説明

スキュー付ステータの製造方法及びその製造装置

【課題】ステータコアを捻る際にステータコイルに生じるダメージを減少しつつ、コイルエンド部の突出量を減少させる。
【解決手段】スキュー付ステータの製造方法は、複数の磁性金属片16を積層して形成されたステータコア11の軸方向に平行なスロット14にコイル20を挿入し、その後各磁性金属片16が周方向に徐々にずれるように捻りを与える。コイル20を挿入した後のステータコア11の端面から突出するコイルエンド部22にスロット14の延長線に沿って真っ直ぐに伸びる延長部22aを形成する。コイル20を挿入した後のステータコア11の一方の端面から突出する一方のコイルエンド部22と他方の端面から突出する他方のコイルエンド部22の双方に延長部をそれぞれ形成し、一方のコイルエンド部22における延長部22aが連続するスロット14とは別のスロット14の延長線にそって他方のコイルエンド部22における延長部22aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性金属片を積層して構成されてその金属片が徐々にずれるように捻りが与えられたステータコアにコイルが装着されたスキュー付ステータの製造方法及びその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のステータは、放射状に並んで内径方向に突出する複数のティース(磁極)及びその間に開口する複数のスロットを有する円筒状のステータコアと、そのスロットにコイル辺部を納めることによりそのコアに装着されたステータコイルとを備える。このステータコアは複数の磁性金属片を積層して形成され、ステータコイルの装着に関しては、環状のステータコイルをステータコアと別に予め製造し、その後このステータコイルをインサータ装置を用いてステータコアの軸方向に平行な各スロットに収容するいわゆるインサータ方法が知られている。
【0003】
このインサータ装置を用いた環状コイルの装着は、インサータ装置における押上げシャフトによりコイルを引き上げて、そのコイルをスロットの中に押し込みながら上昇させる方法であり、図8に示すように、組み付け後にコイル7はステータコア1の軸方向に平行な別々なスロット6に掛け回される。そして、コイル7は、ティース4とティース4の間に開口するスロット6に納められた部分がコイル辺部7aとなり、コイル7のスロット6に挿入されない残りの部分が、ステータコア1の端面から突出するコイルエンド部7bとなる。ここで、コイルエンド部7bは、コイルの組み付けが完了した時点で、図示しないインサータ装置における押上げシャフトの上面に位置する必要がある。このため、このインサータ方法では、コイルの組み付けが完了した時点で、コイルエンド部7bが図示しない押上げシャフトの上面に位置するようにコイル7の大きさが設定される。
【0004】
一方、このようなステータには、後にロータ(回転子)が挿入されることになるけれども、このロータの回転を円滑にするため、そのステータコアに捻り(スキュー)を与えて、ロータの磁極との間で連続的な吸引又は反発力が付与されるようにして、その回転電機の振動や騒音を低減させるステータ製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。そして、このようなスキュー付ステータの具体的な製造方法として、スロットがステータコアの軸方向に平行である状態で、そのスロットにコイルを挿入した後、磁性金属片が徐々にずれるように捻る方法(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。この特許文献2におけるスキュー付ステータの製造方法では、図9に示すように、ステータコア1を構成する複数の金属片2の外周に互いに整合する切欠き2aを設けておき、ステータコア1のスロット6に図示しないコイルを挿入した後、複数の金属片2の整合する切欠き2aに沿って板3を挿入し、この板3を実線矢印で示すように回転させてステータコア1の軸心に対して傾斜させることにより、複数の金属片2が徐々にずれるように捻るとしている。
【0005】
また、別のスキュー付ステータの製造装置として、図11に示すように、ステータコア1の内周にセンタポスト8を進退可能に挿入し、ステータコア1のスロット開口部に挿入されるヘリカル状の捻りガイド部8aをそのセンタポスト8の外周に形成した製造装置(例えば、特許文献3参照。)も提案されている。この特許文献3におけるスキュー付ステータの製造装置では、ステータコア1の磁性金属片に捻りを与えずに、スロットがステータコアの軸方向に平行である状態でコイル7を挿入し、その後ステータコアの一方の端面からステータコア1の内部にスキューセンタポスト8を実線矢印で示すように挿入するとしている。すると、スキューセンタポスト8に形成されたヘリカル状のガイド部8aが、ステータコア1の内周のスロット開口部に挿入され、ステータコア1を構成する各磁性金属片は、ヘリカル状のガイド部8aによって捻られてスキューされるとしている。ここで、図11における符号9は、コイル7が挿入されたステータコア1を支持する支持具9を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−94226号公報(段落番号「0014」〜「0016」)
【特許文献2】特開平11−225461号公報(段落番号「0008」、「0009」)
【特許文献3】特開平11−299187号公報(段落番号「0008」、「0009」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図8に示すように、いわゆるインサータ方法では、上述したように、コイル7の装着が完了した時点で、図示しない押上げシャフトの上面にコイルエンド部7bが位置するようにコイル7の大きさが設定される。このため、特許文献1におけるステータ製造方法では、環状コイル7をステータコア1に装着したときに、そのコイルエンド部7bは、ステータコア1の軸方向端面からループ状に突出することになる。即ち、このループ状のコイルエンド部7bは、その両端が各スロット6の延長線上にあって、その中間が湾曲してその両端部を滑らかに連続させるようなループ状のものになる。
【0008】
一方、コイル7の組み付けられたステータコア1に捻りを与えると、ステータコア1の中心軸に平行なスロット6は、ステータコア1の中心軸に対して所定角度をなすように傾けられ、各スロット6が長くなる。すると、スロット6の延長分に対応して、コイルエンド7bがスロット6の中に引き込まれる。このため、コイル7が装着されたテータコア1に捻りを与えると、コイルエンド部7bの端部7cは、湾曲した状態から真っ直ぐに伸ばされつつスロット6に引き込まれることになる。してみると、その湾曲状態から真っ直ぐに伸ばされるコイルエンド部7bの端部7cは、そのスロット6の端部におけるティース4の角部4aに強く擦られてダメージが与えられる可能性があった。
【0009】
また、コイルエンド部7bがコア1の端面から比較的大きく突出すると、ステータの周囲に占めるコイルエンド部7bが増加して、このステータを用いる回転電機の外形が大型化する。このため、コイルエンド部7bのコア1の端面からの突出量は小さいことが好ましい。そのためには、ステータコイル7の大きさを可能な限り小さくして、ループ状を成すコイルエンド部7bの高さを一点鎖線で示すように低くすることが考えられる。けれども、コイルエンド部7bをループ状の状態でその高さを一点鎖線で示すように低くすると、コイルエンド部7bの端部7cにおいてスロット6に連続する部分における湾曲の程度が増加する。すると、ステータコア1に捻りを与える際に、湾曲状態から真っ直ぐに伸ばされるコイルエンド部7bの端部7cはティース4の角部4aに更に強く擦られる不具合があった。よって、捻りが後に与えられるステータコア1に装着されたコイル7のコイルエンド部7bの高さをループ状の状態で低くするには限界があった。
【0010】
また、図9に示すように、切欠き2aに挿入した板3を回転させることによりステータコア1を捻る上記特許文献2における製造装置は、複数の金属片2の外周に切欠き2aが形成されていなければ、用いることができない。また、切欠き2aが形成されていたとしても、その切欠き2aは、図10の破線矢印で示すように、ステータコア1を構成する金属片2の外周に沿って円弧状に移動する。一方、その切欠き2aに挿入された板3をステータコア1の軸心に対して傾斜させると、ステータコア1の端部における切欠き2aに挿入された板3は、図10の実線矢印で示すように直線的に移動する。このため、ステータコア1の捻りの程度を大きくすると、当初挿入された板3がその切欠き2aから外れてしまうことになり、捻りの程度を大きくするには限界があると言う未だ解決すべき課題が残存していた。
【0011】
更に、図11に示すスキューセンタポスト8を押し込んでステータコア1に捻りを与える上記特許文献3における製造装置では、実際にスキューを行うヘリカル状の捻りガイド部8aはそのセンタポスト8の外周に直接形成されているので、捻りの程度を変更させるためには、所望の捻りを付与するようなヘリカル状の捻りガイド部8aが外周に形成された別のセンタポスト8を準備する必要があり、その捻りの程度を変更することは困難であった。また、ステータコア1に捻りを与えた後には、そのスキューセンタポスト8をステータコア1から破線矢印で示すように引き抜くことが必要となる。けれども、実際にスキューを行うヘリカル状の捻りガイド部8aはそのセンタポスト8の外周に直接形成されているので、スキューされたステータコア1又はそのスキューセンタポスト8をその捻りの程度に合わせて回転させなければ、そのコア1からセンタポスト8を真っ直ぐに引き抜くことができないという不具合がある。このため、そのステータコア1又はスキューセンタポスト8をその捻りの程度に合わせて回転させるための構造が新たに必要となって、その構造が複雑化するという未だ解決すべき課題が残存していた。
【0012】
本発明の目的は、ステータコアを捻る際にステータコイルに生じるダメージを減少しつつ、コイルエンド部の突出量を減少させてコア端面近傍におけるコイルエンド部の占積率を向上させ得るスキュー付ステータの製造方法及びその製造装置を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、捻りの程度が自由に調整できかつ比較的単純な構造のスキュー付ステータの製造方法及びその製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のスキュー付ステータの製造方法は、複数の磁性金属片を積層して形成されたステータコアの軸方向に平行なスロットに環状のコイルを掛け回すように挿入し、その後、各磁性金属片が周方向に徐々にずれるように捻りを与える方法である。
【0015】
その特徴ある点は、ステータコアの端面から突出するコイルエンド部にスロットの延長線に沿って真っ直ぐに伸びる延長部を形成したところにある。
【0016】
この方法では、コイルを挿入した後のステータコアの一方の端面から突出する一方のコイルエンド部と他方の端面から突出する他方のコイルエンド部の双方に延長部をそれぞれ形成し、一方のコイルエンド部における延長部が連続するスロットとは別のスロットの延長線にそって他方のコイルエンド部における延長部を形成することが好ましい。
【0017】
また、ステータコアに捻りを与えた後のスロットの長さと捻りを与える以前のスロットの長さの差より延長部の長さを長くすることが好ましく、ステータコアの軸方向に平行なスロットの長さをHとし、捻りを与えた後のスロットの傾斜角度をθとするとき、延長部の長さをH×{(1/cosθ)−1}以上とすることが更に好ましい。
【0018】
本発明のスキュー付ステータの製造装置は、外周に互いに連通する切欠きを有する複数の磁性金属片を積層して形成されたステータコアの軸方向に平行なスロットにコイルを挿入した後、各磁性金属片が周方向に徐々にずれるように捻りを与える装置である。
【0019】
その特徴ある構成は、ステータコアの一方の端面が載置されるベースと、ベースに取り外し可能であってかつ傾動可能に立設されステータコアの外周にあってステータコアの軸方向に連通する切欠きに挿通されるピンと、ステータコアの外周に嵌入され切欠きに挿通されたピンの切欠きからの離脱を防止する円形筒体と、ステータコアの他方の端面側に位置しピンの先端が係止された操作部材と、操作部材に設けられステータコアの中心軸を回転中心として操作部材を回転させる操作ハンドルとを備えるところにある。
【0020】
また、本発明の別のスキュー付ステータの製造装置は、複数の磁性金属片を積層して形成されたステータコアの軸方向に平行なスロットにコイルを挿入した後、各磁性金属片が周方向に徐々にずれるように捻りを与える装置である。
【0021】
その特徴ある構成は、ステータコアの一方の端面が載置されるベースと、ベースに取り外し可能であってかつ傾動可能に立設されステータコアの内周にあってステータコアの軸方向に連通するスロットに挿通されるピンと、ステータコアの内周に挿入されスロットに挿通されたピンのスロットからの離脱を防止するセンタポストと、ステータコアの他方の端面側に位置しピンの先端が係止された操作部材と、操作部材に設けられステータコアの中心軸を回転中心として操作部材を回転させる操作ハンドルとを備えるところにある。
【発明の効果】
【0022】
本発明のスキュー付ステータの製造方法は、コイルエンド部にスロットの延長線に沿って真っ直ぐに伸びる延長部を形成するので、そのコイルが組み付けられたステータコアに捻りを与えると、スロットの延長分に対応して、その延長部がその真っ直ぐな状態を維持した状態でその長手方向に移動し、そのままスロットの中に引き込まれる。特に、スロットの長さと捻りを与える以前のスロットの長さの差より延長部の長さを長くすれば、その延長部のみを確実にスロットに引き込ませることができる。このため、スロットの中に引き込まれる延長部がティースの角部に接触するようなことなく、湾曲した状態から真っ直ぐに伸ばされつつスロットに引き込まれてティースの角部に擦られる従来に比較して、その引き込まれる延長部にダメージが与えられるようなことはない。
【0023】
また、延長部がスロットの中に引き込まれてコイル辺部になると、延長部以外の部分がステータコアの端面に残存してコイルエンド部となる。このため、延長部形成時にその残余の部分をステータコアの周方向に沿うように予め成形しておくことにより、ステータコアに捻りを与えた後におけるコイルエンド部のコアの端面からの突出量を小さくすることができる。これにより、ステータコアを捻る際にステータコイルに生じるダメージを減少しつつ、コイルエンド部の突出量を減少させてコア端面近傍におけるコイルエンド部の占積率を向上させることができる。
【0024】
また、本発明のスキュー付ステータの製造装置は、ステータコアの外周にある切欠き又はスロットに挿通されるピンを備えるので、操作ハンドルを回転させると、その回転量に応じてピンはベースに対して傾動し、切欠き又はスロットにピンが挿通された磁性金属片はピンに押されて回動する。これによりステータコアに捻りを付与することができる。このため、その捻りの程度を操作ハンドルの回転量により調整することが可能になり、その捻りの程度を自由に調整することができる。そして、そのステータコアが捩られた後には各金属片の切欠き又はスロットは、緩やかな螺旋を描くようになるけれども、ピンは円形筒体又はセンタポストによりその切欠き又はスロットから離脱することは禁止される。このため、ステータコアに与える捻りの程度を従来よりも増加させることが可能になる。
【0025】
一方、本発明のスキュー付ステータの製造装置は、実際に捻りを与えるピンをベースに取り外し可能に立設させるので、捻りを与えたステータコアをそのピンとともに装置から取り外すことができる。よって、捻りを与えたステータコアの取り外しの際にステータコア又はセンタポストを回転させる必要はなく、その取り外しの際にステータコア又はセンタポストを回転させる必要がある従来の装置に比較して構造を単純化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のスキュー付ステータの製造方法において図2の矢印Aで示すコアの内側から観たコイルの状態を示す拡大図である。
【図2】その製造方法によりコアに捻りが与えられるステータの斜視図である。
【図3】その製造方法に用いる製造装置の分解斜視図である。
【図4】その製造装置の縦断面図である。
【図5】その製造方法に用いるインサータ装置の構成図である。
【図6】その別の製造装置の分解斜視図である。
【図7】その別の製造装置の縦断面図である。
【図8】インサータ装置により組み込まれたコイルを示す図1に対応する図である。
【図9】従来の製造装置によりスキューを与える状態を示す概念図である。
【図10】図9のB方向から観た図である。
【図11】従来の別の製造装置によりスキューを与える状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳しく説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、本発明のスキュー付ステータの製造方法は、複数の磁性金属片16を積層して形成されたステータコア11の軸方向に平行な別々なスロット14に環状のコイル20を掛け回すように挿入し、その後、各磁性金属片16が周方向に徐々にずれるように捻りを与える方法である。ステータコア11は、円環状の環状部12と、この環状部12の内周面からその環状部12の中心に向けて突出している複数のティース13とを備えた磁性材料からなり(図2)、複数のティース13の間にはステータコイル20の後述するコイル辺部21(図1)を収容する複数のスロット14が形成される。
【0029】
即ち、ステータコア11は、一定厚さの環状部12及びティース13を備えた形状の磁性金属片16を、所定の厚さとなるように積層することにより構成された積層型のものである。そして、この実施の形態では、ステータコア11を構成する複数の磁性金属片16の外周には、互いに整合する切欠き16a(図2)がそれぞれ設けられ、スロットがコア11の軸方向に平行になるように磁性金属片16が積層された状態で、その切欠き16aはステータコア11の外周にあってステータコア11の軸方向に平行に連通するように形成される。
【0030】
環状のステータコイル20は、ステータコア11とは別に予め製造される。図示しないが、このステータコイル20の製造は、巻芯を用いる一般的な巻線機を用いることができ、その巻芯に線材を複数回巻回させることにより所望の大きさのステータコイル20を得る。この場合、巻芯に線材を巻回してコイルを形成し、この巻芯から外されるコイルをブレード台から突出する複数のブレードにそれぞれ掛落とすコイル巻落とし方法が知られており、コイル巻回時に大コイル、中コイル、小コイルがそれぞれ巻回される構成とし、巻芯から外されるコイルを傾斜して積み上げることにより、各ブレードに対してコイルがバラけずに巻落とされるようにすることができる(特許第4411255号)。この実施の形態における線材は、表面に絶縁皮膜が形成された断面円形の丸線である場合を示すけれども、断面が方形を成すいわゆる角線を用いても良い。ステータコイル20の大きさは図示しない巻芯の大きさを変更することにより調整することができ、コイル20の大きさの目安は、このステータコイル20をステータコア11に組み付けた状態で、ステータコア11の端面から突出するコイルエンド部22が、後述するインサータ装置50における押上げシャフト52(図5)の上面に位置するように設定される。
【0031】
ステータコイル20をステータコア11に挿入するコイル挿入にあっては、インサータ装置が用いられる。このインサータ装置は一般的なものが使用可能であって、図5にその一例を示す。図5に示すインサータ装置50は、ステータコア11におけるティース13(図1及び図2)の内側に沿って配置される棒状のブレード51と、コア11の内側を移動する押上げシャフト52と、ブレード51に外側から重なってコア11のティース13下面を支持する受容冠53と、そのコア11の環状部12を上側から押さえる押圧リング54を備える。また、このインサータ装置50には、押圧リング54側に突出したコイルエンド部22をコア11の半径方向外側に逃がしつつその形状を成形する押圧ジョー56が複数設けられる。
【0032】
ステータコイル20の装着は、コイルエンド部22となる部分を受容冠53の外側に位置させ、その他の部分をブレード51の内側に位置させる。その後コア11を受容冠53に支持させて押圧リング54により押さえて固定する。この状態で、押上げシャフト52をコア11の内側に挿通させてブレード51の内側に位置する部分を図の上方に引き上げる。これによりブレード51の内側に位置する部分が引き上げられ、それに続く部分がスロット14の中に押し込まれながら上昇し、ブレード51の内側に位置する部分がコア11の上方にまで達した状態でコイル20はスロット14に収容される。これにより、環状のコイル20は、ステータコア11の軸方向に平行な別々なスロット14に掛け回すように挿入される。そして、3相式の回転電機を例示するこの実施の形態では、図1及び図2に示すように、コイル20は3つのティース13を跨いで別々のスロット14に、それら3つのティース13を掛け回すように挿入される。
【0033】
図1及び図2に示すように、本発明の特徴ある点は、コイル20をステータコア11に挿入した後であって、そのステータコア11に捻りを与える以前に、ステータコア11の端面から突出するコイルエンド部22にスロット14の延長線に沿って真っ直ぐに伸びる延長部22aを形成するところにある。即ち、本発明のスキュー付ステータの製造方法は、ステータコア11と別に予め製造された環状のステータコイル20をステータコア11に挿入する上述したコイル挿入工程と、コイル20を挿入した後のステータコア11の端面から突出するコイルエンド部22を成形してスロット14の延長線に沿って真っ直ぐに伸びる延長部22aを形成するコイルエンド成形行程と、そのコイル20が挿入されたステータコア11に捻りを与えるコア捻り工程とを有する。
【0034】
インサータ装置50を用いて環状コイル20をステータコア11に挿入すると、そのコイルエンド部22は、両端がスロット14の延長線上にあって、その中間が湾曲してその両端部を滑らかに連続させるループ状のものとなる(図8参照)。このループ状のコイルエンド部22はステータコア11の軸方向端面から突出して形成され、本発明では、ステータコア11に捻りを与える以前に、このループ状を成すコイルエンド部22を成形して、スロット14の延長線に沿って真っ直ぐに伸びる延長部22aを形成する。
【0035】
図1(a)に示すように、延長部22aの形成は、コイル20の挿入後のステータコア11の端面から突出するコイルエンド部22の端面近傍をスロット14の延長線上に真っ直ぐに延ばすことにより行われる。そして、そのステータコア11の端面から突出してスロット14の延長線上に真っ直ぐに延ばされた延長部22aの延長端を折り曲げてステータコア11の端面において周方向に沿う渡り部22bをその延長部22aに連続して形成し、その渡り部22bの延長部22aと反対側を再び折り曲げて別のスロット14に進入させる。そして、周方向に沿う渡り部22bの長さをスロット14間の距離に合わせ、延長部22aと渡り部22bとステータコア11の端面が略三角形を成すようにコイルエンド部22を成形する。このコイルエンド部22の成形は、作業員の手作業により行うこともできるけれども、上述したインサータ装置50を用いる場合には、押圧リング54側に突出したコイルエンド部22をコア11の半径方向外側に逃がしつつその形状を成形する押圧ジョー56により行わせることもできる。
【0036】
ここで、図1に示すように、ステータコア11に捻りを与えた後のスロット14の長さHdと捻りを与える以前のスロット14の長さHの差より延長部22aの長さFを長く設定することが好ましい。即ち、ステータコア11の軸方向に平行なスロット14の長さをHとし、捻りを与えた後のスロット14の傾斜角度をθとするとき、延長部22aの長さFをH×{(1/cosθ)−1}以上とすることが望まれる。
【0037】
コイル20がステータコア11に挿入されると、そのステータコア11の一方の端面から突出する一方のコイルエンド部22と、他方の端面から突出する他方のコイルエンド部22の双方が同時に形成される。この双方のコイルエンド部22に延長部22aをそれぞれ形成するけれども、一方のコイルエンド部22における延長部22aが連続するスロット14とは別のスロット14の延長線にそって他方のコイルエンド部22における延長部22aを形成する。即ち、ステータコア11の両方の端面から突出する双方のコイルエンド部22,22をそれぞれ同じ形状のものとする。
【0038】
本発明では、上述したようにコイル20が挿入されてコイルエンド部22に延長部22aを形成した後に、ステータコア11に捻りを与える。この捻りは図9及び図11に示す従来の装置を用いても良いけれども、その装置は捻りの程度が自由に調整できかつ比較的単純な構造のものであることが好ましい。このため、図3及び図4に、この実施の形態において使用する装置60を示す。この実施の形態において使用する装置60は、ステータコア11(図4)の一方の端面が載置されるベース61を備える。このベース61は四隅に取付孔62a(図3)が形成された基板62と、その基板62に固定されてステータコア11の一方の端面である下面が載置されるリング状の載置リング63とを備える。
【0039】
載置リング63はステータコア11の環状部12を載置可能な大きさに形成され(図4)、この載置リング63には、下面が載置されたステータコア11の切欠き16aに対応する位置に遊挿孔63aが形成される。この遊挿孔63aにはステータコア11の切欠き16aに挿通可能なピン64が遊挿される。ピン64は僅かに弾性変形が可能な鋼材から成るものが用いられ、遊挿孔63aに遊びを持って挿入されることから、このピン64は、そのベース61に取り外し可能であって、傾動可能にそのベース61に立設される。そして、遊挿孔63aは切欠き16aに対応する位置に設けられるので、その遊挿孔63aに遊挿されるピン64は、ステータコア11の外周にあってステータコア11の軸方向に連通する切欠き16aに挿通されるものとなる(図2及び図4)。
【0040】
また、この装置60は、ステータコア11の外周に嵌入されてコア11の切欠き16aに挿通されたピン64の切欠き16aからの離脱を防止する円形筒体66と、ステータコア11の他方の端面側に位置しピン64の先端が係止された操作部材67を備える。載置リング63には円形筒体66を同軸に載置する段部63bが形成され、その円形筒体66はステータコア11の外径より僅かに大きな内径に形成される。そして、ベース61における基板62には、ステータコア11の内周に僅かな隙間を持って挿入されるセンタポスト68が載置リング63と同軸に設けられる。操作部材67は載置リング63と略同一のリング状物であって、ステータコア11の切欠き16aに挿通されてコア11の上面から上方に突出する部分が遊挿可能な貫通孔67aが形成される。
【0041】
センタポスト68の上面中央には円柱状の突起68aが設けられ、このリング状の操作部材67には、その中央を通過する操作ハンドル69が固定される。操作部材67の中央に位置する操作ハンドル69には、その中央に突起68aが挿通する中央孔69aが形成され、操作ハンドル69の両端には、作業員がその手に把持する把持部69bが形成される。そして、中央孔69aに突起68aが挿通された操作ハンドル69の両端における把持部69bを作業員がその手に把持し、その突起68aを回転中心として回転させることによりステータコア11の中心軸を回転中心として操作部材67を回転可能に構成される。
【0042】
この製造装置60を用いて、コイル20が入されたステータコア11に捻りを与える(スキューさせる)手順を説明すると、この装置60は、図4に示すように、取付孔62aに挿通されたボルト81によりそのベース61が作業台82に固定されて用いられる。コイル20が挿入されたステータコア11は、センタポスト68の外周に装着され、ステータコア11の下方の端面をベース61における載置リング63上に載置する。このようにして、ステータコア11の下面から下方に突出するコイルエンド部22をセンタポスト68と載置リング63の間に挿入させる。そして、ピン64を遊挿孔63aに挿入して、ステータコア11の外周にあってコア11の軸方向に平行に連続する切欠き16aに挿入する。そして円形筒体66をステータコア11に嵌入して、ピン64が切欠き16aから離脱することを防止する。
【0043】
その後、突起68aが中央孔69aに挿入するように操作ハンドル69をセンタポスト68に載置し、そのハンドルに固定された操作部材67における貫通孔67aに各ピン64の上端を遊挿させる。この状態で、操作ハンドル69の両端における把持部69bを作業員がその手に把持し、その突起68aを回転中心として回転させる。すると、図2(b)に示すように、ピン64はベース61に対して傾動し、切欠き16aにピン64が挿通された磁性金属片16は、センタポスト68の回りでピン64に押されて回動し、磁性金属片16に捻り作用が付与され、スキュー付ステータ10を得ることができる。よって、ステータコア11には、操作部材67の回転角度に相応した捻りが付与され、この装置60では、操作部材67の回転角度を調整することによりステータコア11の捻りの程度を容易に調整することができる。
【0044】
ステータコア11が捩られると、各金属片16の切欠き16aは緩やかな螺旋を描いて連なるようになるけれども、ピン64は円形筒体66により切欠き16aから離脱することが禁止されているので、そのピン64は螺旋を描くように連なる切欠き16aに沿って緩やかに弾性変形し、その切欠き16aから離脱することはない。このため、このピン64は、各磁性金属片16を確実に回動させることになり、その切り欠きからの離脱する板を用いてステータコアに捻りを与える図9に示す従来の装置に比較して、本装置60は、その捻りの程度を増加させることが可能になり、ステータコア11に比較的大きな捻りを与えることができる。
【0045】
図1に示すように、コイル20が組み付けられたステータコア11に捻りを与えると、ステータコア11の中心軸に平行なスロット14は、ステータコア11の中心軸に対して所定角度をなすように傾けられ、各スロット14が長くなる。すると、スロット14の延長分に対応して、コイルエンド部22がスロット14の中に引き込まれることになる。本発明では、コイルエンド部22に、一方のスロット14の延長線上に延びる延長部22aを形成し、その延長部22aと反対側の渡り部22bを折り曲げて別のスロット14に進入させた。このため、ステータコア11に捻りを与えると、渡り部22bとスロット14との間の折り曲がり部22cがスロット14の端部におけるティース13の角部に当接するので、渡り部22bがスロット14に引き込まれるようなことはなく、その折り曲がり部22cとともにスロット14を挟む反対側における延長部22aのみがその真っ直ぐな状態を維持した状態で長手方向に移動し、そのままスロット14の中に引き込まれる。
【0046】
即ち、スロット14の延長線上に延びる延長部22aをコイルエンド部22に形成したので、ステータコア11に捻りを与えると、図1に示すように、コイル20はその形状をあまり変化させずに、延長部22aが長手方向に移動してスロット14の中に引き込まれる。そして、ステータコア11に捻りを与えた後のスロット14の長さHdと捻りを与える以前のスロット14の長さHの差より延長部22aの長さFを長くすることにより、その延長部22aのみを確実にスロット14に引き込ませることができる。このため、スロット14の中に引き込まれる延長部22aがティース13の角部に接触するようなことなく、湾曲した状態から真っ直ぐに伸ばされつつスロットに引き込まれてティースの角部に擦られる図8に示す従来に比較して、その引き込まれる延長部22aにダメージが与えられるようなことはない。
【0047】
また、ステータコア11に捻りを与えると、渡り部22bとスロット14との間の折り曲がり部22cは不動のままで、延長部22aがスロット14の中に引き込まれるので、その延長部22aに連続する渡り部22bは、図1の実線矢印で示すようにステータコア11の端面に近づく。そして、延長部22aがスロット14の中に引き込まれてコイル辺部21になると、その渡り部22bがステータコア11の端面に残存してコイルエンド部22を形成することになる。この結果、そのステータコア11の端面から突出するコイルエンド部22の高さは、ステータコア11に捻りを与える以前の高さよりも低くなる。よって、ステータコア11に捻りを与える以前に、その渡り部22bをステータコア11の周方向に沿うように予め成形し、渡り部22bの長さをスロット14間の距離に合わせておくことにより、ステータコア11に捻りを与えた後におけるコイルエンド部22のコアの端面からの突出量をより小さくすることができる。
【0048】
また、この実施の形態では、コイル20が3つのティース13を跨いで別々のスロット14に挿入されるいわゆる分布巻きが成される場合を示すけれども、このような分布巻きにおいては、ステータコア11の端面から突出するコイルエンド部22が隣接するコイル20のコイルエンド部22と重複することになる。このコイルエンド部22の重複に起因してそのコイルエンド部22が嵩張ると、コアの端面からのコイルエンド部22の突出量は増加する。けれども、本発明では、ステータコア11に捻りを与えた後にコイルエンド部22となる渡り部22bを、捻りを与える以前にステータコア11の周方向に沿わせるので、その際に、その渡り部22bを隣接するコイル20の渡り部22bにステータコア11の径方向に整列させておくことができる。すると、ステータコア11に捻りを与えた後にあっても、その渡り部22bはステータコア11の径方向に整列するので、その渡り部22bがコア11の軸方向に重なり合って、コイルエンド部22が嵩張るような事態を避けることができる。よって、コア11の端面からのコイルエンド部22の突出量の増加は防止され、ステータコア11に捻りを与えた後におけるコイルエンド部22のコアの端面からの突出量を著しく小さくすることができる。これにより、ステータコア11を捻る際にステータコイル20に生じるダメージを減少しつつ、コア11の端面近傍空間におけるコイルエンド部22の占積率を高めることができる。
【0049】
また、本発明の上記スキュー付ステータの製造装置60では、実際に捻りを与えるピン64をベース61に取り外し可能に立設させるので、捻りを与えたステータコア11をそのピン64とともに装置60から取り外すことができる。よって、捻りを与えたステータコア11の取り外しの際にステータコア又はセンタポストを回転させる必要はなく、その取り外しの際にステータコア又はセンタポストを回転させる必要がある図11に示す従来の装置に比較してその構造を単純化させることができる。
【0050】
そして、このようにスキューさせたステータコア11は、図1に示すように、磁性金属片16が徐々にずれて斜めに傾斜したティース13を有し、隣接するティース13同士において、一方の上端が他方の下端に周方向に沿って極めて近接し、それによって図示しない回転子の回転を滑らかにすることができる。
【0051】
なお、上述した実施の形態では、環状コイル20をステータコア11に挿入した後に、そのコイルエンド部22を成形して、スロット14の延長線に沿って真っ直ぐに伸びる延長部22aを形成する場合を説明したけれども、ステータコア11に挿入したならばコイルエンド部22となる部分を予め成形して、そのコイルエンド部22となる部分に延長部22aが予め形成された環状のコイル20を、ステータコア11に挿入するようにしても良い。
【0052】
また、上述した実施の形態では、センタポスト68の突起68aが中央孔69aに挿通された操作ハンドル69を回転させる製造装置60を説明したけれども、ステータコア11の中心軸を回転中心として操作部材67を回転させ得る限り、そのセンタポスト68は設けなくても良い。
【0053】
また、上述した実施の形態では、ステータコア11の外周に互いに連通する切欠き16aを形成し、その切欠き16aに挿通されるピン64を備えた製造装置60を用いて説明したけれども、図6及び図7に示すように、製造装置70は、ステータコア11の内周にあってステータコア11の軸方向に連通するスロット14に挿通されるピン74を備えるようなものであっても良い。
【0054】
具体的に、この図6及び図7に示す製造装置70は、ステータコア11の一方の端面が載置されるベース71を備える。このベース71は四隅に取付孔72aが形成された基板72と、その基板72に固定されてステータコア11の一方の端面である下面が載置されるリング状の載置リング73とを備える。この載置リング73はステータコア11の環状部12を載置可能な大きさに形成される。基板72には、載置リング73に下面が載置されたステータコア11のスロット14に対応する位置に遊挿孔72bが形成され、この遊挿孔72bにピン74が遊挿される。これによりピン74は、そのベース71に取り外し可能であって、遊びを持って遊挿孔72bに挿入されることから、傾動可能にそのベース71に立設される。そして、遊挿孔72bはスロット14に対応する位置に設けられるので、その遊挿孔72bに遊挿されるピン74は、ステータコア11の内周にあってステータコア11の軸方向に連通するスロット14に挿通されるものとなる(図7)。
【0055】
また、この装置70は、ステータコア11の外周に嵌入される円形筒体76を備え、載置リング73には円形筒体66を同軸に載置する段部73bが形成され、その円形筒体76はステータコア11の外径より僅かに大きな内径に形成される。また、この装置70は、ステータコア11の内周に挿入されスロット14に挿通されたピン74のスロット14からの離脱を防止するセンタポスト78と、ステータコア11の他方の端面側に位置しピン74の先端が係止された操作部材77を備える。センタポスト78は、ステータコア11の内周に僅かな隙間を持って挿入される外径を有する円柱状物であって、そのセンタポスト78はベース71における基板72に載置リング73と同軸に設けられる。操作部材77はリング状物であって、ステータコア11の上面から上方に突出するピン74の上部が遊挿可能な貫通孔77aが形成される。
【0056】
センタポスト78の上部周囲には、操作部材77を同軸に載置する段部78bが形成され、センタポスト78の上面中央には円柱状の突起78aが設けられる。リング状の操作部材77には、その中央を通過する操作ハンドル79が固定される。操作部材77の中央に位置する操作ハンドル79には、その中央に突起78aが挿通する中央孔79aが形成され、操作ハンドル79の両端には、作業員がその手に把持する把持部79bが形成される。そして、中央孔79aに突起78aが挿通された操作ハンドル79の両端における把持部79bを作業員がその手に把持し、その突起78aを回転中心として回転させることによりステータコア11の中心軸を回転中心として操作部材77を回転可能に構成される。
【0057】
この製造装置70を用いて、コイル20が入されたステータコア11をスキューさせる手順を説明すると、図7に示すように、この装置70は、取付孔72aに挿通されたボルト81によりそのベース71が作業台82に固定されて用いられる。コイル20が挿入されたステータコア11は、センタポスト78の外周に装着され、ステータコア11の下方の端面をベース71における載置リング73上に載置する。このようにして、ステータコア11の下面から下方に突出するコイルエンド部22をセンタポスト78と載置リング73の間に挿入させる。そして、ステータコア11の内周にあってコア11の軸方向に平行に連続するスロット14にピン74を挿入、その下端を遊挿孔72bに遊挿する。このようにして、そのピン74がスロット14から離脱することをセンタポスト78により防止させる。
【0058】
その後、突起78aが中央孔79aに挿入するように操作ハンドル79をセンタポスト78に載置し、そのハンドル79に固定された操作部材77における貫通孔77aに各ピン74の上端を遊挿させる。この状態で、操作ハンドル79の両端における把持部79bを作業員がその手に把持し、その突起78aを回転中心として回転させ、ピン74をベース71に対して傾動させる。すると、スロット14にピン74が挿通された磁性金属片16は、センタポスト78の回りでピン74に押されて回動し、磁性金属片16に捻り作用が付与され、ステータコア11に捻りを付与することができる。これによりスキュー付ステータ10が得られる。
【0059】
このような製造装置70であっても、操作部材77の回転角度によりその捻りの程度を容易に調整することができるとともに、ピン74はセンタポスト78によりスロット14から離脱することが禁止されているので、このピン74は、各磁性金属片16を確実に回動させることになり、ステータコア11に与える捻りの程度を増加させることが可能になる。また、切欠き16aに挿通されるピン64を備えた上記製造装置60では、複数の金属片の外周に切欠き16aが形成されていなければ、用いることができないけれども、スロット14に挿通されるピン74を備える図6及び図7に示す製造装置70では、金属片16の外周に切欠きが形成されていないステータコア11であっても、捻りを与えることができる。
【0060】
また、このスキュー付ステータの製造装置70であっても、実際に捻りを与えるピン74をベース71に取り外し可能に立設させるので、捻りを与えたステータコア11をそのピン74とともに装置70から取り外すことができる。よって、捻りを与えたステータコア11の取り外しの際にステータコア11又はセンタポスト78を回転させる必要はなく、その取り外しの際にステータコア又はセンタポストを回転させる必要がある図11に示す従来の装置に比較してその構造を単純化させることができる。
【符号の説明】
【0061】
10 スキュー付ステータ
11 ステータコア
14 スロット
16 磁性金属片
16a 切欠き
20 コイル
22 コイルエンド部
22a 延長部
60 スキュー付ステータの製造装置
61 ベース
64 ピン
66 円形筒体
67 操作部材
69 操作ハンドル
70 スキュー付ステータの製造装置
71 ベース
74 ピン
77 操作部材
78 センタポスト
79 操作ハンドル
H ステータコアの軸方向に平行なスロットの長さ
Hd 捻りを与えた後のスロットの長さ
θ 捻りを与えた後のスロットの傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁性金属片(16)を積層して形成されたステータコア(11)の軸方向に平行なスロット(14)に環状のコイル(20)を掛け回すように挿入し、その後、前記各磁性金属片(16)が周方向に徐々にずれるように捻りを与えるスキュー付ステータの製造方法において、
前記ステータコア(11)の端面から突出するコイルエンド部(22)に前記スロット(14)の延長線に沿って真っ直ぐに伸びる延長部(22a)を形成した
ことを特徴とするスキュー付ステータの製造方法。
【請求項2】
コイル(20)を挿入した後のステータコア(11)の一方の端面から突出する一方のコイルエンド部(22)と他方の端面から突出する他方のコイルエンド部(22)の双方に延長部(22a)をそれぞれ形成し、前記一方のコイルエンド部(22)における延長部(22a)が連続するスロット(14)とは別のスロット(14)の延長線にそって前記他方のコイルエンド部(22)における延長部(22a)を形成する請求項1記載のスキュー付ステータの製造方法。
【請求項3】
ステータコア(11)に捻りを与えた後のスロット(14)の長さ(Hd)と捻りを与える以前のスロット(14)の長さ(H)の差より延長部(22a)の長さを長くする請求項1又は2記載のスキュー付ステータの製造方法。
【請求項4】
ステータコア(11)の軸方向に平行なスロット(14)の長さをHとし、捻りを与えた後の前記スロット(14)の傾斜角度をθとするとき、延長部(22a)の長さをH×{(1/cosθ)−1}以上とする請求項1又は2記載のスキュー付ステータの製造方法。
【請求項5】
外周に互いに連通する切欠き(16a)を有する複数の磁性金属片(16)を積層して形成されたステータコア(11)の軸方向に平行なスロット(14)にコイル(20)を挿入した後、前記各磁性金属片(16)が周方向に徐々にずれるように捻りを与えるスキュー付ステータの製造装置において、
前記ステータコア(11)の一方の端面が載置されるベース(61)と、
前記ベース(61)に取り外し可能であってかつ傾動可能に立設され前記ステータコア(11)の外周にあって前記ステータコア(11)の軸方向に連通する切欠き(16a)に挿通されるピン(64)と、
前記ステータコア(11)の外周に嵌入され前記切欠き(16a)に挿通されたピン(64)の前記切欠き(16a)からの離脱を防止する円形筒体(66)と、
前記ステータコア(11)の他方の端面側に位置し前記ピン(64)の先端が係止された操作部材(67)と、
前記操作部材(67)に設けられ前記ステータコア(11)の中心軸を回転中心として前記操作部材(67)を回転させる操作ハンドル(69)と
を備えたスキュー付ステータの製造装置。
【請求項6】
複数の磁性金属片(16)を積層して形成されたステータコア(11)の軸方向に平行なスロット(14)にコイル(20)を挿入した後、前記各磁性金属片(16)が周方向に徐々にずれるように捻りを与えるスキュー付ステータの製造装置において、
前記ステータコア(11)の一方の端面が載置されるベース(71)と、
前記ベース(71)に取り外し可能であってかつ傾動可能に立設され前記ステータコア(11)の内周にあって前記ステータコア(11)の軸方向に連通する前記スロット(14)に挿通されるピン(74)と、
前記ステータコア(11)の内周に挿入され前記スロット(14)に挿通されたピン(74)の前記スロット(14)からの離脱を防止するセンタポスト(78)と、
前記ステータコア(11)の他方の端面側に位置し前記ピン(74)の先端が係止された操作部材(77)と、
前記操作部材(77)に設けられ前記ステータコア(11)の中心軸を回転中心として前記操作部材(77)を回転させる操作ハンドル(79)と
を備えたスキュー付ステータの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−196033(P2012−196033A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57413(P2011−57413)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【出願人】(592053103)株式会社林工業所 (4)
【Fターム(参考)】