説明

スイッチング制御回路及びそれを用いた昇降圧DC−DCコンバータ

【課題】昇圧動作及び降圧動作を安定して行う。
【解決手段】インダクタンスと、昇圧用・降圧用スイッチング素子と、平滑用コンデンサを有した昇降圧DC−DCコンバータにおいて、出力電圧の分圧電圧と基準電圧との誤差を増幅して誤差電圧を生成する誤差増幅器と、発振周波数が固定化された発振クロック信号を生成するPLL回路と、発振クロック信号に基づいてアップカウント動作とダウンカウント動作を交互に行いアップダウンカウント値を生成するアップダウンカウンタと、アップダウンカウント値に基づいて昇圧用及び降圧用三角波信号を生成出力する三角波発生回路と、誤差電圧と昇圧用三角波信号とを比較する昇圧用コンパレータと、誤差電圧と降圧用三角波信号とを比較する降圧用コンパレータと、を有したスイッチング制御回路を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング制御回路及びそれを用いた昇降圧DC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータは、電子機器に組み込まれるローカルなスイッチング電源である。DC−DCコンバータは、インダクタンスと、そのインダクタンスに対して直流入力電圧Vinを印加して磁気エネルギーを充電する際にオンさせる充電用スイッチング素子と、そのインダクタンスに充電された磁気エネルギーを放電する際にオンさせる放電用スイッチング素子と、そのインダクタンスと接続され、出力電圧Voutを平滑する平滑用コンデンサと、を有しており、充電用スイッチング素子及び放電用スイッチング素子と、を相補的にオン・オフさせることで、直流入力電圧Vinのレベルを昇降圧させて目的レベルの出力電圧Voutを得るスイッチング電源である。このような仕組みによって、DC−DCコンバータは、自身と接続された負荷に必要な電源電圧を供給することができる。
【0003】
ところで、DC−DCコンバータには、昇圧動作と降圧動作の両方を実施可能な昇降圧DC−DCコンバータが提案されている。尚、昇降圧DC−DCコンバータでは、前述した充電用及び放電用スイッチング素子を、昇圧用と降圧用の両方の場合で必要となる。このため、昇圧用スイッチング素子及び降圧用スイッチング素子がともにオン・オフ動作をしてスイッチング損失が大きくなるのを防止すべく、昇圧用スイッチング素子又は降圧用スイッチング素子のいずれか一方のみをオン・オフ動作させるような仕組みが採用される場合が多い。
【0004】
図9は、従来の昇降圧DC−DCコンバータを示す図である(例えば、以下に示す特許文献1を参照)。同図に示すように、直流入力電圧Vinは入力端子1から降圧用スイッチング素子3へと印加されており、また、降圧用スイッチング素子3を介して昇圧用スイッチング素子5の一方側へも印加されてある。
【0005】
三角波発生回路11は、降圧用スイッチング素子3又は昇圧用スイッチング素子5をオン・オフ動作させるためのパルス幅変調信号の生成基準となる三角波信号を発生する回路である。この三角波信号が、降圧用コンパレータ13及び昇圧用コンパレータ14の各反転入力へと供給される。ここで、レベルシフト回路15は、エラーアンプ10の出力を三角波信号の波高差分レベルシフトして、昇圧用コンパレータ14の非反転入力へと入力させる回路である。従って、三角波信号の波高差電圧の範囲内に非反転入力の入力レベルが収まっている降圧用コンパレータ13若しくは昇圧用コンパレータ14のいずれか一方が、反転入力と非反転入力の比較結果としてのパルス幅変調信号を出力する。このパルス幅変調信号によって、降圧用スイッチング素子3又は昇圧用スイッチング素子5のいずれか一方が繰り返しオン・オフされ、これに伴って生じるインダクタンス4の磁気エネルギーの充放電によって、直流入力電圧Vinは降圧又は昇圧される。尚、このように昇降圧された直流入力電圧Vinは、平滑用コンデンサ8によって平滑化された後、出力端子2から出力電圧Voutとして取り出される。
【0006】
尚、三角波発生回路11は、一般的に、図10に示すような構成を呈する。すなわち、三角波発生回路11は、“1i”の電流を流す定電流源21と、コンデンサ22と、そのコンデンサ22と並列に設けた“2i”の電流を引っ張る能力を有したスイッチング素子23と、を有しており、基準クロック信号Cによってスイッチング素子23がオフする場合、コンデンサ22に“1i”の電流に基づいてコンデンサ22が充電され、一方、基準クロック信号Cによってスイッチング素子23がオンする場合、定電流源21の“1i”の電流ではスイッチング素子23に流す電流が不足するので、コンデンサ22から“1i”の電流が放電される。かかる充放電動作によって、コンデンサ22の一方の電極より三角波信号が生成される。
【0007】
このように、図9に示した従来の昇降圧DC−DCコンバータでは、降圧用スイッチング素子3又は昇圧用スイッチング素子5のいずれか一方のみをオン・オフ動作させるので、スイッチング損失を減らすことができ、電圧変換効率の向上が図られる。
【特許文献1】実開平3−63078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図9に示した昇降圧DC−DCコンバータにおいて、三角波発生回路11において発生する三角波信号は、三角波発生回路11を構成する各部品(定電流源21やスイッチング素子23等)の製造バラツキや基準クロック信号Cのジッタ等に起因して、設計上で期待したとおりの波形が得られ難い。このため、三角波信号の振幅レベルとレベルシフト回路15において設定されるレベルシフト量とが、降圧用スイッチング素子3又は昇圧用スイッチング素子5のいずれか一方のみをオン・オフ動作させるための関係を維持し難い場合がある。そして、この場合にあっては、降圧用スイッチング素子3又は昇圧用スイッチング素子5が両方ともオン・オフ動作してしまい、電圧変換効率が必ずしも改善されない恐れがある。
【0009】
このように、従来の昇降圧DC−DCコンバータでは、電圧変換効率向上の観点から降圧用コンパレータ13と昇圧用コンパレータ14をそれぞれ単独で設けてあるが、三角波信号の波形の不安定性ゆえに、降圧用コンパレータ13と昇圧用コンパレータ14それぞれにおいて三角波信号とエラーアンプ10の出力との間のレベル関係が設計上期待したとおりのものにはならず、この結果として、精度の良い出力電圧Voutが得られないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための主たる発明は、インダクタンスと、昇圧動作時にオン・オフさせて前記インダクタンスに直流入力電圧に応じた磁気エネルギーを充放電させる昇圧用スイッチング素子と、降圧動作時にオン・オフさせて前記インダクタンスに前記直流入力電圧に応じた磁気エネルギーを充放電させる降圧用スイッチング素子と、前記インダクタンスから充放電された磁気エネルギーに応じた電圧を平滑化する平滑用コンデンサと、を有し、前記直流入力電圧のレベルを昇圧又は降圧させて目的レベルの出力電圧を前記平滑用コンデンサから得る昇降圧DC−DCコンバータに設けられるスイッチング制御回路であって、前記出力電圧に応じた電圧と前記目的レベルに応じた基準電圧との誤差を増幅して誤差電圧を生成出力する誤差増幅器と、基準クロック信号の基準周波数に基づいて発振周波数が固定化された発振クロック信号を生成出力するPLL回路と、前記発振周波数が固定化された発振クロック信号に基づいてアップカウント動作とダウンカウント動作を交互に行いアップダウンカウント値を生成出力するアップダウンカウンタと、前記アップダウンカウント値に基づいて昇圧用三角波信号及び降圧用三角波信号を生成出力する三角波発生回路と、前記誤差電圧と前記昇圧用三角波信号とを比較して前記昇圧用スイッチング素子をオン・オフさせるための昇圧用スイッチング制御信号を生成出力する昇圧用コンパレータと、前記誤差電圧と前記降圧用三角波信号とを比較して前記降圧用スイッチング素子をオン・オフさせるための降圧用スイッチング制御信号を生成出力する降圧用コンパレータと、を有することとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、昇圧動作及び降圧動作を安定して行えるスイッチング制御回路及びそれを用いた昇降圧DC−DCコンバータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<昇降圧DC−DCコンバータの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る昇降圧DC−DCコンバータ100の全体構成を示す図である。
昇降圧DC−DCコンバータ100は、入力端子101と、出力端子102と、クロック端子103と、Hブリッジ回路110と、平滑用コンデンサC1と、抵抗分圧器120と、スイッチング制御回路200と、エラーアンプ20の負帰還経路上に設ける帰還抵抗R3及び帰還コンデンサC2と、を有する。
【0013】
入力端子101は、昇降圧変換対象とする直流入力電圧VINが印加される端子である。出力端子102は、直流入力電圧VINのレベルを昇降圧して目的レベルとなった出力電圧VOUTを取り出すための端子である。クロック端子103は、PLL回路230において分周回路232より出力される分周クロック信号SCK2との位相比較対象とする基準クロック信号CLKが入力される端子である。
【0014】
Hブリッジ回路110は、降圧動作時にオン・オフする降圧用スイッチング素子に該当するNMOSトランジスタDW_T、DW_Bと、昇圧動作時にオン・オフする昇圧用スイッチング素子に該当するNMOSトランジスタUP_T、UP_Bと、インダクタンスLとがH字状に接続された回路であり、直流入力電圧VINをチョッピングするものである。
【0015】
かかるHブリッジ回路110の構成を詳述すると、NMOSトランジスタDW_Tは、そのドレインには入力端子101が接続され、そのソースにはNMOSトランジスタDW_Bのドレインが接続され、そのゲートにはスイッチング制御回路200からの駆動信号SD1が供給される。NMOSトランジスタDW_Bは、そのドレインにはNMOSトランジスタDW_Tのソースが接続され、そのソースは接地され、そのゲートにはスイッチング制御回路200からの駆動信号SD2が供給される。
【0016】
一方、NMOSトランジスタUP_Tは、そのドレインには出力端子102が接続され、そのソースにはNMOSトランジスタUP_Bのドレインが接続され、そのゲートにはスイッチング制御回路200からの駆動信号SU1が供給される。NMOSトランジスタUP_Bは、そのドレインにはNMOSトランジスタUP_Tのソースが接続され、そのソースは接地され、そのゲートにはスイッチング制御回路200からの駆動信号SU2が供給される。また、NMOSトランジスタDW_T、DW_Bの接続部と、NMOSトランジスタUP_T、UP_Bの接続部との間にはインダクタンスLが設けられる。
【0017】
平滑用コンデンサC1は、Hブリッジ回路110から、詳しくはNMOSトランジスタUP_Tのドレインから得られるチョッピング後の直流入力電圧VINを平滑化するコンデンサである。かかる平滑用コンデンサC1によって、目的レベルに平滑化された出力電圧VOUTが出力端子102から得られることになる。
【0018】
抵抗分圧器120は、抵抗素子R1、R2による直列接続体で構成され、それぞれの抵抗値を変えることによって、出力電圧VOUTの目的レベルを調整するものである。よって、出力電圧VOUTの目的レベルの外部調整のため、抵抗分圧器120は、一般的に、スイッチング制御回路200の外付け回路とされる。尚、出力電圧VOUTは、抵抗分圧器120の分圧比(=R2/(R1+R2))によって分圧電圧Vf1へと変換される。そして、分圧電圧Vf1は、スイッチング制御回路200へとフィードバックされる。
【0019】
スイッチング制御回路200は、抵抗分圧器120から得られた分圧電圧Vf1と、出力電圧VOUTの目的レベルに応じた基準電圧Vrと、の比較結果であるエラーアンプ220の誤差出力Vf2に基づいて、降圧用スイッチング素子であるNMOSトランジスタDW_T、DW_Bをオン・オフするためのスイッチング駆動信号SD1、SD2、若しくは、昇圧用スイッチング素子であるNMOSトランジスタUP_T、UP_Bをオン・オフするためのスイッチング駆動信号SU1、SU2を生成する回路である。
【0020】
<昇降圧DC−DCコンバータの降圧動作>
図2をもとに、昇降圧DC−DCコンバータ100(特に、Hブリッジ回路110)の降圧動作の流れを説明する。まず、降圧動作の場合、昇圧用スイッチング素子であるNMOSトランジスタUP_T、UP_Bについて、NMOSトランジスタUP_Tはオン、NMOSトランジスタUP_Bはオフへと固定される。
【0021】
一方、降圧用スイッチング素子であるNMOSトランジスタDW_T、DW_Bについて、まず、NMOSトランジスタDW_Tをオン、NMOSトランジスタDW_Bをオフとさせる。この結果、NMOSトランジスタDW_T、インダクタンスL、NMOSトランジスタUP_Tの電流経路が形成されて、インダクタンスL1に対して直流入力電圧VINに応じた磁気エネルギーが充電される。尚、インダクタンスL1に充電された磁気エネルギーが、NMOSトランジスタUP_Tを介して平滑用コンデンサC1によって平滑化された後、平滑用コンデンサC1の一方の電極側に出現する電圧が、出力電圧VOUTとして出力端子102より取り出される。
【0022】
つぎに、NMOSトランジスタDW_Tをオフ、NMOSトランジスタDW_Bをオンとさせる。この結果、NMOSトランジスタDW_B、インダクタンスL、NMOSトランジスタUP_Tの電流経路が形成されて、インダクタンスL1に充電された磁気エネルギーが出力端子102に向けて放電される。尚、インダクタンスLに直流入力電圧VINが印加されない状況となるため、出力端子102に向けて放電された磁気エネルギーは時間経過と共に徐々に減衰していく。また、放電された磁気エネルギーは、平滑用コンデンサC1によって平滑化された後、平滑用コンデンサC1の一方の電極側に出現する電圧が、出力電圧VOUTとして出力端子102より取り出される。
【0023】
このように、NMOSトランジスタDW_T、DW_Bのオン・オフ動作が繰り返し行われることで、充電用スイッチング素子に該当するNMOSトランジスタDW_Tのオン期間が時間経過とともに長くなる一方、放電用スイッチング素子に該当するNMOSトランジスタDW_Bのオフ期間が時間経過とともに短くなる。よって、直流入力電圧VINを所定の目的レベルにまで昇圧させた出力電圧VOUTが、出力端子102より取り出される。
【0024】
<昇降圧DC−DCコンバータの昇圧動作>
図3をもとに、昇降圧DC−DCコンバータ100(特に、Hブリッジ回路110)の昇圧動作の流れを説明する。まず、昇圧動作の場合、降圧用スイッチング素子であるNMOSトランジスタDW_T、DW_Bについて、NMOSトランジスタDW_Tはオン、NMOSトランジスタDW_Bはオフに固定される。
【0025】
一方、昇圧用スイッチング素子であるNMOSトランジスタUP_T、UP_Bについては、まず、NMOSトランジスタUP_Tをオフ、NMOSトランジスタUP_Bをオンとさせる。この結果、NMOSトランジスタDW_T、インダクタンスL、NMOSトランジスタUP_Bの電流経路が形成されて、インダクタンスL1に対して直流入力電圧VINに応じた磁気エネルギーが充電される。
【0026】
つぎに、NMOSトランジスタUP_Tをオン、NMOSトランジスタUP_Bをオフとさせる。この結果、NMOSトランジスタDW_T、インダクタンスL、NMOSトランジスタUP_Tの電流経路が形成されて、インダクタンスL1に充電された磁気エネルギーが出力端子102に向けて放電されるとともに、平滑用コンデンサC1によって平滑化される。尚、この放電の際、インダクタンスLに発生する電圧の向きは、直流入力電圧VINの向きと同じであるので、平滑用コンデンサC1の一方の電極側に出現する電圧は、直流入力電圧VINよりも昇圧され、出力電圧VOUTとして出力端子102より取り出される。
【0027】
このように、NMOSトランジスタUP_T、UP_Bのオン・オフ動作が繰り返し行われることで、充電用スイッチング素子に該当するNMOSトランジスタUP_Bのオン期間が時間経過とともに短くなる一方、放電用スイッチング素子に該当するNMOSトランジスタUP_Tのオフ期間が時間経過とともに長くなる。よって、直流入力電圧VINを所定の目的レベルにまで昇圧させた出力電圧VOUTが、出力端子102より取り出される。
【0028】
<スイッチング制御回路の構成・動作>
図4乃至図8を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係るスイッチング制御回路200の詳細な構成・動作について図1をもとに説明する。
【0029】
図1に示すように、スイッチング制御回路200は、エラーアンプ220、PLL回路230、アップダウンカウンタ240、DAC(デジタル・アナログ変換器)250、昇圧用コンパレータ260、降圧用コンパレータ270、スイッチング駆動回路280、を1チップに集積化した回路である。
【0030】
エラーアンプ220は、オペアンプと、そのオペアンプの負帰還経路上に帰還抵抗R3と帰還コンデンサC2を設けることで、いわゆる積分回路を構成している。また、かかるオペアンプの非反転入力には出力電圧VOUTの目的レベルに応じた基準電圧Vrが印加され、反転入力には分圧電圧Vf1が印加され、エラーアンプ220は、基準電圧Vrと出力電圧VOUTの差分であり且つ積分された誤差信号Vf2が出力される。尚、昇圧又は降圧動作が時間経過とともに安定化したとき、オペアンプの非反転入力と反転入力はイマジナリーショートされ、基準電圧Vrと分圧電圧Vf1は概略同レベルとなる。すなわち、このとき、出力端子102から目的レベルの出力電圧VOUTが取り出される。
【0031】
PLL回路230は、VCO(電圧制御発振器)231、分周回路232、位相比較器233、を有する。
VCO231は、出力周波数(発振クロック信号SCK1の発振周波数)が制御電圧に比例する発振回路である。
分周回路232は、VCO231の発振クロック信号SCK1を分周数(1/N)に応じて分周して、その分周結果である分周クロック信号SCK2を位相比較器233へ供給する。なお、分周回路232の分周数(1/N)は、VCO231の発振クロック信号SCK1に対して要求される周波数に応じて設定される。
位相比較器233は、基準クロック信号CLKと分周クロック信号SCK2の位相を比較し、その位相差に応じた誤差信号をVCO231へと供給する。尚、VCO231の入力側にはコンデンサC4が設けられる。かかるコンデンサC4は、位相比較器233からの誤差信号を平滑化して、VCO231の制御電圧とするためのローパスフィルタを構成するものである。この結果、VCO231は、位相比較器233から供給される誤差信号を平滑化した制御電圧に応じて、発振クロック信号SCK1の位相を進ませる又は遅らせるべく作用する。
【0032】
尚、基準クロック信号CLKは、昇降圧DC−DCコンバータのコンバータ100と接続されたマイコン等の外部装置において、昇圧用スイッチング素子(NMOSトランジスタUP_T、UP_B)と降圧用スイッチング素子(NMOSトランジスタDW_T、DW_B)の所望のスイッチング周波数に対応させた基準周波数f1が設定されたものであり、当該外部装置からクロック端子103へと供給される他励クロック信号である。すなわち、このような基準クロック信号CLKによって、昇圧用スイッチング素子(NMOSトランジスタUP_T、UP_B)及び降圧用スイッチング素子(NMOSトランジスタDW_T、DW_B)のスイッチング周波数は共通に設定される。このため、昇降圧DC−DCコンバータ100にはスイッチングノイズを除去するためのフィルタ回路を設ける必要があるが、かかるフィルタ回路は、昇圧用と降圧用とで共通な回路で済ませることができる。
【0033】
このようにPLL制御がなされることで、最終的には、基準クロック信号CLKと分周クロックSCK2との間の位相差がある位相差で安定し、VCO231の発振クロック信号SCK1の発振周波数は、基準クロックCLKの基準周波数f1を分周数の逆数(N)分逓倍させた周波数に固定化(ロック)された状態となる。
【0034】
アップダウンカウンタ240は、PLL回路230より出力される基準周波数f1のN倍の発振クロックSCK1のエッジに基づいて、アップカウント動作とダウンカウント動作を交互に繰り返すカウンタである。例えば、最大カウント値に応じた数のフリップフロップ回路を縦続接続することで構成される。尚、本実施形態では、図4に示すように、16(2の4乗)進アップダウンカウントする場合とし、その結果、4ビットのアップダウンカウント値(D0〜D4)を生成するものとする。
【0035】
DAC250は、本発明に係る『三角波発生回路』の一実施形態であり、アップダウンカウンタ240のアップダウンカウント値をもとに、昇圧用コンパレータ260へと供給される昇圧用三角波信号Vat1と、降圧用コンパレータ270へと供給される降圧用三角波信号Vat2へと変換する回路である。尚、DAC250は、昇圧用三角波信号Vat1と降圧用三角波信号Vat2を、アップダウンカウント値の周波数に応じた同一周波数に設定する。かかる理由は、スイッチングノイズ用のフィルタを昇圧用と降圧用とで共通させる要請に基づくものである。また、DAC250は、昇圧用三角波信号Vat1と降圧用三角波信号Vat2を、アップダウンカウント値の位相に応じた同一位相に設定する。かかる理由は、昇降圧DC−DCコンバータ100の場合、エラーアンプ220の誤差信号Vf2の大きさによっては昇圧動作と降圧動作が切り替わることがあり、その際に正常動作させる要請に基づくものである。
【0036】
本発明の一実施形態に係るDAC250の構成を図5に示しておく。アップダウンカウンタ240より4ビットのアップダウンカウント値(D0〜D4)に対応すべく、電流1i(2の0乗)を流す定電流源251a、電流2i(2の1乗)を流す定電流源251b、電流4i(2の2乗)を流す定電流源251c、電流8i(2の3乗)を流す定電流源251d、が並列に設けられる。
【0037】
また、定電流源251aの電流経路上には1桁目のアップダウンカウント値D0に基づいてオン・オフ(D0=Hレベル:オン、D0=Lレベル:オフ)するスイッチング素子252a、定電流源251bの電流経路上には2桁目のアップダウンカウント値D1に基づいてオン・オフ(D1=Hレベル:オン、D1=Lレベル:オフ)するスイッチング素子252b、定電流源251cの電流経路上には3桁目のアップダウンカウント値D2に基づいてオン・オフ(D2=Hレベル:オン、D2=Lレベル:オフ)するスイッチング素子252c、定電流源251dの電流経路上には4桁目のアップダウンカウント値D3に基づいてオン・オフ(D3=Hレベル:オン、D3=Lレベル:オフ)するスイッチング素子252d、がそれぞれ設けられる。
【0038】
定電流源251a〜251dがそれぞれ流す電流(1i、2i、4i、8i)は、スイッチング素子252a〜252dを介して合成された合成電流となり、また、その合成電流は、抵抗素子R4、R5の並列接続によって、抵抗素子R4の一方の端子側へと分流させた電流Is1と、抵抗素子R5の一方の端子側へと分流させた電流Is2となる。
【0039】
まず、定電流源251a〜251dの合成電流から分流された電流Is1は、抵抗素子R4の一方の端子側から他方の端子側に向けて流れ、この結果、抵抗素子R4の一方の端子には電流Is1に基づく電圧降下Vs1(=R4×Is1)が生じる。尚、抵抗素子R4の他方の端子には、ボルテージフォロワ253aを介して直流電源254aの基準電圧Vxを予め印加させておく。この結果、抵抗素子R4の一方の端子には、一定の基準電圧Vxに対して4ビットのアップダウンカウント値(D0〜D4)に基づいて可変となる電圧降下Vs1を加算した、階段状の昇圧用三角波信号Vdt1が出現する。この階段状の昇圧用三角波信号Vdt1は、フィルタ256を介して、滑らかなアナログの昇圧用三角波信号Vat1となる。
【0040】
尚、階段状の昇圧用三角波信号Vdt1は、図6に示す上側の波形となる。まず、4ビットのアップダウンカウント値(D0〜D4)が全てLレベルの場合、スイッチング素子252a〜252dは全てオフし、定電流源251a〜251dの合成電流はゼロである。このとき、昇圧用三角波信号Vdt1は、基準電圧Vxに相当するボトムレベルV1_Bとなる。
【0041】
その後、4ビットのアップダウンカウント値(D0〜D4)が“0”から“15”までアップカウントされていく際、それに応じてスイッチング素子252a〜252dがオン・オフし、電圧降下Vs1が「R4ד1i”」毎に階段状に増加していく。そして、“15”までアップカウントされて、4ビットのアップダウンカウント値(D0〜D4)が全てHレベルとなる場合、スイッチング素子252a〜252dは全てオンし、定電流源251a〜251dの合成電流は“15i(=1i+2i+4i+8i)”となる。このとき、昇圧用三角波信号Vdt1は、基準電圧Vxに対して最大の「R4ד15i”」の電圧降下Vs1を加算したピークレベルV1_Pとなる。
【0042】
さらに、その後、4ビットのアップダウンカウント値(D0〜D4)が“15”から“0”までダウンカウントされていく際、それに応じてスイッチング素子252a〜252dがオン・オフし、電圧降下Vs1が「R4×1i」毎に階段状に減少していく。そして、“0”までダウンカウントされて、4ビットのアップダウンカウント値(D0〜D4)が全てLレベルとなる場合、スイッチング素子252a〜252dは全てオフし、定電流源251a〜251dの合成電流は再びゼロとなる。このとき、昇圧用三角波信号Vdt1は、基準電圧Vxに相当するボトムレベルV1_Bとなる。
【0043】
一方、定電流源251a〜251dの合成電流から分流された電流Is2は、抵抗素子R5の一方の端子側から他方の端子側に向けて流れる。尚、抵抗素子R5の他方の端子側には、降圧用三角波信号Vdt2のピークレベルV2_Pを昇圧用三角波信号Vdt1のボトムレベルV1_Bよりも高レベルとなるように制限すべく、電流Is3を流す定電流源255が設けられる。詳述すると、昇圧用三角波信号Vdt1と降圧用三角波信号Vdt2のレベル関係としては、降圧用三角波信号Vdt2のピークレベルV2_Pと昇圧用三角波信号Vdt1のボトムレベルV1_Bの間にオーバーラップ領域ΔV(=V2_P−V1_B)が必ず設けられるよう制限される。かかるオーバーラップ領域ΔVを設ける理由は、仮に、オーバーラップ領域ΔVを設けないとすると、昇圧用三角波信号Vdt1のボトムレベルV1_Bと降圧用三角波信号Vdt2のピークレベルV2_Pとの間に、昇圧用コンパレータ260と降圧用コンパレータ270両方の比較結果が固定されてしまう所謂不感帯が発生するからである。
【0044】
そこで、オーバーラップ領域ΔVに応じた制御電流Δiを設定した上で、定電流源255の電流Is3は、定電流源251a〜251dの最大合成電流である“15i”から制御電流Δiを差し引いた電流(=15i−Δi)とする。この結果、抵抗素子R5の一方の端子側から他方の端子側に向けて、定電流源251a〜251dの合成電流から分流された電流Is2から定電流源255の電流Is3を差し引いた電流(=Is2−Is3)が流れる。そして、抵抗素子R5の一方の端子には電圧降下Vs2(=R5×(Is2−Is3))が生じる。尚、抵抗素子R5の他方の端子には、ボルテージフォロワ253bを介して直流電源254bの基準電圧Vyを予め印加させておく。この結果、抵抗素子R5の他方の端子には、一定の基準電圧Vyに対して4ビットのアップダウンカウント値(D0〜D4)に基づいて可変となる電圧降下Vs2を加算した、階段状の降圧用三角波信号Vdt2が出現する。この階段状の昇圧用三角波信号Vdt2は、フィルタ256を介して、滑らかなアナログの降圧用三角波信号Vat2となる。
【0045】
尚、階段状の降圧用三角波信号Vdt2は、図6に示す下側の波形となる。尚、図6に示す例では、制御電流Δiを“2i”に設定した場合であり、定電流源255の電流Is3は“13i(=15i−2i)”となる場合である。まず、4ビットのアップダウンカウント値(D0〜D4)が全てLレベルの場合、スイッチング素子252a〜252dは全てオフし、定電流源251a〜251dの合成電流はゼロである。このとき、降圧用三角波信号Vdt2は、基準電圧Vyに相当するボトムレベルV2_Bとなる。
【0046】
その後、4ビットのアップダウンカウント値(D0〜D4)が“0”から“15”までアップカウントされていく際、それに応じてスイッチング素子252a〜252dがオン・オフし、電圧降下Vs2が「R5ד1i”」毎に階段状に増加していく。そして、“15”までアップカウントされて、4ビットのアップダウンカウント値(D0〜D4)が全てHレベルとなる場合、スイッチング素子252a〜252dは全てオンし、定電流源251a〜251dの合成電流は“15i(=1i+2i+4i+8i)”となる。しかし、抵抗素子R5には最大“13i”の電流しか流せないので、抵抗素子R5に流れる電流は“2i”である。よって、このとき、降圧用三角波信号Vdt1は、基準電圧Vyに対して「R5ד2i”」の電圧降下Vs2を加算したピークレベルV2_Pとなる。
【0047】
さらに、その後、4ビットのアップダウンカウント値(D0〜D4)が“15”から“0”までダウンカウントされていく際、それに応じてスイッチング素子252a〜252dがオン・オフし、電圧降下Vs2が「R5×1i」毎に階段状に減少していく。そして、“0”までダウンカウントされて、4ビットのアップダウンカウント値(D0〜D4)が全てLレベルとなる場合、スイッチング素子252a〜252dは再び全てオフし、定電流源251a〜251dの合成電流は再びゼロとなる。このとき、降圧用三角波信号Vdt2は、基準電圧Vyに相当するボトムレベルV2_Bとなる。
【0048】
昇圧用コンパレータ260は、昇圧動作用のスイッチング駆動信号SU1、SU2を生成するための差動コンパレータであり、その反転入力には誤差信号Vf2が印加され、その非反転入力には昇圧用三角波信号Vat1が印加される。よって、昇圧用コンパレータ260は、昇圧用三角波信号Vat1よりも誤差信号Vf2の方が高レベルの場合にはHレベルを出力し、昇圧用三角波信号Vat1よりも誤差信号Vf2の方が低レベルの場合にはLレベルを出力する。
【0049】
降圧用コンパレータ270は、降圧動作用のスイッチング駆動信号SD1、SD2を生成するための差動コンパレータであり、その反転入力には誤差信号Vf2が印加され、その非反転入力には降圧用三角波信号Vat2が印加される。よって、降圧用コンパレータ270は、降圧用三角波信号Vat2よりも誤差信号Vf2の方が高レベルの場合にはHレベルを出力し、降圧用三角波信号Vat2よりも誤差信号Vf2の方が低レベルの場合にはLレベルを出力する。
【0050】
スイッチング駆動回路280は、昇圧用コンパレータ260の出力に基づいて、NMOSトランジスタUP_Tを駆動(オン・オフ)するためのスイッチング駆動信号SU1と、NMOSトランジスタUP_Bを駆動(オン・オフ)するためのスイッチング駆動信号SU2を生成する。尚、本実施形態では、スイッチング駆動信号SU1は、バッファ素子281によって、昇圧用コンパレータ260の出力の論理レベルを変えずに生成され、スイッチング駆動信号SU2は、インバータ素子282によって、昇圧用コンパレータ260の出力の論理レベルを反転させて生成される場合とする。
【0051】
また、スイッチング駆動回路280は、降圧用コンパレータ270の出力に基づいて、NMOSトランジスタDW_Tを駆動(オン・オフ)するためのスイッチング駆動信号SD1と、NMOSトランジスタDW_Bを駆動(オン・オフ)するためのスイッチング駆動信号SD2を生成する。尚、本実施形態では、スイッチング駆動信号SD1は、インバータ素子284によって、降圧用コンパレータ270の出力の論理レベルを反転させて生成され、スイッチング駆動信号SD2は、バッファ素子283によって、降圧用コンパレータ270の出力の論理レベルを変えずに生成される場合とする。
【0052】
図7に、降圧動作の場合にスイッチング駆動回路280にて生成されるスイッチング駆動信号SU1、SU2、SD1、SD2の波形を示しておく。尚、図7では、基準電圧Vrのレベルよりも分圧電圧Vf1のレベルが高い場合であり、また、誤差信号Vf2のレベルが、昇圧用三角波信号Vat1のボトムレベルV1_Bと、降圧用三角波信号Vat2のボトムレベルV2_Bの間に収まっている場合を示す。
【0053】
例えば、昇圧用三角波信号Vat1は誤差信号Vf2よりも全期間にわたって高レベルなので、昇圧用コンパレータ260の出力はHレベルを継続する。よって、スイッチング駆動信号SU1、SU2は、それぞれ「Hレベル、Lレベル」を継続し、NMOSトランジスタUP_Tはオン、NMOSトランジスタUP_Bはオフを継続する。
【0054】
一方、降圧用三角波信号Vat2は誤差信号Vf2よりも高レベルとなる場合と低レベルとなる場合とがある。例えば、時刻T2〜T3の期間では、降圧用三角波信号Vat2は誤差信号Vf2よりも低レベルであり、降圧用コンパレータ270の出力はLレベルとなる。よって、スイッチング駆動信号SD1、SD2は、それぞれ「Hレベル、Lレベル」となり、NMOSトランジスタDW_Tはオン、NMOSトランジスタDW_Bはオフする。この結果、インダクタンスLに対して磁気エネルギーが充電される。
【0055】
引き続き、時刻T3〜T4の期間では、降圧用三角波信号Vat2は誤差信号Vf2よりも高レベルであり、降圧用コンパレータ270の出力はHレベルとなる。よって、スイッチング駆動信号SD1、SD2は、それぞれ「Lレベル、Hレベル」となり、NMOSトランジスタDW_Tはオフ、NMOSトランジスタDW_Bはオンする。この結果、前回の時刻T2〜T3の期間で充電された磁気エネルギーが、インダクタンスLより放電され、出力電圧VOUTひいては分圧電圧Vf1が降圧され、分圧電圧Vf1のレベルが基準電圧Vfのレベルに近づくことで、誤差信号Vf2のレベルが低下していくことになる。
【0056】
図8に昇圧動作の場合にスイッチング駆動回路280にて生成されるスイッチング駆動信号SU1、SU2、SD1、SD2の波形を示しておく。尚、図8では、基準電圧Vrのレベルよりも分圧電圧Vf1のレベルが低い場合であり、また、誤差信号Vf2のレベルが、昇圧用三角波信号Vat1のピークレベルV1_Pと、降圧用三角波信号Vat2のピークレベルV2_Pの間に収まっている場合を示す。
【0057】
例えば、降圧用三角波信号Vat2は誤差信号Vf2よりも全期間にわたって低レベルなので、降圧用コンパレータ270の出力はLレベルを継続する。よって、スイッチング駆動信号SD1、SD2は、それぞれ「Hレベル、Lレベル」を継続し、NMOSトランジスタDW_Tはオン、NMOSトランジスタDW_Bはオフを継続する。
【0058】
一方、昇圧用三角波信号Vat1は誤差信号Vf2よりも高レベルとなる場合と低レベルとなる場合とがある。例えば、時刻T2〜T3の期間では、昇圧用三角波信号Vat1は誤差信号Vf2よりも低レベルであり、昇圧用コンパレータ260の出力はLレベルとなる。よって、スイッチング駆動信号SU1、SU2は、それぞれ「Lレベル、Hレベル」となり、NMOSトランジスタUP_Tはオフ、NMOSトランジスタUP_Bはオンする。この結果、インダクタンスLに対して磁気エネルギーが充電される。
【0059】
引き続き、時刻T3〜T4の期間では、昇圧用三角波信号Vat1は誤差信号Vf2よりも高レベルであり、昇圧用コンパレータ260の出力はHレベルとなる。よって、スイッチング駆動信号SU1、SU2は、それぞれ「Hレベル、Lレベル」となり、NMOSトランジスタUP_Tはオン、NMOSトランジスタUP_Bはオフする。この結果、前回の時刻T2〜T3の期間で充電された磁気エネルギーが、インダクタンスLより放電され、出力電圧VOUTひいては分圧電圧Vf1が昇圧され、分圧電圧Vf1のレベルが基準電圧Vfのレベルに近づくことで、誤差信号Vf2のレベルが低下していくことになる。
【0060】
ところで、本発明では、従来の昇降圧DC−DCコンバータとは異なり、三角波発生回路としては図10に示したような発振回路ではなく、PLL回路230によって周波数が固定化された安定な発振クロック信号SCK1をもとに、デジタル量の昇圧用三角波信号Vdt1と降圧用三角波信号Vdt2を生成する。そして、このデジタル量の昇圧用三角波信号Vdt1と降圧用三角波信号Vdt2がDA変換されて、アナログ量の昇圧用三角波信号Vat1と降圧用三角波信号Vat2が、昇圧用コンパレータ260と降圧用コンパレータ270へと供給される。
【0061】
尚、昇圧用三角波信号Vdt1と降圧用三角波信号Vdt2は、クロック端子103に供給された基準クロック信号CLKに基づいて、同一の周波数且つ同一の位相に設定される。また、昇圧用三角波信号Vdt1と降圧用三角波信号Vdt2との間には、不感帯を生じさせないようにするために、オーバーラップ領域が設定される。
【0062】
よって、本発明では、従来の昇降圧DC−DCコンバータのように三角波信号の不安定性の影響を受けず、昇圧用コンパレータ260及び降圧用コンパレータ270において正常な比較動作が行われ、ひいては、昇降圧DC−DCコンバータ100全体の昇圧動作と降圧動作が安定して行われることになる。また、昇圧用三角波信号Vat1と降圧用三角波信号Vat2が前述した関係を維持しつつ安定して生成されるため、昇圧用スイッチング素子(NMOSトランジスタUP_T、UP_B)と、降圧用スイッチング素子(NMOSトランジスタDW_T、DW_B)のうちいずれか一方のみを確実にオン・オフ動作させることができる。よって、電圧変換効率をより確実に向上させることができる。
【0063】
以上、本実施の形態について説明したが、前述した実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る昇降圧DC−DCコンバータの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る昇降圧DC−DCコンバータ、特にHブリッジ回路の降圧動作を説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る昇降圧DC−DCコンバータ、特にHブリッジ回路の昇圧動作を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るアップダウンカウンタのロジック例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るDACの構成を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るDACにおいて生成された平滑化前の昇圧用三角波信号と降圧用三角波信号の波形を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るスイッチング制御回路の主要信号について降圧動作の場合の波形を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るスイッチング制御回路の主要信号について昇圧動作の場合の波形を示す図である。
【図9】従来の昇降圧DC−DCコンバータの構成を示す図である。
【図10】従来の三角波発振回路の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 入力端子 101 入力端子
102 出力端子 103 クロック端子
3 降圧用スイッチング素子 4 インダクタンス
5 昇圧用スイッチング素子 8 平滑用コンデンサ
10、220 エラーアンプ
11 三角波発生回路 12 直流電源
13、270 降圧用コンパレータ 14、260 昇圧用コンパレータ
15 レベルシフト回路 21 定電流源
22 コンデンサ 23 スイッチング素子
100 昇降圧DC−DCコンバータ 110 Hブリッジ回路
120 抵抗分圧器 200 スイッチング制御回路
230 PLL回路 231 VCO
232 分周回路 233 位相比較器
240 アップダウンカウンタ 250 DAC
280 スイッチング駆動回路 281、283 バッファ素子
282、284 インバータ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタンスと、昇圧動作時にオン・オフさせて前記インダクタンスに直流入力電圧に応じた磁気エネルギーを充放電させる昇圧用スイッチング素子と、降圧動作時にオン・オフさせて前記インダクタンスに前記直流入力電圧に応じた磁気エネルギーを充放電させる降圧用スイッチング素子と、前記インダクタンスから充放電された磁気エネルギーに応じた電圧を平滑化する平滑用コンデンサと、を有し、前記直流入力電圧のレベルを昇圧又は降圧させて目的レベルの出力電圧を前記平滑用コンデンサから得る昇降圧DC−DCコンバータに設けられるスイッチング制御回路であって、
前記出力電圧に応じた電圧と前記目的レベルに応じた基準電圧との誤差を増幅して誤差電圧を生成出力する誤差増幅器と、
基準クロック信号の基準周波数に基づいて発振周波数が固定化された発振クロック信号を生成出力するPLL回路と、
前記発振周波数が固定化された発振クロック信号に基づいてアップカウント動作とダウンカウント動作を交互に行いアップダウンカウント値を生成出力するアップダウンカウンタと、
前記アップダウンカウント値に基づいて昇圧用三角波信号及び降圧用三角波信号を生成出力する三角波発生回路と、
前記誤差電圧と前記昇圧用三角波信号とを比較して前記昇圧用スイッチング素子をオン・オフさせるための昇圧用スイッチング制御信号を生成出力する昇圧用コンパレータと、
前記誤差電圧と前記降圧用三角波信号とを比較して前記降圧用スイッチング素子をオン・オフさせるための降圧用スイッチング制御信号を生成出力する降圧用コンパレータと、
を有することを特徴とするスイッチング制御回路。
【請求項2】
前記PLL回路に用いられる前記基準クロック信号は、
前記昇降圧DC−DCコンバータと接続された外部装置において、前記昇圧用スイッチング素子及び前記降圧用スイッチング素子の所望のスイッチング周波数に応じた前記基準周波数が設定され、前記外部装置から供給される他励クロック信号であること、を特徴とする請求項1に記載のスイッチング制御回路。
【請求項3】
前記三角波発生回路は、
前記昇圧用三角波信号及び前記降圧用三角波信号の周波数を、前記アップダウンカウント値の周波数に応じた同一周波数に設定すること、
を特徴とする請求項2に記載のスイッチング制御回路。
【請求項4】
前記三角波発生回路は、
前記昇圧用三角波信号及び前記降圧用三角波信号の位相を、前記アップダウンカウント値の位相に応じた同一位相に設定すること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスイッチング制御回路。
【請求項5】
前記三角波発生回路は、
前記降圧用三角波信号のピークレベルを前記昇圧用三角波信号のボトムレベルよりも高レベルとし、前記ピークレベルと前記ボトムレベルの間にオーバーラップ領域を設定すること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスイッチング制御回路。
【請求項6】
前記三角波発生回路は、
前記アップダウンカウント値のビット数分有し、対応するビット桁がn桁の場合には2の(n−1)乗の電流を流す複数の第1の定電流源と、
前記複数の第1の定電流源の電流経路上にそれぞれ接続されて前記アップダウンカウント値に基づいてオン・オフする複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子を介して前記複数の第1の定電流源の合成電流が一方の端子側から他方の端子側に向けて流れる第1の抵抗素子及び第2の抵抗素子と、
前記第2の抵抗素子の他方の端子側に接続されて前記オーバーラップ領域に応じた制御電流を流す第2の定電流源と、を有し、
前記第1の抵抗素子に前記合成電流が流れて電圧降下が生じることで、前記第1の抵抗素子の一方の端子側から前記昇圧用三角波信号が取り出され、
前記第2の抵抗素子に前記制御電流によって制限された前記合成電流が流れて電圧降下が生じることで、前記第2の抵抗素子の一方の端子側から前記降圧用三角波信号が取り出されること、
を特徴とする請求項5に記載のスイッチング制御回路。
【請求項7】
インダクタンスと、昇圧動作時にオン・オフさせて前記インダクタンスに直流入力電圧に応じた磁気エネルギーを充放電させる昇圧用スイッチング素子と、降圧動作時にオン・オフさせて前記インダクタンスに前記直流入力電圧に応じた磁気エネルギーを充放電させる降圧用スイッチング素子と、前記インダクタンスから充放電された磁気エネルギーに応じた電圧を平滑化する平滑用コンデンサと、を有し、前記直流入力電圧のレベルを昇圧又は降圧させて目的レベルの出力電圧を前記平滑用コンデンサから得る昇降圧DC−DCコンバータであって、
前記出力電圧に応じた電圧と前記目的レベルに応じた基準電圧との誤差を増幅して誤差電圧を生成出力する誤差増幅器と、
基準クロック信号の基準周波数に基づいて発振周波数が固定化された発振クロック信号を生成出力するPLL回路と、
前記発振周波数が固定化された発振クロック信号に基づいてアップカウント動作とダウンカウント動作を交互に行いアップダウンカウント値を生成出力するアップダウンカウンタと、
前記アップダウンカウント値に基づいて昇圧用三角波信号及び降圧用三角波信号を生成出力する三角波発生回路と、
前記誤差電圧と前記昇圧用三角波信号とを比較して前記昇圧用スイッチング素子をオン・オフさせるための昇圧用スイッチング制御信号を生成出力する昇圧用コンパレータと、
前記誤差電圧と前記降圧用三角波信号とを比較して前記降圧用スイッチング素子をオン・オフさせるための降圧用スイッチング制御信号を生成出力する降圧用コンパレータと、
を有することを特徴とする昇降圧DC−DCコンバータ。
【請求項8】
前記昇圧用スイッチング素子は、前記インダクタンスに磁気エネルギーを充電させる第1の充電用スイッチング素子と、前記インダクタンスに充電された磁気エネルギーを放電させる第1の放電用スイッチング素子と、を直列接続した第1の直列接続体であり、
前記降圧用スイッチング素子は、前記インダクタンスに磁気エネルギーを充電させる第2の充電用スイッチング素子と、前記インダクタンスに充電された磁気エネルギーを放電させる第2の放電用スイッチング素子と、を直列接続した第2の直列接続体であり、
前記インダクタンスは、前記第1の直列接続体の接続部と前記第2の直列接続体の接続部の間に設けること、
を特徴とする請求項7に記載の昇降圧DC−DCコンバータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−135275(P2007−135275A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323943(P2005−323943)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】