説明

ジュール加熱による食品の製造方法

【課題】食品の均一なジュール加熱を可能とする固体食品と液体食品からなる固液混合食品の処理方法、該処理方法とジュール加熱を用いた固液混合食品の製造方法およびその製造方法によって得られる固液混合食品を提供する。
【解決手段】(a1)固体食品を冷凍後、該固体食品を解凍又は解凍せずに液体食品と混合して固液混合食品を得る工程、または(a2)固体食品と液体食品を混合後、これを冷凍して固液混合食品を得る工程、および(b)該固液混合食品をジュール加熱する工程を含む、固液混合食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジュール加熱を用いた固体食品と液体食品からなる固液混合食品の製造方法、特に、ジュール加熱のための固液混合食品の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品のジュール加熱とは、固体及び/又は液体食品に、直接電流を流した時に生じる電気抵抗による発熱(ジュール熱)を利用した、食品の調理及び/又は殺菌もしくは滅菌のための加熱技術である。
【0003】
従来の熱伝導による外部加熱法(例えばレトルト加熱法)は、充分な殺菌効果を得るために一般の調理加熱と比較して過度な加熱を行なうことが多く、その結果、原料素材本来の風味や色調が損なわれ、製品の味も画一的なものとなってしまう傾向があった。一方、ジュール加熱法は、ジュール熱により食品を内部から加熱するので、加熱時間が比較的短く、食品の風味や色調等の加熱劣化が起こりにくいといった優れた加熱方法として知られていた。
【0004】
しかし、固体食品と液体食品からなる固液混合食品においては、固体食品の種類ごとに電気抵抗率が異なり、また同じ固体食品でも構造異方性のために部位ごとに電気抵抗率が異なったり、さらに加熱調理による組織構造の変化等によっても電気抵抗率が変化するので、固液混合食品において均一な電気抵抗率が得られず、それが不均一加熱の原因となっていた。そして、このことが、固液混合食品材料においてジュール加熱法が産業上いまだ実施されない大きな原因のひとつとなっていた(非特許文献1〜4)。
【0005】
上記課題を解決するためにいくつかの特許出願がなされている(特許文献1〜8)。その多くは電解質液で固体食品を前処理(加熱や浸漬)することにより食品の電気抵抗率の均一化を目論むものであったり、固体食品と液体食品の電気抵抗率を調整することで、その後のジュール加熱における均一な加熱を目論むものである。しかし、電解質液中での加熱方法、例えば、特許文献6の生の植物性固状食品を40℃以上に加熱して細胞壁を傷つけ細胞液の流出を図り導電率を上昇させる方法では、電気抵抗率の均一化は十分でなかったり、浸漬方法では、塩漬処理に長時間を要し、また固体食品と液体食品の電気抵抗率を調整する方法では、食材毎に処理する必要があったりなど制約が残り、実用上充分に課題が解決されているとは言えなかった。
【非特許文献1】秋山美展:ジュール加熱技術−その特徴と応用−,ジャパンフードサイエンス,41(6),47−53(2002)
【非特許文献2】植村邦彦:ジュール加熱の基礎理論,ジャパンフードサイエンス,41(6),55−60(2002)
【非特許文献3】杉江紀彦:ジュール加熱装置とその応用,ジャパンフードサイエンス,41(7),83−89(2002)
【非特許文献4】松山良平:ジュール加熱処理システムによる固液混合食品の殺菌,ジャパンフードサイエンス,41(7),95−99(2002)
【特許文献1】特開昭60−27349
【特許文献2】特開昭60−251851
【特許文献3】特表平8−504322
【特許文献4】特開平11−276097
【特許文献5】特開2003−299446
【特許文献6】特公平6−45
【特許文献7】特公平7−34720
【特許文献8】特許3564642号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、固体食品固有の電気伝導率による、固体食品個体差による、固体食品部位ごとの構造不均一性による、または加熱に伴う組織構造の変化等による固体食品の電気抵抗率のバラツキを均一化し、食品の均一なジュール加熱を可能とする固体食品と液体食品からなる固液混合食品の処理方法、該処理方法とジュール加熱を用いた固液混合食品の製造方法およびその製造方法によって得られる固液混合食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、
(a1)固体食品を冷凍後、該固体食品を解凍又は解凍せずに液体食品と混合して固液混合食品を得る工程、または
(a2)固体食品と液体食品を混合後、これを冷凍して固液混合食品を得る工程、
および(b)該固液混合食品をジュール加熱する工程を含む、固液混合食品の製造方法に関する。
(2)本発明は、(1)の(b)工程により、固液混合食品を殺菌又は滅菌する、請求項1に記載の固液混合食品の製造方法に関する。
(3)本発明は、(1)又は(2)に記載の固液混合食品の製造方法によって得られる固液混合食品に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法により、固体食品固有の電気伝導率による、固体食品個体差による、固体食品部位ごとの構造不均一性による、または加熱に伴う組織構造の変化等による固体食品の電気抵抗値のバラツキが解消し、固体食品の電気抵抗値の均一化が可能となるので、食品の均一なジュール加熱が可能となる。従って、本発明の方法により、固体食品と液体食品からなる固液混合食品のジュール加熱による製造、調理、殺菌または滅菌が可能となる。
【0009】
さらに、本発明の方法は、熱伝導による外部加熱法(例えば、レトルト加熱法)のように充分な調理又は殺菌もしくは滅菌効果を得るための過度な加熱を必要とせず、ジュール熱により固体食品の内部全体を直接加熱できるので、加熱時間を短くできる。そのため、過度な加熱により食品原料素材本来の風味や色調等の品質が損なわれ画一的な味となってしまい勝ちな外部加熱法(例えば、レトルト加熱法)に替わって、食品原料素材本来の風味や色調等の品質を保持した、多様性に富んだ味の高品質な食品(加熱殺菌又は加熱滅菌食品)の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において用いる食品とは、食物を意味し、本発明において用いる食品には、調理後の食品だけでなく、調理前の食品材料、調理途中の食品もしくは食品材料も含む。本発明において用いる食品には、ヒトのための食品だけでなく、家畜動物用の飼料またはペットフードのような動物のための食品も含む。
【0011】
本発明において用いる固体食品とは、一定の形状と体積を有する食品を言い、例えば、にんじん、だいこん、馬鈴薯、玉葱、セロリ、キャベツ等の野菜類、苺、林檎等の果実類、大豆、グリンピース、いんげん等の豆類、とうもろこし、麦、米等の穀類、もしくはマッシュルーム、しいたけ等の菌類等、ワカメ、昆布、めかぶ等の海藻類等を含む生の植物性食品またはそれらに加熱、乾燥、細断、成型等の加工を施した植物性食品;牛肉、豚肉、鶏肉等の畜肉類もしくは鮪、鰹、鯵、鯖、蛤、あさり、蜆、さざえ等の魚介肉類を含む生の動物性食品またはこれらに加熱、乾燥、細断、成型等の加工を施した動物性食品;あるいはこれら生の及び/又は加工した植物性食品と動物性食品とを混合した食品;の単独又はそれらの組み合わせが挙げられる。ここで、植物性食品とは植物体そのものもしくは植物体から得られる食品を意味し、動物性食品とは動物体そのものもしくは動物体から得られる食品を意味する。
本発明において用いる固体食品は、ジュール加熱において不均一加熱が一般に生じやすい植物性食品が好ましく。また、ジュール加熱における不均一加熱は一般に固体食品の大きさが小さいほど生じ難いので本発明の有利な効果を得るためには、本発明において用いる固体食品の大きさは3mm以上、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは10mm以上の直径や厚さを有するものが好ましい。よって、一般にはジュール加熱における不均一加熱が生じ難い、ミンチした生の畜肉類やすり身にした生の魚介肉類またはそれらに成型等の加工を施したものは本発明の固体食品に含まれない。
【0012】
本発明において用いる液体食品とは、水を含み流動性を有する食品をいい、例えば、水道水、純水、イオン交換水、ミネラルウォーター等の水、さらに、電解質、調味料、増粘剤を適宜含んでなる水、例えば、食塩水、潮汁、出し汁、又は、水と油脂の混合物もしくは水と油脂の乳化物、例えば、カレーソース、ホワイトソース、ドゥミグラスソース、トマトソース、焼き肉のタレ等のソース類、あるいはコンソメスープ、ポタージュスープ、みそ汁、豚汁等のスープ類が挙げられる。なお、純水それ自体では通電性を有さないが、固体食品のほとんどは通電するのに必要な電解質をもともと含んでいるので、固体食品と混合することで純水も通電性を有することとなる。よって、純水も液体食品に含まれる。
【0013】
ここで電解質とは、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸カリウム、硫酸鉄などが挙げられるが、水中に存在することで水に電気を流すことの出来る物質であればこれらに限定されず、単独または複数で用いてもよい。上述したように固体食品のほとんどには通電するのに必要な電解質をもともと含むので液体食品に電解質を新たに添加しても添加しなくとも良いが、添加する場合の電解質の濃度は、印加した時に電気を流すことの出来る濃度であれば特に限定されない。
【0014】
本発明において用いる固液混合食品とは、上述の固体食品及び液体食品を含む食品のことであり、その形態としては、例えば以下が挙げられる。すなわち、ソース類又はスープ類等の液体食品を主体とし、これに固体食品を含有してなる形態の固液混合食品、あるいは固体食品を主体として、これに水、ソース類又はスープ類等の液体食品を加えてなる形態の固液混合食品等である。前者の具体例としては、カレー、シチュー、ビーフストロガノフ、ボルシチ、ミネストローネ、みそ汁、中華丼ソース、クラムチャウダー等が挙げられる。また、後者の具体例としては、他の食品に利用するための種々の食品具材、牛丼の具材部分、ハンバーグ、筑前煮、肉じゃが、スパゲティー等が挙げられる。なお、雑炊又は粥等、固体食品と液体食品をおおよそ等量含んでなる形態の食品も、本発明における固液混合食品に含まれる。よって、本発明の固液混合食品は、固液混合食品中における固体食品と液体食品との比率が特に限定される必要はないが、液体食品の量は通電するのに必要な最低限の量を含む。また、本発明の固液混合食品には、完成品としての食品だけでなく、別の食品に利用されるための食品具材も含まれる。
【0015】
本発明において用いる冷凍するとは、例えば、食品を氷結点以下の温度に置くことで食品中の水分を凍らせることを意味する。水分の凍結は、食品中の一部であっても良いが、十分な本発明の効果を得るためには食品、特に固体食品中のほとんどの水分を凍らせることが好ましい。なお、固体食品を冷凍するための時間は、冷凍温度、食品の種類、大きさまたは量などにより任意に変化し得ることは当業者においては周知である。また、凍結方法は、固体食品中の水分を凍らせることができれば、急速凍結法、緩慢凍結法など凍結方法には限定されない。
【0016】
なお、冷凍後の固体食品と液体食品を混合して固液混合食品にする場合、冷凍後の固体食品は、冷凍されたままの状態で液体食品と混合しても、完全に解凍された後に混合してもよい。また、冷凍後の固液混合食品をジュール加熱する場合、冷凍後の固液混合食品を冷凍されたままの状態でジュール加熱しても、完全に解凍された後でジュール加熱してもよい。よって、冷凍から次の工程に移る時の固体食品もしくは固液混合食品の状態は特に限定されない。解凍は、固体上、気体中、液体中のいずれで実施してもよく、解凍方法は特に限定されない。さらに解凍の際、解凍を促進するために気体、液体、固体を加温してもよい。また、解凍のための温度は特に限定されない。
【0017】
本発明で用いる固体食品と液体食品を混合するとは、固体食品と液体食品が一緒に存在する状態にすることを意味する。固体食品と液体食品が一緒に存在する状態は、固体食品と液体食品が一部で一緒に存在する状態あっても全体で一緒に存在する状態あっても良いが、本発明の効果を十分に得るためには全体で一緒に存在する状態であることが好ましい。
【0018】
本発明で用いる固体食品と液体食品を混合する方法は、固体食品と液体食品が一緒に存在する状態にする方法であれば特に限定されないが、例えば、両者を単に混ぜ合わせる方法や固体食品を液体食品中に浸漬する方法が挙げられる。ここで、固体食品を液体食品中に浸漬するとは、固体食品を液体食品の中に浸すことを意味する。
【0019】
本発明で用いる固体食品と液体食品との混合比率は特に限定される必要はないが、液体食品の量は通電するためおよび通電中に過度の加熱が生じないようにするために必要最低限の量で存在する必要がある。なお、必要最低限の量は、ジュール加熱を行う通電装置により変化する。また、混合時の温度は食品の品質を損なわない温度であれば特に限定されない。
【0020】
本発明で用いる混合が浸漬である場合、固体食品を液体食品中に浸している時間は、特に限定されない。浸漬時の温度も、食品の品質を損なわない温度であれば特に限定されない。
浸漬を、固体食品と液体食品との単なる混合だけでなく液体食品の固体食品内部への浸透目的に行うのであれば、浸透を促進するために、加熱下で浸漬することが好ましい。また、加圧下で実施しても良い。加熱下での浸漬は、固体食品を加熱した液体食品に浸漬しても、浸漬中に外部から加熱しても良い。
【0021】
固体食品を加熱した液体食品に浸漬したり、浸漬中に外部から加熱する場合、加熱温度は、液体食品が固体食品の内部に浸透するのを促進する温度であればよく、一般に、加熱温度は、30〜100℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは100℃である。しかし、加熱温度は、食品の煮崩れや変色も考慮する必要があるので食品ごとに決定される必要がある。加熱時間は、加熱温度、固体食品の種類、大きさもしくは量、液体食品の種類もしくは量、温度又は加圧等より任意に変化することは当業者にとって周知であり、一定の加熱温度において液体食品が固体食品の内部に浸透する時間であればよく、特に限定されない。
【0022】
浸漬において、固体食品を室温(15〜30℃)以上に加熱した場合、加熱した該固液混合食品を冷凍する場合またはジュール加熱する場合、加熱したままの状態で冷凍してももしくはジュール加熱しても、または室温まで冷却した後に冷凍してももしくはジュール加熱してもよい。よって、加熱した固液混合食品を次の工程に移す時の固液混合食品の温度は特に限定されない。冷却は、固体上、気体中、液体中のいずれで実施してもよく、冷却方法は特に限定されない。さらに冷却処理の際、冷却を促進するために気体、液体、固体を冷却してもよい。冷却のための温度は特に限定されない。
【0023】
なお、本発明で用いる混合が浸漬でなく単に固体食品と液体食品を混ぜ合わせただけの場合であっても、浸漬の場合と同様に液体食品の固体食品内部への浸透は生じ得る。すなわち、冷凍後の固体食品と液体食品を混ぜ合わせた場合には、ジュール加熱中に液体食品は固体食品内部に浸透し、また固体食品と液体食品を混ぜ合わせて冷凍した場合には、冷凍と解凍過程およびその後のジュール加熱中に液体食品は固体食品内部に浸透する。
【0024】
本発明で用いる食品のジュール加熱とは、食品に通電すること、すなわち食品に電気を流すことで生じる電気抵抗による発熱(ジュール熱)を利用して、食品を加熱することを意味し、固液混合食品をジュール加熱するとは、固体食品および液体食品からなる混合食品(固液混合食品)に電気を流すことで加熱することを意味する。
よって、本発明の固液混合食品の製造方法は、上述したように冷凍履歴を有する固体食品を含む固液混合食品にジュール加熱を施すことを特徴とし、固体食品の冷凍処理は、固体食品と液体食品の混合前であっても後であっても良い。なお、冷凍の開始と同時に固体食品と液体食品との混合を開始する操作も、固体食品と液体食品が一緒に存在する状態が固体食品と液体食品の冷凍に先立って生じるので、上記(a2)の固体食品と液体食品を混合後、これを冷凍して固液混合食品を得る工程内に含まれる。ここで、冷凍履歴を有する固体食品とは、過去に冷凍された経験を有する固体食品であることを意味する。なお、本発明におけるジュール加熱によって得られる加熱温度、ジュール加熱の加熱時間は特に限定されない。そのため、本発明のジュール加熱の目的は固液混合食品の単なる加熱であっても、調理目的であっても、殺菌目的であっても、滅菌目的であっても良く、特に限定されない。
【0025】
本発明で用いられる食品のジュール加熱のための通電は、ジュール熱を発生させるものであれば交直流の何れでもよいが、通常は商用周波数の交流が好ましく用いられる。印加電圧および電流値は、食品の導電率および目標温度に応じて定められることは当業者にとっては周知である。ジュール加熱のための装置は、自ら作製しても、市場より入手してもよく、市場より入手可能なジュール加熱のための装置には、加圧チャンバー型ジュール加熱装置((株)フロンテイィアエンジニアリング製)、ジュール式アセプライザー((株)イズミフードマシナリ製)などがあるが、これらに特に限定される必要もない。
【0026】
本発明で用いる固液混合食品をジュール加熱により殺菌するとは、固液混合食品をジュール加熱して、「総合食品辞典第六版」(株式会社 同文書院)に記載された、食品中の菌数を目的に応じて問題のない範囲内にまで減少させることを意味する。
本発明で用いる固液混合食品をジュール加熱により滅菌するとは、固液混合食品をジュール加熱して、「総合食品辞典第六版」(株式会社 同文書院)に記載された、食品、器具などに付着している微生物のすべてを死滅させることを意味する。
【0027】
従来技術の検証
比較例1〜3において、電解質液中での加熱処理(特許文献6および7)が固液混合食品におけるジュール加熱法に及ぼす効果を検証する。
【0028】
比較例1
〔固体食品の種類によるバラツキの検証〕
実験方法
ジュール加熱装置
加圧チャンバー型ジュール加熱装置((株)フロンティアエンジニアリング製)を用いた。本装置は高周波電源装置(周波数20KHZ固定)と水槽電極式ジュール加熱装置(容器内寸法100mm×100mm×100mm)及び加圧チャンバーにより構成されている。
【0029】
サンプルの調整
既知の前処理法として、電解質液中でボイル処理を施す特許文献7(特公平7‐34720)を参考にした。固体食品材料を所定の大きさ(20mmまたは30mm)にカットし、電解質液として1.2%NaCl液中にて10分間ボイル処理した。処理した固体食品材料を冷却後(25℃)、液体食品材料としての0.6%NaCl溶液に一定の割合(固体:液体=1:11、1:6または1:2)で混合し、ジュール加熱のサンプルとした。
【0030】
運転条件
サンプルを装置の取り扱い説明書に従い水槽電極の定位置(容器上端より2mm下の位置)まで充填した後、チャンバー全体を0.25Mpaの圧力で加圧した状態で100V定電圧で通電した。その後の通電コントロールは液部の温度が121.1℃を維持するよう自動制御により行った。
【0031】
温度測定
固体部及び液体部の温度経過をみるため、固体部及び液体部それぞれに上記の加圧チャンバー型ジュール加熱装置付属の温度センサーを設置し連続的に温度を測定した。
【0032】
電気抵抗率(ρ)の測定
針状(直径1.5mm)の白金電極を陽極と陰極の距離が10mmとなるように食品材料に差し込み、80mAの定電流を流し、電極間の電圧を測定することにより抵抗値を求めた。さらに電気抵抗率(ρ)は次式により求めた。
電気抵抗率(ρ)=抵抗値×電極面積/電極間距離
【0033】
実験結果
にんじん、大根、じゃがいも及び牛肉を1辺20mm及び30mmのダイス状にカットした。1.2%NaCl液中にてボイル処理を行った後、ジュール加熱を行った。固液比は1:11とした。
その結果、固体食品の種類の違いにより、ジュール加熱による温度上昇に有意な差が認められた(図1参照)。
【0034】
又、固体食品の種類によって、カットサイズによる影響の受け方が異なり、にんじん、大根、牛肉についてはサイズの小さいほうが温度上昇が早かったが、じゃがいもについては大きさの影響は比較的少なかった(図2参照)。
【0035】
さらに、固体食品の種類毎のボイル処理前後の電気抵抗率の変化とジュール加熱上昇温度の関係を表1及び図3、図4に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
図3より、野菜類については電解質液によるボイル処理により電気抵抗率が低下したが、牛肉の場合には逆に電気抵抗率が増加した。肉類の場合にはボイル処理により肉の組織が収縮し、そのため電気抵抗率が増加したものと思われた。又、野菜類・肉類ともボイル処理前後の電気抵抗率のバラツキは同程度であり、特にバラツキの改善(バラツキが小さくなる)は認められなかった。
【0038】
さらに、図4に示すとおり、ボイル処理後電気抵抗率とジュール加熱による上昇温度の間には野菜類・肉類とも非常に有意な負の相関が認められた。しかし野菜類と牛肉とでは回帰係数が明らかに異なっており、野菜類の方が電気抵抗率の影響を受けやすいことが示唆された。
以上の通り、固体食品の種類によりジュール加熱による昇温特性には大きな違いが認められた。
【0039】
比較例2
〔個体及び部位の違いによるバラツキの検証〕
さらに詳細にバラツキの検証を行うため、材料として最もバラツキが生じやすいとされているニンジンを用い検討を行った。一本のニンジンの上部分又は中間部分を1辺30mmのダイス状にカットし、部位を区別したニンジンを比較例1の通り電解質液中でボイル処理を行った後、ジュール加熱を行った。固液比は1:6とした。この実験を7回繰り返し、個体の違いによるバラツキ及び部位の違いによるバラツキの程度を検証した。
【0040】
【表2】

【0041】
その結果、ボイル処理後の電気抵抗率及びジュール加熱による温度上昇には、個体間・部位間とも有意な差がみとめられた(表2及び図5参照)。尚、ボイル処理前の生ニンジンの電気抵抗率は上部、中間部間で有意な差はなく、3.3〜3.8程度であった。
又、ボイル処理後の原料の部位の電気抵抗率とジュール加熱処理による温度上昇との関係を検証した結果、両者の間には大きな負の相関が認められた(図6参照)。
以上の通り、ボイル処理前には電気抵抗率が個体間及び部位間でほぼ同等であったものが、ボイル処理後には電気抵抗率が大きくばらついており、それが不均一加熱の原因となることが確認された。
【0042】
比較例3
〔原料サイズによるバラツキの検証〕
ニンジンの中間部を用い、1辺10mm、15mm、20mm及び30mmのダイス状にカットした。生ニンジンの電気抵抗率は3.3であった。比較例1の通り電解質液中でボイル処理を行った後、ジュール加熱を行った。固液比は1:2とした。
【0043】
【表3】

【0044】
その結果、ニンジンのサイズの違いにより、電解質液中でのボイル処理後の電気抵抗率及びジュール加熱による温度上昇に有意な差がみとめられた(表3及び図7、図8、図9参照)。
又、ボイル処理後の原料の電気抵抗率とジュール加熱処理による温度上昇との関係を検証した結果、両者の間には大きな負の相関が認められた(図10参照)。
以上の通り、ボイル処理前には電気抵抗率が3.3でほぼ同等であったものが、ボイル処理後には電気抵抗率が異なっており、ニンジンのカットサイズと電気抵抗率の間には大きな正の相関が認められ、ニンジンのカットサイズがジュール加熱における上昇温度のバラツキに影響を及ぼしていることが確認された。
【0045】
比較例1から3の結果から得られた、従来の加熱処理法による固液混合食品のジュール加熱の問題点
<1>固体食品はそれぞれ固有の電気抵抗率を持つ。
<2>固体食品によっては構造的不均一性があるため、部位により電気抵抗率が異なる。
<3>固体食品によっては加熱に伴って組織構造が変化するため、電気抵抗率も変化する。
<4>固体食品によっては電解質液処理においてサイズの影響を大きく受けるため、固体食品のサイズが電気抵抗率のバラツキの原因となる。
<5>固体食品の電気抵抗率はジュール加熱の昇温特性と大きな負の相関を持つ。そのため、固液混合系のジュール加熱においては、個々の食品材料の昇温特性が異なり、実用上問題となる程度にまで加熱履歴にバラツキが生じる。
従って、従来の加熱処理法では、不均一加熱の原因となる、固体食品固有の電気伝導率による、固体食品個体差による、固体食品部位ごとの構造不均一性による、または加熱に伴う組織構造の変化等による固体食品の電気抵抗率のバラツキが実用上十分に解消されているとは言えない。
【0046】
次に、本発明を以下の実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
[冷凍および煮沸処理が電気抵抗率に及ぼす効果]
ニンジンの部位は特に選別せず、規定の大きさ(20mm、30mm)のダイス状にカットした。カットしたニンジンを冷凍処理グループと未処理グループにランダムに分けた。冷凍処理は−40℃の冷凍庫にて12時間冷却することにより行った。その後、凍結したままのニンジンを比較例1と同様に1.2%NaCl液にて10分間煮沸し、それぞれの電気抵抗率を測定した。結果を表4に示す。バラツキを変動係数として表す。
【0048】
【表4】

【0049】
生ニンジンの電気抵抗率と比較して、冷凍処理を施さずに電解質液中でのボイル処理を行ったニンジンのグループについては電気抵抗率は低下するもののサイズの影響を大きく受けることが再度確認された。又、バラツキの大きさを示す指標である変動係数も生ニンジンと比較して改善されていないことも確認された。一方、冷凍処理を施した後に電解質液中でのボイル処理を行ったグループは電気抵抗率がより低く低下し、サイズ及び部位の影響も小さいことが確認された。又、変動係数も生ニンジンと比較して大きく改善されていた。
【実施例2】
【0050】
[プロセスの変更が電気抵抗率に及ぼす効果]
次に、ニンジン処理のプロセス中の冷凍処理前後のプロセス条件を変更し、その影響を確認した。電気抵抗率の測定は比較例1と同様である。結果を表5に示す。
【0051】
処理方法
A;冷凍→直ちに電解質液中でのボイル処理→水冷(1分間)
B;冷凍→室温にて解凍→電解質液中でのボイル処理→水冷(1分間)
C;冷凍→流水中にて解凍→電解質液中でのボイル処理→水冷(1分間)
D;ブランチング処理(90℃、3分間)→冷凍→直ちに電解質液中でのボイル処理→水冷(1分間)
【0052】
【表5】

【0053】
プロセスA、B及びDにおいては大きな冷凍処理の効果が認められた。プロセスCにおいては冷凍処理の効果が認められたものの、効果の程度はプロセスA、B及びD前3者と比較して小さかった。
【実施例3】
【0054】
[冷凍および浸漬処理が電気抵抗率に及ぼす効果]
電解質液中でのボイル処理のかわりに、電解質液処理条件を室温での浸漬処理とし、冷凍処理の効果を検証した。
【0055】
ニンジンの部位は特に選別せず、規定の大きさのダイス状にカットした。カットしたニンジンを冷凍処理グループと未処理グループにランダムに分けた。冷凍処理は−40℃の冷凍庫にて12時間冷却することにより行った。それぞれのグループを1.2%NaCl液に浸漬し、一定時間毎に電気抵抗率を測定し電解質液の浸透性を評価した。なお、表6中のスタート(0時間)とは、1.2%NaCl液に浸漬していない、生のニンジンまたは解凍後のニンジンを意味する。浸漬の温度は25℃前後にて行った。さらに冷凍処理品については2時間浸漬後に、浸漬後のニンジンと液体食品材料としての0.6%NaCl溶液との混合比が1:11または1:6の状態でジュール加熱処理を行い、冷凍処理効果の確認を行った。
電気抵抗率の測定結果を表6及び図11に示す。
【0056】
【表6】

【0057】
以上の結果より、冷凍処理したニンジンは浸漬処理により速やかに電気抵抗率が低下し、且つバラツキも小さくなり、2時間浸漬時点でほぼプラトーに達することが確認された。一方、冷凍処理を施さないニンジンについては8時間浸漬の時点でもほとんど電気抵抗率が低下しなかった。
【0058】
さらに、冷凍処理ニンジンを2時間浸漬処理した後、ジュール加熱処理を行った。20mmダイス及び30mmダイスについてそれぞれ2検体づつ温度の測定を行ったが、結果はバラツキも小さく、極めて均一な温度上昇及びF値の上昇が確認できた。結果を図12に示す。特に、図12の温度においては、20mmダイスの2検体及び30mmダイスの2検体を示しているがそれぞれ1本の線に重なっている。
【0059】
以上の通り、冷凍処理と浸漬処理の組合せにおいても冷凍処理とボイル処理と組合せの場合と同様に、電気抵抗率の低下および均一な電気抵抗値を得ることができた。この結果より、電気抵抗率について、材料の冷凍処理の効果は歴然としており、実施例1のボイル処理時における冷凍処理と無処理の場合の差よりも本実施例の室温浸漬処理時における冷凍処理の有無においてさらに際立った差が認められた。又その結果、その後のジュール加熱においても極めて均一な加熱が出来ることが確認された。
【実施例4】
【0060】
[前処理プロセス中における冷凍処理の順番が電気抵抗率及びジュール加熱に及ぼす効果]
次に、実施例1〜3において、冷凍処理後にボイル処理または浸漬処理を行い、電気抵抗率及びジュール加熱への効果を確認したので、本実施例においては通電前の前処理プロセスの順番を、ボイル処理または浸漬処理を行った後に冷凍処理を行う順番に変えて、電気抵抗率及びジュール加熱への効果を確認した。
【0061】
ニンジンの部位は特に選別せず、20mmの大きさのダイス状にカットした。カットしたニンジンを電解質液処理として1.2%NaCl液にて10分間ボイルし、その後冷凍処理を施した。冷凍処理は−40℃の冷凍庫にて12時間冷却することにより行った。処理したニンジンを解凍後、液体食品材料としての0.6%NaCl溶液に1:11の割合で混合し、ジュール加熱のサンプルとした。又、対照として下記の実験を行なった。
対照1(冷凍→ボイル);冷凍処理後1.2%NaCl液にて10分間ボイル処理したサンプルのジュール加熱
対照2(ボイルのみ);1.2%NaCl液にて10分間ボイル処理したサンプルのジュール加熱
対照3;無処理(生ニンジン)のジュール加熱
【0062】
各実験につき4サンプルづつの測定結果を表7に示す。各処理に伴うバラツキ評価のために、ジュール加熱前の指標として電気抵抗率、温度上昇時の指標として4分間ジュール加熱時点の上昇温度、累積の加熱履歴の指標として6分間加熱時のF値を採用した。F値とは一定温度において一定濃度の微生物を死滅させるのに要する加熱時間(分)であって、通常121.1℃における加熱致死時間のことである。
【0063】
【表7】

【0064】
以上の結果を要約すると次の通りである。
ジュール加熱前に測定した電気抵抗率のバラツキを示す変動係数では、試験品(ボイル処理→冷凍処理、0.08)は対照3(生、0.13)よりも小さいものの、対照1(冷凍処理→ボイル処理、0.04)よりも大きく、対照2(ボイル処理のみ、0.07)と同程度であるという傾向が認められた。
【0065】
しかし、ジュール加熱時の温度上昇のバラツキ(変動係数)については、試験品(ボイル処理→冷凍処理、0.04)は対照1(冷凍処理→ボイル処理、0.04)と同程度であり、対照2(ボイル処理のみ、0.07)及び3(生、0.06)よりも僅かに小さいかった。
【0066】
また、ジュール加熱の累積的な指標であるF値のバラツキ(変動係数)については、試験品(ボイル処理→冷凍処理、0.37)は対照1(冷凍処理→ボイル処理、0.24)よりもやや大きいものの、対照2(ボイル処理のみ、0.85)及び3(生、0.73)よりも明らかに小さかった。
【0067】
さらに、試験品(ボイル処理→冷凍処理)と対照2(ボイル処理のみ)との経時的な上昇温度とF値の比較を図13に示す。図13に示したごとく、経時的に観察しても試験品(図13(A);ボイル処理→冷凍処理)は対照2(図13(B);ボイル処理のみ)よりもバラツキが小さいことが確認できた。特に、図13(C)のF値において、試験品(電解質液処理後冷凍処理)の4本の線の方が対照2(電解質液処理のみ)の4本の線よりバラツキの小さいことがわかる。
これより、冷凍処理の順番が、ボイル処理の前であっても後であっても有効であることが確認できた。
【0068】
なお、電解質液処理が、ボイル処理でなく、実施例3(冷凍処理→浸漬処理)に示す浸漬処理の場合であっても、本実験のボイル処理の場合と同様に浸漬処理が冷凍処理の前であっても有効であることは明らかである。但し、浸漬処理を冷凍処理の前とした場合(浸漬処理→冷凍処理)に、実施例3(冷凍処理→浸漬処理)に示す浸漬時間に変更が必要となる場合があることは当業者にとっては明らかなことである。
【実施例5】
【0069】
[各種固体食品に対する冷凍処理が電気抵抗率およびジュール加熱に及ぼす効果]
以上のとおり、冷凍処理と電解質溶液によるボイル処理又は浸漬処理を施すことにより固体食品の電気抵抗率の均一化を図ることが可能であるという新知見を得た。そこで各種の固体食品に対する効果の検証を行った。
【0070】
特に部位を選別せずに、にんじん、大根、じゃがいも及び牛肉を1辺20mm及び30mmのダイス状にカットした。プロセスAにて冷凍処理を行った後ジュール加熱を行い、未処理(冷凍処理なし)のデータと比較した。固液比は1:11 とした。その結果、冷凍処理を施すことにより、電気抵抗率が低くなり、且つ固体食品の種類及びサイズによる電気抵抗率のバラツキは明らかに小さくなることが確認された。(表8参照)。
【0071】
【表8】

【0072】
すなわち、冷凍処理後、電解質溶液によるボイル処理を施すことにより、その後のジュール加熱工程において、より早い均一な加熱が期待された。実際、ジュール加熱を行った結果、固体食品の種類による温度上昇のバラツキは明らかに小さくなることが確認された(図14参照)。
【0073】
又、冷凍処理なし(未処理)の実験では、固体食品の種類によって程度の差はあるものの、カットサイズの影響を受けており、サイズの小さいほうが温度上昇が早い傾向が認められた(図15中の未処理)。このサイズによるバラツキに対しても冷凍処理は効果があることが確認された(図15中の冷凍)。温度上昇パターン及びF値のデータを図15に示す。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の方法により、固体食品および液体食品からなる固液混合食品へのジュール加熱法の利用が可能となる。
本発明の方法により、レトルト加熱に替わる、素材本来の風味や色調を維持し、多様性に富んだ味の高品質な食品(加熱殺菌又は加熱滅菌食品)の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】固体食品の種類による加熱特性の比較。30mmダイスにカットした固体食品(にんじん、だいこん、ジャガイモ、牛肉)を電解質液中でボイル加熱した後にジュール加熱したときの通電時間と温度上昇との関係を示す。
【図2】固体食品の種類別によるカットサイズとジュール加熱温度上昇の関係。20mmまたは30mmダイスにカットした固体食品(にんじん、だいこん、ジャガイモ、牛肉)を電解質液中でボイル加熱した後にジュール加熱したときの各固体食品ごとの通電時間と温度上昇との関係を示す。
【図3】固体食品の種類による電解質液中でのボイル加熱処理前後の電気抵抗率比較。表1に示した20mmまたは30mmダイスにカットした固体食品(にんじん、だいこん、ジャガイモ、牛肉)の加熱処理前の電気抵抗率とそれら固体食品を電解質液中でボイル加熱処理した後の電気抵抗率との関係を示す。
【図4】電解質液中でのボイル加熱処理後の電気抵抗率と温度上昇の関係。表1に示した20mmまたは30mmダイスにカットした固体食品(にんじん、だいこん、ジャガイモ、牛肉)の電解質液中でのボイル加熱処理後における電気抵抗率とジュール加熱による温度上昇(℃/4分間通電)との関係を示す。
【図5】個体の違い及び部位の違いによるバラツキ。30mmダイスにカットした、にんじんの上部分または中間部分を電解質液中においてボイル加熱処理した後のジュール加熱における通電時間と温度上昇との関係を個体ごとに示す。
【図6】原材料の部位の電気抵抗率と温度上昇の関係。表2に示す実験回数目ごとの電解質液中でのボイル加熱処理後における電気抵抗率とジュール加熱による温度上昇(℃/4分間通電)との関係を示す。
【図7】ニンジンのサイズの影響。10mm、15mm、20mm、30mmダイスにカットしたにんじんの中間部分を電解質液中においてボイル加熱処理した後のジュール加熱における通電時間と温度上昇との関係を示す。
【図8】ニンジンのサイズと電気抵抗率の関係。表3に示した10mm、15mm、20mm、30mmダイスにカットしたにんじんの中間部分を電解質液中においてボイル加熱処理した後の電気抵抗率とにんじんのカットサイズとの関係を示す。
【図9】ニンジンのサイズと温度上昇の関係。表3に示した10mm、15mm、20mm、30mmダイスにカットしたにんじんの中間部分を電解質液中においてボイル加熱処理した後のジュール加熱における温度上昇(℃/4分間通電)とにんじんのカットサイズとの関係を示す。
【図10】電気抵抗率と温度上昇の関係。表3に示した10mm、15mm、20mm、30mmダイスにカットしたにんじんの中間部分を電解質液中においてボイル加熱処理した後の電気抵抗率とジュール加熱による温度上昇(℃/4分間通電)との関係を示す。
【図11】電解質液浸漬時の電気抵抗率の経時変化。表6の電気抵抗率の平均値と浸漬時間との関係を示す。
【図12】冷凍処理効果の確認。冷凍処理ニンジンを2時間浸漬処理したサンプルについてジュール加熱処理を行った。20mmダイス及び30mmダイスについてそれぞれ2検体づつ温度の測定を行った。20mmダイスの場合は固液比 1:11、30mmダイスの場合は1:6である。測定した温度(A)及びF値(B)の経時的変化を示す。
【図13】電解質液中でのボイル処理後に冷凍処理を施したニンジン(試験品)と電解質液中でのボイル処理のみのニンジン(対照2)のジュール加熱における温度及びF値の経時的な比較。表7における試験品((A);ボイル処理→冷凍処理)と対照2((B);ボイル処理のみ)の温度及びF値の経時的変化を示す。
【図14】固体食品の種類によるバラツキに対する冷凍処理の効果。30mmダイスにカットした固体食品(にんじん、だいこん、ジャガイモ、牛肉)を電解質液中でボイル加熱処理した後に冷凍処理してジュール加熱した場合または冷凍処理しないでジュール加熱した場合における、通電時間と温度上昇との関係を示す。
【図15】固体食品の種類別またはサイズのバラツキに及ぼす冷凍処理の効果。20mmまたは30mmダイスにカットした固体食品(にんじん、だいこん、ジャガイモ、牛肉)を冷凍処理した後に電解質液中でボイル加熱処理してジュール加熱した場合または冷凍処理しないで電解質液中でボイル加熱処理した後にジュール加熱した場合における、通電時間と温度上昇(A1,B1,C1,D1)との関係または通電時間とF値(A2,B2,C2,D2)との関係を固体食品の種類別ごとに示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)固体食品を冷凍後、該固体食品を解凍又は解凍せずに液体食品と混合して固液混合食品を得る工程、または
(a2)固体食品と液体食品を混合後、これを冷凍して固液混合食品を得る工程、
および(b)該固液混合食品をジュール加熱する工程を含む、固液混合食品の製造方法。
【請求項2】
(b)工程により、固液混合食品を殺菌又は滅菌する、請求項1に記載の固液混合食品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の固液混合食品の製造方法によって得られる固液混合食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−129995(P2007−129995A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328826(P2005−328826)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【特許番号】特許第3845107号(P3845107)
【特許公報発行日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000252322)和光堂株式会社 (13)
【Fターム(参考)】