説明

ジョークラッシャ

【課題】本体の輸送容積を小さくし、正逆転破砕で被破砕物の詰まりを迅速に解除し破砕効率がよく、破砕サイズをぐり石150mm以上から廃瓦10mm程度の範囲まで安定した運転のできるジョークラッシャを提供する。
【解決手段】可動フレームの幅以内に油圧モータを配置して偏心軸の正逆回転可能なジョークラッシャで、本体の小型化及び被破砕物の詰まり解除の迅速化による破砕効率の向上、破砕サイズの調整範囲を大きくできるトッグル揺動部の採用で安定した運転ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自然石、廃コンクリート、建設廃材等の塊状被破砕物の破砕処理に最適なジョークラッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から破砕機の一種であるジョークラッシャは、可動歯フレームの外部からVベルト減速駆動するのが一般的に実施されてきた。Vベルト減速駆動はジョークラッシャの実用化初期には駆動源が電動機で、その慣性力(GD2)が大きくジョー歯間に詰まりが生じてクラッシャが急停止したとき電動機は急停止できないので、電動機の慣性回転力をVベルトでスリップさせたり、衝撃をVベルトで吸収するためと考えられる。その後油圧モータが駆動源に用いられているがVベルト減速駆動は踏襲されている例が多い。
【0003】
しかるに、Vベルトは着脱時やベルトの伸びによる張力調整のため、Vベルトホイールの軸間距離調整装置が必要であり、引っ張り側と緩み側があるので逆回転が困難で、さらにスリップの発生や粉塵の中での使用によりVベルトの摩耗があるなど保守点検が煩雑である。また、Vベルトによる可動歯フレーム外部からの駆動はジョークラッシャの外形寸法を大きくしてきた。
これらの欠点の一部は特許文献1により解消されているが、完全なものではない。すなわち、特許文献1は偏心軸の一端に油圧モータ、他端にフライホイール1個、両者の中間にカウンターウエイトが設けられていてVベルトの減速駆動を廃止している。しかし、油圧モータが本体より突出するためクラッシャの幅寸法が大きく輸送容積が大きくなり、作業時の扱い寸法が大きくなる欠点がある。さらに、フライホイールが片側のためはずみ車効果が比較的に小さく、クラッシャの破砕能力が劣るという欠点がある。
【0004】
従来からジョークラッシャの一般的な構造は、例えば、特許文献2の図1(b)、図5(b)及び特許文献3の図2に示されるように、偏心軸の両端にカウンターウエイト付きフライホイールが設けられ、一方のホイールにVベルト溝がある構造の実施例が示されている。ところが偏心軸中央部の中空筒構造は単に可動歯フレーム軸受の一体化のためのもので、機能的には偏心軸を覆う必要はない。むしろ偏心軸の中央を覆うことにより偏心軸の中央部は未利用の余剰空間となり不経済な構造となっている欠点がある。
【0005】
従来のこの種クラッシャのトッグルプレート6とトッグルシート7,8の形状(例えば上記3文献)は、トッグルプレート6の両端部が凸、トッグルシート7,8が凹形状で、トッグルシート7,8の凹半径Rがトッグルプレート6の凸半径rより大きい構造で、排出口の調整幅範囲が大きくなるとトッグルプレート6の傾斜が大きくなり、トッグルプレート6とトッグルシート7,8との荷重負荷点がトッグルシート7,8の中央からかなり隔たりトッグルシート7,8に偏荷重が作用する欠点があった。
【0006】
さらに、従来のこの種クラッシャでは排出口の調整幅範囲が大きくなると排出口の調整装置がクサビ(例えば文献3の図3,図4)や、回転レーバーの組み合わせでは対応できなくなる欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-056423
【特許文献2】実開平7-13436
【特許文献3】特開平9-075757
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、油圧モータを可動ジョー歯フレームの幅内の偏心軸を直接駆動するように配置してクラッシャの外形寸法を小さくして輸送容積の減少、正逆両回転破砕、破砕効率の向上、メンテナンスの容易化、安定化等をはかるジョークラッシャを提供するものである。
【0009】
また、油圧ショベルのバケットの中に本発明のジョークラッシャを設備し、コンパクトな油圧ショベルのアタッチメントとしたジョークラッシャを提供するものである。
【0010】
また、排出口開口が大きくなり、トッグルプレートの傾斜が大きくなってもトッグルプレートとトッグルシートの荷重負荷点が大きく偏心しない構造のトッグルプレート荷重伝達の安定化を図ったジョークラッシャを提供するものである。
【0011】
また、排出側固定ジョー歯と可動ジョー歯間の排出口の開口幅範囲を大きく、開口調整を速やかにかつ、連続的に行えるようにしたジョークラッシャを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のジョークラッシャの請求項1の発明は、上記課題を達成するため、図示するように本体フレーム1に固定ジョー歯2を設け、それに対向して可動ジョー歯3の可動フレーム4の入り口側を第一軸受10,10’で偏心軸9に軸支し、さらに偏心軸9は第二軸受11,11’で本体フレーム1に軸支され、可動フレーム4の排出側をトッグルプレート6の両端にトッグルシート7,8を介して本体フレーム1に揺動支持し、偏心軸9の両端にフライホイール12、12’を設け、油圧モータ13または、油圧駆動のギヤー装置14を前記第一軸受10,10’間に配置して、偏心軸9を機械的に回転して被破砕物80をジョー固定歯2に押しつけて破砕する。
【0013】
また、請求項2の発明は油圧ショベルのアタッチメントとして、本体フレーム1の代わりにバケット40としたことを特徴とする請求項1記載のジョークラッシャ。
【0014】
また、ジョークラッシャの請求項3の発明はトッグルプレート6の両端部を凹形状に、トッグルシート7,8を凸形状としたことを特徴とする請求項1記載のジョークラッシャ。
【0015】
また、請求項4の発明はクラッシャの排出口調整を複数のネジジャッキ60により行うことを特徴とする請求項1記載のジョークラッシャ。
【発明の効果】
【0016】
本発明のジョークラッシャは、油圧モータと偏心軸の接続部が可動フレームの幅より外部に出ないで、偏心軸を直接駆動するので、偏心軸の正逆回転は勿論のこと伝達効率もよく、ジョークラッシャの外形寸法が小さくでき輸送費が節減でき、作業時の扱いにも有利である。
【0017】
また、油圧ショベルのアタッチメント式として本体フレーム1の代わりにバケット40の中に組み込んで被破砕物80をすくい、破砕、払い出し作業の一連の作業が発生現場でできる、可搬性で簡便で経済的なジョークラッシャのアタッチメントである。
【0018】
また、トッグルプレートとトッグルシートの荷重点が、排出口開口幅が10mm〜150mmと調整範囲が大きくなってもトッグルプレートの傾斜の少なく、荷重支持が構造的に安定する構造である。
【0019】
また、排出口開口幅の調整を複数のネジジャッキ60で行うので、開口幅が大きくても、調整がネジの回転で連続的に行え、一度セットした幅はネジの自動締まりにより運転中変化しないので安定運転ができる。ネジジャッキの回転は人力や各種の動力により行え、自動化も容易である。
【0020】
また、可動フレームのトッグルプレート側のテンションボルトは、トッグルビームと協同移動するので、トッグルプレートまたはトッグルシートの交換以外は初期のセットのままで、調整が不要となり保守上有利である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明実施例1は図1(a)、図1(b)及び 図2(a)、図2(b)に示されている。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1の第1例は図1(a)、(b)に示されている。図1(a)は上面図で図1(b)は断面図を示す。本体フレーム1に固定ジョー歯2が取り付けられ、可動ジョー歯3を取り付ける可動フレーム4の入り口側の一端が第一軸受10,10’で偏心軸9に軸受けされ、さらに偏心軸9は第二軸受11,11’で本体フレーム1に軸支されている。第一軸受10,10’の間の偏心軸9に中空軸の油圧モータ13が嵌め込まれ機械的に結合され(例えばスプライン継ぎ手で)、油圧モータ13のケース外周をトルクアーム15で本体フレーム1にピン5で支持したものである。これにより油圧モータの回転力が偏心軸9に直接伝達される方式となり、可動フレーム4の幅内側に油圧モータを配置することによりコンパクトなジョークラッシャ30にできる。可動フレーム4の排出側の他端の支点はトッグルシート7、トッグルプレート6、トッグルシート8を介して本体フレーム1に揺動支持されている。この構成で可動ジョー歯3が偏心軸9で支持されて揺動し、被破砕物80を固定ジョー歯2に押しつけて破砕する。テンションロッド19とスプリング21で可動歯フレーム4の排出側を引っ張りトッグルシート7、トッグルプレート6、トッグルシート8の脱落を防止する。
【0023】
また、実施例1の変形の第2例は図2(a)、(b)に示されている。図2(a)は上面図、図2(b)は断面図で、第2例は第1例の中空軸油圧モータ13の代わりに油圧駆動のギヤー装置14のギヤー16を偏心軸9に軸着して、第1例と同様の効果を発揮させることができるものである。
【実施例2】
【0024】
本発明の実施例2は図3に示すように油圧ショベル50のアタッチメントとして、図1及び図2の本体フレーム1の代わりにバケット40の中に図1及び図2のジョークラッシャを組み込みこんだ可搬式ジョークラッシャである。
【実施例3】
【0025】
本発明の実施例3は図4に図示する。図4(C)はトッグルプレート6とトッグルシート7,8の従来の組込み実施例で、排出口開口が大きい実施例である。従来例は図4(C)に示すようにトッグルプレート6の両端部は凸形状、トッグルシート7,8は凹形状で、拡大図は図4(b)に示す。図4(a)は本発明のトッグルプレート6,トッグルシート7,トッグルシート8の組み合わせを示す。本発明のトッグルプレート6の両端は半径Rの凹形状で、トッグルシート7及びトッグルシート8は半径rの凸形状をし、R>rの関係にある。本発明の実施例3は図4(a)に示すように実稼働時は凸形状のトッグルシート7,及び8の中心(中心は外側)を結ぶ線上にトッグルプレート6が位置してバランスする。一方従来の実施例の図4(b)は図4(C)の拡大説明図で、凹のトッグルシート7,及び8の中心(中心は内側)を結ぶ線上にトッグルプレート6が位置しバランスする。
【0026】
本発明の図4(a) 及び従来例の図4(b)の実施例は図4(C)に図示する排出口開口が同一の寸法関係で、かなり大きい開口の場合の例で、図4 (a)は小さい凸半径rのトッグルシート7,及び8の中心(外側)を結ぶ線上にトッグルプレート6があり、図4(b)は大きい凹半径Rのトッグルシート7,及び8の内側の中心(内側)を結ぶ線上にトッグルプレート6があり、中心間距離Lの大きい図4 (a)( L>L’)の方が角度α、及びβが小さくなり、トッグルシート7,及び8への偏荷重が小さくなることが明らかである。
【0027】
数値例ではトッグルプレート6の長さ、半径R,rが関係するが、一例ではL’/L=0.43〜0.54程度になりトッグルシート7,8を凸形状にすると偏心角度α、βが小さくできることが理解できる。
【0028】
したがってトッグルプレート6の軸力Pによるトッグルシート7,8の横荷重はそれぞれ、Psinα、Psinβとなるのでα、βが小さいほどトッグルシートの横荷重は小さくなり、その数値例は本発明の図4 (a)は従来例図4(b)の0.43〜0.54となりトッグルシートの横荷重は従来例の約1/2と
小さくなる。
【0029】
トッグルプレート6の肉厚をトッグルプレート6の軸力に対応する寸法とし、トッグル運動の横荷重を支持するに十分な幅を持たせるように図4(a)の側板17をトッグルプレート6と一体物にするか、部分的に追加して設けることもできる。
【0030】
本発明の実施例3は、従来のジョークラッシャをはじめ全てのジョークラッシャに適用できることは言うまでもない。
【実施例4】
【0031】
本発明の実施例4は図5に示す。図5の可動フレーム4の排出側の支持荷重はトッグルシート7,トッグルプレート6、トッグルシート8を介してトッグルビーム22でトッグルプレート6の軸力を支持し、複数のネジジャッキ60のナット23とネジ24の組み合わせで直接トッグルプレート6の荷重を支持ビーム25に伝達し本体フレーム1で支持する。ナット23の回転でネジ24が出退して排出口開口を調整できる。ナット23の回転はナットヘッド28で人力でも動力でも回転が行える。ナット23はつば軸受27でナット23の軸力を支持する。ネジ24はネジ回り止め26により回転しないように組み込まれている。図5はネジ24が後退(排出口の開口が大きくなっている状態)している状態を示す。
【0032】
図5のつば軸受27には必要に応じてコロ軸受を設けることは設計上容易にできる。またナット23,ネジ24にカバーを設けることは容易である。図示しないが、トッグルビーム22がトッグルプレート6の軸力で振動しないようにボルトやジャッキ等で押さえて固定することは容易にできる。
また、テンションロッド19のバネ21の支持部20をトッグルビーム22に固定すると排出口開口の調整のたびにバネ21を緩めたり、締めたりする必要がなくなる。
【0033】
図5のネジジャッキ60でトッグルプレート6の軸力支持方式は、他のジョークラッシャにも適用できることは言うまでもない。
【0034】
本発明のジョークラッシャ30を図6のように自走台車に設備し、自走式ジョークラッシャにすることもできることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のジョークラッシャは、小型で使い勝手のよい各種形式のジョークラッシャに使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明実施例の1を示す説明図で(a)は上面図で、(b)は断面図である。
【図2】本発明実施例の他の例を示す説明図で(a)は上面図で、(b)は断面図である。
【図3】本発明を油圧ショベルのアタッチメントとした説明図である。
【図4】本発明のトッグルプレートとトッグルシートの組合せ説明図である。 (a)は本発明の実施例の説明図である。 (b)は従来の実施例の説明図である。 (c)は従来の実施例の本体に組込み説明図である。
【図5】本発明の排出口開口調整装置のネジジャッキの説明図である。
【図6】本発明のジョークラッシャ30を自走台車に搭載した説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 本体フレーム
2 固定ジョー歯
3 可動ジョー歯
4 可動フレーム
6 トッグルプレート
7,8 トッグルシート
9 偏心軸
10、10’第一軸受
11、11’第二軸受
12,12’ フライホイール
13 油圧モータ
14 油圧モータ駆動ギヤー装置
15 トルクアーム
16 ギヤー
17 側板
19 テンションロッド
20 バネ支持台
21 バネ
22 トッグルビーム
23 ナット
24 ネジ
25 支持ビーム
26 ネジ回り止め
27 つば軸受
28 ナットヘッド
30 ジョークラッシャ
40 バケット
50 油圧ショベル
60 ネジジャッキ
70 自走式台車
80 被破砕物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレーム1に固定ジョー歯2を設け、該固定ジョー歯に対向して可動ジョー歯3用可動フレーム4の一端部を第一軸受10,10’で偏心軸9に軸支し、前記偏心軸9を本体フレーム1の入口側に第二軸受11,11’で軸支し、該可動フレーム4の他端部支点をトッグルプレート6とトッグルシート7,8を介して本体フレーム1の出口側に揺動支持し、偏心軸9にフライホイール12、12’を設け、偏心軸9を回転して可動ジョー歯3を固定ジョー歯2に押しつけて被破砕物80を破砕するジョークラッシャにおいて、前記第一軸受10,10’間の偏心軸9に油圧モータの回転力を機械的に伝達するようにしたことを特徴とするジョークラッシャ。
【請求項2】
本体フレーム1の代わりにバケット40とし、油圧ショベル50のアタッチメントとしたことを特徴とする請求項1記載のジョークラッシャ。
【請求項3】
ジョークラッシャのトッグルプレート6の両端部を凹形状に、トッグルシート7,8を凸形状としたことを特徴とする請求項1記載のジョークラッシャ。
【請求項4】
ジョークラッシャの排出口開口調整を複数のネジジャッキ60により行うことを特徴とする請求項1記載のジョークラッシャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−732(P2013−732A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138012(P2011−138012)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(303031859)
【Fターム(参考)】