説明

スイッチング装置

【課題】DCDCコンバータを複数用いてこれらをスイッチング制御によって駆動するに際し、特定の周波数のノイズが特に大きくなるおそれがあること。
【解決手段】3つのDCDCコンバータ(コンバータA,B,C)の操作に際し、互いに相違するスイッチング周波数によって構成される拡散パターンに従ってスイッチング周波数を周期的に変化させることで、スペクトラム拡散を行う。ここで、3つのDCDCコンバータの拡散パターンは互いに同一であるが、その位相は、互いにずらされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流の入力電圧をこれとは電圧値の異なる直流電圧に変換して出力するDCDCコンバータについて、該DCDCコンバータの備えるスイッチング素子を操作するスイッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、DCDCコンバータを複数並列に接続する技術が提案されている。これにより、これら複数のDCDCコンバータを同一のスイッチング周波数にて駆動することで出力電流を適切に制御することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−57779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数のDCDCコンバータを同一のスイッチング周波数で駆動する場合、この周波数や、その高次高調波の周波数においてノイズが大きくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、直流の入力電圧をこれとは電圧値の異なる直流電圧に変換して出力するDCDCコンバータを複数用いてこれらをスイッチング制御によって駆動するに際し、そのノイズを好適に抑制することのできるスイッチング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、直流の入力電圧をこれとは電圧値の異なる直流電圧に変換して出力するDCDCコンバータについて、該DCDCコンバータの備えるスイッチング素子を操作するスイッチング装置において、前記DCDCコンバータが2以上のDCDCコンバータからなり、互いに相違する複数のスイッチング周波数を含む時系列パターンに従って前記スイッチング素子を操作するスペクトラム拡散手段を備え、前記スペクトラム拡散手段は、前記DCDCコンバータ毎に、前記時系列パターンの位相をずらすことを特徴とする。
【0008】
上記発明では、時系列パターンの位相をずらすことで、各DCDCコンバータの操作に用いられるスイッチング周波数同士を互いに相違させることが可能となる。このため、特定のスイッチング周波数やその高調波におけるノイズレベルを抑制することが可能となる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記時系列パターン内の前記複数のスイッチング周波数は、所定の無線放送領域において、互いに共通の高調波成分を有しないことを特徴とする。
【0010】
上記発明によれば、無線放送領域における特定の周波数のノイズレベルが特に大きくなる事態を回避することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記互いに相違するスイッチング周波数の数は、前記DCDCコンバータの数よりも多いことを特徴とする。
【0012】
上記発明では、1度のスイッチング期間(オン・オフの一周期)が互いに隣接するもの同士で、利用されるスイッチング周波数同士に相違するものがあるようにすることができる。このため、スペクトラム拡散を好適に行うことができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記時系列パターンの一周期の逆数は、可聴周波数以上に設定されることを特徴とする。
【0014】
上記発明では、拡散された各スイッチング周波数やそれらの高調波が、ノイズ対策の所望される無線放送の周波数に重なったとしても、重なりが生じるタイミングから次に重なりが生じるタイミングまでの時間の逆数を可聴周波数以上とすることができる。このため、上記無線放送を受信した場合であっても、再生された音声信号に上記重なりに起因して可聴領域内のノイズが生じることを回避することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記スペクトラム拡散手段は、前記スイッチング素子を操作する操作手段を前記DCDCコンバータ毎に各別に備えて且つ、前記位相のずれの時間変化を補正する補正信号を前記各操作手段に出力する補正信号出力手段を備えることを特徴とする。
【0016】
DCDCコンバータ同士の個体差等に起因して、上記時系列パターンに従ったスイッチング制御を継続しているうちに、上記位相のずれに時間変化が生じるおそれがある。上記発明では、この点に鑑み、補正信号を各操作手段に出力することでこうした事態に対処することができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記補正信号出力手段は、前記スイッチング素子の操作のための前記時系列パターン上の時点を指定する時点指定信号を前記操作手段に出力するものであることを特徴とする。
【0018】
上記発明では、各操作手段が現在時系列パターン上のどの時点に居るべきかを把握することができるため、互いの操作手段同士が直接通信することなく、互いの位相のずれ量を調節することができる。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記補正信号出力手段は、前記DCDCコンバータが規定時間稼動される毎にこれを一時停止させる信号を前記操作手段に出力し、その後稼働を指令する信号を前記操作手段に出力するものであることを特徴とする。
【0020】
上記発明では、DCDCコンバータを一旦停止させその後再度稼働させることで、稼働時間が長くなることによる位相のずれの時間変化を補正することができる。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記スペクトラム拡散手段は、前記時系列パターンに関する情報を記憶する記憶手段と、前記スイッチング素子を操作する操作手段とを、前記DCDCコンバータ毎に各別に備え、前記記憶手段に記憶された前記時系列パターンに関する情報は、前記各DCDCコンバータ毎に、その開始時の位相が相違する情報であることを特徴とする。
【0022】
上記発明では、記憶手段に記憶される時系列パターンに関する情報を、DCDCコンバータ毎に開始時の位相が相違するものとするために、位相にずれを生じさせることができる。
【0023】
請求項9記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記スペクトラム拡散手段は、前記時系列パターンに関する情報を記憶する記憶手段と、前記スイッチング素子を操作する操作手段とを、前記DCDCコンバータ毎に各別に備えるとともに、前記各操作手段に前記スイッチング素子の操作の開始を指令する指令信号を出力する指令信号出力手段を備え、前記記憶手段に記憶された前記時系列パターンに関する情報は、前記各DCDCコンバータ同士でその開始時の位相が一致した情報であり、前記指令信号出力手段は、前記操作手段毎に、前記開始を指令する指令信号の出力タイミングをずらすことを特徴とする。
【0024】
上記発明では、開始を指令する指令信号の出力タイミングをずらすことで、DCDCコンバータのそれぞれの記憶手段に記憶された情報が同一であるにもかかわらず、時系列パターンの位相を好適にずらすことができる。
【0025】
請求項10記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記スペクトラム拡散手段は、前記時系列パターンに関する情報を記憶する記憶手段と、前記スイッチング素子を操作する操作手段とを、前記DCDCコンバータ毎に各別に備えるとともに、前記各記憶手段に、前記時系列パターンに関する情報を出力する手段を備えることを特徴とする。
【0026】
上記発明では、記憶手段に出力する情報を互いに相違させることで、上記時系列パターン同士の位相をDCDCコンバータ毎にずらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるコンバータユニットの回路構成を示す回路図。
【図3】同実施形態にかかるスペクトラム拡散態様を示す図。
【図4】同実施形態にかかる拡散されたスイッチング周波数の設定手法を示す図。
【図5】第2の実施形態にかかるスペクトラム拡散態様を示すタイムチャート。
【図6】第3の実施形態にかかるDCDCコンバータ同士の位相ずれの時間変化の補正処理の手順を示す流れ図。
【図7】第4の実施形態にかかる拡散パターンを示す図。
【図8】同実施形態にかかるDCDCコンバータ同士の位相ずれの時間変化の補正手法を示すタイムチャート。
【図9】第5の実施形態にかかるDCDCコンバータ同士の位相ずれの生成手法を示す図。
【図10】第6の実施形態にかかるDCDCコンバータ同士の位相ずれの生成手法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるスイッチング装置をハイブリッド車に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0030】
図示されるように、高圧バッテリ10は、車載低圧システムから絶縁された車載高圧システムを構成するものであり、所定の高電圧(例えば数百ボルト以上)の出力電圧を有する。コンバータユニット20a,20b,20cは、高圧バッテリ10に並列接続されている。すなわち、コンバータユニット20a,20b,20cは、正極ラインLp及び負極ラインLmを介して、高圧バッテリ10の正極及び負極にそれぞれ接続されている。
【0031】
コンバータユニット20a,20b,20cはいずれも、高圧バッテリ10の電圧を降圧して車載低圧システムを構成する低圧バッテリ12に印加するものである。詳しくは、コンバータユニット20a,20b,20cは、それぞれその一対の出力端子が高電位側ラインLhとグランドラインLgとに接続されており、高電位側ラインLhは、低圧バッテリ12の正極に接続されている。ここで、低圧バッテリ12は、車載補機類の電源となるものであり、特に制御装置14の電源となる。制御装置14は、コンバータユニット20a,20b,20cを操作することで、これらの出力電圧を制御する制御装置である。詳しくは、制御装置14は、コンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれに、信号線Lsa、Lsb、Lscを介してその動作開始及び停止を指令する指令信号sa,sb,scを出力することで、コンバータユニット20a,20b,20cの起動、停止の操作を行う。
【0032】
図2に、コンバータユニット20a,20b,20c(図中、これらをコンバータユニット20と総括表記)の回路構成を示す。
【0033】
図示されるように、コンバータユニット20a,20b,20cは、DCDCコンバータ22を備えている。DCDCコンバータ22は、絶縁型の降圧コンバータ回路である。すなわち、トランス22bと、上記正極ラインLp及び負極ラインLmに接続される1次側回路22aと、上記高電位側ラインLh及びグランドラインLgに接続される2次側回路22cとを備えている。DCDCコンバータ22の2次側のうち、高電位側ラインLhに接続される電気経路には、電流センサ24が設けられている。また、高電位側ラインLh及びグランドラインLgのそれぞれに接続される電気経路間には、電圧センサ26が接続されている。これら電流センサ24による出力電流の検出値や、電圧センサ26による出力電圧の検出値は、操作部28に取り込まれる。
【0034】
操作部28は、上記信号線Ls(Lsa,Lsb,Lscの総括表記)を介して入力される指令信号に基づき、DCDCコンバータ22を稼動、停止制御する。すなわち、上記出力電流や出力電圧に基づき、これらをフィードバック制御するうえで適切な値となるように、DCDCコンバータ22の各スイッチング素子に操作信号g1〜g4を出力する。ここで、操作信号は、オン・オフの一周期に対するオン時間の比率(時比率)を、出力電流や出力電圧を制御するための操作量とする信号である。特に、操作部28は、上記一周期の逆数であるスイッチング周波数についての拡散パターンを記憶しており、これに基づき操作信号を出力することでスイッチング制御を行う。
【0035】
図3に、操作部28に記憶された拡散周波数のパターンを示す。
【0036】
図示されるように、拡散周波数のパターンは、互いに相違する6個のスイッチング周波数f1〜f6の時系列パターンである。このパターンに従ってスイッチング制御を行うことで、スイッチング周波数f1、f2、f3、f4、f5、f6のそれぞれに従ったスイッチングが周期的になされることとなる。ここで、本実施形態では、コンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれの操作部28の記憶する拡散パターンの位相が互いに相違する。すなわち、いずれの拡散パターンもf1〜f6の順に周期的にスイッチング制御を行う旨を定めたパターンであることには相違ないが、第1番目のスイッチング制御に採用されるスイッチング周波数が互いに相違するように設定されている。これにより、コンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれにおいて、これらの記憶するパターンに従って同時にスイッチング制御が開始されるなら、拡散パターンに従ったスイッチング制御がなされることとなるものの、周期的なスイッチング制御の位相が互いに相違することとなる。
【0037】
これにより、コンバータユニット20a,20b,20c間で、同一タイミングにおけるスイッチング周波数が互いに相違することとなるため、スイッチング周波数を拡散させることができる。
【0038】
更に、上記スイッチング周波数は、図4に示されるように、AM放送帯域において、互いの高調波が一致しないように設定されている。これは、本実施形態では、スイッチング周波数を「百数十〜数百kHz(図では、百数十kHz)」としており、比較的低次の高調波がAM放送帯域と重なることに鑑みた設定である。高調波同士が一致しないようにすることで、特定の放送局の周波数のノイズが特に大きくなることを回避する。
【0039】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0040】
(1)コンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれの操作部28の記憶する拡散パターンの位相を互いに相違させた。これにより、特定のスイッチング周波数やその高調波におけるノイズレベルを抑制することが可能となる。
【0041】
(2)拡散パターン内の複数のスイッチング周波数が、AM放送領域において、互いに共通の高調波成分を有しないようにした。これにより、AM放送領域における特定の周波数のノイズレベルが特に大きくなる事態を回避することができる。
【0042】
(3)拡散パターンにおいて互いに相違するスイッチング周波数の数を、コンバータユニット20a,20b,20cの数の2倍以上とした。これにより、同時に同一のスイッチング周波数が用いられることや、時系列上隣接するスイッチング同士でスイッチング周波数が同一となることを回避することができる。
【0043】
(4)各コンバータユニット20a,20b,20cに制御装置14から起動、停止の指令を出力するようにした。これにより、コンバータユニット20a,20b,20c同士の通信を可能とする手段を有しなくても、コンバータユニット20a,20b,20c間で容易に位相にずれを生じさせることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0045】
図5に、本実施形態にかかる拡散パターンを示す。図示されるように、本実施形態では、周期的に変更されるスイッチング周波数の時系列パターンの一周期の逆数Fを、可聴周波数に応じた閾値周波数Fth以上に設定する。これにより、特定のスイッチング周波数の高調波が特定のAM放送周波数領域に重なったとしても、いったん重なりが生じてから次に重なりが生じるまでの時間の逆数を閾値周波数Fth以上とすることができる。このため、閾値周波数Fthを、人間が知覚できない周波数とすることで、AM放送の受信に際して、スピーカーから人間に知覚できるノイズが生じる事態を好適に回避することができる。ここで、閾値周波数Fthは、例えば「20kHz」以上とすればよい。これは、可聴周波数が「20Hz〜20kHz」といわれていることによる。もっとも、この設定は絶対的なものではない。実際、人間の聴力には個人差があり、例えば「20kHz」の音波をキャッチできる人間は稀である。このため、上記拡散周波数を、例えば「15kHz」以上に設定しても顕著な効果が得られる。
【0046】
こうした設定によれば、高次高調波同士がAM放送領域内で一致しないような設定にしなくても、AM放送の受信に際して人間に知覚できるノイズを好適に抑制又は回避することができる。もっとも、特定の周波数帯域のノイズが特に大きくなる事態を回避する観点からは、高次高調波同士が一致しない設定を行うことは有効である。
【0047】
以上詳述した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記効果に準じた効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0048】
(5)拡散パターンの一周期の逆数を、可聴周波数以上に設定した。これにより、AM放送の受信に際し、再生された音声信号に可聴領域内のノイズが生じることを回避することができる。
【0049】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0050】
複数のコンバータユニット20a,20b,20cを用いる場合、これらには個体差があるのが常である。このため、先の図3に示した拡散パターンの一周期の時間が実際には、コンバータユニット20a,20b,20c毎で微妙にずれるおそれがある。そしてこの場合には、先の図3に示したパターンによって当初設定しておいた位相のずれ量がスイッチング制御の継続につれて変化するおそれがある。
【0051】
そこで本実施形態では、上記位相のずれの時間変化を補正する処理を行う。
【0052】
図6に、本実施形態にかかる位相ずれの時間変化の補正処理の手順を示す。この処理は、制御装置14によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0053】
この一連の処理では、まずステップS10において、コンバータユニット20a,20b,20cを一時停止させる処理が実行された直後であるか否かを判断する。そして、実行直後であると判断される場合、ステップS12において、コンバータユニット20a,20b,20cに起動指令を出力する。これにより、コンバータユニット20a,20b,20cは、先の図3に示した拡散パターンに従ってスイッチング制御を行うようになる。
【0054】
ステップS12の処理が完了する場合や、ステップS10において否定判断される場合には、ステップS14において、コンバータユニット20a,20b,20cを起動してからの稼動時間を計時する計時処理を行う。続くステップS16においては、計時された時間が所定時間以上であるか否かを判断する。この所定時間は、コンバータユニット20a,20b,20cの個体差に起因して、拡散パターンに従ったスイッチング制御同士の位相のずれが、先の図3に示したものから規定値以上ずれると想定される時間に設定されている。ここで、規定値は、互いのスイッチング周波数が一致するようになるずれよりも小さい値である。そして、所定時間以上である場合には、ステップS18において、コンバータユニット20a,20b,20cの一時停止処理を行う。これにより、低圧バッテリ12等の車載補機類への電力供給の有無にかかわらず、コンバータユニット20a,20b,20cが一時的に停止されることとなる。なお、ステップS18の処理が完了する場合や、ステップS16において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0055】
以上詳述した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記効果に準じた効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0056】
(6)コンバータユニット20a,20b,20cが所定時間稼動される毎にこれを一時停止させる信号をコンバータユニット20a,20b,20cに出力し、その後稼働を指令する信号をコンバータユニット20a,20b,20cに出力した。これにより、稼働時間が長くなることによる位相のずれの時間変化を補正することができる。
【0057】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0058】
先の第1の実施形態では、コンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれに記憶する拡散パターン同士の位相を相違させた。これに対し、本実施形態では、図7に示すように、コンバータユニット20a,20b,20cの記憶する拡散パターンの位相を互いに同一とする。そして、コンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれに対する起動指令のタイミングをずらすことで、コンバータユニット20a,20b,20c同士で拡散パターンの位相を互いにずらす。
【0059】
図8に、本実施形態にかかる拡散パターンの位相の設定手法を示す。詳しくは、図8(a)に、コンバータユニット20aへの指令信号saの推移を示し、図8(b)に、コンバータユニット20bへの指令信号sbの推移を示し、図8(c)に、コンバータユニット20cへの指令信号scの推移を示す。
【0060】
図示されるように、本実施形態では、コンバータユニット20bへの起動指令の出力後、「1/f1+1/f2」だけ経過することで、コンバータユニット20cに起動指令を
出力する。更にその後、「1/f3+1/f4」だけ経過することで、コンバータユニット20aに起動指令を出力する。これによっても、コンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれのスイッチング制御において、互いの位相を先の図3に示したものに準じた態様にてずらすことができる。
【0061】
以上詳述した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記効果に準じた効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0062】
(7)コンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれに対して、開始を指令する指令信号の出力タイミングをずらした。これにより、コンバータユニット20a,20b,20cに記憶された情報が同一であるか否かにかかわらず、時系列パターンの位相を好適にずらすことができる。
【0063】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0064】
本実施形態では、図9に示すように、制御装置14からコンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれに対し、拡散パターン上の時点を指定する時点指定信号snを出力する機能を有する。これにより、例えばコンバータユニット20a,20b,20cに、記憶された拡散パターンの第1スイッチングの時点である旨の信号を同時に出力することで、コンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれが先の図3に示した拡散パターンの最初からスイッチングをし始めるようにすることができる。このため、コンバータユニット20a,20b,20c同士の個体差により、スイッチング制御の継続に連れて互いの拡散パターン同士の位相ずれに時間変化が生じてもこれを補正することができる。なお、上記時点指定信号snの出力周期は、先の図6のステップS16の処理における所定時間程度としてもよい。
【0065】
以上詳述した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記効果に準じた効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0066】
(8)拡散パターン上の時点を指定する時点指定信号snをコンバータユニット20a,20b,20cに出力した。これにより、コンバータユニット20a,20b,20cが、現在、拡散パターン上のどの時点に居るべきかを把握することができるため、コンバータユニット20a,20b,20c同士が直接通信することなく、互いの位相のずれ量を調節することができる。
【0067】
(第6の実施形態)
以下、第6の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0068】
本実施形態では、図10に示すように、制御装置14からコンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれに対し、拡散パターンに関する情報を重畳した信号sfを出力する機能を有する。これにより、例えば、制御装置14からコンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれに先の図3に示した拡散パターンを出力することで、コンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれの拡散パターン同士で位相のずれを生じさせることができる。また例えば、先の図6のステップS16の処理における所定時間の経過毎に、コンバータユニット20a,20b,20cの拡散パターンを初期化すべく、新たに信号sfを出力するなどすることで、コンバータユニット20a,20b,20cの個体差に起因した位相の時間変化を補正することができる。
【0069】
以上詳述した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記効果に準じた効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0070】
(9)制御装置14からコンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれに拡散パターンに関する情報を出力した。これにより、拡散パターン同士の位相をコンバータユニット20a,20b,20c毎にずらしたり、位相のずれの時間変化を補正したりすることができる。
【0071】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0072】
・上記各実施形態では、AM放送領域内においてスイッチング周波数の「全ての」高次高調波同士が互いに一致しないようにしたがこれに限らない。例えば、同次数の高次高調波同士が互いに一致しないようにしてもよい。
【0073】
・上記各実施形態では、AM放送領域内においてスイッチング周波数の全ての高次高調波同士が互いに「一致」しないようにしたがこれに限らない。例えば、高次高調波同士の間隔がAM放送の占有周波数帯幅以内とならないようにしてもよい。
【0074】
・上記各実施形態では、「AM放送領域」内においてスイッチング周波数の高次高調波同士が互いに一致しないようにしたがこれに限らない。例えば、SW放送領域内においてスイッチング周波数の高次高調波同士が互いに一致しないようにしてもよい。
【0075】
・上記第1の実施形態では、コンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれの操作部28に記憶される時系列パターンの位相を互いにずらして且つ、DCDCコンバータ22の駆動開始タイミングを同時とするようにしたがこれに限らない。例えば、コンバータユニット20a,20bの駆動開始タイミング間と、コンバータユニット20b,20cの駆動開始タイミング間とを、それぞれ時系列パターンの一周期(「1/F」)だけ離間させてもよい。
【0076】
・上記第2の実施形態では、時系列パターンの1周期の逆数であるパターン周波数Fを可聴周波数の上限値以上としたがこれに限らず、可聴周波数の下限値以下(例えば「20Hz」以下)としてもよい。
【0077】
・上記各実施形態では、拡散パターンの一周期に一度、コンバータユニット20a,20b,20c同士でスイッチング信号の立ち上がりエッジのタイミングが同期する構成となるが、これに限らない。例えば先の第1の実施形態において、コンバータユニット20a,20b,20cのそれぞれへの起動指令をスイッチング周波数の最小値以下の時間内で互いにずらしたタイミングで出力することで、立ち上がりエッジのタイミングが拡散パターンの一周期において全て一致しないようにしてもよい。
【0078】
・スペクトラム拡散によって拡散されたスイッチング周波数の数は、上記各実施形態で例示したものに限らない。要は、DCDCコンバータ22の数よりも多ければよい。ただしこの際、スイッチング期間(オン・オフの一周期)のうち互いに隣接するもの同士で利用されるスイッチング周波数の全てが等しくはならないようにすることが望ましい。また、上記各実施形態のように、1のスイッチング期間において使用されるスイッチング周波数に共通なものが存在しないようにすることや、隣接するもの同士で利用されるスイッチング周波数が全て相違することがより望ましい。これらを満たすためには、拡散されたスイッチング周波数の数を、DCDCコンバータ22の数の2倍以上とすればよい。
【0079】
・上記各実施形態では、複数のDCDCコンバータ22のそれぞれ毎に、これを操作する操作部28を備えたがこれに限らない。例えばDCDCコンバータ22の全てを一括して操作する操作部を制御装置14が備える構成としてもよい。
【0080】
・DCDCコンバータ22の回路構成としては、先の図2等において例示したものに限らず、例えば特開平5−276751号公報に例示されているタイプの部分共振型のコンバータであってもよい。また、DCDCコンバータ22としては、降圧コンバータにも限らない。また、DCDCコンバータ22の出力電流を検出する手段としては、上記電流センサ24に限らず、1次側を流れる電流の検出値を2次側電流に換算する手段であってもよい。
【0081】
・コンバータユニット20の数としては、「3」に限らず、「2」個又は「4」個以上であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
10…高圧バッテリ、14…制御装置、20a,20b,20c…コンバータユニット、22…DCDCコンバータ、28…操作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の入力電圧をこれとは電圧値の異なる直流電圧に変換して出力するDCDCコンバータについて、該DCDCコンバータの備えるスイッチング素子を操作するスイッチング装置において、
前記DCDCコンバータが2以上のDCDCコンバータからなり、
互いに相違する複数のスイッチング周波数を含む時系列パターンに従って前記スイッチング素子を操作するスペクトラム拡散手段を備え、
前記スペクトラム拡散手段は、前記DCDCコンバータ毎に、前記時系列パターンの位相をずらすことを特徴とするスイッチング装置。
【請求項2】
前記時系列パターン内の前記複数のスイッチング周波数は、所定の無線放送領域において、互いに共通の高調波成分を有しないことを特徴とする請求項1記載のスイッチング装置。
【請求項3】
前記互いに相違するスイッチング周波数の数は、前記DCDCコンバータの数よりも多いことを特徴とする請求項1又は2記載のスイッチング装置。
【請求項4】
前記時系列パターンの一周期の逆数は、可聴周波数以上に設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスイッチング装置。
【請求項5】
前記スペクトラム拡散手段は、前記スイッチング素子を操作する操作手段を前記DCDCコンバータ毎に各別に備えて且つ、前記位相のずれの時間変化を補正する補正信号を前記各操作手段に出力する補正信号出力手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスイッチング装置。
【請求項6】
前記補正信号出力手段は、前記スイッチング素子の操作のための前記時系列パターン上の時点を指定する時点指定信号を前記操作手段に出力するものであることを特徴とする請求項5記載のスイッチング装置。
【請求項7】
前記補正信号出力手段は、前記DCDCコンバータが規定時間稼動される毎にこれを一時停止させる信号を前記操作手段に出力し、その後稼働を指令する信号を前記操作手段に出力するものであることを特徴とする請求項5記載のスイッチング装置。
【請求項8】
前記スペクトラム拡散手段は、前記時系列パターンに関する情報を記憶する記憶手段と、前記スイッチング素子を操作する操作手段とを、前記DCDCコンバータ毎に各別に備え、
前記記憶手段に記憶された前記時系列パターンに関する情報は、前記各DCDCコンバータ毎に、その開始時の位相が相違する情報であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のスイッチング装置。
【請求項9】
前記スペクトラム拡散手段は、前記時系列パターンに関する情報を記憶する記憶手段と、前記スイッチング素子を操作する操作手段とを、前記DCDCコンバータ毎に各別に備えるとともに、前記各操作手段に前記スイッチング素子の操作の開始を指令する指令信号を出力する指令信号出力手段を備え、
前記記憶手段に記憶された前記時系列パターンに関する情報は、前記各DCDCコンバータ同士でその開始時の位相が一致した情報であり、
前記指令信号出力手段は、前記操作手段毎に、前記開始を指令する指令信号の出力タイミングをずらすことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のスイッチング装置。
【請求項10】
前記スペクトラム拡散手段は、前記時系列パターンに関する情報を記憶する記憶手段と、前記スイッチング素子を操作する操作手段とを、前記DCDCコンバータ毎に各別に備えるとともに、前記各記憶手段に、前記時系列パターンに関する情報を出力する手段を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のスイッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−252513(P2010−252513A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98821(P2009−98821)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】