説明

スイッチング電源および照明装置

【課題】電力損失の小さいスイッチング電源及び照明装置を提供する。
【解決手段】第1のスイッチング素子8は、オンのとき第1のインダクタ13に電源電圧を供給して電流を流す。整流要素10は、前記第1のスイッチング素子8に直列に接続され、前記第1のスイッチング素子8がオフしたとき前記第1のインダクタ13の電流を流す。第2のインダクタ14は、前記第1のインダクタ13と電磁結合し、前記第1のインダクタ13の電流が増加しているときは前記第1のスイッチング素子8をオンさせる電位が誘起され、前記第1のスイッチング素子8の電流が減少しているときは前記第1のスイッチング素子8をオフさせる電位が誘起され、誘起された電位を前記第1のスイッチング素子8の制御端子に供給する。前記整流要素10は、耐圧の低いダイオード11と、カソードに直列に接続された第2のスイッチング素子12と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明装置において、照明光源は白熱電球や蛍光灯から省エネルギー・長寿命の光源、例えば発光ダイオード(Light-emitting diode:LED)への置き換えが進んでいる。また、例えば、EL(Electro-Luminescence)や有機発光ダイオード(Organic light-emitting diode:OLED)など新たな照明光源も開発されている。これらの照明光源の輝度は流れる電流値に依存するため、照明を点灯させる場合は、定電流を供給する電源回路が必要になる。また、入力される電源電圧をLEDなどの照明光源の定格電圧に合わせるために、電圧を変換する必要もある。高効率で省電力化・小型化に適した電源として、チョッパ方式のDC−DCコンバータなどのスイッチング電源が知られている。また、スイッチング電源を用いたLED点灯装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−119078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、チョッパ方式のDC−DCコンバータにおいては、スイッチング素子がオフのとき、電圧降下の大きいダイオードを電流が流れるため、電力損失が大きいという問題がある。
本発明の実施形態は、電力損失の小さいスイッチング電源及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、第1のスイッチング素子と、整流要素と、第1のインダクタと、第2のインダクタと、を備えたことを特徴とするスイッチング電源が提供される。前記第1のスイッチング素子は、オンのとき前記第1のインダクタに電源電圧を供給して電流を流す。前記整流要素は、前記第1のスイッチング素子に接続され、前記第1のスイッチング素子がオフしたとき前記第1のインダクタの電流を流す。前記第2のインダクタは、前記第1のインダクタと電磁結合し、前記第1のインダクタの電流が増加しているときは前記第1のスイッチング素子をオンさせる電位が誘起され、前記第1のスイッチング素子の電流が減少しているときは前記第1のスイッチング素子をオフさせる電位が誘起され、誘起された電位を前記第1のスイッチング素子の制御端子に供給する。前記整流要素は、前記第1のスイッチング素子よりも耐圧の低いダイオードと、前記ダイオードのカソードに直列に接続され、前記ダイオードのアノードに制御端子が接続された第2のスイッチング素子と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、電力損失の小さいスイッチング電源及び照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係るスイッチング電源を含む照明装置を例示する回路図である。
【図2】第1の実施形態に係るスイッチング電源を含む照明装置を例示する他の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るスイッチング電源を含む照明装置を例示する回路図である。
図1に表したように、照明装置1は、入力される直流の電源電圧VINを電圧VOUTに降圧するスイッチング電源2と、スイッチング電源2の負荷回路となる照明負荷3を備えている。照明負荷3は、照明光源18を有している。照明光源18は、例えばLEDで構成され、スイッチング電源2から電圧VOUTを供給されて点灯する。
【0010】
スイッチング電源2においては、第1のスイッチング素子8と定電流素子9とが、高電位電源端子4と高電位出力端子6との間に直列に接続されている。すなわち、第1のスイッチング素子8のドレインは、高電位電源端子4に接続され、第1のスイッチング素子8のソースは、定電流素子9のドレインに接続され、定電流素子9のソースは、高電位出力端子6に接続されている。第1のスイッチング素子8及び定電流素子9は、例えば電界効果トランジスタ(FET)であり、例えば高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)であり、ノーマリオン型の素子である。
【0011】
また、整流要素10は、高電位出力端子6と低電位電源端子5との間に、低電位電源端子5から高電位出力端子6に向かう方向を順方向として接続される。すなわち、整流要素10は、定電流素子9を介して、第1のスイッチング素子8に直列に接続される。整流要素10は、ダイオード11と第2のスイッチング素子12とで構成される。第2のスイッチング素子12のドレインは、高電位出力端子6に接続され、ソースはダイオード11のカソードに接続され、ゲートはダイオード11のアノードに接続される。また、ダイオード11のアノードは、低電位電源端子5に接続される。ダイオード11は、第1のスイッチング素子8よりも耐圧の低い、例えば、ショットキーバリアダイオード(SBD)である。また、第2のスイッチング素子12は、第1のスイッチング素子8と同一の耐圧を有し、例えばFETであり、例えばHEMTであり、ノーマリオン型の素子である。
【0012】
さらに、スイッチング電源2においては、第1のインダクタ13が、低電位電源端子5と低電位出力端子7との間に接続されている。第1のインダクタ13は、照明負荷3を介して、第1のスイッチング素子8及び定電流素子9と直列に接続される。また、第2のインダクタ14は、第1のインダクタ13と磁気結合され、一端は低電位出力端子7に接続され、他端はコンデンサ16を介して第1のスイッチング素子8の制御端子としてのゲートに接続される。
【0013】
また、電圧生成回路15は、定電流素子9の制御端子としてのゲートと低電位電源端子5との間に接続される。電圧生成回路15は、生成する電圧値が調整可能に構成されている。さらに、平滑コンデンサ17は、高電位出力端子6と低電位出力端子7との間に接続されている。
【0014】
次に、スイッチング電源2の動作について説明する。
(1)電源電圧VINが、高電位電源端子4と低電位電源端子5との間に供給されるとき、第1のスイッチング素子8及び定電流素子9はノーマリオン型の素子であるため、いずれもオンしている。そして、高電位電源端子4、第1のスイッチング素子8、定電流素子9、平滑コンデンサ17、第1のインダクタ13、低電位電源端子5の経路で電流が流れ、平滑コンデンサ17が充電される。平滑コンデンサ17の両端の電圧、すなわち高電位出力端子6と低電位出力端子7との間の電圧は、スイッチング電源2の出力電圧VOUTとして、照明負荷3の照明光源18に供給される。
【0015】
(2)また、第1のスイッチング素子8及び定電流素子9がオンしているため、整流要素10の両端には、ほぼ電源電圧VINが印加される。ダイオード11は逆バイアスとなり、整流要素10には電流は流れない。このとき、整流要素10の両端に印加される電圧は、ダイオード11と第2のスイッチング素子12とで分割されている。しかし、ダイオード11は、スイッチング素子12のゲート・ソース間電圧分を負担できればよく、第2のスイッチング素子12で耐圧を確保することができる。
【0016】
(3)出力電圧VOUTが所定電圧に達すると、照明光源18に電流が流れ、照明光源18が点灯する。このとき、高電位電源端子4、第1のスイッチング素子8、定電流素子9、平滑コンデンサ17及び照明光源18、第1のインダクタ13、低電位電源端子5の経路で電流が流れる。例えば、照明光源18がLEDの場合、この所定電圧は、LEDの順方向電圧であり、照明光源18に応じて定まる。
【0017】
(4)第1のインダクタ13には、第1のスイッチング素子8、定電流素子9を介して電源電圧VINが供給されるため、第1のインダクタ13を流れる電流は増加していく。第2のインダクタ14は、第1のインダクタ13と磁気結合しているため、第2のインダクタ14には、コンデンサ16側を高電位とする極性の起電力が誘起される。そのため、第1のスイッチング素子8のゲートには、コンデンサ16を介してソースに対して正の電位が供給され、第1のスイッチング素子8はオンの状態を維持する。
【0018】
(5)FETで構成された定電流素子9を流れる電流が所定の電流値を超えると、定電流素子9のドレイン・ソース間電圧は、急激に上昇する。そのため、第1のスイッチング素子8のゲート・ソース間電圧がしきい値電圧よりも低くなり、第1のスイッチング素子8はオフする。なお、所定の電流値は、電圧生成回路15が生成する電圧値により設定される定電流素子9の飽和電流値である。
【0019】
(6)第1のインダクタ13は、整流要素10、平滑コンデンサ17及び照明負荷3、第1のインダクタ13の経路で電流を流し続ける。そのため、照明光源18は点灯を続ける。第1のインダクタ13は、電磁エネルギーを放出するため、第1のインダクタ13の電流は、減少していく。そのため、第2のインダクタ14には、コンデンサ16側を低電位とする極性の起電力が誘起される。第1のスイッチング素子8のゲートには、コンデンサ16を介してソースに対して負の電位が供給され、第1のスイッチング素子8はオフの状態を維持する。
【0020】
(7)第1のインダクタ13に蓄積されていた電磁エネルギーがゼロになると、第1のインダクタ13を流れる電流はゼロになる。このとき、出力電圧VOUTは、所定電圧まで低下している。第2のインダクタ14に誘起される起電力の方向が再び反転し、コンデンサ16側を高電位とするような起電力が誘起される。これにより、第1のスイッチング素子8のゲートにソースよりも高い電位が供給され、第1のスイッチング素子8がオンする。これにより、上記(2)の状態に戻る。
【0021】
以後、上記(2)〜(7)を繰り返す。これにより、第1のスイッチング素子8のオン及びオフへの切替が自動的に繰り返されて、照明光源18には電源電圧VINを降下した出力電圧VOUTが供給される。また、照明光源18に供給される電流は、定電流素子9により上限値の制限された定電流となる。そのため、照明光源18を安定に点灯させることができる。
【0022】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、整流要素10は、第2のスイッチング素子12で耐圧を確保し、ダイオード11には、第1のスイッチング素子8よりも耐圧の低い素子を用いている。したがって、整流要素10の順方向電圧を低減して、導通損失を低減することができる。
【0023】
例えば整流要素10の代わりに、逆方向回復時間の短いSiのPN接合ダイオードだけを用いた場合、ダイオードには高耐圧の素子を用いる必要がある。例えば、600V耐圧で高速ダイオードの順方向電圧は、例えば1.2V程度になる。したがって、例えば平均1Aの電流が流れるとすると、ダイオードの導通損失は1.2Wになる。また、SiのPN接合ダイオードの場合は、ターンオフ時の逆方向回復による損失も生じる。例えば、逆方向回復時間trr=100nsのダイオードを、電流iの変化率di/dt=50A/μsで遮断する場合、周波数f=1MHzで動作しているとすると、逆方向回復による損失は、概略1W程度になる。
【0024】
しかし、整流要素10においては、ダイオード11は、第1のスイッチング素子8よりも耐圧が低い素子であり、第2のスイッチング素子12のゲート・ソース間電圧だけの耐圧を確保できればよい。例えば、耐圧20VのSBDの場合、順方向電圧は0.4V程度である。また、第2のスイッチング素子12が、例えば600V耐圧のGaNのノーマリオン型のFETの場合、オン抵抗は0.1Ω程度である。
【0025】
したがって、上記と同様に例えば平均1Aの電流が流れるとすると、ダイオード11の導通損失は0.4W、第2のスイッチング素子12の導通損失0.1Wとなり、整流要素10の導通損失は0.5Wになる。また、SBDは、原理的に逆方向回復がないため、これに伴う損失はゼロであり、整流要素10のターンオフ時のスイッチング損失もゼロである。
【0026】
このように、整流要素10は、導通損失を低減でき、またSBDのダイオード11においてはターンオフ時のスイッチング損失がないため、高耐圧のダイオードだけを用いた場合と比較して、整流要素10による電力損失を低減することができる。したがって、スイッチング電源2においては、第1のスイッチング素子8がオフしたときの電力損失を低減することができる。
【0027】
また、スイッチング電源2は、電源電圧VINを降圧した出力電圧VOUTを出力する降圧形のスイッチング電源である。第1のスイッチング素子8がオンの期間をTon、オフの期間をToffとすると、期間Tonの1サイクルT=Ton+Toffに対する比(デューティ比)αは、α=Ton/T=VOUT/VINとなる。
【0028】
したがって、降圧比VIN/VOUTが高いほど、デューティ比αは小さくなり、第1のスイッチング素子8がオフする期間が長くなる。例えば、商用電源を整流した100V〜240Vの電源電圧VINが、高電位電源端子4と低電位電源端子5との間に供給され、照明光源18として順方向電圧50V以下のLEDを点灯させる場合、デューティ比αは0.5以下になる。第1のスイッチング素子8がオフの期間Toffの方がオンの期間Tonよりも長く、整流要素10の順方向電圧による電力損失を低減する効果が大きい。
【0029】
さらに、第1のスイッチング素子8、定電流素子9、第2のスイッチング素子12などの各素子としてHEMTを用いた場合、高周波動作が可能となる。例えば、メガヘルツオーダーの動作が可能となる。特に、GaN系HEMTを用いた場合、より一層の高周波動作が可能であると共に、素子耐圧が高いため、同一耐圧とした場合のチップサイズを小型化できる。
【0030】
図2は、第1の実施形態に係る電源回路を含む照明装置を例示する他の回路図である。
図2に表したように、照明装置1aは、入力される直流の電源電圧VINを電圧VOUTに昇圧するスイッチング電源2aと、スイッチング電源2aの負荷回路となる照明負荷3を備えている。照明負荷3については、図1のものと同様であり、照明光源18は、スイッチング電源2aから電圧VOUTを供給されて点灯する。なお、図2において、図1と同一の要素には、同一の符号を付している。
【0031】
スイッチング電源2aにおいては、第1のスイッチング素子8と定電流素子9とが、第1のインダクタ13を介して、高電位電源端子4と低電位電源端子5との間に直列に接続されている。すなわち、第1のスイッチング素子8のドレインは、第1のインダクタ13を介して、高電位電源端子4に接続され、第1のスイッチング素子8のソースは、定電流素子9のドレインに接続され、定電流素子9のソースは、低電位電源端子5に接続されている。第1のスイッチング素子8及び定電流素子9は、図1におけるものと同様であり、例えば電界効果トランジスタ(FET)であり、例えば高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)であり、ノーマリオン型の素子である。
【0032】
また、整流要素10は、第1のインダクタ13及び第1のスイッチング素子8と、高電位出力端子6との間に、第1のスイッチング素子8から高電位出力端子6に向かう方向を順方向として接続される。すなわち、整流要素10は、第1のスイッチング素子8に直列に接続される。整流要素10は、図1におけるものと同様であり、ダイオード11と第2のスイッチング素子12とで構成される。
【0033】
さらに、スイッチング電源2aにおいては、第2のインダクタ14は、第1のインダクタ13と磁気結合され、一端は低電位電源端子5に接続され、他端はコンデンサ16を介して第1のスイッチング素子8の制御端子としてのゲートに接続される。
【0034】
また、電圧生成回路15は、定電流素子9の制御端子としてのゲートと低電位電源端子5との間に接続される。電圧生成回路15は、図1におけるものと同様であり、生成する電圧値が調整可能に構成されている。さらに、平滑コンデンサ17は、高電位出力端子6と低電位出力端子7との間に接続されている。
【0035】
次に、スイッチング電源2aの動作について説明する。
(1a)電源電圧VINが、高電位電源端子4と低電位電源端子5との間に供給されるとき、第1のスイッチング素子8及び定電流素子9はノーマリオン型の素子であるため、いずれもオンしている。そして、高電位電源端子4、第1のインダクタ13、第1のスイッチング素子8、定電流素子9、低電位電源端子5の経路で電流が流れる。
【0036】
(2a)また、第1のスイッチング素子8及び定電流素子9がオンしているため、整流要素10の両端には、ほぼ出力電圧VOUTが印加される。ダイオード11は逆バイアスとなり、整流要素10には電流は流れない。このとき、整流要素10の両端に印加される電圧は、ダイオード11と第2のスイッチング素子12とで分割されている。しかし、ダイオード11は、スイッチング素子12のゲート・ソース間電圧分を負担できればよく、第2のスイッチング素子12で耐圧を確保することができる。
【0037】
(3a)第1のインダクタ13には、第1のスイッチング素子8、定電流素子9を介して電源電圧VINが供給されるため、第1のインダクタ13を流れる電流は増加していく。第2のインダクタ14は、第1のインダクタ13と磁気結合しているため、第2のインダクタ14には、コンデンサ16側を高電位とする極性の起電力が誘起される。そのため、第1のスイッチング素子8のゲートには、コンデンサ16を介してソースに対して正の電位が供給され、第1のスイッチング素子8はオンの状態を維持する。
【0038】
(4a)FETで構成された定電流素子9を流れる電流が所定の電流値を超えると、定電流素子9のドレイン・ソース間電圧は、急激に上昇する。そのため、第1のスイッチング素子8のゲート・ソース間電圧がしきい値電圧よりも低くなり、第1のスイッチング素子8はオフする。なお、所定の電流値は、電圧生成回路15が生成する電圧値により設定される定電流素子9の飽和電流値である。
【0039】
(5a)第1のインダクタ13は、整流要素10、平滑コンデンサ17、低電位電源端子5の経路で電流を流し続け、平滑コンデンサ17が充電される。平滑コンデンサ17の両端の電圧、すなわち高電位出力端子6と低電位出力端子7との間の電圧は、スイッチング電源2aの出力電圧VOUTとして、照明負荷3の照明光源18に供給される。
【0040】
(6a)出力電圧VOUTが所定電圧に達すると、照明光源18に電流が流れ、照明光源18が点灯する。このとき、高電位電源端子4、第1のインダクタ13、整流要素10、平滑コンデンサ17及び照明光源18、低電位電源端子5の経路で電流が流れる。例えば、照明光源18がLEDの場合、この所定電圧は、LEDの順方向電圧であり、照明光源18に応じて定まる。
【0041】
(7a)第1のインダクタ13は、整流要素10、平滑コンデンサ17及び照明光源18、低電位電源端子5の経路で電流を流し続ける。そのため、照明光源18は点灯を続ける。第1のインダクタ13は、電磁エネルギーを放出するため、第1のインダクタ13の電流は、減少していく。そのため、第2のインダクタ14には、コンデンサ16側を低電位とする極性の起電力が誘起される。第1のスイッチング素子8のゲートには、コンデンサ16を介してソースに対して負の電位が供給され、第1のスイッチング素子8はオフの状態を維持する。
【0042】
(8a)第1のインダクタ13に蓄積されていた電磁エネルギーがゼロになると、第1のインダクタ13を流れる電流はゼロになる。このとき、出力電圧VOUTは、電源電圧VINにほぼ等しい電圧値になる。または出力電圧VOUTが、上記の所定電圧よりも低下したとき、第1のインダクタ13を流れる電流はほぼゼロになる。
第2のインダクタ14に誘起される起電力の方向が再び反転し、コンデンサ16側を高電位とするような起電力が発生する。これにより、第1のスイッチング素子8のゲートにソースよりも高い電位が印加され、第1のスイッチング素子8がオンする。これにより、上記(1a)の状態に戻る。
【0043】
以後、上記(1a)〜(8a)を繰り返す。これにより、第1のスイッチング素子8のオン及びオフへの切替が自動的に繰り返されて、照明光源18には電源電圧VINを昇圧した出力電圧VOUTが供給される。なお、照明光源18に供給される電流は、定電流素子9により上限値の制限された定電流となる。そのため、照明光源18を安定に点灯させることができる。
【0044】
次に、第2の実施形態の効果について説明する。
第2の実施形態においても、第1のスイッチング素子8がオフしたとき、第1のインダクタ13の電流は、整流要素10を流れる。したがって、第2の実施形態の効果は、第1の実施形態の効果と同様である。ただし、スイッチング電源2aは、電源電圧VINを昇圧した出力電圧VOUTを出力する昇圧形のスイッチング電源である。したがって、デューティ比αは、α=Ton/T=1−VIN/VOUTとなる。
【0045】
昇圧比VOUT/VINが低いほど、デューティ比αは小さくなり、第1のスイッチング素子8がオフする期間が長くなる。例えば、一次電池や二次電池などの電源電圧VINが、高電位電源端子4と低電位電源端子5との間に供給され、照明光源18としてLEDを点灯させる場合などにおいて、昇圧比が2以下の場合は、デューティ比αは0.5以下になる。第1のスイッチング素子8がオフの期間Toffの方がオンの期間Tonよりも長く、整流要素10の順方向電圧による電力損失を低減する効果が大きい。
第2の実施形態における上記以外の効果は、上記の第1の実施形態と同様である。
【0046】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0047】
例えば、前述の第1及び第2の実施形態においては、第1のスイッチング素子8及び定電流素子9がノーマリオン型の素子である例を示したが、本発明はこれに限定されず、ノーマリオフ型の素子であってもよい。この場合は、電源電圧VINの供給を開始したとき、スイッチング電源2、2aを起動させるための起動回路が必要になる。
【0048】
また、スイッチング電源の構成は、図1及び図2に表したものに限定されない。例えば、第1のインダクタ13は、高電位電源端子4、第1のスイッチング素子8、定電流素子9、平滑コンデンサ17、低電位電源端子5の経路にあればよく、定電流素子9と整流要素10との接続点と高電位出力端子6との間に接続されてもよい。
【0049】
また、第1のスイッチング素子8、定電流素子9及び第2のスイッチング素子12はGaN系HEMTには限定されない。例えば、半導体基板に炭化珪素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)やダイヤモンドのようなワイドバンドギャップを有する半導体(ワイドバンドギャップ半導体)を用いて形成した半導体素子でもよい。ここで、ワイドバンドギャップ半導体とは、バンドギャップが約1.4eVのヒ化ガリウム(GaAs)よりもバンドギャップの広い半導体をいう。例えば、バンドギャップが1.5eV以上の半導体、リン化ガリウム(GaP、バンドギャップ約2.3eV)、窒化ガリウム(GaN、バンドギャップ約3.4eV)、ダイアモンド(C、バンドギャップ約5.27eV)、窒化アルミニウム(AlN、バンドギャップ約5.9eV)、炭化ケイ素(SiC)などが含まれる。このようなワイドバンドギャップ半導体素子は、寄生容量が小さく高速動作が可能なため、さらにスイッチング電源の小型化、スイッチング損失の低減が可能である。
【0050】
さらにまた、照明光源18はLEDに限らず、ELやOLEDなどでもよく、照明負荷3には、複数個の照明光源18が直列又は並列に接続されていてもよい。
また、前述の第1及び第2の実施形態においては、スイッチング電源の負荷として照明光源を用いる場合を例示したが、例示したスイッチング電源は、照明光源だけでなく、直流で駆動される負荷であれば用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1、1a…照明装置、 2、2a…スイッチング電源、 3…照明負荷、 4…高電位電源端子、 5…低電位電源端子、 6…高電位出力端子、 7…低電位出力端子、 8…第1のスイッチング素子、 9…定電流素子、 10…整流素子、 11…ダイオード、 12…第2のスイッチング素子、 13…第1のインダクタ、 14…第2のインダクタ、 15…電圧生成回路、 16…コンデンサ、 17…平滑コンデンサ、 18…照明光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のインダクタと、
オンのとき前記第1のインダクタに電源電圧を供給して電流を流す第1のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子に直列に接続され、前記第1のスイッチング素子がオフしたとき前記第1のインダクタの電流を流す整流要素と、
前記第1のインダクタと電磁結合し、前記第1のインダクタの電流が増加しているときは前記第1のスイッチング素子をオンさせる電位が誘起され、前記第1のスイッチング素子の電流が減少しているときは前記第1のスイッチング素子をオフさせる電位が誘起され、誘起された電位を前記第1のスイッチング素子の制御端子に供給する第2のインダクタと、
を備え、
前記整流要素は、
前記第1のスイッチング素子よりも耐圧の低いダイオードと、
前記ダイオードのカソードに直列に接続され、前記ダイオードのアノードに制御端子が接続された第2のスイッチング素子と、
を有することを特徴とするスイッチング電源。
【請求項2】
前記第2のスイッチング素子は、ノーマリオン形の素子であることを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源。
【請求項3】
前記ダイオードは、ショットキーバリアダイオードであることを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング電源。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のスイッチング電源と、
前記スイッチング電源の負荷回路として接続された照明負荷と、
を備えたことを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−13231(P2013−13231A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144144(P2011−144144)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】