説明

スイッチのステップ動作機構

【課題】小型化が可能なスイッチのステップ動作機構を提供する。
【解決手段】ステップ動作機構33の非作動時(静止時)におけるリンク機構64の形状を保持する付勢部材67として、第1の支軸62と第2の連結軸66(第2の自由端F2)との間に取り付けるタイプのものを採用しているため、付勢部材67を取り付けるためのスペースは、第2の連結軸66と第1の支軸62との間にだけ確保されていればよく、第1の連結軸65(第1の自由端F1),第2の連結軸66(第2の自由端F2),第2の支軸63の間隔、即ち、第2リンク部材64b及び第3リンク部材64cの長さを最大限に短くすることができ、付勢部材として、これらの軸にねじりコイルばねを取り付ける必要がある従来装置と比較して、ステップ動作機構33を小型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定された中間位置までの範囲内で可動部が変位する通常操作、及び中間位置を超えて可動部が変位する非常操作からなる2段階の操作を可能とするスイッチのステップ動作機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレス機や各種工作機械等を操作するためにフットスイッチが用いられている。
この種の機器に使用されるフットスイッチは、操作時の安全性を向上させるために、緊急時には、フットスイッチを強く踏み込むことで、装置を非常停止できるようにすることが望まれている。
【0003】
即ち、緊急時には、操作中のフットスイッチから足を離す動作をしたり、別途設けられた緊急停止用のスイッチを操作したりするよりも、操作中のフットスイッチを更に踏み込む動作の方が簡単且つ迅速に行うことができるからである。
【0004】
この場合、フットスイッチは、予め設定された規定値以下の押圧力にて可動部(ペダル等)が操作(以下「通常操作」という)された場合、予め設定された中間位置までの範囲内で可動部が変位し、規定値を超える押圧力にて可動部が操作(以下「非常操作」という)された場合、上記中間位置を超えて可動部が変位するように、2段階の操作を可能とする必要がある。
【0005】
このような2段階の操作を可能とするステップ動作機構として、図8に示すものが知られている。図8は、ステップ動作機構100の構成及び動作を示す説明図である。
図8(a)に示すように、ステップ動作機構100は、対向配置された一対の側壁110(但し、図面を見やすくするため、手前側の側壁の図示を省略している)有しており、この側壁110の間に設けられた第1の支軸112に、一端が回動自在に支持された第1リンク部材(ローラリンク)120aと、第1の支軸112と同様に側壁110の間に形成された第2の支軸114に、一端が回動自在に支持された第2リンク部材(ローラリンク)120bと、第1及び第2の支軸112,114にそれぞれ支持された第1及び第2リンク部材120a,120bの各固定端とは反対側の端部である各自由端を、相互に且つ回動自在に連結する第3リンク部材(ピンリンク)120cとからなるリンク機構(ローラチェーン)120を備えている。
【0006】
そして、第1の支軸112は、第2の支軸114より斜め上方に配置されており、第2リンク部材120b及び第3リンク部材120cをほぼ一直線上に並ぶように変位させた時に、第1の支軸112と第2リンク部材120bの自由端とがほぼ同じ高さに位置し、且つ第1リンク部材120aの自由端を通る鉛直軸を挟んで、第1リンク部材120a及び第3リンク部材120cがほぼ同じ角度で傾斜するようにされている。
【0007】
また、ステップ動作機構100は、第1の支軸112に取り付けられ、第1リンク部材120aの自由端を上方向に付勢するねじりコイルばねからなる第1付勢部材116aと、第2の支軸114に取り付けられ、第2リンク部材120bの自由端を、第1の支軸112側に向けて付勢するねじりコイルばねからなる第2付勢部材116bとで構成された付勢機構116を備えている。
【0008】
なお、側壁110の間には、第2リンク部材120bの自由端が、第1リンク部材120aの自由端から第2リンク部材120bの固定端(即ち第2の支軸114)を結ぶ仮想線より上側に位置する停止位置を超えて変位することのないように、第2リンク部材120b或いは第3リンク部材120cに当接して両リンク部材120b,120cの変位を規制するストッパ(図示せず)が設けられている。
【0009】
このように構成されたステップ動作機構100では、リンク機構120に外部からの力が加えられていない場合、付勢機構116の付勢力によって、リンク機構120は、図8(a)に示す所定の形状、即ち第2リンク部材120bと第3リンク部材120cとが予め設定された角度をなし、且つ第1リンク部材120aの自由端が第1の支軸112,第2の支軸114,及び第2リンク部材120bの自由端より上側に位置する形状に保持される。
【0010】
そして、図示しないフットスイッチのペダルが押下されると、ペダルが第1リンク部材120aの自由端近傍に当接し、この第1リンク部材120aの自由端を押下する押圧力が加わる。但し、その押圧力が、予め設定された規定値以下であれば、リンク機構120は変形することなく、付勢機構116の付勢力によって保持された形状を維持する。このため、ペダルの変位は、第1リンク部材120aの自由端と当接する位置までに制限されることになり、この位置が中間位置となる。
【0011】
一方、第1リンク部材120aの自由端に加わる押圧力が、予め設定された規定値を超えている場合、リンク機構120は、付勢機構116の付勢力に抗して、第2リンク部材120bと第3リンク部材120cとが成す角度がより鋭角的になるような形状に変化し、第1リンク部材120aの自由端はペダルと共に変位(下降)する。このため、ペダルは、中間位置を超えて変位することになる。この時のリンク機構120の形状は、図8(b)に示す通りである(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−245899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、ステップ動作機構100では、支軸112,114に巻き付いた状態に組み付けられたねじりコイルばねにより、リンク機構120の形状を保持する付勢力を得ている。
【0014】
ところで、ステップ動作機構100を小型化するためには、リンク機構120を構成する各リンク部材間の間隔を短くする必要があり、これに伴って、ねじりコイルばねの腕状部分も、その先端が外部の物体に接触してしまうことがないように、短くする必要がある。
【0015】
また、ねじりコイルばねは、腕状部分が押圧されるとコイル部分の内径が縮むため、コイル部分の内径が、組み付け対象となる支軸の外径より大き目のものを用いる必要がある。つまり、ねじりコイルばねは、がたつきのある状態で支軸に組み付けられることになる。
【0016】
従って、支軸に組み付けられたねじりコイルばねの姿勢によっては、付勢対象となる支軸に腕状部分を確実に当接させることができず、必要な付勢力を確実に発生させる状態を維持することができなくなってしまう可能性があるため、十分な小型化を実現することが困難であるという問題があった。
【0017】
また、ステップ動作機構100をフットスイッチ等、動作量の少ない装置に適用した場合、コイルばねが組み付けられる支軸と、付勢対象となる支軸とは非常に接近したものとなる。この場合、ねじりコイルばねの腕の長さは、数mm程度の巻線の直径と同程度になってしまうため、所望の方向を向いた状態となるように指でつまむにも苦労することになり、組み付け作業の際に、非常に扱いにくいという問題もあった。
【0018】
本発明は、上記問題点を解決するために、小型化が可能なスイッチのステップ動作機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、外部からの操作により変位する可動部を備えたスイッチにおいて、前記可動部を操作する押圧力が予め設定された規定値以下である場合、前記可動部の変位を予め設定された中間位置までに制限すると共に、前記押圧力が前記規定値を超える場合、前記中間位置を超えた前記可動部の変位を許容することにより2段階の操作を可能とするスイッチのステップ動作機構であって、前記押圧力によって前記可動部が変位する側に設置された第1の支軸に、一端が回動自在に支持された第1リンク部材と、前記押圧力によって前記可動部が変位する側且つ前記第1の支軸とは異なる位置に設置された第2の支軸に、一端が回動自在に支持された第2リンク部材と、前記第1の支軸及び第2の支軸に支持された前記第1リンク部材及び第2リンク部材の各固定端とは反対側の端部である第1の自由端及び第2の自由端を、相互に且つ回動自在に連結する第3リンク部材と、前記第1の支軸と前記第2の自由端との間に取り付けられ、前記第2の自由端を前記第1の支軸に接近させる方向に付勢する付勢部材と、前記第2の自由端が前記第1の自由端と前記第2の支軸とを結ぶ線を越えて前記第1の支軸側に移動することがないように前記第2の自由端の変位を規制する規制部材とを備え、前記操作によって前記第1の自由端に前記可動部が当接し、前記押圧力が前記規定値を越えると前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1乃至第3リンク部材が成す形状が変化することを特徴とする。
【0020】
このように構成された本発明のスイッチのステップ動作機構では、各リンク部材に外部からの力が加えられていない場合、付勢部材の付勢力によって、各リンク部材は、所定の形状、即ち、規制部材によって第2の自由端の変位が規制されることにより、第2の自由端が第1の自由端と第2の支軸とを結ぶ線を挟んで、第1の支軸とは反対側に位置するような形状に保持される。
【0021】
そして、外部からの操作により変位した可動部は、第1リンク部材の自由端近傍に当接する。この時、可動部を操作する押圧力、即ち可動部を介して第1リンク部材の自由端に加わる押圧力が、予め設定された規定値以下である場合、各リンク部材は、変位することなく静止したままの状態を保持する。その結果、可動部の変位は、第1リンク部材の自由端に当接する位置までに制限されることになり、この位置が中間位置となる。
【0022】
一方、可動部を介して第1リンク部材の自由端に加わる押圧力が、予め設定された規定値を超えている場合、各リンク部材は、付勢部材の付勢力に抗して、第2及び第3リンク部材の成す角度がより鋭角的になるような形状に変化し、第1リンク部材の自由端は可動部と共に変位する。その結果、可動部は中間位置を超えて変位することになる。なお、第2及び第3リンク部材が成す角度は、変位が進むに従ってより鋭角的になるため、一旦変位が始まると、以後はより小さな押圧力で第1リンク部材の自由端を変位させることが可能となる。
【0023】
その後、可動部を介した押圧力が解除されると、各リンク部材は、付勢部材の付勢力によって、押圧力が加えられる前の元の形状に復帰する。
このように構成された本発明によれば、可動部が中間位置を越えて変位を開始した時にクリック感が得られるだけでなく、可動部を、変位可能な最大限の位置まで確実に到達させることができる。
【0024】
また、本発明によれば、付勢部材は第1の支軸と第2の自由端との間に取り付けられ、この両者の間に付勢部材を取り付けるだけのスペースが確保されていればよいため、第1の自由端,第2の自由端,第2の支軸の間隔(即ち、第2リンク部材及び第3リンク部材の長さ)を最大限に短くすること、ひいてはステップ動作機構を小型化することができる。
【0025】
更に、本発明によればねじりコイルばねを使用する必要がないため、ねじりコイルばねの腕状部分の先端によって、当該ステップ動作機構を設置した床等を傷つけてしまうといった問題も解消することができる。
【0026】
ところで、第1の支軸と第2の自由端との間に付勢部材を取り付けた場合、押圧力が加えられることによって、第1リンク部材と第3リンク部材とがほぼ直線状に位置した状態に変形してしまうと、押圧力が除かれたとしても、付勢部材の付勢力では元の形状に戻ることができないという問題が生じる。
【0027】
しかし、本発明によれば、規制部材が、第2の自由端が第1の自由端と第2の支軸とを結ぶ線を越えて第1の支軸側に移動することがないように第2の自由端の変位を規制するため、押圧力が除かれた時には、付勢部材の付勢力によって、各リンク部材の位置を元の状態に戻すことができる。
【0028】
なお、請求項1に記載のスイッチのステップ動作機構において、前記第2リンク部材及び前記第3リンク部材は、例えば、請求項2に記載のように、同じ長さ且つ前記第1リンク部材より短く形成されていてもよい。
【0029】
この場合、第1リンク部材と第2の自由端との間に、付勢部材を取り付けるための十分なスペースを確保することができる。
更に、請求項2に記載のスイッチのステップ動作機構は、請求項3に記載のように、前記第1の自由端に当接した前記可動部の押圧力が、前記第1の自由端と前記第2の支軸とを結ぶ線に沿った方向に作用するように配置されていることが望ましい。
【0030】
この場合、可動部の押圧力を、効率良くステップ動作機構に伝達することができる。
また、本発明のスイッチのステップ動作機構は、例えば、請求項4に記載のように、前記第1リンク部材と前記第2リンク部材とが成す角度が180度未満となる範囲内で変化するように、前記第1乃至第3リンク部材の長さ及び前記第1の支軸乃至第2の支軸の位置が設定されていることが望ましい。
【0031】
なお、本発明のスイッチのステップ動作機構は、どのようなスイッチに適用してもよいが、例えば、請求項5記載のように、フットスイッチに対して好適に用いることができ、その場合、足踏操作されるペダルが上述の可動部となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態のフットスイッチの外観を示す正面図,平面図,右側面図である。
【図2】カバーを装着した状態のフットスイッチを示す正面図,平面図,右側面図,左側面図である。
【図3】ペダルを取り外した状態のフットスイッチを示す正面図,平面図,右側面図である。
【図4】ステップ動作機構の構成を示す、正面図,平面図,右側面図である。
【図5】ステップ動作機構の動作を表す説明図である。
【図6】ステップ動作機構の動作特性を表すグラフである。
【図7】フットスイッチの動作を表す説明図である。
【図8】従来のステップ動作機構の構成及び動作を表す説明図である。
【図9】ステップ動作機構の台座部の形状の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<全体構成>
図1は、本発明が適用された実施形態のフットスイッチ1の外観を示す図であり、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。また、図2は、カバー6を装着した状態のフットスイッチ1を示す図であり、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図、(d)が左側面図である。なお、本実施形態のフットスイッチ1は、数値制御旋盤の操作等に使用されるものである。
【0034】
図1及び図2に示すように、フットスイッチ1は、操作者によって足踏操作されるペダル2と、ペダル2の動作を制御する操作機構部3と、ペダル2の操作状態を表す信号を生成する信号生成部4と、信号生成部4で生成された信号を外部に出力するための出力部5とを備えている。
【0035】
以下では、平面図における上下方向及び側面図における横方向を「幅方向」、正面図及び平面図における横方向を「前後方向」、正面図及び側面図における上下方向を「上下方向」と呼ぶものとする。
【0036】
なお、フットスイッチ1は、床に載置される床板11上に形成され、操作機構部3が位置する部位には、床板11の幅方向両端に側壁12,12が設けられ、また、信号生成部4が位置する部位には、床板11を底板とする無蓋箱状の部屋を形成する周壁13が設けられている。また、周壁13において側方両端で対向する側方対向壁の上部には、カバー6を取り付けるためのネジ孔を有した取付ガイド部14が設けられている。
【0037】
このうち、側壁12は、周壁13と略同じ高さに形成され周壁13と接するように形成された支持壁部12aと、支持壁部12a側が最も高く、前後方向の端部側(正面図,平面図の右側)ほど低くなるように傾斜した形状に形成された傾斜壁部12bからなる。そして、支持壁部12aの上端付近には、ペダル2を支持するためのシャフト15が設けられている。
【0038】
ペダル2は、一端(根元側)がシャフト15によって回動自在に軸支されると共に、傾斜壁部12bの上部に張り出すような大きさに形成されている。つまり、ペダル2は傾斜壁部12b及び床板11と当接する位置まで下降させることができ、換言すれば、ペダル2と床板11とともに、傾斜壁部12bは、下降したペダル2の最大下降位置を決めるストッパとして作用するように構成されている。
【0039】
また、取付ガイド部14によってフットスイッチ1に取り付けられるカバー6は、図2に示すように、ペダル2の前端側からつま先の挿入を可能とする開口を有すると共に、フットスイッチ1のペダル2,操作機構部3,信号生成部4の上部を覆い、且つ、ペダル2の上部につま先を挿入する空間を形成する形状に構成されている。なお、フットスイッチ1の出力部5については、カバー6から露出した状態となるようにされている。
【0040】
ここで、図3は、フットスイッチ1の内部構成を見やすくするためにペダル2を取り外した状態を示す図であり、(a)が正面図,(b)が平面図,(c)が右側面図である。但し、正面図ではペダル2を点線で示す。
【0041】
図3に示すように、ペダル2の下面には、シャフト15の近傍にて、下方に向けて突出する動作板21が設けられ、一方、床板11上には、ペダル2がほぼ水平となる位置で動作板21と当接することによりペダル2の上昇方向への移動を規制するストッパ壁31が設けられている。
【0042】
また、ペダル2中央部の下方には、圧縮コイルばねからなりペダル2を上昇方向に付勢する戻しバネ32と、戻しバネ32の両側方に設けられ、ペダル2を押下する押圧力が所定の規定値以下の時には、ペダル2の下降を、ペダル2が当接する位置(以下「中間位置」という)に制限し、ペダル2を押下する押圧力が規定値を超える時には、中間位置を超えて最大下降位置までのペダル2の下降を許容して、ペダル2の2段階操作を可能とする一対のステップ動作機構33,33とが設けられている。なお、これらストッパ壁31,戻しバネ32,ステップ動作機構33,33が操作機構部3を構成している。
【0043】
周壁13の内側には、ペダル2の操作状態を検出する一対の内蔵スイッチ41,41が設けられている。但し、内蔵スイッチ41は、内蔵スイッチ41,41から周壁13を貫通して動作板21に当接する位置まで延設された操作杵42,42を有しており、ペダル2に連動する動作板21によって操作杵42,42が所定長だけ押し込まれると、スイッチがオンするように構成されている。具体的には、一方の内蔵スイッチ41(以下41aとも表記する)は、ペダル2が中間位置までの範囲内で操作された時に確実にオンし、他方の内蔵スイッチ41(以下41bとも表記する)は、ペダル2が中間位置を超えて操作された時に確実にオンするように設定されている。なお、これら内蔵スイッチ41,41、操作杵42,42が信号生成部4を構成している。
【0044】
出力部5には、内蔵スイッチ41,41に接続する信号線(図示せず)を通すための一対の配線孔が設けられており、その配線孔には、着脱可能なプラグ51,51が取り付けられている。つまり、内蔵スイッチ41に接続される信号線は、プラグ51を外した配線孔を介して配線される。
【0045】
そして、本実施形態のフットスイッチ1では、ペダル2を操作する押圧力が、ステップ動作機構33が作動しない規定値以下である場合、ペダル2の変位は中間位置までに制限され、その操作(「通常操作」という)が内蔵スイッチ41aにより検出され、ペダル2を操作する押圧力が、ステップ動作機構33が作動する規定値を超えている場合、ペダル2は中間位置を超えて最大下降位置まで変位し、その操作(「非常操作」という)が内蔵スイッチ41bにより検出される。そして、これら通常操作を示す検出信号及び非常操作を示す検出信号は、出力部5を介して外部に出力されるように構成されている。
【0046】
<ステップ動作機構>
次に、本発明の主要部であるステップ動作機構33について説明する。
ここで、図4は、ステップ動作機構33の構成を示す図であり、(a)が正面図、(b)平面図、(c)が右側面図である。また、図5は、ステップ動作機構33の動作を示す説明図であり、(a)は未操作又は通常操作時、(b)が非常操作時の状態を示す。なお、図5において、下段の図は、図4におけるA−A断面図である。
【0047】
図4及び図5に示すように、ステップ動作機構33は、側面形状が略長方形で厚みを有する板状の台座60を有しており、台座60を側面から見た一方の上隅には、その上隅を矩形に切り取った形状の切欠部61が形成されている。以下では、切欠部61が形成された側を前端、その反対側を後端と呼ぶものとする。
【0048】
そして、台座60の後端上隅には、台座60の厚み方向に貫通する第1の支軸62が設けられ、また、台座60の前端下隅、即ち切欠部61の下方には、第1の支軸62と同様に台座60の厚み方向に貫通する第2の支軸63が設けられている。
【0049】
また、ステップ動作機構33は、一端(固定端)が第1の支軸62に回動自在に支持された第1リンク部材64aと、一端(固定端)が第2の支軸63に、回動自在に支持された第2リンク部材64bと、第1及び第2リンク部材64a,64bの各固定端とは反対側の端部(自由端)を、相互に且つ回動自在に連結する第3リンク部材64cとからなるリンク機構64を備えている。
【0050】
なお、リンク機構64は、台座60の左右両側にそれぞれ設けられ、第1リンク部材64aの自由端同士は第1の連結軸65により、第2リンク部材64bの自由端同士は、第2の連結軸66により連結され、左右のリンク機構64が、一体に動作するように構成されている。但し、第3リンク部材64cは、第1リンク部材及び第2リンク部材64a,64bの外側(台座60から見て)に隣接するように配置されている。以下では、第1リンク部材64aの自由端を第1の自由端F1、第2リンク部材64bの自由端を第2の自由端F2ともいう。
【0051】
また、第2及び第3リンク部材64b,64cは、同じ長さ且つ第1リンク部材64aより短いものが用いられている。そして、第2の連結軸66は、第1リンク部材64aを上方に向けて回動させると、台座60の切欠部61に当接し、その当接した状態では、第1の連結軸65(第1の自由端F1)が、第2の支軸63のほぼ真上に位置し、第2の連結軸66(第2の自由端F2)の軸中心は、第2の支軸63の軸中心と第1の連結軸65の軸中心とを結ぶ仮想線を挟んで、第1の支軸62とは反対側に位置し、且つ、第1の支軸62と第2の連結軸66とがほぼ同じ高さに位置するように設定されている。つまり、切欠部61が本発明における規制部材に相当する。
【0052】
そして、第1の連結軸65には、台座60の幅より僅かに長い寸法を有するスリーブ74と、そのスリーブ74を挟むように配置された一対のベアリング71,71とが、一対の第1リンク部材64a,64aの間に位置するように取り付けられている。
【0053】
なおベアリング71,71は、第1の連結軸65の軸方向(図4(b)中の上下方向,図4(c)中の左右方向)の幅が、第1及び第2リンク部材64a,64bより広く形成され、且つ、径方向の幅が、第1及び第2リンク部材64a,64bの端部からはみ出すような大きさ、即ち、押下されたベダル2が、第1の自由端F1においてベアリング71,71に当接するように形成されている。
【0054】
また、第2の連結軸66にも、同様のスリーブ75及び一対のベアリング72,72が取り付けられており、更に、第1の支軸62には、第1リンク部材64aと台座60との間にスリーブ76,76が取り付けられ、第2の支軸63には、第2リンク部材64bと台座60との間にベアリング73,73が取り付けられている。
【0055】
つまり、ベアリング71〜73およびスリーブ74,75により、リンク機構64が台座60に接触することを防止するスペースが確保されるだけでなく、ペダル2からの荷重を、第1〜第3リンク部材64a〜64cではなく、ベアリング71〜73や連結軸65,66、第2の支軸63が受けるようにされている。
【0056】
また、ステップ動作機構33は、第1の支軸62と第2の連結軸66との間に、引張コイルばねからなる付勢部材67が取り付けられており、第2の連結軸66を第1の支軸62に接近させる方向、即ち、第2の連結軸66を台座60の切欠部61に当接させる方向に向けて付勢するように構成されている。
【0057】
このように構成されたステップ動作機構33は、第1の自由端F1を押下する力が加えられていない場合、付勢部材67の付勢力によって、リンク機構64は、図5(a)に示す所定の形状、即ち第1の自由端F1,第2の自由端F2,第2の支軸63が略一直線をなし、第1の自由端F1が台座60より高い位置に保持される形状となる。
【0058】
なお、この形状は、第1の自由端F1を押下する力が予め設定された規定値以下である場合も保持される。
一方、第1の自由端F1を押下する力が上記規定値を超えている場合、リンク機構64は、付勢部材67の付勢力に抗して、第2リンク部材64bと第3リンク部材64cとが成す角がより鋭角的になるような形状に変化し、最終的に、図5(b)に示す所定の形状、即ち、第1の自由端F1が第2の支軸63に略接触する位置まで下降した形状となる。
【0059】
ところで、リンク機構64が成す形状を、付勢部材67の付勢力に抗して変形させるのに要する押圧力、即ち非常操作を実行する際に必要となる押圧力は、付勢部材67の付勢力の他、第1の自由端F1を押下する力が加わっていない静止時に、第2リンク部材64b及び第3リンク部材64cの屈曲状態の影響を受ける。
【0060】
ここで、図6は、ステップ動作機構33の動作特性を示すグラフである。具体的には、付勢部材67による付勢力(第2の自由端F2を静止時の位置に保持しようとする力)U、及び第1の自由端F1を押下する方向に一定の押圧力Pを印加した時に、第2の自由端F2を変位させる方向に発生する力Wを、第2の自由端F2の位置(第2の支軸63の軸中心と第1の連結軸65の軸中心とを結ぶ仮想線との距離)Xを、変化させて計算した結果を現すグラフである。
【0061】
但し、本計算では、押圧力をP=50[N]とし、リンク機構64を構成する第1〜第3リンク部材64a,64b,64cの長さL1,L2,L3を、L1=21.7[mm]、L2=L3=5[mm]、第1の支軸62と第2の支軸63との水平間隔をH=21.1[mm]、垂直間隔をV=5[mm]とした。
【0062】
つまり、第2の自由端F2を変位させようとする力Wが、この変位を阻止しようとする付勢力Uを上回ると、リンク機構64が変形し、第1の自由端はペダル2と共に変位(下降)することになる。従って、非常操作が行われるか否かの閾値となる規定値がPとなるように設計する場合には、図6のグラフから、WのグラフとUのグラフが交差する点の距離Xを求め、この距離X(第2自由端F2の静止時の位置)が実現されるように切欠部61を形成すればよい。
【0063】
なお、距離Xを短くして、静止時における第1の自由端F1,第2の自由端F2,第2の支軸63の並びがより直線に近くなるように設定するほど、規定値(非常操作を実現するのに必要な押圧力)を大きくすることができる。
【0064】
また、図6から明らかなように、距離Xが大きくなるほど、即ち、第2の自由端F2が仮想線から離れるほど、押圧力Pが同じであっても、第2の自由端F2を変位させようとする力Wはより大きなものとなるため、第2の自由端F2の変位が一旦始まると、その後の変位は容易なものとなる。
【0065】
<動作>
ここで、図7は、フットスイッチ1の動作を表す説明図であり、(a)が未操作時、(b)が通常操作時、(c)が非常操作時の状態を示すものである。
【0066】
まず、未操作時には、図7(a)に示すように、戻しバネ32の付勢力により、ペダル2は、動作板21がストッパ壁31に当接した状態となる位置に保持される。この状態では、ペダル2とステップ動作機構33の第1の自由端F1とは非接触の状態となる。
【0067】
操作者による踏込操作によりペダル2が下降すると、ペダル2は、第1の自由端F1に当接する。
この時、ペダル2を操作する押圧力、即ちペダル2を介して第1の自由端F1に加わる押圧力が上述の規定値以下である場合、ステップ動作機構33は作動しないため、ペダル2の変位は、図7(b)に示すように、第1の自由端F1と当接する位置までに制限されることになり、この位置が中間位置となる。
【0068】
この時、内蔵スイッチ41aによってペダル2の動作が検出され、通常操作が行われたことを示す信号が出力される。
一方、第1の自由端F1に加わる押圧力が上述の規定値を超えている場合、ステップ動作機構33が作動することによって、第1の自由端F1はペダル2と共に変位(下降)する。このため、ペダル2は、図7(c)に示すように、中間位置を超えて、側壁12の上部に当接する位置である最大下降位置まで変位(下降)する。
【0069】
この時、内蔵スイッチ41bによってペダル2の動作が検出され、非常操作が行われたことを示す信号が出力される。
なお、操作者による踏込操作が解除されると、ペダル2は戻しバネ32の付勢力によって、また、ステップ動作機構33は付勢部材67の付勢力によって、図7(a)に示す状態に戻る。
【0070】
<効果>
以上説明したように、フットスイッチ1においては、ペダル2の2段階動作を可能とするために設けられたステップ動作機構33が、ペダル2が中間位置を超えて変位を開始する時に最も大きな押圧力を必要とし、その後は、変位が進むほどより小さな力でペダル2を押下することが可能となるように構成されている。従って、非常操作を行った時には、ペダル2が中間位置を超えて変位する際にクリック感が得られるため良好な操作感を得ることができる。
【0071】
また、フットスイッチ1では、ステップ動作機構33の非作動時(静止時)におけるリンク機構64の形状を保持する付勢部材67として、第1の支軸62と第2の連結軸66(第2の自由端F2)との間に取り付けた引張コイルばねを採用しているため、第2の連結軸66と第1の支軸62との間に引張コイルばねを取り付けるだけのスペースが確保できればよく、第1の連結軸65(第1の自由端F1),第2の連結軸66(第2の自由端F2),第2の支軸63の間隔、即ち、第2リンク部材64b及び第3リンク部材64cの長さを最大限に短くすることができ、付勢部材67として、これらの軸にねじりコイルばねを取り付ける必要がある従来装置と比較して、ステップ動作機構33を小型化することができる。
【0072】
また、ステップ動作機構33では、ペダル2からの荷重を、リンク機構64ではなく、ベアリング71〜73や連結軸65,66、第2の支軸63で受けるようにされているため、ステップ動作機構33の耐荷重性を、リンク機構64の強度以上のものとすることができる。
【0073】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様にて実施することが可能である。
【0074】
例えば、上記実施形態では、ステップ動作機構33をフットスイッチ1に適用した例を示したが、これに限らず、通常操作範囲を超えてペダル等の可動部を押し込む非常操作を可能とするスイッチであれば、どのようなものに適用してもよい。
【0075】
上記実施形態では、付勢部材67として、組み付け時の外観を重視し、フックの形状が逆丸フックである引張コイルばねを使用しているが(図4参照)、これに限るものではない。特に、フックの形状が丸フックである引張コイルばねを使用した場合には、付勢部材67(特にフック部分)の耐久性を向上させることができる。
【0076】
上記実施形態では、付勢部材67として引張コイルばねを用いているが、これに限るものではなく、引っ張り方向の付勢力を発生させるものであればよい。
上記実施形態では、台座60において、第2の連結軸66に近接した階段状部位が、直線的に面取りした形状に形成されているが、図9に示すように(符号68参照)、第2の支軸63の中心を曲率中心とし、支軸63に取り付けられているベアリング73の半径より長い曲率半径の曲面を有する形状に形成してもよい。この場合、規定値を超えた押圧力を受けた状態(図5(b)参照)から、押圧力が除かれた元の状態(図5(a)参照)に戻る時に、第2の連結軸66に取り付けられたベアリング72,72が、絶えず台座60の階段状部位68を挟むように移動するため、ベアリング72,72が台座60に乗り上げることによってリンク機構64の動作が妨げられてしまうという事態の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…フットスイッチ 2…ペダル 3…操作機構部 4…信号生成部 5…出力部 6…カバー 11…床板 12…側壁 12a…支持壁部 12b…傾斜壁部 13…周壁
14…取付ガイド部 15…シャフト 21…動作板 31…ストッパ壁 32…戻しバネ 33…ステップ動作機構 41…内蔵スイッチ 42…操作杵 51…プラグ 60…台座 61…切欠部 62…第1の支軸 63…第2の支軸 64…リンク機構 64a…第1リンク部材 64b…第2リンク部材 64c…第3リンク部材 65…第1の連結軸 66…第2の連結軸 67…付勢部材 68…階段状部位 71,72,73…ベアリング 74,75,76…スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの操作により変位する可動部を備えたスイッチにおいて、前記可動部を操作する押圧力が予め設定された規定値以下である場合、前記可動部の変位を予め設定された中間位置までに制限すると共に、前記押圧力が前記規定値を超える場合、前記中間位置を超えた前記可動部の変位を許容することにより2段階の操作を可能とするスイッチのステップ動作機構であって、
前記押圧力によって前記可動部が変位する側に設置された第1の支軸に、一端が回動自在に支持された第1リンク部材と、
前記押圧力によって前記可動部が変位する側且つ前記第1の支軸とは異なる位置に設置された第2の支軸に、一端が回動自在に支持された第2リンク部材と、
前記第1の支軸及び第2の支軸に支持された前記第1リンク部材及び第2リンク部材の各固定端とは反対側の端部である第1の自由端及び第2の自由端を、相互に且つ回動自在に連結する第3リンク部材と、
前記第1の支軸と前記第2の自由端との間に取り付けられ、前記第2の自由端を前記第1の支軸に接近させる方向に付勢する付勢部材と、
前記第2の自由端が前記第1の自由端と前記第2の支軸とを結ぶ線を越えて前記第1の支軸側に移動することがないように前記第2の自由端の変位を規制する規制部材と、
を備え、前記操作によって前記第1の自由端に前記可動部が当接し、前記押圧力が前記規定値を越えると前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1乃至第3リンク部材が成す形状が変化することを特徴とするスイッチのステップ動作機構。
【請求項2】
前記第2リンク部材及び前記第3リンク部材は、同じ長さに形成され且つ前記第1リンク部材より短いことを特徴とする請求項1記載のスイッチのステップ動作機構。
【請求項3】
前記第1の自由端に当接した前記可動部の押圧力が、前記第1の自由端と前記第2の支軸とを結ぶ線に沿った方向に作用するように配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスイッチのステップ動作機構。
【請求項4】
前記第1リンク部材と前記第2リンク部材とが成す角度が180度未満となる範囲内で変化するように、前記第1乃至第3リンク部材の長さ及び前記第1の支軸乃至第2の支軸の位置が設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のスイッチのステップ動作機構。
【請求項5】
前記可動部は、足踏操作されるフットスイッチのペダルであることを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか一項に記載のスイッチのステップ動作機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−101913(P2013−101913A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−208440(P2012−208440)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(390003919)国際電業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】