説明

スイッチングレギュレータの制御回路およびそれを利用したスイッチングレギュレータ、電子機器

【課題】ヒステリシス制御方式のスイッチングレギュレータの、軽負荷時における出力電圧の上昇を抑制する。
【解決手段】軽負荷検出部30は、コイル電流Iの転流を検出し、軽負荷状態を検出する。フィードバック経路13は、演算増幅器12にヒステリシスを設定するために、演算増幅器12の出力端子と演算増幅器12の反転入力端子の間に設けられる。フィードバック経路13は、その時定数が、第1の値と、第1の値より大きな第2の値で切りかえ可能に構成される。時定数は、軽負荷状態において、通常状態よりも大きく設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)等の電子機器には、電池電圧よりも高い、あるいは低い電源電圧を必要とするデバイスが搭載される。このようなデバイスに適切な電源電圧を供給するために、昇圧、降圧、もしくは昇降圧型のスイッチングレギュレータが利用される。
【0003】
スイッチングレギュレータの制御方法として、ヒステリシスコンパレータを利用したものが知られている(たとえば特許文献1、2参照)。図1は、ヒステリシス制御方式の降圧型スイッチングレギュレータ(電源装置)4zの構成を示す回路図である。スイッチングレギュレータ4zは電源電圧(入力電圧)Vddを受け、それを降圧して安定化された出力電圧Voutを生成し、負荷(不図示)に供給する。
【0004】
出力電圧Voutは、抵抗R1、R2によって分圧され、演算増幅器12の反転入力端子に入力される。演算増幅器12の非反転入力端子には、基準電圧Vrefが入力される。抵抗R3、フィードバックキャパシタC2、バッファ14は、演算増幅器12の出力端子と反転入力端子の間のフィードバック経路に直列に設けられる。演算増幅器12、抵抗R3、フィードバックキャパシタC2およびバッファ14は、ヒステリシスコンパレータを形成する。ヒステリシスコンパレータ10は、フィードバック電圧Vfbを、ヒステリシスを有する上側しきい値電圧VTHHおよび下側しきい値電圧VTHLと比較する。
【0005】
プリドライバ20は、ヒステリシスコンパレータ10の出力信号SPWMにもとづき、スイッチングトランジスタM1および同期整流用トランジスタM2を交互にオン、オフさせる。その結果、出力電圧Voutは、基準電圧Vrefに応じて定まる目標値付近に安定化される。
【0006】
ここで、同期整流型のスイッチングレギュレータでは、負荷電流が小さくなると、インダクタL1に流れるコイル電流Iが、出力キャパシタCoから、インダクタL1および同期整流用トランジスタM2を介して接地端子に流れ込む。この電流によってスイッチングレギュレータの効率が悪化する。
【0007】
そこで同期整流型のスイッチングレギュレータには、軽負荷検出部30が設けられる。 軽負荷検出部30は、負荷の軽負荷状態を検出する。軽負荷検出部30は、コイル電流Iをモニタし、その向きが正から負に反転(転流)すると、同期整流用トランジスタM2をオフしてスイッチング動作を停止する。コイル電流Iが転流すると、スイッチング端子P3の電位は負となる。そこで軽負荷検出部30は、スイッチング端子P3の電圧LXを、0V付近のしきい値電圧と比較することにより、軽負荷状態を検出する。
【0008】
軽負荷検出部30がコイル電流の転流、すなわち軽負荷状態を検出すると、プリドライバ20は同期整流用トランジスタM2をオフ状態に固定し、軽負荷モード(PFMモードともいう)に移行する。同期整流用トランジスタM2がオフした状態は、いわゆるダイオード整流型のスイッチングレギュレータと等価となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−201475号公報
【特許文献2】特開2007−20352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、図1のスイッチングレギュレータ4zについて検討し、以下の課題を認識するに至った。
【0011】
図2は、図1のスイッチングレギュレータ4zの軽負荷状態における動作を示す波形図である。スイッチングトランジスタM1がオンすると、出力電圧Voutが上昇する。そして出力電圧Voutが上側しきい値電圧に達すると、スイッチングトランジスタM1がオフし、同期整流用トランジスタM2がオンする。同期整流用トランジスタM2がオンの期間、コイル電流Iが転流すると、同期整流用トランジスタM2がオフされる。同期整流用トランジスタM2がオフした後も、ヒステリシスコンパレータ10の帰還によって反転入力端子の電圧INNは低下し続け、下側しきい値電圧まで低下する。そうすると、再びスイッチングトランジスタM1がオンし、過剰なエネルギーを出力キャパシタCoに供給してしまう。この動作が繰り返されると、出力電圧Voutが上昇するという問題がある。
【0012】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ヒステリシス制御方式のスイッチングレギュレータの、軽負荷時における出力電圧の上昇の抑制にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある態様は、同期整流型スイッチングレギュレータのスイッチングトランジスタおよび同期整流用トランジスタを駆動する制御回路に関する。この制御回路は、スイッチングレギュレータの出力電圧を分圧する第1、第2抵抗と、その反転入力端子に第1、第2抵抗により分圧された電圧が入力され、その非反転入力端子に基準電圧が入力された演算増幅器と、演算増幅器にヒステリシスを設定するために、演算増幅器の出力端子と演算増幅器の反転入力端子の間に設けられたフィードバック経路と、演算増幅器の出力信号にもとづいてスイッチングトランジスタおよび同期整流用トランジスタをスイッチングするプリドライバと、スイッチングレギュレータのコイル電流の転流を検出すると、同期整流用トランジスタをオフするとともに、軽負荷状態を示す検出信号をアサートする軽負荷検出部と、を備える。フィードバック経路は、その時定数が、第1の値と、第1の値より大きな第2の値で切りかえ可能に構成され、時定数は、検出信号のアサートを契機として、第2の値から第1の値に変更される。
【0014】
この態様によると、軽負荷状態においてフィードバック経路の時定数が長くなることにより、演算増幅器の反転入力端子の電圧の下降速度が低下する。その結果、演算増幅器の反転入力端子の電圧が、ヒステリシスコンパレータの下側しきい値に対応する電圧まで低下するのに要する時間、つまり次にスイッチングトランジスタおよびローサイドがともにオフとなる期間が長くなる。これにより、軽負荷状態において、不要にスイッチングトランジスタがオンするのを防止でき、出力電圧の上昇を抑制できる。
【0015】
フィードバック経路は、その入力端子が、演算増幅器の出力端子と接続されたバッファと、バッファの出力端子と演算増幅器の反転入力端子の間に直列に設けられたフィードバックキャパシタおよび第3抵抗と、を含んでもよい。バッファは、その出力段のローサイドトランジスタの能力が切りかえ可能に構成され、ローサイドトランジスタの能力は、検出信号のアサートを契機として低下してもよい。
【0016】
バッファは、ハイサイドトランジスタと、ハイサイドトランジスタと直列に設けられた第1ローサイドトランジスタと、第1ローサイドトランジスタと並列な経路に直列に設けられた第4抵抗および第2ローサイドトランジスタと、を含む出力段と、前記検出信号がアサートされる前、演算増幅器の出力信号に応じてハイサイドトランジスタおよび第1ローサイドトランジスタを制御し、検出信号がアサートされた後、ハイサイドトランジスタおよび第2ローサイドトランジスタを制御する入力段と、を含んでもよい。
【0017】
フィードバック経路は、演算増幅器の出力端子と演算増幅器の反転入力端子の間に直列に設けられたフィードバックキャパシタおよび第3抵抗と、を含んでもよい。第3抵抗は、その抵抗値が、検出信号がアサートされる前において第1の値となり、検出信号のアサートを契機として第1の値より大きな第2の値となる可変抵抗であってもよい。
【0018】
フィードバック経路は、演算増幅器の出力端子と演算増幅器の反転入力端子の間に直列に設けられたフィードバックキャパシタおよび第3抵抗と、を含んでもよい。フィードバックキャパシタは、その容量値が、検出信号がアサートされる前において第1の値となり、検出信号のアサートを契機として第1の値より大きな第2の値となる可変キャパシタであってもよい。
【0019】
本発明の別の態様もまた、制御回路である。この制御回路は、同期整流型スイッチングレギュレータのスイッチングトランジスタおよび同期整流用トランジスタを駆動する制御回路であって、スイッチングレギュレータの出力電圧を分圧する第1、第2抵抗と、その反転入力端子に第1、第2抵抗により分圧された電圧が入力され、その非反転入力端子に基準電圧が入力された演算増幅器と、その入力端子が、演算増幅器の出力端子と接続されたバッファと、バッファの出力端子と演算増幅器の反転入力端子の間に直列に設けられたフィードバックキャパシタおよび第3抵抗と、演算増幅器の出力信号にもとづいてスイッチングトランジスタおよび同期整流用トランジスタをスイッチングするプリドライバと、スイッチングレギュレータのコイル電流の転流を検出すると、同期整流用トランジスタをオフするとともに、軽負荷状態を示す検出信号をアサートする軽負荷検出部と、を備える。バッファは、その出力段のローサイドトランジスタの能力が切りかえ可能に構成され、軽負荷状態におけるローサイドトランジスタの能力は、通常状態のそれよりも低い。
【0020】
本発明の別の態様は、スイッチングレギュレータである。このスイッチングレギュレータは、上述のいずれかの態様の制御回路を備える。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、電子機器である。この電子機器は、上述のスイッチングレギュレータを備える。
【0022】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のある態様によれば、ヒステリシス制御方式のスイッチングレギュレータの、軽負荷状態における出力電圧の上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ヒステリシス制御方式の降圧型スイッチングレギュレータの構成を示す回路図である。
【図2】図1のスイッチングレギュレータの軽負荷状態における動作を示す波形図である。
【図3】実施の形態に係るスイッチングレギュレータを備える電子機器の構成を示す回路図である。
【図4】フィードバック経路のインピーダンスが切りかえ可能なヒステリシスコンパレータの構成例を示す回路図である。
【図5】図3のスイッチングレギュレータの軽負荷状態における動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0026】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0027】
図3は、実施の形態に係るスイッチングレギュレータ4を備える電子機器の構成を示す回路図である。
【0028】
電子機器1は、たとえば電池駆動型デバイスであり、電池3、スイッチングレギュレータ4および負荷2を備える。このような電子機器としては、携帯電話端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯オーディオプレイヤが例示される。負荷2としては、このような電子機器に搭載される、DSP(Digital Signal Processor)、液晶ドライバ、オーディオ回路などが例示される。
【0029】
スイッチングレギュレータ4は、いわゆる同期整流型の降圧型スイッチングレギュレータであり、電池3からの電圧Vbatを降圧し、その出力電圧Voutを負荷2に供給する。
【0030】
スイッチングレギュレータ4は、制御回路100、インダクタL1、出力キャパシタCoを備える。ここではスイッチングトランジスタM1および同期整流用トランジスタM2が制御回路100に内蔵される場合を示すが、これらは制御回路100の外部に設けられたディスクリート素子であってもよい。
【0031】
スイッチングトランジスタM1、同期整流用トランジスタM2、インダクタL1、出力キャパシタCoの回路トポロジーは一般的な同期整流型スイッチングレギュレータと同様である。
【0032】
制御回路100は、出力電圧Voutに応じたフィードバック電圧VfbにもとづいてスイッチングトランジスタM1および同期整流用トランジスタM2を駆動し、出力電圧Voutを所望のレベルに安定化させる。
【0033】
制御回路100は、電源端子P1、接地端子P2、スイッチング端子P3、フィードバック端子P4を備える。電源端子P1には電池3からの電池電圧Vbatが入力され、接地端子P2には接地電圧VGNDが供給される。スイッチング端子P3は、スイッチングトランジスタM1と同期整流用トランジスタM2の接続点の電位LXをインダクタL1に出力するための端子である。フィードバック端子P4には出力電圧Voutがフィードバックされる。
【0034】
制御回路100は、スイッチングトランジスタM1、同期整流用トランジスタM2に加えて、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第1キャパシタC1、ヒステリシスコンパレータ10、プリドライバ20、軽負荷検出部30を備える。
【0035】
第1抵抗R1および第2抵抗R2は、フィードバック端子P4に入力された出力電圧Voutを分圧する。第1キャパシタC1は、第1抵抗R1と並列に設けられる。
【0036】
ヒステリシスコンパレータ10は、演算増幅器12およびフィードバック経路13を備える。演算増幅器12の反転入力端子(−)には、第1抵抗R1および第2抵抗R2により分圧された電圧INNが入力され、その非反転入力端子(+)には、所定の基準電圧Vrefが入力される。演算増幅器12の出力端子と反転入力端子の間には、しきい値電圧のヒステリシスを設定するためのフィードバック経路13が設けられる。フィードバック経路13は、演算増幅器12の出力端子と演算増幅器12の反転入力端子の間に直列に設けられたバッファ14、フィードバックキャパシタC2、第3抵抗R3を含む。
【0037】
バッファ14の入力端子は、演算増幅器12の出力端子と接続される。フィードバックキャパシタC2および第3抵抗R3は、バッファ14の出力端子と演算増幅器12の反転入力端子(−)の間に直列に設けられる。このようにバッファ14、フィードバックキャパシタC2、第3抵抗R3は、演算増幅器12の正帰還として機能し、演算増幅器12とともにヒステリシスコンパレータ10を形成する。
【0038】
プリドライバ20は、演算増幅器12の出力信号SPWMにもとづいてスイッチングトランジスタM1および同期整流用トランジスタM2をスイッチングする。
【0039】
同期整流型のスイッチングレギュレータでは、軽負荷状態において、インダクタL1に流れる電流の向きが反転し(転流)、出力キャパシタCo、インダクタL1、同期整流用トランジスタM2、接地端子P2の向きで流れようとする。これを防止するために、軽負荷検出部30は、スイッチングレギュレータ4のインダクタL1に流れるコイル電流Iの転流を検出すると、同期整流用トランジスタM2をオフする。
【0040】
さらに軽負荷検出部30は、コイル電流Iの転流を検出すると軽負荷状態を示す検出信号MODEをアサートする。コイル電流Iの転流は、公知の技術を用いて実現できる。たとえばスイッチング端子P3に生ずる電圧LXにもとづいて、コイル電流Iの転流を検出することができる。
【0041】
バッファ14、第3抵抗R3、フィードバックキャパシタC2が形成するフィードバック経路13は、その時定数τ(=CR)が、第1の値τと、第1の値τより大きな第2の値τで切りかえ可能に構成される。この時定数τは、検出信号MODEがアサートされる軽負荷状態において、アサートされない通常状態よりも大きく設定される。
【0042】
時定数τの切りかえは、以下のように行うことが望ましい。
1. バッファによる切りかえ
図4は、フィードバック経路のインピーダンスが切りかえ可能なヒステリシスコンパレータ10の構成例を示す回路図である。図4のヒステリシスコンパレータ10は、バッファ14の能力を切りかえることにより、フィードバック経路13の時定数を変化させる。
【0043】
バッファ14は、入力段42と出力段40を含み、出力段40は、電源端子と接地端子の間に直列に設けられたハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLを含むインバータ形式で構成される。出力段40のローサイドトランジスタMLの能力(電流能力または駆動能力ともいう)が切りかえ可能に構成される。そして軽負荷状態におけるローサイドトランジスタMLの能力は、通常状態のそれよりも低く設定される。
【0044】
ローサイドトランジスタMLは、第1ローサイドトランジスタML1と、それと並列な経路上に直列に設けられた第4抵抗R4および第2ローサイドトランジスタML2を含む。通常状態において入力段42は、第1ローサイドトランジスタML1をアクティブとし駆動する。軽負荷状態では、入力段42は、第2ローサイドトランジスタML2をアクティブとして駆動する。
【0045】
具体的には検出信号MODEが通常状態を示すとき(ネゲート)、入力段42は、第2ローサイドトランジスタML2をオフに固定した状態で、演算増幅器12の出力信号SPWMがハイレベルのときハイサイドトランジスタMHをオン、第1ローサイドトランジスタML1をオフし、出力信号SPMWがローレベルのとき、ハイサイドトランジスタMHをオフ、第1ローサイドトランジスタML1をオンする。
【0046】
反対に、検出信号MODEが軽負荷状態を示すとき(アサート)、入力段42は、第1ローサイドトランジスタML1をオフに固定した状態で、演算増幅器12の出力信号SPWMがハイレベルのときハイサイドトランジスタMHをオン、第2ローサイドトランジスタML2をオフし、出力信号SPMWがローレベルのとき、ハイサイドトランジスタMHをオフ、第2ローサイドトランジスタML2をオンする。
【0047】
この構成によれば、軽負荷状態ではフィードバック経路13に第4抵抗R4が挿入されるため、時定数τを通常状態のそれよりも大きくできる。
【0048】
図4において、第4抵抗R4を省略し、第2ローサイドトランジスタML2のオン抵抗を高くしてもよい。また図4のヒステリシスコンパレータ10では、バッファ14が演算増幅器12の外部に個別に設けられる場合を説明したが、バッファ14は、演算増幅器12の出力段に内蔵されてもよい。
【0049】
2. 第3抵抗R3の抵抗値による切りかえ
1.で説明したバッファ14の能力の切りかえに代えて、もしくはそれと組み合わせて、第3抵抗R3の抵抗値を切りかえ可能に構成してもよい。すなわち、第3抵抗R3を可変抵抗で構成し、その軽負荷状態における抵抗値を、通常状態の抵抗値より高く設定してもよい。
【0050】
3. フィードバックキャパシタC2の容量値による切りかえ
1.で説明したバッファ14の能力の切りかえ、2.で説明した第3抵抗R3の抵抗値の切りかえに代えて、もしくはそれらと組み合わせて、フィードバックキャパシタC2の容量値を切りかえてもよい。すなわち、フィードバックキャパシタC2を可変容量で構成し、その軽負荷状態における容量値を、通常状態の容量値より高く設定してもよい。
【0051】
以上が制御回路100の構成である。続いてその動作を説明する。図5は、図3のスイッチングレギュレータ4の軽負荷状態における動作を示すタイムチャートである。
【0052】
時刻t0〜t1の期間、スイッチングトランジスタM1がオンし、コイル電流Iが増加する。ここではスイッチング端子P3から出力キャパシタCoに向かって流れる向きを正とする。出力電圧Voutの上昇およびフィードバック経路13のフィードバックにより、演算増幅器12の反転入力端子の電位INNは上昇する。
【0053】
時刻t1に反転入力端子の電位INNが上側しきい値電圧に達すると、スイッチングトランジスタM1がオフ、同期整流用トランジスタM2がオンし、コイル電流Iが低下し始める。また演算増幅器12の反転入力端子の電位INNは、フィードバック経路13を介したフィードバックにより、通常状態の時定数τで低下しはじめる。
【0054】
同期整流用トランジスタM2がオンでコイル電流Iが正の向きに流れるとき、スイッチング端子P3の電位LXは負電圧となる。コイル電流Iがゼロまで低下し、さらに負となると(転流)、スイッチング端子P3の電位LXは正電圧となる。時刻t2に軽負荷検出部30が、電位LXのゼロクロスを検出すると、プリドライバ20は同期整流用トランジスタM2をオフする。同期整流用トランジスタM2がオフすると、スイッチング端子P3がハイインピーダンスとなり、その電位LXがスイングする。時刻t3に反転入力端子の電位INNが下側しきい値電圧まで低下すると、スイッチングトランジスタM1がオン、同期整流用トランジスタM2がオフする。
【0055】
軽負荷検出部30による1回目の転流を契機として、検出信号MODEがアサートされる。検出信号MODEがアサートされると、ヒステリシスコンパレータ10のフィードバック経路13のインピーダンスが高くなり、時定数τが大きくなる。時刻t4に電位INNが上側しきい値電圧に達すると、スイッチングトランジスタM1がオフ、同期整流用トランジスタM2がオンする。時刻t4以降、電位INNは時定数τで低下する。時刻t5に転流が検出されると、同期整流用トランジスタM2がオフする。
【0056】
このように、図3の制御回路100によれば、時刻t5以降、スイッチングトランジスタM1および同期整流用トランジスタM2のスイッチングが停止し、出力電圧Voutの上昇を抑制することができる。
この効果は、図5を図2と対比することにより明確となる。フィードバック経路13の時定数を切りかえない従来技術では、図2に示すように、軽負荷状態においてもスイッチングトランジスタM1と同期整流用トランジスタM2がスイッチングし続ける。その結果、出力電圧Voutが上昇し続けてしまう。
これに対して、図3の制御回路100では、スイッチングトランジスタM1が2回オンした後は、オフ状態を維持するため、出力電圧Voutの上昇を抑制できる。さらに時刻t5以降、スイッチングトランジスタM1と同期整流用トランジスタM2のスイッチングが停止する間欠モード(PFMモード)に速やかに移行するため、従来回路に比べて消費電力を低減することができる。
【0057】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0058】
1…電子機器、2…負荷、4…スイッチングレギュレータ、Co…出力キャパシタ、L1…インダクタ、10…ヒステリシスコンパレータ、12…演算増幅器、13…フィードバック経路、14…バッファ、C2…フィードバックキャパシタ、20…プリドライバ、30…軽負荷検出部、40…出力段、42…入力段、MH…ハイサイドトランジスタ、ML…ローサイドトランジスタ、ML1…第1ローサイドトランジスタ、ML2…第2ローサイドトランジスタ、M1…スイッチングトランジスタ、M2…同期整流用トランジスタ、100…制御回路、P1…電源端子、P2…接地端子、P3…スイッチング端子、P4…フィードバック端子、R1…第1抵抗、R2…第2抵抗、R3…第3抵抗、R4…第4抵抗、C1…第1キャパシタ、C3…第3キャパシタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期整流型スイッチングレギュレータのスイッチングトランジスタおよび同期整流用トランジスタを駆動する制御回路であって、
前記スイッチングレギュレータの出力電圧を分圧する第1、第2抵抗と、
その反転入力端子に前記第1、第2抵抗により分圧された電圧が入力され、その非反転入力端子に基準電圧が入力された演算増幅器と、
前記演算増幅器にヒステリシスを設定するために、前記演算増幅器の出力端子と前記演算増幅器の反転入力端子の間に設けられたフィードバック経路と、
前記演算増幅器の出力信号にもとづいて前記スイッチングトランジスタおよび前記同期整流用トランジスタをスイッチングするプリドライバと、
前記スイッチングレギュレータのコイル電流の転流を検出すると、前記同期整流用トランジスタをオフするとともに、軽負荷状態を示す検出信号をアサートする軽負荷検出部と、
を備え、
前記フィードバック経路は、その時定数が、第1の値と、前記第1の値より大きな第2の値で切りかえ可能に構成され、前記時定数は、前記検出信号のアサートを契機として、第2の値から第1の値に変更されることを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記フィードバック経路は、
その入力端子が、前記演算増幅器の出力端子と接続されたバッファと、
前記バッファの出力端子と前記演算増幅器の前記反転入力端子の間に直列に設けられたフィードバックキャパシタおよび第3抵抗と、
を含み、
前記バッファは、その出力段のローサイドトランジスタの能力が切りかえ可能に構成され、前記ローサイドトランジスタの能力は、前記検出信号のアサートを契機として低下することを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記バッファは、
ハイサイドトランジスタと、前記ハイサイドトランジスタと直列に設けられた第1ローサイドトランジスタと、前記第1ローサイドトランジスタと並列な経路に直列に設けられた第4抵抗および第2ローサイドトランジスタと、を含む出力段と、
前記検出信号がアサートされる前、前記演算増幅器の出力信号に応じて前記ハイサイドトランジスタおよび前記第1ローサイドトランジスタを制御し、前記検出信号がアサートされた後、前記ハイサイドトランジスタおよび前記第2ローサイドトランジスタを制御する入力段と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記フィードバック経路は、
前記演算増幅器の出力端子と前記演算増幅器の前記反転入力端子の間に直列に設けられたフィードバックキャパシタおよび第3抵抗と、
を含み、
前記第3抵抗は、前記検出信号がアサートされる前において第1の値となり、前記検出信号のアサートを契機として前記第1の値より大きな第2の値となる可変抵抗であることを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項5】
前記フィードバック経路は、
前記演算増幅器の出力端子と前記演算増幅器の前記反転入力端子の間に直列に設けられたフィードバックキャパシタおよび第3抵抗と、
を含み、
前記フィードバックキャパシタは、その容量値が、前記検出信号がアサートされる前において第1の値となり、前記検出信号のアサートを契機として前記第1の値より大きな第2の値となる可変キャパシタであることを特徴とする請求項2に記載の制御回路。
【請求項6】
同期整流型スイッチングレギュレータのスイッチングトランジスタおよび同期整流用トランジスタを駆動する制御回路であって、
前記スイッチングレギュレータの出力電圧を分圧する第1、第2抵抗と、
その反転入力端子に前記第1、第2抵抗により分圧された電圧が入力され、その非反転入力端子に基準電圧が入力された演算増幅器と、
その入力端子が、前記演算増幅器の出力端子と接続されたバッファと、
前記バッファの出力端子と前記演算増幅器の前記反転入力端子の間に直列に設けられたフィードバックキャパシタおよび第3抵抗と、
前記演算増幅器の出力信号にもとづいて前記スイッチングトランジスタおよび前記同期整流用トランジスタをスイッチングするプリドライバと、
前記スイッチングレギュレータのコイル電流の転流を検出すると、前記同期整流用トランジスタをオフするとともに、軽負荷状態を示す検出信号をアサートする軽負荷検出部と、
を備え、
前記バッファは、その出力段のローサイドトランジスタの能力が切りかえ可能に構成され、前記ローサイドトランジスタの能力は、前記検出信号のアサートを契機として低下することを特徴とする制御回路。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の制御回路を備えることを特徴とするスイッチングレギュレータ。
【請求項8】
請求項7に記載のスイッチングレギュレータを備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−39823(P2012−39823A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179698(P2010−179698)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】