説明

ジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金の層を堆積することによる部品の耐腐食性処理方法

【課題】 原子力分野にて直面する、高度に腐食性の媒質、特に酸性媒質、例えば硝酸を含有する媒質中にて部品を有効に保護するための耐腐食性処理方法であって、さらに実施が簡便で安価である方法が真に必要とされる。
【解決手段】 本発明は、部品の耐腐食性処理方法に関し、この方法は、溶射により部品の表面上にジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金の層を堆積する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金の層を部品に堆積することによって、その部品を耐腐食性処理するための方法に関する。
この方法は、一般的には化学工業にて、詳細には原子力分野において特に直面する、硝酸を含有する媒質のような酸媒質と接触させることを目的とする部品を保護するのに特に好適である。
故に本発明の一般的な分野は、腐食の分野である。
【背景技術】
【0002】
ISO8044標準に従って、腐食とは、金属とその周りの媒質との間の物理化学的相互作用により、金属の特性に変更をもたらし、多くの場合、金属、その環境、またはその2つの因子によって形成された化学系の機能的劣化をもたらすことを意味する。
より一般的には、腐食とは、酸素との反応による対象物の損傷を意味し、最も一般的な例は、水中での金属の化学的損傷、例えば鉄の発錆または銅およびその合金、例えば青銅および真鋳上の緑青(verdigns)の形成である。
腐食に対処するための最初の着想は、問題の環境にて腐食しない材料を選択することで構成できる。こうした材料は、ステンレススチール(例えば特にクロムを含有するもの)であることができる。こうした表面上で酸化クロムを形成することにより、酸素の進行を妨げ、結果として腐食現象の深さ方向の成長を妨げる。
しかし、ステンレススチールは、弱い酸化および酸性媒質に限った耐腐食性を有する。そのため、スチールは、原子力分野および化学工業にて直面する高度に酸性の媒質、例えば硝酸を含有する媒質にはあまり適切ではない。
【0003】
腐食の出発点となることが多い、異なる材料間、一般には異成分間の隣接接触領域を避けるように部品の設計を変更することも想定可能である。別の解決策は、特に腐食に影響するパラメータ、例えば化学組成(例えば、酸性度、温度および酸化力)を変更することによって環境の特性を制御することで構成できる。しかし、この種の解決策は、限られた場合にだけ、特に閉じた媒質中にて想定可能である。
最後に、最終的な解決策としては、特に塗料またはプラスチックの層により部品を保護するか、または反応を乱すために別の部品を導入し(犠牲アノード原理)、この新しい部品を保護されるべき部品の代わりに腐食させることで腐食性環境から部品を隔離することから構成できる。しかし、これらの解決策は、原子力分野にて直面するような高度に酸性の環境には不向きである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
故に、原子力分野にて直面する、高度に腐食性の媒質、特に酸性媒質、例えば硝酸を含有する媒質中にて部品を有効に保護するための耐腐食性処理方法であって、さらに実施が簡便で安価である方法が真に必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、驚くべきことに、特定の金属元素および/またはそれらの合金の薄層を、特定の条件下で保護されるべき部品に堆積することによって、上述の必要性を有効に満たすことができることを見出した。
故に、本発明は、溶射によってジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金の層を部品の表面に堆積させる工程を含む、部品の耐腐食性処理方法に関し、この部品は、堆積工程中に、200℃未満の温度にて維持するのが有利である。
「ジルコニウム合金」という用語は、従来通り、所定の量(50重量%超過)で存在するジルコニウムと、例えばハフニウム、鉄、クロム、スズ、ニッケル、ニオブ、銅およびそれらのブレンドから選択される別の金属元素とのブレンドを意味すると理解される。
【0006】
この耐腐食性処理方法は、ジルコニウムが、大抵の侵襲性水性媒質にて、非常に有益な耐腐食特性を有する元素であるという点において特に有利である。ジルコニウムの不変性は、その非常に強い酸素親和性と、形成された酸化物膜の特性に由来し、この膜は大きな被覆率、強い接着性および高い化学的安定性を有する。
この方法は、有利なことに、堆積工程の後に後続の処理工程を必要としないので、実施が簡便である。故に、本発明の方法は、有利なことに、部品の表面にジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金の層を溶射することによる堆積工程だけで構成でき、この部品は、有利なことに堆積工程中、200℃未満の温度に維持される。
より詳細には、ジルコニウムおよびそれらの合金は、硝酸種の酸化媒質中にて、非常に広範囲の濃度および温度にわたって優れた耐腐食性を有する。例えば、24mol/lまでの酸濃度を有する沸騰硝酸溶液と接触する場合、ジルコニウムの腐食速度は、1日あたり4.5mg.dm−2未満(すなわち、年あたり25μm)を維持し、腐食モルホロジーは、全体に広がる腐食モルホロジーである。14mol/lまでの酸濃度を有する沸騰硫酸溶液と接触する場合、腐食速度は、1日あたり18mg.dm−2未満(すなわち100μm/年)を維持する。
【0007】
そのため、ジルコニウムおよびその合金は、侵襲性水性媒質と接触することを目的とする部品にコーティングを形成するのに特に有利である。
有利なことに、堆積した層は、ジルコニウム製であり(すなわちジルコニウム合金製ではない)、純粋なジルコニウムは耐腐食性の観点からその合金よりもさらに有効である。
この方法は、新しい部品をコーティングすること、または(特に原子力環境において)腐食した部品の表面を再構築することを目的としてもよい。
ジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金のこうした層は、2mmまでの範囲の厚さを有することができ、有利なことに酸化物を含有しない。
有利なことに、堆積工程は、電気アーク溶射;HVOF熱溶射;プラズマ溶射(plasma spraying);およびコールドスプレー(cold spraying)から選択される技術によって行なうことができる。
最も詳細には、堆積工程は、優先技術であるコールドスプレーにより行なわれる。
【0008】
これらの技術は、有利なことには酸化物を含有せず、部品への良好な接着性を有するジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金の高密度層を得るのに特に好適である。
故に、第1の実施形態によれば、ジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金の層を堆積する工程は、電気アーク溶射(またアーク溶射技術とも呼ばれる)によって行なわれる。
電気アーク溶射の原理は、電極機能と、層を形成するための充填材料機能との両方を満たす2つの消耗性伝導性ワイア(この場合、ジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金ワイア)間に電気アークを生じさせることで構成される。特に、ワイアは、1.6mmの直径を有するアニールされたジルコニウムおよびジルコニウム合金ワイアであってもよい。アークと接触する際に溶融する消耗性伝導性ワイアから得られる溶融金属は、次いで、アルゴンのような不活性ガスのジェットによって処理されるべき部品上に溶射される。
この実施形態は、例えば60℃の温度にて11mol/l硝酸を含む媒質のような酸環境に曝されることを目的とする部品上にコーティングを製造するのに特に適切であり、このコーティングが、新しい部品をコーティングすることを目的とする、または損傷を受けている部品を修復することを目的とするかは問わない。
【0009】
第2の実施形態に従って、ジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金層を堆積する工程は、高速酸素燃料フレーム溶射とも呼ばれるHVOF(高速酸素燃料)熱溶射によって行なってもよい。
HVOF熱溶射は、 超音波フレーム溶射方法であり、充填剤材料(ここではジルコニウムまたはジルコニウム合金)を溶融および加速するために必要とされるエネルギーが、酸素中での、ガス状形態(例えば、プロパン、プロピレン、水素、アセチレンまたは天然ガス)または液体形態(例えばケロセン)の燃料の燃焼によって得られ、燃料および酸化剤は、例えば化学両論的混合物の形態である。上述の混合物に加えて、推進ガス、好ましくは不活性ガス、例えばアルゴンを使用してもよい。充填剤材料は、従来通り、ジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金ワイアの形態である。特に、ワイアは、直径1.6mmのアニール化されたジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金ワイアであってもよい。
燃焼チャンバ中で燃焼するガスは、一般にノズルに流れ、そこで加速されて、ノズルの出口で超音波速度(例えば、約700m/s)に到達し、同じノズルに注入されたジルコニウムを移送するのに役立つ。
【0010】
ガスジェットが到達した温度(例えば、2000〜4000℃の範囲)および速度(例えば、1800〜2200m/sの範囲)のため、ジルコニウムとの接触時に、ジルコニウムが溶融し、コーティングされるべき部品に高速で溶射できるようになる。これにより、部品へのジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金の優れた結合、堆積した層の低多孔性および低表面粗さが得られる。
さらに結合の質を改善するために、コーティングされるべき部品を100℃未満の温度で維持するのが有利な場合がある。
第3の実施形態によれば、ジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金層の堆積工程は、プラズマ溶射によって行なわれてもよい。
プラズマ溶射の原理は、溶融粒子を溶射することで構成され、この粒子は、温度および速度の効果により、処理されるべき部品の表面で平坦になり、機械的に結合する。
【0011】
より詳細には、カソード(一般には軸形状で、タングステンのような材料製)と、アノード(一般にはノズル形状で、銅のような材料製)との間にて、プラズマガス流中に低電圧電流源により高周波数電気アークを生じさせて維持し、カソードとアノードの両方を、冷却システム(例えば水冷却システム)によって冷却する。プラズマガスは、場合により水素および/またはヘリウムの存在下での、アルゴン、窒素またはこれらの混合物であってもよい。高温のために、ガス分子は解離し、次いでイオン化し、結果として高度に伝導性の媒質を生じ、電気アークを電位差のあるカソードとアノードとの間に維持できる。
プラズマガスは、アノードを通過する間にさらに大幅に膨張し(可能性として初期体積の100倍超過)、アークを収束するのに役立ち、これが温度を上昇させ、ガスをプラズマ形態でアノードから追い出すという作用がある。解離し、部分的にイオン化したガスからなるプラズマは、高速(可能性としてマッハ1のオーダー)および高温(例えば10000K〜14000Kの範囲)でノズル形状のアノードから出る。
キャリアガス中に予め懸濁した粉末形態のジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金を、ノズルアノードにてプラズマに吹き込み、またはより一般的にはそれらの出口にて吹き込む。加速され、溶融した粒子は、非常に高い動的エネルギーを伴ってコーティングされるべき部品の表面に溶射されることで、最適な結合を達成する。
【0012】
この実施形態は、酸環境、例えば11mol/l硝酸を含む媒質に60℃の温度で曝されることを目的とする新しい部品にコーティングを製造するのに特に適している。
第4の実施形態において、ジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金層を堆積させる工程は、コールドスプレーによって行なうことができ、これは本発明の好ましい技術である。
コールドスプレーの原理は、100〜700℃の範囲であることができる温度に加熱されたガス(例えば窒素、ヘリウムまたはアルゴン)をLavalノズルにて超音波速度まで加速することで構成され、次いで溶射されるべき材料の粉末(ここでは、ジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金粉末)をノズルの高圧部分(10〜40barにて)に導入し、コーティングされるべき部品の表面に、600〜1200m/sの範囲であることができる速度で「未溶融状態」で溶射される。部品と接触する際、粒子は塑性変形を受け、衝突時に高密度の接着コーティングを形成する。
【0013】
この実施形態の利点は、粒子の非溶融状態にあり、そのため不利な環境における酸化および潜在的一体化の危険性が非常に低いことにある。
この実施形態は、酸環境、例えば11mol/lの硝酸媒質に温度60℃にて、または14mol/lの硝酸媒質に120℃にて曝されることを目的とする部品のコーティングを製造するのに特に適しており、このコーティングが新しい部品に配置することを目的とするか、または損傷を受けた部品を修復することを目的とするかは問わない。
想定された実施形態に拘わらず、堆積工程はまた、特にジルコニウム粉末の自然発火(pyrophoricity)の危険性を低減するために、不活性ガス雰囲気(例えばアルゴン雰囲気)にて行なわれるのが有利である。
堆積工程は、冷却システムまたは不活性ガス推進システムの存在下にて行なわれてもよい。
有利なことに、コーティングされるべき部品は、特にレーザー堆積の場合を除いて、基材との良好な密着性を確実にするために堆積工程中、200℃未満の温度にて維持される。
【0014】
本発明の方法によって処理できる金属部品は、スチール製の部品、ジルコニウムまたはジルコニウム系合金製の部品、鉄または鉄系合金製の部品であってもよい。
特に、金属部品は、スチール製の部品である場合、フェライトステンレススチール、マルテンサイトステンレススチール製の部品であってもよく、特にNF EN10088標準に記載される等級(例えば、スチールX 2 CN 18−10、X 2 CND 17−13、X 2 CN 25−20およびX 2 CNS 18−15)に対応する沈殿硬化オーステナイト、フェライト−マルテンサイトまたはフェライト−オーステナイトステンレススチールによって製造される部品であってもよい。
本発明の方法によって処理できる金属部品はまた、ジルコニウムまたはジルコニウム系合金製の部品であってもよい。この場合、方法の目的は、腐食から部品を保護することとは別に、例えば損傷した部品の修復を行なうためにジルコニウム部品の表面を再構築することであってもよい。
【0015】
この処理方法は、腐食環境、例えば使用済み燃料の再処理での工程、またはより一般的には例えば酸化性酸(例えば硝酸および硫酸)を使用する化学工業において使用される工程を目的とする設備に使用される環境に曝される部品に適用可能である。
ここで本発明を、限定することを意味しない例示によって、次の実施形態に関連して説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次の実施例は本発明の種々の実施形態を示し、そのそれぞれにて、1つの特定溶射技術を示す。
【0017】
[実施例1]
本実施例は、304Lステンレススチール製またはジルコニウム製の部品に電気アーク溶射によってジルコニウム層を堆積させることを示す。
この溶射に使用する装置は、TAFA9000アーク溶射装置であった。それは、ワイアの一体化コイルを含む発電機モジュールおよびガンからなっていた。このガンをロボットに実装し、種々のパスについての被覆を良好に均一にできるようにした。使用した推進剤ガスはアルゴンであった。このガンは、アークジェットデバイスを備え、それにより粒子速度を増大でき、基材を形成する部品の範囲では、アルゴン雰囲気にて粒子を良好に層状にできた。
【0018】
堆積の前に、処理されるべき部品を、研磨グリット(白色コランダム)の衝突によりスケール除去し、次いで空気を、こうしてスケール除去された部品に吹き付け、次いでそれをアルコールで洗浄した。
部品の温度は、溶射中200℃未満であった。
溶射条件を以下の表Iに示す:
【表I】

推進剤/冷却ガスとしてアルゴンを使用することにより、酸化物含量が低く、約11MPaの接着強度を有する均一な高密度のコーティングを堆積できた。コーティングの硬度は、約200Hvであり、これはバルクジルコニウムの硬度(190Hv)と同程度であった。
11mol/l硝酸溶液中に温度60℃にて800時間含浸したサンプルによる腐食試験では、事前堆積させた層の分解を示す証拠はなかった。重量変化は2mg/dm未満であった。
【0019】
[実施例2]
この実施例は、304Lスチール製またはジルコニウム製部品にHVOF熱溶射によりジルコニウム層を堆積することを示す。
この熱溶射に使用される装置は、モデル2000HV WIRE Systemであった。溶射ガンを、モーター駆動の直線状キャリッジに実装し、その速度を調整可能にし、各パス間のシフトは手動で行った。ワイアは、従来の(「プッシュ−プル」)デバイスによってガンに供給し、ワイア速度を変更可能にし、それによって、消費材料の量を測定可能にした。
溶射条件を以下の表IIに示す。
【表II】

この方法を使用するに際しての独創性は、推進剤ガスとしてアルゴンを使用すること、化学両論的燃焼ガス混合物を用いて作用させること、好適な冷却によって部品の温度を200℃未満に維持すること、およびパスあたりの厚さを可能な最小量に制限することであった。
堆積したコーティングは均質で高密度であった。
この層の硬度は、バルクジルコニウムの硬度(190Hv)と同一であった。
11mol/l硝酸溶液中に温度60℃にて800時間含浸したサンプルによる腐食試験では、事前堆積させた層の分解を示す証拠はなかった。重量変化は2mg/dm未満であった。
【0020】
[実施例3]
この実施例では、304Lステンレススチールまたはジルコニウム製部品にプラズマ溶射によりジルコニウム層を堆積することを示す。
使用される装置は、制御された(アルゴン)雰囲気下に置いた、容積18mのチャンバ内の従来のトーチ(MetcoF4トーチ)であった。6軸ロボットをブースに一体化させ、複雑な形状の部品を製造可能にした。この種の取り付けを用いてコーティングを堆積する利点は、ジルコニウムの酸化を制限するアルゴン雰囲気の使用にある。
基材の付着物を最小限にするために、処理されるべき部品を4.5barの圧力、および45°の角度にて研磨グリット(白色コランダム、700μmの粒径を有する)を用いる衝突によりスケール除去した。
コーティング中の酸化物の量を低減するために、溶射の前にチャンバを予め数回排気し、追加の冷却機(Fenwickからのスロットクーラー)を、2つのEmaniノズルに加えてトーチ出口に付加し、それによって溶射中に溶融粉末と残留酸素が結合するのを回避した。このシステムはまた、部品の温度を低下させることができた。
溶射条件を以下の表IIIに示す:
【表III】

堆積したコーティングは、酸化物を含まず、ミリメーター範囲の厚さを有し、層と部品間にはクラックがなく、均質で高密度であった。接着強度は31〜43MPaであった。層の硬度は、バルクジルコニウムの硬度(190Hv)と同一であった。
11mol/l硝酸溶液中に温度60℃にて800時間含浸したサンプルによる腐食試験では、層の感知可能な分解を示す証拠はなかった。重量変化は2mg/dm未満であった。
【0021】
[実施例4]
この実施例は、304Lステンレススチールまたはジルコニウム製部品にコールドスプレーによりジルコニウム層を堆積することを示す。
使用された装置は、溶射ブース、ロボット、ガン、発電機、粉末分配機、およびガスヒータ−からなっていた。
溶射条件を以下の表IVに示す。
【表IV】

堆積したコーティングは酸化物を含まず、均質で高密度であった。
堆積した層の硬度は、約350Hvであったが、この値はバルクジルコニウムの硬度よりも高かった。こうした硬度は、層が連続的な副層の積み重ねによって製造され、高速の粒子が加工硬化現象を生じることによって、層の硬度を増大させたので、プロセスに由来するものである。これは、層が耐腐食性機能および耐摩耗性機能の両方を提供することができるという利点を有する。
11mol/l硝酸溶液中に温度60℃にて800時間含浸することによる腐食試験では、堆積した層の分解を示す証拠はなかった。14mol/l硝酸溶液中に温度120℃にて168時間含浸する別の腐食試験でも、堆積した層の分解を示す証拠はなかった。重量変化は3mg/dm未満であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の耐腐食性処理方法であって、溶射により前記部品の表面に、酸化物を含まないジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金の層を堆積させる工程を含み、前記部品が前記堆積工程の間、200℃未満の温度に維持される方法。
【請求項2】
請求項1に記載の堆積工程だけを含む、請求項1に記載の耐腐食性処理方法。
【請求項3】
前記ジルコニウムおよび/またはジルコニウム合金の層が、2mmまでの範囲の厚さを有する、請求項1または2のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項4】
前記層がジルコニウム製である、請求項1から3のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項5】
前記堆積工程が、電気アーク溶射;HVOF熱溶射;プラズマ溶射およびコールドスプレーから選択される技術によって行なわれる、請求項1から4のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項6】
前記堆積工程がコールドスプレーにより行なわれる、請求項1から5のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項7】
前記堆積工程が不活性ガス雰囲気にて行なわれる、請求項1から6のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項8】
前記処理されるべき部品が、スチール製部品;ジルコニウムまたはジルコニウム系合金製部品;および鉄または鉄系合金製部品から選択される、請求項1から7のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項9】
前記処理されるべき部品がスチール製である場合、前記部品が、フェライト、マルテンサイト、オーステナイト、フェライト−マルテンサイトまたはフェライト−オーステナイトステンレススチール製である、請求項8に記載の処理方法。


【公表番号】特表2010−537058(P2010−537058A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522385(P2010−522385)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061373
【国際公開番号】WO2009/027497
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】