説明

スイッチング電源装置

【課題】突入電流対策が行われており、かつ、無効電流による電力損失が抑制された、ブリッジレス力率改善回路を備えたスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】スイッチング電源装置1は、入力端子111に接続されたラインコンデンサC1を含む力率改善回路用の入力フィルタ102と、ラインコンデンサC1よりも交流電源101から離れるように入力端子111に接続されたブリッジレス力率改善回路104と、突入電流抑制回路103とを備えている。ブリッジレス力率改善回路104は、昇圧インダクタ部105及びそれに接続されたスイッチング回路106と、スイッチング回路106の出力端側に接続された平滑部107とを有している。突入電流抑制回路103は、例えば、ラインコンデンサC1の端部と昇圧インダクタ部105とを接続する経路に設けられている。これにより、突入電流抑制回路103に無効電流が流れることが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スイッチング電源装置に関し、特に、ブリッジレス力率改善回路により交流電力を直流電力に変換するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器などに用いられる電源装置として、AC−DCコンバータを有し、例えば商用交流電源に接続され、交流電力を直流電力に変換しその直流電力を利用可能とするスイッチング電源装置がある。
【0003】
このようなスイッチング電源装置には、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、平滑コンデンサとが設けられる。平滑コンデンサは、整流回路の出力端の高圧側のライン(経路)と低圧側のラインとの間に配置される。平滑コンデンサは、脈流電圧を定電圧に平滑して電荷を充電するとともに、スイッチング電源装置に接続された負荷回路などに電荷を放電する。
【0004】
ところで、単に平滑コンデンサを設けただけのスイッチング電源装置に交流電圧の供給が開始されると、平滑コンデンサに電荷を供給するために、過渡的に大きな突入電流が流れてしまい、突入電流により回路素子がダメージを受ける可能性がある。これを抑制する目的で、突入電流が流れる経路上には、突入電流抑制回路が設けられる。
【0005】
また、交流電力を直流電力に変換するスイッチング電源装置には、力率を改善するために力率改善回路が設けられる。
【0006】
力率改善回路より入力部側の経路上には、交流電源へ漏えいする脈流を抑制する目的で、力率改善回路用の入力フィルタが設けられる。
【0007】
図6は、従来のスイッチング電源装置の一例を示す回路図である。
【0008】
図6に示すように、スイッチング電源装置81は、交流電源801に接続された入力部801aと、突入電流抑制回路803と、ブリッジダイオードを用いた整流回路810と、力率改善回路用の入力フィルタ802と、力率改善回路811と、メインコンバータ808とを有している。突入電流抑制回路803は、入力部801aと整流回路810とを結ぶ2本の電力供給ラインの一方に配置されている。入力フィルタ802は、整流回路810の出力ラインに整流回路810に対して並列に接続されたラインコンデンサC1を有する。入力フィルタ802は、力率改善回路811からの脈流が交流電源801へ漏えいすることを抑制する目的で設けられている。力率改善回路811は、コイルL3、ダイオードD4、スイッチ素子Q3、及び平滑コンデンサC2を有している。力率改善回路811から出力される直流電力は、メインコンバータ808を経由し、負荷回路809に供給される。なお、図示しないが、スイッチング電源装置81の設計条件などを勘案して、配線を介したノイズの漏えいやノイズの侵入を抑制するために、EMI(Electro Magnetic Interference)フィルタなどのノイズフィルタを入力部801aと突入電流抑制回路803との間の経路上に設ける場合もある。
【0009】
また、ブリッジダイオードを用いない、ブリッジレス力率改善回路を有するスイッチング電源装置も用いられている。このようなブリッジレス力率改善回路を有するスイッチング電源装置は、電力変換効率などにおいて優れた性質を有するものである。すなわち、例えば上述の図6に示すスイッチング電源装置81に用いられているブリッジダイオードを用いた整流回路810には、ダイオードの電圧ドロップ分の電力損失があるところ、ブリッジレス力率改善回路では、その分の電力変換効率を改善することができる。
【0010】
下記特許文献1には、交流電力を直流電力に変換して出力するスイッチング電源装置であって、交流電源の一端に接続されたブーストインダクタ、ダイオード、及びスイッチ素子を2組含むスイッチング回路を有するものが開示されている。このスイッチング電源装置には、補助回路が設けられ、ゼロ電圧スイッチングによるスイッチング効率の改善が図られている。
【0011】
下記特許文献2には、交流電力を直流電力に変換して出力するスイッチング電源装置であって、交流電源の一端に接続されたブーストインダクタ、ダイオード、及びスイッチ素子を2組有するスイッチング回路を有するものが開示されている。このスイッチング電源装置でも、力率改善回路の出力端側に、平滑コンデンサが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−154582号公報
【特許文献2】特表2007−527687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、スイッチング電源装置の回路中における突入電流防止回路の位置によっては、突入電流防止回路と力率改善回路用の入力フィルタを構成するラインコンデンサとを含む経路において、無効電流が発生することがある。無効電流が発生すると、突入電流防止回路で電力が消費され、電力損失が発生する。この電力損失は、電子機器などのいわゆる待機時消費電力を増加させる要因となる。電子機器などに対する待機時消費電力削減の社会的要求は年々増しているところ、電力損失を抑えることが求められる。以下、無効電流及び無効電流による電力損失の発生について説明する。
【0014】
無効電流は、以下の式で計算可能である。ここで、Icは無効電流であり、ωは交流電源の角周波数であり、Cは交流回路両極間の容量値であり、Vacは交流入力電圧である。
【0015】
Ic=ωCVac
【0016】
力率改善回路用の入力フィルタは、上述のように、力率改善回路よりも入力部側の経路上に設けられる。この入力フィルタは、交流電力の入力部に配置されることがあるノイズフィルタに使用されるラインコンデンサよりも一般的に容量値が大きいラインコンデンサを含むものである。
【0017】
いわゆるブリッジダイオードを用いた整流回路とともに力率改善回路が用いられる場合においては、入力フィルタのラインコンデンサは、整流回路と力率改善回路との間に設けられるため、上述の無効電流は流れない。例えば、上述の図6に示すスイッチング電源装置81について説明すると、力率改善回路811の入力フィルタ802は、力率改善回路811の入力端側、すなわち整流回路810と力率改善回路811とを接続する経路上すなわち直流回路側に設けられる。このようなとき、整流回路810よりも交流電源801側の突入電流抑制回路803や、入力フィルタ802自身には、無効電流が流れることがない。したがって、この場合には、無効電流による電力損失は発生しない。
【0018】
また、図示しないが、スイッチング電源装置81には、交流回路側にEMIフィルタなどのノイズフィルタが設けられる場合があるが、ノイズフィルタの存在は特に問題とはならない。すなわち、一般的に、ノイズフィルタに使用されるラインコンデンサは、入力フィルタ802に使用されるラインコンデンサの容量値に対して比較的小さな容量値を有するものが用いられる。そのため、仮に突入電流抑制回路803が入力部801aの一方の端子とノイズフィルタとを接続するライン上に設けられていても、発生する無効電流及びこの無効電流が突入電流抑制回路803を流れることで発生する電力損失は小さな値のものにとどまるので、特に問題とはならない。
【0019】
しかしながら、ブリッジレス力率改善回路を有するスイッチング電源装置においては、無効電流による電力損失の発生が問題となることがある。すなわち、ブリッジレス力率改善回路では、いわゆるブリッジダイオードが用いられないので、力率改善回路用の入力フィルタは、交流回路側に設けられることになる。そのため、入力フィルタのラインコンデンサを介して、突入電流抑制回路を通過する無効電流が流れ、電力損失が発生することがある。
【0020】
図7は、従来のスイッチング電源装置の別の例を示す回路図である。
【0021】
図7に示すスイッチング電源装置82は、図6に示すスイッチング電源装置81において、力率改善回路811及び整流用ブリッジダイオード810をブリッジレス力率改善回路804に変更したものである。図7においては、突入電流抑制回路803としては、説明のため、抵抗R1を使用するものが示されている。
【0022】
図7に示すように、スイッチング電源装置82では、ブリッジレス力率改善回路804用の入力フィルタ802は、ブリッジレス力率改善回路804よりも交流電源801側であって、突入電流抑制回路803よりも交流電源801から離れた位置に配置されている。入力フィルタ802は、交流電源801に接続された2つのライン間に交流電源801に対して並列に接続されている。したがって、突入電流抑制回路803と入力フィルタ802とを含む交流回路内において、無効電流Icの経路(図7に一点鎖線矢印で示す。)ができる。
【0023】
このとき、例えば、抵抗R1、ラインコンデンサC1、及び交流電源801に関して、R1=15〔Ω〕、C1=2.2〔μF〕、Vac=100〔V〕、周波数=50〔Hz〕とすると、無効電流Icは、次式で示すようになる。
【0024】
Ic=ωCVac
=2π×50〔Hz〕×2.2〔μF〕×100〔V〕
≒69〔mA〕
【0025】
そのため、突入電流抑制回路803で消費されることによる電力損失Pは、次式で示すようになる。
【0026】
P=Ic
=69〔mA〕×69〔mA〕×15〔Ω〕
≒71〔mW〕
【0027】
電子機器の待機時消費電力として、71〔mW〕という値は大きな値である。
【0028】
このように、スイッチング電源装置82では、ブリッジレス力率改善回路を採用することで、装置の動作時における電力変換効率の向上を図ることができる一方で、無効電流による電力損失が増大するという問題がある。また、この無効電流による電力損失は電源装置の動作時のみならず電源装置の待機時にも発生するため、スイッチング電源装置82の待機時消費電力が高くなるという問題もある。
【0029】
このような電力損失の発生に関する問題点に対して有効な解決策は、特許文献1又は特許文献2には開示されていない。
【0030】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、突入電流対策が行われており、かつ、無効電流による電力損失が抑制された、ブリッジレス力率改善回路を備えたスイッチング電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、スイッチング電源装置は、交流電源の入力部と、入力部に交流電源に対して並列に接続されたラインコンデンサを少なくとも含む力率改善回路用の入力フィルタと、入力フィルタよりも交流電源に対して離れるように入力部に接続されたブリッジレス力率改善回路と、突入電流を抑制するための突入電流抑制回路とを備え、ブリッジレス力率改善回路は、入力部からの交流が入力される昇圧インダクタ部及び昇圧インダクタ部に接続されたスイッチング回路を有し、交流電源から入力された交流電圧を整流するとともに力率改善動作を行って昇圧された脈流電圧を出力する変換部と、変換部の出力端側に接続されており、変換部から出力された脈流電圧を平滑させる平滑部とを含み、突入電流抑制回路は、入力フィルタの端部と昇圧インダクタ部とを接続する経路上、昇圧インダクタ部とスイッチング回路とを接続する経路上、及びスイッチング回路と平滑部とを接続する経路上のうち、少なくとも1箇所に設けられている。
【0032】
好ましくは突入電流抑制回路は、入力フィルタの端部と昇圧インダクタ部とを接続する経路上に設けられており、スイッチング回路は、第1のスイッチ素子及び第1のスイッチ素子の出力端に接続された第1の整流素子を有する第1直列回路と、第2のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子の出力端に接続された第2の整流素子を有する第2直列回路とを含み、第2直列回路は、第1直列回路に並列接続されており、平滑部は、スイッチング回路の出力端にスイッチング回路に対して並列に接続された平滑コンデンサを有し、昇圧インダクタ部は、第1のスイッチ素子と第1の整流素子との接続点に一端が接続され、他端が突入電流抑制回路に接続された第1のインダクタと、第2のスイッチ素子と第2の整流素子との接続点に一端が接続され、他端が入力部に接続された第2のインダクタとを備える。
【発明の効果】
【0033】
これらの発明に従うと、突入電流抑制回路は、入力フィルタの端部と昇圧インダクタ部とを接続する経路上、昇圧インダクタ部とスイッチング回路とを接続する経路上、及びスイッチング回路と平滑部とを接続する経路上のうち、少なくとも1箇所に設けられている。したがって、突入電流対策が行われており、かつ、無効電流による電力損失が抑制された、ブリッジレス力率改善回路を備えたスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態におけるスイッチング電源装置の一例の構成を示す回路図である。
【図2】スイッチング電源装置の詳細な構成を示す回路図である。
【図3】突入電流抑制回路の構成例を示す図である。
【図4】本実施の形態の一変型例を説明する回路図である。
【図5】力率改善回路用の入力フィルタの構成例を示す図である。
【図6】従来のスイッチング電源装置の一例を示す回路図である。
【図7】従来のスイッチング電源装置の別の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態の一例におけるスイッチング電源装置について説明する。
【0036】
[実施の形態]
【0037】
図1は、本発明の実施の形態におけるスイッチング電源装置の一例の構成を示す回路図である。
【0038】
スイッチング電源装置1は、AC−DCコンバータである。図1に示すように、スイッチング電源装置1は、入力端子(交流電源の入力部の一例)111と、力率改善回路用の入力フィルタ102と、突入電流抑制回路103と、ブリッジレス力率改善回路(力率改善回路の一例)104と、メインコンバータ108と、メインコンバータ108からの電力を出力する出力端子112とを有している。スイッチング電源装置1は、入力端子111部分で、交流電源101に接続されている。スイッチング電源装置1は、交流電源101から入力端子111を介して入力される交流電圧Vacに基づいて、ブリッジレス力率改善回路104から直流電力を出力する。スイッチング電源装置1は、その直流電力を、メインコンバータ108を介して、出力端子112に接続された負荷回路109に供給する。なお、図示していないが、スイッチング電源装置1の設計条件などを勘案して、配線を介したノイズの漏えいやノイズの侵入を抑制するために、EMIフィルタなどのノイズフィルタが用いられることがあるが、本発明の実施形態に記載の入力フィルタ102とはその目的や効果が異なり、区別されるべきものである。
【0039】
交流電源101は、例えば、商用の交流電源である。交流電源101は、例えばプラグソケットを介して利用可能に提供されている。交流電源101は、2つの出力端を有している。
【0040】
入力端子111は、商用交流入力端子であり、例えば、プラグソケットに差し込み可能なプラグである。入力端子111は、交流電源101のプラグソケットに差し込まれた状態で、交流電源101の2つの出力端に接続されている。これによって、交流電源101により、交流電圧Vacがスイッチング電源装置1に印加される(交流電力が供給される)。交流電圧は、入力端子111からブリッジレス力率改善回路104までをそれぞれ接続する第1ライン111aと第2ライン111bとの間に入力される。
【0041】
なお、入力端子111と交流電源101との組合せは、プラグ及びプラグソケットに限られるものではない。例えば、入力端子111は、電源スイッチであって、スイッチング電源装置1は、交流電源101に常時接続されていてもよい。この場合、入力端子111でスイッチング電源装置1への交流電力の供給がオン/オフされるようにしてもよい。
【0042】
入力フィルタ102は、ブリッジレス力率改善回路104の前段すなわちブリッジレス力率改善回路104よりも交流電源101に近い位置に設けられている。入力フィルタ102は、ラインコンデンサC1を有している。
【0043】
ラインコンデンサC1は、入力端子111の両端に、交流電源101に対して並列に接続されている。すなわち、ラインコンデンサC1は、第1ライン111aと第2ライン111bとの間に接続されている。ラインコンデンサC1は、力率改善回路104からの脈流が交流電源101へ漏えいすることを抑制する。
【0044】
なお、入力フィルタ102は、ラインコンデンサC1に加えて、又はラインコンデンサC1に代えて、他の回路素子を有していてもよい。
【0045】
ブリッジレス力率改善回路104は、ラインコンデンサC1よりも交流電源101に対して離れるように、第1ライン111a及び第2ライン111bを介して、入力端子111に接続されている。
【0046】
ブリッジレス力率改善回路104は、昇圧インダクタ部105と、スイッチング回路106と、平滑部107とを有する。昇圧インダクタ部105及びスイッチング回路106は、交流電源101から入力された交流電圧を整流するとともに、力率改善動作を行って、昇圧された脈流電圧を出力する変換部として機能する。すなわち、昇圧インダクタ部105及びスイッチング回路106は、昇圧する機能と交流を整流する機能とを有する変換部を構成する。平滑部107は、変換部から出力された脈流電圧を平滑させる。ブリッジレス力率改善回路104からは、平滑部107により平滑された直流電力が出力される。
【0047】
昇圧インダクタ部105には、第1ライン111a及び第2ライン111bを介して、入力端子111からの交流が入力される。昇圧インダクタ部105は、第1ライン111aに接続された第1のインダクタL1と、第2ライン111bに接続された第2のインダクタL2とを含む。本実施の形態において、第1のインダクタL1及び第2のインダクタL2は、昇圧インダクタとして用いられる。
【0048】
スイッチング回路106は、ダイオード及びスイッチ素子などを含んでいる。スイッチング回路106は、昇圧インダクタ部105に接続されている。スイッチング回路106の詳細な構成については、後述する。
【0049】
平滑部107は、平滑コンデンサC2を有している。平滑コンデンサC2は、スイッチング回路106の出力端となる高圧側出力端と低圧側出力端との間に、スイッチング回路106に対して並列に接続されている。換言すると、平滑コンデンサC2は、ブリッジレス力率改善回路104の高圧側出力端と低圧側出力端との間に接続されている。平滑コンデンサC2は、スイッチング回路106から出力される脈流電圧を定電圧に平滑して電荷を充電するとともに、メインコンバータ108を介して負荷回路109に電荷を放電する。
【0050】
なお、平滑コンデンサC2としては電解コンデンサなどが用いられるが、これに限られるものではない。
【0051】
本実施の形態において、突入電流抑制回路103は、ラインコンデンサC1の端部とブリッジレス力率改善回路104の入力端である昇圧インダクタ部105とを接続する2つの経路のうち一方の経路上、すなわち第1ライン111a上に設けられている。突入電流抑制回路103は、例えば、交流電源101から交流電圧Vacの供給が開始されたとき、平滑コンデンサC2に電荷が供給されるまでに流れる突入電流を抑制する。これにより、ブリッジレス力率改善回路104などに含まれるスイッチング電源装置1の回路素子が、突入電流から保護される。
【0052】
メインコンバータ108は、ブリッジレス力率改善回路104から負荷回路109への電力供給経路に設けられている。メインコンバータ108には、ブリッジレス力率改善回路104から出力された直流電力が入力される。メインコンバータ108は、入力された直流電力の電圧などの変換を行い、変換後の直流電力を、出力端子112から負荷回路109に出力する。なお、メインコンバータ108は、直流電力を交流電力に変換するものであってもよい。
【0053】
図2は、スイッチング電源装置1の詳細な構成を示す回路図である。
【0054】
図2を参照して、スイッチング回路106は、第1直列回路106aと、第2直列回路106bとを有している。
【0055】
第1直列回路106aは、第1の電界効果トランジスタ(第1のスイッチ素子の一例)Q1と、第1のダイオード(第1の整流素子の一例)D1とを有している。電界効果トランジスタQ1のドレイン(第1のスイッチ素子の出力端の一例)は、ダイオードD1のアノードに接続されている。電界効果トランジスタQ1とダイオードD1とは、互いに直列に配置されている。
【0056】
第2直列回路106bは、第2の電界効果トランジスタ(第2のスイッチ素子の一例)Q2と、第2のダイオード(第2の整流素子の一例)D2とを有している。電界効果トランジスタQ2のドレイン(第2のスイッチ素子の出力端の一例)は、ダイオードD2のアノードに接続されている。
【0057】
ダイオードD1,D2のそれぞれのカソード同士は接続されており、電界効果トランジスタQ1,Q2のそれぞれのソース同士は接続されている。すなわち、第2直列回路106bは、第1直列回路106aに並列接続されている。
【0058】
電界効果トランジスタQ1とダイオードD1との接続点には、第1のインダクタL1の一端が接続されている。第1のインダクタL1の他端は、突入電流抑制回路803に接続されている。すなわち、電界効果トランジスタQ1とダイオードD1との接続点は、第1のインダクタL1と突入電流抑制回路803とを介して、第1ライン111aに接続されている。
【0059】
電界効果トランジスタQ2とダイオードD2との接続点には、第2のインダクタL2の一端が接続されている。第2のインダクタL2の他端は、入力端子111に接続されている。すなわち、電界効果トランジスタQ2とダイオードD2との接続点は、第2のインダクタL2を介して、第2ライン111bに接続されている。
【0060】
ブリッジレス力率改善回路104は、スイッチング回路106により、2つのインダクタL1,L2に流れる電流を、所定の周波数でオン/オフする。電流のオン/オフは、電界効果トランジスタQ1,Q2のそれぞれのゲート端子の電圧を制御することにより行うことができる。これにより、電流のオン時に2つのインダクタL1,L2のそれぞれに蓄えられたエネルギーが、電流のオフ時に逆起電力としてダイオードD1,D2により取り出される。これにより、交流電圧Vacよりも高い出力電圧を取り出すことができ、かつ、交流を整流して直流を出力できる。
【0061】
[突入電流抑制回路103の説明]
【0062】
図3は、突入電流抑制回路103の構成例を示す図である。
【0063】
図3(a)〜(f)は、それぞれ、突入電流抑制回路103の一構成例を示す図である。突入電流抑制回路103としては、図3(a)〜(f)のうちいずれかに示されるものを用いることができる。なお、突入電流抑制回路103の構成はこれらに限られるものではなく、突入電流抑制回路103は、他の構成を有していてもよい。
【0064】
図3(a)に示すように、突入電流抑制回路103は、例えば抵抗を用いて構成することができる。
【0065】
図3(b)に示すように、突入電流抑制回路103は、例えばサーミスタを用いて構成されていてもよい。
【0066】
図3(c)に示すように、突入電流抑制回路103は、例えば抵抗及びその抵抗に並列に接続されたリレーを用いて構成されていてもよい。
【0067】
図3(d)に示すように、突入電流抑制回路103は、例えばサーミスタ及びそのサーミスタに並列に接続されたリレーを用いて構成されていてもよい。
【0068】
図3(e)に示すように、突入電流抑制回路103は、例えば抵抗及びその抵抗に並列に接続されたサイリスタを用いて構成されていてもよい。
【0069】
図3(f)に示すように、突入電流抑制回路103は、例えば抵抗及びその抵抗に並列に接続されたトライアックを用いて構成されていてもよい。
【0070】
[実施の形態における効果]
【0071】
以上説明したように、本実施の形態において、スイッチング電源装置1は、整流用ブリッジダイオードを伴わないブリッジレス力率改善回路104を備えているので、高い電力変換効率を実現することができる。また、スイッチング電源装置1には、突入電流抑制回路103が設けられているので、交流電圧Vacの供給が開始されたとき、平滑コンデンサC2に電荷を供給するために流れる突入電流が抑制される。したがって、スイッチング電源装置1の回路素子の突入電流対策が効果的に行われ、スイッチング電源装置1の信頼性が高くなる。
【0072】
また、突入電流抑制回路103は、ラインコンデンサC1の端部と第1のインダクタ105とを接続する第1ライン111a上に設けられているので、ラインコンデンサC1が第1ライン111aと第2ライン111bとの間に設けられていることによる電流が、突入電流抑制回路103には流れない。無効電流が突入電流抑制回路103を流れないので、電力損失は抑制される。したがって、スイッチング電源装置1の無駄な消費電力を、待機時消費電力も含めて低く抑えることができる。
【0073】
[突入電流抑制回路103の配置に関する変型例]
【0074】
突入電流抑制回路103の設けられる箇所は、上述の実施の形態において示した箇所に限られるものではない。また、突入電流抑制回路103の数も、1つに限られない。すなわち、突入電流抑制回路103は、ラインコンデンサC1の端部と昇圧インダクタ部105とを接続する2つの経路のうち第2ライン111b上、昇圧インダクタ部105とスイッチング回路106との間の経路上、スイッチング回路106と平滑コンデンサC2すなわち平滑部107との間の経路上、の少なくとも1箇所以上に配設されていればよい。
【0075】
図4は、本実施の形態の一変型例を説明する回路図である。
【0076】
図4を参照して、突入電流抑制回路103は、図において示す箇所103a〜103gのそれぞれに配置可能である。
【0077】
すなわち、突入電流抑制回路103は、ラインコンデンサC1の端部と第2のインダクタL2とを接続する経路上103gに設けられていてもよい。
【0078】
突入電流抑制回路103は、第1のインダクタL1と第1直列回路106aとを接続する経路上103aに設けられていてもよい。突入電流抑制回路103は、第2のインダクタL2と第2直列回路106bとを接続する経路上103fに設けられていてもよい。
【0079】
突入電流抑制回路103は、スイッチング回路106からメインコンバータ108を介して出力端子112に接続される2つの出力ラインのそれぞれのうち、平滑コンデンサC2が接続されている位置よりもスイッチング回路106に近い位置103b,103eに設けられていてもよい。
【0080】
突入電流抑制回路103は、スイッチング回路106からメインコンバータ108を介して出力端子112に接続される2つの出力ラインのそれぞれと、平滑コンデンサC2の端部とを接続する経路上103c,103dに設けられていてもよい。
【0081】
このように、上記いずれの箇所に突入電流抑制回路103が設けられても、突入電流抑制回路103は、大きな容量値を持つ平滑コンデンサC2への突入電流を抑制する目的を達成できる。また、力率改善回路用の入力フィルタ102に使用されるラインコンデンサC1との組合せによって突入電流抑制回路103に無効電流が流れることがなく、電力損失の発生を抑制できる。突入電流抑制回路103を上記のうちのいずれの箇所に配置するかどうかは、スイッチング電源装置1の設計条件などを勘案して、適宜選択すればよいし、多箇所に突入電流抑制回路103を配置するようにしてもよい。
【0082】
[その他]
【0083】
図5は、力率改善回路用の入力フィルタの構成例を示す図である。
【0084】
図5(a),(b)は、それぞれ、入力フィルタの一構成例を示す図である。スイッチング電源装置においては、上述の実施の形態の入力フィルタ102に代えて、図5(a),(b)のうちいずれかに示されるものを用いることができる。なお、入力フィルタの構成はこれに限られるものではなく、他の構成を有していてもよい。
【0085】
図5(a)に示すように、入力フィルタは、例えば交流電力が供給される2本のラインのうち一方のラインに設けられたインダクタと、2本のライン間に設けられたコンデンサとを有するように構成されていてもよい。
【0086】
図5(b)に示すように、入力フィルタは、例えば交流電力が供給される2本のラインのうち一方のラインに設けられたインダクタと、そのインダクタの両端側にそれぞれ2本のライン間に設けられた2つのコンデンサとを有するように、すなわちいわゆるπ型フィルタのように構成されていてもよい。
【0087】
スイッチング電源装置において、メインコンバータは設けられていなくてもよい。スイッチング電源装置は、メインコンバータに加えて、サブコンバータを有していてもよい。サブコンバータとしては、例えば、待機電力(スタンバイ電力)を生成するための待機コンバータなどが挙げられる。サブコンバータは、例えば、平滑コンデンサC2の両端に、メインコンバータへの経路から分岐して、配設される場合がある。
【0088】
なお、ブリッジレス力率改善回路を有するスイッチング電源装置において、設計条件などを勘案して、配線を介したノイズの漏えいやノイズの侵入を抑制するために、EMIフィルタなどのノイズフィルタを設ける場合がある。一般的に、ノイズフィルタに使用されるラインコンデンサは、力率改善回路用の入力フィルタに使用されるラインコンデンサの容量値に対して比較的小さな容量値を有するものが用いられる。
【0089】
ブリッジレス力率改善回路の構成は、上述のものに限られない。本発明は、整流用ブリッジダイオードを伴わないブリッジレス力率改善回路を備えるスイッチング電源装置に広く適用可能である。
【0090】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 スイッチング電源装置
101 交流電源
102 入力フィルタ
103,103a〜103g 突入電流抑制回路
104 ブリッジレス力率改善回路
105 昇圧インダクタ部
106 スイッチング回路
106a 第1直列回路
106b 第2直列回路
107 平滑部
108 メインコンバータ
109 負荷回路
111 入力端子(入力部)
112 出力端子
C1 ラインコンデンサ
C2 平滑コンデンサ
D1 第1のダイオード(第1の整流素子の一例)
D2 第2のダイオード(第2の整流素子の一例)
L1 第1のインダクタ
L2 第2のインダクタ
Q1 第1の電界効果トランジスタ(第1のスイッチ素子の一例)
Q2 第2の電界効果トランジスタ(第2のスイッチ素子の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の入力部と、
前記入力部に、前記交流電源に対して並列に接続されたラインコンデンサを少なくとも含む力率改善回路用の入力フィルタと、
前記入力フィルタよりも前記交流電源に対して離れるように前記入力部に接続されたブリッジレス力率改善回路と、
突入電流を抑制するための突入電流抑制回路とを備え、
前記ブリッジレス力率改善回路は、
前記入力部からの交流が入力される昇圧インダクタ部及び前記昇圧インダクタ部に接続されたスイッチング回路を有し、前記交流電源から入力された交流電圧を整流するとともに力率改善動作を行って昇圧された脈流電圧を出力する変換部と、
前記変換部の出力端側に接続されており、前記変換部から出力された前記脈流電圧を平滑させる平滑部とを含み、
前記突入電流抑制回路は、
前記入力フィルタの端部と前記昇圧インダクタ部とを接続する経路上、
前記昇圧インダクタ部と前記スイッチング回路とを接続する経路上、及び
前記スイッチング回路と前記平滑部とを接続する経路上のうち、少なくとも1箇所に設けられている、スイッチング電源装置。
【請求項2】
前記突入電流抑制回路は、前記入力フィルタの端部と前記昇圧インダクタ部とを接続する経路上に設けられており、
前記スイッチング回路は、
第1のスイッチ素子及び前記第1のスイッチ素子の出力端に接続された第1の整流素子を有する第1直列回路と、
第2のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子の出力端に接続された第2の整流素子を有する第2直列回路とを含み、
前記第2直列回路は、前記第1直列回路に並列接続されており、
前記平滑部は、前記スイッチング回路の出力端に前記スイッチング回路に対して並列に接続された平滑コンデンサを有し、
前記昇圧インダクタ部は、
前記第1のスイッチ素子と前記第1の整流素子との接続点に一端が接続され、他端が前記突入電流抑制回路に接続された第1のインダクタと、
前記第2のスイッチ素子と前記第2の整流素子との接続点に一端が接続され、他端が前記入力部に接続された第2のインダクタとを備える、請求項1に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−175833(P2012−175833A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36264(P2011−36264)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】