説明

スカム除去装置用噴射ノズル

【課題】圧力水を均一に安定して噴射させることができ、現場における調整の容易なスカム除去装置用噴射ノズルを提供する。
【解決手段】スカム除去装置のパイプスキマaの開口部5に向けて水面上から圧力水を噴射するスカム除去装置用噴射ノズルNであって、そのスカム除去装置用噴射ノズル本体の内部に圧力水室Rを設けるとともに、その圧力水室Rに長手方向が水面と並行するように開口されたスリット14を設け、そのスリット14の開口の上辺には、圧力水が噴射される方向に向けて所定距離伸びる整流板13を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプスキマを備えたスカム除去装置に用いられるスカム除去装置用噴射ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のパイプスキマを備えたスカム除去装置は、そのパイプスキマはスカムが発生する水槽の下流側の水面に一部が水没する形で設置されている。例えば、その水槽が下水処理施設の沈殿池の場合、パイプスキマは、沈殿池の原水流入側と反対側に設けられている沈殿水の取出側の手前に一部が水没する形で設置されている。
【0003】
この従来のパイプスキマは、沈殿池の水流方向と直交する方向の水路幅に等しい長さのパイプ材からなり、そのパイプ材には、軸心方向に開口した開口部(切欠部)が設けられている。そしてこのパイプスキマには、長手方向の軸心を中心にして回転する回転機構が設けられていて、スカム除去時に開口部の一部が水中に没するように回転され、この回転によりスカムが開口部からパイプスキマ内に流入するように構成されている。
【0004】
パイプスキマを備えたスカム除去装置においては、スカムの除去は水流に同伴させて行われる。すなわち、スカム除去時には、パイプスキマの開口部の一部が水中に位置されるので、その開口部を介してパイプスキマ内に水の流れ込みが開始される。この水の流れ込みにより水面に浮遊していたスカムも一緒にパイプスキマ内に流入され、これによりスカムの除去が行われる。
【0005】
ところで、通常、スカムの発生する水槽の水の流れは速くなく、例えば、水槽が下水処理施設の沈殿池の場合、その流速は3〜5cm/sec程度であり、したがって、パイプスキマ内への水の流れ込みだけでスカムの除去を行おうとすると、スカムの排出時間が長くなるという問題点を有している。
【0006】
スカムの排出時間が長くなるということは、スカム排出に伴って排出される水の量が多くなることを意味している。この排出された水は、スカムを分離した後、再度、沈殿池の原水供給側に戻されるので沈殿池の負荷を高めてしまうという問題点を有するとともに、この水の戻しはポンプアップにより行なわれるために無駄に電力が消費され、動力費がかさむという欠点を有している。
【0007】
スカムの排出を水の流れだけで行う場合は、上述のような問題点を有しているので、これを解決するために、パイプスキマの開口部の水面下への移動に合わせて、スカムに対してパイプスキマ側方向へ移動力を付与するために、スカムの上面に傾斜角を有する圧力水を噴射させることが行われている(特許文献1,2参照)。
すなわち、この圧力水の噴射は、沈殿池の水流に直交する方向に伸びて設けられたヘッダ管に所定の間隔を保って複数の噴射ノズルを配設して構成されている。そして、各噴射ノズルは、その外形形状が扁平な末広がりに形成されていて、その末広がりの端面に開口されたスリットから膜状の圧力水をパイプスキマ側に向けてそれぞれ噴射できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3943551号公報
【特許文献2】特開平9−276860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のスカム除去装置の噴射ノズルは、外形形状が扁平な末広がりに形成されていて、その末広がりの端面に開口されたスリットから膜状の圧力水をパイプスキマ側に向けてそれぞれ噴射できるように構成されているが、スカムの上面に傾斜角を有する圧力水を均一に噴射させるためには、現場における入念な調整を必要としていた。この調整が不完全であると、例えばスカムに対するパイプスキマ側方向への移動する力が小さくなり、噴射ノズルの機能が十分に発揮できなくなるという課題を有している。
【0010】
そこで、本発明は、上記欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、圧力水を均一に安定して噴射させることができ、現場における調整の容易なスカム除去装置用噴射ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るスカム除去装置用噴射ノズルは、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、スカム除去装置のパイプスキマの開口部側に向けて水面上から圧力水を噴射するスカム除去装置用噴射ノズルであって、前記スカム除去装置用噴射ノズル本体の内部に圧力水室を設けるとともに、その圧力水室に長手方向が水面と並行するように開口されたスリットを設け、そのスリットの開口の上辺には、圧力水が噴射される方向に向けて所定距離伸びる整流板を設けたことを特徴としている。
本発明の請求項2に記載のスカム除去装置用噴射ノズルは、整流板は平面形状が半円状を呈していることを特徴としている。
本発明の請求項3に記載のスカム除去装置用噴射ノズルは、圧力水室のスリットと反対側の厚さはそのスリットの幅よりも十分に大きく、その長さはスリットの長さより小さく形成されていることを特徴としている。
本発明の請求項4に記載のスカム除去装置用噴射ノズルは、スカム除去装置は下水処理施設の最初沈殿池又は導水渠に設けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載のスカム除去装置用噴射ノズルは、圧力水室に設けられるスリットの開口上辺には、圧力水が噴射される方向に向けて所定距離水平方向に伸びる整流板を設けたので、圧力水を均一に安定して噴射させることができ、現場における調整の容易なスカム除去装置用噴射ノズルとすることができる。
本発明の請求項2に記載のスカム除去装置用噴射ノズルは、整流板は平面形状が半円状を呈しているので、少ない材料費で済むとともに、周囲が円形を呈しているので、作業員が触れたときに怪我を防止することができる。
本発明の請求項3に記載のスカム除去装置用噴射ノズルは、圧力水室のスリットと反対側の厚さはそのスリットの幅よりも十分に大きく、その長さはスリットの長さより小さく形成されているので、スリットから噴射される水膜の水圧及び勢いを均一にすることができる。
本発明の請求項4に記載のスカム除去装置用噴射ノズルは、スカム除去装置が下水処理施設の最初沈殿池又は導水渠に設けられるときは、スカムを短時間で、かつ、確実に除去ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスカム除去装置用噴射ノズルを備えた沈殿池の平面図ある。
【図2】(a)は、本発明の一実施の形態に係るスカム除去装置用噴射ノズルの平面図、(b)は、本発明の一実施の形態に係るスカム除去装置用噴射ノズルの正面図、(c)は、本発明の一実施の形態に係るスカム除去装置用噴射ノズルの右側面図、(d)は、同図(a)のX0-X0線断面図ある。
【図3】(a)は、パイプスキマの開口部が水面上に位置しているときの図1のX1−X1線の拡大断面図、(b)は、パイプスキマの開口部の一部が水中に位置しているときの図1のX1−X1線の拡大断面図である。
【図4】パイプスキマの開口部が水面上に位置しているときの図1のX2−X2線の断面図である。
【図5】パイプスキマの開口部の一部が水中に位置しているときの図1のX2−X2線の断面図である。
【図6】(a)は、変形例に係るスカム除去装置用噴射ノズルの外観構成を示す図、(b)は、同図(a)のX3-X3線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態例に係るスカム除去装置用噴射ノズル(以下、「噴射ノズル」という。)を備えた下水処理施設の最初沈殿池(以下、「沈殿池」で説明する。)の平面図である。
【0015】
この沈殿池1では、水は左側から右側方向へ流れるように構成されている。そしてこの沈殿池1には、周知の沈殿池1と同様に、沈降した汚泥を排出する汚泥掻取機構が設けられているが、本発明の説明に関係しないのでその詳細説明は省略する。なお、実際の下水処理施設においては、沈殿池は複数個併設されるが、ここでは、図面を簡略化するために一個の沈殿池のみが示されている。
【0016】
図中、aはパイプスキマであり、沈殿池1の沈殿処理水取出部2の手前側、すなわち沈殿処理水取出部2から所定距離上流側に一部が水没する形で、かつ、沈殿池1の水流方向と直交する方向の水路幅全体にわたって設けられている。
【0017】
このパイプスキマaの一端部(図1においては上端部)は、沈殿池1の一方の槽壁を貫通してその槽壁の外側に設けられているスカムピット3内に位置し、その開口されている一端部からスカムを含む水をスカムピット3内に排出できるように構成されている。
【0018】
そして、パイプスキマaの閉止状に形成されている他端部は、沈殿池1の他方の槽壁に回転自在に軸支され、その支軸には、パイプスキマaの軸心を中心にして回転させる回転駆動機構4が設けられている。
なお、パイプスキマaの一端部側の槽壁を貫通する部分及び他端部側の槽壁を貫通する支軸部分は、それぞれ槽壁を軸受けとして回転できるように構成されているとともに、その軸受の機構は水密状にそれぞれ構成されていて、沈殿池1内の水が漏出しないように工夫されている。
【0019】
上記パイプスキマaは、沈殿池1の水流方向と直交する方向の水路幅よりも少し長い長さで、かつ、断面形状が円形のパイプ材Pからなり、そのパイプ材Pには、軸心方向に開口した開口部(切欠部)5が設けられている。このパイプ材Pの内径は、開口部5から取り入れられたスカムを含む水をスカムピット3内に速やかに流出させることができるように決められている。
【0020】
図中、6は、水面位置よりも上方に設けられた圧力水供給管であって、パイプスキマaの位置よりも所定距離上流側で、かつ、沈殿池1の水流方向と直交する方向に設けられている。そして、この圧力水供給管6には、所定間隔を保って噴射ノズルN,N…が連結管7,7…及び90度に屈曲した管、いわゆるエルボ8,8…を介して垂下する形で水面位置よりも少し上方に設けられている。すなわち、これら噴射ノズルN,N…は、水面位置よりも少し上方に設けられている。
【0021】
これら噴射ノズルN,N…の圧力水の噴射方向は、パイプスキマaの開口部5の側に向くように決められている。そして、噴射ノズルN,N…から噴射される圧力水の圧力及びその水量は、スカムSの流れを促進するに十分なように決められている。また、これら噴射ノズルN,N…の数は、各噴射ノズルNからは、末広がりの圧力水が噴射されるので、その圧力水が沈殿池1の水流方向と直交する方向の水路幅全体に亘るように決められる。
【0022】
各噴射ノズルN,N…の構成は同一であるので、以下、図2(a)〜(d)を用いて一つの噴射ノズルNについて説明する。ここで、同図(a)は、本発明の噴射ノズル本体に相当する噴射ノズルNの平面図、同図(b)は、その噴射ノズルNの正面図、同図(c)は、その噴射ノズルNの右側面図、(d)は、同図(a)のX0-X0線断面図ある。
【0023】
この噴射ノズルNの平面形状、すなわち、沈殿池1を平面から見たときの形状(図1参照)は、図2(a)に示されるように、圧力水が噴射される側(図2(a)において右側)が幅広となるように形成されている上板10a及び下板10bと、これら両板10a,10bの両側にそれぞれ設けられる圧力水が噴射される側と反対側が幅広となるように形成されている右側板11a及び左側板11bと、これら板10a,10b、11a,11bの圧力水が噴射される側と反対側を覆うとともに、エルボ8が接続される立板12と、上板10aと一体的に設けられるとともに、圧力水が噴射される側に水平状に突出した平面形状が半円状の整流板13とから構成されている。
【0024】
この噴射ノズルNの内部には、上述の各板10a,10b、11a,11b及び12により、図2(a)に示されるように、平面から見たときに圧力水が噴射される側が徐徐に広がり、また、図2(d)に示されるように、断面から見たときに圧力水が噴射される側が徐徐に狭まる空間により形成される圧力水室Rが構成されている。
そして、この圧力水室Rの圧力水が噴射される側の端面には、長手方向が水面と平行する細長い開口であるスリット14が形成されるように構成されている。さらに、このスリット14を形成している開口の上辺に当る上板10aには、圧力水の噴射方向に突出した平面形状が半円状の整流板13が一体的に設けられている。なお、このスリット14の大きさは、沈殿池1に生成されるスカムSの性状によって一様ではないが、所定の水圧を有する水膜が噴射できるように決められている。
【0025】
なお、整流板13の平面形状は半円状としたが、これを上板10aをそのまま延長した台形状等にすることもできる。但し、図示のように半円状にした場合は、少ない材料費で済むとともに、周囲が円形を呈しているので、作業員が触れたときに怪我を防止することができる。いずれにしても、整流板13は、スリット14の上辺から圧力水の噴射方向に伸びた所定面積を有する平面状の板材であればよい。
【0026】
上記構成からなる噴射ノズルNは、噴射ノズルNの内部に圧力水供給管6から連結管7及びエルボ8を介して圧力水が供給されると、スリット14からパイプスキマaの開口部5方向に向けて圧力水が噴射される(後述する図3(b)参照)。スリット14から噴射された圧力水は、整流板13によりも上方に行くことが阻止され、しかもスリット14から噴射された圧力水の流れを整えるように作用し、その圧力水の流れを平面から見たときに形の整った扇形(末広がり)を呈して噴射される。そして、スリット14から噴射された圧力水は、スカムSの上面に徐徐に接するようになる。これにより、スカムSに対して開口部5方向への移動力が付与される。また、スカムSが大きな板状に成長しているときは、スリット14から噴射された圧力水により、移動に好適な細片に破砕される。
また、圧力水室Rは、スリット14と反対側はスリット14の幅よりも十分に厚く(図2(b),(c)参照)、さらに、スリット14の長さよりも小さいので(図2(a),(b)参照)、スリット14から噴射される水膜の水圧及び勢いは、均一に調製される。
スリット14から噴射される圧力水の噴射方向は、パイプスキマaの開口部5方向に向けられるが、水面に対する具体的な噴射角度、すなわちスカムSの面に対する噴射角度は、沈殿池1に生成されるスカムSの性状によって一様でないが、現場おける数回のスカム除去実験によって最終的に決められる。この噴射角度の調整は、圧力水供給管6をその軸心方向を中心にして回転させることにより全ての噴射ノズルN,N…を同時に行なうことができる。いずれにしても、この噴射角度の調整は、スカムSの面に対する噴射角度が大きすぎてスカムSが水中に潜りすぎ、その潜ったスカムSがパイプスキマaの下方を通過しないように配慮される。
【0027】
上記構成からなる噴射ノズルNは、現場における綿密な調整を必要とすることなく、スカムSに対して効率よく移動力を付与することができる特長を有している。また、スカムSが短時間でパイプスキマaの開口部5に移動させることができるので、スカムSの排出に伴う水の量も少なくて済み、省エネルギー化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。すなわち、上記構成からなる噴射ノズルNは、いわゆるエコ対策に大きく貢献することができる性質を有している。
【0028】
次に、上記構成からなる本実施の形態例のスカム除去装置におけるスカム除去動作を図3(a),(b)〜図5をも用いて説明する。今、沈殿池1が沈殿処理を行っていて、パイプスキマaが図3(a)及び図4に示されるように、開口部5が水面上に位置していると、パイプスキマaの上流側の水面上にはスカムSが生成されてくる。
【0029】
スカムSの生成がある程度の面積を示した時点で、パイプスキマaは、回転駆動機構4を介してパイプスキマaの開口部5の一部分が水中に位置するように(水中に没するように)回転させられるとともに、図示しないポンプを介して圧力水供給管6に圧力水が供給される(図3(b)及び図5参照)。この圧力水の供給により、噴射ノズルN,N…のスリット14から圧力水が噴射される。
【0030】
したがって、噴射ノズルN,N…からは、パイプスキマaの開口部5に向けて圧力水が噴射され、これにより、スカムSはパイプスキマaの開口部5に向けて移動がより促進される。そしてスカムSは、水に同伴されてパイプスキマaの開口部5からパイプスキマa内に吸い込まれる。
【0031】
回転駆動機構4を介してパイプスキマaの開口部5の一部分を水中に位置させるように回転させるタイミング及びその水中に位置させる時間は、沈殿池1に流入する水質等によって発生するスカムSが一様でないので実験により決められることが望ましい。即ち、装置運転の当初の数日間、一日に1回程度、手動で運転してスカムSの排出状態を観察して決めることが望ましい。以後、その観察結果に基いて自動運転が行われる。
【0032】
しかし、自動運転の開始制御は以上の例に限定されるものではなく、沈殿池1の所定表面にスカム検出センサを配置し、このスカム検出センサ配設位置にまでスカムが充満したことを検出して、あるいは複数の各種検出センサを配して自動的にスカム除去を行うようにしても良い。
【0033】
圧力水供給管6に圧力水を供給して噴射ノズルN,N…からパイプスキマaの開口部5に向けて圧力水を噴射するタイミングは、開口部5の一部分を水中に位置させるタイミングに同期するように制御される。なお、開口部5の一部分を水中に位置させるタイミング及び噴射ノズルN,N…から開口部5に向けて圧力水を噴射するタイミングは、自動運転時に限定されるものではなく、常に手動で行うようにしてもよい。
【0034】
パイプスキマa内に流入したスカムSは、パイプスキマa内を通過してスカムピット3に排出され、このスカムピット3内のスカムSは、図示しない汚泥処理機等の処理手段により処理される。また、沈殿処理水取出部2に排出された処理水は、生物処理等の次の処理手段側に送出される。
【0035】
上記構成からなるスカム除去装置は、噴射ノズルN,Nを用いてスカムSを短時間でパイプスキマaの開口部5に移動させることができるので、スカムSの排出に伴う水の量も少なくて済み、省エネルギー化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。すなわち、上記構成からなるスカム除去装置は、いわゆるエコ対策に大きく貢献することができる性質を有している。
【0036】
以上、本発明に係る噴射ノズルについて図面を参照して詳説したが、具体的な構成は、上記実施の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において設計変更等が可能である。
例えば、上述の例では、パイプ材Pの断面形状を円形としたが、これを矩形とすることもできる。
また、上述の例では、噴射ノズルN,N…を下水処理施設の最初沈殿池に適用したが、下水を沈殿池に分配する流入渠(導水渠)に適用してもよい。この場合、図1におけるパイプスキマaの設置部分に可動堰が設けられ、可動堰の噴射ノズルN,N…と反対側には、スカムピットが設けられる。
さらに、沈殿池1の水面上方に配した圧力水供給管6は、図1に示す例に限定されず、例えば、パイプスキマaの上流側に所定の間隔をおいて複数本の圧力水供給管を配し、それらの圧力水供給管に設けた噴射ノズルより圧力水を噴射する構成としてもよい。こうすることで、流水方向の距離が長い沈殿池の場合、スカムの流れをより効率的に促進できる。
【0037】
噴射ノズルN,N…の構成についても、図2(a)〜(d)に記載の構成に限定されない。例えば、圧力水が噴射される側に整流板を設けない構成としてもよい。図6(a)は、変形例に係るスカム除去装置用噴射ノズルの外観構成であり、図6(b)は、図6(a)のX3-X3線断面図である。図6(a),(b)に示す噴射ノズルN´は、図2(a)等に示す噴射ノズルNと同様、上板10a´と下板10b´、及び右側板11a´と左側板11b´で形成された圧力水室R´を有し、圧力水が噴射される側の反対側が幅広となるように形成されている。そして、圧力水室R´において、圧力水が噴射される側の端面に、所定水圧の水膜が噴射できるように長手方向が水面と平行する細長い開口(スリット)14´が形成されている。
【符号の説明】
【0038】
1……沈殿池(最初沈殿池)
2……沈殿処理水取出部
3……スカムピット
4……回転駆動機構
5……開口部
6……圧力水供給管
7……連結管
8……エルボ
N……噴射ノズル(スカム除去装置用噴射ノズル,スカム除去装置用噴射ノズル本体)
10a……上板
10b……下板
11a……右側板
11b……左側板
R……圧力水室
12……立板
13……整流板
14……スリット
a……パイプスキマ
P……パイプ材
S……スカム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカム除去装置のパイプスキマの開口部側に向けて水面上から圧力水を噴射するスカム除去装置用噴射ノズルであって、
前記スカム除去装置用噴射ノズル本体の内部に圧力水室を設けるとともに、その圧力水室に長手方向が水面と並行するように開口されたスリットを設け、そのスリットの開口の上辺には、圧力水が噴射される方向に向けて所定距離伸びる整流板を設けたことを特徴とするスカム除去装置用噴射ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のスカム除去装置用噴射ノズルにおいて、前記整流板は、平面形状は半円状を呈していることを特徴とするスカム除去装置用噴射ノズル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスカム除去装置用噴射ノズルにおいて、前記圧力水室のスリットと反対側の厚さはそのスリットの幅よりも十分に大きく、その長さはスリットの長さより小さく形成されていることを特徴とするスカム除去装置用噴射ノズル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のスカム除去装置用噴射ノズルにおいて、スカム除去装置は、下水処理施設の最初沈殿池又は導水渠に設けられることを特徴とするスカム除去装置用噴射ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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