説明

スイング扉

【課題】簡単な構成で防犯面に優れたスイング扉を提供する。
【解決手段】スイング扉20は、回動可能な本体部30と、本体部を上下に貫通する係止棒31と、本体部の上部及び下部にそれぞれ設けられて外周部に回転制止凹部(閉鎖凹部52)を有するヒンジ部材50と、係止棒31をヒンジ部材50に向けて付勢する付勢部材39a,39bとを備える。係止棒31は、スイング扉の閉状態では回転制止凹部内に係止され、本体部30が回動する際には回転制止凹部から離脱してヒンジ部材50の外周部に沿って移動する。係止棒31は、連接部材38を介して操作棒40に作動連結されており、その操作棒40の上端部には、本体部30の制限区域側(所定人のみ侵入が認められる領域)に突出する操作突起42が設けられている。このため、制限区域側からのみ、係止棒31の回転制止凹部への係止状態を解除できるので、防犯性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイング扉に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンビニエンスストアにおいて、従業員は、商品の補充、メンテナンス、店内清掃等のため、レジカウンターの内外間を出入りする必要があり、そのために、レジカウンターの一部に通路が設けられ、その通路にはスイング扉が設けられるのが通常である。また、レジカウンターにはレジスターが設置され、防犯上、このレジスターの金銭収容側となるレジカウンターの内側へは購買客の立ち入りを回避する必要があり、一定の操作をしないとスイング扉をカウンターの開放区域側からは開けられないようにされているものがある。
【0003】
従来、このような防犯を考慮したスイング扉は、例えば、特許文献1に記載の開口部装置のように、種々提案されたものがあるが、スイング扉自体で開放区域側から制限区域側への侵入を防ぐことができる簡単な構成を用いたものはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−77761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした開口部装置は、開放区域から制限区域への侵入を防止する防犯を考慮したものであるが、複雑な施錠構造を持つものであり、頻繁に出入りするレジカウンターの通路の開閉に用いるには適さないという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、開放区域から制限区域への進入を防止し、簡単な構成で防犯面に優れたスイング扉を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明(請求項1)のスイング扉は、開放区域と制限区域との間に設けられ、該開放区域と該制限区域とを開閉可能に仕切るスイング扉であって、
回動可能な本体部と、前記本体部を上下に貫通し、前記制限区域側から操作される係止棒と、前記本体部の上方部及び下方部にそれぞれ設けられ、外周部に回転制止凹部を有するヒンジ部材と、前記係止棒を前記ヒンジ部材に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記係止棒は、当該スイング扉の閉状態では前記回転制止凹部内に係止され、前記本体部が回動する際には、該回転制止凹部から離脱して前記ヒンジ部材の外周部に沿って移動する、ことを特徴とするスイング扉である。
【0009】
このスイング扉では、本体部が回動することでスイング扉が開状態と閉状態との間を移動する。このとき、本体部の上方部及び下方部にそれぞれ設けられ外周部に回転制止凹部を有するヒンジ部材と、本体部を上下に貫通する係止棒と、係止棒をヒンジ部材に向けて付勢する付勢部材と、が設けられており、スイング扉の閉状態では、回転制止凹部に係止棒が付勢されて嵌り込むことにより、本体部が閉状態(閉位置)に位置決めされる。このような簡単な構成により、開放区域と制限区域とを開閉可能に仕切ることができる。このとき、係止棒は制限区域側から操作されるため、防犯面にも優れていると言える。こうすることにより、開放区域から制限区域への侵入を防止し、簡単な構成で防犯面に優れたスイング扉を提供することが可能となる。なお、ここで「スイング扉の閉状態」とは、開放区域と制限区域とがスイング扉によって仕切られている状態であり、「スイング扉の開状態」とは、閉状態からスイング扉が略90度又は略マイナス90度回動し、開放区域と制限区域とが仕切られていない状態である。
【0010】
本発明のスイング扉において、前記本体部の制限区域側の側面に、前記係止棒を操作可能な操作孔が設けられていてもよい(請求項2)。この構成によれば、解錠機構が開放状態である従来の場合と比較して、係止棒を含む解錠機構が開放区域から目視されにくく、制限区域側の側面に設けられた操作孔を経て操作するため、開放区域側から操作しにくい。言い換えると、簡単な構成でありながらより防犯面に優れたスイング扉を提供することが可能となる。
【0011】
また、請求項2の態様を採用した本発明のスイング扉において、一端側が前記係止棒と連接し、他端側に前記操作孔を貫通する突起部を有する長柄状の操作部材を更に備え、前記長柄状の操作部材の略中央部が、前記本体部に対し回動可能に取り付けられ、前記操作孔は、前記本体部の側面の前記制限区域側の上部に設けられていてもよい(請求項3)。この構成によれば、スイング扉の上部に設けられた操作孔から操作部材を介して係止棒を操作することができるため、スイング扉が低い位置に設けられている場合であっても、簡単な構成で防犯面に優れていながら、より操作性の高いスイング扉を提供することが可能となる。
【0012】
本発明のスイング扉において、前記本体部の前記制限区域側の側面には、前記操作孔と前記係止棒との間の位置において支持突起が設けられていてもよい(請求項4)。この構成によれば、支持突起方向に操作部材を動かす際に、支持突起と操作部材とを摘むという操作により、支持突起が無い場合と比較して、操作部材をより容易に操作することができる。言い換えると、簡単な構成で防犯面に優れていながら、より操作性の高いスイング扉を提供することが可能となる。
【0013】
本発明のスイング扉において、前記ヒンジ部材は、半円形の部材であり、前記回転制止凹部は、前記半円形のヒンジ部材の外周部に開口形成され、且つ、前記係止棒の半径よりも大きな深さを有していてもよい(請求項5)。この構成によれば、スイング扉の閉状態において係止棒が回転制止凹部の内部に嵌り込むことになるため、係止棒が回転制止凹部の内部に嵌り込まない場合と比較して、より強固にスイング扉を閉状態に保持することが可能となり、防犯性を向上させることができる。言い換えると、簡単な構成で高い操作性を保ちながら、より防犯面の優れたスイング扉を提供することが可能となる。
【0014】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のスイング扉において、前記ヒンジ部材は、その外周部において前記回転制止凹部とは別に、前記係止棒を係止及び離脱可能な第二回転制止凹部を更に有しており、前記係止棒の前記第二回転制止凹部からの離脱を容易にすべく、前記第二回転制止凹部のうちの前記回転制止凹部に近い側面部分が、前記回転制止凹部に向かって傾斜形成されている、ことは好ましい(請求項6)。この構成によれば、スイング扉の閉状態では回転制止凹部で係止棒を係止し、スイング扉の開状態では第二回転制止凹部で係止棒を係止することになる。このとき、第二回転制止凹部は回転制止凹部に近い側面部分が回転制止凹部に向かって傾斜しているため、スイング扉を回転制止凹部の方向に押圧するという簡単な操作でスイング扉の位置を容易に切り替え可能である。言い換えると、簡単な構成で防犯面に優れていながら、より高い操作性を有するスイング扉を提供することが可能となる。
【0015】
また、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスイング扉において、前記ヒンジ部材もしくはその近傍に設けられ、又は、当該スイング扉の取付け対象物に装着される弾性部材を更に備えており、前記弾性部材は、回動する前記本体部による衝突を受けたとき、当該本体部を前記係止棒が前記回転制止凹部に係止される位置に向けて押し戻す働きをすることは好ましい(請求項7)。尚、前記弾性部材が、前記ヒンジ部材に一体化されたブラケットに固定されたゴム材、バネ材またはダンパー部材であることは更に好ましい(請求項8)。
【0016】
これらの構成よれば、係止棒が回転制止凹部から離脱した状態でスイング扉本体部が回動された場合、ヒンジ部材もしくはその近傍に設けられた弾性部材、又は、当該スイング扉の取付け対象物に装着された弾性部材が、勢い余って回動するスイング扉本体部の衝突を受ける。その際、衝突を受けた弾性部材は、その反発弾性に基づいて、そのスイング扉本体部を係止棒が回転制止凹部に係止される位置に向けて押し戻す。すると、押し戻されたスイング扉本体部は、係止棒が回転制止凹部に係止される位置にまで復帰回動し、その位置に達すると付勢部材の作用により係止棒が回転制止凹部に係止される。その結果、スイング扉本体部の回動が停止し、スイング扉は閉状態に保持される。つまり上記構成によれば、人がスイング扉を通過後も、その直後にスイング扉を中立位置に自動復帰させて、常に扉を閉状態に保ちたいというユーザーの要望を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】スイング扉20の外観を示す斜視図である。
【図2】スイング扉20の構成の概略を示す斜視図である。
【図3】閉状態におけるスイング扉20を示し、(A)はヒンジ円板50及びその近傍の拡大平面図、(B)はスイング扉の全体斜視図。
【図4】回動時におけるスイング扉20を示し、(A)はヒンジ円板50及びその近傍の拡大平面図、(B)はスイング扉の全体斜視図。
【図5】開状態におけるスイング扉20を示し、(A)はヒンジ円板50及びその近傍の拡大平面図、(B)はスイング扉の全体斜視図。
【図6】第2実施形態のスイング扉120の構成の概略を示す斜視図である。
【図7】第3実施形態のスイング扉120の構成の概略を示す斜視図である。
【図8】第4実施形態のスイング扉の要部拡大斜視図。
【図9】第4実施形態で使用されるヒンジ円板及びその周辺部材を示し、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は右側面図、(D)はX−X矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記図面に基づいて、発明を実施するための形態を説明するにあたり、実施の形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。実施の形態のスイング扉20,120が本発明のスイング扉に相当し、本体部30が本体部に相当し、ストッパ棒31が係止棒に相当し、ヒンジ円板50がヒンジ部材に相当し、バネ39a,39bが付勢部材に相当し、閉鎖凹部52が回転制止凹部に相当し、操作窓32が操作孔に相当し、操作棒40が操作部材に相当し、操作突起42が突起部に相当し、支持突起34が支持突起に相当し、開放凹部54a,54bが第二回転制止凹部に相当する。なお、スイング扉20,120の動作を説明することにより本発明のスイング扉の操作方法の一例も明らかにしている。
【0019】
[第1実施形態]
次に、図1及び図2を用いて、本発明の第1実施形態のスイング扉20の構成を詳しく説明する。ここで、図1は、スイング扉20の外観を示す斜視図であり、図2は、スイング扉20の構成の概略を示す斜視図である。本発明のスイング扉20は、図1に示すように、本体部30と、ヒンジ円板50とからなり、本体部30の上下を挟むように設けられたヒンジ円板50に支点軸56によって軸支されている。このヒンジ円板50は開放区域と制限区域との境界に備えられたレジカウンター10の壁面に取り付けられているため、本体部30が回動することにより、開放区域と制限区域とを開閉可能に仕切っている。本発明を実施するための形態を説明するにあたり、開放区域とは、コンビニエンスストア等の購買客が自由に移動することができる購買客に対して開放された区域を意味し、制限区域とは、コンビニエンスストア等の従業員が業務を行い、購買客の立ち入りを認めない区域を意味するものとする。例えば、レジスターの金銭領域側であるレジカウンターの内側が制限区域に該当し、レジカウンターの外側が開放区域に該当する。
【0020】
本体部30は、金属製の略直方体形状の部材であり、図1に示すように、制限区域側であって本体部30の上部に操作窓32が設けられており、操作窓32の近傍には支持突起34が設けられている。操作窓32には、後述する操作突起42が本体部30の内部側から制限区域側に貫通しており、操作窓32から操作突起42を介して操作棒40の操作が可能となっている。
【0021】
次に、本体部30の内部の構造について、図2を用いて詳しく説明する。本体部30の内部には、図2に示すように、本体部30を上下に貫通するストッパ棒31と、ストッパ棒31を操作する操作棒40と、操作棒40の略中心位置を本体部30に回動可能に固定する固定部材36aと、ストッパ棒31の略中央位置でストッパ棒31と操作棒40とを連接する連接部材38と、ストッパ棒31の上端部をヒンジ円板50の中心方向に付勢するバネ39aと、ストッパ棒31の下端部をヒンジ円板50の中心方向に付勢するバネ39bと、を設けている。下側の固定部材36bは上側の固定部材36aと同一の部材であるが、設置場所が連接部材38を挟んで上方に設けられているか下方に設けられているかという点で相違する。即ち、連接部材38は、本体部30内に固設された上下一対の固定部材36a,36b間に水平方向に移動可能に支持されている。なお、両固定部材36a,36bの設置場所は連接部材38を中心に上下対称の位置であるため、本体部30の上下を反転させて使用したい場合には、操作棒40を固定部材36bに付け替えるのみで使用することができ、設置に対する自由度が高い。バネ39a,39bはコイルスプリングであり、一端がストッパ棒31と連接され、他方端が支点軸56と連接されている。このため、ストッパ棒31は、スイング扉が開状態であるか閉状態であるかを問わず、常にヒンジ円板50の中心方向に付勢されることになる。なお、使用時には、図1に示すように、本体部30の側面部カバー30Cにより、これらの内部構成は外部からは視認できない状態が保たれている。このため、スイング扉20の開閉機構が一見して明らかにならず、防犯面で優れていると言える。なお、前記操作窓32及びその近傍の支持突起34は前記側面部カバー30Cに形成されている。
【0022】
操作棒40は、図2に示すように、略中央部がビス44によって上側の固定部材36aに回動可能に取り付けられている金属製の長柄状の部材である。この操作棒40の一端側(上端側)には操作突起42が設けられており、他端側(下端側)は連接部材38にビス46によって回動可能に取り付けられている。
【0023】
ヒンジ円板50は、図2に示すように、なめらかな表面(半円弧状に湾曲した外周縁)を有する金属製の半円形状の部材であり、円周表面(円弧状外周部)に3つの凹部(52,54a,54b)と、支点軸56を保持する軸孔58(図3(A)参照)と、を備えている。これら3つの凹部は、図3(A)に示すように、制限区域側から順番に、開放凹部54a、閉鎖凹部52、開放凹部54bの順で並んでおり、開放凹部54aと閉鎖凹部52との角度及び開放凹部54bと閉鎖凹部52との角度は、それぞれ軸孔58を中心として略90度の角度で形成されている。また、これら3つの凹部は、ストッパ棒31の直径よりも深く設計されており、ストッパ棒31はバネ39a,39bによってヒンジ円板50の中心方向に付勢されているため、スイング扉の開状態及び閉状態では、ストッパ棒31が嵌め込まれ、本体部30の位置が位置決めされる。また、本体部30が回動する際には、ストッパ棒31は、円周表面(円弧状外周部)に沿って移動することになる。
【0024】
ここで、これらの凹部について、更に詳しく説明する。閉鎖凹部52は、図3(B)に示すように、スイング扉20が閉状態の際に、ストッパ棒31がバネ39a,39bによって付勢され嵌め込まれる凹部であり、ストッパ棒31の直径よりも深く形成されている。このため、ストッパ棒31が一度閉鎖凹部52に嵌め込まれた場合には、スイング扉20は閉状態(閉位置)に位置決めされる。また、開放凹部54a及び開放凹部54b(以下、両者をまとめて「開放凹部54」ともいう)は、スイング扉20が開状態の際に、ストッパ棒31が嵌め込まれる凹部であり、ストッパ棒31の直径よりも深く形成されている点では、閉鎖凹部52と同様である。一方、それぞれの開放凹部54の閉鎖凹部52に近い面(側面部分)は、ヒンジ円板50の表面(外周縁)に向かって傾斜を有している点で閉鎖凹部52と異なっている。このため、ストッパ棒31が開放凹部54に嵌め込まれた場合には、スイング扉20が位置決めされるものの、この位置からスイング扉20を閉鎖凹部52の方向に回動させることで、容易にストッパ棒31を開放凹部54から離脱させることができる。
【0025】
次に、こうして構成された本実施形態のスイング扉20の動作について、図3〜図5を用いて説明する。ここで、図3は、閉状態におけるスイング扉20を説明するための説明図であり、図4は、ストッパ棒31の閉鎖凹部52からの離脱状態(回動可能時)を説明するための説明図であり、図5は、開状態におけるスイング扉20を説明するための説明図である。また、それぞれの図において、図中(A)は、ヒンジ円板50とストッパ棒31との位置関係を示す図であり、図中(B)は、それぞれの状態における本体部30の内部を示す斜視図である。
【0026】
スイング扉20が閉状態である場合には、図3(B)に示すように、スイング扉20は、レジカウンター10の壁面と略垂直な位置である閉状態に位置決めされており、開放区域と制限区域とを仕切っている。このため、開放区域から制限区域への人(例えば、購買者)の侵入を防ぐことができる。制限区域から開放区域へ人(例えば、従業員)が移行する場合には、スイング扉20を回動し、スイング扉20の位置をレジカウンター10の壁面と略平行な位置である開状態(図5参照)に位置決めする必要がある。
【0027】
スイング扉20を閉状態から開状態にするためには、閉鎖凹部52に嵌め込まれているストッパ棒31を取り出し、スイング扉20が回動可能な状態にする必要がある。このために、操作窓32より制限区域側に突出している操作突起42を支持突起34に接近する方向に押圧する。具体的には、操作突起42と支持突起34とを両側から挟むことで、操作突起42を支持突起34の方向に押圧する。こうすると、操作棒40の略中心位置は、ビス44を中心に回動可能に本体部30に取り付けられているため、操作棒40がビス44を回動軸として回動し、操作棒40の操作突起42と反対側(他端側)が操作突起42とは逆方向、つまり、ヒンジ円板50と反対の方向に移動することになる。このとき、操作棒40の操作突起42と反対側(他端側)はビス46によって連接部材38に回動可能に固定されているため、連接部材38がヒンジ円板50と反対の方向に移動する。更に、連接部材38とストッパ棒31とは連接されているため、ストッパ棒31がヒンジ円板50と反対の方向に移動する。こうすることにより、図4(A)に示すように、ストッパ棒31が閉鎖凹部52から離脱して、スイング扉20が回動可能な状態になる。
【0028】
次に、本体部30を制限区域側へ回動する。具体的には、操作突起42を支持突起34の方向に押圧した状態で、図1中の矢印の方向に本体部30をわずかに引く。このようにして、ストッパ棒31がヒンジ円板50の閉鎖凹部52から離脱させた後は、操作突起42を支持突起34の方向に押圧し続ける必要はない。ヒンジ円板50の表面(外周縁)はなだらかな円弧状であるため、閉鎖凹部52からストッパ棒31を取り外した後は、バネ39a,39bがストッパ棒31をヒンジ円板50の中心方向に付勢しても、本体部30の回動を妨げないためである。本体部30の回動に伴い、ストッパ棒31は、ヒンジ円板50のなめらかな円周上を移動した後、バネ39a,39bの付勢力によって開放凹部54aに嵌め込まれ、スイング扉は開状態(図5(A)参照)になる。ここでは、制限区域側に本体部30を回動させる場合を例に説明したが、開放区域側へ本体部30を回動させる場合も同様であるため説明を省略する。
【0029】
一方、スイング扉を開状態から閉状態に移行する際には、図1中の矢印と反対の方向に本体部30を引く。こうすると、開放凹部54aの閉鎖凹部52に近い面(側面部位)はヒンジ円板50の表面に向かって傾斜を有しているため、本体部30の回動に伴ってストッパ棒31が開放凹部54aから離脱する。ストッパ棒31が開放凹部54aから離脱した後は、ヒンジ円板50の表面(外周縁)を本体部30の回動を妨げることなく移動する。そして、閉鎖凹部52の位置にストッパ棒31が到達すると、バネ39a,39bの付勢力により閉鎖凹部52内に嵌め込まれ、本体部30を閉位置に位置決めする。ここでは、制限区域側から回動させる場合を例に説明したが、開放領域側から回動させる場合も開放凹部54aが開放凹部54bに変わること以外は同様であるため、説明を省略する。
【0030】
以上詳述した本実施の形態のスイング扉20によれば、閉状態から開状態に移行する際には、操作突起42を支持突起34の方向に押圧した後に本体部30を回動するという簡単な操作で開状態に移行することができ、スイング扉の開状態から閉状態に移行する際には、本体部30を所望の方向に回動するという簡単な操作で閉状態に移行することができる。また、操作突起42は、制限区域側から操作されるため、優れた防犯性を有することができる。したがって、簡単な構成で防犯面に優れたスイング扉20を提供することが可能となる。
【0031】
また、操作窓32が制限区域側に設けられているため、開放区域側からはスイング扉20の解錠機構の一部であるストッパ棒31を目視することができない。従って、簡単な構成でありながら、より防犯面に優れたスイング扉20を提供することが可能となる。
【0032】
更に、上側の固定部材36aに操作棒40の中央部が固定され、ストッパ棒31と操作棒40の一端側(下端側)が連接部材38を介して連接しているため、操作棒40の他端側(上端側)に設けられた操作突起42を操作窓32を介して操作することで、ストッパ棒31を操作することができる。したがって、スイング扉20が低い位置に設置されていた場合でも、容易にストッパ棒31を操作することできる。言い換えると、簡単な構成で防犯面に優れ、かつ、操作性の高いスイング扉20を提供することが可能となる。
【0033】
更にまた、操作突起42の横には支持突起34が備えられており、操作突起42を押圧する際に、操作突起42と支持突起34とを摘むという動作で押圧できるため、容易に押圧することができる。言い換えると、簡単な構成で防犯面に優れ、かつ、操作性の高いスイング扉20を提供することが可能となる。
【0034】
そしてまた、ヒンジ円板50は半円形状であり、その表面(外周部)にストッパ棒31の半径より深い閉鎖凹部52及び開放凹部54を有しているため、ストッパ棒31を閉鎖凹部52又は開放凹部54に嵌め込むことができる。言い換えると、ストッパ棒31が閉鎖凹部52又は開放凹部54に入らない場合と比較して、より確実に開状態及び閉状態に位置決めすることができる。こうすることにより、簡単な構成で防犯面に優れ、かつ、信頼性の高いスイング扉20を提供することが可能となる。
【0035】
そして更に、開放凹部54の閉鎖凹部52側の壁面は、ヒンジ円板50の表面(外周縁)に向かって傾斜を有しているため、本体部30を閉位置方向に回動させるという簡単な操作でウイング扉20の閉鎖を行うことができる。言い換えると、簡単な構成で防犯面に優れ、かつ、操作性の高いスイング扉20を提供することが可能となる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0037】
例えば、上述した実施の形態では、開放凹部54の閉鎖凹部52側の壁面は、ヒンジ円板50の表面(外周縁)に向かって傾斜を有しているものとしたが、傾斜を有していなくても良い。この場合であっても、閉状態から開状態にする際に、操作棒40を操作することで、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0038】
[第2及び第3実施形態]
上述した第1実施形態では、スイング扉20を回動する際は、操作棒40を介してストッパ棒31を動かすこととしたが、図6に示すように、スイング扉120の制限領域側にストッパ棒31の略中央部を露出し、ストッパ棒31を直接操作するようにしても良い(第2実施形態)。こうすれば、上述した第1実施形態と同様の効果が得られながら、操作棒40等を必要としないため部品点数を減らすことができ、環境に資することができる。また、このスイング扉120において、図7に示すように、ストッパ棒31の露出部分の内側(近傍)に把持穴122を有していても良い(第3実施形態)。こうすれば、把持穴122とストッパ棒31とを掴むという動作でストッパ棒31を操作できるため、把持穴122が無い場合と比較して、上述した第1実施形態と同様の効果が得られながら、より容易に操作することができる。なお、ここで図6及び図7は、第2及び第3実施形態のスイング扉120の構成の概略を示す斜視図である。
【0039】
[第4実施形態]
上記第1〜第3実施形態では、ヒンジ円板50の外周部に第二回転制止凹部としての開放凹部54a,54bを設けたが、図8及び図9に示す第4実施形態のように、ヒンジ円板50に開放凹部(第二回転制止凹部)を設けることなく、代わりに、少なくとも一つの弾性部材85を追加設置してもよい。
【0040】
具体的には図9(A)〜(D)に示すように、スイング扉の本体部30の上下にそれぞれ配設されるヒンジ円板50は、背板部81と半円板状の隠し板部82とが側面視L字状に連結されてなるブラケット80に一体化されている。このブラケット80は、レジカウンター10等の取付け対象物の側壁面にヒンジ円板50を固定するための取付け介在部品であり、ブラケットの背板部81には、固定ネジ(図示略)を挿入するためのネジ穴83が複数(本例では4穴)形成されている。ヒンジ円板50は、ブラケットの背板部81に対して略直角となるように、例えば溶接によって固定されており、その結果、ヒンジ円板50は、ブラケットの隠し板部82と略平行となっている。なお、ブラケットの隠し板部82は、例えばスイング扉の上側に配設されるヒンジ円板50にとってはその上方に位置する天板と位置付けられ、当該ヒンジ円板50及びそれに隣接するストッパ棒31の上端部を覆い隠し、外部から見えにくくすると共に、衣服等がストッパ棒31の上端部に引っ掛かるのを防止する。
【0041】
ブラケットの背板部81には、左右一対の弾性部材85が取り付けられている。弾性部材85は、例えば円柱形状に形成されたウレタン製のゴム材である。これらの弾性部材85は、ブラケットの背板部81の左右端部付近にそれぞれ、回動時に接近するスイング扉本体部30に対向し得るように設けられている。これらの弾性部材85は、ブラケットの背板部81に対して接着剤で固着されてもよいが、取付け対象物の側壁面にブラケット80を固定する際に用いる固定ネジ(図示略)を利用して背板部81に固定されてもよい。その場合、各円柱状弾性部材85の中心部に中抜き穴を貫通形成しておき、その中抜き穴が前記ネジ穴83に整合するように弾性部材85を位置決めすれば(図9(A)参照)、当該中抜き穴を固定ネジの通し孔として、一本の固定ネジによって弾性部材85及びブラケット80を同時に固定することができる。
【0042】
前記第1〜第3実施形態と同様、第4実施形態のヒンジ円板50は、その半円状外周域の中心位置において回転制止凹部としての閉鎖凹部52を有し、この閉鎖凹部52はストッパ棒31の直径よりも深く形成されている。そして、閉鎖凹部52内にストッパ棒31が係止されるとき、スイング扉の本体部30は中立位置(図8の位置および図9(D)仮想線の位置)に保持され、スイング扉は閉状態となる。
【0043】
人が、操作突起42を操作してストッパ棒31を閉鎖凹部52から離脱させた後、スイング扉本体部30を中立位置からいずれかの方向に押したとする。一般にスイング扉本体部30は軽量なので、人が軽く押すだけでたやすく回動し、中立位置から約90度の位置にまで容易に達する。その際、勢い余ったスイング扉本体部30が前記左右一対の弾性部材85のいずれか一方に衝突すると、衝突された弾性部材85は、その反発弾性に基づいてスイング扉本体部30を中立位置に向けて押し戻す。すると、スイング扉本体部30は中立位置に向けて復帰回動し、中立位置に達すると、バネ39a,39bの作用によりストッパ棒31が閉鎖凹部52に係入(係止)される。その結果、スイング扉本体部30の回動が停止し、スイング扉が閉状態に保持される。このように第4実施形態によれば、人がスイング扉を通過した場合でも、その直後にスイング扉を中立位置に自動復帰させて、常に扉を閉状態に保ちたいというユーザーの要望を満たすことができる。
【0044】
なお、上記第4実施形態では、弾性部材85としてゴム材を採用したが、これに代えてバネ材(例えばコイネバネ、板バネ)またはダンパー部材(例えばバネ圧やガス圧を利用するもの)を採用しても良い。また、弾性部材85は、ヒンジ円板50に一体化されたブラケット80上ではなく、その近傍に設けてもよく、あるいは、スイング扉の取付け対象物(例えばレジカウンターの側壁等)に直接装着してもよい。更に、上記第4実施形態では、中立位置のスイング扉本体部30を間に挟んで左右一対となるように二つの弾性部材85を用いたが、弾性部材をいずれか一つだけとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のスイング扉は、頻繁に出入りがあるようなレジカウンター等の通路を仕切る際に利用可能であり、簡易で、扉自身の構成により防犯を達成することが要請される産業分野において特に有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 レジカウンター(スイング扉の取付け対象物)、20 スイング扉、30 本体部、31 ストッパ棒(係止棒)、32 操作窓(操作孔)、34 支持突起、36 固定部材、38 連接部材、39,39a,39b バネ(付勢部材)、40 操作棒(操作部材)、42 操作突起(突起部)、44 ビス、46 ビス、50 ヒンジ円板(ヒンジ部材)、52 閉鎖凹部(回転制止凹部)、54,54a,54b 開放凹部(第二回転制止凹部)、56、支持軸、80 ヒンジ円板と一体化されたブラケット、85 弾性部材、120 スイング扉、122 把持穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放区域と制限区域との間に設けられ、該開放区域と該制限区域とを開閉可能に仕切るスイング扉であって、
回動可能な本体部と、
前記本体部を上下に貫通し、前記制限区域側から操作される係止棒と、
前記本体部の上方部及び下方部にそれぞれ設けられ、外周部に回転制止凹部を有するヒンジ部材と、
前記係止棒を前記ヒンジ部材に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記係止棒は、当該スイング扉の閉状態では前記回転制止凹部内に係止され、前記本体部が回動する際には、該回転制止凹部から離脱して前記ヒンジ部材の外周部に沿って移動する、ことを特徴とするスイング扉。
【請求項2】
前記本体部の制限区域側の側面に、前記係止棒を操作可能な操作孔が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のスイング扉。
【請求項3】
一端側が前記係止棒と連接し、他端側に前記操作孔を貫通する突起部を有する長柄状の操作部材を更に備え、
前記長柄状の操作部材の略中央部が、前記本体部に対し回動可能に取り付けられ、
前記操作孔は、前記本体部の側面の前記制限区域側の上部に設けられている、ことを特徴とする請求項2に記載のスイング扉。
【請求項4】
前記本体部の前記制限区域側の側面には、前記操作孔と前記係止棒との間の位置において支持突起が設けられている、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のスイング扉。
【請求項5】
前記ヒンジ部材は、半円形の部材であり、
前記回転制止凹部は、前記半円形のヒンジ部材の外周部に開口形成され、且つ、前記係止棒の半径よりも大きな深さを有する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスイング扉。
【請求項6】
前記ヒンジ部材は、その外周部において前記回転制止凹部とは別に、前記係止棒を係止及び離脱可能な第二回転制止凹部を更に有しており、
前記係止棒の前記第二回転制止凹部からの離脱を容易にすべく、前記第二回転制止凹部のうちの前記回転制止凹部に近い側面部分が、前記回転制止凹部に向かって傾斜形成されている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスイング扉。
【請求項7】
前記ヒンジ部材もしくはその近傍に設けられ、又は、当該スイング扉の取付け対象物に装着される弾性部材を更に備えており、
前記弾性部材は、回動する前記本体部による衝突を受けたとき、当該本体部を前記係止棒が前記回転制止凹部に係止される位置に向けて押し戻す働きをする、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスイング扉。
【請求項8】
前記弾性部材は、前記ヒンジ部材に一体化されたブラケットに固定されたゴム材、バネ材またはダンパー部材である、ことを特徴とする請求項7に記載のスイング扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−1811(P2011−1811A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278079(P2009−278079)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000209223)棚橋工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】