ジョグボール装置
【課題】例えばGUI上等において、カーソルの移動を安定して且つ適切に行う。
【解決手段】カーソル(9)を移動させるために回転可能なジョグボール(2)と、ジョグボールが回転される回転量を、複数の方向別に測定する測定手段(11)と、測定された回転量を複数の方向別に累積する累積手段(12)と、カーソルを移動させるべき移動方向となり得る一又は複数の方向候補に、対応付けられた一又は複数の領域に分割された判定領域上で、累積された回転量に基づいて、複数の領域のうちの一つの領域を選択し、一又は複数の方向候補のうち選択された一つの領域に対応する一つの方向候補を、移動方向として特定する特定手段(13)とを備える。一又は複数の方向候補は、GUI上でカーソルを移動させる際に、GUIの種類及びカーソルの現在位置に応じてカーソルを移動可能な方向に限定される。
【解決手段】カーソル(9)を移動させるために回転可能なジョグボール(2)と、ジョグボールが回転される回転量を、複数の方向別に測定する測定手段(11)と、測定された回転量を複数の方向別に累積する累積手段(12)と、カーソルを移動させるべき移動方向となり得る一又は複数の方向候補に、対応付けられた一又は複数の領域に分割された判定領域上で、累積された回転量に基づいて、複数の領域のうちの一つの領域を選択し、一又は複数の方向候補のうち選択された一つの領域に対応する一つの方向候補を、移動方向として特定する特定手段(13)とを備える。一又は複数の方向候補は、GUI上でカーソルを移動させる際に、GUIの種類及びカーソルの現在位置に応じてカーソルを移動可能な方向に限定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)上でカーソルを移動させるために、リモコンやパソコン等の本体に設けられるジョグボール装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のジョグボール装置としては、ジョグボールにおける方向別の回転に伴って発生する信号からカーソルの移動方向を特定するものがある。ここで特に、ジョグボールの回転開始直後や回転終了直前には、ユーザの手動操作による回転という性質上、回転動作にブレが生じ易い。このため、特許文献1では、ジョグボールの回転開始直後に発生した信号や、ジョグボールの回転終了直前に発生した信号を無効にする技術が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−143228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、ジョグボールの回転開始直後から回転終了直前までの間に生じたブレについては、何ら対応不可能である。しかも、ジョグボールの回転開始直後における正しい回転動作や、回転終了直前における正しい回転動作については、完全に無駄とされてしまう。このため、カーソル移動についての簡易操作を可能ならしめるというジョグボール本来の機能を害しかねないという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、例えばGUI上等において、カーソルの移動を安定して且つ適切に行うことを可能ならしめるジョグボール装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載のジョグボール装置は、カーソルを移動させるために回転可能なジョグボールと、該ジョグボールが回転される回転量を、複数の方向別に測定する測定手段と、該測定された回転量を前記複数の方向別に累積する累積手段と、前記カーソルを移動させるべき移動方向となり得る一又は複数の方向候補を、前記累積された回転量と、前記一又は複数の方向候補毎に設定される閾値との関係に基づいて、前記移動方向として特定する特定手段とを備え、前記一又は複数の方向候補は、GUI上で前記カーソルを移動させる際に、前記GUIの種類及び前記カーソルの現在位置に応じて前記カーソルを移動可能な方向に限定される。
【0007】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、発明を実施するための最良の形態としての本発明の実施形態に係るジョグボール装置について順に説明する。
【0009】
本発明の第1ジョグボール装置に係る実施形態は、カーソルを移動させるために回転可能なジョグボールと、該ジョグボールが回転される回転量を、複数の方向別に測定する測定手段と、該測定された回転量を前記複数の方向別に累積する累積手段と、前記カーソルを移動させるべき移動方向となり得る一又は複数の方向候補を、前記累積された回転量と、前記一又は複数の方向候補毎に設定される閾値との関係に基づいて、前記移動方向として特定する特定手段とを備え、前記一又は複数の方向候補は、GUI上で前記カーソルを移動させる際に、前記GUIの種類及び前記カーソルの現在位置に応じて前記カーソルを移動可能な方向に限定される。
【0010】
本発明の第2ジョグボール装置に係る実施形態は、カーソルを移動させるために回転可能なジョグボールと、該ジョグボールが回転される回転量を、複数の方向別に測定する測定手段と、該測定された回転量を前記複数の方向別に累積する累積手段と、前記カーソルを移動させるべき移動方向となり得る一又は複数の方向候補に、対応付けられた一又は複数の領域に分割された判定領域上で、前記累積された回転量に基づいて、前記複数の領域のうちの一つの領域を選択し、前記一又は複数の方向候補のうち前記選択された一つの領域に対応する一つの方向候補を、前記移動方向として特定する特定手段とを備え、前記一又は複数の方向候補は、GUI上で前記カーソルを移動させる際に、前記GUIの種類及び前記カーソルの現在位置に応じて前記カーソルを移動可能な方向に限定される。
【0011】
本発明の第2ジョグボール装置に係る実施形態によれば、カーソルは、例えばGUI上に表示されている。典型的には、GUI上で、矩形や島状に区分された複数の領域間で、カーソルは移動可能とされる。例えば、3×3のマトリクス状の領域に区分されていれば、それらの中央にあるカーソルは、上下及び左右並びに斜め四方向の合計8方向に移動可能とされる。
【0012】
その動作時に、ユーザによるカーソル移動用の操作として、例えばリモコンやコンピュータ機器本体に取り付けられたジョグボールが、ユーザの手動操作によって、カーソルを移動させようとする方向に回転される。すると、例えばx方向とy方向との直交する二方向の各々についてなど、複数の方向別にジョグボールの回転量が測定される。具体的には、ジョグボールの回転は、例えば、これに密着して回転する小型ローラの回転として測定され、測定結果が電気的なパルスとして出力される。或いは、ジョグボール内に配置された磁石による磁場変化として測定され、測定結果がやはり電気的なパルスとして出力される。すると、測定された回転量が、例えばプロセッサ、メモリ等を含んで構成される累積手段によって、複数の方向別に累積される。更に、例えばプロセッサ、メモリ等を含んで構成される特定手段によって、該累積された回転量に基づいて、カーソルを移動させるべき移動方向が特定される。具体的には、例えば、移動方向の候補の中で、蓄積された回転量が示す方向を、移動方向として特定する。更に、その蓄積された回転量の絶対値のいずれか一方があらかじめ設定された移動方向を特定するか否かの閾値を超えた場合に、移動方向として特定する。
【0013】
従って、ジョグボールにおける、特に回転の開始直後や停止直前を含めた回転の期間全域に亘って、ユーザによるジョグボールの回転動作に大なり小なりブレがあったとしても、ユーザが本来動かそうとする方向の回転量である指向性の高い動作と比べて、指向性に乏しい動作に伴うブレが累積値に占める割合は、顕著に小さくなる。仮に、ジョグボールの回転が検知された方向が、そのままカーソルを移動すべき方向に対応しているものとして扱うのでは、特に回転の開始直後や停止直前などにブレが大きく発生すると、カーソルを移動すべき方向が不安定或いは不特定になってしまうのである。しかるに、本発明によれば、そのようなブレが顕著に低減されるので、カーソルの移動は、その分だけ安定し、移動方向は適切且つ確実に特定される。
【0014】
本発明では特に、このような移動方向の特定に際して、一又は複数の領域に分割された判定領域が特定手段により使用される。該一又は複数の領域は、カーソルを移動させるべき移動方向となり得る一又は複数の方向候補に対応付けられている。このような判定領域上で、一又は複数の領域のうち、蓄積された回転量に基づいて一つの領域が選択され、更に、この選択された一つの領域に対応する方向候補が、移動方向として特定される。
【0015】
このような一又は複数の方向候補は、GUI上でカーソルを移動させる際に、GUIの種類及びカーソルの現在位置に応じて、カーソルを移動可能な方向に限定される。即ち、GUIの種類からして、又はこれに加えて若しくは代えてカーソルの現在位置からして、カーソルが移動し得ない方向は、方向候補から除外される。ここに「GUIの種類」とは、例えばカーソルが上下のみに移動可能なGUI、カーソルが左右のみに移動可能なGUI、カーソルが上下左右のみに移動可能なGUI、カーソルが上下左右に加えて斜めにも移動可能なGUIなど、カーソルが移動可能な方向により分類される種類を意味する。従って、例えば、カーソルが上下のみに移動可能なGUIであれば、左右方向は、方向候補から除外される。また「カーソルの現在位置」とは、特定種類のGUIにおいて、移動可能なカーソルの現在における位置を意味する。従って、例えば、カーソルが上下のみに移動可能なGUIの場合であれば、カーソルがGUIの下端に位置すると、下方向は方向候補から除外されると共に、カーソルがGUIの上端に位置すると、上方向は方向候補から除外される。よって、カーソルを中心として、カーソルを移動不可能な領域が除かれた上で、一又は複数の領域に分割された判定領域上で、累積された回転量に基づいて、一つの領域が選択されることになるので、ユーザが本来動かそうとするカーソルの移動方向が特定され易くなる。
【0016】
以上のように本発明によれば、累積手段によって累積された回転量に基づいて、特定手段によって、GUIの種類及びカーソルの現在位置に応じて限定された方向候補に対応付けられる領域からなる判定領域を用いて、カーソルを移動させるべき移動方向が特定される。このため、カーソル移動を、ブレがなく非常に安定したものにできる。
【0017】
本発明の第2ジョグボール装置の実施形態の一態様では、前記特定手段は、前記判定領域として複数の判定領域を、前記種類及び前記現在位置の少なくとも一部について、前記種類及び前記現在位置の別に格納するメモリを有し、前記移動方向を特定する際に、前記格納された複数の判定領域の中から前記種類及び前記現在位置に応じた一つの判定領域を取得し、該取得された一つの判定領域上で、前記移動方向を特定する。
【0018】
この態様によれば、最初の移動方向を特定する際に又はそれよりも以前に予め生成された複数の判定領域が、GUIの種類及びカーソルの現在位置(但し、特定のGUIにおいてカーソルの現在位置となり得る位置を含む)の少なくとも一部について、GUIの種類及びカーソルの現在位置(但し、特定のGUIにおいてカーソルの現在位置となり得る位置)の別に、メモリに格納される。その後、実際に移動方向を特定する際には、先ず、メモリに格納された複数の判定領域の中から、現時点におけるGUIの種類及びカーソルの現在位置に応じた一つの判定領域が取得される。続いて、この取得された一つの判定領域上で、移動方向が特定される。従って、実際に移動方向を特定する際には、これに先立って生成された判定領域をメモリから取得して利用すればよいので、ユーザが特定のGUI上で動かそうとするカーソルの移動方向を極めて迅速且つ簡単に特定でき、ブレを抑えることも可能になる。
【0019】
尚、複数の判定領域は、最初に移動方向を特定する際に、全てのカーソルの現在位置となり得る位置について一挙に生成されてもよいし、移動方向を特定する毎に、カーソルの現在位置に対応する判定領域として、一つずつ生成してもかまわない。
【0020】
この態様では、前記特定手段は、前記複数の判定領域を、前記少なくとも一部について、前記種類及び前記現在位置の別に生成し、前記生成された判定領域を、前記メモリに格納してもよい。
【0021】
このように構成すれば、特定手段によって、最初の移動方向を特定する際に、複数の判定領域が、GUIの種類毎に一挙に又は現在位置毎に生成されて、メモリに格納される。従って、特定手段による移動方向の特定が、各GUIに対して行われれば行われるほど、或いは、各現在位置に対して行われれば行われるほど、多種多様の判定領域がメモリに格納されるので、実用上極めて有利である。
【0022】
上述した特定手段がメモリを有する態様では、前記特定手段は、前記格納された複数の判定領域の中から前記一つの判定領域を取得できない場合には、デフォルトの判定領域上で、前記移動方向を特定してもよい。
【0023】
このように構成すれば、あるGUIにおけるカーソルの現在位置に対応して、メモリから判定領域を取得可能であれば、取得された判定領域を使用すれば、迅速且つ簡単に移動方向を特定できる。他方で、メモリから判定領域を取得不可能であれば、デフォルトの判定領域を使用して移動方向を特定することで、移動方向を特定できる。
【0024】
本発明の第2ジョグボール装置の実施形態の他の態様では、前記複数の領域の形状は、前記種類及び前記現在位置の少なくとも一部について、前記種類及び前記現在位置の別に相異なる。
【0025】
この態様によれば、判定領域をなす複数の領域の形状は、GUIの種類及びカーソルの現在位置の少なくとも一部について、GUIの種類及びカーソルの現在位置の別に相異なる。ここに「形状」とは、大きさも含めた広義の形状の意味である。「形状が相異なる」とは、大きさを含まない狭義の形状のみが相異なる場合と該狭義の形状及び大きさの両方が相異なる場合とを含む。このような複数の領域の形状は、例えば特定手段で設定されるが、別途設けられた、形状を設定する手段により設定されてもよい。また、形状についての「少なくとも一部」とは、判定領域をなす複数の領域のうち一又は複数の領或についての、少なくとも一部という意味である。よって、GUIの種類及びカーソルの現在位置に応じて複数の領域の形状が変化する。判定領域を用いて、効率的に移動方向を特定可能となり、ユーザが本来動かそうとするカーソルの移動方向だけが特定され、ブレを抑えることが可能になる。
【0026】
本発明の第2ジョグボール装置の実施形態の他の態様では、前記特定手段は、前記累積された回転量が所定閾値を越えた場合に、前記移動方向を特定する。
【0027】
この態様によれば、累積された回転量が、所定閾値を越えた場合に、移動方向が特定される。典型的には、複数の方向別に累積された回転量が、予め複数の方向別に設定された所定閾値のうち対応する各々の値を越えるかどうかが、ジョグボールの一連の回転動作中に亘ってモニタリング或いはウオッチされる。そして、複数の方向別に累積された回転量のうちいずれか一つが、対応する所定閾値を越えた場合に、移動方向が、その閾値を超えた方向に特定される。ここで、回転量の累積値に占める、ユーザが本来動かそうとする方向に対応する成分と比べて、ブレに対応する成分は、ブレという性質上、その増加速度が顕著に遅い。このため、ブレによって回転量の累積値が、所定閾値を超える可能性は、殆ど又は実践上全くない。その結果として、ブレにより移動方向が不安定或いは不確実になる可能性は、殆どなくなる。仮に、何らかの閾値を設けて、ブレの回転量或いは回転速度が、この閾値を超えるか否かで移動方向を特定する構成を採用すれば、ブレの影響がそのまま顕著に出現して、不安定な或いは不確実な移動方向となることが予想される。
【0028】
本発明の第2ジョグボール装置の実施形態の他の態様では、前記特定手段によって時間的に相前後して特定される複数の移動方向の相互関係に基づいて、前記特定された移動方向を有効なものとして出力するか否かを判定する出力判定手段を更に備える。
【0029】
この態様によれば、特定手段により、カーソルを移動させるべき移動方向が特定されると、続いて、例えばプロセッサ、メモリ等を含んで構成される出力判定手段によって、時間的に相前後して特定される複数の移動方向の相互関係に基づいて、特定された移動方向を有効なものとして出力するか否かが判定される。ここで、有効なものとして出力すると判定されれば、特定された移動方向は、当該ジョグボール装置から外部装置等に対して出力される。他方、ここで、有効なものとして出力しないと判定されれば、特定された移動方向は、当該ジョグボール装置から外部装置等に対して出力されることはない。即ち、一旦特定されはしたが、その移動方向は、無効とされる。従って、一旦回転された後におけるジョグボールの回転動作中であれば、極端な移動方向の変化が発生しない限りは、その移動方向の変化はブレに過ぎないとして、即ち回転動作を有効なものとして扱って、特定された移動方向は、有効なものとされる。逆に、一旦回転された後におけるジョグボールの回転動作中であっても、極端な移動方向の変化が発生した場合には、その移動方向の変化はユーザにより意図されたものであるとして、即ち特定された移動方向は、有効でないものとされる。これにより、再びカーソルを移動させるべき移動方向の特定が行われ、典型的には、移動方向に変化が加えられることになる。
【0030】
このように一旦移動方向が特定された後には、その特定された移動方向を基準として、その後に検出される回転量については、生かせるものはなるべく生かすことで、ジョグボールの回転動作が終わるまで、安定して移動方向を特定できる。しかも、一旦移動方向が特定された後でも、その特定された移動方向を基準として、方向に変化が意図的に加えられた回転量については、適切にこれに対応して、移動方向を特定できる。
【0031】
この態様では、前記出力判定手段は、前記複数の移動方向が同じである場合に、前記特定された移動方向を有効なものとして出力してもよい。
【0032】
このように構成すれば、複数の移動方向が同じである場合に、特定された移動方向は、有効扱いされ、他方で、複数の移動方向が同じでない場合に、特定された移動方向は、有効扱いされないので、比較的簡単な場合分け処理によって、移動方向の維持及び変更を適切に実施可能となる。
【0033】
本実施形態のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から明らかにされる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例について図を参照しつつ説明する。
<第1実施例>
先ず、本実施例に係るジョグボール装置の構成について図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、本実施例に係るジョグボール装置100の概要図であり、図2は、該ジョグボール装置100のブロック図である。
【0035】
図1において、リモコン1は、例えば赤外線通信により、ユーザによるカーソル移動用の操作に対応する信号を、画像表示装置10に対して出力する。リモコン1及び画像表示装置10は、本発明に係る「ジョグボール装置」の一例として機能するように構成されている。
【0036】
図1に示すように、リモコン1は、ジョグボール2と、回転量測定部3と、CPU4と、送信部5と、図示しない各種スイッチとを備える。ジョグボール2は、リモコン1の表側に取り付けられ、後述するモニタ18に表示されるGUI上のカーソル20を移動させるために、ユーザの手動操作により回転可能である。ジョグボール2内には、回転量を出力するために、例えば磁石が組み込まれている。
【0037】
回転量測定部3は、本発明に係る「測定手段」の一例として、例えば、x方向とy方向との直交する二方向の各々について、ジョグボール2の回転量を測定する。回転量測定部3は、ジョグボール2の回転に伴って、ジョグボール2内の磁石による磁場変化を検出し、その検出結果として、電気的なパルス信号を出力する。また、この出力信号から、x方向及びy方向の各々の回転量x,yを算出する。
【0038】
CPU4は、リモコン1の各部に接続されており、ジョグボール2の回転に伴って、回転量測定部3によって出力された回転量x,yを示す信号を、送信部5に入力する。
【0039】
送信部5は、回転量測定部3によって出力された回転量x,yを示す信号を、画像表示装置10に対し、赤外線により送信する。
【0040】
画像表示装置10は、受信部11と、CPU12と、モニタ18とから構成される。CPU12は、信号処理部13と、GUI表示処理部17とを備えている。受信部11は、送信部4から送信される赤外線信号を受信し、CPU12に入力する。
【0041】
CPU12は、リモコン1からの信号に応答して、画像表示装置10の各部を制御する。CPU12は、GUI画面をモニタ18に表示すると共に、リモコン1からの赤外線信号に基づいて、GUI画面上のカーソル20を移動する。
【0042】
図2において、信号処理部13は、回転量累積部14と、移動方向特定部15と、出力判定部16とを備えており、ジョグボール2が回転される回転量x,yから、カーソル20を移動させるべき移動方向を特定する。
【0043】
回転量累積部14は、本発明に係る「累積手段」の一例として、回転量測定部3によって測定された回転量x,yを、x方向及びy方向の二方向別に累積する。回転量累積部14は、図示しないプロセッサやメモリを備えており、単位時間T0のジョグボール2の回転量x,yを累積して、x方向の累積値X=Σxi、及びy方向の累積値Y=Σyiを算出する。
【0044】
移動方向特定部15は、本発明に係る「特定手段」の一例として、図示しないプロセッサや、メモリ15aを備えており、回転量累積部14によって算出された、二方向別の累積値X,Yに基づいて、カーソル20を移動させるべき移動方向を特定する。特に、本実施例では、移動方向特定部15は、前記移動方向を特定する際に用いられる方向特定図を、カーソル20の移動に伴って交換する。方向特定図は、あるGUI画面上で、カーソル20の現在位置から移動可能な方向候補に対応付けられた複数の領域に分割されてなる。
【0045】
移動方向特定部15は、メモリ15aに、GUIタイプに基づく複数の方向特定図を格納している。GUIタイプは、本発明に係る「GUIの種類」の一例として、GUI画面上でカーソル20が、どのように移動可能であるかの別を示す情報であり、後述のGUI表示処理部17によって移動方向特定部15に入力される。移動方向特定部15は、該GUIタイプが示す経路の所定位置に在るカーソル20の各々に対応する複数の方向特定図を生成し、メモリ15aに格納する。移動方向特定部15は、移動方向の特定を行う際に、カーソル20の現在位置に対応する方向特定図をメモリ15aから読み出すが、カーソル20の現在位置に対応する方向特定図を読み出せない場合に、後述のデフォルトの方向特定図を設定する。一方、現在位置に対応する方向特定図を読み出せた場合に、該読み出された方向特定図を設定する。こうして、設定された方向特定図が示す一又は複数の領域、即ちカーソル20を移動させるべき方向候補の中で、累積値X,Yが示す方向を、移動方向として特定する。
【0046】
このように、方向特定図がカーソルの移動に伴って変更されることで、カーソルを移動不可能な方向に対応する領域(即ち、方向候補となり得ない方向に対応する領域)が、判定領域を構成することはなくなるので、ユーザが本来動かそうとするカーソルの移動方向が特定され易くなる。
【0047】
方向特定図について図3から図6を参照して説明する。ここに図3は、GUI表示画面であり、図4から図6は、ジョグボール2の回転量と回転方向とを示すxy座標であって、カーソル20の移動方向を特定するための方向特定図である。
【0048】
方向特定図は、本発明に係る「判定領域」を示すものの一例である。本実施例では、カーソル20の現在位置に対応する複数の方向特定図が設定可能である。複数の方向特定図は、形状や大きさが相異なる一又は複数の領域に分割されている。該一又は複数の領域が、カーソル20の移動に伴って、変更される。具体的には、一又は複数の領域は、GUI画面21の全体に対応しておらず、カーソル20が現在位置する、GUI画面21上の選択領域、及び該選択領域に隣り合った選択領域の範囲に対応している。例えば、図3において、GUI画面21は、画面左側で上下方向に伸びるエリア1からエリア6までの第1選択領域と、エリア5の画面右側に隣接し、左右方向に伸びるエリアAからエリアCまでの第2選択領域とを設けている。
【0049】
GUI画面21のGUIタイプは、例えば、第1選択領域に沿って、カーソル20がGUI画面21の画面中央より左側を上下のみに移動する第1GUIタイプと、第2選択領域に沿って、カーソル20がGUI画面21の画面中央より下側を左右に移動する第2GUIタイプと、第1及び第2の選択領域が接続している位置で、カーソル20が上下に加えて右に移動する第3GUIタイプとを示す。
【0050】
移動方向特定部15は、GUI表示処理部17によって上述のGUIタイプが入力されて初めて、GUIタイプに基づいて、カーソル20の現在位置になり得る位置に対応する複数の方向特定図を生成する。移動方向特定部15は、実際のカーソル20の現在位置に対応する一つの方向特定図を取得不可能な場合には、例えばデフォルトの方向特定図22を設定している。
【0051】
図4において、方向特定図22は、GUIタイプに依存しないデフォルトの方向特定図であって、例えば、3×3のマトリクス状の領域に区分されており、8方向別に、所定値X0,Y0が設定されている。この場合、座標中央(0,0)にあるカーソル20は、上下方向及び左右方向並びに斜め四方向の合計8方向に移動可能とされる。これらの8方向がカーソル20を移動させるべき方向候補とされる。移動方向特定部15は、累積値X,Yを元に、これらの8方向の方向候補の中から一つの方向候補を選択し、カーソル20の移動方向を特定する。
【0052】
移動方向特定部15は、例えば、単位時間T0に累積された回転量(累積値)X,Yが、右上方向への回転を示す場合に、二方向別の累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、あらかじめ設定された、方向判定を行うか否かの閾値X_lim,Y_limを超えているか否かを判定する。移動方向特定部15は、累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が閾値X_lim,Y_limを越えている場合に、移動方向D1を「右上」に特定する。これにより、カーソル20を移動させるべき移動方向D1が特定される。
【0053】
移動方向特定部15は、GUIタイプに基づく、カーソル20の現在位置になり得る位置に対応する複数の方向特定図を生成した後に、実際のカーソル20の現行位置に対応する一つの方向特定図を設定する。
【0054】
例えば、図3において、カーソル20が第1選択領域のエリア2に位置する。この場合、GUIタイプが第1GUIタイプであって、方向特定図に示される方向候補は、該エリア2に隣接するエリア1及びエリア3に対応する上下方向に限定される。
【0055】
図5において、方向特定図23は、現在位置がエリア2となるカーソル20に対応する判定領域として、上下の2つの領域に分割されている。これらの2つの領域に対応する2つの方向が方向候補となる。移動方向特定部15は、累積値X,Yに基づいて、これらの2方向のいずれか一方を移動方向として特定する。
【0056】
また、図3において、カーソル20が、第2選択領域に隣接する第1選択領域のエリア5に位置する。この場合、GUIタイプが第3GUIタイプであって、方向特定図に示される方向候補は、エリア5に隣接する、エリア4及びエリア6並びにエリアAに対応する上下方向及び右方向に限定される。
【0057】
図6において、方向特定図24は、現在位置がエリア5となるカーソル20に対応する判定領域として、上下及び右の3つの領域に分割されている。これらの3つの領域に対応する3つの方向が方向候補となる。移動方向特定部15は、累積値X,Yに基づいて、これらの3方向のいずれかを移動方向として特定する。
【0058】
移動方向特定部15は、上述の方向特定図23,24を使用する場合にも、デフォルトの方向特定図22を使用する場合と同様に、累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、方向判定を行うか否かの閾値X_lim,Y_limを超えた場合に、移動方向を特定する。
【0059】
移動方向特定部15は、例えば、単位時間T0に累積された回転量(累積値)X,Yが、右方向への回転を示す場合に、二方向別の累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、方向判定を行うか否かの閾値X_lim,Y_limを超えているか否かを判定する。累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、該閾値X_lim,Y_limを越えている場合には、移動方向D1を「右」に特定する。これにより、カーソル20を移動させるべき移動方向D1が特定される。
【0060】
図2において、出力判定部16は、本発明に係る「出力判定手段」の一例として、移動方向特定部15によって特定された移動方向D1を有効なものとして出力するか否かを判定する。出力判定部14は、図示しないプロセッサやメモリを備えており、時間的に相前後して特定される2つの移動方向、即ち前回の移動方向D0と、最新の移動方向D1との相互関係に基づいて、前記判定を行う。
【0061】
出力判定部16は、前回の移動方向D0と最新の移動方向D1とが同じである場合に、最新の移動方向D1を有効なものとし、移動方向D1を出力方向D1’として出力する。一方、前回の移動方向D0と最新の移動方向D1とが同じでない場合に、最新の移動方向D1を無効なものとし、出力方向D1’を“Null”として出力すると共に、移動方向D1を前回の移動方向D0とする。このように、移動方向D1を前回の移動方向D0とすることにより、この後に時間的に相前後する2つの移動方向、即ち最新の移動方向D1と、次回特定される移動方向D2とを、同一の制御ループで判定可能である。
【0062】
尚、このように前回の移動方向D0及び最新の移動方向D1という二つの移動方向のみならず、より最新の移動方向D1から数えてN(但し2以上の整数)回分の移動方向を用いて、例えば、同一方向がN回連続しているかにより、このような判断を行うことも可能である。
【0063】
GUI表示処理部17は、出力判定部16によって出力された出力方向D1’を示す信号に基づいて、カーソル20を示す画像データを生成すると共に、GUI画面21の画像データを生成する。GUI表示処理部17は、これらの2つの画像データを併せた画像イメージを、モニタ18に表示する。特に、本実施例では、GUI表示処理部17は、回転量累積部14によって出力される累積値X,Yが、方向判定を行うか否かの閾値X_lim,Y_limを超えている場合に、GUI画面21に対応するGUIタイプを、移動方向特定部15に入力する。
【0064】
モニタ8は、図示しないケーブルからの画像や、GUI画面等を表示すると共に、該GUI画面上にカーソル20を表示する。
【0065】
次に、本実施例に係るジョグボール装置100のカーソル移動の制御処理について、図7から図9を参照して説明する。
(カーソル移動の制御処理)
図7は、本実施例に係るジョグボール装置100のカーソル移動の制御処理を示すフローチャートである。
【0066】
具体的には、図7において、リモコン1側にて、回転量測定部3によって、ジョグボール2の回転量x,yが検出されたか否かが判定される(ステップS31)。ここで、ジョグボール2の回転量x,yが検出されていないと判定された場合には(ステップS31:NO)、カーソル移動操作がなされていないとして、該操作がなされるまで待機状態になる。一方、回転量x,yが検出されたと判定された場合には(ステップS31:YES)、送信部5によって、回転量x,yを示す信号が画像表示装置10に送信される。
【0067】
画像表示装置10側にて、受信部11で回転量x,yを示す信号が受信されると、回転量累積部14によって、回転量の検出が開始されてからの経過時間T1が、所定の検出単位時間T0に達しているか否かが判定される(ステップS32)。ここで、経過時間T1が単位時間T0に達している場合には(ステップS32:NO)、回転量x,yを累積する単位時間が経過したとして、経過時間T1及び累積値X,Yが零に戻される(ステップS40,S39)。即ち、この場合には、ユーザが意図するカーソル移動に対応する一連のジョグボールの操作が完了したものとされる。一方、経過時間T1が単位時間T0に達していない場合には(ステップS32:YES)、x方向及びy方向の二方向の回転量x,yが各々に累積されて、x方向の回転量xの累積値X、及びy方向の回転量yの累積値Yが出力される(ステップS33)。即ち、この場合には、ユーザが意図するカーソル移動に対応する一連のジョグボールの操作が継続中とされる。
【0068】
次に、移動方向特定部15にて、二方向別の累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、累積値X,Yの各々に対応する、方向判定を行うか否かの閾値X_lim,Y_limより大きいか否かが判定される(ステップS34)。ここで、累積値X,Yの絶対値の両方が閾値X_lim,Y_limより大きくないと判定された場合には(ステップS34:NO)、累積値X,Yがブレと想定されるため、累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、閾値X_lim,Y_limより大きくなるまで、回転量x,yを累積する制御ループが繰り返される。一方、累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、閾値X_lim,Y_limより大きいと判定された場合には(ステップS34:YES)、方向特定図切り替え処理が行われる(ステップS35)。
【0069】
図8において、方向特定図切り替え処理では、先ず、GUI表示処理部17の入力によって、移動方向特定部15にて、GUIタイプが取得されたか否かが判定される(ステップS40)。ここで、GUIタイプが取得されていない場合には(ステップS40:NO)、CPU12によって、GUI表示処理部17に対し、GUIタイプの出力が指示される。一方、GUIタイプが取得された場合には(ステップS40:YES)、GUIタイプに基づいて、GUI画面21上のカーソル20の現在位置になり得る位置に対応する、複数の方向特定図が既に生成されたか否かが判定される(ステップS41)。ここで、複数の方向特定図が未だ生成されない場合には(ステップS41:NO)、GUIタイプに基づく、カーソル位置に対応する複数の方向特定図が生成される(ステップS42)。生成された複数の方向特定図は、動方向特定部15のメモリ15aに格納される。一方、複数の方向特定図が既に生成された場合には(ステップS41:YES)、GUIタイプが変更されない限り、複数の方向特定図の生成は、改めて行われない。この後、GUI画面21上のカーソル20の現在位置に対応する、一つの方向特定図がメモリ15aから読み出され(ステップS43)、カーソル20の現在位置に対応する方向特定図が取得されない場合には(ステップS44:NO)、デフォルトの方向特定図22に設定される(ステップS46)、又は、現行、デフォルトの方向特定図が設定されていた場合には、デフォルトの方向特定図22が継続して設定される。一方、カーソル20の現在位置に対応する方向特定図が取得された場合には(ステップS44:YES)、メモリ15aから読み出された、カーソル20の現在位置に対応する方向特定図が設定される(ステップS45)。こうして、設定された方向特定図が用いられて、移動方向D1が特定される(ステップS36)。
【0070】
移動方向D1が特定された後、出力判定部16にて、出力判定処理が行われる(ステップS37)。図9において、この処理では、移動方向特定部15によって移動方向D1が出力されると(ステップS51)、この最新の移動方向D1が、前回特定された移動方向D0に同じか否かが判定され(ステップS52)、ここで、最新の移動方向D1が前回の移動方向D0と異なる場合には(ステップS52:NO)、画像表示装置5へと送信される出力方向D1’が「Null」とされると共に、前回の移動方向D0が最新の移動方向D1とされて(ステップS54)、出力判定処理が終了される。一方、最新の移動方向D1が前回の移動方向D0と等しい場合には(ステップS52:YES)、前記出力方向D1’が最新の移動方向D1とされて(ステップS53)、出力判定処理が終了される。
【0071】
次に、CPU12によって、出力方向D1’に基づいて、カーソル20が移動される(ステップS38)。ここで、出力方向D1’が「右」の場合には、カーソル20が、安定して且つ適切に、右方向に移動される。一方、出力方向D1’が「Null」の場合には、カーソル20は移動されることなく、現状位置が保持される。この後、回転量x,yの累積値X,Yが零に戻され(ステップS39)、一連のカーソル移動の制御処理が終了される。
【0072】
このように、第1実施例のジョグボール装置は、二方向別にジョグボールの回転量を累積し、これらの累積された回転量の絶対値のいずれか一方が方向判定を行うか否かの閾値を越えた場合に、カーソル20を移動させるべき方向候補の中で、累積された回転量が示す方向を、移動方向として特定する。この移動方向の特定に際して、カーソル20の現在位置に対応する一つの方向特定図を読み出し、読み出された方向特定図を用いて、移動方向を特定する。このように、カーソル20の移動に伴って、方向候補を限定した方向特定図に交換するので、ユーザが本来動かそうとするカーソルの移動方向が特定され易くなる。従って、比較的簡単な処理によって、移動方向を特定することが可能になり、ジョグボールにおける回転の期間全域に亘って、ブレが低減され、カーソル移動を、ブレがなく非常に安定したものにできる。
【0073】
尚、第1実施例では、ジョグボール2の回転量x,yを、x方向及びy方向の二方向別に測定、且つ累積するが、上下及び左右並びに斜め四方向等の複数の方向別に累積してもかまわない。
【0074】
尚、第1実施例では、最初の移動方向を特定する際に、GUIタイプに基づいて、カーソル20の現在位置になり得る位置に対応する複数の方向特定図を生成するが、該複数の方向特定図を一度に生成せずに、一回の移動方向の特定毎に、カーソルの現在位置に対応する一つの方向特定図を生成するようにしてもかまわない。
【0075】
尚、第1実施例では、前記移動方向の特定に際して、二方向別の累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、あらかじめ設定された方向判定を行うか否かの閾値X_lim,Y_limを超えた場合としたが、累積値X,Yの絶対値の両方が、方向判定を行うか否かの閾値X_lim,Y_limを超えた場合としてもかまわない。
<第2実施例>
次に、第2実施例に係るジョグボール装置について、図10及び図11を参照して説明する。
【0076】
図10は、第1実施例における図1と、図11は、第1実施例における図2と同趣旨の模式図である。尚、図10及び図11において、図1及び図2に示した第1実施例に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は省略する。
【0077】
図10において、本実施例に係るジョグボール装置200は、主に、上述した信号処理部13を、画像表示装置10内でなく、リモコン1内に設ける点、リモコン1及び画像表示装置10の間でデータの送受信が可能となっている点、及びユーザの操作履歴に基づく方向特定図を使用する点で、上述した第1実施例と異なる。その他の構成については、第1実施例の場合と概ね同様である。
【0078】
リモコン1は、ジョグボール2と、回転量測定部3と、信号処理部61と、双方向無線部62とを備えている。ジョグボール2の回転に伴って、回転量測定部3は、二方向の回転量x,yを算出し、信号処理部61に入力する。図11において、信号処理部61は、回転量累積部14によって、回転量x,yを二方向別に累積して累積値X,Yを算出した後、移動方向特定部15によって、累積値X,Yに基づいて、方向特定図を使用して移動方向D1を特定する。更に、出力判定部16によって、特定された移動方向D1を有効とするか否かを判定して、出力方向D1’を出力する。この後、出力方向D1’を示す信号を、双方向無線部62から画像表示装置10に対して送信する。特に、本実施例では、双方向無線部62は、出力方向D1’を送信するだけでなく、画像表示装置10から送信されるGUIタイプを受信可能である。
【0079】
画像表示装置10は、双方向無線部63と、CPU12と、モニタ18とから構成されている。CPU12は、GUI表示処理部17を設けている。CPU12は、GUI表示処理部17によって、GUI画面21の画像データを生成すると共に、双方向無線部63で受信される出力方向D1’を示す信号に基づいてカーソル20の画像データを生成し、これらを併せてモニタ18に表示する。こうして、GUI画面21上でカーソル20を移動する。特に、本実施例では、双方向無線部63は、リモコン1側の双方向無線部62と連動して、出力方向D1’を受信するだけでなく、リモコン1に対してGUIタイプを送信可能である。GUI表示処理部17は、これらの双方向無線部62,63を介して、GUIタイプを、リモコン1側の移動方向特定部15に入力する。
【0080】
次に、本実施例に係る方向特定図の生成について、図12及び図13を参照して説明する。移動方向特定部15は、第1実施例と同様に、GUIタイプに基づいて、カーソル20の現在位置になり得る位置に対応する複数の方向特定図を生成する。本実施例では、移動方向特定部15は、更に、図12において、回転量測定部3によって出力される回転量x,yをプロットして、ユーザの操作履歴を解析し、この解析結果によってブレ量を算出する。移動方向特定部15は、算出されたブレ量に基づいて、方向特定図を移動又は回転させることで更新する。例えば、図12に示すように、GUI画面21の第1経路を移動するカーソル20の回転量x,yが、一定時間毎に検出され、この検出履歴がxy座標上に軌跡71となって示される。該軌跡71は、カーソル20が第1経路のエリア1からエリア3に向かって移動された場合に、ブレ量として、移動方向が、例えばθ度右側に逸れていることを示す。このようなユーザの操作履歴を解析して得られるブレ量に基づいて、図13に示すように、GUIタイプに基づいて生成された方向特定図を、反時計方向にθ度回転させる。こうして、カーソル20の位置に対応して変更される方向特定図を、ユーザの操作履歴によって得られるブレ量に基づいて更新し、この更新された方向特定図を、移動方向の特定に用いれば、更に、ユーザが本来動かそうとするカーソル20の移動方向が特定され易くなる。
【0081】
このように、第2実施例のジョグボール装置は、リモコン1内にて、二方向別にジョグボールの回転量を累積し、累積された回転量が示す方向を、移動方向として特定する。該移動方向の特定時に、カーソル20の位置に対応する方向特定図を読み出すと共に、読み出された方向特定図を、ユーザの操作履歴を解析して得られるブレ量に基づいて、回転し、この回転された方向特定図を用いて移動方向を特定する。このように、カーソル20の移動、及びユーザの操作履歴に基づいて、カーソル20を移動させるべき方向候補を限定した方向特定図に交換するので、ユーザが本来動かそうとするカーソルの移動方向が特定され易くなる。従って、比較的簡単な処理によって、移動方向を特定することが可能になり、ジョグボールにおける回転の期間全域に亘って、ブレが低減され、カーソル移動を、ブレがなく非常に安定したものにできる。
【0082】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】第1実施例に係るジョグボール装置の概要図である。
【図2】第1実施例に係るジョグボール装置のブロック図である。
【図3】第1実施例に係るGUI画面を示すモニタの表示画面である。
【図4】第1実施例に係るカーソルの移動方向を特定するデフォルトの方向特定図である。
【図5】第1実施例に係るカーソルの位置に対応する方向特定図である。
【図6】第1実施例に係るカーソルの位置に対応する方向特定図である。
【図7】第1実施例に係るカーソル移動の制御処理を示すフローチャートである。
【図8】第1実施例に係る方向特定図切り替え処理を示すフローチャートである。
【図9】第1実施例に係る出力判定処理を示すフローチャートである。
【図10】第2実施例に係るジョグボール装置の概要図である。
【図11】第2実施例に係るジョグボール装置のブロック図である。
【図12】第2実施例に係るカーソルの回転履歴を示す回転量の軌跡図である。
【図13】第2実施例に係るカーソルの位置、及び操作履歴に対応する方向特定図である。
【符号の説明】
【0084】
1…リモコン、2…ジョグボール、3…回転量測定部、14…回転量累積部、15…移動方向特定部、16…出力判定部、20…カーソル、21…GUI画面,22…方向特定図
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)上でカーソルを移動させるために、リモコンやパソコン等の本体に設けられるジョグボール装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のジョグボール装置としては、ジョグボールにおける方向別の回転に伴って発生する信号からカーソルの移動方向を特定するものがある。ここで特に、ジョグボールの回転開始直後や回転終了直前には、ユーザの手動操作による回転という性質上、回転動作にブレが生じ易い。このため、特許文献1では、ジョグボールの回転開始直後に発生した信号や、ジョグボールの回転終了直前に発生した信号を無効にする技術が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−143228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、ジョグボールの回転開始直後から回転終了直前までの間に生じたブレについては、何ら対応不可能である。しかも、ジョグボールの回転開始直後における正しい回転動作や、回転終了直前における正しい回転動作については、完全に無駄とされてしまう。このため、カーソル移動についての簡易操作を可能ならしめるというジョグボール本来の機能を害しかねないという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、例えばGUI上等において、カーソルの移動を安定して且つ適切に行うことを可能ならしめるジョグボール装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載のジョグボール装置は、カーソルを移動させるために回転可能なジョグボールと、該ジョグボールが回転される回転量を、複数の方向別に測定する測定手段と、該測定された回転量を前記複数の方向別に累積する累積手段と、前記カーソルを移動させるべき移動方向となり得る一又は複数の方向候補を、前記累積された回転量と、前記一又は複数の方向候補毎に設定される閾値との関係に基づいて、前記移動方向として特定する特定手段とを備え、前記一又は複数の方向候補は、GUI上で前記カーソルを移動させる際に、前記GUIの種類及び前記カーソルの現在位置に応じて前記カーソルを移動可能な方向に限定される。
【0007】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、発明を実施するための最良の形態としての本発明の実施形態に係るジョグボール装置について順に説明する。
【0009】
本発明の第1ジョグボール装置に係る実施形態は、カーソルを移動させるために回転可能なジョグボールと、該ジョグボールが回転される回転量を、複数の方向別に測定する測定手段と、該測定された回転量を前記複数の方向別に累積する累積手段と、前記カーソルを移動させるべき移動方向となり得る一又は複数の方向候補を、前記累積された回転量と、前記一又は複数の方向候補毎に設定される閾値との関係に基づいて、前記移動方向として特定する特定手段とを備え、前記一又は複数の方向候補は、GUI上で前記カーソルを移動させる際に、前記GUIの種類及び前記カーソルの現在位置に応じて前記カーソルを移動可能な方向に限定される。
【0010】
本発明の第2ジョグボール装置に係る実施形態は、カーソルを移動させるために回転可能なジョグボールと、該ジョグボールが回転される回転量を、複数の方向別に測定する測定手段と、該測定された回転量を前記複数の方向別に累積する累積手段と、前記カーソルを移動させるべき移動方向となり得る一又は複数の方向候補に、対応付けられた一又は複数の領域に分割された判定領域上で、前記累積された回転量に基づいて、前記複数の領域のうちの一つの領域を選択し、前記一又は複数の方向候補のうち前記選択された一つの領域に対応する一つの方向候補を、前記移動方向として特定する特定手段とを備え、前記一又は複数の方向候補は、GUI上で前記カーソルを移動させる際に、前記GUIの種類及び前記カーソルの現在位置に応じて前記カーソルを移動可能な方向に限定される。
【0011】
本発明の第2ジョグボール装置に係る実施形態によれば、カーソルは、例えばGUI上に表示されている。典型的には、GUI上で、矩形や島状に区分された複数の領域間で、カーソルは移動可能とされる。例えば、3×3のマトリクス状の領域に区分されていれば、それらの中央にあるカーソルは、上下及び左右並びに斜め四方向の合計8方向に移動可能とされる。
【0012】
その動作時に、ユーザによるカーソル移動用の操作として、例えばリモコンやコンピュータ機器本体に取り付けられたジョグボールが、ユーザの手動操作によって、カーソルを移動させようとする方向に回転される。すると、例えばx方向とy方向との直交する二方向の各々についてなど、複数の方向別にジョグボールの回転量が測定される。具体的には、ジョグボールの回転は、例えば、これに密着して回転する小型ローラの回転として測定され、測定結果が電気的なパルスとして出力される。或いは、ジョグボール内に配置された磁石による磁場変化として測定され、測定結果がやはり電気的なパルスとして出力される。すると、測定された回転量が、例えばプロセッサ、メモリ等を含んで構成される累積手段によって、複数の方向別に累積される。更に、例えばプロセッサ、メモリ等を含んで構成される特定手段によって、該累積された回転量に基づいて、カーソルを移動させるべき移動方向が特定される。具体的には、例えば、移動方向の候補の中で、蓄積された回転量が示す方向を、移動方向として特定する。更に、その蓄積された回転量の絶対値のいずれか一方があらかじめ設定された移動方向を特定するか否かの閾値を超えた場合に、移動方向として特定する。
【0013】
従って、ジョグボールにおける、特に回転の開始直後や停止直前を含めた回転の期間全域に亘って、ユーザによるジョグボールの回転動作に大なり小なりブレがあったとしても、ユーザが本来動かそうとする方向の回転量である指向性の高い動作と比べて、指向性に乏しい動作に伴うブレが累積値に占める割合は、顕著に小さくなる。仮に、ジョグボールの回転が検知された方向が、そのままカーソルを移動すべき方向に対応しているものとして扱うのでは、特に回転の開始直後や停止直前などにブレが大きく発生すると、カーソルを移動すべき方向が不安定或いは不特定になってしまうのである。しかるに、本発明によれば、そのようなブレが顕著に低減されるので、カーソルの移動は、その分だけ安定し、移動方向は適切且つ確実に特定される。
【0014】
本発明では特に、このような移動方向の特定に際して、一又は複数の領域に分割された判定領域が特定手段により使用される。該一又は複数の領域は、カーソルを移動させるべき移動方向となり得る一又は複数の方向候補に対応付けられている。このような判定領域上で、一又は複数の領域のうち、蓄積された回転量に基づいて一つの領域が選択され、更に、この選択された一つの領域に対応する方向候補が、移動方向として特定される。
【0015】
このような一又は複数の方向候補は、GUI上でカーソルを移動させる際に、GUIの種類及びカーソルの現在位置に応じて、カーソルを移動可能な方向に限定される。即ち、GUIの種類からして、又はこれに加えて若しくは代えてカーソルの現在位置からして、カーソルが移動し得ない方向は、方向候補から除外される。ここに「GUIの種類」とは、例えばカーソルが上下のみに移動可能なGUI、カーソルが左右のみに移動可能なGUI、カーソルが上下左右のみに移動可能なGUI、カーソルが上下左右に加えて斜めにも移動可能なGUIなど、カーソルが移動可能な方向により分類される種類を意味する。従って、例えば、カーソルが上下のみに移動可能なGUIであれば、左右方向は、方向候補から除外される。また「カーソルの現在位置」とは、特定種類のGUIにおいて、移動可能なカーソルの現在における位置を意味する。従って、例えば、カーソルが上下のみに移動可能なGUIの場合であれば、カーソルがGUIの下端に位置すると、下方向は方向候補から除外されると共に、カーソルがGUIの上端に位置すると、上方向は方向候補から除外される。よって、カーソルを中心として、カーソルを移動不可能な領域が除かれた上で、一又は複数の領域に分割された判定領域上で、累積された回転量に基づいて、一つの領域が選択されることになるので、ユーザが本来動かそうとするカーソルの移動方向が特定され易くなる。
【0016】
以上のように本発明によれば、累積手段によって累積された回転量に基づいて、特定手段によって、GUIの種類及びカーソルの現在位置に応じて限定された方向候補に対応付けられる領域からなる判定領域を用いて、カーソルを移動させるべき移動方向が特定される。このため、カーソル移動を、ブレがなく非常に安定したものにできる。
【0017】
本発明の第2ジョグボール装置の実施形態の一態様では、前記特定手段は、前記判定領域として複数の判定領域を、前記種類及び前記現在位置の少なくとも一部について、前記種類及び前記現在位置の別に格納するメモリを有し、前記移動方向を特定する際に、前記格納された複数の判定領域の中から前記種類及び前記現在位置に応じた一つの判定領域を取得し、該取得された一つの判定領域上で、前記移動方向を特定する。
【0018】
この態様によれば、最初の移動方向を特定する際に又はそれよりも以前に予め生成された複数の判定領域が、GUIの種類及びカーソルの現在位置(但し、特定のGUIにおいてカーソルの現在位置となり得る位置を含む)の少なくとも一部について、GUIの種類及びカーソルの現在位置(但し、特定のGUIにおいてカーソルの現在位置となり得る位置)の別に、メモリに格納される。その後、実際に移動方向を特定する際には、先ず、メモリに格納された複数の判定領域の中から、現時点におけるGUIの種類及びカーソルの現在位置に応じた一つの判定領域が取得される。続いて、この取得された一つの判定領域上で、移動方向が特定される。従って、実際に移動方向を特定する際には、これに先立って生成された判定領域をメモリから取得して利用すればよいので、ユーザが特定のGUI上で動かそうとするカーソルの移動方向を極めて迅速且つ簡単に特定でき、ブレを抑えることも可能になる。
【0019】
尚、複数の判定領域は、最初に移動方向を特定する際に、全てのカーソルの現在位置となり得る位置について一挙に生成されてもよいし、移動方向を特定する毎に、カーソルの現在位置に対応する判定領域として、一つずつ生成してもかまわない。
【0020】
この態様では、前記特定手段は、前記複数の判定領域を、前記少なくとも一部について、前記種類及び前記現在位置の別に生成し、前記生成された判定領域を、前記メモリに格納してもよい。
【0021】
このように構成すれば、特定手段によって、最初の移動方向を特定する際に、複数の判定領域が、GUIの種類毎に一挙に又は現在位置毎に生成されて、メモリに格納される。従って、特定手段による移動方向の特定が、各GUIに対して行われれば行われるほど、或いは、各現在位置に対して行われれば行われるほど、多種多様の判定領域がメモリに格納されるので、実用上極めて有利である。
【0022】
上述した特定手段がメモリを有する態様では、前記特定手段は、前記格納された複数の判定領域の中から前記一つの判定領域を取得できない場合には、デフォルトの判定領域上で、前記移動方向を特定してもよい。
【0023】
このように構成すれば、あるGUIにおけるカーソルの現在位置に対応して、メモリから判定領域を取得可能であれば、取得された判定領域を使用すれば、迅速且つ簡単に移動方向を特定できる。他方で、メモリから判定領域を取得不可能であれば、デフォルトの判定領域を使用して移動方向を特定することで、移動方向を特定できる。
【0024】
本発明の第2ジョグボール装置の実施形態の他の態様では、前記複数の領域の形状は、前記種類及び前記現在位置の少なくとも一部について、前記種類及び前記現在位置の別に相異なる。
【0025】
この態様によれば、判定領域をなす複数の領域の形状は、GUIの種類及びカーソルの現在位置の少なくとも一部について、GUIの種類及びカーソルの現在位置の別に相異なる。ここに「形状」とは、大きさも含めた広義の形状の意味である。「形状が相異なる」とは、大きさを含まない狭義の形状のみが相異なる場合と該狭義の形状及び大きさの両方が相異なる場合とを含む。このような複数の領域の形状は、例えば特定手段で設定されるが、別途設けられた、形状を設定する手段により設定されてもよい。また、形状についての「少なくとも一部」とは、判定領域をなす複数の領域のうち一又は複数の領或についての、少なくとも一部という意味である。よって、GUIの種類及びカーソルの現在位置に応じて複数の領域の形状が変化する。判定領域を用いて、効率的に移動方向を特定可能となり、ユーザが本来動かそうとするカーソルの移動方向だけが特定され、ブレを抑えることが可能になる。
【0026】
本発明の第2ジョグボール装置の実施形態の他の態様では、前記特定手段は、前記累積された回転量が所定閾値を越えた場合に、前記移動方向を特定する。
【0027】
この態様によれば、累積された回転量が、所定閾値を越えた場合に、移動方向が特定される。典型的には、複数の方向別に累積された回転量が、予め複数の方向別に設定された所定閾値のうち対応する各々の値を越えるかどうかが、ジョグボールの一連の回転動作中に亘ってモニタリング或いはウオッチされる。そして、複数の方向別に累積された回転量のうちいずれか一つが、対応する所定閾値を越えた場合に、移動方向が、その閾値を超えた方向に特定される。ここで、回転量の累積値に占める、ユーザが本来動かそうとする方向に対応する成分と比べて、ブレに対応する成分は、ブレという性質上、その増加速度が顕著に遅い。このため、ブレによって回転量の累積値が、所定閾値を超える可能性は、殆ど又は実践上全くない。その結果として、ブレにより移動方向が不安定或いは不確実になる可能性は、殆どなくなる。仮に、何らかの閾値を設けて、ブレの回転量或いは回転速度が、この閾値を超えるか否かで移動方向を特定する構成を採用すれば、ブレの影響がそのまま顕著に出現して、不安定な或いは不確実な移動方向となることが予想される。
【0028】
本発明の第2ジョグボール装置の実施形態の他の態様では、前記特定手段によって時間的に相前後して特定される複数の移動方向の相互関係に基づいて、前記特定された移動方向を有効なものとして出力するか否かを判定する出力判定手段を更に備える。
【0029】
この態様によれば、特定手段により、カーソルを移動させるべき移動方向が特定されると、続いて、例えばプロセッサ、メモリ等を含んで構成される出力判定手段によって、時間的に相前後して特定される複数の移動方向の相互関係に基づいて、特定された移動方向を有効なものとして出力するか否かが判定される。ここで、有効なものとして出力すると判定されれば、特定された移動方向は、当該ジョグボール装置から外部装置等に対して出力される。他方、ここで、有効なものとして出力しないと判定されれば、特定された移動方向は、当該ジョグボール装置から外部装置等に対して出力されることはない。即ち、一旦特定されはしたが、その移動方向は、無効とされる。従って、一旦回転された後におけるジョグボールの回転動作中であれば、極端な移動方向の変化が発生しない限りは、その移動方向の変化はブレに過ぎないとして、即ち回転動作を有効なものとして扱って、特定された移動方向は、有効なものとされる。逆に、一旦回転された後におけるジョグボールの回転動作中であっても、極端な移動方向の変化が発生した場合には、その移動方向の変化はユーザにより意図されたものであるとして、即ち特定された移動方向は、有効でないものとされる。これにより、再びカーソルを移動させるべき移動方向の特定が行われ、典型的には、移動方向に変化が加えられることになる。
【0030】
このように一旦移動方向が特定された後には、その特定された移動方向を基準として、その後に検出される回転量については、生かせるものはなるべく生かすことで、ジョグボールの回転動作が終わるまで、安定して移動方向を特定できる。しかも、一旦移動方向が特定された後でも、その特定された移動方向を基準として、方向に変化が意図的に加えられた回転量については、適切にこれに対応して、移動方向を特定できる。
【0031】
この態様では、前記出力判定手段は、前記複数の移動方向が同じである場合に、前記特定された移動方向を有効なものとして出力してもよい。
【0032】
このように構成すれば、複数の移動方向が同じである場合に、特定された移動方向は、有効扱いされ、他方で、複数の移動方向が同じでない場合に、特定された移動方向は、有効扱いされないので、比較的簡単な場合分け処理によって、移動方向の維持及び変更を適切に実施可能となる。
【0033】
本実施形態のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から明らかにされる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例について図を参照しつつ説明する。
<第1実施例>
先ず、本実施例に係るジョグボール装置の構成について図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、本実施例に係るジョグボール装置100の概要図であり、図2は、該ジョグボール装置100のブロック図である。
【0035】
図1において、リモコン1は、例えば赤外線通信により、ユーザによるカーソル移動用の操作に対応する信号を、画像表示装置10に対して出力する。リモコン1及び画像表示装置10は、本発明に係る「ジョグボール装置」の一例として機能するように構成されている。
【0036】
図1に示すように、リモコン1は、ジョグボール2と、回転量測定部3と、CPU4と、送信部5と、図示しない各種スイッチとを備える。ジョグボール2は、リモコン1の表側に取り付けられ、後述するモニタ18に表示されるGUI上のカーソル20を移動させるために、ユーザの手動操作により回転可能である。ジョグボール2内には、回転量を出力するために、例えば磁石が組み込まれている。
【0037】
回転量測定部3は、本発明に係る「測定手段」の一例として、例えば、x方向とy方向との直交する二方向の各々について、ジョグボール2の回転量を測定する。回転量測定部3は、ジョグボール2の回転に伴って、ジョグボール2内の磁石による磁場変化を検出し、その検出結果として、電気的なパルス信号を出力する。また、この出力信号から、x方向及びy方向の各々の回転量x,yを算出する。
【0038】
CPU4は、リモコン1の各部に接続されており、ジョグボール2の回転に伴って、回転量測定部3によって出力された回転量x,yを示す信号を、送信部5に入力する。
【0039】
送信部5は、回転量測定部3によって出力された回転量x,yを示す信号を、画像表示装置10に対し、赤外線により送信する。
【0040】
画像表示装置10は、受信部11と、CPU12と、モニタ18とから構成される。CPU12は、信号処理部13と、GUI表示処理部17とを備えている。受信部11は、送信部4から送信される赤外線信号を受信し、CPU12に入力する。
【0041】
CPU12は、リモコン1からの信号に応答して、画像表示装置10の各部を制御する。CPU12は、GUI画面をモニタ18に表示すると共に、リモコン1からの赤外線信号に基づいて、GUI画面上のカーソル20を移動する。
【0042】
図2において、信号処理部13は、回転量累積部14と、移動方向特定部15と、出力判定部16とを備えており、ジョグボール2が回転される回転量x,yから、カーソル20を移動させるべき移動方向を特定する。
【0043】
回転量累積部14は、本発明に係る「累積手段」の一例として、回転量測定部3によって測定された回転量x,yを、x方向及びy方向の二方向別に累積する。回転量累積部14は、図示しないプロセッサやメモリを備えており、単位時間T0のジョグボール2の回転量x,yを累積して、x方向の累積値X=Σxi、及びy方向の累積値Y=Σyiを算出する。
【0044】
移動方向特定部15は、本発明に係る「特定手段」の一例として、図示しないプロセッサや、メモリ15aを備えており、回転量累積部14によって算出された、二方向別の累積値X,Yに基づいて、カーソル20を移動させるべき移動方向を特定する。特に、本実施例では、移動方向特定部15は、前記移動方向を特定する際に用いられる方向特定図を、カーソル20の移動に伴って交換する。方向特定図は、あるGUI画面上で、カーソル20の現在位置から移動可能な方向候補に対応付けられた複数の領域に分割されてなる。
【0045】
移動方向特定部15は、メモリ15aに、GUIタイプに基づく複数の方向特定図を格納している。GUIタイプは、本発明に係る「GUIの種類」の一例として、GUI画面上でカーソル20が、どのように移動可能であるかの別を示す情報であり、後述のGUI表示処理部17によって移動方向特定部15に入力される。移動方向特定部15は、該GUIタイプが示す経路の所定位置に在るカーソル20の各々に対応する複数の方向特定図を生成し、メモリ15aに格納する。移動方向特定部15は、移動方向の特定を行う際に、カーソル20の現在位置に対応する方向特定図をメモリ15aから読み出すが、カーソル20の現在位置に対応する方向特定図を読み出せない場合に、後述のデフォルトの方向特定図を設定する。一方、現在位置に対応する方向特定図を読み出せた場合に、該読み出された方向特定図を設定する。こうして、設定された方向特定図が示す一又は複数の領域、即ちカーソル20を移動させるべき方向候補の中で、累積値X,Yが示す方向を、移動方向として特定する。
【0046】
このように、方向特定図がカーソルの移動に伴って変更されることで、カーソルを移動不可能な方向に対応する領域(即ち、方向候補となり得ない方向に対応する領域)が、判定領域を構成することはなくなるので、ユーザが本来動かそうとするカーソルの移動方向が特定され易くなる。
【0047】
方向特定図について図3から図6を参照して説明する。ここに図3は、GUI表示画面であり、図4から図6は、ジョグボール2の回転量と回転方向とを示すxy座標であって、カーソル20の移動方向を特定するための方向特定図である。
【0048】
方向特定図は、本発明に係る「判定領域」を示すものの一例である。本実施例では、カーソル20の現在位置に対応する複数の方向特定図が設定可能である。複数の方向特定図は、形状や大きさが相異なる一又は複数の領域に分割されている。該一又は複数の領域が、カーソル20の移動に伴って、変更される。具体的には、一又は複数の領域は、GUI画面21の全体に対応しておらず、カーソル20が現在位置する、GUI画面21上の選択領域、及び該選択領域に隣り合った選択領域の範囲に対応している。例えば、図3において、GUI画面21は、画面左側で上下方向に伸びるエリア1からエリア6までの第1選択領域と、エリア5の画面右側に隣接し、左右方向に伸びるエリアAからエリアCまでの第2選択領域とを設けている。
【0049】
GUI画面21のGUIタイプは、例えば、第1選択領域に沿って、カーソル20がGUI画面21の画面中央より左側を上下のみに移動する第1GUIタイプと、第2選択領域に沿って、カーソル20がGUI画面21の画面中央より下側を左右に移動する第2GUIタイプと、第1及び第2の選択領域が接続している位置で、カーソル20が上下に加えて右に移動する第3GUIタイプとを示す。
【0050】
移動方向特定部15は、GUI表示処理部17によって上述のGUIタイプが入力されて初めて、GUIタイプに基づいて、カーソル20の現在位置になり得る位置に対応する複数の方向特定図を生成する。移動方向特定部15は、実際のカーソル20の現在位置に対応する一つの方向特定図を取得不可能な場合には、例えばデフォルトの方向特定図22を設定している。
【0051】
図4において、方向特定図22は、GUIタイプに依存しないデフォルトの方向特定図であって、例えば、3×3のマトリクス状の領域に区分されており、8方向別に、所定値X0,Y0が設定されている。この場合、座標中央(0,0)にあるカーソル20は、上下方向及び左右方向並びに斜め四方向の合計8方向に移動可能とされる。これらの8方向がカーソル20を移動させるべき方向候補とされる。移動方向特定部15は、累積値X,Yを元に、これらの8方向の方向候補の中から一つの方向候補を選択し、カーソル20の移動方向を特定する。
【0052】
移動方向特定部15は、例えば、単位時間T0に累積された回転量(累積値)X,Yが、右上方向への回転を示す場合に、二方向別の累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、あらかじめ設定された、方向判定を行うか否かの閾値X_lim,Y_limを超えているか否かを判定する。移動方向特定部15は、累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が閾値X_lim,Y_limを越えている場合に、移動方向D1を「右上」に特定する。これにより、カーソル20を移動させるべき移動方向D1が特定される。
【0053】
移動方向特定部15は、GUIタイプに基づく、カーソル20の現在位置になり得る位置に対応する複数の方向特定図を生成した後に、実際のカーソル20の現行位置に対応する一つの方向特定図を設定する。
【0054】
例えば、図3において、カーソル20が第1選択領域のエリア2に位置する。この場合、GUIタイプが第1GUIタイプであって、方向特定図に示される方向候補は、該エリア2に隣接するエリア1及びエリア3に対応する上下方向に限定される。
【0055】
図5において、方向特定図23は、現在位置がエリア2となるカーソル20に対応する判定領域として、上下の2つの領域に分割されている。これらの2つの領域に対応する2つの方向が方向候補となる。移動方向特定部15は、累積値X,Yに基づいて、これらの2方向のいずれか一方を移動方向として特定する。
【0056】
また、図3において、カーソル20が、第2選択領域に隣接する第1選択領域のエリア5に位置する。この場合、GUIタイプが第3GUIタイプであって、方向特定図に示される方向候補は、エリア5に隣接する、エリア4及びエリア6並びにエリアAに対応する上下方向及び右方向に限定される。
【0057】
図6において、方向特定図24は、現在位置がエリア5となるカーソル20に対応する判定領域として、上下及び右の3つの領域に分割されている。これらの3つの領域に対応する3つの方向が方向候補となる。移動方向特定部15は、累積値X,Yに基づいて、これらの3方向のいずれかを移動方向として特定する。
【0058】
移動方向特定部15は、上述の方向特定図23,24を使用する場合にも、デフォルトの方向特定図22を使用する場合と同様に、累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、方向判定を行うか否かの閾値X_lim,Y_limを超えた場合に、移動方向を特定する。
【0059】
移動方向特定部15は、例えば、単位時間T0に累積された回転量(累積値)X,Yが、右方向への回転を示す場合に、二方向別の累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、方向判定を行うか否かの閾値X_lim,Y_limを超えているか否かを判定する。累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、該閾値X_lim,Y_limを越えている場合には、移動方向D1を「右」に特定する。これにより、カーソル20を移動させるべき移動方向D1が特定される。
【0060】
図2において、出力判定部16は、本発明に係る「出力判定手段」の一例として、移動方向特定部15によって特定された移動方向D1を有効なものとして出力するか否かを判定する。出力判定部14は、図示しないプロセッサやメモリを備えており、時間的に相前後して特定される2つの移動方向、即ち前回の移動方向D0と、最新の移動方向D1との相互関係に基づいて、前記判定を行う。
【0061】
出力判定部16は、前回の移動方向D0と最新の移動方向D1とが同じである場合に、最新の移動方向D1を有効なものとし、移動方向D1を出力方向D1’として出力する。一方、前回の移動方向D0と最新の移動方向D1とが同じでない場合に、最新の移動方向D1を無効なものとし、出力方向D1’を“Null”として出力すると共に、移動方向D1を前回の移動方向D0とする。このように、移動方向D1を前回の移動方向D0とすることにより、この後に時間的に相前後する2つの移動方向、即ち最新の移動方向D1と、次回特定される移動方向D2とを、同一の制御ループで判定可能である。
【0062】
尚、このように前回の移動方向D0及び最新の移動方向D1という二つの移動方向のみならず、より最新の移動方向D1から数えてN(但し2以上の整数)回分の移動方向を用いて、例えば、同一方向がN回連続しているかにより、このような判断を行うことも可能である。
【0063】
GUI表示処理部17は、出力判定部16によって出力された出力方向D1’を示す信号に基づいて、カーソル20を示す画像データを生成すると共に、GUI画面21の画像データを生成する。GUI表示処理部17は、これらの2つの画像データを併せた画像イメージを、モニタ18に表示する。特に、本実施例では、GUI表示処理部17は、回転量累積部14によって出力される累積値X,Yが、方向判定を行うか否かの閾値X_lim,Y_limを超えている場合に、GUI画面21に対応するGUIタイプを、移動方向特定部15に入力する。
【0064】
モニタ8は、図示しないケーブルからの画像や、GUI画面等を表示すると共に、該GUI画面上にカーソル20を表示する。
【0065】
次に、本実施例に係るジョグボール装置100のカーソル移動の制御処理について、図7から図9を参照して説明する。
(カーソル移動の制御処理)
図7は、本実施例に係るジョグボール装置100のカーソル移動の制御処理を示すフローチャートである。
【0066】
具体的には、図7において、リモコン1側にて、回転量測定部3によって、ジョグボール2の回転量x,yが検出されたか否かが判定される(ステップS31)。ここで、ジョグボール2の回転量x,yが検出されていないと判定された場合には(ステップS31:NO)、カーソル移動操作がなされていないとして、該操作がなされるまで待機状態になる。一方、回転量x,yが検出されたと判定された場合には(ステップS31:YES)、送信部5によって、回転量x,yを示す信号が画像表示装置10に送信される。
【0067】
画像表示装置10側にて、受信部11で回転量x,yを示す信号が受信されると、回転量累積部14によって、回転量の検出が開始されてからの経過時間T1が、所定の検出単位時間T0に達しているか否かが判定される(ステップS32)。ここで、経過時間T1が単位時間T0に達している場合には(ステップS32:NO)、回転量x,yを累積する単位時間が経過したとして、経過時間T1及び累積値X,Yが零に戻される(ステップS40,S39)。即ち、この場合には、ユーザが意図するカーソル移動に対応する一連のジョグボールの操作が完了したものとされる。一方、経過時間T1が単位時間T0に達していない場合には(ステップS32:YES)、x方向及びy方向の二方向の回転量x,yが各々に累積されて、x方向の回転量xの累積値X、及びy方向の回転量yの累積値Yが出力される(ステップS33)。即ち、この場合には、ユーザが意図するカーソル移動に対応する一連のジョグボールの操作が継続中とされる。
【0068】
次に、移動方向特定部15にて、二方向別の累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、累積値X,Yの各々に対応する、方向判定を行うか否かの閾値X_lim,Y_limより大きいか否かが判定される(ステップS34)。ここで、累積値X,Yの絶対値の両方が閾値X_lim,Y_limより大きくないと判定された場合には(ステップS34:NO)、累積値X,Yがブレと想定されるため、累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、閾値X_lim,Y_limより大きくなるまで、回転量x,yを累積する制御ループが繰り返される。一方、累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、閾値X_lim,Y_limより大きいと判定された場合には(ステップS34:YES)、方向特定図切り替え処理が行われる(ステップS35)。
【0069】
図8において、方向特定図切り替え処理では、先ず、GUI表示処理部17の入力によって、移動方向特定部15にて、GUIタイプが取得されたか否かが判定される(ステップS40)。ここで、GUIタイプが取得されていない場合には(ステップS40:NO)、CPU12によって、GUI表示処理部17に対し、GUIタイプの出力が指示される。一方、GUIタイプが取得された場合には(ステップS40:YES)、GUIタイプに基づいて、GUI画面21上のカーソル20の現在位置になり得る位置に対応する、複数の方向特定図が既に生成されたか否かが判定される(ステップS41)。ここで、複数の方向特定図が未だ生成されない場合には(ステップS41:NO)、GUIタイプに基づく、カーソル位置に対応する複数の方向特定図が生成される(ステップS42)。生成された複数の方向特定図は、動方向特定部15のメモリ15aに格納される。一方、複数の方向特定図が既に生成された場合には(ステップS41:YES)、GUIタイプが変更されない限り、複数の方向特定図の生成は、改めて行われない。この後、GUI画面21上のカーソル20の現在位置に対応する、一つの方向特定図がメモリ15aから読み出され(ステップS43)、カーソル20の現在位置に対応する方向特定図が取得されない場合には(ステップS44:NO)、デフォルトの方向特定図22に設定される(ステップS46)、又は、現行、デフォルトの方向特定図が設定されていた場合には、デフォルトの方向特定図22が継続して設定される。一方、カーソル20の現在位置に対応する方向特定図が取得された場合には(ステップS44:YES)、メモリ15aから読み出された、カーソル20の現在位置に対応する方向特定図が設定される(ステップS45)。こうして、設定された方向特定図が用いられて、移動方向D1が特定される(ステップS36)。
【0070】
移動方向D1が特定された後、出力判定部16にて、出力判定処理が行われる(ステップS37)。図9において、この処理では、移動方向特定部15によって移動方向D1が出力されると(ステップS51)、この最新の移動方向D1が、前回特定された移動方向D0に同じか否かが判定され(ステップS52)、ここで、最新の移動方向D1が前回の移動方向D0と異なる場合には(ステップS52:NO)、画像表示装置5へと送信される出力方向D1’が「Null」とされると共に、前回の移動方向D0が最新の移動方向D1とされて(ステップS54)、出力判定処理が終了される。一方、最新の移動方向D1が前回の移動方向D0と等しい場合には(ステップS52:YES)、前記出力方向D1’が最新の移動方向D1とされて(ステップS53)、出力判定処理が終了される。
【0071】
次に、CPU12によって、出力方向D1’に基づいて、カーソル20が移動される(ステップS38)。ここで、出力方向D1’が「右」の場合には、カーソル20が、安定して且つ適切に、右方向に移動される。一方、出力方向D1’が「Null」の場合には、カーソル20は移動されることなく、現状位置が保持される。この後、回転量x,yの累積値X,Yが零に戻され(ステップS39)、一連のカーソル移動の制御処理が終了される。
【0072】
このように、第1実施例のジョグボール装置は、二方向別にジョグボールの回転量を累積し、これらの累積された回転量の絶対値のいずれか一方が方向判定を行うか否かの閾値を越えた場合に、カーソル20を移動させるべき方向候補の中で、累積された回転量が示す方向を、移動方向として特定する。この移動方向の特定に際して、カーソル20の現在位置に対応する一つの方向特定図を読み出し、読み出された方向特定図を用いて、移動方向を特定する。このように、カーソル20の移動に伴って、方向候補を限定した方向特定図に交換するので、ユーザが本来動かそうとするカーソルの移動方向が特定され易くなる。従って、比較的簡単な処理によって、移動方向を特定することが可能になり、ジョグボールにおける回転の期間全域に亘って、ブレが低減され、カーソル移動を、ブレがなく非常に安定したものにできる。
【0073】
尚、第1実施例では、ジョグボール2の回転量x,yを、x方向及びy方向の二方向別に測定、且つ累積するが、上下及び左右並びに斜め四方向等の複数の方向別に累積してもかまわない。
【0074】
尚、第1実施例では、最初の移動方向を特定する際に、GUIタイプに基づいて、カーソル20の現在位置になり得る位置に対応する複数の方向特定図を生成するが、該複数の方向特定図を一度に生成せずに、一回の移動方向の特定毎に、カーソルの現在位置に対応する一つの方向特定図を生成するようにしてもかまわない。
【0075】
尚、第1実施例では、前記移動方向の特定に際して、二方向別の累積値X,Yの絶対値のいずれか一方が、あらかじめ設定された方向判定を行うか否かの閾値X_lim,Y_limを超えた場合としたが、累積値X,Yの絶対値の両方が、方向判定を行うか否かの閾値X_lim,Y_limを超えた場合としてもかまわない。
<第2実施例>
次に、第2実施例に係るジョグボール装置について、図10及び図11を参照して説明する。
【0076】
図10は、第1実施例における図1と、図11は、第1実施例における図2と同趣旨の模式図である。尚、図10及び図11において、図1及び図2に示した第1実施例に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は省略する。
【0077】
図10において、本実施例に係るジョグボール装置200は、主に、上述した信号処理部13を、画像表示装置10内でなく、リモコン1内に設ける点、リモコン1及び画像表示装置10の間でデータの送受信が可能となっている点、及びユーザの操作履歴に基づく方向特定図を使用する点で、上述した第1実施例と異なる。その他の構成については、第1実施例の場合と概ね同様である。
【0078】
リモコン1は、ジョグボール2と、回転量測定部3と、信号処理部61と、双方向無線部62とを備えている。ジョグボール2の回転に伴って、回転量測定部3は、二方向の回転量x,yを算出し、信号処理部61に入力する。図11において、信号処理部61は、回転量累積部14によって、回転量x,yを二方向別に累積して累積値X,Yを算出した後、移動方向特定部15によって、累積値X,Yに基づいて、方向特定図を使用して移動方向D1を特定する。更に、出力判定部16によって、特定された移動方向D1を有効とするか否かを判定して、出力方向D1’を出力する。この後、出力方向D1’を示す信号を、双方向無線部62から画像表示装置10に対して送信する。特に、本実施例では、双方向無線部62は、出力方向D1’を送信するだけでなく、画像表示装置10から送信されるGUIタイプを受信可能である。
【0079】
画像表示装置10は、双方向無線部63と、CPU12と、モニタ18とから構成されている。CPU12は、GUI表示処理部17を設けている。CPU12は、GUI表示処理部17によって、GUI画面21の画像データを生成すると共に、双方向無線部63で受信される出力方向D1’を示す信号に基づいてカーソル20の画像データを生成し、これらを併せてモニタ18に表示する。こうして、GUI画面21上でカーソル20を移動する。特に、本実施例では、双方向無線部63は、リモコン1側の双方向無線部62と連動して、出力方向D1’を受信するだけでなく、リモコン1に対してGUIタイプを送信可能である。GUI表示処理部17は、これらの双方向無線部62,63を介して、GUIタイプを、リモコン1側の移動方向特定部15に入力する。
【0080】
次に、本実施例に係る方向特定図の生成について、図12及び図13を参照して説明する。移動方向特定部15は、第1実施例と同様に、GUIタイプに基づいて、カーソル20の現在位置になり得る位置に対応する複数の方向特定図を生成する。本実施例では、移動方向特定部15は、更に、図12において、回転量測定部3によって出力される回転量x,yをプロットして、ユーザの操作履歴を解析し、この解析結果によってブレ量を算出する。移動方向特定部15は、算出されたブレ量に基づいて、方向特定図を移動又は回転させることで更新する。例えば、図12に示すように、GUI画面21の第1経路を移動するカーソル20の回転量x,yが、一定時間毎に検出され、この検出履歴がxy座標上に軌跡71となって示される。該軌跡71は、カーソル20が第1経路のエリア1からエリア3に向かって移動された場合に、ブレ量として、移動方向が、例えばθ度右側に逸れていることを示す。このようなユーザの操作履歴を解析して得られるブレ量に基づいて、図13に示すように、GUIタイプに基づいて生成された方向特定図を、反時計方向にθ度回転させる。こうして、カーソル20の位置に対応して変更される方向特定図を、ユーザの操作履歴によって得られるブレ量に基づいて更新し、この更新された方向特定図を、移動方向の特定に用いれば、更に、ユーザが本来動かそうとするカーソル20の移動方向が特定され易くなる。
【0081】
このように、第2実施例のジョグボール装置は、リモコン1内にて、二方向別にジョグボールの回転量を累積し、累積された回転量が示す方向を、移動方向として特定する。該移動方向の特定時に、カーソル20の位置に対応する方向特定図を読み出すと共に、読み出された方向特定図を、ユーザの操作履歴を解析して得られるブレ量に基づいて、回転し、この回転された方向特定図を用いて移動方向を特定する。このように、カーソル20の移動、及びユーザの操作履歴に基づいて、カーソル20を移動させるべき方向候補を限定した方向特定図に交換するので、ユーザが本来動かそうとするカーソルの移動方向が特定され易くなる。従って、比較的簡単な処理によって、移動方向を特定することが可能になり、ジョグボールにおける回転の期間全域に亘って、ブレが低減され、カーソル移動を、ブレがなく非常に安定したものにできる。
【0082】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】第1実施例に係るジョグボール装置の概要図である。
【図2】第1実施例に係るジョグボール装置のブロック図である。
【図3】第1実施例に係るGUI画面を示すモニタの表示画面である。
【図4】第1実施例に係るカーソルの移動方向を特定するデフォルトの方向特定図である。
【図5】第1実施例に係るカーソルの位置に対応する方向特定図である。
【図6】第1実施例に係るカーソルの位置に対応する方向特定図である。
【図7】第1実施例に係るカーソル移動の制御処理を示すフローチャートである。
【図8】第1実施例に係る方向特定図切り替え処理を示すフローチャートである。
【図9】第1実施例に係る出力判定処理を示すフローチャートである。
【図10】第2実施例に係るジョグボール装置の概要図である。
【図11】第2実施例に係るジョグボール装置のブロック図である。
【図12】第2実施例に係るカーソルの回転履歴を示す回転量の軌跡図である。
【図13】第2実施例に係るカーソルの位置、及び操作履歴に対応する方向特定図である。
【符号の説明】
【0084】
1…リモコン、2…ジョグボール、3…回転量測定部、14…回転量累積部、15…移動方向特定部、16…出力判定部、20…カーソル、21…GUI画面,22…方向特定図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーソルを移動させるために回転可能なジョグボールと、
該ジョグボールが回転される回転量を、複数の方向別に測定する測定手段と、
該測定された回転量を前記複数の方向別に累積する累積手段と、
前記カーソルを移動させるべき移動方向となり得る一又は複数の方向候補を、前記累積された回転量と、前記一又は複数の方向候補毎に設定される閾値との関係に基づいて、前記移動方向として特定する特定手段と
を備え、
前記一又は複数の方向候補は、GUI上で前記カーソルを移動させる際に、前記GUIの種類及び前記カーソルの現在位置に応じて前記カーソルを移動可能な方向に限定される
ことを特徴とするジョグボール装置。
【請求項2】
カーソルを移動させるために回転可能なジョグボールと、
該ジョグボールが回転される回転量を、複数の方向別に測定する測定手段と、
該測定された回転量を前記複数の方向別に累積する累積手段と、
前記カーソルを移動させるべき移動方向となり得る一又は複数の方向候補に、対応付けられた一又は複数の領域に分割された判定領域上で、前記累積された回転量に基づいて、前記複数の領域のうちの一つの領域を選択し、前記一又は複数の方向候補のうち前記選択された一つの領域に対応する一つの方向候補を、前記移動方向として特定する特定手段と
を備え、
前記一又は複数の方向候補は、GUI上で前記カーソルを移動させる際に、前記GUIの種類及び前記カーソルの現在位置に応じて前記カーソルを移動可能な方向に限定される
ことを特徴とするジョグボール装置。
【請求項3】
前記特定手段は、
前記判定領域として複数の判定領域を、前記種類及び前記現在位置の少なくとも一部について、前記種類及び前記現在位置の別に格納するメモリを有し、
前記移動方向を特定する際に、前記格納された複数の判定領域の中から前記種類及び前記現在位置に応じた一つの判定領域を取得し、該取得された一つの判定領域上で、前記移動方向を特定する
ことを特徴とする請求項2に記載のジョグボール装置。
【請求項4】
前記特定手段は、
前記複数の判定領域を、前記少なくとも一部について、前記種類及び前記現在位置の別に生成し、
前記生成された判定領域を、前記メモリに格納する
ことを特徴とする請求項3に記載のジョグボール装置。
【請求項5】
前記特定手段は、前記格納された複数の判定領域の中から前記一つの判定領域を取得できない場合には、デフォルトの判定領域上で、前記移動方向を特定することを特徴とする請求項3又は4に記載のジョグボール装置。
【請求項6】
前記複数の領域の形状は、前記種類及び前記現在位置の少なくとも一部について、前記種類及び前記現在位置の別に相異なることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載のジョグボール装置。
【請求項7】
前記特定手段は、前記累積された回転量が所定閾値を越えた場合に、前記移動方向を特定することを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載のジョグボール装置。
【請求項8】
前記特定手段によって時間的に相前後して特定される複数の移動方向の相互関係に基づいて、前記特定された移動方向を有効なものとして出力するか否かを判定する出力判定手段を更に備えることを特徴とする請求項2から7のいずれか一項に記載のジョグボール装置。
【請求項9】
前記出力判定手段は、前記複数の移動方向が同じである場合に、前記特定された移動方向を有効なものとして出力することを特徴とする請求項8に記載のジョグボール装置。
【請求項1】
カーソルを移動させるために回転可能なジョグボールと、
該ジョグボールが回転される回転量を、複数の方向別に測定する測定手段と、
該測定された回転量を前記複数の方向別に累積する累積手段と、
前記カーソルを移動させるべき移動方向となり得る一又は複数の方向候補を、前記累積された回転量と、前記一又は複数の方向候補毎に設定される閾値との関係に基づいて、前記移動方向として特定する特定手段と
を備え、
前記一又は複数の方向候補は、GUI上で前記カーソルを移動させる際に、前記GUIの種類及び前記カーソルの現在位置に応じて前記カーソルを移動可能な方向に限定される
ことを特徴とするジョグボール装置。
【請求項2】
カーソルを移動させるために回転可能なジョグボールと、
該ジョグボールが回転される回転量を、複数の方向別に測定する測定手段と、
該測定された回転量を前記複数の方向別に累積する累積手段と、
前記カーソルを移動させるべき移動方向となり得る一又は複数の方向候補に、対応付けられた一又は複数の領域に分割された判定領域上で、前記累積された回転量に基づいて、前記複数の領域のうちの一つの領域を選択し、前記一又は複数の方向候補のうち前記選択された一つの領域に対応する一つの方向候補を、前記移動方向として特定する特定手段と
を備え、
前記一又は複数の方向候補は、GUI上で前記カーソルを移動させる際に、前記GUIの種類及び前記カーソルの現在位置に応じて前記カーソルを移動可能な方向に限定される
ことを特徴とするジョグボール装置。
【請求項3】
前記特定手段は、
前記判定領域として複数の判定領域を、前記種類及び前記現在位置の少なくとも一部について、前記種類及び前記現在位置の別に格納するメモリを有し、
前記移動方向を特定する際に、前記格納された複数の判定領域の中から前記種類及び前記現在位置に応じた一つの判定領域を取得し、該取得された一つの判定領域上で、前記移動方向を特定する
ことを特徴とする請求項2に記載のジョグボール装置。
【請求項4】
前記特定手段は、
前記複数の判定領域を、前記少なくとも一部について、前記種類及び前記現在位置の別に生成し、
前記生成された判定領域を、前記メモリに格納する
ことを特徴とする請求項3に記載のジョグボール装置。
【請求項5】
前記特定手段は、前記格納された複数の判定領域の中から前記一つの判定領域を取得できない場合には、デフォルトの判定領域上で、前記移動方向を特定することを特徴とする請求項3又は4に記載のジョグボール装置。
【請求項6】
前記複数の領域の形状は、前記種類及び前記現在位置の少なくとも一部について、前記種類及び前記現在位置の別に相異なることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載のジョグボール装置。
【請求項7】
前記特定手段は、前記累積された回転量が所定閾値を越えた場合に、前記移動方向を特定することを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載のジョグボール装置。
【請求項8】
前記特定手段によって時間的に相前後して特定される複数の移動方向の相互関係に基づいて、前記特定された移動方向を有効なものとして出力するか否かを判定する出力判定手段を更に備えることを特徴とする請求項2から7のいずれか一項に記載のジョグボール装置。
【請求項9】
前記出力判定手段は、前記複数の移動方向が同じである場合に、前記特定された移動方向を有効なものとして出力することを特徴とする請求項8に記載のジョグボール装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−15621(P2009−15621A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177074(P2007−177074)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
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