説明

ジュール効果による霜処理システムを内蔵する航空機の消音用被覆材

本発明の対象は、例えば推進用集合体のナセルの空気取入れ口の翼前縁を被覆できる、航空機の消音用被覆材である。同消音用被覆材は、一方では、内側から外側に、反射層(28)、少なくとも1の蜂窩状構造体(30)および特定の比率の開放表面を有する耐久性のある消音用構造体(32)、他方では、耐久性のある消音用構造体の開放区域と、少なくとも部分的に共働する音波を通らせられる開放区域を含む、少なくとも1の加熱用層(46)の形の、少なくとも1の霜処理システムを含んでおり、耐久性のある消音用構造体(32)が、少なくとも1の開口部(38)を有する外装用層(36)を含んでおり、少なくとも1の同加熱用層(46)が外装用層(36)の下に配置してあることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジュール効果による霜処理システムを内蔵する航空機の消音用被覆材に関するものであり、同被覆材は、とりわけ航空機の翼前縁、更に特に航空機のナセルの空気取入れ口を被覆するためのものである。
【背景技術】
【0002】
航空機の推進用集合体は、ナセルを含んでおり、同ナセルの中に、軸に取り付けてある送風機を駆動する動力機構がほぼ同心円状に配置してある。
【0003】
ナセルは、前方の空気取入れ口、燃焼に関与するためにエンジンを通過する、第一次流れと呼ばれている、侵入する空気の流れ用の第一部、送風機に誘引されて、ナセルの内壁と動力機構の外壁で画定されている環状ダクト内を流れる、第二次流れと呼ばれている空気の流れ用の第二部でダクトを画定する内壁を含んでいる。
【0004】
推進用集合体で発生する騒音は、一方では、空気および/または燃焼したガスの諸流れの混合によってダクト外で発生するジェットの騒音、他方では、送風機、コンプレッサー、タービンおよびダクト内で伝播される燃焼の騒音からなる。
【0005】
空港の近辺で音響による公害を制限すべく、国際規定は、騒音の発生に関して、ますます制約が厳しくなっている。
【0006】
とりわけダクトの壁面のレベルで、特にヘルムホルツ共鳴の原理を利用して、内部騒音を軽減させるための技術が開発された。既知の方法で、音響パネルとも呼ばれているこの消音用被覆材は、内部から外部に向って、反射層、少なくとも1の蜂窩状構造体および音響に耐久性のある外装を含んでいる。
【0007】
層とは、1のまたは複数の同一性質またはそうではない層を指す。
【0008】
耐久性のある消音用構造体は、分散させる役割を帯びた多孔質構造体であり、同層を透過する音波の音響エネルギーを部分的に熱に変換させる。同層は、音波を透すことのできる、開放区域と呼ばれている区域と、音波を透さないが、同層の力学的強度を確立するための閉鎖区域または閉塞区域と呼ばれている区域を含んでいる。消音性の強いこの層は、とりわけ開放面積の比率で特徴付けられており、その比率は、主としてエンジンおよび同層を構成している組成要素に応じて異なっている。
【0009】
今のところ、種々の制約、例えば、形状の決定または他の設備との適合性によって、被覆材は、とりわけ空気の取入れ口から空気の流出口までの間隔における、ナセルの内壁の限られた区域のレベルに特に予定されている。
【0010】
音響処理の効果を高めるための1の解決法として、消音用被覆材に被覆される面積を増やす方法がある。しかしながら、空気の取入れ口とナセルの唇部のレベルでは、消音用被覆材の設置は、今のところ、可能ではない。とりわけ同被覆材は、氷および/または霜の形成および/または蓄積を阻止する、この諸区域に必用な方式とは相いれない。
【0011】
この諸方式は、2大系統に分けられる。前者は、氷および/または霜の形成を制限し得る防霜方式と呼ばれており、後者は、氷および/または霜の蓄積を制限し、氷および/または霜が形成された後、作用する除霜方式と呼ばれている。以後の記述では、霜処理方式とは、防霜方式または除霜方式を指しており、霜という用語は、霜または氷を包含するものとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
防氷処理では、1の解決法として、地上で、航空機の処理すべき面をガスまたは液体で処理することにある。この処理が、離陸時には特に効果的であるとしても、その時間に制約がある。霜の処理用システムが航空機に積載されている必用がある。それは、航空機が特殊な気象条件に遭遇するとき、霜が航空機の流線形表面のレベル、とりわけ翼面、ナセル、尾部などの翼前縁のレベルに形成されやすいからである。
【0013】
本発明は、もっと正確に言えば、ジュール効果による電気型防霜方式に関する。
【0014】
この霜処理システムは、ジュール効果によって、処理すべき表面を加熱するために、絶縁材で被覆した電導性材料の電気抵抗を利用することにある。このタイプのシステムは、比較的もろく、鳥、ひょうまたはメインテナンス時に損傷を受けやすい。損傷を受けた区域では、霜処理方式は、機能できなくなり、氷または霜の形成と蓄積が許されてしまう。なお、このシステムが表面に存在していると、一般に、防音処理の性能が損なわれるので、防音効果に関して、被覆材とは相いれない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、それぞれの処理の効果を最適化し得る霜処理システムを内蔵する航空機の消音用被覆材を提案することによって、以前の技術の欠点の排除を狙いとする。
【0016】
そのために、本発明は、例えば推進用集合体のナセルの空気の取入れ口のような航空機の翼前縁を被覆し得る航空機の消音用被覆材を対象としており、同消音用被覆材は、一方では、内側から外側に向かって、反射層、少なくとも1の蜂窩状構造体および開放面の特定の比率を有する耐久性のある消音用構造体、他方では、耐久性のある消音用構造体の開放区域と、少なくとも部分的に共働する、音波を透し得る開放区域を含む、少なくとも1の加熱用層の形状の、少なくとも1の霜処理システムを含んでおり、少なくとも1の耐久性のある消音用構造体が開口部を有する構造体層を含んでおり、少なくとも1の加熱用層が外装用層の下に配置されていることを特徴とする。
【0017】
この配置は、防音処理と霜処理を両立させることを可能にする。
【発明の効果】
【0018】
耐久性のある消音用構造体は、開放区域を有する1の外装用層を含んでおり、加熱用層は、同外装用層の下に配置してある。この配置によれば、霜処理システムは保護されており、それによって、地上における航空機の保守と停止時間を短縮できる。
【0019】
それ以外の特性と利点は、添付図に照らして、単に例として示した記述である、本発明の以下の記述で明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】航空機の推進用集合体の概略図である。
【図2】本発明によるナセルの空気取入れ口を示した縦断面である。
【図3A】第1の実施態様による霜処理機能を含む消音用被覆材の各種層を示す断面図である。
【図3B】別の実施態様による霜処理機能を含む消音用被覆材の各種層を示す断面図である。
【図4】霜処理システムの導体要素および耐久性のある消音用層の開口部の相対的位置を示す図である。
【図5】一方では耐久性のある消音用層の開口部および他方では、加熱用層の変形態様を示す図である。
【図6】一方では耐久性のある消音用層の開口部の別の変形態様および他方では、加熱用層の別の変形態様を示す図である。
【図7】霜処理機能を含む消音用被覆材の別の変形態様を示す断面図である。
【図8】霜処理機能を含む消音用被覆材の別の変形態様を示す断面区である。
【図9】霜処理機能を含む消音用被覆材の別の変形態様を示す断面区である。
【図10】ジュール効果による霜処理機能を保証する加熱用層の第1の変形態様を示す断面区である。
【図11A】図10の変形の第1の実施態様を示す断面区である。
【図11B】図10の変形の別の実施態様を示す断面区である。
【図12】ジュール効果による霜処理機能を保証する加熱用層の別の変形態様を示す図である。
【図13A】図12の変形の第1の実施態様を示す断面区である。
【図13B】図12の変形の別の実施態様を示す断面区である。
【図14】ジュール効果による霜処理機能を保証する加熱用層の別の変形態様を示す図である。
【図15】ジュール効果による霜処理機能を保証する加熱用層の別の変形態様を示す図である。
【図16】図15の加熱用層の断面図である。
【図17】ジュール効果による霜処理機能を保証する加熱用層の別の変形態様を示す図である。
【図18】空気取入れ口のレベルにおける各種霜処理システムの設置を示す縦断面である。および
【図19】空気取入れ口のレベルにおける各種霜処理システムの設置を示す横断面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、これから、航空機の推進用集合体の空気の取入れ口に適用して記述することにする。もっとも、本発明は、防音処理と霜処理が行われるレベルで、航空機の各種翼前縁または航空機の各種表面に適用できる。
【0022】
今後の記述では、霜とは、種類、構造、厚さの如何を問わず、霜だけでなく、氷も指すことにする。
【実施例1】
【0023】
図1に、支柱12を介して、翼面の下に連結してある航空機の推進用集合体10を示した。しかしながら、この推進用集合体は、航空機の他の区域に連結できるだろう。
【0024】
この推進用集合体は、ナセル14を含んでおり、同ナセル内に、ほぼ同心円上に、軸16に取り付けてある送風機を駆動する動力機構が配置してある。ナセルの長手方向軸は、18で暗示してある。
【0025】
ナセル14は、前部に空気の取入れ口22、燃焼に参加するために動力機構を縦断する、第一次流れと呼ばれている、侵入する空気の流れの第一部、送風機に誘引されて、ナセルの内壁20と動力機構の外壁に画定されている環状ダクト内を流れる、第二次流れと呼ばれている空気の流れのある第二部でダクトを画定する内壁20を含んでいる。
【0026】
空気取入れ口22の頂上部24は、ほぼ円形な形状を呈しており、同形状は、図2に示してあるように、長手方向軸18に垂直、または垂直ではない面内に伸びており、同頂上部は、図18に示してあるように、12時よりも少し早い位置にある。しかしながら他の形状の空気取入れ口も考慮できる。
【0027】
以後の記述では、流線形表面とは、流線形流れと接触する航空機の外装を指す。
【0028】
公害の影響を限定するために、とりわけヘルムホルツ共振の原理を利用して、音響エネルギーの一部の消収を狙いとする被覆材26が特に流線形表面のレベルに予定されている。既知の方法で、防音パネルとも呼ばれているこの防音性被覆材は、図4と5に示してあるように、内側から外側に向かって、反射層28、蜂窩状外装30および耐久性のある消音用構造体32を含んでいる。
【0029】
変形態様として、消音用被覆材は、隔膜と呼ばれている耐久性のある防音層で隔離された複数の蜂窩状外装を含むことができる。
【0030】
1の実施態様では、反射層28は、金属薄板または樹脂製基質内に埋没した、少なくとも1の繊維の織布または不織布からなる膜の形を呈することができる。
【0031】
蜂窩状外装は、金属性蜂窩状の形状、または例えばニダ・ノメックスの名称で市販されている蜂窩状外装の形状を呈することができる。
【0032】
反射層と蜂窩状構造体は、当業者に知られているので、これ以上詳細に述べないことにする。
【0033】
耐久性のある消音用構造体層32は、同構造体を透過する音波の音響エネルギーの一部を熱に変換させ、分散させる役割を帯びている、少なくとも1の多孔質構造体を含む。
【0034】
1の実施態様によれば、耐久性のある消音用構造体は、織布または不織布の形状を呈することができ、繊維は、いろいろな方向の繊維で応力の把握を保証するために、樹脂に埋没してあることが好ましい。
【0035】
別の実施態様では、耐久性のある消音用構造体32は、少なくとも1の多孔質層34および少なくとも1の外装用層36を含んでおり、求められている力学的特性を耐性のある防音性構造体に付与する。
【0036】
多孔質層34は、例えばワイヤーメッシュの如き金属製布の形状を呈することができる。
【0037】
外装用層36は、表面に開口部すなわち微小穿孔38を有し、音波が同微小穿孔の中を透過できる金属板または複合材料製板の形状を呈することができる。
【0038】
限定的ではない実施態様によれば、外装用層36は、図7に示してあるように、場合によって、例えばガラス繊維をベースにした強化層40で強化された、樹脂内に埋没した、例えばカーボンファイバー製の複合材料製または金属板の形状を呈することができる。
【0039】
外装用層36は、いろいろな形状または大きさの開口部すなわち微小穿孔38、例えば図4と6に示したように細長い形状または図5に示したように円形孔の集合の形状を呈することができる。開口部38の形状と大きさは、空気束の流れの擾乱を減少させ、求められている力学的強さ、とりわけ剥離に抵抗する力学的強さを保証し、そして消音用被覆材の性能が良好であるように、音波が透過できるように決定される。
【0040】
外装用層36は、外部に配置してあり、多孔質層34は、同外装用層36と蜂窩状外装との間に介在すると有利である。この配置で、多孔質層34を保護できる。
【0041】
変形態様として、多孔質層34は、図3Aに示したように、2の外装用層36の間に配置されることができる。
【0042】
別の実施態様によれば、少なくとも1の補強材、例えば図7に示したように、蜂窩状構造体と耐久性のある消音用構造体との間に挿入されたカーボン糸42の捲線を含むことができる。
【0043】
どの場合にも、耐久性のある消音用構造体32は、音波の透過を許す、開放的と呼ばれている区域と、音波を通さないが、同層の力学的強度を保証するための閉鎖的または閉塞区域を含んでいる。この耐久性のある防音層は、主としてエンジンに応じて変る開放表面の比率および同層を構成する構成要素を特徴としている。
【0044】
図2と18に示したように、音響による公害を減少させるべく、空気の取入れ口22、は、流線形表面の少なくとも1の部分に、消音用被覆材26を含んでいる。
【0045】
の実施態様によれば、この消音用被覆材26は、ナセルの内壁20から空気の取入れ口の頂上部24まで、空気の取入れ口の全内面に亙って延びている。図2と18に示したように、消音用被覆材26は、空気の取入れ口の頂上部24を超えて延びており、ナセルの外面44の一部を被覆していることが好ましい。
【0046】
消音用被覆材の設置は、当業者に知られているので、それについて詳細に述べないことにする。
【0047】
霜の形成を制限またはその蓄積を阻止するために、少なくとも1の霜処理システムが空気の取入れ口22のレベルに用意されている。
【0048】
以後の記述では、霜処理システムとは、防霜システムまたは除霜システムを指す。
【0049】
防音処理と霜処理が両立できるために、そして一方の機能が他方の機能を阻害しないために、霜処理システムは、音波を通すことのできる開放区域を含む、少なくとも1の加熱用層46の形状を帯びた、ジュール効果による霜処理システムであり、同加熱用層は、耐久性のある消音層の開放区域の比率の変化が35%以下であって、耐久性のある消音用構造体の開放区域と、少なくとも部分的に共働する音波を透らせることのできる開放区域を含む。
【0050】
有利なことに、加熱用層46は、鳥やひょうとの衝撃、または保守のときの事故のような外的障害から保護されるように、外装用層36の下に配置してある。
【0051】
この配置は、霜処理システムのより一層安全な機能を保証でき、地上における停止時間を短縮できて、損傷の危険が、より一層限られる。
【0052】
図9に示したように、加熱用層は、反射層28と蜂窩状構造体30との間に配置できる。しかしながら、加熱用層が、処理すべき表面、すなわち霜が形成され易い流線形層からもっと離れるので、この変形態様の性能は劣る。
【0053】
別の1の変形態様によれば、加熱用層46は、図8に示したように、耐久性のある消音層の役割を果たすこともできる。この場合、加熱用層46は、音波を透らせる多孔質区域を含んでいる。
【0054】
図4、12、14、16および17に示した第1の変形態様によれば、耐久性のある消音用構造体は、ほぼ線形の閉塞区域を生ずるように配置された開放区域を有し、加熱用層は、少なくとも1の平らな線形電導性要素48を含んでおり、同要素の巾は、図4に示したように、外装用層36の閉塞区域の巾以下である。
【0055】
平らな線形電導性要素48を予定することによって加熱用層の厚さを減少させ、消音用被覆材の機能を損なわないことが可能になる。
【0056】
他方では、加熱用層の電導性要素48が外装用層の開口部40を侵害しないので、耐久性のある消音用構造体32の比率を変更 しないで済む。
【0057】
更に、この配置では、電導性要素48が外装用層36に被覆され、保護されているので、損傷の危険が少なくなる。
【0058】
場合によっては、加熱用層は、図17に示したように、処理すべき全区域に延びている蛇行状の単一線形電導性要素48、または図14に示したように、直列配置、あるいは図12と15に示したように、並列配置に連結してある複数の線状電導性要素48を含むことができる。
【0059】
第1の実施態様によれば、線状電導性要素48は、2の電極すなわち格子50、50’を連結している。U字型の各格子は、U字型の枝部の間に配置してある導線52に連結してある。第1の解決法によれば、電導性要素48は、図13Aに示したように、U字型の枝部の間に配置してある。別の1の解決法によれば、線形電導性要素48は対の形で配置してあるので、図13Bに示したように、電導性要素は、U字型の各枝部に用意されている。
【0060】
図5、6および10に示した第2の変形態様によれば、加熱用層は、少なくとも1の電導性布54を含んでおり、同電導性布には、耐久性のある防音層の開放面の比率の変化が少なくなるように、耐久性のある消音用構造体の開放区域と、少なくとも部分的に共働する音波を透らせられる開口部56を含む。
【0061】
図5に示した第1の実施態様によれば、加熱用層の閉塞(開放ではない)区域は、耐久性のある防音層の開放区域、とりわけ外装用層の開口部を侵害しない。
【0062】
図6に示した別の実施態様によれば、加熱用層のレベルにおいて設置された開口部間に用意されている挿入区域がごく僅かであるので、同挿入区域で封鎖された外装用層の開放面は僅かである。
【0063】
布の形で電導性要素を予定することで、加熱用層の厚さを減少させ、防音処理のレベルにおける障害を減少させることができる。
【0064】
他方では、布の形で電導性要素を用意することで、局部的損傷の場合、欠陥箇所が拡大する危険を限定させることができる。
【0065】
なお、目に見える層が外装用層に保護されており、外装用層の開口部から目に見える加熱用層の区域が僅かであるので、加熱用層の破壊の危険が減少する。
【0066】
図11Aに示した第1の技術的解決法によれば、加熱用層は、U字型の2の電極すなわち格子58、58’間に延ばして、重ねてある2の電導性布54を含んでおり、各電極58、58’のU字型の枝部の間に電線60が配置されている。
【0067】
図11Bに示した別の技術的解決法によれば、加熱用層は、U字型の2の電極すなわち格子58、58’間に延ばした1の電導性布54を含んでおり、電線60が各電極58、58’のU字型の枝部の間に配置されている。
【0068】
本発明の別の1の特性によれば、加熱用層は、電導性要素を埋没した、少なくとも1の絶縁性要素62を含む。
【0069】
諸変形態様によれば、加熱用層は、電導性要素の両側に配置してある2の絶縁性膜を含むことができ、同絶縁性膜は、加熱用層の開放区域に相当する開放区域を有する。
【0070】
本発明の別の1の特性によれば、図2と18に、点線で示した、ジュール効果による霜処理システムは、他の霜処理システム、とりわけ少なくとも1の振動発振器64の形による点型の霜処理システムと組み合わせることができる。
【0071】
したがって、振動発振器64は、図18に示したように、ナセルの外面44および/または図9に示したように、ナセルの内側に、ほぼ2時から4字時までおよびほぼ8時から10時までに延びている角区域のレベルに配置してある。
【0072】
したがって、エネルギー消費量が比較的少ない振動発振器64は、外面のレベルに配置される。動力機構がこの区域の氷の破片を飲み込んだとしても、危険性が少ないからである。同様に、氷または霜の形成がナセル内、66で暗示した角区域のレベルに限定されているので、振動で霜を一掃する方式を利用できる。
【0073】
霜または氷が、ナセル内で、角区域66間に予想されている区域内に、より多く形成される傾向があるので、動力機構が大きな破片を飲み込む危険を抑えるために、この区域で、ジュール効果による電気型霜処理システムを使用する。この型の霜処理システムのエネルギー消費量が、より多いにしても、機能が、より確実で、霜または氷の形成を阻止するからである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
異なるこの霜処理システムの併用によって、エネルギー消費量を抑えると共に、確実で効果的な機能を保ちながら、処理を最適にすることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
10. 推進用集合体
12. 支柱
14. ナセル
16. 軸
18. 長手方向軸
20. 内壁
22. 空気の取入れ口
24. 頂上部
26. 被覆材
28. 防音層
30..蜂窩状構造体
32. 消音用構造体
34. 多孔質層
36. 外装用層
38. 微小穿孔
40. 開口部
42. カーボン糸
44. ナセルの外面
46. 加熱用層
48. 電導性要素
50. 格子
50’. 格子
52. 導線
54. 電導性布
56. 開口部
58. 格子
58’. 格子
60. 電線
62. 絶縁性要素
64. 振動発振器
66. 角区域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
例えば推進用集合体(10)のナセル(14)の空気取入れ口(22)の如き翼前縁を被覆でき、同消音用被覆材が、一方では、内部から外部に向かって反射層(28)、少なくとも1の蜂窩状構造体(30)および開放表面の特定の比率を有する耐久性のある消音用構造体、そして他方では、少なくとも1の加熱用層(46)の形状の少なくとも1の霜処理システムを含んでおり、同加熱用層が、耐久性のある消音用構造体の開放区域と、少なくとも部分的に共働する、音波を透らせる開放区域を有しており、耐久性のある消音用構造体(32)が、開口部を有する、少なくとも1の外装用層(36)を含んでおり、少なくとも1の加熱用層(46)が外装用層(36)の下に配置してあることを特徴とする航空機の消音用被覆材。
【請求項2】
耐久性のある消音用構造体が、ほぼ線形の閉塞区域を生ずるように配置してある開
放区域を有し、加熱用層(46)が、少なくとも1の平らな線形伝導体要素(48)
を含んでおり、同要素の巾が外装用層の閉塞区域の巾以下であることを特徴とする、
請求項1による消音用被覆材。
【請求項3】
加熱用層(46)が、処理すべき区域に延びている、蛇行状の線形電導性要素を含むことを特徴とする、請求項2による消音用被覆材。
【請求項4】
加熱用層(46)が、直列配置で連結してある複数の線形電導性要素を含むであることを特徴とする、請求項2による消音用被覆材。
【請求項5】
加熱用層(46)が、並列配置で連結してある複数の線形電導性要素を含むことを特徴とする、請求項2による消音用被覆材。
【請求項6】
加熱用層が、少なくとも1の電導性布(54)を含んでおり、同電導性布が、耐久性のある消音用構造体の開放表面の比率の変化が少なくなるように、耐久性のある消音用構造体の開放区域と少なくとも部分的に共働する、音波を透らせる開口部(56)を含んでいることを特徴とする、請求項2による消音用被覆材。
【請求項7】
加熱用層(46)が、電導性要素(48)を埋没する、少なくとも1の絶縁要素を含むことを特徴とする、請求項2から6までのいずれか1の請求項による消音用被覆材。
【請求項8】
防音処理のための被覆材(26)で、少なくとも部分的に被覆されており、同被覆材が、一方では、内側から外側に、反射層、少なくとも1の蜂窩状構造体および開放面の特定の比率を有する耐久性のある消音層、他方では、耐久性のある消音用構造体の開放区域と、少なくとも部分的に共働する、音波を透し得る開放区域を含む、少なくとも1の加熱用層(46)の形状の少なくとも1の霜処理システムを含んでおり、耐久性のある消音用構造体(32)が、開口部(38)を有する、少なくとも1の外装用層(36)を含んでいて、および少なくとも1の加熱用層(46)が外装用層(36)の下に配置してあることを特徴とする、航空機の推進用集合体(10)のナセル(14)の空気の取入れ口(22)。
【請求項9】
空気取入れ口が消音用被覆材で部分的に被覆されており、一方では、内側から外側に、反射層(28)、少なくとも1の蜂窩状構造体(30)および開口部(38)を有する外装用層(36)と共に耐久性のある消音用構造体、他方では、耐久性のある消音用構造体の開放区域と少なくとも部分的に共働する、音波を透し得る開放区域を含む外装用層(36)の下に配置してある少なくとも1の加熱用層(46)の形の少なくとも1の霜処理システム、ならびに少なくとも1の振動発振器(64)の形の点型霜処理システムを含むことを特徴とする、航空機の推進用集合体(10)のナセルの空気の取入れ口。
【請求項10】
少なくとも1の同点型霜処理システムが、ナセルの外面(44)のレベルで、および/またはナセル内において、ほぼ2時から4時までおよびほぼ8時から10時までに延びている角区域(66)のレベルに配置してあることを特徴とする、請求項9によるナセルの空気取入れ口。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2010−510428(P2010−510428A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536773(P2009−536773)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052333
【国際公開番号】WO2008/059168
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(508009851)エアバス フランス (19)