説明

スクアリリウム化合物の金属錯体およびそれを用いた光記録媒体

【課題】青紫色レーザー光に対する高感度な光応答性等を有するスクアリリウム化合物の金属錯体を用いた光記録媒体等を提供する。
【解決手段】式(I)


[式中、Rは、H等、kは0〜5の整数を表し、R、R、RおよびRは、H、アルキル基等を表し、Xは、活性水素を有する基を表し、Aは、アリール基等を表す]表されるスクアリリウム化合物の金属錯体を含有する光記録媒体等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクアリリウム化合物の金属錯体およびそれを用いた光記録媒体等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、対物レンズの開口数NAを大きくする技術、レーザー波長λを小さくする技術等を用い、さらに超高密度記録が可能となる光記録媒体の開発が進んでいる。例えば、HDTV(高精細度テレビ)の映像情報を2時間以上記録するためには、DVDと同サイズで少なくとも23GB以上の容量をもつ光記録媒体が要望されている。こういった要望に応えるために、405nmの青紫色レーザーを使用し、対物レンズのNAを0.85とし、レーザースポット径を小さくすることによって、より高密度の情報を記録する光記録媒体、いわゆるBlu−ray Disc(BD)が開発された。
【0003】
追記型Blu−ray Disc(BD-R)には、記録・再生を可能にする要求性能に加えて、記録感度、変調度、ジッタ(Jitter)、エラー率等において様々な優れた特性が求められる。しかし、それらを満足させるBD-R用の色素は未だ見つかっていない。
ピラゾール構造を有するスクアリリウム化合物の金属錯体は、追記型デジタルバーサタイルディスク(DVD−R)に用いる色素として有用であることが知られている(特許文献1)。該色素はDVD−Rの記録に用いられる650nmのレーザー光で記録するのに適しているが、405nmのレーザー光で記録するのに適していない。
【0004】
アリール構造およびアミン構造を有するスクアリリウム化合物は、短波長光源用光重合性組成物として有用であることが知られている(特許文献2)。
アゾ色素においても、その金属錯体が、DVD−Rに用いる色素として有用であることが知られている(特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7および特許文献8)。該色素はDVD−Rの記録に用いられる650nmのレーザー光で記録するのに適しているが、405nmのレーザー光で記録するのに適していない。
【特許文献1】国際公開第2002/50190号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/49579号パンフレット
【特許文献3】特開2000−190642号公報
【特許文献4】特開2002−283732号公報
【特許文献5】特開2003−63139号公報
【特許文献6】特許第3666166号公報
【特許文献7】特許第3724531号公報
【特許文献8】特許第3731244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、青紫色レーザー光に対する高感度な光応答性等を有するスクアリリウム化合物の金属錯体およびそれを用いた光記録媒体等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の(1)〜(11)を提供する。
(1)式(I)
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、アリールオキシ基、アルカノイル基、アロイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基、アロイルオキシ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノスルホニル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、置換基を有してもよい複素環基またはNR(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表すか、RとRが隣接する窒素原子と一緒になって置換基を有していてもよい複素環基を形成する)を表し;kは0〜5の整数を表し;ここに、kが2〜5の場合、それぞれのRは同一または異なってもよく、さらに互いに隣り合う炭素原子上の2つのRがそれぞれ隣接する2つの炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素環または置換基を有していてもよい複素環を形成してもよく;Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し;R、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子またはNR(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表すか、RとRが隣接する窒素原子と一緒になって置換基を有していてもよい複素環基を形成する)を表し、RおよびR、またはRおよびRは隣接するN−C−Cと一緒になって、置換基を有していてもよい複素環を形成してもよく、RとRはそれぞれが隣接する炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素環または置換基を有していてもよい複素環を形成してもよく;Xは、活性水素を有する基を表し;Aは、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよい複素環基を表す]で表されるスクアリリウム化合物の金属錯体。
(2)Aが、一般式(II)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Z1環は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環または置換基を有していてもよい複素環を表し、Yは、活性水素を有する基を表す)または、一般式(III)
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、Z2環は、置換基を有していてもよい窒素原子を含む複素環を表す)で表される(1)記載のスクアリリウム化合物の金属錯体。
(3)Aが、一般式(IV)
【0013】
【化4】

【0014】
[式中、R10は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、アリールオキシ基、アルカノイル基、アロイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基、アロイルオキシ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノスルホニル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、置換基を有してもよい複素環基、またはNR1112(式中、R11およびR12は、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表すか、R11とR12が隣接する窒素原子と一緒になって置換基を有していてもよい複素環基を形成する)を表し;lは0〜4の整数を表し;ここに、lが2〜4の場合、それぞれのR10は同一または異なってもよく、さらに互いに隣り合う炭素原子上の2つのR10がそれぞれが隣接する2つの炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素環または置換基を有していてもよい複素環を形成してもよく;Wは、活性水素を有する基を表す〕で表される(1)記載のスクアリリウム化合物の金属錯体。
(4)金属錯体が、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅の金属錯体である(1)〜(3)のいずれかに記載のスクアリリウム化合物の金属錯体。
(5)金属錯体が、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅の金属錯体である(1)〜(3)のいずかに記載のスクアリリウム化合物の金属錯体。
(6)式(I)
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、R、R、R、R、R、X、Aおよびkは、それぞれ前記と同義である)で表されるスクアリリウム化合物の金属錯体を含有する光記録媒体。
(7)Aが、一般式(II)
【0017】
【化6】

【0018】
(式中、Z1環およびYは、それぞれ前記と同義である)または、一般式(III)
【0019】
【化7】

【0020】
(式中、Z2環は、前記と同義である)で表される(6)記載の光記録媒体。
(8)Aが、一般式(IV)
【0021】
【化8】

【0022】
(式中、R10、lおよびWは、それぞれ前記と同義である)で表される(6)記載の光記録媒体。
(9)金属錯体が、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅の金属錯体である(6)〜(8)のいずれかに記載の光記録媒体。
(10)金属錯体が、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅の金属錯体である(6)〜(8)のいずれかに記載の光記録媒体。
(11)テトラフルオロプロパノール溶液中において、350〜550nmに吸収極大を有することを特徴とする(6)〜(10)のいずれかに記載のスクアリリウム化合物のスクアリリウム化合物の金属錯体を含有する光記録媒体。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、青紫色レーザー光に対する高感度な光応答性等を有するスクアリリウム化合物の金属錯体およびそれを用いた光記録媒体等を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、一般式(I)で表される化合物を化合物(I)という。他の式番号の化合物についても同様である。
一般式の各基の定義において、アルキル基、アルコキシル基、アルカノイル基、アルキルオキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基、アルキルスルホニル基、アルキルチオ基およびアルキルスルフィニル基のアルキル部分としては、例えば、炭素数1〜10の直鎖または分岐状のアルキルおよび炭素数3〜8の環状のアルキル基があげられ、より具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等があげられる。
【0025】
アラルキル基としては、例えば炭素数7〜16のアラルキル基があげられ、より具体的にはベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、フェニルデシル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、ナフチルブチル基、ナフチルペンチル基、ナフチルヘキシル基、アントリルメチル基、アントリルエチル基等があげられる。
【0026】
アルケニル基としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜10のアルケニル基があげられ、より具体的にはビニル基、アリル基、1−プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等があげられる。
アルキニル基としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜10のアルキニル基があげられ、より具体的にはエチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基等があげられる。
【0027】
アリール基、アリールオキシ基、アロイル基、アリールオキシカルボニル基、アロイルオキシ基、アリールスルホニル基およびアリールスルフィニル基のアリール部分としては、例えば炭素数6〜14のアリール基があげられ、より具体的にはフェニル基、ナフチル基、アズレニル基、アントリル基等があげられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。
【0028】
複素環基における複素環としては、芳香族複素環および脂環式複素環があげられる。
芳香族複素環としては、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性芳香族複素環、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性芳香族複素環等があげられ、より具体的にはピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、シンノリン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チオフェン環、フラン環、チアゾール環、オキサゾール環、インドール環、イソインドール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、プリン環、カルバゾール環、イソオキサゾール環、インドリン環等があげられる。
【0029】
脂環式複素環としては、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性脂環式複素環、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性脂環式複素環等があげられ、より具体的にはピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ホモピペリジン環、ホモピペラジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジヒドロベンゾフラン環、テトラヒドロカルバゾール環、ピラン環、チオピラン環等があげられる。
【0030】
およびR、またはRおよびRが、隣接するN−C−Cと一緒になって形成する複素環、RとRが、隣接する窒素原子と一緒になって形成する複素環基における複素環、RとRが、隣接する窒素原子と一緒になって形成する複素環基における複素環、R11とR12が、隣接する窒素原子と一緒になって形成する複素環基における複素環(以下、前記の複素環を、単に、窒素原子を含む複素環と表現することもある)としては、窒素原子を含む芳香族複素環および窒素原子を含む脂環式複素環があげられる。
【0031】
窒素原子を含む芳香族複素環としては、例えば窒素原子を少なくとも1個含む5員または6員の単環性芳香族複素環、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子を少なくとも1個含む縮環性芳香族複素環等があげられ、より具体的にはジヒドロアクリジン環、ジヒドロベンゾインドール環、ジヒドロベンゾイソインドール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、シンノリン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、インドール環、イソインドール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、プリン環、カルバゾール環等があげられる。
【0032】
窒素原子を含む脂環式複素環としては、例えば窒素原子を少なくとも1個含む5員または6員の単環性脂環式複素環、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子を少なくとも1個含む縮環性脂環式複素環等があげられ、より具体的にはピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ホモピペリジン環、ホモピペラジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロカルバゾール環等があげられる。
【0033】
ただし、RおよびR、またはRおよびRが、隣接するN−C−Cと一緒になって形成する複素環は、前記の例示において、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するものに限られる。
Z1環における複素環(以下、前記の複素環を、複素環Aを表現することもある)としては、例えば、前記の複素環の例示において、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するものがあげられる。
【0034】
Z2環における窒素原子を含む複素環(以下、前記の複素環を、複素環Bを表現することもある)としては、例えば、前記の複素環の例示において、少なくとも1つの窒素−炭素二重結合を有するものがあげられる。
互いに隣り合う炭素原子上の2つのRがそれぞれが隣接する2つの炭素原子と一緒になって形成する脂環式炭化水素環、RおよびRがそれぞれが隣接する炭素原子と一緒になって形成する脂環式炭化水素環、および互いに隣り合う炭素原子上の2つのR10がそれぞれが隣接する2つの炭素原子と一緒になって形成する脂環式炭化水素環(以下、前記の脂環式炭化水素環を、単に、脂環式炭化水素環と表現することもある)としては、例えば、炭素数3〜8のものがあげられ、より具体的には、シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキサジエン環等があげられる。
【0035】
互いに隣り合う炭素原子上の2つのRがそれぞれ隣接する2つの炭素原子と一緒になって形成する複素環、RおよびRがそれぞれが隣接する炭素原子と一緒になって形成する複素環、および互いに隣り合う炭素原子上の2つのR10がそれぞれが隣接する2つの炭素原子と一緒になって形成する複素環(以下、前記の複素環を、複素環Cを表現することもある)における複素環としては、例えば、前記複素環の中で少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するものがあげられ、−R−R−、−R−R−、および−R10−R10−が、それぞれ−CH=CH−O−、−CH=CH−S−、−CH=CH−NH−、−N=CH−NH−、−O−CH=CH−、−S−CH=CH−、−NH−CH=CH−、−CH−O−CH−、−CH−S−CH−または−CH−NH−CH−であるのが好ましい。
【0036】
Z1環における芳香族炭化水素環、互いに隣り合う炭素原子上の2つのRがそれぞれが隣接する2つの炭素原子と一緒になって形成する芳香族炭化水素環、RおよびRがそれぞれが隣接する炭素原子と一緒になって形成する芳香族炭化水素環、および互いに隣り合う2つのR10がそれぞれが隣接する2つの炭素原子と一緒になって形成する芳香族炭化水素環(以下、前記の芳香族炭化水素環を、単に、芳香族炭化水素環と表現することもある)としては、例えば、炭素数6〜14のものがあげられ、より具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等があげられる。
【0037】
アミノ基の置換基としては、例えば、1個または2個の置換基、具体的には、アルキル基、アラルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基、アシル基(−CO−D;Dは、アルキル基、アルキニル基またはアリール基を表す。ここで、アルキル基、アルキニル基およびアリール基はそれぞれ前記と同議である)、スルフィニル基(−SO−E;Eは、アルキル基、アルキニル基またはアリール基を表す。ここで、アルキル基、アルキニル基およびアリール基はそれぞれ前記と同議である)等があげられる。ここで、アルキル基、アラルキル基、脂環式炭化水素基における脂環式炭化水素環およびアリール基は、それぞれ前記と同義である。該置換基が2個であるとき、置換基のそれぞれは同一または異なっていてもよい。
【0038】
アリール基、アラルキル基、複素環基、複素環A、複素環B、複素環C、脂環式炭化水素環、芳香族炭化水素環および窒素原子を含む複素環の置換基としては、同一または異なって1〜5個の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、アラルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、アリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、アリールオキシ基、アルカノイル基、アロイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基、アロイルオキシ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノスルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基等があげられる。ここで、ハロゲン原子は、前記と同義である。置換アミノ基の置換基は、前記と同義である。置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基および置換基を有していてもよいアルキニル基の置換基としては、後述する置換基等があげられる。
【0039】
アルキル基、アルコキシル基、アルカノイル基、アルキルオキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基、アルキルスルホニル基、アルキルチオ基およびアルキルスルフィニル基のアルキル部分は、前記のアルキル基と同義である。アルケニル基およびアルキニル基は、それぞれ前記のアルケニル基およびアルキニル基と同義である。
アリール基、アリールオキシ基、アロイル基、アリールオキシカルボニル基、アロイルオキシ基、アリールスルホニル基、およびアリールスルフィニル基のアリール部分は、前記のアリール基と同義である。
【0040】
アルキル基、アルコキシル基、アルケニル基およびアルキニル基の置換基としては、同一または異なって1〜20個の置換基、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アロイル基、アロイルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアミノ基等があげられる。ここで、ハロゲン原子は、前記と同義である。アルコキシル基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基およびアルキルオキシカルボニル基のアルキル部分は、前記のアルキル基と同義である。アルコキシアルコキシル基の2つのアルコキシ部分は、それぞれ前記のアルコキシル基と同義である。アロイル基、アロイルオキシ基およびアリールオキシカルボニル基のアリール部分は、前記のアリール基と同義である。アミノ基の置換基は、前記と同義である。
【0041】
活性水素を有する基としては、例えば、ヒドロキシル基、メルカプト基、置換基を有していてもよいアミノ基、カルボキシル基、スルホ基、アミド基、スルホンアミド基等があげられ、中でも、ヒドロキシル基、カルボキシル基およびスルホ基が好ましい。
金属錯体における金属としては、例えば、アルミニウム、ルテニウム、オスミウム、鉄、白金、亜鉛、ベリリウム、銅、ニッケル、クロム、コバルト、マンガン、イリジウム、バナジウム、チタン等があげられ、中でもアルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅が好ましい。
【0042】
金属と配位化合物とが一緒になった金属錯体は、中性でも、カウンターイオンを有していてもよい。金属錯体がカチオン性である場合には、カウンターイオンは、アニオンとなる。カウンターアニオンとしては、例えば、六フッ化リン酸イオン、フッ素酸イオン、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、臭素酸イオン、ヨウ素酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、六フッ化アンチモン酸イオン、六フッ化スズ酸イオン、ホウフッ化水素酸イオン、四フッ化ホウ素酸イオン、チオシアン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ナフタレンジスルホン酸イオン、ベンゼンカルボン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、トリハロアルキルカルボン酸イオン、アルキル硫酸イオン、トリハロアルキル硫酸イオン、ニコチン酸イオン等があげられる。金属錯体がアニオン性である場合には、カウンターイオンは、カチオンとなる。カウンターカチオンとしては、例えば、Na+、Li+、K+等のアルカリ金属イオン、トリメチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、シアニン色素イオン等の有機カチオン等があげられる。
【0043】
次に化合物(I)の製造法について説明する。
なお、以下に示す製造法において、定義した基が該製造法の条件下で変化するかまたは該製造法を実施するのに不適切な場合、有機合成化学で常用される保護基の導入および除去方法[例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第3版(Protective Groups in Organic Synthesis,third edition)、グリーン(T.W.Greene)著、John Wiley&Sons Inc.(1999年)等に記載の方法]等を用いることにより、目的化合物を製造することができる。また、必要に応じて置換基導入等の反応工程の順序を変えることもできる。
【0044】
化合物(I)は、以下の反応式に従って製造することができる。
反応式(1−a)
【0045】
【化9】

【0046】
反応式(1−b)
【0047】
【化10】

【0048】
反応式(1−c)
【0049】
【化11】

【0050】
[式中、R、R、R、R、R、A、Xおよびkは、それぞれ前記と同義であり、Eは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子またはOR31(式中、R31はアルキル基を表す)を表す]
アルキル基は前記と同義である。

反応式(1−a)
化合物(VII)は、公知の方法、例えば、Journal of Organic Chemistry,1977年,第42巻,第7号,p.1126〜1130、Dyes and Pigments,2001年,第49巻,p.161〜179等に記載の方法等に準じて製造することにより得ることができる。具体的には、化合物(V)と0.4〜2倍モルの化合物(VI)を、要すれば1〜2倍モルの酸性触媒存在下で、溶媒中、0〜120℃で5分〜15時間反応させることにより得られる。
【0051】
溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、トルエン、ベンゼン等の芳香族系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)等があげられる。
【0052】
酸性触媒としては、例えば塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等のハロゲン化アルミニウム、フッ化第二鉄、塩化第二鉄、臭化第二鉄等のハロゲン化第二鉄、酸化第二鉄等の酸化鉄、フッ化第二アンチモン、塩化第二アンチモン等のハロゲン化第二アンチモン、塩化亜鉛、硫酸第二鉄、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸等があげられる。
反応式(1−b)
化合物(VIII)は、化合物(VII)を50〜90容量/容量%の酢酸水溶液中で、90〜110℃で1〜7時間、または50〜99重量%のトリフルオロ酢酸水溶液または濃硫酸中で、40〜60℃で1〜3時間反応させることにより得られる。
反応式(1−c)
化合物(I)は、化合物(VIII)と1.0〜1.5倍モルの化合物(IX)とを、要すれば塩基存在下で、溶媒中、80〜140℃で1〜24時間反応させることにより得られる。
【0053】
溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等の炭素数2〜8のアルコール系溶媒のみ、または該アルコール系溶媒とベンゼン、トルエンもしくはキシレンとの混合溶媒(アルコール10容量/容量%以上)が好ましい。
塩基としては、例えばキノリン、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基等があげられる。塩基の使用量は、化合物(IX)に対して、1.0〜2.0当量であるのが好ましく、1.0〜1.2当量であるのがより好ましい。
【0054】
化合物(VI)は、市販品として入手するか、公知の方法、例えば、精密有機合成[実験マニュアル]、株式会社南江堂,1983年,p.134〜154等に記載の方法等に準じて製造することにより得ることができる。
化合物(IX)は、公知の方法、例えば、社団法人日本化学会編,実験化学講座,第20巻,「有機化合物の合成と反応II ジアゾ,アゾならびにアゾキシ化合物の合成」,丸善株式会社,1956年,p.347〜358、社団法人日本化学会編,新実験化学講座,第14巻,「有機化合物の合成と反応III 含窒素化合物」,丸善株式会社,1978年,p.1516〜1534、Tetrahedron,2005年,第61巻,第24号,p.10738〜10747、Dyes and Pigments,2002年,第54巻,p.189〜200、Dyes and Pigments,2005年,第66巻,p.77〜82等に記載の方法等に準じて製造することにより得ることができる。
【0055】
上記各製造法における中間体および目的化合物は、有機合成化学で常用される分離精製法、例えば、ろ過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。また、中間体においては特に精製することなく次の反応に供することも可能である。
化合物(I)は、製造が容易であり、工業的なスケールで、製造をすることができる。
【0056】
化合物(I)の中には、幾何異性体、光学異性体等の立体異性体、互変異性体等が存在し得るものもあるが、本発明には、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物が使用できる。
化合物(I)の金属錯体は、公知の方法、例えば、国際公開第02/050190号パンフレット等に記載の方法等に準じて製造することができる。具体的には、有機金属化合物または金属塩と、化合物(I)とを、要すれば1〜5倍モルの酢酸の存在下、溶媒中、25〜120℃の温度で、0.1〜30時間反応させることにより化合物(I)の金属錯体を製造することができる。
【0057】
化合物(I)の使用量は、有機金属化合物または金属塩に対して0.5〜5倍モル量であるのが好ましい。
有機金属化合物としては、例えば、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムエトキシド、銅アセチルアセトネート、亜鉛アセチルアセトネート、鉄トリス(2,4−ペンタンジオネート)、トリス(カルボネート)コバルト(III)酸ナトリウム塩等があげられる。
【0058】
金属塩としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化銅、酢酸銅、酢酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸コバルト、塩化コバルト、これらの水和物等があげられる。
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、メチル−tert−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、これらの混合溶媒等があげられる。
【0059】
金属錯体がカウンターイオンを有している場合、適宜塩交換反応でカウンターイオンを交換することができる。
反応後、必要に応じて、有機合成化学で通常用いられる方法(各種カラムクロマトグラフィー法、再結晶法、溶媒による洗浄等)で化合物(I)の金属錯体を精製してもよい。
以下に、化合物(I)の具体例を例示する。表中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、n−Prはプロピル基を表し、i−Prはイソプロピル基を表し、n−Buはブチル基を表し、i−Buはイソブチル基を表し、t−Buはtert−ブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0060】
【化12】

【0061】
【化13】

【0062】
以下、化合物番号(1)のスクアリリウム化合物を化合物(1)という。その他の化合物番号の化合物についても同様である。
本発明に用いられる化合物(I)の金属錯体は、光記録媒体用色素、紫外線吸収剤、3次元記録材料としての二光子吸収用色素、短波長レーザー(例えば青紫色レーザー等)光対応の増感色素等として使用することができる。化合物(I)の金属錯体は優れた耐光性、優れた耐候性、優れた耐湿熱性、優れた塗膜性、優れた溶解性等を有するので、光記録媒体用の色素として適している。
【0063】
本発明の光記録媒体は化合物(I)の金属錯体を含有し、青紫色レーザー光に対する高感度な光応答性、優れた記録信号品質等を有する。
本発明の光記録媒体としては、例えば、基板、反射層、記録層、透明保護層およびカバー層を備えているもの等があげられ、基板上に、反射層、記録層、透明保護層およびカバー層がこの順に設けられているものが好ましい。本発明の光記録媒体としては、例えば、化合物(I)の金属錯体を含有する記録層を有するもの等があげられる。化合物(I)の金属錯体を用いて該記録層を形成するとき、化合物(I)の金属錯体は単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
化合物(I)の金属錯体と他の色素とを併用して用いてもよい。他の色素としては、記録用のレーザー光の波長域に吸収を有するものが好ましい。また、情報記録(記録層、反射層または透明保護層、およびカバー層における熱的変形によりレーザー照射箇所に形成される記録マーク等)の形成が阻害されないようなものを他の色素として用いることが好ましい。他の色素としては、含金属アゾ系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、シアニン系色素、アゾ系色素、化合物(I)の金属錯体以外のスクアリリウム系色素、含金属インドアニリン系色素、トリアリールメタン系色素、メロシアニン系色素、アズレニウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、インドフェノール系色素、キサンテン系色素、オキサジン系色素、ピリリウム系色素等があげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。他の色素のうち770〜830nmの近赤外レーザー光、620〜690nmの赤色レーザー光等のレーザー光を用いた記録に適する色素と化合物(I)の金属錯体とを併用して、複数の波長域のレーザー光での記録が可能である光記録媒体を作製することもできる。
【0065】
記録層は、必要に応じてバインダーを含有してもよい。バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ケトン樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート等があげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
また、記録層は、記録層の安定性や耐光性向上のために、一重項酸素クエンチャーや記録感度向上剤等を含有してもよい。
【0066】
一重項酸素クエンチャーとしては、遷移金属キレート化合物(例えば、アセチルアセトネート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等と遷移金属とのキレート化合物等)等があげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
記録感度向上剤としては、遷移金属等の金属が原子、イオン、クラスター等の形で化合物に含まれるものをいい、例えばエチレンジアミン系錯体、アゾメチン系錯体、フェニルヒドロキシアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトネート系錯体、メタロセン系錯体、ポルフィリン系錯体等の有機金属化合物等があげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
本発明の光記録媒体の記録層の膜厚は1nm〜5μmであるのが好ましく、5〜100nmであるのがより好ましく、さらには20〜60nmであるのが好ましい。
記録層は、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の公知の薄膜形成法で形成することができるが、量産性、コスト面からスピンコート法が好ましい。スピンコート法により記録層を形成する場合、適切な膜厚を得るために、化合物(I)の金属錯体の濃度を0.3〜1.5重量%に調整した溶液を用いることが好ましく、回転数を500〜10000rpmにするのが好ましい。スピンコート法により溶液を塗布した後、加熱、減圧乾燥、溶媒蒸気への曝露等の処理を行ってもよい。
【0068】
溶液を塗布することにより記録層を形成する場合(例えば、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等)に用いる溶液の溶媒としては、基板および記録層を塗布する前に基板上に形成した層(例えば、反射層等)を侵さない溶媒であればよく、特に限定されない。例えば、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の炭化水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のフルオロアルキルアルコール系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル、イソ酪酸メチル等のエステル系溶媒等があげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
本発明の光記録媒体の基板は、レーザー光による記録再生のため、表面上に螺旋状に形成される案内溝が形成されているものが好ましい。基板としては、狭トラックピッチである微細な溝を形成しやすいものが好ましく、具体的にはガラス、プラスチック等があげられる。プラスチックとしては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂等があげられるが、高生産性、コスト、耐吸湿性等の点からポリカーボネート樹脂であるのが好ましい。
【0070】
基板は前記のプラスチックを射出成形して作製するのが好ましい。射出成形により基板を作製する方法としては、案内溝が形成されたNi等の金属からなるスタンパーを用いる方法等があげられる。
該スタンパーを作製するための原盤は、例えば、以下のようにして作製される。円盤状のガラス基板の表面を平滑になるよう研磨する。その基板上に所望の溝深さに応じて厚さを調整したフォトレジストを塗布する。次いで青紫色レーザー光よりも短い波長のレーザー光または電子ビームを用いてフォトレジストを露光し、現像を行うことにより、案内溝が形成された原盤を作製する。
【0071】
次いで、この原盤表面にNi等の導電膜を真空製膜し、メッキ工程を経て、案内溝が形成されたNi等の金属からなるスタンパーを作製する。このスタンパーを用いて前記のプラスチックを射出成形することにより、表面上に案内溝が形成された基板を作製する。
該案内溝としては、凹凸の頂点面と底辺面の高低差(溝深さ)が15〜80nmであるのが好ましく、25〜50nmであるのがより好ましい。凸部と凹部の幅の比率としては40%:60%〜60%:40%(凸部:凹部)の範囲であるのが好ましい。
【0072】
反射層は金属であるのが好ましい。金属としては、金、銀、アルミニウムまたはそれらの合金等があげられるが、550nm以下の波長のレーザー光に対する反射率や表面の平滑性の点から、銀または銀を主成分とする合金が好ましい。該銀を主成分とする合金は銀を90%程度以上含むものが好ましく、銀以外の成分としてCu、Pd、Ni、Si、Au、Al、Ti、Zn、Zr、NbおよびMoの群から選ばれる1種類以上を含むものが好ましい。反射層は、例えば、蒸着法、スパッタリング法(例えば、DCスパッタリング法等)、イオンプレーティング法等によって基板上に形成することができる。記録再生特性を向上させるため、または反射率を調整する等の目的で、反射層と記録層との間に中間層を設けてもよい。中間層としては、具体的には金属、金属酸化物、金属窒化物等があげられる。反射層の膜厚は5〜300nmであるのが好ましく、30〜100nmであるのがより好ましい。
【0073】
透明保護層としては、記録再生時に使用するレーザー光に対して吸収を有しないか、わずかな吸収しか有しないものが好ましく、屈折率の実数部が比較的大きく、1.5〜2.0前後の値を有するものが好ましい。透明保護層としては、具体的には金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、これらの混合物等があげられる。
透明保護層の厚さは、5〜50nmであるのが好ましい。保護層の厚さが5nm以上の場合には、記録層に変形を生じさせて形成した記録マークがこの記録マーク間の未記録部分と明確に分離できるためより良好な信号が得られる。また、保護層の厚さが50nm以下の場合には、透明保護層の変形が生じやすいためより良好な信号が得られる。透明保護層はスパッタリング法(例えば、RFスパッタリング法等)等によって記録層の上に形成することができる。
【0074】
カバー層は、例えば、表面に記録再生レーザー光に対して透明、かつ、粘着力のある接着層を有する厚さ約0.1mmのポリカーボネート製のシートを用い、接着層を介してシートを透明保護層に加圧接着することにより、透明保護層の上に形成することができる。接着層としては、情報記録の際に記録層および透明保護層の変形を阻害しないものが好ましい。カバー層は紫外線硬化樹脂を用いて形成することもでき、該紫外線硬化樹脂としては、接着層と同様に、情報記録の際に記録層および透明保護層の変形を阻害しないものが好ましい。
【0075】
本発明の光記録媒体は化合物(I)の金属錯体を含有することから、記録時に使用するレーザー光の波長は350〜530nmであるのが好ましい。一般的に、記録時に使用するレーザー光の波長が短いほど高密度な記録が可能となる。
レーザー光の具体例としては、例えば、中心波長が405nm、410nm等である青紫色レーザー光、中心波長が515nmである青緑色の高出力半導体レーザー光等があげられ、中でも中心波長が405nmである青緑色の高出力半導体レーザー光が好ましい。
【0076】
基本発振波長が740〜960nmである連続発振可能な半導体レーザー光、半導体レーザー光によって励起されかつ基本発振波長が740〜960nmである連続発振可能な固体レーザー光等を、第二高調波発生素子(SHG)により波長変換することによって得られる光を用いてもよい。SHGとしては、反射対称性を欠くピエゾ素子であればいかなるものでもよいが、KDP(KHPO)、ADP(NHPO)、BNN(BaNaNb15)、KN(KNbO)、LBO(LiB)、化合物半導体等が好ましい。
【0077】
SHGにより波長変換することによって得られる光(第二高調波)の具体例としては、基本発振波長が860nmである半導体レーザー光を波長変換した430nm光、基本発振波長が860nmである半導体レーザー励起の固体レーザー光を波長変換した430nm光等があげられる。
本発明の光記録媒体はBDであるのが好ましい。BDは波長405nmの青紫色レーザーを使用し、対物レンズのNAを0.85とすることによりレーザースポット径を小さくして、より高密度の情報を記録する光記録媒体である。BD−Rでは基板上に反射層と、記録層と、透明保護層と、基板よりも薄いカバー層とが順次積層されている。カバー層側から青紫色レーザー光を照射して記録再生を行う。
【実施例】
【0078】
以下、実施例および参考例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例および参考例に限定されることはない。
なお、参考例で用いられるプロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)は、400MHzで測定されたものであり、化合物および測定条件によって交換性プロトンが明瞭には観測されないことがある。なお、シグナルの多重度の表記としては通常用いられるものを用いるが、brとは見かけ上幅広いシグナルであることを表す。吸収スペクトルはU−4000形分光光度計[(株)日立製作所製]を使用し、溶液中での吸収極大波長(λmax)とモル吸光係数(ε)を測定(800〜300nm)した。分子量測定は、JMS−700[日本電子製]を使用し、加速電圧:8kV、イオン化:FAB(+/−)、FABガス:キセノン、FABマトリックス:m−ニトロベンジルアルコールで測定した。
(スクアリリウム化合物の製造)
参考例1−1:4−N−エチルアミノ−2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメチルアゾベンゼン(AZO1)の合成
2−アミノ−4−メチルフェノール6.39gを水100mlおよび36%塩酸7.14gに溶解し、氷水で冷却した。反応液温を5℃以下に保って、亜硝酸ナトリウム水溶液(亜硝酸ナトリウム:2.77g、水:25ml)を注加した[溶液1]。別途調製した3−エチルアミノ−4−メチルフェノールのアルカリ水溶液(3−エチルアミノ−4−メチルフェノール:6.06g、水:100ml、水酸化ナトリウム:4.00g)に反応液温10℃以下に保つよう溶液1を注加した。室温にて約1時間反応後、3mol/l塩酸水溶液を添加し、弱酸性にしたところ、橙色固体が析出した。析出固体を濾取し、水洗後、得られた固体をメタノールで精製した。析出固体を濾取し、冷メタノールで洗浄し、4−N−エチルアミノ−2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメチルアゾベンゼン(AZO1)9.61g(収率84%)を得た。
H−NMR (400MHz)δ(CDCl) ppm:1.32−1.36(3H,t)、2.12(3H,s)、2.33(3H,s)、3.27−3.30(2H,q)、4.17(1H,s)、6.11(1H,s)、6.86−6.88(1H,d)、6.99−7.02(1H,dd)、7.24(1H,dd)、7.33(1H,d)、12.2(1H,s)、13.4(1H,s).
吸収極大波長(CHCl):466.0nm
モル吸光係数(CHCl):51200(mol/l)−1・cm−1
参考例1−2:4−N−エチルアミノ−2,2’−ジヒドロキシ−5−メチルアゾベンゼン(AZO2)の合成
2−アミノフェノール4.38gを水100mlおよび36%塩酸11.2gに溶解し、氷水で冷却した。反応液温を5℃以下に保って、亜硝酸ナトリウム水溶液(亜硝酸ナトリウム:2.77g、水:25ml)を注加した[溶液2]。別途調製した3−エチルアミノ−4−メチルフェノールのアルカリ水溶液(3−エチルアミノ−4−メチルフェノール:6.07g、水:175ml、水酸化ナトリウム:4.06g)に反応液温10℃以下に保つよう溶液2を注加した。室温にて約2時間反応後、3mol/l塩酸水溶液を添加し、弱酸性にしたところ、赤橙色固体が析出した。析出固体を濾取し、水洗後、得られた固体をメタノールで精製した。析出固体を濾取し、冷メタノールで洗浄し、4−N−エチルアミノ−2,2’−ジヒドロキシ−5−メチルアゾベンゼン(AZO2)3.85g(収率35%)を得た。
H−NMR (400MHz)δ(CDCl) ppm:1.32−1.36(3H,t)、2.12(3H,s)、3.28−3.31(2H,q)、4.19(1H,s)、6.11(1H,s)、6.94−6.98(2H,m)、7.17−7.22(1H,t)、7.25(1H,s)、7.51−7.54(1H,dd)、12.4(1H,s)、13.4(1H,s).
吸収極大波長(CHCl):462.5nm
モル吸光係数(CHCl):41100(mol/l)−1・cm−1
参考例1−3:化合物(3)
3−ヒドロキシ−4−[3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル]シクロブテン−1,2−ジオン661mgと4−N−エチルアミノ−2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメチルアゾベンゼン865mgとを、ブタノール10mlおよびトルエン20ml中、100〜120℃で5.0時間反応させた。その後、トルエンを留去し、残渣にメタノールを添加し、析出した固体を濾取し、メタノール、水、メタノールで洗浄し、化合物(3)1110mg(収率76%)を得た。
H−NMR (400MHz)δ(DMSO−d) ppm:1.24−1.28(3H,t)、2.19(6H,s)、2.23(3H,s)、2.31(3H,s)、4.39(2H,br)、6.98−7.00(1H,d)、7.22(1H,s)、7.25−7.28(1H,dd)、7.70(1H,s)、7.73(2H,s)、7.84(1H,s)、9.31(1H,s)、11.2(1H,s)、11.6(1H,s).
吸収極大波長(CHCl):416.0nm
モル吸光係数(CHCl):47100(mol/l)−1・cm−1
参考例1−4:化合物(7)
3−ヒドロキシ−4−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロブテン−1,2−ジオン913mgと4−N−エチルアミノ−2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメチルアゾベンゼン865mgとを、ブタノール7mlおよびトルエン16ml中、100〜120℃で5.5時間反応させた。その後、溶媒を留去し、参考例1−3と同様な操作を行い、化合物(7)1010mg(収率59%)を得た。
H−NMR (400MHz)δ(DMSO−d) ppm:1.25−1.28(3H,t)、1.37(18H,s)、2.21(3H,s)、2.30(3H,s)、4.38(2H,br)、6.97−6.99(1H,d)、7.19(1H,s)、7.24−7.26(1H,dd)、7.69(1H,s)、7.83(1H,s)、7.88(1H,s)、7.99(2H,s)、9.31(1H,s)、11.2(1H,s)、11.6(1H,s).
吸収極大波長(CHCl):424.0nm
モル吸光係数(CHCl):46400(mol/l)−1・cm−1
参考例1−5:化合物(14)
3−ヒドロキシ−4−[3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル]シクロブテン−1,2−ジオン661mg、4−N−エチルアミノ−2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメチルアゾベンゼン865mg、ブタノール10mlおよびトルエン20mlの代わりに3−ヒドロキシ−4−(3,5,6−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロブテン−1,2−ジオン699mg、4−N−エチルアミノ−2,2’−ジヒドロキシ−5−メチルアゾベンゼン841mg、ブタノール7mlおよびトルエン15mlを用いて参考例1−3と同様な操作を行い、化合物(14)864mg(収率59%)を得た。
H−NMR (400MHz)δ(DMSO−d) ppm:1.26−1.29(3H,t)、2.12(3H,s)、2.15(3H,s)、2.23(3H,s)、4.36(1H,br)、4.50(1H,br)、7.02−7.06(1H,dt)、7.08−7.11(1H,dd)、7.23(1H,s)、7.42−7.46(1H,dt)、7.84(1H,s)、7.87−7.89(1H,dd)、7.94(1H,s)、9.03(1H,s)、11.5(1H,s)、11.6(1H,s).
吸収極大波長(CHCl):429.0nm
モル吸光係数(CHCl):46400(mol/l)−1・cm−1
参考例1−6.化合物(17)
3−ヒドロキシ−4−[3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル]シクロブテン−1,2−ジオン657mgと4−N−エチルアミノ−2,2’−ジヒドロキシ−5−メチルアゾベンゼン843mgとを、ブタノール10mlおよびトルエン20ml中、115〜130℃で2.0時間反応させた。その後、析出した固体を濾取し、メタノール、水、メタノールで洗浄し、化合物(17)1040mg(収率73%)を得た。
H−NMR (400MHz)δ(DMSO−d) ppm:1.25−1.28(3H,t)、2.19(6H,s)、2.23(3H,s)、4.41(2H,br)、7.02−7.06(1H,dt)、7.08−7.11(1H,dd)、7.22(1H,s)、7.42−7.46(1H,dt)、7.73(2H,s)、7.84(1H,s)、7.87−7.90(1H,dd)、9.31(1H,s)、11.5(1H,s)、11.6(1H,s).
吸収極大波長(CHCl):415.0nm
モル吸光係数(CHCl):47200(mol/l)−1・cm−1
参考例1−7.化合物(21)
3−ヒドロキシ−4−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロブテン−1,2−ジオン910mgと4−N−エチルアミノ−2,2’−ジヒドロキシ−5−メチルアゾベンゼン824mgとを、ブタノール7mlおよびトルエン17ml中、115〜130℃で7.0時間反応させた。その後、溶媒を留去し、参考例1−3と同様な操作を行い、化合物(21)434mg(収率26%)を得た。
H−NMR (400MHz)δ(DMSO−d)ppm:1.27−1.30(3H,t)、1.39(18H,s)、4.40(2H,br)、7.02−7.06(1H,t)、7.09−7.11(1H,d)、7.21(1H,s)、7.42−7.46(1H,t)、7.85−7.89(3H,m)、8.00(1H,s)、11.5(1H,s)、11.6(1H,s).
吸収極大波長(CHCl): 426.5nm
モル吸光係数(CHCl): 50600(mol/l)−1・cm−1
参考例1−8.化合物(28)
3−ヒドロキシ−4−(3,5,6−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロブテン−1,2−ジオン701mgと4−N−エチルアミノ−2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメチルアゾベンゼン865mgとを、ブタノール7mlおよびトルエン15ml中、115〜130℃で5.5時間反応させた。その後、トルエンを留去し、残渣にメタノールを添加し、析出した固体を濾取し、メタノール、水、メタノールで洗浄した。取得固体をメタノールとトルエンの混合溶媒で精製し、化合物(28)768mg(収率51%)を得た。
H−NMR (400MHz)δ(DMSO−d) ppm:1.25−1.29(3H,t)、2.12(3H,s)、2.15(3H,s)、2.23(3H,s)、2.31(3H,s)、4.36(1H,br)、4.50(1H,br)、6.98−7.00(1H,d)、7.23(1H,s)、7.25−7.28(1H,dd)、7.69−7.70(1H,d)、7.84(1H,s)、7.94(1H,s)、9.03(1H,s)、11.2(1H,s)、11.6(1H,s).
吸収極大波長(CHCl):430.5nm
モル吸光係数(CHCl):42100(mol/l)−1・cm−1
(スクアリリウム金属錯体化合物の製造)
実施例1:化合物(3)とコバルトとの2:1錯体[化合物(3−CO)]
化合物(3)486mg、トリエチルアミン304mgおよび酢酸コバルト四水和物126mgを、アセトニトリル10ml中、55℃で2.0時間反応させた。その後、反応液を水に注ぎ、析出した固体を濾取して水で洗浄することにより、トリエチルアンモニウムカチオンをカウンターカチオンとする化合物(3−CO)345mg(収率61%)を得た。
吸収極大波長(メタノール):532.0,413.5nm
モル吸光係数(メタノール):35900,78100(mol/l)−1・cm−1
分子量: 1127(カチオン:102、アニオン:1025)
[FAB−MS(+):m/z 1128(M+H),1027,102(HNEt
[FAB−MS(−):m/z 1025(化合物(3)−4H+コバルト)
実施例2:化合物(7)とコバルトとの2:1錯体[化合物(7−CO)]
化合物(7)570mg、トリエチルアミン304mgおよび酢酸コバルト四水和物125mgを、アセトニトリル10ml中、54℃で2.0時間反応させた。その後、実施例1と同様の操作を行い、トリエチルアンモニウムカチオンをカウンターカチオンとする化合物(7−CO)276mg(収率43%)を得た。
吸収極大波長(メタノール):531.5,413.0nm
モル吸光係数(メタノール):47100(mol/l)−1・cm−1
分子量:1295(カチオン:102、アニオン:1193)
[FAB−MS(+):m/z 1194,1195,102(HNEt
[FAB−MS(−):m/z 1193(化合物(7)−4H+コバルト)
実施例3:化合物(14)とコバルトとの2:1錯体[化合物(14−CO)]
化合物(14)399mg、トリエチルアミン250mgおよび酢酸コバルト四水和物103mgを、アセトニトリル10ml中、50℃で1.0時間反応させた。その後、実施例1と同様の操作を行い、化合物(14−CO)223mg(収率48%)を得た。
吸収極大波長(メタノール):525.0,425.0nm
モル吸光係数(メタノール):48100,34900(mol/l)−1・cm−1
実施例4:化合物(17)とコバルトとの2:1錯体[化合物(17−CO)]
化合物(17)472mg、トリエチルアミン307mgおよび酢酸コバルト四水和物127mgを、アセトニトリル10ml中、50℃で1.0時間反応させた。その後、実施例1と同様の操作を行い、トリエチルアンモニウムカチオンをカウンターカチオンとする化合物(17−CO)168mg(収率31%)を得た。
吸収極大波長(メタノール):522.5,413.5nm
モル吸光係数(メタノール):48500,52600(mol/l)−1・cm−1
実施例5:化合物(21)とコバルトとの2:1錯体[化合物(21−CO)]
化合物(21)278mg、トリエチルアミン152mg、酢酸コバルト四水和物63mgを、アセトニトリル5ml中、54℃で2.0時間反応させた。その後、実施例1と同様の操作を行い、トリエチルアンモニウムカチオンをカウンターカチオンとする化合物(21−CO)71mg(収率23%)を得た。
吸収極大波長(メタノール):524.0,413.5nm
モル吸光係数(メタノール): 50800,45900(mol/l)−1・cm−1
分子量:1267(カチオン:102、アニオン:1165)
[FAB−MS(+):m/z 1166,1167,102(HNEt
[FAB−MS(−):m/z 1165(化合物(21)−4H+コバルト)
実施例6:化合物(28)とコバルトとの2:1錯体[化合物(28−CO)]
化合物(28)500mg、トリエチルアミン304mgおよび酢酸コバルト四水和物125mgを、アセトニトリル10ml中、55℃で2.0時間反応させた。その後、実施例1と同様の操作を行い、化合物(28−CO)306mg(収率53%)を得た。
吸収極大波長(メタノール):530.5,420.0nm
モル吸光係数(メタノール):50900,33600(mol/l)−1・cm−1
溶解性試験:
化合物(3−CO)、(7−CO)、(21−CO)および(28−CO)について、TFPに対する溶解性を調べた。
【0079】
上記のそれぞれのスクアリリウム化合物の金属錯体とTFPとを混合し、室温にて30分間超音波振動を加えた後、混合物を目視で観察した。結果を表1に示す。表1中、溶解性試験1においては、スクアリリウム化合物の金属錯体10mgとTFP990mgとを用いて前記の操作を行い、溶解性試験2においては、スクアリリウム化合物の金属錯体20mgとTFP980mgとを用いて前記の操作を行った。化合物(3−CO)、(7−CO)、(21−CO)および(28−CO)は、それぞれTFPに対する優れた溶解性を有することがわかる。
【0080】
【表1】

【0081】
塗膜性試験:
スクアリリウム化合物の金属錯体として、化合物(3−CO)、(7−CO)、(21−CO)および(28−CO)を用いた。
上記のそれぞれのスクアリリウム化合物の金属錯体20mgをTFP980mgに溶解し、テフロン(登録商標)製フィルター(Whatman社製、孔径0.45μm)で濾過し、スクアリリウム化合物の金属錯体の溶液をそれぞれ得た。基板として、ポリカーボネート樹脂(太佑機材社製;5cm×5cm、厚さ1mm)を用いた。ミカサ社製1H-SXを用いてスピンコート法(3000rpm、30秒間、溶液の使用量;10〜15滴)にて該溶液を基板上に塗布し、70℃で30分間オーブン中で乾燥して、スクアリリウム化合物の金属錯体の薄膜をそれぞれ得た。該薄膜を目視で観察した結果を表2に記す。化合物(3−CO)、(7−CO)、(21−CO)および(28−CO)は、それぞれ優れた塗膜性を有することがわかる。
【0082】
【表2】

【0083】
耐光性試験:
基板としてポリカーボネート樹脂の代わりにガラス(太佑機材社製;2cm×2cm、厚さ2mm)を用いる以外は塗膜性試験と同様にして、化合物(3−CO)、(7−CO)、(21−CO)および(28−CO)の薄膜をそれぞれ得た。スガ試験機社製デューパネル・光コントロールウェザーメーターDPWL−5R型を用いて、該薄膜に15W/mの光量にて45℃で10時間光照射した。耐光性試験前後において、吸収極大波長における吸光度を分光光度計を用いて測定した。耐光性試験前の吸収極大波長における吸光度(I)に対する耐光性試験後の吸収極大波長における吸光度(I)を表3に示す。I/Iが大きいものほど、優れた耐光性を有することを表す。(3−CO)、(7−CO)、(21−CO)および(28−CO)は、それぞれ優れた耐光性を有することがわかる。
【0084】
【表3】

【0085】
記録感度試験:
塗膜性試験と同様にして、ポリカーボネート板(5cm×5cm、厚さ1mm;太佑機材株式会社製)上に化合物(3−CO)および化合物(7−CO)の色素膜を作製した。さらにこれらの色素膜に対し、波長405nm、開口数NA0.85のピックアップヘッドをもつナノ加工装置(パルステック工業(株)製NEO−1000)を用い、線速度9.84m/秒にて、レーザーの出力を3〜7mWに変化させ、レーザー照射試験を実施した。なお、記録ピットの間隔は、半径方向のドット間隔(トラックピッチ):0.32μm、回転方向のドット間隔:0.50μmに設定した。
【0086】
続いて、各レーザー出力条件でレーザー照射試験を行った該塗膜の表面を、走査型顕微鏡(SEM)で観察し、該塗膜の熱的変形による記録ピットの形成が確認される最高記録感度(mW)を測定した。結果を表4に記す。
【0087】
【表4】

【0088】
その結果、化合物3−COまたは7−COを用いて作製した色素膜は、記録感度が高いことを確認できた。これにより、実施例で製造したスクアリリウム化合物の金属錯体を含有する色素膜は青紫色レーザー光に対する高感度な光応答性を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明により、青紫色レーザー光に対する高感度な光応答性等を有するスクアリリウム化合物の金属錯体およびそれを用いた光記録媒体等を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、アリールオキシ基、アルカノイル基、アロイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基、アロイルオキシ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノスルホニル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、置換基を有してもよい複素環基またはNR(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表すか、RとRが隣接する窒素原子と一緒になって置換基を有していてもよい複素環基を形成する)を表し;kは0〜5の整数を表し;ここに、kが2〜5の場合、それぞれのRは同一または異なってもよく、さらに互いに隣り合う炭素原子上の2つのRがそれぞれ隣接する2つの炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素環または置換基を有していてもよい複素環を形成してもよく;Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し;R、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子またはNR(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表すか、RとRが隣接する窒素原子と一緒になって置換基を有していてもよい複素環基を形成する)を表し、RおよびR、またはRおよびRは隣接するN−C−Cと一緒になって、置換基を有していてもよい複素環を形成してもよく、RとRはそれぞれが隣接する炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素環または置換基を有していてもよい複素環を形成してもよく;Xは、活性水素を有する基を表し;Aは、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよい複素環基を表す]で表されるスクアリリウム化合物の金属錯体。
【請求項2】
Aが、一般式(II)
【化2】

(式中、Z1環は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環または置換基を有していてもよい複素環を表し、Yは、活性水素を有する基を表す)または、一般式(III)
【化3】

(式中、Z2環は、置換基を有していてもよい窒素原子を含む複素環を表す)で表される請求項1記載のスクアリリウム化合物の金属錯体。
【請求項3】
Aが、一般式(IV)
【化4】

[式中、R10は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、アリールオキシ基、アルカノイル基、アロイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基、アロイルオキシ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノスルホニル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、置換基を有してもよい複素環基、またはNR1112(式中、R11およびR12は、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表すか、R11とR12が隣接する窒素原子と一緒になって置換基を有していてもよい複素環基を形成する)を表し;lは0〜4の整数を表し;ここに、lが2〜4の場合、それぞれのR10は同一または異なってもよく、さらに互いに隣り合う炭素原子上の2つのR10がそれぞれが隣接する2つの炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素環または置換基を有していてもよい複素環を形成してもよく;Wは、活性水素を有する基を表す〕で表される請求項1記載のスクアリリウム化合物の金属錯体。
【請求項4】
金属錯体が、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅の金属錯体である請求項1〜3のいずれかに記載のスクアリリウム化合物の金属錯体。
【請求項5】
金属錯体が、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅の金属錯体である請求項1〜3のいずかに記載のスクアリリウム化合物の金属錯体。
【請求項6】
式(I)
【化5】

(式中、R、R、R、R、R、X、Aおよびkは、それぞれ前記と同義である)で表されるスクアリリウム化合物の金属錯体を含有する光記録媒体。
【請求項7】
Aが、一般式(II)
【化6】

(式中、Z1環およびYは、それぞれ前記と同義である)または、一般式(III)
【化7】

(式中、Z2環は、前記と同義である)で表される請求項6記載の光記録媒体。
【請求項8】
Aが、一般式(IV)
【化8】

(式中、R10、lおよびWは、それぞれ前記と同義である)で表される請求項6記載の光記録媒体。
【請求項9】
金属錯体が、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅の金属錯体である請求項6〜8のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項10】
金属錯体が、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅の金属錯体である請求項6〜8のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項11】
テトラフルオロプロパノール溶液中において、350〜550nmに吸収極大を有することを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の光記録媒体。

【公開番号】特開2010−100669(P2010−100669A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270624(P2008−270624)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000162607)協和発酵ケミカル株式会社 (60)
【Fターム(参考)】