スキャンシステムおよび情報処理装置
【課題】第三者のスキャンデータの閲覧を確実に回避し,信頼性が高いスキャンシステムおよび情報処理装置を提供すること。
【解決手段】スキャンシステム100は,複数のユーザアカウントをログオフすることなく切り替えて使用することができるPC1a内に複数のスキャンアプリ52a,52bが存在する。そして,本スキャンシステム100は,各ログインユーザの管理下にあるスキャンアプリのうち,どのスキャンアプリが画像データの取得を行うのかを指定する。すなわち,スキャン実行ユーザを固定し,当該ユーザのスキャンアプリのみがMFP2からの画像データを受け取る。また,固定されていないユーザのスキャンアプリは,スキャン通知を受け取ることができない。
【解決手段】スキャンシステム100は,複数のユーザアカウントをログオフすることなく切り替えて使用することができるPC1a内に複数のスキャンアプリ52a,52bが存在する。そして,本スキャンシステム100は,各ログインユーザの管理下にあるスキャンアプリのうち,どのスキャンアプリが画像データの取得を行うのかを指定する。すなわち,スキャン実行ユーザを固定し,当該ユーザのスキャンアプリのみがMFP2からの画像データを受け取る。また,固定されていないユーザのスキャンアプリは,スキャン通知を受け取ることができない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,スキャナ等の読取装置で読み取った画像情報を情報処理装置に送信するスキャンシステムに関する。さらに詳細には,複数のユーザアカウントをログオフすることなく切り替えて使用することができる情報処理装置およびその情報処理装置を有するスキャンシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,図1に示すように,パーソナルコンピュータ(PC)1a,1b,1cと,原稿を読み取るスキャナ機能を備えた複合機能周辺機器(MFP)2とをネットワーク40を介して接続し,MFP2で読み取ったデータを所定のPCに送信するスキャンシステムが構築されている。
【0003】
例えば,特許文献1に開示された画像データ送信システムでは,プッシュスキャン機能およびプルスキャン機能に関する技術が開示されている。「プッシュスキャン機能」とは,MPFの操作に基づいて原稿をスキャンし,そのスキャンデータをユーザの指定したPCに自動的に送信する機能のことである。一方,「プルスキャン機能」とは,PCの操作に基づいて原稿をスキャンし,そのスキャンデータをスキャン指示を送信したPCに自動的に送信する機能のことである。
【特許文献1】特開2004−215009号公報
【0004】
また,近年,ログオフすることなく複数のユーザアカウントを切り替えて使用することができるPCが実用化されている。例えば,アップル社製のPCでは,「ファストユーザスイッチ」というログオフすることなく複数のユーザによって1台のPCを共用できる機能が設けられている。また,マイクロソフト社のオペレーティングシステム(OS)であるMicrosoftWindows(登録商標)でも,ログオフすることなくユーザを切り替える機能が提供されている。
【0005】
このようなユーザ切替え機能を有するPCでは,ユーザアカウントごとにアプリケーションやその他のリソースを管理している。そして,あるユーザAがログインしていた状態でログオフすることなくユーザBがログインした場合,ユーザBのアカウントがアクティブな状態で動作し,ユーザAのアカウントがバックグラウンドで動作する。このとき,ユーザAが利用していたアプリケーションは終了しない。そして,ユーザAのアカウントに戻す際には,ユーザBのアカウントを終了させる必要がない。このように,アプリケーションを終了せずにアカウントを切り替えることで,迅速なユーザの切替えが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなユーザ切替え機能を有するPCがスキャンシステムを構成するPCとして接続されていると,次のような問題が生じる。すなわち,スキャナを備えるMFPからスキャンデータをPCに送信する際には,送信先であるPCを選択して送信する。その際,MFPとしては,PC側でどのユーザがアクティブになっているかは不明である。一方,PCとしては,アクティブとなっているユーザがデータを取得する。そのため,PC側でアクティブになっているユーザと,スキャナ側で操作するユーザとが異なる場合,スキャナを操作するユーザにとっては第三者にデータを送信してしまうことになり,スキャンデータを閲覧されてしまう。
【0007】
特許文献1に開示された画像データ送信システムでは,複数のPCからのスキャン命令の競合を回避し,ユーザにより指定されたPC以外のPCへスキャンデータが送信されることを防止している。しかし,PC内のアカウントが切り替えられる場合は,スキャナ側のユーザが自身の管理下であると想定したPCであるにも拘わらず,送信者と受信者とが合致しない状態が生じることが考えられる。
【0008】
本発明は,前記した従来のスキャンシステムが有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,第三者のスキャンデータの閲覧を確実に回避し,信頼性が高いスキャンシステムおよび情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決を目的としてなされたスキャンシステムは,原稿を読み取る読取手段と,読取手段からの指令を検知し,検知した旨を検知信号として通知する検知手段と,複数のログインユーザの各々の管理下にあり,検知信号に基づいて読取手段が読み取った画像データを取得する取得手段と,各ログインユーザの管理下にある取得手段のうち,画像データの取得を行う取得手段を指定する指定手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
本発明のスキャンシステムは,複数のユーザアカウントをログオフすることなく切り替えて使用することができる情報処理装置内に複数の取得手段が存在する。すなわち,本スキャンシステムの取得手段は,ログインユーザの各々の管理下にあり,読取手段からの指令を基に,読取手段が読み取った画像データを取得する。
【0011】
さらに,本発明のスキャンシステムは,指定手段によって,各ログインユーザの管理下にある取得手段のうち,どの取得手段が画像データの取得を行うのかを指定する。また,指定手段は,指定されていない取得手段への検知信号の通知を制限する。これにより,指定を受けた取得手段を管理するユーザのみが画像データを受け取ることになり,指定されていないユーザは画像データを受け取らない。よって,第三者への画像データの送信が防止される。
【0012】
また,本発明のスキャンシステムは,指定手段による指定が行われていることを報知する報知手段を備えることとするとよりよい。すなわち,他のユーザによって既に指定が行われていた場合に,その旨を報知する。報知する方法としては,例えばエラーメッセージ表示が適用可能である。これにより,ユーザが指定状態を把握でき,利便性が向上する。
【0013】
なお,報知手段が報知する内容には,指定手段によって指定された取得手段を管理するログインユーザの情報が含まれることとするとよりよい。ログインユーザの情報(例えば,ログインユーザ名やスキャン開始時間)を含むことで,どのユーザが指定を受けているかを把握でき,より利便性が向上する。
【0014】
また,本発明のスキャンシステムは,所定の条件を満たすことで指定手段の指定を解除することとするとよりよい。これにより,長期間,特定のユーザに占有されることを回避できる。所定の条件としては,例えばタイムアウト,スキャン回数,ユーザによるリセット指示が適用可能である。
【0015】
また,本発明のスキャンシステムは,複数のログインユーザの各々の管理下にあり,読取手段に読み取りを指示し,その指示に従って読み取られた画像データを取得する第2取得手段を備え,指定手段による指定が行われている場合に,第2取得手段の取得機能を制限することとするとよりよい。
【0016】
すなわち,本スキャンシステムは,第2読取手段として,読取手段に読み取りを指示し,その指示に従って読み取られた画像データを取得する機能(いわゆるプルスキャン機能)を有している。そして,指定手段による指定が行われている場合には,第2取得手段の取得機能が制限される。これにより,プルスキャン機能を有するシステムであっても,第三者への画像データの送信が防止される。
【0017】
また,本発明は,複数のユーザアカウントをログオフすることなく切り替えて使用する機能を有する情報処理装置であって,原稿の読み取り機能を備えた読取装置からの指令を検知し,検知した旨を検知信号として通知する検知手段と,複数のログインユーザの各々の管理下にあり,検知信号に基づいて読取装置が読み取った画像データを取得する取得手段と,各ログインユーザの管理下にある取得手段のうち,画像データの取得を行う取得手段を指定する指定手段とを備えることを特徴とする情報処理装置を含んでいる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,第三者のスキャンデータの閲覧を確実に回避し,信頼性が高いスキャンシステムおよび情報処理装置が実現している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下,本発明にかかるスキャンシステムを具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,スキャナ機能を備えたMFPと,スキャンデータの受け取り先であるPCとがネットワークで接続されたスキャンシステムに本発明を適用したものである。
【0020】
[スキャンシステムの構成]
本形態のスキャンシステム100は,図1に示すように,情報端末装置としてのPC1a,1b,1cと,原稿を読み取るスキャナ機能を有するMFP2とを備えている。スキャンシステム100では,各PC1a,1b,1cとMFP2とがLAN40のLANケーブルに接続されている。なお,スキャンシステム100を構成するMFPは1台に限るものではなく,複数台接続してもよい。また,スキャンシステム100を構成するPCも3台に限定するものではなく,何台接続してもよい。また,各PCとMFP2との接続は,有線LANケーブルに限らず,USBケーブル,その他のシリアル通信ケーブル,パラレル通信ケーブル,さらには無線LAN等の無線通信経路とすることも可能である。
【0021】
PC1aは,図2に示すように,各種演算処理を実行するCPU11と,当該PC1の起動時にCPU11が行う起動処理のプログラム(BIOS)等を記憶したROM12と,CPU11が各種処理を行う際に一時的な記憶領域として利用されるRAM13と,各種のプログラムやデータを記憶したハードディスクドライブ(HDD)14とを有している。
【0022】
また,PC1aは,キーボードやマウス等からなる操作部15と,液晶ディスプレイ等からなる表示部16と,MFP2との間で信号のやりとりを行うプリンタポートインターフェース17(パラレルインターフェース,USBインターフェース等)と,LAN,インターネット等のネットワークを介して信号のやりとりを行うネットワークインターフェース18とを有している。
【0023】
さらに,PC1aのHDD14には,オペレーティングシステム(OS)や,画像データを編集可能なアプリケーション(例えば,文書作成ソフト,作図ソフト,表計算ソフト,写真データ編集ソフト等)や,MFP2に印刷データを送信するプリンタドライバが記憶されている。また,プッシュスキャンやプルスキャンの実行時にMFP2から送られてくる画像データを処理するプログラムが記憶されている。なお,PC1bおよびPC1cについても同様の構成になっている。
【0024】
MFP2は,各種演算処理を実行するCPU21と,当該MFP2の起動時にCPU21が行う起動処理のプログラム等を記憶したROM22と,CPU21が各種処理を行う際に一時的な記憶領域として利用されるRAM23と,各種のプログラムやデータ等を記憶したハードディスクドライブ(HDD)24とを有している。
【0025】
さらに,MFP2のHDD24には,プッシュスキャンやプルスキャンの実行時に画像データを取得し,指定されたPCにその画像データを送信するプログラムが記憶されている。また,HDD24には,MFP2に接続されたPCやそのPCに組み込まれているアプリケーションソフト等の情報を格納する登録情報データベースが記憶されている。
【0026】
図3は,登録情報データベースの一例を示している。本形態の登録情報データベースは,MFP2に接続されているPCの名称またはPCが接続されているインターフェース(送信先)の名称,当該PCに組み込まれているアプリケーションソフト(メールソフトや画像編集ソフト等),当該PCのIPアドレス,当該PCに関するポート番号,画像データを保持する時間に関連するタイムアウト値から構成されている。
【0027】
また,MFP2は,当該MFP2の筐体外部に配設された複数のボタンからなる操作部25と,同じく筐体外部に配設された液晶表示パネル等からなる表示部26と,外部情報端末との間で信号のやりとりを行うプリンタポートインターフェース27(パラレルインターフェース,USBインターフェース等)と,LAN,インターネット等のネットワークを介して信号のやりとりを行うネットワークインターフェース28とを有している。
【0028】
操作部25には,プッシュスキャンの設定を行うためのスキャン設定ボタンや,プッシュスキャンにおける原稿の読み取りを開始する操作を行うためのスキャン開始ボタンや,原稿の読み取りを中止する操作を行うためのキャンセルボタン等が設けられている。また表示部26には,図4に示すように,プッシュスキャンの実行時に画像データを送信するPCを選択する選択画面が表示される。
【0029】
さらに,MFP2は,記録媒体としての用紙やOHPシートに画像を形成する印字部30を有している。印字部30は,電子写真方式,インクジェット方式,その他の一般的な画像形成方式を採用していればよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0030】
さらに,MFP2は,原稿を読み取り,読み取った原稿の画像データを作成するスキャナ部31を有している。原稿の読取方式としては,フラットベッド(原稿固定走査)方式と,ADF(Automatic Document Feeder)(原稿移動走査)方式とがあり,それぞれの読取方式を実現する機構を有している。なお,本実施例では,プッシュスキャンやプルスキャンの実行時,ADF方式にて原稿を読み取る構成として説明することとする。
【0031】
[スキャンシステムのアプリケーションの構成]
続いて,プッシュスキャン時のスキャンシステム100のアプリケーションの構成について説明する。
【0032】
スキャンシステム100では,図5に示すように,MFP2側に,スキャナ部31に原稿の読み取りを指示するスキャナアプリケーション310(以下,「スキャナアプリ310」とする)が組み込まれている。また,スキャナアプリ310は,スキャナ部31にて作成された画像データを指定されたPCに送信する機能を有している。
【0033】
また,スキャナアプリ310は,プッシュスキャンの設定を行うスキャン設定ボタン311,プッシュスキャンの中止を指示するスキャン中止ボタン312,プッシュスキャンの開始を指示するスキャン開始ボタン313の押下を監視している。そして,スキャン開始ボタン313が押下された際に,スキャン開始ボタン313が押下されたことを指定PCに通知する機能も兼ねている。
【0034】
一方,PC1aは,複数のユーザアカウントをログオフすることなく切り替えて使用することができるものであり,各ユーザアカウントごとにメモリ上の作業領域50a,50b,50cが割り当てられる。本形態では,ユーザAのユーザアカウントの作業領域を作業領域50a,ユーザBのユーザアカウントの作業領域を作業領域50b,ユーザCのユーザアカウントの作業領域を作業領域50cとする。
【0035】
そして,PC1aには,MFP2のスキャン開始ボタン313の押下を監視する監視アプリケーション(以下,「監視アプリ」とする)と,MFP2のスキャナアプリ310から送られる画像データを取得するスキャンアプリケーション(以下,「スキャンアプリ」とする)とが組み込まれている。以下,作業領域50aに読み出された監視アプリを監視アプリ51aとし,スキャンアプリをスキャンアプリ52aとする。また,作業領域50bに読み出された監視アプリを監視アプリ51bとし,スキャンアプリをスキャンアプリ52bとする。
【0036】
また,スキャンアプリ52a,52bは,プッシュスキャンないしプルスキャンについての各種の設定が可能である。例えば,プッシュスキャンの設定では,図6に示すように,スキャン回数やプッシュスキャン処理のタイムアウト値等を設定することができる。
【0037】
また,監視アプリ51a,51bは,ログイン時に各作業領域内に読み出され,作業領域内に常駐する。そして,スキャン開始ボタン313の押下を検知した際には,同一作業領域内のスキャンアプリ52a,52bにスキャン通知を行う。スキャンアプリは,同一作業領域内の監視アプリからのスキャン通知を受けた後にスキャン実行通知を行い,スキャナアプリ310に画像データの送信を要求する。
【0038】
本スキャンシステム100では,プッシュスキャンによってMFP2からの画像データを受け取る場合,スキャン実行通知を行うスキャンアプリを指定し,画像データを受け取るスキャンアプリを1つに専有させる(以下,スキャンアプリを指定し,画像データを受け取るスキャンアプリを1つに専有させることを,スキャンアプリを「固定」するという)。つまり,本スキャンシステム100では,固定されているスキャンアプリのみが画像データを受け取ることが可能になる。
【0039】
なお,図5中では,監視アプリ51a,スキャナアプリ310とスキャンアプリ52aとが直接データのやりとりを行っているが,このやりとりはネットワークI/F18,28を介しLAN40上で行われる。
【0040】
[プッシュスキャンの動作]
続いて,本スキャンシステム100によって行われるプッシュスキャン処理の動作シーケンスを,図7を参照しつつ説明する。なお,以下の説明では,PC1aにユーザAとユーザBとがログインしており,ユーザAがアクティブユーザであり,ユーザAがプッシュスキャンを行うものとする。また,ユーザAがプッシュスキャン動作を行う際には,スキャンアプリ52a,監視アプリ51a,スキャナアプリ310があらかじめ起動されているものとする。
【0041】
まず,プッシュスキャンを行う準備動作として,画像データを受け取るユーザ(以下,「スキャン実行ユーザ」とする)をユーザAに固定する。すなわち,画像データを受け取るスキャンアプリがユーザAのスキャンアプリ52aとなるように,監視アプリ51aに対して固定を要求する。具体的には,スキャンアプリ52aが監視アプリ51aに対してスキャン実行ユーザの固定通知を行う。
【0042】
監視アプリ51aでは,スキャン実行ユーザをユーザAに固定し,固定完了通知をスキャンアプリ52aに対して行う。これにより,スキャン実行ユーザがユーザAに固定され,ユーザA以外のユーザの画像データの取得動作を制限する。なお,他のユーザが固定状態であると,スキャン実行ユーザの固定に失敗し,ユーザAの画像データの取得動作が制限される。
【0043】
次に,プッシュスキャンの本動作として,MFP2のスキャナ部31のADFに原稿を載置する。原稿の載置は,スキャン実行ユーザの固定前であってもよい。そして,画像データの送信先を設定してスキャン開始ボタン313を押下する。スキャン開始ボタン313の押下の際,スキャナアプリ310は,PC1aに対してスキャンボタン通知を行う。これにより,PC1aの監視アプリ51aがスキャン開始ボタン313の押下を検知し,同一作業領域内のスキャンアプリ52aに対してスキャン通知を行う。
【0044】
スキャン通知を受けたスキャンアプリ52aは,スキャナアプリ310に対してスキャン実行通知を送る。スキャン実行通知を受けたスキャナアプリ310は,スキャナ部31に原稿を読み取らせ,原稿の画像データを作成する。スキャナ部31で作成された画像データは,PC1aに送られる。スキャンアプリ52aは,その画像データを取得する。
【0045】
画像データの読み取り終了後は,監視アプリ51aに対して固定解除通知を行う。これにより,ユーザAによる固定が解除され,ユーザA以外のユーザの画像データの取得動作が可能になる。
【0046】
[スキャンアプリの動作]
続いて,前述したスキャンシステム100のプッシュスキャン動作を実現する各アプリケーションの動作を詳細に説明する。はじめに,スキャンアプリ52aの動作について,図8のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0047】
まず,プッシュスキャンを行う準備動作の処理として,スキャナ部31でのスキャン回数を設定する(S101)。スキャン回数の設定は任意であり,設定がなければスキャン回数は1回となる。
【0048】
次に,監視アプリ51aに対して,スキャン実行ユーザの固定通知を行う(S102)。その後,監視アプリ51aから固定完了通知を受け取った場合(S103:YES)には,ユーザAの固定に成功したとして,S104の処理に移行する。
【0049】
一方,固定完了通知を受け取らなかった場合(S103:NO)には,エラーメッセージを表示する(S111)。固定完了通知を受け取らない理由としては,他のユーザが既にスキャン実行ユーザとして固定状態にあることが考えられる。その場合,図9に示すようなエラーメッセージを表示し,ユーザAに他のユーザが使用中であることを認知させる。この他の理由として,通信タイムアウトの場合には,その旨をエラーメッセージとして表示する。このように,固定に失敗すると,自身のプッシュスキャン動作が制限される。
【0050】
なお,図9中では「他のユーザ」が使用中であることを表示しているが,より具体的な情報をエラーメッセージとして表示してもよい。例えば,固定中通知とともにスキャン実行ユーザのユーザ名を受け取るとすると,そのユーザ名を表示してもよい。
【0051】
S104の処理以降は,プッシュスキャンの本動作となる。まず,監視アプリ51aからのスキャン通知を受信したか否かを判断する(S104)。スキャン通知を受信した場合(S104:YES)には,MFP2のスキャナアプリ310に対してスキャン実行通知を行う(S105)。その後,MFP2から送信される画像データを取得する(S106)。なお,所定時間内に画像データを受信しなかった場合には,タイムアウトとして固定解除指示を行う。その際,S111の処理と同様に,タイムアウトしたことをメッセージとして表示してもよい。スキャン通知を受信しなかった場合(S104:NO)には,S105およびS106の処理をバイパスし,S107の処理に移行する。
【0052】
次に,設定スキャン回数分の画像データを受信したか否かを判断する(S107)。設定スキャン回数分の画像データを受信した場合(S107:YES)には,監視アプリ51aに対して固定解除通知を行う(S109)。すなわち,ユーザAの固定状態の解除を指示し,他のユーザの管理下にあるスキャンアプリによる固定を可能にする。S109の処理後,本処理を終了する。
【0053】
一方,設定スキャン回数分の画像データを受信していない場合(S107:NO)には,強制的な固定解除指示が有るか否かを判断する(S108)。強制的な固定解除指示としては,例えばユーザAによるプッシュスキャンの中止指示が該当する。このような固定解除指示が有る場合(S108:YES)には,監視アプリ51aに対して固定解除通知を行い(S109),本処理を終了する。
【0054】
固定解除指示がない場合(S108:NO)には,S104の処理に戻ってスキャン通知を待つ。これにより,画像データの受信がS101の処理による設定スキャン回数分だけ行われる。
【0055】
すなわち,本スキャンアプリ52aは,スキャン実行ユーザとして固定されれば,監視アプリ51aからのスキャン通知の受信が可能になり,画像データを受け取ることができる。一方,スキャン実行ユーザとして固定されなければ,監視アプリ51aからのスキャン通知の受信ができず,画像データを受け取ることができない。
【0056】
[監視アプリの動作]
続いて,監視アプリ51aの動作について,図10のフローチャートを参照しつつ説明する。監視アプリ51aは,作業領域50aに常駐し,所定の間隔で図10に示す処理が実行される。
【0057】
まず,既に他のユーザによって固定されているか否かを判断する(S201)。固定中の場合(S201:YES)には,スキャンアプリ52aからの固定通知を受信しているか否かを判断する(S211)。固定通知を受信していなければ(S211:NO),本処理を終了する。固定通知を受信していれば(S211:YES),固定中であったことをスキャンアプリ52aに通知し(S212),本処理を終了する。なお,固定中通知には,固定中であることを認識させる信号の他,固定中のユーザの情報を通知してもよい。例えば,スキャン実行ユーザのユーザ名やそのユーザのスキャン開始時間等を通知してもよい。
【0058】
固定されていない場合(S201:NO)には,スキャンアプリ52aからの固定通知を受信しているか否かを判断する(S202)。固定通知を受信していなければ(S202:NO),本処理を終了する。
【0059】
固定通知を受信していれば(S202:YES),スキャン実行ユーザを,固定通知を送信したスキャンアプリ52aに対応したユーザであるユーザAに固定する。これにより,ユーザAがMFP2からの画像データを受け取ることが可能になる。すなわち,MFP2のスキャン開始ボタン313の監視を本監視アプリ51aが行うことになる。その後,固定完了通知をスキャンアプリ52aに対して行う(S204)。
【0060】
固定完了後は,MFP2のスキャナアプリ310からのスキャンボタン通知を受信したか否かを判断する(S205)。すなわち,MFP2のスキャン開始ボタン313が押下されたことを検知する。スキャンボタン通知を受信した場合(S205:YES)には,スキャンアプリ52aに対してスキャン通知を行う(S206)。スキャンボタン通知を受信していない場合(S205:NO)には,S206の処理をバイパスする。
【0061】
次に,スキャンアプリ52aからの固定解除通知を受信したか否かを判断する(S207)。固定解除通知を受信している場合(S207:YES)には,スキャン実行ユーザとしての固定を解除し(S209),本処理を終了する。すなわち,ユーザAの独占状態を解除し,他のユーザの固定を許可する。
【0062】
固定解除通知を受信していない場合(S207:NO)には,タイムアウトか否かを判断する(S208)。タイムアウトでなければ(S208:NO),S205の処理に戻ってスキャンボタン通知を待つ。タイムアウトであれば(S208:YES),固定を解除し(S209),本処理を終了する。
【0063】
監視アプリ51aは,ユーザAがスキャン実行ユーザとして固定状態になっている場合,仮にユーザBがアクティブなユーザになったとしても,図11に示すように,スキャン開始ボタン313の監視を本監視アプリ51aが継続する。さらには,ユーザBによる固定が拒否され,スキャンアプリ52bへのスキャン通知が送られない。これにより,ユーザAがスキャン実行ユーザとして固定状態になっていれば,ユーザAのみが画像データを受信できるようになる。よって,他のユーザへのデータの送信が抑制される。
【0064】
なお,固定方法としては幾つか考えられ,周知の技術によって実現される。例えば,固定されるユーザの情報が書き込まれるファイルを1つ用意する。そして,各監視アプリがそのファイルを読み書きすることで固定の可否を判断する。すなわち,スキャンアプリ52aから固定が要求されると,監視アプリ51aによってユーザAに関する情報が当該ファイルに書き込まれ,スキャンアプリ52aが固定中となる。このとき,他のユーザの作業領域の監視アプリにとっては,当該ファイルにアクセスすることでスキャンアプリ52aが固定中であることを認識できる。固定を解除する際には,当該ファイルからユーザAに関する情報を削除する。
【0065】
またこの他,例えば,ログインログオフを監視するログイン監視アプリケーション(ログインアプリ)を各作業領域に常駐させる。そして,各ログインアプリが監視アプリの動作をオンオフさせることで固定の可否を判断する。すなわち,ログインアプリは,監視アプリからの指示によって固定モードになる。そして,作業領域50a内のログインアプリは,通常モードでは,アクティブユーザがユーザA以外のユーザに切り替えられると,同作業領域内の監視アプリ51aをオフする(停止あるいは終了させる)。一方,固定モードでは,アクティブユーザがユーザA以外のユーザに切り替えられても,同作業領域内の監視アプリ51aをオフせず,また切り替え後のユーザ作業領域のログインアプリは,同作業領域の監視アプリをオンしない。これにより,他のユーザの作業領域のスキャンアプリにとっては,監視アプリにアクセスできなくなることで他のスキャンアプリが固定中であることを認識できる。固定を解除するとログインアプリを通常モードに戻す。
【0066】
[スキャナアプリの動作]
続いて,スキャナアプリ310の動作について,図12のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0067】
まず,送信先のPCを選択する(S301)。MFP2では,LAN40に接続する端末装置の一覧を有しており,接続するPCの選択ができる(図4参照)。本形態では,PC1aが選択される。
【0068】
次に,スキャン開始ボタン313の押下を検知し,PC1aに対してスキャンボタン通知を行う(S302)。このスキャン開始ボタン313の押下によってプッシュスキャンが開始される。そして,送り先に指定されていない他のPC(本形態ではPC1a以外のPC)からのスキャン要求が制限される。
【0069】
次に,スキャン実行通知を受信したか否かを判断する(S303)。スキャン実行通知を受信していなければ(S303:NO),タイムアウトか否かを判断する(S306)。タイムアウトでなければ(S306:NO),S303の処理に戻ってスキャン実行通知の受信を待つ。タイムアウトであれば(S306:YES),本処理を終了する。
【0070】
一方,スキャン実行通知を受信していれば(S303:YES),スキャナ部31での原稿の読み取りを指示する(S304)。そして,スキャンされた原稿の画像データを取得し,当該画像データを指定されたPCに送信する(S305)。スキャナアプリ310にとっては,送り先のPCのユーザまでは認識しておらず,PCからのスキャン実行通知に従って画像データをそのPCに送信する。S305の処理後,本処理を終了する。
【0071】
[プルスキャンの動作]
続いて,本スキャンシステム100によって行われるプルスキャンの動作について説明する。プルスキャンの際には,監視アプリ51aはMFP2に関与せず,スキャンアプリ52aとスキャナアプリ310との間でデータのやりとりを行う。スキャナアプリ310は,スキャン実行通知を待ってスキャンを実行し,指定されたPCに画像データを送信すること自体はプッシュスキャンの動作と同じである。
【0072】
以下,ユーザAがプルスキャンを行うとして,スキャンアプリ52aの動作を図13のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0073】
[スキャンアプリの動作]
まず,画像データの送り元の設定やタイムアウト値等が設定されたプルスキャンの動作設定を取り込む(S401)。その後,スキャン実行ユーザとして他のユーザが固定されているか否かを判断する(S402)。
【0074】
他のユーザに固定されている場合(S402:YES)には,エラー表示としてその旨を表示する(S405)。例えば,図9に示したようなエラーメッセージを表示し,ユーザAに他のユーザが使用中であることを認知させる。このように,スキャン実行ユーザが他のユーザに固定されていれば,プッシュスキャンと同様に自身のスキャンの実行が制限される。
【0075】
一方,他のユーザに固定されていない場合(S402:NO)には,MFP2のスキャナアプリ310に対してスキャン実行を通知する(S403)。その後,MFP2から送信される画像データを取得する(S404)。
【0076】
すなわち,プルスキャンにおいても,他のユーザがスキャン実行ユーザとして固定されている場合には,スキャン実行通知の送信が行われず,画像データを取得できない。これにより,例えば,ユーザAによるプッシュスキャン動作中に,ユーザBがプルスキャンを開始したとしても,ユーザAの画像データがユーザBに取得されることはない。
【0077】
以上詳細に説明したように本形態のスキャンシステム100は,複数のユーザアカウントをログオフすることなく切り替えて使用することができるPC1a内に複数のスキャンアプリ52a,52bが存在する。そして,本スキャンシステム100は,スキャンアプリと同一の作業領域内に存在する監視アプリからのスキャン通知に従って,MFP2のスキャナ部31が読み取った画像データを取得する機能を有している。
【0078】
そして,本発明のスキャンシステム100は,各ログインユーザの管理下にあるスキャンアプリのうち,どのスキャンアプリが画像データの取得を行うのかを指定する。すなわち,スキャン通知を行う監視アプリを固定(つまり,スキャン実行ユーザを固定)し,当該ユーザのスキャンアプリのみがMFP2からの画像データを受け取る。一方,固定されていないユーザのスキャンアプリは,スキャン通知を受け取ることができない。これにより,複数のユーザがログインしたPCであっても,固定されたスキャンアプリを管理するユーザのみが画像データを受け取ることになり,固定されていないユーザは画像データを受け取らない。つまり,第三者への画像データの送信が防止される。よって,第三者のスキャンデータの閲覧を確実に回避し,信頼性が高いスキャンシステムおよび情報処理装置が実現される。
【0079】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像形成装置としてはMFPに限るものではなく,コピー機,FAX,あるいはスキャナ機能を有するプリンタ等であってもよい。また,情報処理装置としてはPCに限るものではなく,ワークステーション,携帯情報端末装置等であってもよい。
【0080】
また,本実施の形態のスキャンシステムでは,各作業領域内に監視アプリが読み出されるが,これに限るものではない。例えば,スキャンアプリが組み込まれたPCとは別にMFPを監視する監視装置を設け,その監視装置に1つの監視アプリを組み込むこととしてもよい。また,1台のPCであっても,全ユーザアカウントの共通の作業領域を設けた場合に,その共通の作業領域に1つの監視アプリを読み出すこととしてもよい。
【0081】
また,スキャン実行ユーザが指定されている場合には,PC内の各スキャンアプリや別のダイアログにその旨を表示してもよい。これにより,スキャン実行ユーザ以外のユーザにスキャンアプリが固定中であることを喚起することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施の形態に係るスキャンシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係るスキャンシステム構成するPCおよびMFPの詳細構成を示すブロック図である。
【図3】MFPのHDDに登録される登録情報データベースの一例を示す図である。
【図4】MFPの表示部に表示される選択画面の一例を示す図である。
【図5】実施の形態に係るスキャンシステムのアプリケーションの構成を示すブロック図(アクティブ:ユーザA,固定:ユーザA)である。
【図6】スキャンアプリの設定ダイアログの一例を示す図である。
【図7】実施の形態に係るプッシュスキャンの動作シーケンスを示す図である。
【図8】実施の形態に係るスキャンアプリケーションの動作を示すフローチャートである。
【図9】固定失敗時におけるエラーメッセージの一例を示す図である。
【図10】実施の形態に係る監視アプリケーションの動作を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態に係るスキャンシステムのアプリケーションの構成を示すブロック図(アクティブ:ユーザB,固定:ユーザA)である。
【図12】実施の形態に係るスキャナアプリケーションの動作を示すフローチャートである。
【図13】プルスキャンを行った際のスキャンアプリケーションの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
1a パーソナルコンピュータ
2 複合機能周辺機器
31 スキャナ部
310 スキャナアプリケーション
313 スキャン開始ボタン
50a 作業領域
51a 監視アプリケーション
52a スキャンアプリケーション
【技術分野】
【0001】
本発明は,スキャナ等の読取装置で読み取った画像情報を情報処理装置に送信するスキャンシステムに関する。さらに詳細には,複数のユーザアカウントをログオフすることなく切り替えて使用することができる情報処理装置およびその情報処理装置を有するスキャンシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,図1に示すように,パーソナルコンピュータ(PC)1a,1b,1cと,原稿を読み取るスキャナ機能を備えた複合機能周辺機器(MFP)2とをネットワーク40を介して接続し,MFP2で読み取ったデータを所定のPCに送信するスキャンシステムが構築されている。
【0003】
例えば,特許文献1に開示された画像データ送信システムでは,プッシュスキャン機能およびプルスキャン機能に関する技術が開示されている。「プッシュスキャン機能」とは,MPFの操作に基づいて原稿をスキャンし,そのスキャンデータをユーザの指定したPCに自動的に送信する機能のことである。一方,「プルスキャン機能」とは,PCの操作に基づいて原稿をスキャンし,そのスキャンデータをスキャン指示を送信したPCに自動的に送信する機能のことである。
【特許文献1】特開2004−215009号公報
【0004】
また,近年,ログオフすることなく複数のユーザアカウントを切り替えて使用することができるPCが実用化されている。例えば,アップル社製のPCでは,「ファストユーザスイッチ」というログオフすることなく複数のユーザによって1台のPCを共用できる機能が設けられている。また,マイクロソフト社のオペレーティングシステム(OS)であるMicrosoftWindows(登録商標)でも,ログオフすることなくユーザを切り替える機能が提供されている。
【0005】
このようなユーザ切替え機能を有するPCでは,ユーザアカウントごとにアプリケーションやその他のリソースを管理している。そして,あるユーザAがログインしていた状態でログオフすることなくユーザBがログインした場合,ユーザBのアカウントがアクティブな状態で動作し,ユーザAのアカウントがバックグラウンドで動作する。このとき,ユーザAが利用していたアプリケーションは終了しない。そして,ユーザAのアカウントに戻す際には,ユーザBのアカウントを終了させる必要がない。このように,アプリケーションを終了せずにアカウントを切り替えることで,迅速なユーザの切替えが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなユーザ切替え機能を有するPCがスキャンシステムを構成するPCとして接続されていると,次のような問題が生じる。すなわち,スキャナを備えるMFPからスキャンデータをPCに送信する際には,送信先であるPCを選択して送信する。その際,MFPとしては,PC側でどのユーザがアクティブになっているかは不明である。一方,PCとしては,アクティブとなっているユーザがデータを取得する。そのため,PC側でアクティブになっているユーザと,スキャナ側で操作するユーザとが異なる場合,スキャナを操作するユーザにとっては第三者にデータを送信してしまうことになり,スキャンデータを閲覧されてしまう。
【0007】
特許文献1に開示された画像データ送信システムでは,複数のPCからのスキャン命令の競合を回避し,ユーザにより指定されたPC以外のPCへスキャンデータが送信されることを防止している。しかし,PC内のアカウントが切り替えられる場合は,スキャナ側のユーザが自身の管理下であると想定したPCであるにも拘わらず,送信者と受信者とが合致しない状態が生じることが考えられる。
【0008】
本発明は,前記した従来のスキャンシステムが有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,第三者のスキャンデータの閲覧を確実に回避し,信頼性が高いスキャンシステムおよび情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決を目的としてなされたスキャンシステムは,原稿を読み取る読取手段と,読取手段からの指令を検知し,検知した旨を検知信号として通知する検知手段と,複数のログインユーザの各々の管理下にあり,検知信号に基づいて読取手段が読み取った画像データを取得する取得手段と,各ログインユーザの管理下にある取得手段のうち,画像データの取得を行う取得手段を指定する指定手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
本発明のスキャンシステムは,複数のユーザアカウントをログオフすることなく切り替えて使用することができる情報処理装置内に複数の取得手段が存在する。すなわち,本スキャンシステムの取得手段は,ログインユーザの各々の管理下にあり,読取手段からの指令を基に,読取手段が読み取った画像データを取得する。
【0011】
さらに,本発明のスキャンシステムは,指定手段によって,各ログインユーザの管理下にある取得手段のうち,どの取得手段が画像データの取得を行うのかを指定する。また,指定手段は,指定されていない取得手段への検知信号の通知を制限する。これにより,指定を受けた取得手段を管理するユーザのみが画像データを受け取ることになり,指定されていないユーザは画像データを受け取らない。よって,第三者への画像データの送信が防止される。
【0012】
また,本発明のスキャンシステムは,指定手段による指定が行われていることを報知する報知手段を備えることとするとよりよい。すなわち,他のユーザによって既に指定が行われていた場合に,その旨を報知する。報知する方法としては,例えばエラーメッセージ表示が適用可能である。これにより,ユーザが指定状態を把握でき,利便性が向上する。
【0013】
なお,報知手段が報知する内容には,指定手段によって指定された取得手段を管理するログインユーザの情報が含まれることとするとよりよい。ログインユーザの情報(例えば,ログインユーザ名やスキャン開始時間)を含むことで,どのユーザが指定を受けているかを把握でき,より利便性が向上する。
【0014】
また,本発明のスキャンシステムは,所定の条件を満たすことで指定手段の指定を解除することとするとよりよい。これにより,長期間,特定のユーザに占有されることを回避できる。所定の条件としては,例えばタイムアウト,スキャン回数,ユーザによるリセット指示が適用可能である。
【0015】
また,本発明のスキャンシステムは,複数のログインユーザの各々の管理下にあり,読取手段に読み取りを指示し,その指示に従って読み取られた画像データを取得する第2取得手段を備え,指定手段による指定が行われている場合に,第2取得手段の取得機能を制限することとするとよりよい。
【0016】
すなわち,本スキャンシステムは,第2読取手段として,読取手段に読み取りを指示し,その指示に従って読み取られた画像データを取得する機能(いわゆるプルスキャン機能)を有している。そして,指定手段による指定が行われている場合には,第2取得手段の取得機能が制限される。これにより,プルスキャン機能を有するシステムであっても,第三者への画像データの送信が防止される。
【0017】
また,本発明は,複数のユーザアカウントをログオフすることなく切り替えて使用する機能を有する情報処理装置であって,原稿の読み取り機能を備えた読取装置からの指令を検知し,検知した旨を検知信号として通知する検知手段と,複数のログインユーザの各々の管理下にあり,検知信号に基づいて読取装置が読み取った画像データを取得する取得手段と,各ログインユーザの管理下にある取得手段のうち,画像データの取得を行う取得手段を指定する指定手段とを備えることを特徴とする情報処理装置を含んでいる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,第三者のスキャンデータの閲覧を確実に回避し,信頼性が高いスキャンシステムおよび情報処理装置が実現している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下,本発明にかかるスキャンシステムを具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,スキャナ機能を備えたMFPと,スキャンデータの受け取り先であるPCとがネットワークで接続されたスキャンシステムに本発明を適用したものである。
【0020】
[スキャンシステムの構成]
本形態のスキャンシステム100は,図1に示すように,情報端末装置としてのPC1a,1b,1cと,原稿を読み取るスキャナ機能を有するMFP2とを備えている。スキャンシステム100では,各PC1a,1b,1cとMFP2とがLAN40のLANケーブルに接続されている。なお,スキャンシステム100を構成するMFPは1台に限るものではなく,複数台接続してもよい。また,スキャンシステム100を構成するPCも3台に限定するものではなく,何台接続してもよい。また,各PCとMFP2との接続は,有線LANケーブルに限らず,USBケーブル,その他のシリアル通信ケーブル,パラレル通信ケーブル,さらには無線LAN等の無線通信経路とすることも可能である。
【0021】
PC1aは,図2に示すように,各種演算処理を実行するCPU11と,当該PC1の起動時にCPU11が行う起動処理のプログラム(BIOS)等を記憶したROM12と,CPU11が各種処理を行う際に一時的な記憶領域として利用されるRAM13と,各種のプログラムやデータを記憶したハードディスクドライブ(HDD)14とを有している。
【0022】
また,PC1aは,キーボードやマウス等からなる操作部15と,液晶ディスプレイ等からなる表示部16と,MFP2との間で信号のやりとりを行うプリンタポートインターフェース17(パラレルインターフェース,USBインターフェース等)と,LAN,インターネット等のネットワークを介して信号のやりとりを行うネットワークインターフェース18とを有している。
【0023】
さらに,PC1aのHDD14には,オペレーティングシステム(OS)や,画像データを編集可能なアプリケーション(例えば,文書作成ソフト,作図ソフト,表計算ソフト,写真データ編集ソフト等)や,MFP2に印刷データを送信するプリンタドライバが記憶されている。また,プッシュスキャンやプルスキャンの実行時にMFP2から送られてくる画像データを処理するプログラムが記憶されている。なお,PC1bおよびPC1cについても同様の構成になっている。
【0024】
MFP2は,各種演算処理を実行するCPU21と,当該MFP2の起動時にCPU21が行う起動処理のプログラム等を記憶したROM22と,CPU21が各種処理を行う際に一時的な記憶領域として利用されるRAM23と,各種のプログラムやデータ等を記憶したハードディスクドライブ(HDD)24とを有している。
【0025】
さらに,MFP2のHDD24には,プッシュスキャンやプルスキャンの実行時に画像データを取得し,指定されたPCにその画像データを送信するプログラムが記憶されている。また,HDD24には,MFP2に接続されたPCやそのPCに組み込まれているアプリケーションソフト等の情報を格納する登録情報データベースが記憶されている。
【0026】
図3は,登録情報データベースの一例を示している。本形態の登録情報データベースは,MFP2に接続されているPCの名称またはPCが接続されているインターフェース(送信先)の名称,当該PCに組み込まれているアプリケーションソフト(メールソフトや画像編集ソフト等),当該PCのIPアドレス,当該PCに関するポート番号,画像データを保持する時間に関連するタイムアウト値から構成されている。
【0027】
また,MFP2は,当該MFP2の筐体外部に配設された複数のボタンからなる操作部25と,同じく筐体外部に配設された液晶表示パネル等からなる表示部26と,外部情報端末との間で信号のやりとりを行うプリンタポートインターフェース27(パラレルインターフェース,USBインターフェース等)と,LAN,インターネット等のネットワークを介して信号のやりとりを行うネットワークインターフェース28とを有している。
【0028】
操作部25には,プッシュスキャンの設定を行うためのスキャン設定ボタンや,プッシュスキャンにおける原稿の読み取りを開始する操作を行うためのスキャン開始ボタンや,原稿の読み取りを中止する操作を行うためのキャンセルボタン等が設けられている。また表示部26には,図4に示すように,プッシュスキャンの実行時に画像データを送信するPCを選択する選択画面が表示される。
【0029】
さらに,MFP2は,記録媒体としての用紙やOHPシートに画像を形成する印字部30を有している。印字部30は,電子写真方式,インクジェット方式,その他の一般的な画像形成方式を採用していればよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0030】
さらに,MFP2は,原稿を読み取り,読み取った原稿の画像データを作成するスキャナ部31を有している。原稿の読取方式としては,フラットベッド(原稿固定走査)方式と,ADF(Automatic Document Feeder)(原稿移動走査)方式とがあり,それぞれの読取方式を実現する機構を有している。なお,本実施例では,プッシュスキャンやプルスキャンの実行時,ADF方式にて原稿を読み取る構成として説明することとする。
【0031】
[スキャンシステムのアプリケーションの構成]
続いて,プッシュスキャン時のスキャンシステム100のアプリケーションの構成について説明する。
【0032】
スキャンシステム100では,図5に示すように,MFP2側に,スキャナ部31に原稿の読み取りを指示するスキャナアプリケーション310(以下,「スキャナアプリ310」とする)が組み込まれている。また,スキャナアプリ310は,スキャナ部31にて作成された画像データを指定されたPCに送信する機能を有している。
【0033】
また,スキャナアプリ310は,プッシュスキャンの設定を行うスキャン設定ボタン311,プッシュスキャンの中止を指示するスキャン中止ボタン312,プッシュスキャンの開始を指示するスキャン開始ボタン313の押下を監視している。そして,スキャン開始ボタン313が押下された際に,スキャン開始ボタン313が押下されたことを指定PCに通知する機能も兼ねている。
【0034】
一方,PC1aは,複数のユーザアカウントをログオフすることなく切り替えて使用することができるものであり,各ユーザアカウントごとにメモリ上の作業領域50a,50b,50cが割り当てられる。本形態では,ユーザAのユーザアカウントの作業領域を作業領域50a,ユーザBのユーザアカウントの作業領域を作業領域50b,ユーザCのユーザアカウントの作業領域を作業領域50cとする。
【0035】
そして,PC1aには,MFP2のスキャン開始ボタン313の押下を監視する監視アプリケーション(以下,「監視アプリ」とする)と,MFP2のスキャナアプリ310から送られる画像データを取得するスキャンアプリケーション(以下,「スキャンアプリ」とする)とが組み込まれている。以下,作業領域50aに読み出された監視アプリを監視アプリ51aとし,スキャンアプリをスキャンアプリ52aとする。また,作業領域50bに読み出された監視アプリを監視アプリ51bとし,スキャンアプリをスキャンアプリ52bとする。
【0036】
また,スキャンアプリ52a,52bは,プッシュスキャンないしプルスキャンについての各種の設定が可能である。例えば,プッシュスキャンの設定では,図6に示すように,スキャン回数やプッシュスキャン処理のタイムアウト値等を設定することができる。
【0037】
また,監視アプリ51a,51bは,ログイン時に各作業領域内に読み出され,作業領域内に常駐する。そして,スキャン開始ボタン313の押下を検知した際には,同一作業領域内のスキャンアプリ52a,52bにスキャン通知を行う。スキャンアプリは,同一作業領域内の監視アプリからのスキャン通知を受けた後にスキャン実行通知を行い,スキャナアプリ310に画像データの送信を要求する。
【0038】
本スキャンシステム100では,プッシュスキャンによってMFP2からの画像データを受け取る場合,スキャン実行通知を行うスキャンアプリを指定し,画像データを受け取るスキャンアプリを1つに専有させる(以下,スキャンアプリを指定し,画像データを受け取るスキャンアプリを1つに専有させることを,スキャンアプリを「固定」するという)。つまり,本スキャンシステム100では,固定されているスキャンアプリのみが画像データを受け取ることが可能になる。
【0039】
なお,図5中では,監視アプリ51a,スキャナアプリ310とスキャンアプリ52aとが直接データのやりとりを行っているが,このやりとりはネットワークI/F18,28を介しLAN40上で行われる。
【0040】
[プッシュスキャンの動作]
続いて,本スキャンシステム100によって行われるプッシュスキャン処理の動作シーケンスを,図7を参照しつつ説明する。なお,以下の説明では,PC1aにユーザAとユーザBとがログインしており,ユーザAがアクティブユーザであり,ユーザAがプッシュスキャンを行うものとする。また,ユーザAがプッシュスキャン動作を行う際には,スキャンアプリ52a,監視アプリ51a,スキャナアプリ310があらかじめ起動されているものとする。
【0041】
まず,プッシュスキャンを行う準備動作として,画像データを受け取るユーザ(以下,「スキャン実行ユーザ」とする)をユーザAに固定する。すなわち,画像データを受け取るスキャンアプリがユーザAのスキャンアプリ52aとなるように,監視アプリ51aに対して固定を要求する。具体的には,スキャンアプリ52aが監視アプリ51aに対してスキャン実行ユーザの固定通知を行う。
【0042】
監視アプリ51aでは,スキャン実行ユーザをユーザAに固定し,固定完了通知をスキャンアプリ52aに対して行う。これにより,スキャン実行ユーザがユーザAに固定され,ユーザA以外のユーザの画像データの取得動作を制限する。なお,他のユーザが固定状態であると,スキャン実行ユーザの固定に失敗し,ユーザAの画像データの取得動作が制限される。
【0043】
次に,プッシュスキャンの本動作として,MFP2のスキャナ部31のADFに原稿を載置する。原稿の載置は,スキャン実行ユーザの固定前であってもよい。そして,画像データの送信先を設定してスキャン開始ボタン313を押下する。スキャン開始ボタン313の押下の際,スキャナアプリ310は,PC1aに対してスキャンボタン通知を行う。これにより,PC1aの監視アプリ51aがスキャン開始ボタン313の押下を検知し,同一作業領域内のスキャンアプリ52aに対してスキャン通知を行う。
【0044】
スキャン通知を受けたスキャンアプリ52aは,スキャナアプリ310に対してスキャン実行通知を送る。スキャン実行通知を受けたスキャナアプリ310は,スキャナ部31に原稿を読み取らせ,原稿の画像データを作成する。スキャナ部31で作成された画像データは,PC1aに送られる。スキャンアプリ52aは,その画像データを取得する。
【0045】
画像データの読み取り終了後は,監視アプリ51aに対して固定解除通知を行う。これにより,ユーザAによる固定が解除され,ユーザA以外のユーザの画像データの取得動作が可能になる。
【0046】
[スキャンアプリの動作]
続いて,前述したスキャンシステム100のプッシュスキャン動作を実現する各アプリケーションの動作を詳細に説明する。はじめに,スキャンアプリ52aの動作について,図8のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0047】
まず,プッシュスキャンを行う準備動作の処理として,スキャナ部31でのスキャン回数を設定する(S101)。スキャン回数の設定は任意であり,設定がなければスキャン回数は1回となる。
【0048】
次に,監視アプリ51aに対して,スキャン実行ユーザの固定通知を行う(S102)。その後,監視アプリ51aから固定完了通知を受け取った場合(S103:YES)には,ユーザAの固定に成功したとして,S104の処理に移行する。
【0049】
一方,固定完了通知を受け取らなかった場合(S103:NO)には,エラーメッセージを表示する(S111)。固定完了通知を受け取らない理由としては,他のユーザが既にスキャン実行ユーザとして固定状態にあることが考えられる。その場合,図9に示すようなエラーメッセージを表示し,ユーザAに他のユーザが使用中であることを認知させる。この他の理由として,通信タイムアウトの場合には,その旨をエラーメッセージとして表示する。このように,固定に失敗すると,自身のプッシュスキャン動作が制限される。
【0050】
なお,図9中では「他のユーザ」が使用中であることを表示しているが,より具体的な情報をエラーメッセージとして表示してもよい。例えば,固定中通知とともにスキャン実行ユーザのユーザ名を受け取るとすると,そのユーザ名を表示してもよい。
【0051】
S104の処理以降は,プッシュスキャンの本動作となる。まず,監視アプリ51aからのスキャン通知を受信したか否かを判断する(S104)。スキャン通知を受信した場合(S104:YES)には,MFP2のスキャナアプリ310に対してスキャン実行通知を行う(S105)。その後,MFP2から送信される画像データを取得する(S106)。なお,所定時間内に画像データを受信しなかった場合には,タイムアウトとして固定解除指示を行う。その際,S111の処理と同様に,タイムアウトしたことをメッセージとして表示してもよい。スキャン通知を受信しなかった場合(S104:NO)には,S105およびS106の処理をバイパスし,S107の処理に移行する。
【0052】
次に,設定スキャン回数分の画像データを受信したか否かを判断する(S107)。設定スキャン回数分の画像データを受信した場合(S107:YES)には,監視アプリ51aに対して固定解除通知を行う(S109)。すなわち,ユーザAの固定状態の解除を指示し,他のユーザの管理下にあるスキャンアプリによる固定を可能にする。S109の処理後,本処理を終了する。
【0053】
一方,設定スキャン回数分の画像データを受信していない場合(S107:NO)には,強制的な固定解除指示が有るか否かを判断する(S108)。強制的な固定解除指示としては,例えばユーザAによるプッシュスキャンの中止指示が該当する。このような固定解除指示が有る場合(S108:YES)には,監視アプリ51aに対して固定解除通知を行い(S109),本処理を終了する。
【0054】
固定解除指示がない場合(S108:NO)には,S104の処理に戻ってスキャン通知を待つ。これにより,画像データの受信がS101の処理による設定スキャン回数分だけ行われる。
【0055】
すなわち,本スキャンアプリ52aは,スキャン実行ユーザとして固定されれば,監視アプリ51aからのスキャン通知の受信が可能になり,画像データを受け取ることができる。一方,スキャン実行ユーザとして固定されなければ,監視アプリ51aからのスキャン通知の受信ができず,画像データを受け取ることができない。
【0056】
[監視アプリの動作]
続いて,監視アプリ51aの動作について,図10のフローチャートを参照しつつ説明する。監視アプリ51aは,作業領域50aに常駐し,所定の間隔で図10に示す処理が実行される。
【0057】
まず,既に他のユーザによって固定されているか否かを判断する(S201)。固定中の場合(S201:YES)には,スキャンアプリ52aからの固定通知を受信しているか否かを判断する(S211)。固定通知を受信していなければ(S211:NO),本処理を終了する。固定通知を受信していれば(S211:YES),固定中であったことをスキャンアプリ52aに通知し(S212),本処理を終了する。なお,固定中通知には,固定中であることを認識させる信号の他,固定中のユーザの情報を通知してもよい。例えば,スキャン実行ユーザのユーザ名やそのユーザのスキャン開始時間等を通知してもよい。
【0058】
固定されていない場合(S201:NO)には,スキャンアプリ52aからの固定通知を受信しているか否かを判断する(S202)。固定通知を受信していなければ(S202:NO),本処理を終了する。
【0059】
固定通知を受信していれば(S202:YES),スキャン実行ユーザを,固定通知を送信したスキャンアプリ52aに対応したユーザであるユーザAに固定する。これにより,ユーザAがMFP2からの画像データを受け取ることが可能になる。すなわち,MFP2のスキャン開始ボタン313の監視を本監視アプリ51aが行うことになる。その後,固定完了通知をスキャンアプリ52aに対して行う(S204)。
【0060】
固定完了後は,MFP2のスキャナアプリ310からのスキャンボタン通知を受信したか否かを判断する(S205)。すなわち,MFP2のスキャン開始ボタン313が押下されたことを検知する。スキャンボタン通知を受信した場合(S205:YES)には,スキャンアプリ52aに対してスキャン通知を行う(S206)。スキャンボタン通知を受信していない場合(S205:NO)には,S206の処理をバイパスする。
【0061】
次に,スキャンアプリ52aからの固定解除通知を受信したか否かを判断する(S207)。固定解除通知を受信している場合(S207:YES)には,スキャン実行ユーザとしての固定を解除し(S209),本処理を終了する。すなわち,ユーザAの独占状態を解除し,他のユーザの固定を許可する。
【0062】
固定解除通知を受信していない場合(S207:NO)には,タイムアウトか否かを判断する(S208)。タイムアウトでなければ(S208:NO),S205の処理に戻ってスキャンボタン通知を待つ。タイムアウトであれば(S208:YES),固定を解除し(S209),本処理を終了する。
【0063】
監視アプリ51aは,ユーザAがスキャン実行ユーザとして固定状態になっている場合,仮にユーザBがアクティブなユーザになったとしても,図11に示すように,スキャン開始ボタン313の監視を本監視アプリ51aが継続する。さらには,ユーザBによる固定が拒否され,スキャンアプリ52bへのスキャン通知が送られない。これにより,ユーザAがスキャン実行ユーザとして固定状態になっていれば,ユーザAのみが画像データを受信できるようになる。よって,他のユーザへのデータの送信が抑制される。
【0064】
なお,固定方法としては幾つか考えられ,周知の技術によって実現される。例えば,固定されるユーザの情報が書き込まれるファイルを1つ用意する。そして,各監視アプリがそのファイルを読み書きすることで固定の可否を判断する。すなわち,スキャンアプリ52aから固定が要求されると,監視アプリ51aによってユーザAに関する情報が当該ファイルに書き込まれ,スキャンアプリ52aが固定中となる。このとき,他のユーザの作業領域の監視アプリにとっては,当該ファイルにアクセスすることでスキャンアプリ52aが固定中であることを認識できる。固定を解除する際には,当該ファイルからユーザAに関する情報を削除する。
【0065】
またこの他,例えば,ログインログオフを監視するログイン監視アプリケーション(ログインアプリ)を各作業領域に常駐させる。そして,各ログインアプリが監視アプリの動作をオンオフさせることで固定の可否を判断する。すなわち,ログインアプリは,監視アプリからの指示によって固定モードになる。そして,作業領域50a内のログインアプリは,通常モードでは,アクティブユーザがユーザA以外のユーザに切り替えられると,同作業領域内の監視アプリ51aをオフする(停止あるいは終了させる)。一方,固定モードでは,アクティブユーザがユーザA以外のユーザに切り替えられても,同作業領域内の監視アプリ51aをオフせず,また切り替え後のユーザ作業領域のログインアプリは,同作業領域の監視アプリをオンしない。これにより,他のユーザの作業領域のスキャンアプリにとっては,監視アプリにアクセスできなくなることで他のスキャンアプリが固定中であることを認識できる。固定を解除するとログインアプリを通常モードに戻す。
【0066】
[スキャナアプリの動作]
続いて,スキャナアプリ310の動作について,図12のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0067】
まず,送信先のPCを選択する(S301)。MFP2では,LAN40に接続する端末装置の一覧を有しており,接続するPCの選択ができる(図4参照)。本形態では,PC1aが選択される。
【0068】
次に,スキャン開始ボタン313の押下を検知し,PC1aに対してスキャンボタン通知を行う(S302)。このスキャン開始ボタン313の押下によってプッシュスキャンが開始される。そして,送り先に指定されていない他のPC(本形態ではPC1a以外のPC)からのスキャン要求が制限される。
【0069】
次に,スキャン実行通知を受信したか否かを判断する(S303)。スキャン実行通知を受信していなければ(S303:NO),タイムアウトか否かを判断する(S306)。タイムアウトでなければ(S306:NO),S303の処理に戻ってスキャン実行通知の受信を待つ。タイムアウトであれば(S306:YES),本処理を終了する。
【0070】
一方,スキャン実行通知を受信していれば(S303:YES),スキャナ部31での原稿の読み取りを指示する(S304)。そして,スキャンされた原稿の画像データを取得し,当該画像データを指定されたPCに送信する(S305)。スキャナアプリ310にとっては,送り先のPCのユーザまでは認識しておらず,PCからのスキャン実行通知に従って画像データをそのPCに送信する。S305の処理後,本処理を終了する。
【0071】
[プルスキャンの動作]
続いて,本スキャンシステム100によって行われるプルスキャンの動作について説明する。プルスキャンの際には,監視アプリ51aはMFP2に関与せず,スキャンアプリ52aとスキャナアプリ310との間でデータのやりとりを行う。スキャナアプリ310は,スキャン実行通知を待ってスキャンを実行し,指定されたPCに画像データを送信すること自体はプッシュスキャンの動作と同じである。
【0072】
以下,ユーザAがプルスキャンを行うとして,スキャンアプリ52aの動作を図13のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0073】
[スキャンアプリの動作]
まず,画像データの送り元の設定やタイムアウト値等が設定されたプルスキャンの動作設定を取り込む(S401)。その後,スキャン実行ユーザとして他のユーザが固定されているか否かを判断する(S402)。
【0074】
他のユーザに固定されている場合(S402:YES)には,エラー表示としてその旨を表示する(S405)。例えば,図9に示したようなエラーメッセージを表示し,ユーザAに他のユーザが使用中であることを認知させる。このように,スキャン実行ユーザが他のユーザに固定されていれば,プッシュスキャンと同様に自身のスキャンの実行が制限される。
【0075】
一方,他のユーザに固定されていない場合(S402:NO)には,MFP2のスキャナアプリ310に対してスキャン実行を通知する(S403)。その後,MFP2から送信される画像データを取得する(S404)。
【0076】
すなわち,プルスキャンにおいても,他のユーザがスキャン実行ユーザとして固定されている場合には,スキャン実行通知の送信が行われず,画像データを取得できない。これにより,例えば,ユーザAによるプッシュスキャン動作中に,ユーザBがプルスキャンを開始したとしても,ユーザAの画像データがユーザBに取得されることはない。
【0077】
以上詳細に説明したように本形態のスキャンシステム100は,複数のユーザアカウントをログオフすることなく切り替えて使用することができるPC1a内に複数のスキャンアプリ52a,52bが存在する。そして,本スキャンシステム100は,スキャンアプリと同一の作業領域内に存在する監視アプリからのスキャン通知に従って,MFP2のスキャナ部31が読み取った画像データを取得する機能を有している。
【0078】
そして,本発明のスキャンシステム100は,各ログインユーザの管理下にあるスキャンアプリのうち,どのスキャンアプリが画像データの取得を行うのかを指定する。すなわち,スキャン通知を行う監視アプリを固定(つまり,スキャン実行ユーザを固定)し,当該ユーザのスキャンアプリのみがMFP2からの画像データを受け取る。一方,固定されていないユーザのスキャンアプリは,スキャン通知を受け取ることができない。これにより,複数のユーザがログインしたPCであっても,固定されたスキャンアプリを管理するユーザのみが画像データを受け取ることになり,固定されていないユーザは画像データを受け取らない。つまり,第三者への画像データの送信が防止される。よって,第三者のスキャンデータの閲覧を確実に回避し,信頼性が高いスキャンシステムおよび情報処理装置が実現される。
【0079】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像形成装置としてはMFPに限るものではなく,コピー機,FAX,あるいはスキャナ機能を有するプリンタ等であってもよい。また,情報処理装置としてはPCに限るものではなく,ワークステーション,携帯情報端末装置等であってもよい。
【0080】
また,本実施の形態のスキャンシステムでは,各作業領域内に監視アプリが読み出されるが,これに限るものではない。例えば,スキャンアプリが組み込まれたPCとは別にMFPを監視する監視装置を設け,その監視装置に1つの監視アプリを組み込むこととしてもよい。また,1台のPCであっても,全ユーザアカウントの共通の作業領域を設けた場合に,その共通の作業領域に1つの監視アプリを読み出すこととしてもよい。
【0081】
また,スキャン実行ユーザが指定されている場合には,PC内の各スキャンアプリや別のダイアログにその旨を表示してもよい。これにより,スキャン実行ユーザ以外のユーザにスキャンアプリが固定中であることを喚起することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施の形態に係るスキャンシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係るスキャンシステム構成するPCおよびMFPの詳細構成を示すブロック図である。
【図3】MFPのHDDに登録される登録情報データベースの一例を示す図である。
【図4】MFPの表示部に表示される選択画面の一例を示す図である。
【図5】実施の形態に係るスキャンシステムのアプリケーションの構成を示すブロック図(アクティブ:ユーザA,固定:ユーザA)である。
【図6】スキャンアプリの設定ダイアログの一例を示す図である。
【図7】実施の形態に係るプッシュスキャンの動作シーケンスを示す図である。
【図8】実施の形態に係るスキャンアプリケーションの動作を示すフローチャートである。
【図9】固定失敗時におけるエラーメッセージの一例を示す図である。
【図10】実施の形態に係る監視アプリケーションの動作を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態に係るスキャンシステムのアプリケーションの構成を示すブロック図(アクティブ:ユーザB,固定:ユーザA)である。
【図12】実施の形態に係るスキャナアプリケーションの動作を示すフローチャートである。
【図13】プルスキャンを行った際のスキャンアプリケーションの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
1a パーソナルコンピュータ
2 複合機能周辺機器
31 スキャナ部
310 スキャナアプリケーション
313 スキャン開始ボタン
50a 作業領域
51a 監視アプリケーション
52a スキャンアプリケーション
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取る読取手段と,
前記読取手段からの指令を検知し,検知した旨を検知信号として通知する検知手段と,
複数のログインユーザの各々の管理下にあり,前記検知信号に基づいて前記読取手段が読み取った画像データを取得する取得手段と,
各ログインユーザの管理下にある取得手段のうち,前記画像データの取得を行う取得手段を指定する指定手段とを備えることを特徴とするスキャンシステム。
【請求項2】
請求項1に記載するスキャンシステムにおいて,
前記指定手段は,指定されていない取得手段への,前記検知信号の通知を制限することを特徴とするスキャンシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載するスキャンシステムにおいて,
前記指定手段による指定が行われていることを報知する報知手段を備えることを特徴とするスキャンシステム。
【請求項4】
請求項3に記載するスキャンシステムにおいて,
前記報知手段が報知する内容には,前記指定手段によって指定された前記取得手段を管理するログインユーザの情報が含まれることを特徴とするスキャンシステム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載するスキャンシステムにおいて,
所定の条件を満たすことで前記指定手段の指定を解除すること特徴とするスキャンシステム。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載するスキャンシステムにおいて,
複数のログインユーザの各々の管理下にあり,前記読取手段に読み取りを指示し,その指示に従って読み取られた画像データを取得する第2取得手段を備え,
前記指定手段による指定が行われている場合に,前記第2取得手段の取得機能を制限することを特徴とするスキャンシステム。
【請求項7】
複数のユーザアカウントをログオフすることなく切り替えて使用する機能を有する情報処理装置において,
原稿の読み取り機能を備えた読取装置からの指令を検知し,検知した旨を検知信号として通知する検知手段と,
複数のログインユーザの各々の管理下にあり,前記検知信号に基づいて前記読取装置が読み取った画像データを取得する取得手段と,
各ログインユーザの管理下にある取得手段のうち,前記画像データの取得を行う取得手段を指定する指定手段とを備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項1】
原稿を読み取る読取手段と,
前記読取手段からの指令を検知し,検知した旨を検知信号として通知する検知手段と,
複数のログインユーザの各々の管理下にあり,前記検知信号に基づいて前記読取手段が読み取った画像データを取得する取得手段と,
各ログインユーザの管理下にある取得手段のうち,前記画像データの取得を行う取得手段を指定する指定手段とを備えることを特徴とするスキャンシステム。
【請求項2】
請求項1に記載するスキャンシステムにおいて,
前記指定手段は,指定されていない取得手段への,前記検知信号の通知を制限することを特徴とするスキャンシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載するスキャンシステムにおいて,
前記指定手段による指定が行われていることを報知する報知手段を備えることを特徴とするスキャンシステム。
【請求項4】
請求項3に記載するスキャンシステムにおいて,
前記報知手段が報知する内容には,前記指定手段によって指定された前記取得手段を管理するログインユーザの情報が含まれることを特徴とするスキャンシステム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載するスキャンシステムにおいて,
所定の条件を満たすことで前記指定手段の指定を解除すること特徴とするスキャンシステム。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載するスキャンシステムにおいて,
複数のログインユーザの各々の管理下にあり,前記読取手段に読み取りを指示し,その指示に従って読み取られた画像データを取得する第2取得手段を備え,
前記指定手段による指定が行われている場合に,前記第2取得手段の取得機能を制限することを特徴とするスキャンシステム。
【請求項7】
複数のユーザアカウントをログオフすることなく切り替えて使用する機能を有する情報処理装置において,
原稿の読み取り機能を備えた読取装置からの指令を検知し,検知した旨を検知信号として通知する検知手段と,
複数のログインユーザの各々の管理下にあり,前記検知信号に基づいて前記読取装置が読み取った画像データを取得する取得手段と,
各ログインユーザの管理下にある取得手段のうち,前記画像データの取得を行う取得手段を指定する指定手段とを備えることを特徴とする情報処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−55310(P2009−55310A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219776(P2007−219776)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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