また、バイオマスをガス化した際に生じるチャーも使用可能である。なお硫黄化合物の除去には、鉄(Fe)を担持させた活性炭またはチャーがガス精製剤Aとして好適に用いられる。鉄(Fe)以外にも、元素周期表1A(1族)族、1B(11族)族、2A(2族)族、2B(12族)族、6A(6族)族、および8(8〜10族)の元素を活性炭またはチャーに担持させたものが、硫黄化合物の除去に好適である。ガス精製剤Aは、単独の物質であっても複数の物質の混合物であってもよい。
【0040】
なお、本発明のDME製造方法では、後述のごとくガス精製工程Aを、大気圧を超える加圧条件下で行うため、ガス精製部A(2)は大気圧を超える内圧に耐性を有するもので構成されている必要がある。またガス精製工程Aは高温(例えば150〜900℃(好ましくは160〜600℃))の温度条件下で行われるため、ガス精製部A(2)は当該温度条件に耐え得るもので構成されている必要がある。
【0041】
(3)ガス精製部B
ガス精製部B(3)は、上記ガス精製部A(2)を経由した合成ガスに含まれる二酸化炭素および/または水蒸気を除去するための手段であり、二酸化炭素および/または水蒸気を吸着し得るガス精製剤Bが充填されている。またガス精製部B(3)と上記ガス精製部A(2)とは上記ガス精製部A(2)を経由した合成ガスをガス精製部B(3)の内部に導入することが可能なように接続されている。
【0042】
ガス精製剤Bは、二酸化炭素および水蒸気を吸着し得る物質であれば特に限定されるものではない。ガス精製剤Bは、二酸化炭素と水蒸気とを吸着し得る単一物質で構成されていても、また二酸化炭素を吸着する物質と水蒸気を吸着し得る物質とを組み合わせて構成されていてもよい。なお上記「吸着する」とは物理的な吸着のみならず、「化学的に反応して二酸化炭素および/または水蒸気(水)を分子内に取り込む場合をも意味する。ガス精製剤Bとしては、例えば、酸化カルシウム単独、水酸化カルシウムと酸化カルシウムとの組み合わせが挙げられる。また上記水酸化カルシウム、酸化カルシウムの「カルシウム」を元素周期表2A族のその他の元素と置き換えた化合物(例えば、酸化マグネシウム単独、水酸化マグネシウムと酸化マグネシウムとの組み合わせ)もガス精製剤Bとして利用可能である。後述する実施例においてはガス精製剤Bとして、水酸化カルシウムと酸化カルシウムとが用いられた。この場合、ガス精製部B(3)は水酸化カルシウムが単独で充填された部材と酸化カルシウムが単独で充填されてなる部材とを組み合わせて構成されても、また水酸化カルシウムと酸化カルシウムとの混合物が充填されてなる部材によって構成されていてもよい。
【0043】
水酸化カルシウムと酸化カルシウムとを組み合わせて二酸化炭素および水蒸気を除去する場合、下記の反応が起こる。
CO2+CaO→CaCO3・・・(8)
CO2+Ca(OH)2→CaCO3+H2O・・・(9)
2O+CaO→Ca(OH)2・・・(10)
ガス精製部B(3)では、上記の反応が複雑に進行し、二酸化炭素および水蒸気が除去される。これにより、水素および一酸化炭素の分圧が増加した合成ガスを得ることが可能となる。
【0044】
なお、水酸化カルシウムと二酸化炭素が反応する際に水が生成する。よって、ガス精製部B(3)が、水酸化カルシウムが単独で充填された部材と酸化カルシウムとが単独で充填されてなる部材とを組み合わせて構成されている場合、ガス精製工程Bの最後に酸化カルシウムが単独で充填されてなる部材を合成ガスが通過するように、水酸化カルシウムが単独で充填された部材と酸化カルシウムが単独で充填されてなる部材とを組み合わせて使用することが水蒸気除去の観点から好ましい。
【0045】
上記反応式によれば、酸化カルシウムは二酸化炭素および水と反応することができるために、これ単独でガス精製剤Bとして利用すればよい。酸化カルシウムと水酸化カルシウムとを組み合わせてガス精製剤Bとして使用した場合、酸化カルシウムは水酸化カルシウムに対して同量以上用いられることが好ましい。水酸化カルシウムと二酸化炭素が反応する際に水が生成するからである。
【0046】
上記の他、ガス精製剤Bとしては、酸化鉄(FeO、Fe、Fe)、水酸化鉄(Fe(OH)、Fe(OH))が利用可能である。
【0047】
なお、本発明のDME製造方法では、後述のごとくガス精製工程Bを、大気圧を超える加圧条件下で行うため、ガス精製部B(3)は大気圧を超える内圧に耐性を有するもので構成されている必要がある。またガス精製工程Aは高温(例えば150〜600℃(好ましくは200〜400℃))の温度条件下で行われるため、ガス精製部B(3)は当該温度条件に耐え得るもので構成されている必要がある。
【0048】
(4)ジメチルエーテル合成部
ジメチルエーテル合成部(4)は、前記ガス精製部B(3)を経由した合成ガスをジメチルエーテル合成触媒の触媒作用によってジメチルエーテルを合成するための部材であり、その内部にジメチルエーテル合成触媒が充填されている。またジメチルエーテル合成部(4)と上記ガス精製部B(3)とは上記ガス精製部B(3)を経由した合成ガスをジメチルエーテル合成部(4)の内部に導入することが可能なように接続されている。
【0049】
ジメチルエーテル合成触媒としては、水素および一酸化炭素を含む合成ガスからジメチルエーテルを合成する反応を触媒し得る物質であれば特に限定されるものではない。例えば、γ−アルミナ担持Cu触媒(「Cu/γ−アルミナ触媒」)、γ−アルミナ担持Cu−Zn触媒(「Cu−Zn/γ−アルミナ触媒」)、γ−アルミナ担持Cu−Pd触媒(「Cu−Pd/γ−アルミナ触媒」)、γ−アルミナ担持Cr−Zn触媒(「Cr−Zn/γ−アルミナ触媒」)、γ−アルミナ担持Cu/ZnO触媒(「Cu/ZnO/γ−アルミナ触媒」)、γ−アルミナ担持Cu/Cr23/ZnO(「Cu/Cr23/ZnO/γ−アルミナ触媒」)などが好ましく用いられる。なお上記ジメチルエーテル合成触媒の担体はγ−アルミナの代わりにゼオライトが用いられてもよい。上記ジメチルエーテル合成触媒は、従来のγ−アルミナ粉末を用いた含浸法や沈殿法などにより調製され得る。また、これらのジメチルエーテル合成触媒をゾル・ゲル法(特開2003−334445号公報を参照のこと)により調製して、活性成分の分散性を高めることにより触媒特性を更に向上させることもできる。上記ジメチルエーテル合成触媒を用いてジメチルエーテル合成を効果的に行うにはアルミナを70質量%以上含むのが好ましい。Cu−Zn/γ−アルミナ触媒、Cu−Pd/γ−アルミナ触媒、Cr−Zn/γ−アルミナ触媒、Cu/ZnO/γ−アルミナ触媒では、ZnとCuとのモル比、PdとCuとのモル比、ZnとCrとのモル比、CuとZnOとのモル比は、それぞれ1/1〜1/10の範囲であるのが好ましい。また、Cu/Cr23/ZnO/γ−アルミナ触媒の場合、Cu:Cr23、:ZnOのモル比は、55〜75:5〜20:15〜40であることが好ましい。なお、上記例示したジメチルエーテル合成触媒は、適宜混合して使用してもよい。
【0050】
なお、本発明のDME製造方法では、後述のごとくジメチルエーテル合成工程を、大気圧を超える加圧条件下で行うため、ジメチルエーテル合成部(4)は大気圧を超える内圧に耐性を有するもので構成されている必要がある。またジメチルエーテル合成工程は高温(例えば150〜600℃(好ましくは150〜400℃、さらに好ましくは200〜300℃))の温度条件下で行われるため、ジメチルエーテル合成部(4)は当該温度条件に耐え得るもので構成されている必要がある。
【0051】
(5)原料供給部
原料供給部(5)は、上記ガス化部に対して、原料であるバイオマスおよびガス化剤を供給するための手段であり、例えばバイオマス供給部(5a)およびガス化剤供給部(5b)からなる。
【0052】
バイオマス供給部(5a)は、バイオマスをガス化部(1)に対して供給することができる手段であれば特に限定されるものではなく、例えば公知のスクリューフィーダー、ロータリーフィーダー、振動フィーダー等が適用され得る。ここで「バイオマス」とは、生物由来の有機資源のことを意味する。かかるバイオマスには、木質系バイオマス、木質系廃棄物、草本系バイオマス、草本系廃棄物などが含まれる。例えば、木材、建築廃材、竹材、イナワラ、ムギワラ、バガス、竹、パルプ、コーンストーバー、もみがら、パーム椰子残渣、キャッサバ残渣、麻などがバイオマスに属する。バイオマス供給部で供給されるバイオマスは、取り扱いを容易にするため、またはガス化工程においてガス化反応の効率を高めるために適宜前処理が施されていてもよい。かかる全処理としてはバイオマスを粉砕する工程(「粉砕工程」という)が挙げられる。粉砕工程を経たバイオマスは、粒子サイズが0.1mm〜5mm程度(好ましくは、0.5mm〜2mm)となっていることが好ましい。なお、バイオマスの粒子サイズが0.1mm〜5mm(0.5mm〜2mm)であるとは、バイオマスの粒子が目開きが0.1mm〜5mm(0.5mm〜2mm)であるふるいを通過し得る大きさであることを意味する。
【0053】
ガス化剤供給部(5b)としては、ガス化剤をガス化部(1)に対して供給することができる手段であれば特に限定されるものではなく、例えば公知のガスボンベ、タンク、ガス発生器が適用され得る。かかるガス化剤供給部(5b)には、供給されるガス化剤の量をコントロールするためのマスフローコントローラーが備えられていることが好ましい。またガス化剤供給部(5b)は製造装置(100)に対して単数備えられている場合に限られず、複数備えられていてもよい。本発明のDME製造方法では、二酸化炭素および酸素を含み、かつバイオマスの熱化学的分解反応に不活性な気体の濃度が5体積%未満であり、水蒸気含量が5体積%未満である気体がガス化剤として使用される。本発明のDME製造方法において使用するガス化剤としては、二酸化炭素および酸素のみからなるものが好ましい。二酸化炭素および酸素のみからなるガス化剤を使用する場合、両者の混合気体を単数のガス化剤供給部(5b)を用いてガス化部(1)へ供給してもよいし、それぞれの気体を2つのガス化剤供給部(5b)を用いてガス化部(1)へ供給してもよい。
【0054】
なお、製造装置(100)においては原料供給部(5)が設置されているが、本発明のDME製造装置においては原料供給部(5)は必ずしも設置されていなくてもよい。製造装置に原料供給部が設置されていない場合は、バイオマスおよびガス化剤を人力等でガス化部に仕込めばよい。
【0055】
(6)ジメチルエーテル回収部
ジメチルエーテル回収部(6)は、ジメチルエーテル合成部(4)で合成されたジメチルエーテルを回収するための手段である。ジメチルエーテルは常温では気体であるが、水素(沸点−252.9℃)、一酸化炭素(沸点−191.5℃)、メタン(沸点−161.49℃)、二酸化炭素(−78.5℃)と比較し、沸点が−24.8℃と高いため、冷却することにより、ジメチルエーテルに混在する気体(水素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素)とジメチルエーテルとを容易に分離することができる。
【0056】
製造装置(100)において、ジメチルエーテル回収部(6)はコールドトラップ(6a)、乾式ガスメーター(6b)、ガスバッグ(6c)により構成されている。コールドトラップ(6a)は、ジメチルエーテル合成部(4)から出た気体がコールドトラップ(6a)内に導入されるようにジメチルエーテル合成部(4)と接続されている。コールドトラップ(6a)では、導入された気体に含まれる水蒸気を凝固させることによって除去することができる。
【0057】
他方、乾式ガスメーター(6b)は、コールドトラップ(6a)外に出た気体の量を測定するための手段であり、コールドトラップ(6a)の気体出口以降に接続されている。コールドトラップ(6a)外に出た気体の量を測定する必要がなければ乾式ガスメーター(6b)は製造装置に設置されていなくてもよい。さらに乾式ガスメーター(6b)から出たジメチルエーテルはガスバッグ(6c)で回収される。ガスバック(6c)は気体を回収可能な部材である。
【0058】
なお、DME製造装置(100)においてジメチルエーテル回収部(6)が設置されているが、本発明のDME製造装置においてはジメチルエーテル回収部(6)が必ずしも設置されていなくてもよい。またコールドトラップ(6a)および乾式ガスメーター(6b)はジメチルエーテル回収部(6)に備えられていなくてもよい。
【0059】
(7)その他の構成
本発明のDME製造方法は、大気圧を超える加圧条件下、および高温条件下で行われる。よって、本発明のDME製造装置の各部を接続するための部材(例えば管)は加圧条件および高温条件下に耐え得るもので構成されている必要がある。なお、DME製造装置(100)には、装置内部の気圧(内圧)を調整するための背圧レギュレーター(7)が設置されている。この背圧レギュレーター(7)によれば、ジメチルエーテル製造時の圧力を所望の条件に設定することができるとともに、過剰な内圧が装置にかかることによる装置の爆発を防止することができる。DME製造装置(100)においては背圧レギュレーター(7)がジメチルエーテル合成部(4)とコールドトラップ(6a)との間に接続されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、原料供給部(5)とガス化部(1)との間、ガス化部(1)とガス精製部A(2)との間、ガス精製部A(2)とガス精製部B(3)との間、または、ガス精製部B(3)とジメチルエーテル合成部(4)との間に設置されていてもよい。また背圧レギュレーター(7)は単数である必要はなく、複数設置されていてもよい。
【0060】
(8)その他のDME製造装置−1
本発明のDME製造装置のその他の実施形態に係るDME製造装置(200)の模式図を図2に示す。DME製造装置(200)は、ガス精製部B(3)で回収された二酸化炭素をガス化剤として利用し得るようになっている点において上述のDME製造装置(100)と異なっている。それ以外の構成についてはDME製造装置(100)と同様である。かかる構成によって原料利用率をさらに高めることができる。なお、DME製造装置(100)と共通する部材についてはDME製造装置(100)の説明を援用する。
【0061】
本発明のDME製造装置の一実施形態においては、ガス精製剤B(3)に吸着した二酸化炭素が上記ガス化部(1)に導入可能になっていればよい。DME製造装置(200)においては、上記ガス精製剤B(3)に吸着した二酸化炭素が最終的にガス化部(1)の炉(1a)に導入されるように、ガス精製部B(3)とガス化剤供給部(5b)とが接続されている。ただし、本発明のDME製造装置においては、ガス精製部B(3)とガス化部(1)の炉(1a)とが直接接続されている態様であってもよい。
【0062】
ガス精製剤B(3)に吸着した二酸化炭素を回収する方法は、ガス精製剤Bとして用いられる物質によって異なる。よって、ガス精製剤Bとして用いられる物質に応じた手段が適宜採用される。例えば、ガス精製剤Bとして水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムを用いた場合は、二酸化炭素は炭酸カルシウムとなっている(化学式(8)、(9)を参照)。この炭酸カルシウムを、大気圧条件下で900℃程度に加熱することによって、酸化カルシウムと二酸化炭素と生成させる(反応式(11)を参照)。炭酸カルシウムを熱分解する熱源は、ガス化部等から供給され得る。
CaCO→CaO+CO・・・(11)
上記反応で得られた二酸化炭素は圧縮機(8)によって加圧された後、ガス化剤供給部(5b)を介して(または介さずに)ガス化部(1)へ導入される。また上記反応で得られた酸化カルシウムはガス精製部Bにおいて再利用されてもよい。
【0063】
なお、上記反応式(11)の反応は加圧条件下で行われてもよいが、この場合900℃以上に加熱する必要がある。よって、大気圧条件下で反応式(11)が行われることが好ましい。
(9)その他のDME製造装置−2
本発明のDME製造装置のその他の実施形態に係るDME製造装置(300)の模式図を図3に示す。DME製造装置(300)は、ジメチルエーテル回収部(6)で回収されたジメチルエーテルに混在する気体(水素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素)を、ジメチルエーテル合成用の原料またはガス化剤として利用し得るようになっている点において上述のDME製造装置(100)と異なっている。それ以外の構成についてはDME製造装置(100)と同様である。かかる構成によって原料利用率をさらに高めることができる。なお、DME製造装置(100)と共通する部材についてはDME製造装置(100)の説明を援用する。
【0064】
本発明のDME製造装置の一実施形態においては、ジメチルエーテル回収部(6)でジメチルエーテルと分離された気体(水素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素)が上記ガス化部(1)に導入可能になっていればよい。DME製造装置(300)においては、ジメチルエーテルと分離された気体(水素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素)が最終的にガス化部の炉(1a)に導入されるように、ジメチルエーテル回収部(6)のガスバッグとガス化剤供給部(5b)とが接続されている。なお、ジメチルエーテルと分離された気体は大気圧に減圧されているため、当該気体をガス化部(1)へ戻す際には圧縮機(8)で加圧する必要がある。
【0065】
(10)その他のDME製造装置−3
本発明のDME製造装置のその他の実施形態に係るDME製造装置(400)の模式図を図4に示す。DME製造装置(400)は、ガス精製部B(3)で回収された二酸化炭素をガス化剤として利用し得るようになっており、かつジメチルエーテル回収部(6)でジメチルエーテルと分離された気体(水素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素)を、ジメチルエーテル合成用の原料またはガス化剤として利用し得るようになっている点において上述のDME製造装置(100)と異なっている。つまりDME製造装置(400)はDME製造装置(200)とDME製造装置(300)とを組み合わせた構成となっている。よって、DME製造装置(400)における部材の説明は、DME製造装置(100)、DME製造装置(200)、DME製造装置(300)の説明を援用できる。かかる構成によって原料利用率をさらに高めることができる。
【0066】
このとき二酸化炭素およびジメチルエーテルと分離された気体は大気圧に減圧されているため、これらをガス化部(1)へ戻す際には圧縮機(8)で加圧する必要がある。二酸化炭素を加圧するための圧縮機(8)と、ジメチルエーテルと分離された気体を加圧するため圧縮機(8)とがDME製造装置(400)にそれぞれ設けられていてもよいが、単数の圧縮機(8)で二酸化炭素およびジメチルエーテルと分離された気体をそれぞれ加圧するようにDME製造装置(400)は構成されていてもよい。
【0067】
<2.本発明のジメチルエーテルの製造方法>
本発明のDME製造方法の一実施形態を上記本発明のDME製造装置を用いて説明する。ただし、本発明のDME製造方法は、本発明のDME製造装置を用いた場合に限定されるものではない。なお、本発明のDME製造方法の説明において、上記DME製造装置の説明を適宜援用することができる。
【0068】
本発明のDME製造方法は、
(i)二酸化炭素および酸素を含み、かつバイオマスの熱化学的分解反応に不活性な気体の濃度が5体積%未満であり、水蒸気含量が5体積%未満であるガス化剤と、バイオマスとを加熱しつつ反応させて、水素および一酸化炭素を含む合成ガスを生成させるガス化工程と、
(ii)前記ガス化工程によって生成した合成ガスに含まれるタール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上を除去するガス精製工程Aと、
(iii)前記ガス精製工程Aによって処理された合成ガスに含まれる二酸化炭素および水蒸気を除去するガス精製工程Bと、
(iV)前記ガス精製工程Bによって処理された合成ガスをジメチルエーテル合成触媒上で反応させてジメチルエーテルを合成するジメチルエーテル合成工程とを含み、
上記ガス化工程、ガス精製工程A、ガス精製工程B、およびジメチルエーテル合成工程は大気圧を超える加圧条件下で行われることを特徴としている。
以下に、各工程を説明する。
【0069】
(1)ガス化工程
ガス化工程は、大気圧を超える加圧条件下で、ガス化剤とバイオマスとを加熱しつつ反応させて、水素および一酸化炭素を含む合成ガスを生成させる工程である。本発明のDME製造方法のガス化工程で使用するガス化剤は、二酸化炭素および酸素からなる。ここで「ガス化剤は二酸化炭素および酸素からなる」とはガス化剤全体に対する二酸化炭素および酸素の割合が、90体積%以上(好ましくは95体積%以上)であることを意図する。また既述のごとく、ガス化剤として、空気を用いると、ガス化して生成した合成ガス中に窒素等のジメチルエーテルの合成反応に不活性な気体が存在してしまうため、合成ガス(水素および一酸化炭素)の分圧が低下してしまう。「ジメチルエーテルの合成反応に不活性な気体」とは、既述の反応式(1)〜(4)に示されるジメチルエーテルの合成反応に関与しない気体を意味し、例えば窒素、ならびにアルゴン等の希ガス等を意味する。また、ガス化剤として水蒸気を用いた場合、過剰な水蒸気が反応系中に存在すると、上記反応式(3)の反応が進行してしまい、一酸化炭素の濃度が減少し、結果としてジメチルエーテルの収率が低下してしまう。よって、ガス化剤は、ジメチルエーテルの合成反応に不活性な気体の濃度が5体積%未満であり、水蒸気含量が5体積%未満であることが好ましい。さらに二酸化炭素および酸素のみからなるガス化剤であることが最も好ましい。ガス化剤として二酸化炭素を用いると、以下の反応が進行する。
C+CO2→CO・・・(5)
しかし、この反応は、反応速度が遅く、吸熱反応である。そこで、ガス化剤として酸素を同時に供給することによって、バイオマスのガス化速度を向上させるとともに、バイオマスの酸化反応により、ガス化炉内の温度を維持する。
バイオマス中の炭素と酸素の反応は以下のようになる。
C+O2→CO2・・・(6)
C+0.5O2→CO・・・(7)
本発明のDME製造方法では、ガス化炉内の二酸化炭素の濃度が高いため、反応式(6)の反応が抑制され、反応式(7)の反応が進行しやすくなる。よって、ガス化剤として、二酸化炭素および酸素を用いると、ガス化炉内の温度を維持させた状態で、かつ、ガス化速度が大きいガス化が可能となり、また一酸化炭素の濃度を増加させることができる。
【0070】
ここでガス化工程において、ガス化剤として供給する酸素の量は、供給するバイオマス中の炭素のモル数[C]に対する酸素のモル数[O2]の比[O2]/[C]が0.5以下であることが好ましい。またガス化工程において、ガス化剤として供給する二酸化炭素の量は、供給するバイオマス中の炭素のモル数[C]に対する二酸化炭素のモル数[CO2]の比[CO2]/[C]が0.5以上であることが好ましい。
【0071】
ガス化工程において、上記ガス化剤とバイオマスとを加熱しながら反応させて、水素および一酸化炭素を含む合成ガスを生成させる際の加熱温度(「ガス化温度」)は、バイオマスが熱化学的に分解し、水素および一酸化炭素を含む合成ガスを生成することができる温度であれば、特に限定されるものではない。例えば、ガス化工程の反応雰囲気中の温度が800〜1200℃の範囲の温度となるように加熱することが好ましい。なおガス化工程を実施し得る温度(「ガス化温度」)が高くなると、ガス化率は増加するが、ガス化温度が1000℃以上になると、耐温性の高い材料を用いなければならないため、設備コストが高くなる。そのため、ガス化温度は800〜1000℃がより好ましいといえる。
【0072】
またガス化工程は、タールの発生量を少なくするために大気圧を超える加圧条件下で実施される。また加圧条件下で本ガス化工程を行うことによってガス化工程で生成した合成ガスを圧縮する圧縮工程を省略することができる。上記加圧条件とは、バイオマスのガス化反応の雰囲気内の気圧が、大気圧を超える圧力であれば特に限定されるものではないが、圧力が低すぎるとタールの生成量が多くなり、逆に圧力が高すぎると設備コストが高くなり過ぎる。よって加圧条件は0.2〜5MPa(より好ましくは0.5〜3MPa)の範囲であることが好ましい。
【0073】
ガス化の方式としては、固定床ガス化、流動層式ガス化、噴流床ガス化、等、従来公知の方式が採用され得る。後述する実施例においては、固定床ダウンドラフト型流通式ガス化が採用されている。この固定床ダウンドラフト型流通式ガス化とは、ガス化原料を充填した状態で上から下へ移動させ、これと並行となるようガス化剤を上から下へ流れるように供給し、ガス化する方法である。
【0074】
DME製造装置(100)を用いてガス化工程を実施する場合、バイオマスはバイオマス供給部(5a)(例えばスクリューフィーダー)を用いて、ガス化部(1)へ供給される。またガス化剤供給部(5b)から、二酸化炭素および酸素がガス化部(1)へ供給される。ガス化剤は、マスフローコントローラーにより流量を調整されることが好ましい。この時、ガス化部(1)内の圧力は加圧条件(0.2〜5MPa)となっている。なお本発明のDME製造方法においては、バイオマス供給部(5a)およびガス化剤供給部(5b)による原料をガス化部に供給する工程は含まれていなくてもよい。
【0075】
なお、バイオマス、およびガス化剤の供給量および供給速度は、バイオマスの種類、状態、ガス化剤の組成、ガス化反応条件によって変動し得るため、適宜検討のうえ、好適な条件が採用され得る。
【0076】
ガス化部(1)へ導入されたバイオマスおよびガス化剤は、加熱手段(1b)によって炉(1a)内の温度が所定の温度(800〜1200℃)に加熱される。バイオマスおよびガス化剤の反応によって生成した合成ガス(水素および一酸化炭素を含む)は、アルミナボール(1d)、目皿(1c)を経由してガス精製部A(2)へ導入される。
【0077】
(2)ガス精製工程A
ガス精製工程Aは、上記ガス化工程によって生成した合成ガスに含まれるタール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上を除去する工程である。かかるガス精製工程Aは、上記ガス化工程によって生成した合成ガスに含まれるタール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上を除去することができる方法であれば特に限定されるものではなく、水などを用いてタールを除去する湿式法であっても、水などを用いない乾式法であってもよい。ただし、上記湿式法では廃水処理が必要であり、またガス化によって得られたガス(一酸化炭素および水素)が100℃以下になってしまい、ジメチルエーテルを合成するために再加熱しなければならないというデメリットがある。よって、活性炭等を用いた乾式法がより好ましいといえる。なお、本発明のDME製造方法は、大気圧を越える加圧条件下でガス化工程を行っているため、タールの生成量が低く、ガス精製工程Aにおいて乾式法を採用しても十分にタール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上を除去することができる。
【0078】
本ガス精製工程Aは、例えばDME製造装置(100)のガス精製部A(2)を用いて実施され得る。ガス精製部A(2)は、既述のとおり、上記ガス化部(1)から生成した合成ガスに含まれるタール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上を除去するための手段であり、タール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上を吸着し得るガス精製剤Aが充填されている。ガス精製部A(2)と上記ガス化部(1)とは、ガス化部(1)において生成した合成ガスをガス精製部A(2)の内部に導入することが可能なように接続されている。かかるガス精製部A(2)内を上記ガス化工程で生成した合成ガスが通過することによって、合成ガスに含まれるタール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上が除去される。
【0079】
上記ガス精製剤Aとしては、既述のとおり、タール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上を吸着し得る物質であれば特に限定されるものではない。ガス精製剤Aとしては、例えば活性炭、チャー、コークス、活性コークス、石炭、木炭、グラファイト(石墨)、黒鉛、フラーレン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。タール、硫黄酸化物、および窒素化合物を高効率で除去することができ、かつ安価であるため、活性炭が特に好ましい。活性炭としては、比表面積が250m2/g以上(好ましくは500m2/g以上)のもの、および/または平均細孔径が0.1nm以上(好ましくは0.5nm以上)のものが好ましい。なお、後述する実施例において使用された活性炭は、比表面積が1,120m2/gであり、平均細孔径が1.7nmであった。また、バイオマスをガス化した際に生じるチャーも使用可能である。なお硫黄化合物の除去には、鉄(Fe)を担持させた活性炭またはチャーがガス精製剤Aとして好適に用いられる。鉄(Fe)以外にも、元素周期表1A(1族)族、1B(11族)族、2A(2族)族、2B(12族)族、6A(6族)族、および8(8〜10族)の元素を活性炭またはチャーに担持させたものが、硫黄化合物の除去に好適である。ガス精製剤Aは、単独の物質であっても複数の物質の混合物であってもよい。
【0080】
なお、本発明のDME製造方法では、ガス精製工程Aを、大気圧を超える加圧条件下で行う。加圧条件下で本ガス精製工程Aを行うことによって合成ガスを圧縮する圧縮工程を省略することができる。上記加圧条件とは、ガス精製工程Aが行われる雰囲気内の気圧が、大気圧を超える圧力であれば特に限定されるものではないが、圧力が低すぎるとタールの生成量が多くなり、逆に圧力が高すぎると設備コストが高くなり過ぎる。よって加圧条件は0.2〜5MPa(より好ましくは0.5〜3MPa)の範囲であることが好ましい。
【0081】
ガス精製工程Aが実施される際には、上記ガス化工程を経た高温の合成ガスの熱が欠損することなく、できるだけ高温の状態を保ったままガス精製部A(2)に導入されることが好ましい。その後の工程において再度合成ガスを加熱する再加熱工程を省略することができるからである。ガス化工程を例えば800〜1200℃(好ましくは800〜1000℃)の範囲のガス化温度で実施した場合、150〜900℃(好ましくは200〜400℃)の範囲の温度条件で、ガス精製工程Aが実施されることが好ましい。
【0082】
(3)ガス精製工程B
ガス精製工程Bは、上記ガス精製工程Aによって処理された合成ガスに含まれる二酸化炭素および水蒸気を除去する工程である。この工程は、ジメチルエーテルの合成反応系中に水蒸気が存在すると、一酸化炭素が減少してしまうこと(反応式(3)を参照のこと)、およびジメチルエーテルの合成反応系中に二酸化炭素が存在すると、ジメチルエーテルの合成反応が抑制されてしまうこと(反応式(4)を参照のこと)を防止するための工程である。かかるガス精製工程Bは本発明者らの独自の発想によるものであり、従来のバイオマスを原料とするジメチルエーテルの製造方法において採用された例はない。
【0083】
ガス精製工程Bは、ガス精製工程Aによって処理された合成ガスに含まれる二酸化炭素および水蒸気を除去する方法であれば、その具体的方法は特に限定されるものではない。例えば、本ガス精製工程Aは、例えばDME製造装置(100)のガス精製部B(3)を用いて実施され得る。ガス精製部B(3)は、上記ガス精製部A(2)を経由した合成ガスに含まれる二酸化炭素および/または水蒸気を除去するための手段であり、二酸化炭素および/または水蒸気を吸着し得るガス精製剤Bが充填されている。またガス精製部B(3)と上記ガス精製部A(2)とは上記ガス精製部A(2)を経由した合成ガスをガス精製部B(3)の内部に導入することが可能なように接続されている。かかるガス精製部B(3)内を上記ガス精製工程Aによって処理された合成ガスが通過することによって、合成ガスに含まれる二酸化炭素および水蒸気が除去される。
【0084】
ガス精製剤Bは、二酸化炭素および水蒸気を吸着し得る物質であれば特に限定されるものではない。ガス精製剤Bは、二酸化炭素と水蒸気とを吸着し得る単一物質で構成されていても、また二酸化炭素を吸着する物質と水蒸気を吸着し得る物質とを組み合わせて構成されていてもよい。なお上記「吸着する」とは物理的な吸着のみならず、「化学的に反応して二酸化炭素および/または水蒸気(水)を分子内に取り込む場合をも意味する。例えば、酸化カルシウム単独、水酸化カルシウムと酸化カルシウムとの組み合わせがガス精製剤Bとして挙げられる。また上記水酸化カルシウム、酸化カルシウムの「カルシウム」を元素周期表2A族のその他の元素と置き換えた化合物(例えば、酸化マグネシウム単独、水酸化マグネシウムと酸化マグネシウムとの組み合わせ)もガス精製剤Bとして利用可能である。後述する実施例においてはガス精製剤Bとして、水酸化カルシウムと酸化カルシウムとが用いられた。この場合、ガス精製部B(3)は水酸化カルシウムが単独で充填された部材と酸化カルシウムが単独で充填されてなる部材とを組み合わせて構成されても、また水酸化カルシウムと酸化カルシウムとの混合物が充填されてなる部材によって構成されていてもよい。
【0085】
水酸化カルシウムと酸化カルシウムとを組み合わせて二酸化炭素および水蒸気を除去する場合、下記の反応が起こる。
CO2+CaO→CaCO3・・・(8)
CO2+Ca(OH)2→CaCO3+H2O・・・(9)
2O+CaO→Ca(OH)2・・・(10)
ガス精製部B(3)では、上記の反応が複雑に進行し、二酸化炭素および水蒸気が除去される。これにより、水素および一酸化炭素の分圧が増加した合成ガスを得ることが可能となる。
【0086】
なお、水酸化カルシウムと二酸化炭素とが反応する際に水が生成する。よって、ガス精製部B(3)が、水酸化カルシウムが単独で充填された部材と酸化カルシウムが単独で充填されてなる部材とを組み合わせて構成されている場合、ガス精製工程Bの最後に酸化カルシウムが単独で充填されてなる部材を合成ガスが通過するように、水酸化カルシウムが単独で充填された部材と酸化カルシウムが単独で充填されてなる部材とを組み合わせて使用することが水蒸気除去の観点から好ましい。
【0087】
上記反応式(8)および(10)によれば、酸化カルシウムは二酸化炭素および水と反応することができるために、これ単独でガス精製剤Bとして利用すればよい。酸化カルシウムと水酸化カルシウムとを組み合わせてガス精製剤Bとして使用した場合、酸化カルシウムは水酸化カルシウムに対して同量以上用いられることが好ましい。水酸化カルシウムと二酸化炭素が反応する際に水が生成するからである。
【0088】
上記の他、ガス精製剤Bとしては酸化鉄(FeO、Fe、Fe)、水酸化鉄(Fe(OH)、Fe(OH))が利用可能である。
【0089】
なお、本発明のDME製造方法では、ガス精製工程Bを、大気圧を超える加圧条件下で行う。加圧条件下で本ガス精製工程Bを行うことによって合成ガスを圧縮する圧縮工程を省略することができる。上記加圧条件とは、ガス精製工程Bが行われる雰囲気内の気圧が、大気圧を超える圧力であれば特に限定されるものではないが、圧力が低すぎるとタールの生成量が多くなり、逆に圧力が高すぎると設備コストが高くなり過ぎる。よって加圧条件は0.2〜5MPa(より好ましくは0.5〜3MPa)の範囲であることが好ましい。
【0090】
ガス精製工程Bが実施される際には、上記ガス化工程およびガス精製工程Aを経た高温の合成ガスの熱が欠損することなく、できるだけ高温の状態を保ったままガス精製部B(3)に導入されることが好ましい。その後の工程において再度合成ガスを加熱する再加熱工程を省略することができるからである。ガス化工程を例えば800〜1200℃(好ましくは800〜1000℃)の範囲のガス化温度で実施した場合、150〜600℃(好ましくは200〜400℃)の範囲の温度条件で、ガス精製工程Bが実施されることが好ましい。
【0091】
なお、原料利用率をさらに高めるべく、ガス精製工程Bで回収された二酸化炭素をガス化剤として利用してもよい。
【0092】
(4)ジメチルエーテル合成工程
ジメチルエーテル合成工程は、上記ガス精製工程Bによって得られた合成ガスをジメチルエーテル合成触媒上で反応させてジメチルエーテルを合成する工程である。ジメチルエーテル合成工程は、ガス精製工程Bによって得られた合成ガスをジメチルエーテル合成触媒上で反応させてジメチルエーテルを合成し得る方法であれば、その具体的方法は特に限定されるものではない。例えば、本ジメチルエーテル合成工程は、例えばDME製造装置(100)のジメチルエーテル合成部(4)を用いて実施され得る。
【0093】
ジメチルエーテル合成部(4)は、前記ガス精製部B(3)を経由した合成ガスをジメチルエーテル合成触媒の触媒作用によってジメチルエーテルを合成するための部材であり、その内部にジメチルエーテル合成触媒が充填されている。またジメチルエーテル合成部(4)と上記ガス精製部B(3)とは上記ガス精製部B(3)を経由した合成ガスをジメチルエーテル合成部(4)の内部に導入することが可能なように接続されている。
【0094】
ジメチルエーテル合成触媒としては、水素および一酸化炭素を含む合成ガスからジメチルエーテルを合成する反応を触媒し得る物質であれば特に限定されるものではない。例えば、γ−アルミナ担持Cu触媒(「Cu/γ−アルミナ触媒」)、γ−アルミナ担持Cu−Zn触媒(「Cu−Zn/γ−アルミナ触媒」)、γ−アルミナ担持Cu−Pd触媒(「Cu−Pd/γ−アルミナ触媒」)、γ−アルミナ担持Cr−Zn触媒(「Cr−Zn/γ−アルミナ触媒」)、γ−アルミナ担持Cu/ZnO触媒(「Cu/ZnO/γ−アルミナ触媒」)、γ−アルミナ担持Cu/Cr23/ZnO(「Cu/Cr23/ZnO/γ−アルミナ触媒」)などが好ましく用いられる。なお上記ジメチルエーテル合成触媒の担体はγ−アルミナの代わりにゼオライトが用いられてもよい。上記ジメチルエーテル合成触媒は、従来のγ−アルミナ粉末を用いた含浸法や沈殿法などにより調製され得る。また、これらのジメチルエーテル合成触媒をゾル・ゲル法(特開2003−334445号公報を参照のこと)により調製して、活性成分の分散性を高めることにより触媒特性を更に向上させることもできる。上記ジメチルエーテル合成触媒を用いてジメチルエーテル合成を効果的に行うにはアルミナを70質量%以上含むのが好ましい。Cu−Zn/γ−アルミナ触媒、Cu−Pd/γ−アルミナ触媒、Cr−Zn/γ−アルミナ触媒、Cu/ZnO/γ−アルミナ触媒では、ZnとCuとのモル比、PdとCuとのモル比、ZnとCrとのモル比、CuとZnOとのモル比は、それぞれ1/1〜1/10の範囲であるのが好ましい。また、Cu/Cr23/ZnO/γ−アルミナ触媒の場合、Cu:Cr23、:ZnOのモル比は、55〜75:5〜20:15〜40であることが好ましい。なお、上記例示したジメチルエーテル合成触媒は、適宜混合して使用してもよい。
【0095】
なお、本発明のDME製造方法ではジメチルエーテル合成工程を、大気圧を超える加圧条件下で行う。加圧条件下で本ジメチルエーテル合成工程を行うことによって、ジメチルエーテルの合成反応を促進し、ジメチルエーテルを高収率で合成することができる。上記加圧条件とは、ジメチルエーテル合成反応の雰囲気系内の気圧が、大気圧を超える圧力であれば特に限定されるものではないが、圧力が低すぎるとタールの生成量が多くなり、逆に圧力が高すぎると設備コストが高くなり過ぎる。よって加圧条件は0.2〜5MPa(より好ましくは0.5〜3MPa)の範囲であることが好ましい。
【0096】
ジメチルエーテル合成工程が実施される際には、上記ガス化工程、ガス精製工程A、およびガス精製工程Bを経た高温の合成ガスの熱が欠損することなく、できるだけ高温の状態を保ったままジメチルエーテル合成部(4)に導入されることが好ましい。ジメチルエーテル合成反応系を加熱する工程を省略することができるからである。例えば、ガス化工程を800〜1200℃(好ましくは800〜1000℃)の範囲のガス化温度で実施した場合、150〜600℃(好ましくは150〜400℃、さらに好ましくは200〜300℃)の範囲の温度条件で、ジメチルエーテル合成工程が実施されることが好ましい。
【0097】
(5)ジメチルエーテル回収工程
本発明のDME製造方法においては、上記工程の他に、ジメチルエーテル合成工程によって得られたジメチルエーテルを回収するジメチルエーテル回収工程が含まれていてもよい。ジメチルエーテル合成工程を経たジメチルエーテルには、水素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素等が混在している。ジメチルエーテル回収工程は、ジメチルエーテルに混在する気体からジメチルエーテルを分離し回収するための工程である。ジメチルエーテルは常温では気体であるが、水素(沸点−252.9℃)、一酸化炭素(沸点−191.5℃)、メタン(沸点−161.49℃)、二酸化炭素(−78.5℃)と比較し、沸点が−24.8℃と高いため、冷却することにより、ジメチルエーテルに混在する気体(水素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素)とジメチルエーテルとを容易に分離することができる。ジメチルエーテル回収工程では上記の原理を利用してジメチルエーテルを回収し得る工程であれば特に限定されえるものではない。例えば、本ジメチルエーテル回収工程は、例えばDME製造装置(100)のジメチルエーテル回収部(6)を用いて実施され得る。
【0098】
製造装置(100)において、ジメチルエーテル回収部(6)はコールドトラップ(6a)、乾式ガスメーター(6b)、ガスバッグ(6c)により構成されている。コールドトラップ(6a)は、ジメチルエーテル合成部(4)から出た気体がコールドトラップ(6a)内に導入されるようにジメチルエーテル合成部(4)と接続されている。コールドトラップ(6a)では、導入された気体に含まれる水蒸気を凝固させることによって除去することができる。
【0099】
他方、乾式ガスメーター(6b)は、コールドトラップ(6a)外に出た気体の量を測定するための手段であり、コールドトラップ(6a)の気体出口以降に接続されている。コールドトラップ(6a)外に出た気体の量を測定する必要がなければ乾式ガスメーター(6b)は製造装置に設置されていなくてもよい。さらに乾式ガスメーター(6b)から出たジメチルエーテルはガスバッグ(6c)で回収される。ガスバック(6c)は気体を回収可能な部材である。
【0100】
なお、DME製造装置(100)においてジメチルエーテル回収部(6)が設置されているが、本発明のDME製造装置においてはジメチルエーテル回収部(6)が必ずしも設置されていなくてもよい。またコールドトラップ(6a)および乾式ガスメーター(6b)はジメチルエーテル回収部(6)に備えられていなくてもよい。
【0101】
なお原料利用率をさらに高めるべく、ジメチルエーテル回収工程において、ジメチルエーテルと分離された気体(水素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素)を、ジメチルエーテル合成用の原料またはガス化剤として利用してもよい。
【0102】
(6)その他
本発明のDME製造方法は、ガス化工程時のタール等の生成を抑制するとともに、ジメチルエーテル合成工程時における合成ガスの圧縮工程を省き、かつジメチルエーテルの合成反応を促進するために、上記のごとくガス化工程からジメチルエーテル合成工程までの工程を加圧条件下で行っている。よって、ガス化工程からジメチルエーテル合成工程までの工程は、各工程間の移行時においても加圧条件下で行われる必要がある。また上記工程を行う装置内の圧力を制御するとともに、過剰な内圧が装置にかかることによる装置の爆発を防止するために、背圧レギュレーター等の圧力調整を行い得る部材を用いて装置内の圧力を制御することが好ましい。
【実施例】
【0103】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【0104】
(方法および装置)
以下に示す実施例、参考例および比較例は、特記しない限り下記のようにして行われた。実験装置としては、図1に示すDME製造装置(100)が用いられた。バイオマス試料はスクリューフィーダー(バイオマス供給部(5a))により、ガス化部(1)に導入された。バイオマス試料の導入量は、スクリューの回転速度を変化させることにより調整した。実施例および比較例において、バイオマス試料の導入速度は0.16g/分(=6×10-3 炭素−モル/分)とした。
【0105】
加圧条件下で実験を行う場合、装置内の圧力は背圧レギュレーター(KBPシリーズ、Swagelok社製)を用いて調整された。ガス化剤の流量は、マスコントローラー(GAS CONTROL UNIT、HONMA RIKEN社製)により調整された。
【0106】
ガス化部1は電気炉を用い、温度調整は温度コントローラ(SHIMADEN社製 SR51、または、理化工業株式会社製REX-C100 RKC(900℃の場合))を用いて行った。常圧でガス化工程を行う場合は、ガス化剤として空気、二酸化炭素および酸素を用いた。ガス化温度は900℃で行った。
【0107】
ガス精製工程Aは市販の活性炭を用いた。活性炭はAC−3(比表面積1,120m2/g、平均細孔径1.7nm)を用い、400℃でガス精製工程Aが行われた。
【0108】
ジメチルエーテル合成工程は、メタノール合成用触媒としてCu/Zn系(CU-0891T1/8”、Engelhard社製)を用い、脱水用触媒としてγ−Al23(JRC-AL0-2、入手先:Catalysis Society of Japan (触媒学会))を用いて実施された。この2つの触媒をCu/Zn:γ−Al23 =2:1の重量配分で物理的に混合した。混合したものを、加圧プレスした後、粒径0.5〜2mmに粉砕した。このようにして調製されたジメチルエーテル合成触媒10gを実験に使用した。上記触媒は還元することにより再利用することができる。還元には、N2/H2=1の混合ガスを用いた。混合ガスの流量:250ml/分、還元温度:250℃、還元時間:2時間で還元が行われた。還元終了後、N2を流したまま200℃程度まで触媒を冷却し、その後、0.9MPaまで昇圧した。
【0109】
ジメチルエーテル合成工程後のガスは、コールドトラップで水分を除去した後、乾式ガスメーター(シナガワ社製DC-1)を通過させ、ガスバック(テドラー(登録商標)バッグ)で収集された。
【0110】
得られたガスの分析は、ガスクロマトグラフィーを用いて分析を行われた。使用したガスクロマトグラフは、GC-TCD(3000A Micro GC, Agilent カラム:Molecular sieve 5A, GL Sciences, Porapak U, Waters )、GC-TCD(GC 323 ,GL Sciences カラム:Molecular sieve 5A, GL Sciences, Porapak Q, Waters )、GC-FID(353B,GL Sciences,カラム:RT-QPLOT,RESTEK)、GC-FPD(6890N,Agilent, カラム:HP-PLOTQ, Agilent )である。ガスクロマトグラフィーは添付のマニュアルに準じて行われた。なお、TCDは「Thermal Conductivity Detector, 熱伝導度型検出器」を意味し、FIDは「Flame Ionization Detector, 水素炎イオン化型検出器」を意味し、FPDは「Flame Photometric Detector、炎光光度検出器」を意味する。
【0111】
〔比較例1〕
バイオマスは粒径0.5〜2mmに粉砕した米松(別名:レッドファー、ピゥゼットサウンドパイン、ダグラスツリー、モンタナファー)を用い、0.16g/分でバイオマス供給手段(1)(スクリューフィーダー)によってガス化部(1)内に供給した。ガス化剤として空気を用い、20ml/分でガス化部(1)内へ供給した。ガス化部(1)の炉(1a)内の温度を800℃にセットしてガス化工程を行った。ガス精製工程Aは活性炭を用いて行われた。この時の合成ガスの温度は400℃であった。上記工程は大気圧条件下で行われた。
【0112】
常圧ガス化を行い、供給した試料中の炭素が残渣(チャー)中、または合成ガス中にどれくらい分布しているか調べた。また、ガス化工程により生成した合成ガスを収集し、そのガス中の炭素化合物の組成を調べた。
(炭素の分布)
チャー中の炭素:14.5質量%
合成ガス中の炭素:51.6質量モル%
バイオマス中に残存する炭素:33.9質量%
ただし、チャー中の炭素は、チャー中の灰分が15質量%であるとして算出した。
(収集した合成ガス中の炭素化合物の組成)
CO:30.17体積%
CO2:12.89体積%
CH4:7.75体積%
24:2.49体積%
26:0.52体積%
36:0.40体積%
3H8:0.03体積%
〔参考例1〕
1MPaの加圧条件下で各工程を行う以外は、参考例1と同様にした。供給した試料中の炭素が残渣(チャー)中、ガス中にどれくらい分布しているか調べた。また、ガス化により生成したガスを収集し、そのガス中の炭素化合物の組成を調べた。
(炭素の分布)
チャー中の炭素:21.6質量%
合成ガス中の炭素:62.0質量%
バイオマス中に残存する炭素:16.4質量%
(収集した合成ガス中の炭素化合物の組成)
CO:12.91体積%
CO2:16.78体積%
CH4:6.18体積%
24:0.09体積%
26:0.28体積%
36:N.D.
38:N.D.
ここで、N.D.は検出限界以下であったことを示している。
【0113】
比較例1および参考例1の結果から、バイオマス試料中の炭素は、常圧ガス化を行った場合よりも、加圧ガス化を行った場合のほうが、チャー中およびガス中に分布していることがわかった。また、常圧ガス化を行った場合ではDME製造装置(100)内にタールが生成していたが、加圧ガス化を行った場合ではタールは生成していなかった。さらに、収集した合成ガス中の炭素化合物の組成の結果から、加圧ガス化を行った方が、常圧ガス化を行った場合よりも炭素数の小さい炭化水素が生成しており、加圧ガス化の方が常圧ガス化よりもクリーンな合成ガスが生成し得るということが確認された。
【0114】
〔比較例2〕
バイオマスは粒径0.5〜2mmに粉砕した米松を用い、0.16g/分でバイオマス供給手段(1)(スクリューフィーダー)によってガス化部(1)内に供給した。ガス化剤として空気を用い、50ml/分でガス化部(1)内へ供給した。ガス化部(1)の炉(1a)内の温度を900℃にセットしてガス化工程を行った。ガス精製工程Aは活性炭を用いて行われた。この時の合成ガスの温度は400℃であった。ジメチルエーテル合成工程は既述のジメチルエーテル合成用触媒を用いて行われ、ジメチルエーテル合成工程が行われる雰囲気温度(ジメチルエーテル合成温度)は250℃であった。
【0115】
ガス化により生成した合成ガスを収集し、その合成ガス組成を、ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果を下記に示す。またバイオマスからジメチルエーテル転換率を下記に示す。ここで、ジメチルエーテルへの転換率は、ジメチルエーテル合成に用いた試料中の炭素のモル数に対する、生成されたジメチルエーテル中の炭素のモル数の割合である(以下同じ)。
(合成ガス組成)
2:26.0体積%
CO:23.9体積%
CO2:20.1体積%
CH4:11.3体積%
2:18.7体積%
(ジメチルエーテルへの転換率)
0.42%
〔参考例2〕
ガス化剤として二酸化炭素および酸素からなるガス化剤(CO2:O2=75体積%:25体積%)を用いた以外は比較例2と同様にした。
【0116】
ガス化により生成した合成ガスを収集し、その合成ガス組成を、ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果を下記に示す。またバイオマスからジメチルエーテル転換率を下記に示す。
(合成ガス組成)
2:34.7体積%
CO:31.8体積%
CO2:28.2体積%
CH4:4.5体積%
2:0.4体積%
(ジメチルエーテルへの転換率)
1.97%
〔実施例1〕
水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムを1:1のモル比で混合したガス精製剤Bを、ガス精製部B(3)に充填し、ガス精製工程Bを実施した以外は、参考例2と同様にした。なお、ガス精製工程Bを行った際の雰囲気温度は250℃であった。
【0117】
ガス精製工程B後の合成ガスを収集し、その合成ガス組成を、ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果を下記に示す。またバイオマスからジメチルエーテル転換率を下記に示す。
(合成ガス組成)
2:34.7体積%
CO:46.4体積%
CO2:0.8体積%
CH4:15.4体積%
2:2.5体積%
(ジメチルエーテルへの転換率)
7.11%
比較例2および参考例2の結果から、ガス化剤を二酸化炭素および酸素からなるガス化剤を使用することにより、ジメチルエーテル転換率が向上した。これは、ガス化によって得られた合成ガス中の窒素濃度が減少し、水素および一酸化炭素濃度が増加したためであると考える。
【0118】
参考例2および実施例1の結果から、合成ガス中の二酸化炭素および水蒸気を除去することにより、ジメチルエーテル転換率が顕著に向上することが分かった。これは、合成ガス中の二酸化炭素の濃度を減少させることにより、水素および一酸化炭素の濃度が増加しため、および水蒸気を除去したためであると考える。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、バイオマスを熱化学的にガス化し、合成ガスである水素および一酸化炭素を生成し、これらからジメチルエーテルを合成する方法に関するものであり、カーボンニュートラルであるバイオマスの利用の幅を広げるものであり、大規模な設備だけではなく、小規模な設備においても利用可能であるため、この利用技術は広範囲におよぶ。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明のDME製造装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明のDME製造装置のその他の実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明のDME製造装置のその他の実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明のDME製造装置のその他の実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0121】
1 ガス化部
1a 炉
1b 加熱手段
2 ガス精製部A
3 ガス精製部B
4 ジメチルエーテル合成部
5 原料供給部
5a バイオマス供給部
5b ガス化剤供給部
6 ジメチルエーテル回収部
6a コールドトラップ
6b 乾式ガスメーター
6c ガスバッグ
7 背圧レギュレーター
8 圧縮機
100 DME製造装置
200 DME製造装置
300 DME製造装置
400 DME製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)二酸化炭素および酸素からなるガス化剤と、バイオマスとを加熱しつつ反応させて、水素および一酸化炭素を含む合成ガスを生成させるガス化工程と、
(ii)前記ガス化工程によって生成した合成ガスに含まれるタール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上を除去するガス精製工程Aと、
(iii)前記ガス精製工程Aによって処理された合成ガスに含まれる二酸化炭素および水蒸気を除去するガス精製工程Bと、
(iV)前記ガス精製工程Bによって処理された合成ガスをジメチルエーテル合成触媒上で反応させてジメチルエーテルを合成するジメチルエーテル合成工程とを含み、
上記ガス化工程、ガス精製工程A、ガス精製工程B、およびジメチルエーテル合成工程は大気圧を超える加圧条件下で行われることを特徴とするジメチルエーテルの製造方法。
【請求項2】
上記ガス化剤は、ジメチルエーテルの合成反応に不活性な気体の濃度が5体積%未満であり、かつ水蒸気含量が5体積%未満である、請求項1に記載のジメチルエーテルの製造方法。
【請求項3】
上記ガス化剤は、二酸化炭素および酸素のみからなる、請求項1に記載のジメチルエーテルの製造方法。
【請求項4】
上記精製工程Aは乾式法で行われる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のジメチルエーテルの製造方法。
【請求項5】
上記ガス化工程は、800〜1200℃の範囲の温度条件で行われる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のジメチルエーテルの製造方法。
【請求項6】
上記加圧条件下は、0.2〜5MPaの範囲である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のジメチルエーテルの製造方法。
【請求項7】
(1)大気圧を超える内圧に耐性を有し、バイオマスを熱化学的に分解して水素および一酸化炭素を含む合成ガスを生成させるためのガス化部と、
(2)前記ガス化部から生成した合成ガスが内部に導入可能にガス化部と接続され、当該合成ガスに含まれるタール、硫黄酸化物、および窒素化合物からなる群から選択される1つ以上を吸着し得るガス精製剤Aが充填され、かつ大気圧を超える内圧に耐性を有するガス精製部Aと、
(3)前記ガス精製部Aを経由した合成ガスが内部に導入可能にガス精製部Aと接続され、当該合成ガスに含まれる二酸化炭素および水蒸気を吸着し得るガス精製剤Bが充填され、かつ大気圧を超える内圧に耐性を有するガス精製部Bと、
(4)前記ガス精製部Bを経由した合成ガスが内部に導入可能にガス精製部Bと接続され、ジメチルエーテル合成触媒が充填され、かつ大気圧を超える内圧に耐性を有する、当該合成ガスをジメチルエーテル合成触媒上で反応させてジメチルエーテルを合成するためのジメチルエーテル合成部と、を備えることを特徴とするジメチルエーテルの製造装置。
【請求項8】
上記ガス精製剤Aが活性炭である、請求項7に記載のジメチルエーテルの製造装置。
【請求項9】
上記ガス精製剤Bに吸着した二酸化炭素を上記ガス化部に導入可能となっている、請求項7または8に記載のジメチルエーテルの製造装置。
【請求項10】
上記ジメチルエーテル合成部で合成されたジメチルエーテルに混在する気体を上記ガス化部に導入可能となっている、請求項7ないし9のいずれか1項に記載のジメチルエーテルの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−242248(P2009−242248A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87376(P2008−87376)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年1月15日 社団法人日本エネルギー学会発行の「第3回バイオマス科学会議 発表論文集」に発表
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(509164164)地方独立行政法人山口県産業技術センター (22)
【Fターム(参考)】