説明

ジョークラッシャ

【課題】ジャッキの必要以上の縮退を抑制することにより、生産物の品質の低下を抑えるジョークラッシャを提供する。
【解決手段】破砕装置30に被破砕物を分級しながら搬送するグリズリフィーダ8を備えたジョークラッシャにおいて、破砕装置30は破砕室内に固定歯33と動歯34とを備え、動歯34に取り付けられ、かつ、固定歯33と動歯34とが互いに近接して設定される歯先隙間を調整するためのジャッキ42を備え、このジャッキ42の圧力を検出する圧力センサ56と、この圧力センサ56の検出値に応じてグリズリフィーダ8の駆動速度を制御するコントローラ80とを設け、このコントローラ80は、ジャッキ42の圧力に対応する信号を圧力センサ56より入力信号として入力する入力部と、前記入力信号に応じてグリズリフィーダ8による運搬速度を変化させる信号を出力する出力部とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩石やコンクリートガラなどを破砕するのに用いられるジョークラッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
破砕場やビルの解体現場では、大きな粒度の岩石及びコンクリートガラを破砕するために、自走式破砕機械が使用されている。自走式破砕機械の一つに、ジョークラッシャが用いられたタイプのクラッシャがある。ジョークラッシャとは、固定歯と、固定歯に対して揺動する動歯との間に形成した空間に被破砕物を投入して破砕するものである。ジョークラッシャへの被破砕物の供給には、一般的にフィーダが用いられ、破砕後の生産物の粒度の調整は、動歯と固定歯との歯先隙間を調整することにより行われる。
【0003】
また、この種のジョークラッシャには、被破砕物から動歯に作用する破砕反力を受けるジャッキと、ジャッキの圧油の戻り管路の圧力の最大値を規定し、規定した最大圧力を超える負荷がかかった場合にジャッキを縮退させるリリーフ弁と、ジャッキと動歯との間に介設したトグルプレートと、このトグルプレートがジャッキと動歯との間に保持されるように動歯をジャッキ側に付勢する付勢手段と、ジャッキのストロークを検出するストロークセンサと、このストロークセンサにより検出されたジャッキの縮退量が設定値を超えた場合にフィーダを停止し、検出された縮退量だけジャッキを伸長させる手順、及びこの手順を実行した結果、ジャッキが原位置に復帰しない場合に動歯の揺動動作を停止させる手順を実行する制御装置とを備えたものが開示されている。
【0004】
この従来技術によれば、過負荷が作用した時にジャッキが縮退することによりトグルプレートが折損から保護されるため、トグルプレートを交換しなくともジャッキを縮退前の位置に復帰させることにより破砕作業を続行することができる。このとき、ジャッキが縮退した場合であっても即座に運転停止は行われず、破砕装置を作動させたままジャッキの原位置への復帰を図り、原位置に復帰しない場合にのみ破砕作業を停止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−125495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、ジャッキの縮退量が設定値を超えるまでフィーダによる被破砕物の供給は止まることはなく、前記ジャッキが原位置に復帰するまでの間も破砕を続ける。このように破砕を続けている間、ジョークラッシャは、設定より大きな歯先隙間で破砕していることになり、その結果、破砕後の生産物の品質の低下につながる虞があった。
【0007】
本発明の目的は、ジャッキの必要以上の縮退を抑制することにより、生産物の品質の低下を抑えるジョークラッシャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のジョークラッシャは、本体フレームと、この本体フレーム上における長手方向の中央に設け被破砕物を破砕する破砕装置と、前記本体フレーム上における長手方向の一方側に設けたホッパと、このホッパの下方に設け前記破砕装置に被破砕物を分級しながら搬送するグリズリフィーダと、前記本体フレーム上の他方側に設け内部に駆動源を備えたパワーユニットと、前記破砕装置の下方に基端部を設け前記パワーユニットの下方を経た斜め上方に他端部を備え傾斜して前記本体フレームに取り付けた排出コンベヤとを備えたジョークラッシャにおいて、前記破砕装置は、破砕室を形成し、この破砕室内には、前記本体フレームに固定された固定歯と、この固定歯に対して所定角度を以って偏心動作可能に設けられた動歯とを備え、前記固定歯と前記動歯とがV字形状となる関係に設け、前記動歯に取り付けられ、前記固定歯と前記動歯とが互いに近接して設定される歯先隙間を調整するためのジャッキを備え、このジャッキの状態量を検出する状態量検出手段と、前記状態量検出手段の検出値に応じて前記フィーダの駆動速度を制御する制御手段を設けている。
【0009】
また、本発明のジョークラッシャは、請求項1に係り、前記状態量検出手段は、ジャッキの圧力を負荷として検出するものであって、前記制御手段は、前記ジャッキの圧力に対応する信号を圧力検出手段より入力信号として入力する入力部と、前記入力信号に応じてグリズリフィーダによる運搬速度を変化させる信号を出力する出力部とを有している。
【0010】
さらに、本発明のジョークラッシャは、請求項2に係り、前記状態量検出手段は、ジャッキのストローク位置を検出するものであって、前記制御手段は、前記ジャッキのストローク位置を補正可能な状態であるときに、グリズリフィーダによる運搬を許可している。
【0011】
また、本発明のジョークラッシャは、請求項2又は請求項3に係り、前記制御手段は、前記ジャッキのストローク位置が予め設定した所定ストローク位置を超えた位置であって、ストローク位置が予め設定した所定位置に復帰しない状態が予め設定した所定時間以上継続したことを検出すると破砕装置もしくはグリズリフィーダのうち少なくとも1つを減速もしくは停止するように構成してある。
【0012】
また、本発明のジョークラッシャは、請求項1から4のいずれかに係り、前記本体フレームの下部に走行体を備え、自走可能に構成してある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ジャッキの圧力をセンサにより監視し、過負荷保護装置が作動する前にフィーダを制御して、ジョークラッシャへの被破砕物の供給量を減少させることにより、過負荷保護装置の作動に伴う歯先隙間の広がりを抑制し、生産物の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るジョークラッシャの全体構造を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るジョークラッシャの全体構造を示す上面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るジョークラッシャに備えられた破砕装置の内部構造を示す側断面図である。
【図4】図3において歯先隙間を広げた状態を示す側断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るジョークラッシャの油圧駆動装置のうちジャッキの駆動に関する部位の概要を示す油圧回路図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るジョークラッシャの油圧駆動装置のうち破砕装置の駆動に関する部位の概要を示す油圧回路図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るジョークラッシャの油圧駆動装置のうちフィーダの駆動に関する部位の概要を示す油圧回路図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るジョークラッシャに備えられた制御装置のブロック図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るジョークラッシャに備えられた制御装置による過負荷時の機体制御手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、自走式ジョークラッシャに適用した実施形態を挙げ、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るジョークラッシャの全体構造を示す側面図であり、図2は、本発明の一実施形態に係るジョークラッシャの全体構造を示す上面図である。図3は、本発明の一実施形態に係るジョークラッシャに備えられた破砕装置の内部構造を示す側断面図であり、図4は、図3において歯先隙間を広げた状態を示す側断面図である。
【0017】
図5は、本発明の一実施形態に係るジョークラッシャの油圧駆動装置のうちジャッキの駆動に関する部位の概要を示す油圧回路図であり、図6は、本発明の一実施形態に係るジョークラッシャの油圧駆動装置のうち破砕装置の駆動に関する部位の概要を示す油圧回路図であり、図7は、本発明の一実施形態に係るジョークラッシャの油圧駆動装置のうちフィーダの駆動に関する部位の概要を示す油圧回路図である。図8は、本発明の一実施形態に係るジョークラッシャに備えられた制御装置のブロック図であり、図9は、本発明の一実施形態に係るジョークラッシャに備えられた制御装置による過負荷時の機体制御手順を表すフローチャートである。便宜上、図1における図面左側を後側もしくは本体フレームにおける長手方向の一方側、図面右側を前側又は本体フレームにおける長手方向の他方側として説明する。
【0018】
自走式ジョークラッシャ2は、図1に示すように、一対に設けたトラックフレーム5に無端状の履帯6を掛け回した走行体1と、走行体1上に本体フレーム4を介して取り付けられ本体フレーム4上の中央に設けられた破砕装置30と、本体フレーム4上の一方側に設けられたホッパ7と、本体フレーム4上の他方側に設けられ内部に駆動源を搭載するパワーユニット10と、破砕装置30により破砕された破砕物を機外へ排出する排出コンベア9とから大略構成されている。
【0019】
走行体1は、走行装置3と走行装置の上方にほぼ水平に設けられた本体フレーム4とで構成されている。走行装置3は、トラックフレーム5と、トラックフレーム5の両端に設けた従動輪および駆動輪(ともに図示せず)と、従動輪及び駆動輪に掛け回した履帯6と、駆動輪の軸に出力軸が連結された走行用駆動装置(図示せず)を備えている。なお、トラックフレーム5は本体フレーム4の下部に連設されており、本実施の形態において、トラックフレーム5は本体フレーム4と一体形成されている。
【0020】
破砕機本体部2は、破砕対象(被破砕物)を受け入れるホッパ7と、ホッパ7に受け入れた被破砕物を粒度選別し後段工程に供給するグリズリフィーダ8と、グリズリフィーダ8により供給された被破砕物を破砕する破砕装置30と、この破砕装置30で破砕した破砕物等を機外に排出する排出コンベア9と、機体各所に搭載した作動装置の動力源等を内臓した動力装置(パワーユニット)10を備えている。
【0021】
ホッパ7は、上方に向かって拡開した枠状の部材であり、本体フレーム4上における一方側の上部に設けた支持部材11に対して支持ポスト12,13を介して固定されている。
【0022】
グリズリフィーダ8は、ホッパ7の下方における本体フレーム4上にホッパ7とは別個にスプリング(図示せず)を介して支持部材11に支持されている。このグリズリフィーダ8の本体14内には、本体フレーム4の幅方向(図2中における上下方向)に列設されえた櫛歯15を前端部に有する複数(本実施形態では2つ)のグリズリバー16が前方に向かって下る階段状に固定されている。そして、グリズリフィーダ本体14の下部には、このグリズリフィーダ本体14を振動させるフィーダ用加振装置17が固定されており、このフィーダ用加振装置17によってグリズリフィーダ本体14が加振されると、グリズリバー16上の被破砕物が前方に搬送され、櫛歯15間の隙間寸法よりも小さな被破砕物中の細粒(いわゆるズリ)等が櫛歯15の隙間から落下し、それよりも粒度の大きな被破砕物が櫛歯15上を移動して破砕装置30に供給される。
【0023】
なお、グリズリフィーダ8の櫛歯15における下方にはシュート18が設けられ、櫛歯15間の隙間から落下するズリ等はシュート18によって排出コンベア9における後端付近に導かれる。
【0024】
破砕装置30は、ホッパ7及びグリズリフィーダ8よりも前方側に位置し、本体フレーム4における長手方向の中央付近に支持されている。この破砕装置30には、互いの間隙空間(破砕室)が下方に向かって縮径するよう対向配置された一対の固定歯33と動歯34を備えている(図3参照)。動歯34としてのスイングジョー38は、上端部がフライホイール(図示せず)に連結され、このフライホイールに破砕装置用の駆動装置31の回転動力が伝達されると、フライホイールの回転運動が動歯34の揺動運動に変換され、これにより固定歯33に対してほぼ前後方向に動歯34が揺動するようになっている。
【0025】
排出コンベア9は、排出コンベア9の外形を成すコンベアフレーム19と、コンベアフレーム19の両端に設けた従動輪及び駆動輪(共に図示せず)と、従動輪及び駆動輪に掛け回したコンベアベルト(図示せず)と、駆動輪を回転駆動させる排出コンベア用の駆動装置(図示せず)とから構成されている。排出コンベア9は、シュート18及び破砕装置30の下方位置を基端部としてパワーユニットの下方から斜めに立ち上がるように支持部材20を介して本体フレーム4に吊り下げ支持されている。このように構成された排出コンベア9は、排出コンベア用の駆動装置によって駆動輪が回転駆動されると、従動輪との間に掛け回されたコンベアベルトが循環駆動する。
【0026】
排出コンベア9の上方には、破砕物中に混在した鉄筋等の異物(磁性体)を除去するための磁選機21が備えられている。磁選機21は、本体フレーム4とコンベアフレーム19に掛け渡されたアーム部材22に吊り下げ支持されている。図示しない駆動輪及び従動輪に巻回した磁選機ベルト23が排出コンベア9に対しほぼ直交する関係となるように配置されている。そして、図示しない駆動輪及び従動輪の間の磁選機ベルト23に覆われた空間には磁力発生手段(図示せず)が設けられており、排出コンベア9の破砕物中に鉄筋等の異物が混入している場合、磁選機ベルト23越しに作用する磁力発生手段からの磁力によって異物が磁選機ベルト23に吸着され、循環駆動する磁選機ベルト23によって排出コンベア9の側方に搬送され落下する。
【0027】
パワーユニット10は、本体フレーム4の長手方向における他方側端部に支持されており、破砕装置30よりも前方側に配置されている。特に図示していないが、このパワーユニット10内には、ジョークラッシャの動力源となるエンジンや、エンジンによって駆動される油圧ポンプ50,60,70(後述する図5,図6,図7参照)、油圧ポンプ50,60,70からそれぞれ吐出された圧油の流通方向や流量を制御して油圧アクチュエータに供給する制御弁52,62,72等が備えられている。
【0028】
図3及び図4は破砕装置30の内部構造を表す側断面図で、図3は作業状態、図4は動歯34が退避した状態をそれぞれ表している。
【0029】
図3及び図4において、破砕装置30は、本体フレーム4に固定した破砕装置フレーム32と、この破砕装置フレーム32に固定した固定歯33と、この固定歯33に対して揺動する動歯34と、動歯34の下部側を支持するトグルプレート35とを備えている。
【0030】
固定歯33は、厳密には破砕装置フレーム32に固定された支持部材36と、この支持部材36の前面(動歯34側)に固定された固定歯板33aとを備えている。また動歯34は、破砕装置フレーム32にフライホイール(図示せず)の偏心軸37を介して揺動自在に取り付けたスイングジョー38と、このスイングジョー38の後面(固定歯33側)に固定された可動歯板34aとを備えている。そして動歯34と固定歯33は互いの歯板が向かい合うように対向して配置され、両歯板間に下方に向かって縮径する破砕室39が形成される。この破砕室39に供給された被破砕物は動歯34の揺動運動により固定歯33及び動歯34によって噛み砕かれるようにして破砕される。破砕装置30から排出される破砕物の粒度は、破砕室39の下部出口幅、つまり固定歯板33aと可動歯板34aの間の最小間隙40により規定される。
【0031】
ここで、動歯34に対し破砕室39とは反対側(図3中右側)の空間には例えば破砕室39で異物の噛み込み等が起こる等して過負荷が生じた場合にトグルプレート35等の部材を過大な荷重から保護する過負荷保護装置41が設置されている。この過負荷保護装置41は、スイングジョー38に作用する破砕反力が設定範囲を超えた場合に、図3の作業状態から図4のように縮退して過大な破砕反力を逃がすためのジャッキ42を備えている(詳細は後述する)。
【0032】
ジャッキ42は破砕装置フレーム32に固定され、ジャッキ42のロッド43の先端部とスイングジョー38の前面下部にはそれぞれトグルシート44,45が設けられている。トグルシート44,45は、それらの間に介設されたトグルプレート35の両端が当接しており、油圧シリンダ46(図4参照)によってスイングジョー38の下端部がジャッキ42側に付勢されることでトグルプレート35がトグルシート44,45間に挟み込まれて保持される。油圧シリンダ46の両端は、ジャッキ42の下部とスイングジョー38の前面下端部における近傍部分に回動可能に連結されている。なお、本実施の形態では、油圧シリンダ46によってスイングジョー38をジャッキ42側に付勢する構成を採ったが、油圧シリンダ46に換えてスプリングによってスイングジョー38をジャッキ42側に付勢する構成としてもよい。
【0033】
図5は、本実施の形態におけるジョークラッシャの油圧駆動装置のうち、ジャッキ42の駆動に関する部分の概要を抽出して表す油圧回路図である。
【0034】
この図5に示した油圧駆動装置は、図示しないエンジン又は電動機により駆動される油圧ポンプ50と、油圧ポンプ50の吐出管路51に設けた制御弁52及び逆止弁53とを設け、制御弁52を介して供給される圧油によって駆動する上記ジャッキ42と、このジャッキ42からタンク54への戻り管路55に設けた圧力センサ56及びリリーフ弁57を備えている。圧力センサ56は、ジャッキ42の圧油の戻り管路55の圧力を測定し、測定した圧力を制御装置80の後述するアナログ入力部81に入力する。リリーフ弁57は、ジャッキ42の圧油の戻り管路55の圧力の最大値をリリーフ弁57に設けたばね57aの付勢力によって規定し、破砕反力を受けて上昇する戻り管路55の圧力が規定した最大圧力を超えた場合に戻り管路55をタンク54に連通させてジャッキ40を縮退させる役割を果たし、ジャッキ40とともに上述した過負荷保護装置41を構成する。
【0035】
図5に示した油圧駆動装置では、制御装置80から制御弁52におけるソレノイド部52cに駆動信号が入力され、制御弁52が連通位置52bに切り換わると、油圧ポンプ50とジャッキ42のボトム側のチャンバ42aとが吐出管路51を介して連通する。さらに、油圧ポンプ50から吐出された圧油によってジャッキ42のボトム側チャンバ42aが加圧され、ロッド43を押し出してジャッキ42を伸長させるように動作する。
【0036】
一方、通常の状態では、制御弁52はばね52dの付勢力によって遮断位置52aの状態にあり、吐出管路51の圧油の流れを遮断している。図5のように制御弁52が遮断位置52aにあるとき、ジャッキ42に対する圧油の給排経路が閉じた状態になるため、ジャッキ42のストロークはその時点の状態で保持される。しかし、破砕作業中には破砕室39内の被破砕物からスイングジョー38に作用する破砕反力がトグルプレート35を介してジャッキ42のロッド43に作用するため、ロッド43に破砕反力が伝達されると、ジャッキ42のボトム側のチャンバ42a内の圧油をチャンバ42aの外へ押し出そうとする力が作用する。
【0037】
破砕反力が設定された値を超えない場合、リリーフ弁57がばね57aの付勢力によって遮断位置(図5の状態)にあるため、ロッド43に破砕反力が作用してもジャッキ42のボトム側チャンバ42a内の圧油は逆止弁53及びリリーフ弁57間の管路内に封入された状態となり、ロッド43のストロークはそのまま保持される。
【0038】
しかしながら、ロッド43に伝わる破砕反力が設定値を超えた場合、ジャッキ42のボトム側チャンバ42aから押し退けられる圧力によって戻り管路55内の圧力が上昇し、その圧力がばね57aの付勢力を超えて、リリーフ弁57が連通状態に切り換わる。これによりジャッキ42のチャンバ42aとタンク54とが戻り管路55を介して接続し、戻り管路55の圧力がばね57aの付勢力を下回るまでチャンバ42a内の圧油が排出され、この圧油の排出流量分だけロッド43が後退しジャッキ42が縮退する。
【0039】
このとき、本実施の形態において、ジャッキ42には、ロッド43のストローク位置またはストローク量を検出するストロークセンサ58が設けられている。このストロークセンサ58により検出されたロッド43のストローク位置は、制御装置80のアナログ入力部81に入力される。また、戻り管路55には、戻り管路55及びジャッキ42のボトム側チャンバ42aの圧力を検出する圧力センサ56が設けられている。この圧力センサ56により検出された戻り管路55内の圧力は制御装置80に入力される。
【0040】
図6は本実施の形態におけるジョークラッシャの油圧駆動装置のうち、クラッシャ30の駆動装置31に関する部分の概要を抽出して表す油圧回路図である。この図6に示した油圧駆動装置は、図示しないエンジン又は電動機により駆動される油圧ポンプ60と、油圧ポンプ60の吐出管路61に設けた制御弁62と、制御弁62を介して供給される圧油によって駆動するクラッシャ駆動装置(例えばクラッシャ駆動用の油圧モータ)31及びこの駆動装置31からタンク63への戻り管路64を備えている。
【0041】
図6に示した油圧駆動装置では、制御装置80から制御弁62におけるソレノイド部62aに駆動信号が入力され、制御弁62が連通位置に切り換わると、油圧ポンプ60と駆動装置31とが吐出管路61を介して連通し、油圧ポンプ60から吐出された圧油によって駆動装置31が駆動し、クラッシャ30を駆動させる。
【0042】
図7は本実施形態におけるジョークラッシャの油圧駆動装置のうち、グリズリフィーダ8の加振装置17の駆動装置73(グリズリフィーダ駆動用の油圧モータ)に関する部分の概要を抽出して表す油圧回路図である。この図7に示した油圧駆動装置は、図示しないエンジン又は電動機により駆動される油圧ポンプ70と、油圧ポンプ70の吐出管路71に設けた制御弁72と、この制御弁72を介して供給される圧油によって駆動する加振装置17の駆動装置73と、この駆動装置73からタンク74への戻り管路75を備えている。
【0043】
図7に示した油圧駆動装置では、制御装置80から制御弁72におけるソレノイド部72aに駆動信号が入力され、制御弁72が連通位置に切り換わると、油圧ポンプ70と駆動装置73とが吐出管路71を介して連通し、油圧ポンプ70から吐出された圧油によって駆動装置73が駆動し、フィーダ8を駆動させる。
【0044】
図8は制御装置80のブロック図である。
【0045】
図8において、制御装置80は、圧力センサ56、ストロークセンサ58の検出信号を入力しデジタル信号に変換するアナログ入力部(AD変換器)81と、例えば機体に設けた操作盤(図示せず)の操作スイッチ82からの操作信号を入力するデジタル入力部83とを備えている。さらに、アナログ入力部81に入力された圧力センサ56と、ストロークセンサ58による検出値等を一時的に記憶する一時記憶部(RAM)84と、制御に必要なプログラムや定数等を格納した記憶部(ROM)85と、アナログ入力部81に入力された検出信号を基に記憶部86から読み出した所望のプログラムに従って各種指令値を演算する演算制御部(CPU)86とを備え、演算制御部86からの指令値を入力し操作盤等に設けた表示部87への表示信号を演算し出力し画面のタッチ操作により表示部87から入力される操作信号を入力する表示制御部88と、演算制御部86からの指令値を入力し制御弁52のソレノイド部52cやその他の作動装置に指令信号を出力するデジタル出力部89と、時間計測するタイマ90とを備えている。
【0046】
記憶部85には、圧力センサ56により検出されたジャッキ42のボトムチャンバ圧が設定値を超えた場合にグリズリフィーダ8を減速するためのプログラムと、ストロークセンサ58により検出されたジャッキ42のロッド43の縮退量が設定値を超えた場合に検出された縮退量だけジャッキ42を伸長させる手順と、この手順を実行した結果、ジャッキ42が原位置に復帰しない場合に動歯34の揺動動作を停止させる手順を演算制御部86に実行させるためのプログラムが格納されている。
【0047】
次に、上記構成の本実施の形態におけるジョークラッシャの動作を説明する。
【0048】
油圧ショベルやホイールローダ等によりホッパ7に被破砕物を投入すると、投入された被破砕物はグリズリフィーダ8上に導かれ、振動により破砕装置30に向かって搬送される。その際、グリズリバー16の各櫛歯15間の隙間よりも小さな細粒(ズリなど)は、その隙間からシュート18を介して排出コンベア9上に導かれ、それより大きな被破砕物(大塊)が破砕装置30に供給される。破砕装置30に供給された被破砕物は、固定歯33と動歯34との出口隙間40に応じた所定の粒度に破砕処理され下方の排出コンベア9上に導入される。排出コンベア9上に導かれた破砕物は、シュート18を介して導かれた細粒と合流して前方(図1における右側)に搬送され、その途中で磁選機21により鉄筋等の異物を吸着除去された上で機外に排出される。
【0049】
ここで、破砕作業中に動歯34が被破砕物より受ける破砕反力はトグルプレート35を介してロッド43に伝達される。この破砕反力がリリーフ弁57により規定された設定値以内である場合には、ジャッキ42のボトム側チャンバ42a内の圧油はリリーフ弁57及び逆止弁53の間の管路に封入された状態となるため、ジャッキ42のロッド43のストロークはその時点の状態で保持される。しかしながら、破砕作業中には、例えば破砕室39に鉄筋等といった破砕不能な異物が供給されてしまったり、破砕室への被破砕物の供給が過多になったりすることがあるが、このとき、圧力センサの検出する破砕反力が記憶部85に記憶させた設定値を超えた場合、制御装置80から制御弁72に指令信号を送りフィーダモータを停止させる。また、スイングジョー38にかかる破砕反力がリリーフ弁57により規定された設定値を超えた場合、過負荷保護装置41が作動して前述したようにジャッキ40が縮退し、これにより過負荷状態が回避され、トグルプレート35も折損から保護される。
【0050】
このとき、本実施の形態におけるジョークラッシャにおいては、過負荷保護装置41が働いた場合、即座に破砕作業を中断せずに破砕作業を続行しながらジャッキ2の原位置への復帰を図り、設定時間の間にジャッキ42のストロークが原位置に復帰しない場合に破砕作業を中断する。しかしながら、過負荷保護装置41が一旦作動すると、可動歯先最小間隙が広がってしまうため、復帰までの間の破砕生産物の品質が落ちる状態が生じる。そこで、本発明は、後述する制御を行うことにより、破砕生産物の品質が落ちる状態を抑制する。以下に詳細に制御内容を説明する。
【0051】
図9は、制御装置80による過負荷時の機体制御手順を表すフローチャートである。
【0052】
図9において、まず、例えば操作盤(図示せず)の操作スイッチ82が操作され、運転開始を指令する操作信号がデジタル入力部83に入力されると、ステップ100にて、入力された操作信号と記憶部85に格納されたプログラムに従って演算制御部86で各作業装置(グリズリフィーダ8,破砕装置30,排出コンベア9,磁選機21など)の駆動装置への指令信号が生成され、その指令信号がデジタル出力部89を介して各駆動装置に出力され各作業装置が作動する。
【0053】
運転中に制御装置80には、機体各所に設けたセンサ類からの検出信号が随時又は設定時間毎に入力される。運転中、圧力センサ56やストロークセンサ58からの検出信号がアナログ入力部81に入力されると、デジタル信号化された検出値が一時記憶部84に記憶され、また一時記憶部84に記憶された検出値に応じて演算制御部86にて演算されたジャッキ42のボトムチャンバ42aの圧力Pと、ジャッキ42のロッド43のストローク位置Xが一時記憶部84に逐次記憶される。
【0054】
このように、運転中にはジャッキ42のボトムチャンバ42aの圧力Pとジャッキ42aのロッド43のストローク位置Xは制御装置80によって監視されており、続くステップ110において、演算したシリンダ42のボトムチャンバ42aの圧力Pが記憶部に格納された設定値P1に達したかどうかが演算制御部86によって判定される。その結果、ボトムチャンバ圧Pが設定値P1に達していないと判定されると、ステップ100に戻って現状の運転状態が維持され、ボトムチャンバ圧が設定値P1に達していると判定されるとステップ120に手順が移る。
【0055】
ステップ120において、制御装置80は、フィーダ用駆動装置17に減速信号をデジタル出力部89より出力してグリズリフィーダ8を減速させ、破砕装置30への被破砕物の供給を減少させてステップ130に移行する。
【0056】
なお、減速信号をデジタル出力部89より出力してグリズリフィーダ8を減速させ、破砕装置30への被破砕物の供給を減少させる構成を例に挙げ説明したが、停止信号をデジタル出力部89より出力してグリズリフィーダ8を停止させ、破砕装置30への被破砕物の供給を停止させても構わない。また、フィーダモータの制御弁を比例弁とし、ボトムチャンバ42aの圧力Pの値に応じてフィーダ用駆動装置の速度を制御する方法をとってもよい。
【0057】
続くステップ130において、演算したロッド43のストローク位置Xが記憶部85に格納された設定位置X1に達したかどうかについて演算制御部86によって判定される。その結果、ストローク位置Xが設定位置X1に達していないと判定されるとステップ110に手順が戻って現状の運転状態が継続され、ストローク位置Xが設定位置X1に到達していると判定されるとステップ140に手順が移る。
【0058】
ステップ140において、制御装置80は、ロッド43のストローク位置Xを補正しロッド43の元の位置への復帰を指令する信号を出力する。具体的には、制御装置80は、ジャッキ51を伸長させる指令信号を生成し、デジタル出力部89を介して制御弁52のソレノイド部52cに出力する。これにより、制御弁52が連通位置52bに切り換わり、ジャッキ51を伸長させるべくジャッキ42の出口側チャンバ42が加圧される。
【0059】
続くステップ150において、制御装置80は、検出された補正後のロッド43のストローク位置Xを、一時記憶部84に記憶された運転開始時のロッド43のストローク位置(原位置)X0と比較し2つの値が等しいかどうかを判定する。ここで、2つの値は、完全同一とせず、誤差に許容範囲を設定することが望ましい。その結果、ロッド43が原位置X0に復帰したと判定された場合には、ステップ110に手順が戻って再びボトムチャンバ圧の判定を行う。
【0060】
このように、過負荷状態に陥ったとしてもステップ130からステップ150、ステップ150からステップ110と手順の実行中は、グリズリフィーダ8を減速して破砕装置30への被破砕物の供給を一時的に減少させるのみで、破砕装置30の運転は続行される。
【0061】
一方、ステップ150において、ロッド43のストローク位置Xが原位置X0まで戻っていないと判定した場合、制御装置80は、ステップ160に手順を移し、タイマ90の計測時刻を基に、ロッド43を原位置X0に復帰させるべくステップ140にてソレノイド部52aに指令信号を出力してからの経過時間Tが設定時間T1を超えたかどうかを判定する。その時点で設定時間T1が経過していなければ、手順をステップ140に戻し、ロッド43を原位置X0に復帰させるべくソレノイド部52aに再度指令信号を出力する。
【0062】
ステップ160において、ロッド43が原位置X0に復帰しないまま設定時間T1が経過してしまっていれば、制御装置80はステップ170に手順を移行する。そしてステップ170では、各作動装置であるグリズリフィーダ8,破砕装置30,排出コンベア9,磁選機21を停止させる指令信号を生成し、その指令信号をデジタル出力部89を介して各駆動装置に出力し、破砕作業を中断して図9の手順を終了する。
【0063】
なお、特に図9のフローチャート中には示していないが、制御装置80は、一時記憶部84にロッド43のストローク位置Xを逐次記憶すると共に、表示制御部88を介して制御盤の表示部87等に表示信号を出力し、作業者にボトムチャンバ圧Pを逐次通知するようにしてもよい。また、ボトムチャンバ圧Pを逐次表示するのではなく、過負荷保護装置が作動する寸前である旨を表示するようにしてもよい。その場合、例えば、ステップ110でP≧P1と判定されてから再びステップ110でP≦P1と判定されるまでの間、視覚的又は聴覚的な通知を行うようにすることが考えられる。視覚的通知としては、例えば、表示部87にその旨を伝える文字情報を表示したり、表示部87又は警告灯(図示せず)等に光や色彩を用いて表示したりすることが考えられる。また、聴覚的通知としては、音声による通知や警告音による通知が考えられる。
【0064】
以上、説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
【0065】
(1)シリンダ42の過負荷制御の精度向上
本実施形態では、ジャッキ42が過負荷により縮退する前にフィーダを減速するため、例えば、破砕可能な被破砕物の過剰な供給によるシリンダ42のボトムチャンバ42aの過負荷状態を予防できる。
【0066】
また、破砕室に異物が入り込んだ際にも、ジャッキが過負荷により縮退するより先にフィーダを減速することにより、可動歯先最小隙間が広がった状態での破砕室への原料の投入を抑制することができる。
【0067】
また、破砕装置の破砕時における過負荷制御には破砕機駆動装置の駆動圧を用いる手法があるが、シリンダ42の過負荷制御においては直接圧力を測定している分、精度の向上を図ることができる。
【0068】
(2)破砕生産物の品質向上
(1)の効果により、過負荷保護装置の動作とそれに伴う可動歯先最小隙間の広がりを抑制できるため、破砕生産物の品質低下の虞を低減できる。
【符号の説明】
【0069】
30 グリズリフィーダ
32 破砕装置フレーム
33 固定歯
34 動歯
35 トグルプレート
37 偏心軸
39 破砕室
42 ジャッキ
46 油圧シリンダ
52 制御弁
55 戻り管路
56 油圧センサ
57 リリーフ弁
58 ストロークセンサ
73 フィーダ用駆動装置
80 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレームと、
この本体フレーム上における長手方向の中央に設け被破砕物を破砕する破砕装置と、
前記本体フレーム上における長手方向の一方側に設けたホッパと、
このホッパの下方に設け前記破砕装置に被破砕物を分級しながら搬送するグリズリフィーダと、
前記本体フレーム上の他方側に設け内部に駆動源を備えたパワーユニットと、
前記破砕装置の下方に基端部を設け前記パワーユニットの下方を経た斜め上方に他端部を備え傾斜して前記本体フレームに取り付けた排出コンベヤとを備えたジョークラッシャにおいて、
前記破砕装置は、破砕室を形成し、
この破砕室内には、
前記本体フレームに固定された固定歯と、
この固定歯に対して所定角度を以って偏心動作可能に設けられた動歯とを備え、
前記固定歯と前記動歯とがV字形状となる関係に設け、
前記動歯に取り付けられ、前記固定歯と前記動歯とが互いに近接して設定される歯先隙間を調整するためのジャッキを備え、
このジャッキの状態量を検出する状態量検出手段と、
前記状態量検出手段の検出値に応じて前記フィーダの駆動速度を制御する制御手段を設けたことを特徴とするジョークラッシャ。
【請求項2】
前記状態量検出手段は、ジャッキの圧力を負荷として検出するものであって、前記制御手段は、前記ジャッキの圧力に対応する信号を圧力検出手段より入力信号として入力する入力部と、前記入力信号に応じてグリズリフィーダによる運搬速度を変化させる信号を出力する出力部とを有することを特徴とする請求項1に記載のジョークラッシャ。
【請求項3】
前記状態量検出手段は、ジャッキのストローク位置を検出するものであって、前記制御手段は、前記ジャッキのストローク位置を補正可能な状態であるときに、グリズリフィーダによる運搬を許可することを特徴とする請求項2に記載のジョークラッシャ。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ジャッキのストローク位置が予め設定した所定ストローク位置を超えた位置であって、ストローク位置が予め設定した所定位置に復帰しない状態が予め設定した所定時間以上継続したことを検出すると破砕装置もしくはグリズリフィーダのうち少なくとも1つを減速もしくは停止することを特徴とする請求項2又は3に記載のジョークラッシャ。
【請求項5】
前記本体フレームの下部に走行体を備え、自走可能としたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のジョークラッシャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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