説明

スイッチング素子及びその製造方法

【課題】接触抵抗を増大することなく接点同士の固着を防止することのできるスイッチング素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス材料から成る第一の基板1の上面に形成された金属製の固定接点10,10と、ガラス材料から成り第一の基板1と対向するように配置される第二の基板2の下面に形成されて固定接点10,10と対向する金属製の可動接点20とから成る金属接点部を有し、第一の基板1の上面に対して、無数の微細な金属製の球状粒子3を噴射するショットピーニング加工を施した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロリレー等のスイッチング素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコン基板上にマイクロマシニング技術を利用して形成されて電気回路のスイッチングを行なうマイクロリレーが知られており、例えば特許文献1に開示されている。この種のマイクロリレーは、例えば図4に示すように、第一のシリコン基板100の表面(図4における上面)に形成された金属製の一対の固定接点101,101と、前記第一のシリコン基板100と対向するように配置される第二のシリコン基板102の表面(図4における下面)に形成されて固定接点101,101と対向する金属製の可動接点103とから成る金属接点部を有し、電磁力や静電引力によって固定接点101,101と可動接点103とを接離させることで固定接点101,101間の導通・非導通を切り替えて接点の開閉を行うものである。
【特許文献1】特開2003−249157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来例では、固定接点101,101及び可動接点103各々において互いに接離する接触面が柔らかい場合、接点の開閉を重ねると接点同士が固着する虞があった。これを解決するために固定接点101及び可動接点103の接触面を硬化させることが考えられるが、この場合には接触面に凹凸が生じることで接触面積が小さくなり、数百万回程度開閉して凹凸が少なくなるまでの間は接触抵抗が高いという問題があった。
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、接触抵抗を増大することなく接点同士の固着を防止することのできるスイッチング素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、固定接点及び可動接点から成る金属接点部を有し、固定接点及び可動接点を接離させることで接点を開閉するスイッチング素子の製造方法であって、金属接点部を形成する第一の工程と、形成された金属接点部における固定接点と可動接点との互いに対向する何れかの表面に無数の微細な金属製の球状粒子を噴射する第二の工程とを備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、第一の工程は、金属接点部をウェハ上に形成する工程であることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、第一の工程と第二の工程との間において、金属接点部が形成されるウェハの一面において金属接点部を除いた全面にレジストを形成する第三の工程を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1項の発明において、球状粒子は、金属接点部に用いられる金属材料との間で合金を形成し難い金属材料から成ることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至3の何れか1項の発明において、球状粒子は、球状粒子を噴射させる対象となる接点に用いられる金属材料から成ることを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1乃至3の何れか1項の発明において、球状粒子は、球状粒子を噴射させる対象となる接点と対向する接点に用いられる金属材料から成ることを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1乃至3の何れか1項の発明において、球状粒子は、高い硬度を有し且つ比重の大きい金属材料から成ることを特徴とする。
【0012】
請求項8の発明は、請求項1乃至7の何れか1項のスイッチング素子の製造方法を用いて製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、固定接点及び可動接点の互いに対向する何れかの表面に無数の微細な金属製の球状粒子を噴射する工程を備えたので、接点の表面が硬化するとともに接点表面の凹凸を低減することができ、したがって接触抵抗を増大させることなく接点同士の固着を防ぐことができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、金属接点部が形成されるウェハの一面において金属接点部を除いた全面にレジストを形成したので、金属接点部のみに球状粒子を噴射することができて不必要な加工が為されないようにすることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、球状粒子が金属接点部に用いられる金属材料との間で合金を形成し難い金属材料から成るので、球状粒子と接点との合金化による接触抵抗の増大を防ぐことができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、球状粒子が球状粒子を噴射させる対象となる接点に用いられる金属材料から成るので、球状粒子と接点との合金化による接触抵抗の増大を防ぐことができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、球状粒子が球状粒子を噴射させる対象となる接点と対向する接点に用いられる金属材料から成るので、接点表面の凹凸の状態を接点の開閉を所定の回数だけ行った場合の凹凸の状態に近づけることができる。
【0018】
請求項7の発明によれば、球状粒子が高い硬度を有し且つ比重の大きい金属材料から成るので、球状粒子の径を小さくしても加工に必要な運動エネルギーを十分に得ることができ、したがって接点の表面の凹凸を更に低減することができる。
【0019】
請求項8の発明によれば、請求項1乃至7の何れか1項の効果を奏するスイッチング素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るスイッチング素子の実施形態について図面を用いて説明する。但し、以下の説明では、図1における上下を上下方向と定めるものとする。本実施形態は、従来例と同様に、ガラス材料から成る第一の基板1の上面に形成された金属製の一対の固定接点10,10と、第一の基板1と対向するように配置される第二の基板2の下面に形成されて固定接点10,10と対向する金属製の可動接点20とから成る金属接点部を有し、電磁力や静電引力によって固定接点10,10と可動接点20とを接離させることで固定接点10,10間の導通・非導通を切り替えて接点の開閉を行うものである。本実施形態の固定接点10,10の第一の基板1側の金属層は例えば金から形成され、最表層10aはロジウムから形成される。また、可動接点20の最表層(図1における下面)はルテニウムから形成される。
【0021】
尚、本実施形態は従来技術で説明したマイクロリレーに本発明の技術思想を適用したものであり、その基本的構造は周知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。但し、本発明の技術思想はマイクロリレー以外のスイッチング素子にも適用可能であることは言うまでもない。以下では本発明の要旨であるスイッチング素子の製造方法について説明する。
【0022】
先ず、図2(a)に示すように、第一の基板1の下面をサンドブラスト法で加工することによって貫通孔11を厚み方向に貫設し、該貫通孔11の内面に例えば銅めっきを施した後に、貫通孔11の上側に固定接点10,10を形成する。次に、図2(b)に示すように、固定接点10,10のみが露出するように固定接点10,10を除いた第一の基板1上面全体にレジスト12を形成する。尚、第一の基板1の厚み寸法は約数百μmm〜数mm、貫通孔11の直径は約数十μmm〜数百μmmで形成されるのが望ましい。
【0023】
その後、図2(c)に示すように、レジスト12が形成された第一の基板1の上面に対して、無数の微細な金属製の球状粒子3を噴射する、所謂ショットピーニング加工を施すことで固定接点10,10の表面を改質硬化させるとともに表面の凹凸を低減させる。ここで、ショットピーニング加工とは、ショット材と言われる微細な金属製の球状粒子3をショット加速装置(図示せず)で加速させて対象物に噴射することで、対象物の表面を改質硬化させる加工法である。本実施形態では、空圧を利用することでショット材である球状粒子3を加速させており、空圧は約1.5atm〜5atmである。また、本実施形態の球状粒子3はロジウムから成り、その直径は約数百nm〜数十μmである。
【0024】
上述のように、固定接点10,10の表面に無数の微細な金属製の球状粒子3を噴射することで、固定接点10,10の表面を硬化させるとともに表面の凹凸を低減させることができるので、接触抵抗を増大させることなく接点同士の固着を防ぐことができる。また、球状粒子3を構成する金属材料を固定接点10,10の最表層10aを構成するロジウムとしたので、球状粒子3と固定接点10,10の最表層10aとが合金化するのを防ぐことができ、接触抵抗の増大を防止できる。更に、第一の基板1の固定接点10,10を除いた全面にレジスト12を形成したので、固定接点10,10のみにショットピーニング加工を施すことができ、不必要な加工が為されないようにすることができる。
【0025】
ところで、本実施形態の球状粒子3は、固定接点10,10の最表層10aを構成する金属材料と同じ金属材料で形成されているが、固定接点10,10の最表層10aと合金化し難い他の金属材料で形成されても構わない。また、球状粒子3を可動接点20の最表層の金属材料(ここではルテニウム)と同じ金属材料で形成してもよく、この場合は固定接点10,10の表面の凹凸の状態を接点の開閉を所定の回数(例えば数百万回)行った場合の凹凸の状態に近づけることができる。
【0026】
更には、球状粒子3を例えばイリジウム等の高硬度で且つ比重の大きい金属材料で形成しても構わない。この場合は、図3に示すように、球状粒子3の直径を小さくしてもショットピーニング加工に必要な運動エネルギーを十分に得ることができるので、球状粒子3を小さくした分だけ固定接点10,10の表面の凹凸を更に低減することができる。
【0027】
尚、本実施形態では固定接点10,10にショットピーニング加工を施した場合について説明しているが、可動接点20に上述のショットピーニング加工を施しても良く、固定接点10,10に加工を施した場合と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のスイッチング素子の実施形態を示す断面図である。
【図2】同上の製造方法を示す説明図で、(a)はレジストを形成する前の状態を示す断面図で、(b)はレジストを形成した状態を示す断面図で、(c)は球状粒子の噴射時を示す断面図である。
【図3】同上の製造方法において異なる球状粒子を用いた場合を示す断面図である。
【図4】従来のスイッチング素子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 第一の基板(ウェハ)
10 固定接点
2 第二の基板(ウェハ)
20 可動接点
3 球状粒子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点及び可動接点から成る金属接点部を有し、固定接点及び可動接点を接離させることで接点を開閉するスイッチング素子の製造方法であって、金属接点部を形成する第一の工程と、形成された金属接点部における固定接点と可動接点との互いに対向する何れかの表面に無数の微細な金属製の球状粒子を噴射する第二の工程とを備えたことを特徴とするスイッチング素子の製造方法。
【請求項2】
前記第一の工程は、金属接点部をウェハ上に形成する工程であることを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子の製造方法。
【請求項3】
前記第一の工程と第二の工程との間において、金属接点部が形成されるウェハの一面において金属接点部を除いた全面にレジストを形成する第三の工程を備えたことを特徴とする請求項2記載のスイッチング素子の製造方法。
【請求項4】
前記球状粒子は、金属接点部に用いられる金属材料との間で合金を形成し難い金属材料から成ることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のスイッチング素子の製造方法。
【請求項5】
前記球状粒子は、球状粒子を噴射させる対象となる接点に用いられる金属材料から成ることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のスイッチング素子の製造方法。
【請求項6】
前記球状粒子は、球状粒子を噴射させる対象となる接点と対向する接点に用いられる金属材料から成ることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のスイッチング素子の製造方法。
【請求項7】
前記球状粒子は、高い硬度を有し且つ比重の大きい金属材料から成ることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のスイッチング素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項のスイッチング素子の製造方法を用いて製造されることを特徴とするスイッチング素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−218023(P2008−218023A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50090(P2007−50090)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】