スクラッチ印刷物の製造方法及びスクラッチ印刷物
【課題】 スクラッチ印刷物の易剥離層５の上層に設けられる隠蔽層６を、低コストで、且つ、短時間で設けることができる実用性に秀れたスクラッチ印刷物の製造方法を提供する。
【解決手段】 下地ａの情報層１の上層に、有色インキ３ａの下地ａへの浸透を阻止すると共に該有色インキ３ａとの剥離性に秀れた性質を有する前記易剥離層５としての先刷り印刷層２を印刷して設け、この先刷り印刷層２の上層に前記有色インキ３ａを印刷し着肉させ、更に、この有色インキ３ａを覆うようにして、乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層４を印刷して設けると共に、該後刷り印刷層４と前記先刷り印刷層２とで有色インキ３ａを先刷り印刷層２表面方向に圧延して、前記隠蔽層６としての有色インキ層３を形成する。
【解決手段】 下地ａの情報層１の上層に、有色インキ３ａの下地ａへの浸透を阻止すると共に該有色インキ３ａとの剥離性に秀れた性質を有する前記易剥離層５としての先刷り印刷層２を印刷して設け、この先刷り印刷層２の上層に前記有色インキ３ａを印刷し着肉させ、更に、この有色インキ３ａを覆うようにして、乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層４を印刷して設けると共に、該後刷り印刷層４と前記先刷り印刷層２とで有色インキ３ａを先刷り印刷層２表面方向に圧延して、前記隠蔽層６としての有色インキ層３を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、スクラッチ印刷物の製造方法、及び、スクラッチ印刷物に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、ゲーム用のカードや、抽選券などにおいて、スクラッチ印刷物が広く利用されている。
【０００３】
これらの一般的なスクラッチ印刷物は、コート紙などの下地に、「当たり」「はずれ」などの表示部が印刷された情報層を設け、この下地の情報層の上層に銀インキなどの有色インキを印刷して、前記表示部を視認できないように隠蔽する隠蔽層を設け、この隠蔽層を、コインや爪などで擦ってスクラッチオフ（剥離除去）することで、下地に印刷された情報を視認できるように構成されている。
【０００４】
スクラッチ印刷物としての特性を出すために、前記隠蔽層には、下地に印刷された表示部を隠蔽する隠蔽性と、下地からスクラッチオフできる剥離性とを有することが必須である。
【０００５】
そこで、一般的なスクラッチ印刷物において、隠蔽層の下層には必ず剥離ニスを印刷して形成した易剥離層が設けられており、この易剥離層の上層には、一般的には、シルクスクリーン印刷用の有色インキをシルクスクリーン印刷によって形成した隠蔽層が設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
ところで、前記シルクスクリーン印刷は、オフセット印刷に比べて、印刷コストが高く、印刷にかかる時間が長く、量産性に乏しいなどの欠点があり、結果的に、スクラッチ印刷物を製造する際に必須のシルクスクリーン印刷工程が、スクラッチ印刷物のコスト性や量産性を損ねる原因となっている。
【０００７】
そこで、最も一般的に使用される印刷方式であると共に、コスト面や、印刷速度や、量産性に秀れたオフセット印刷によって、スクラッチ印刷物の前記隠蔽層の製造の実現が望まれる。
【０００８】
しかし、前記隠蔽層を形成すべく、通常のオフセット印刷用のプロセスインキなどの油系の有色インキを前記易剥離層の上層にオフセット印刷して隠蔽層を形成しようとしても、隠蔽性及び剥離性に秀れた隠蔽層を形成することは困難である。
【０００９】
具体的には、スクラッチ印刷物の前記隠蔽層を製造する際に一般的に使用される有色インキは、ゴム系の有色インキであり、これは、前記易剥離層からの剥離性を考慮した結果採用されるものであって、ゴム系の有色インキで形成された隠蔽層は前記易剥離層からの剥離性を極めて長期間保持できるものであるが、これに対して、通常のオフセット印刷用のプロセスインキなどの油性の有色インキで隠蔽層を形成した場合は、酸化重合乾燥によって隠蔽層が硬化し、これが易剥離層との剥離性を損ねる原因となってしまい、前記易剥離層との剥離性を著しく損ね、コインや爪などで擦って剥離除去するのが困難となり、スクラッチオフできなくなってしまうなど、剥離性の面での問題がある。
【００１０】
また、前記易剥離層を形成する剥離ニスは乾燥すると皮膜化し、有色インキを弾く性質を有するが故に、例えば、被印刷物の素材を問わないシルクスクリーン印刷なら、この易剥離層の上層に有色インキを厚盛りでベタ刷り印刷することができるが、これに対して、オフセット印刷でプロセスインキなどの通常の有色インキを印刷しようとしても、この有色インキが易剥離層の皮膜化した表面に弾かれて良好に着肉せず、無数の小さな液滴状になって前記易剥離層の表面に複数点在状態に着肉することとなる。即ち、非常に細かな水玉模様のように印刷されてしまうので、通常のベタ刷り印刷によって出る色の濃さに比べて、非常に薄い色になってしまい、下層が簡単に透けて見えてしまうので、隠蔽性の面でも問題がある。
【００１１】
本発明は、上述のような問題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果完成したものであって、前記易剥離層の上層に有色インキを印刷した際、たとえこの有色インキが弾かれて良好に着肉しなかったとしても、更にこの有色インキを覆うようにして後刷り印刷層を印刷して設け、この後刷り印刷層と前記易剥離層とで前記有色インキを易剥離層表面方向に圧延するとこによって、通常のベタ刷り印刷と略同様の濃い色の有色インキ層を形成することができ、しかも、この有色インキ層を、前記易剥離層によって下層への浸透乾燥を阻止すると共に、この易剥離層及び後刷り印刷層によって挟み込み空気との接触を阻害し酸化重合乾燥を阻害することで、この有色インキ層の、前記易剥離層からの剥離性を損ねる原因となる乾燥による硬化を極端に遅らせて、極めて長期間易剥離層からの秀れた剥離性を保持させることができ、つまり、スクラッチ印刷物の隠蔽層に必須の隠蔽性及び剥離性を有する有色インキ層が形成されることとなるから、従って、油系インキなどの一般的なオフセット印刷用の有色インキを用いて、オフセット印刷によって極めて簡単に前記隠蔽層としての有色インキ層を前記易剥離層の上層に設けることが可能となるから、それだけ低コストで、印刷時間を短縮でき、量産性に秀れた極めて実用性の高い画期的なスクラッチ印刷物を提供することが可能となる極めて実用性に秀れた画期的で商品価値の高いスクラッチ印刷物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【００１３】
下地ａに文字や絵柄などの表示部ｉを印刷して情報層１を設け、この下地ａの情報層１の上層には易剥離層５が設けられ、この易剥離層５の上層には有色インキ３ａで形成され前記表示部ｉを隠蔽する隠蔽層６が設けられ、この隠蔽層６をコインや爪などの引掻体ｂで擦って前記易剥離層５から剥離除去することで前記表示部ｉを視認し得るように構成されたスクラッチ印刷物の製造方法であって、前記下地ａの情報層１の上層に、有色インキ３ａの下地ａへの浸透を阻止すると共に該有色インキ３ａとの剥離性に秀れた性質を有する前記易剥離層５としての先刷り印刷層２を印刷して設け、この先刷り印刷層２の上層に前記有色インキ３ａを印刷し着肉させ、更に、この有色インキ３ａを覆うようにして、乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層４を印刷して設けると共に、該後刷り印刷層４と前記先刷り印刷層２とで有色インキ３ａを先刷り印刷層２表面方向に圧延して、前記隠蔽層６としての有色インキ層３を形成することを特徴とするスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００１４】
また、前記有色インキ３ａはオフセット印刷用の有色インキ３ａであって、前記先刷り印刷層２の上層にオフセット印刷によって着肉させることを特徴とする請求項１記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００１５】
また、前記有色インキ３ａは、前記先刷り印刷層２が乾燥した後、この先刷り印刷層２の上層に印刷し着肉させることを特徴とする請求項１，２のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００１６】
また、前記後刷り印刷層４は、前記有色インキ３ａを前記先刷り印刷層２の上層に着肉させた後、該有色インキ３ａが酸化重合乾燥により硬化することを阻止し得るように、直ちに該有色インキ３ａを覆うようにして設けることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００１７】
また、前記先刷り印刷層２は、剥離ニスで形成した構成とすることを特徴とする請求項１〜４のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００１８】
また、前記後刷り印刷層４は、剥離ニス若しくはオーバープリントニスで形成した仕上げニス層７であることを特徴とする請求項１〜５のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００１９】
また、前記後刷り印刷層４は、オフセット印刷によって前記有色インキ３ａを覆うようにして設けることを特徴とする請求項１〜６のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００２０】
また、前記先刷り印刷層２は、オフセット印刷によって前記下地ａの情報層１の上層に設けることを特徴とする請求項１〜７のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００２１】
また、前記情報層１は、オフセット印刷によって前記下地ａの上層に表示部ｉを印刷して設けることを特徴とする請求項１〜８のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００２２】
また、下地ａの上層に文字や絵柄などの表示部ｉを印刷した情報層１を設け、この下地ａの情報層１の上層には易剥離層５が設けられ、この易剥離層５の上層には前記表示部ｉを隠蔽する隠蔽層６が設けられ、隠蔽層６をコインや爪などの引掻体ｂで擦って前記易剥離層５から剥離除去することで前記表示部ｉを視認し得るように構成されたスクラッチ印刷物の製造方法であって、前記下地ａの情報層１の上層に、オフセット印刷によって剥離ニスを印刷して易剥離層５を設け、この易剥離層５が皮膜化した後、この易剥離層５の上層にオフセット印刷によって前記有色インキ３ａを着肉し、更に該有色インキ３ａを覆うようにしてオフセット印刷によって剥離ニス若しくはオーバープリントニスを印刷して仕上げニス層７を設けると共に、該仕上げりニス層７と前記易剥離層５とで前記有色インキ３ａを易剥離層５表面方向に圧延して前記隠蔽層６としての有色インキ層３を形成することを特徴とするスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００２３】
また、下地ａに文字や絵柄などの表示部ｉを印刷して情報層１を設け、この下地ａの情報層１の上層には易剥離層５が設けられ、この易剥離層５の上層には有色インキ３ａで形成され前記表示部ｉを隠蔽する隠蔽層６が設けられ、隠蔽層６をコインや爪などの引掻体ｂで擦って前記易剥離層５から剥離除去することで前記表示部ｉを視認し得るように構成されたスクラッチ印刷物であって、前記下地ａの情報層１の上層に、前記有色インキ３ａの下地ａへの浸透を阻止すると共に該有色インキ３ａとの剥離性に秀れた性質を有する易剥離層５としての先刷り印刷層２を設け、この先刷り印刷層２の上層には前記有色インキ３ａで形成した前記隠蔽層を設け、この隠蔽層６の上層には乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層４を被覆状態に設け、前記隠蔽層６は、前記先刷り印刷層２の上層に有色インキ３ａを印刷し、更にこの有色インキ３ａを覆うようにして前記後刷り印刷層４を印刷し、この後刷り印刷層４と前記先刷り印刷層２とで有色インキ３ａを先刷り印刷層２表面方向に圧延して形成した有色インキ層３であることを特徴とするスクラッチ印刷物に係るものである。
【００２４】
また、前記下地ａの情報層１の上層にオフセット印刷によってオフセット印刷用の剥離ニスを印刷して形成した前記易剥離層５を設け、この易剥離層５の上層にはオフセット印刷用の有色インキ３ａで形成した前記隠蔽層６を設け、この隠蔽層６の上層にはオフセット印刷によってオフセット印刷用の剥離ニス若しくはオーバープリントニスを印刷して形成した仕上げニス層７を被覆状態に設け、前記隠蔽層６としての有色インキ層３は、前記易剥離層５の上層に有色インキ３ａをオフセット印刷し、更にこの有色インキ３ａを覆うように前記仕上げニス層７をオフセット印刷し、この仕上げニス層７と前記易剥離層５とで有色インキ３ａを易剥離層５表面方向に圧延して形成した構成とすることを特徴とする請求項１１記載のスクラッチ印刷物に係るものである。
【発明の効果】
【００２５】
本発明は上述のようにしたから、易剥離層としての先刷り印刷層の上層に有色インキを印刷して着肉させた際に、たとえ該有色インキが該先刷り印刷層に弾かれて良好に着肉せず、細かな水玉模様のようになって非常に薄い色に印刷されてしまったとしても、この有色インキを覆うように後刷り印刷層を印刷して設けることで、有色インキを前記易剥離層としての先刷り印刷層表面方向に圧延して、通常のベタ刷り印刷のような濃い色の有色インキ層を形成することができ、しかも、たとえ該有色インキが通常の油系やシンナー系などの有色インキで、酸化重合乾燥によって硬化すると前記易剥離層からの剥離性を損ねるという性質を有していたとしても、この有色インキを覆うようにして設けられる後刷り印刷層が、乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れるという性質を有するが故に、前記有色インキ層は、先刷り印刷層及び後刷り印刷層によって、下地への浸透乾燥はもちろん、酸化重合乾燥も阻害されるから、乾燥による硬化が可及的に阻止され（極端に遅らされ）、極めて長期間、前記易剥離層からの秀れた剥離性を保持することができるものである。
【００２６】
よって、有色インキの性質や、この有色インキを前記易剥離層としての先刷り印刷層の上層に印刷する際の印刷方式に関わりなく、この先刷り印刷層の上層に、該先刷り印刷層からの剥離性に秀れ、且つ、該先刷り印刷層の下層に設けられる表示部を良好に隠蔽し得る隠蔽性に秀れた、スクラッチ印刷物の隠蔽層として採用するに十分な有色インキ層を、単に前記有色インキを覆うようにして、例えば、剥離ニスやオーバープリントニスなどで形成し乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層を設けるだけの低コスト且つ簡易手段によって設けることが可能となる、極めて実用性に秀れた画期的なスクラッチ印刷物の製造方法である。
【００２７】
また、本発明に係るスクラッチ印刷物の製造方法によれば、上述の通り、有色インキの性質や、印刷方式に関わりなく隠蔽層を設けることが可能なので、例えば、従来、スクラッチ印刷物のコスト性や量産性を損ねる原因となっていたシルクスクリーン印刷による前記隠蔽層の製造を行う必要がなく、従来では困難とされていたオフセット印刷による隠蔽層の製造が可能となり、よって、コスト安で、印刷時間が短縮でき、量産性に秀れることとなるなど、実用性に秀れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２８】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【００２９】
文字や絵柄などの表示部ｉを印刷して情報層１を設けた下地ａの、該情報層１の上層に、有色インキ３ａの下地ａへの浸透を阻止すると共に該有色インキ３ａとの剥離性に秀れた性質を有する易剥離層５としての先刷り印刷層２を印刷して設け、この先刷り印刷層２の上層に有色インキ３ａを印刷して着肉させる。
【００３０】
この際、前記易剥離層５としての先刷り印刷層２は、前記有色インキ３ａを弾いて該有色インキ３ａの前記下地ａへの浸透を阻止する性質を有するが故に、前記有色インキ３ａは、前記先刷り印刷層２の表面で弾かれて、該先刷り印刷層２の表面で無数の小さな液滴状になって着肉してしまう場合がある。即ち、該先刷り印刷層２の表面には、例えば、シルクスクリーン印刷など前記有色インキ３ａを厚盛りに印刷できる印刷方式で印刷しなければ良好にベタ刷り印刷されず、例えば、オフセット印刷によって印刷した場合などには、前記有色インキ３ａは弾かれて無数の小さな液滴状になって水玉模様のように印刷されてしまい、非常に薄い色となってしまう。
【００３１】
更に、この有色インキ３ａを覆うようにして、乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層４を印刷して設ける。
【００３２】
この際、前記有色インキ３ａは、前記先刷り印刷層２と前記後刷り印刷層４とによって挟まれて、先刷り印刷層２表面方向に圧延され、前記隠蔽層６としての有色インキ層３が前記易剥離層５の上層に形成されることとなる。
【００３３】
従って、たとえ有色インキ３ａが前記先刷り印刷層２によって弾かれて、上述のように無数の小さな液滴状となっていたとしても、これらの液滴状の有色インキ３ａは圧延されて該有色インキ３ａが着肉していない隙間の部分を埋めるように、該先刷り印刷層２表面方向に延べ広げられ、通常のベタ刷り印刷と略同様な濃い色の有色インキ層３となるから、つまり、どのような印刷方式で前記易剥離層５の上層に有色インキ３ａを着肉させても、前記表示部ｉを隠蔽する隠蔽性を有する隠蔽層６を前記易剥離層５としての先刷り印刷層２の上層に形成することが可能となる。
【００３４】
また、前記後刷り印刷層４は、有色インキ層３を覆うように設けられると共に、乾燥し皮膜化すると、空気遮断性に秀れる性質を有するが故に、前記有色インキ層３は、後刷り印刷層４を介しての空気との接触が阻害されることとなる。
【００３５】
よって、前記隠蔽層６としての有色インキ層３は、前記易剥離層５としての先刷り印刷層２によって下地ａへの浸透乾燥が阻止され、また、この先刷り印刷層２と前記後刷り印刷層４とで挟まれて、空気との接触が阻害され、酸化重合乾燥も阻害されることとなる。即ち、前記隠蔽層６としての有色インキ層３は、乾燥によって硬化することが極端に遅らされることとなる。
【００３６】
従って、酸化重合乾燥によって前記隠蔽層６が硬化してしまうと、該隠蔽層６の前記易剥離層５からの剥離性を損ねる原因となってしまう場合があり、有色インキ層３、即ち、前記隠蔽層６を前記易剥離層５の上層に設けただけでは、酸化重合乾燥による硬化によって隠蔽層６は経時的に前記易剥離層５との剥離性が損なわれてしまう場合があるため、従来では、例えば、乾燥しても剥離性を損ねない性質を有するゴム系の有色インキによって前記隠蔽層６を形成していたが、これに対して、本発明においては、前記隠蔽層６を覆うように後刷り印刷層４を設け、該隠蔽層６の酸化重合乾燥による硬化を極端に遅らせることが可能なので、たとえ、酸化重合乾燥によって前記易剥離層５との剥離性を損ねる性質を有する有色インキ３ａで前記隠蔽層６を形成したとしても、この隠蔽層６は極めて長期間、前記易剥離層５からの秀れた剥離性を保持することができることとなる。
【００３７】
つまり、スクラッチ印刷物の前記隠蔽層６を形成する際に一般的に用いられている、ゴム系インキなどの特殊なインキを用いる必要がなく、オフセット印刷用のプロセスインキなどの通常の印刷に用いられる一般的な有色インキ３ａで、剥離性に秀れた隠蔽層６を設けることが可能となる。
【００３８】
よって、本発明においては、上述の通り、有色インキ３ａの性質や印刷方式に関わりなく、前記易剥離層５としての先刷り印刷層２の上層に、前記表示部ｉを隠蔽する隠蔽性とコインや爪などの引掻体ｂで擦って前記剥離層５から容易に剥離可能な剥離性とを有する隠蔽層６としての有色インキ層３を簡単に設けられることとなる。
【実施例】
【００３９】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【００４０】
本実施例は、下地ａに文字や絵柄などの表示部ｉを印刷して情報層１を設け、この下地ａの情報層１の上層には易剥離層５が設けられ、この易剥離層５の上層には有色インキ３ａで形成され前記表示部ｉを隠蔽する隠蔽層６が設けられ、この隠蔽層６をコインや爪などの引掻体ｂで擦って前記易剥離層５から剥離除去することで前記表示部ｉを視認し得るように構成されたスクラッチ印刷物の製造方法であって、具体的には、前記下地ａの情報層１の上層に、有色インキ３ａの下地ａへの浸透を阻止すると共に該有色インキ３ａとの剥離性に秀れた性質を有する前記易剥離層５としての先刷り印刷層２を印刷して設け、この先刷り印刷層２の上層に前記有色インキ３ａを印刷し着肉させ、更に、この有色インキ３ａを覆うようにして、乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層４を印刷して設けると共に、該後刷り印刷層４と前記先刷り印刷層２とで有色インキ３ａを先刷り印刷層２表面方向に圧延して、前記隠蔽層６としての有色インキ層３を形成する。
【００４１】
また、本実施例においては、情報層１の表示部ｉ，先刷り印刷層２（易剥離層５），有色インキ層３（隠蔽層６）及び後刷り印刷層４を、様々な印刷方式の中でも圧倒的に多く利用されており最も一般的な印刷方式であるオフセット印刷によって印刷して設ける。
【００４２】
先ず、本実施例に係るスクラッチ印刷物の構成について図１に基づいて説明する。
【００４３】
本実施例は、図１に図示したように、文字や絵柄などの表示部ｉが印刷された情報層１が設けられた下地ａの、該情報層１の上層に易剥離層５としての先刷り印刷層２が設けられ、この易剥離層５としての先刷り印刷層２の上層には前記表示部ｉを隠蔽する隠蔽層６が設けられ、この隠蔽層６の上層には、該隠蔽層を覆うように後刷り印刷層４が設けられている。
【００４４】
下地ａは一般的なコート紙である。
【００４５】
易剥離層５としての先刷り印刷層２は、前記有色インキ３ａの下地ａへの浸透を阻止すると共に該有色インキ３ａとの剥離性に秀れた性質を有すものであって、具体的にはオフセット印刷用の剥離ニスで形成した構成である。
【００４６】
隠蔽層６は、有色インキ３ａで形成される有色インキ層３であって、この有色インキ３ａは、通常のオフセット印刷用の石油系インキであって前記情報層１の表示部ｉを良好に隠蔽できるように銀色の有色インキ３ａを採用している。
【００４７】
また、前記情報層１は、前記下地ａの上層に前記有色インキ３ａと同系色の淡い色の、オフセット印刷用の有色インキで表示部ｉをオフセット印刷によって印刷して設けたものである。
【００４８】
即ち、前記有色インキ３ａを介して表示部ｉが視認しにくくなるような配色に構成したものである。尚、有色インキ３ａ及び前記表示部ｉは、表示部ｉを隠蔽層６としての前記有色インキ層３を介して視認しにくくなるような配色であれば、どのような配色の構成でも良い。
【００４９】
後刷り印刷層４は、乾燥すると皮膜化して空気遮断性に秀れる性質を有するものであって、具体的には、前記易剥離層５としての先刷り印刷層２と同様、オフセット印刷用の剥離ニスで形成した仕上げニス層７として構成したものである。尚、この仕上げニス層７としての後刷り印刷層４は、剥離ニスに限られるものではなく、オフセット印刷用のオーバープリントニスなど、本実施例と同様の機能を発揮するものであれば良い。
【００５０】
次いで、本実施例に係る印刷物の製造方法について図１〜図５に基づいて説明する。
【００５１】
本実施例では、まず、図１に図示したように、前記下地ａの上層に文字や絵柄などの表示部ｉをオフセット印刷によって印刷して、情報層１を設ける。
【００５２】
この下地ａの情報層１の上層に、前記有色インキ３ａが下地ａに浸透することを阻止するように前記易剥離層５としての先刷り印刷層２をオフセット印刷によって印刷して設ける。
【００５３】
この易剥離層５としての先刷り印刷層２は、前記情報層１を覆うようにして、オフセット印刷により前記剥離ニスを可能な限り厚盛りに印刷して形成するのが好ましい。即ち、この易剥離層５を薄く形成した場合、この易剥離層５の上層に有色インキ３ａを印刷した際に、該有色インキ３ａが下層に位置する下地ａに浸透し、その結果、有色インキ３ａは前記下地ａからスクラッチオフ（剥離除去）できず、スクラッチ不良となってしまう。
【００５４】
この易剥離層５としての先刷り印刷層２の表面が乾燥した後、該先刷り印刷層２の上層に前記有色インキ３ａをオフセット印刷すると、この先刷り印刷層２によって、有色インキ３ａが下層の下地ａに浸透することが阻止される。更に、この先刷り印刷層２の表面に弾かれて、この有色インキ３ａは、図２に図示したように、前記先刷り印刷層２の表面で無数の小さな液滴状になって、該易剥離層５の表面に着肉することとなる。
【００５５】
この液滴状の有色インキ３ａを覆うようにして、乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する前記後刷り印刷層４をオフセット印刷により印刷して設けると共に該後刷り印刷層４と前記先刷り印刷層２とで該有色インキ３ａを先刷り印刷層２表面方向に圧延して前記隠蔽層６としての有色インキ層３を形成する。
【００５６】
具体的には、前記有色インキ３ａが酸化重合乾燥によって硬化することを阻害し得る（極端に遅らせる）ように、直ちにオフセット印刷により前記易剥離層５（先刷り印刷層２）に印刷した後、この有色インキ３ａを覆うようにして、剥離ニスをオフセット印刷して後刷り印刷層４（仕上げニス層７）を設ける。
【００５７】
このように、有色インキ３ａを覆うようにして後刷り印刷層４（仕上げニス層７）を設けることで、図２に図示したように無数の小さな液滴状に着肉していた前記有色インキ３ａを、図３に図示したように後刷り印刷層４（仕上げニス層７）と先刷り印刷層２（易剥離層５）とで挟んで、易剥離層５表面方向に圧延して、これらの液滴状の有色インキ３ａを延べ広げさせて、図４に図示したように、通常のベタ刷り印刷されたような濃い色の有色インキ層３、即ち、隠蔽層６を形成する。
【００５８】
尚、本実施例においては、前記有色インキ層３は、銀色の有色インキ３ａを用いた銀色一色刷りの有色インキ層３であるが、これに限らず、例えば、前記易剥離層５の上層にオフセット印刷によって異なる数色の有色インキ３ａを重ね刷りした後、前記後刷り印刷層４をオフセット印刷によって設け、２色カラーやフルカラーの有色インキ層３を形成しても良い。
【００５９】
本実施例は上述のようにするから、単に、前記易剥離層５としての先刷り印刷層２の上層に有色インキ３ａをオフセット印刷によって着肉させただけでは、この有色インキ３ａは、先刷り印刷層２の表面に弾かれ、図２に図示したように、極小さな液滴状になって前記易剥離層５の表面に無数に着肉することとなり、液滴状の有色インキ３ａが着肉した部分と、全く着肉していない隙間の部分とが生じ、細かな水玉模様のようになってしまい、下層の情報層１の表示部ｉが透けて見えてしまうような非常に薄い色にしか印刷されないが、本実施例では、更に、これらの無数の液滴状の有色インキ３ａを覆うように仕上げニス層７としての後刷り印刷層４をオフセット印刷によって設けることによって、この無数の液滴状の有色インキ３ａを、図３に図示したように、仕上げニス層７と易剥離層５とで挟んで圧延し、これらの液滴状の有色インキ３ａが、該有色インキ３ａが着肉していない前記隙間の部分を埋めるようにして易剥離層５の表面に延べ広げられて、図４に図示したような、前記易剥離層５の上層に略一様に有色インキ３ａが着肉した、通常のベタ刷り印刷のような濃い色で、前記表示部ｉを良好に隠蔽し得る隠蔽性を有する前記隠蔽層６としての有色インキ層３を形成できることとなる。
【００６０】
また、前記有色インキ３ａは、前記易剥離層５に着肉した後、酸化重合乾燥により硬化することを阻害し得るように、直ちに前記仕上げニス層７を設け、この仕上げニス層７と前記易剥離層５とで圧延するから、この有色インキ３ａが硬化して、良好に圧延することができなくなってしまう前に、この有色インキ３ａを良好に前記易剥離層５表面方向に圧延することができる。
【００６１】
しかも、この有色インキ３ａを圧延して形成される有色インキ層３、即ち、隠蔽層６は、易剥離層５と仕上げニス層７とに挟まれて密封状態になり空気との接触が阻害されるから、該有色インキ３ａの酸化重合乾燥が極端に遅れることとなり、前記有色インキ層３が前記易剥離層５からの剥離性を損ねる原因となる有色インキ３ａの酸化重合乾燥による硬化を可及的に阻害することとなる。
【００６２】
つまり、単に、前記易剥離層５に有色インキ３ａをオフセット印刷によって印刷しただけでは、この有色インキ３ａが酸化重合乾燥により硬化し、経時的に前記易剥離層５との剥離性を失ってしまい、短期間の内にコインや爪などの引掻体ｂで擦っても有色インキ３ａ（隠蔽層６）を前記易剥離層５から剥離するのが極めて困難になってしまいスクラッチ不良を起こしてしまうが、これに対して、本実施例においては、この有色インキ層３の酸化重合乾燥の進行を阻害でき、前記易剥離層５からの剥離性を極めて長期間保持でき、図５に図示したように前記引掻体ｂで擦ることで有色インキ層３を前記仕上げニス層７（後刷り印刷層４）と共に容易に易剥離層５から剥離除去し、下層の情報層１の表示部ｉを視認できることとなる。
【００６３】
よって、本実施例においては、前記易剥離層５の上層に、前記情報層１の表示部ｉを良好に隠蔽し得る隠蔽性及びコインや爪などの引掻体ｂで擦って易剥離層５から容易に剥離除去することが可能な剥離性とを有す隠蔽層６を、オフセット印刷によって簡単に形成することができるから、例えば、従来のスクラッチ印刷物を製造する際のコスト高や、量産性を損ねる原因となっていたシルクスクリーン印刷による前記隠蔽層６の印刷工程を無くすことができ、それだけ低コストで、印刷時間も短縮でき、量産性に秀れた、極めて実用性に秀れた画期的で商品価値の極めて高いスクラッチ印刷物を製造することができる極めて実用性に秀れた画期的なスクラッチ印刷物の製造方法である。
【００６４】
しかも、例えば、従来のシルクスクリーン印刷など、オフセット以外の印刷方式によって隠蔽層６を形成する場合は、オフセット印刷機で前記下地ａの上層に情報層１と易剥離層５をオフセット印刷して設けた後、一度作業を中断して、シルクスクリーン印刷機などの他の印刷方式の機械に移してから作業を再開しなくてはならず、非常に作業効率が悪かったが、この点、本実施例においては、隠蔽層６をオフセット印刷によって設け、情報層１，易剥離層５及び仕上げニス層７も、当然、オフセット印刷によって印刷して形成するので、一層作業性に秀れる。即ち、本実施例に係るスクラッチ印刷物は、下地ａの上層に、情報層１，易剥離層５，隠蔽層６及び仕上げニス層７を全てオフセット印刷によって行うことができ、インライン化が可能なので、極めて作業効率が良く、それだけ印刷時間を短縮でき、極めて量産性に秀れるなど、この点においても実用性に秀れる。
【００６５】
また、本実施例では、前記有色インキ３ａとしてオフセット印刷用の有色インキ３ａを用いており、前記先刷り印刷層２及び前記後刷り印刷層４としてオフセット印刷用の剥離ニスを用いている。即ち、スクラッチ印刷物を製造するために特別なインキなどは使用せず、一般的に用いられている通常のオフセット印刷用のインキや、最も一般的な印刷方式であるオフセット印刷機によって、極めて簡単且つコスト安にスクラッチ印刷物を製造することができ、この点においても実用性に秀れる。
【００６６】
従って、本実施例に係るスクラッチ印刷物の製造方法は、スクラッチ印刷物を、非常にコスト安に製造できるから、例えば、遊戯カードや簡単な抽選カードなどのスクラッチ印刷物を気軽に利用できることとなる。即ち、単なる印刷物ではなく、誰でも簡単にドキドキ感やゲーム感覚を楽しむことができるという付加価値を有するスクラッチ印刷物を、非常にコスト安で提供できることとなるから、例えば、店頭で配る販促目的の簡単な抽選カードやキャンペーン用カードなど様々な目的で、スクラッチ印刷物を手軽に採用できることとなる極めて実用性に秀れたものである。
【００６７】
尚、本実施例に係るスクラッチ印刷物の製造方法は、上述の通り有色インキ３ａの性質や、印刷方法に関わらず、良好に前記易剥離層５の上層に隠蔽層６としての有色インキ層３を形成することが可能である。よって、前記有色インキ３ａは、オフセット印刷用の有色インキ３ａに限られるものではなく、例えば、シルクスクリーン印刷用のシンナー系の有色インキ３ａなど、オフセット印刷用の有色インキ３ａ以外の有色インキ３ａを採用た場合においても、前記易剥離層５としての先刷り印刷層２の上層に良好に有色インキ層３を形成することが可能である。また、印刷方式に関わらず、単に有色インキ３ａを覆うように前記後刷り印刷層４を印刷して設けることで、上述の通り、有色インキ３ａを隠蔽層６としての有色インキ層３とすることが可能である。よって、有色インキ３ａを前記先刷り印刷層２の上層に印刷するの印刷方式は、本実施例のオフセット印刷に限らず、例えば、グラビア印刷，フレキソ印刷又はシルクスクリーン印刷など、他の印刷方式によっても、良好に前記易剥離層５としての先刷り印刷層２の上層に前記隠蔽層６としての有色インキ層３を形成することが可能である。
【００６８】
また、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【００６９】
【図１】本実施例に係るスクラッチ印刷物の製造方法を示す説明斜視図である。
【図２】本実施例に係るスクラッチ印刷物の製造方法の説明図である。
【図３】本実施例に係るスクラッチ印刷物の製造方法の説明図である。
【図４】本実施例に係るスクラッチ印刷物の製造方法の説明図である。
【図５】本実施例に係るスクラッチ印刷物の使用態様を示す概略図である。
【符号の説明】
【００７０】
１ 情報層
２ 先刷り印刷層
３ 有色インキ層
３ａ 有色インキ
４ 後刷り印刷層
５ 易剥離層
６ 隠蔽層
７ 仕上げニス層
ａ 下地
ｂ 引掻体
ｉ 表示部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、スクラッチ印刷物の製造方法、及び、スクラッチ印刷物に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、ゲーム用のカードや、抽選券などにおいて、スクラッチ印刷物が広く利用されている。
【０００３】
これらの一般的なスクラッチ印刷物は、コート紙などの下地に、「当たり」「はずれ」などの表示部が印刷された情報層を設け、この下地の情報層の上層に銀インキなどの有色インキを印刷して、前記表示部を視認できないように隠蔽する隠蔽層を設け、この隠蔽層を、コインや爪などで擦ってスクラッチオフ（剥離除去）することで、下地に印刷された情報を視認できるように構成されている。
【０００４】
スクラッチ印刷物としての特性を出すために、前記隠蔽層には、下地に印刷された表示部を隠蔽する隠蔽性と、下地からスクラッチオフできる剥離性とを有することが必須である。
【０００５】
そこで、一般的なスクラッチ印刷物において、隠蔽層の下層には必ず剥離ニスを印刷して形成した易剥離層が設けられており、この易剥離層の上層には、一般的には、シルクスクリーン印刷用の有色インキをシルクスクリーン印刷によって形成した隠蔽層が設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
ところで、前記シルクスクリーン印刷は、オフセット印刷に比べて、印刷コストが高く、印刷にかかる時間が長く、量産性に乏しいなどの欠点があり、結果的に、スクラッチ印刷物を製造する際に必須のシルクスクリーン印刷工程が、スクラッチ印刷物のコスト性や量産性を損ねる原因となっている。
【０００７】
そこで、最も一般的に使用される印刷方式であると共に、コスト面や、印刷速度や、量産性に秀れたオフセット印刷によって、スクラッチ印刷物の前記隠蔽層の製造の実現が望まれる。
【０００８】
しかし、前記隠蔽層を形成すべく、通常のオフセット印刷用のプロセスインキなどの油系の有色インキを前記易剥離層の上層にオフセット印刷して隠蔽層を形成しようとしても、隠蔽性及び剥離性に秀れた隠蔽層を形成することは困難である。
【０００９】
具体的には、スクラッチ印刷物の前記隠蔽層を製造する際に一般的に使用される有色インキは、ゴム系の有色インキであり、これは、前記易剥離層からの剥離性を考慮した結果採用されるものであって、ゴム系の有色インキで形成された隠蔽層は前記易剥離層からの剥離性を極めて長期間保持できるものであるが、これに対して、通常のオフセット印刷用のプロセスインキなどの油性の有色インキで隠蔽層を形成した場合は、酸化重合乾燥によって隠蔽層が硬化し、これが易剥離層との剥離性を損ねる原因となってしまい、前記易剥離層との剥離性を著しく損ね、コインや爪などで擦って剥離除去するのが困難となり、スクラッチオフできなくなってしまうなど、剥離性の面での問題がある。
【００１０】
また、前記易剥離層を形成する剥離ニスは乾燥すると皮膜化し、有色インキを弾く性質を有するが故に、例えば、被印刷物の素材を問わないシルクスクリーン印刷なら、この易剥離層の上層に有色インキを厚盛りでベタ刷り印刷することができるが、これに対して、オフセット印刷でプロセスインキなどの通常の有色インキを印刷しようとしても、この有色インキが易剥離層の皮膜化した表面に弾かれて良好に着肉せず、無数の小さな液滴状になって前記易剥離層の表面に複数点在状態に着肉することとなる。即ち、非常に細かな水玉模様のように印刷されてしまうので、通常のベタ刷り印刷によって出る色の濃さに比べて、非常に薄い色になってしまい、下層が簡単に透けて見えてしまうので、隠蔽性の面でも問題がある。
【００１１】
本発明は、上述のような問題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果完成したものであって、前記易剥離層の上層に有色インキを印刷した際、たとえこの有色インキが弾かれて良好に着肉しなかったとしても、更にこの有色インキを覆うようにして後刷り印刷層を印刷して設け、この後刷り印刷層と前記易剥離層とで前記有色インキを易剥離層表面方向に圧延するとこによって、通常のベタ刷り印刷と略同様の濃い色の有色インキ層を形成することができ、しかも、この有色インキ層を、前記易剥離層によって下層への浸透乾燥を阻止すると共に、この易剥離層及び後刷り印刷層によって挟み込み空気との接触を阻害し酸化重合乾燥を阻害することで、この有色インキ層の、前記易剥離層からの剥離性を損ねる原因となる乾燥による硬化を極端に遅らせて、極めて長期間易剥離層からの秀れた剥離性を保持させることができ、つまり、スクラッチ印刷物の隠蔽層に必須の隠蔽性及び剥離性を有する有色インキ層が形成されることとなるから、従って、油系インキなどの一般的なオフセット印刷用の有色インキを用いて、オフセット印刷によって極めて簡単に前記隠蔽層としての有色インキ層を前記易剥離層の上層に設けることが可能となるから、それだけ低コストで、印刷時間を短縮でき、量産性に秀れた極めて実用性の高い画期的なスクラッチ印刷物を提供することが可能となる極めて実用性に秀れた画期的で商品価値の高いスクラッチ印刷物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【００１３】
下地ａに文字や絵柄などの表示部ｉを印刷して情報層１を設け、この下地ａの情報層１の上層には易剥離層５が設けられ、この易剥離層５の上層には有色インキ３ａで形成され前記表示部ｉを隠蔽する隠蔽層６が設けられ、この隠蔽層６をコインや爪などの引掻体ｂで擦って前記易剥離層５から剥離除去することで前記表示部ｉを視認し得るように構成されたスクラッチ印刷物の製造方法であって、前記下地ａの情報層１の上層に、有色インキ３ａの下地ａへの浸透を阻止すると共に該有色インキ３ａとの剥離性に秀れた性質を有する前記易剥離層５としての先刷り印刷層２を印刷して設け、この先刷り印刷層２の上層に前記有色インキ３ａを印刷し着肉させ、更に、この有色インキ３ａを覆うようにして、乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層４を印刷して設けると共に、該後刷り印刷層４と前記先刷り印刷層２とで有色インキ３ａを先刷り印刷層２表面方向に圧延して、前記隠蔽層６としての有色インキ層３を形成することを特徴とするスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００１４】
また、前記有色インキ３ａはオフセット印刷用の有色インキ３ａであって、前記先刷り印刷層２の上層にオフセット印刷によって着肉させることを特徴とする請求項１記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００１５】
また、前記有色インキ３ａは、前記先刷り印刷層２が乾燥した後、この先刷り印刷層２の上層に印刷し着肉させることを特徴とする請求項１，２のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００１６】
また、前記後刷り印刷層４は、前記有色インキ３ａを前記先刷り印刷層２の上層に着肉させた後、該有色インキ３ａが酸化重合乾燥により硬化することを阻止し得るように、直ちに該有色インキ３ａを覆うようにして設けることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００１７】
また、前記先刷り印刷層２は、剥離ニスで形成した構成とすることを特徴とする請求項１〜４のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００１８】
また、前記後刷り印刷層４は、剥離ニス若しくはオーバープリントニスで形成した仕上げニス層７であることを特徴とする請求項１〜５のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００１９】
また、前記後刷り印刷層４は、オフセット印刷によって前記有色インキ３ａを覆うようにして設けることを特徴とする請求項１〜６のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００２０】
また、前記先刷り印刷層２は、オフセット印刷によって前記下地ａの情報層１の上層に設けることを特徴とする請求項１〜７のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００２１】
また、前記情報層１は、オフセット印刷によって前記下地ａの上層に表示部ｉを印刷して設けることを特徴とする請求項１〜８のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００２２】
また、下地ａの上層に文字や絵柄などの表示部ｉを印刷した情報層１を設け、この下地ａの情報層１の上層には易剥離層５が設けられ、この易剥離層５の上層には前記表示部ｉを隠蔽する隠蔽層６が設けられ、隠蔽層６をコインや爪などの引掻体ｂで擦って前記易剥離層５から剥離除去することで前記表示部ｉを視認し得るように構成されたスクラッチ印刷物の製造方法であって、前記下地ａの情報層１の上層に、オフセット印刷によって剥離ニスを印刷して易剥離層５を設け、この易剥離層５が皮膜化した後、この易剥離層５の上層にオフセット印刷によって前記有色インキ３ａを着肉し、更に該有色インキ３ａを覆うようにしてオフセット印刷によって剥離ニス若しくはオーバープリントニスを印刷して仕上げニス層７を設けると共に、該仕上げりニス層７と前記易剥離層５とで前記有色インキ３ａを易剥離層５表面方向に圧延して前記隠蔽層６としての有色インキ層３を形成することを特徴とするスクラッチ印刷物の製造方法に係るものである。
【００２３】
また、下地ａに文字や絵柄などの表示部ｉを印刷して情報層１を設け、この下地ａの情報層１の上層には易剥離層５が設けられ、この易剥離層５の上層には有色インキ３ａで形成され前記表示部ｉを隠蔽する隠蔽層６が設けられ、隠蔽層６をコインや爪などの引掻体ｂで擦って前記易剥離層５から剥離除去することで前記表示部ｉを視認し得るように構成されたスクラッチ印刷物であって、前記下地ａの情報層１の上層に、前記有色インキ３ａの下地ａへの浸透を阻止すると共に該有色インキ３ａとの剥離性に秀れた性質を有する易剥離層５としての先刷り印刷層２を設け、この先刷り印刷層２の上層には前記有色インキ３ａで形成した前記隠蔽層を設け、この隠蔽層６の上層には乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層４を被覆状態に設け、前記隠蔽層６は、前記先刷り印刷層２の上層に有色インキ３ａを印刷し、更にこの有色インキ３ａを覆うようにして前記後刷り印刷層４を印刷し、この後刷り印刷層４と前記先刷り印刷層２とで有色インキ３ａを先刷り印刷層２表面方向に圧延して形成した有色インキ層３であることを特徴とするスクラッチ印刷物に係るものである。
【００２４】
また、前記下地ａの情報層１の上層にオフセット印刷によってオフセット印刷用の剥離ニスを印刷して形成した前記易剥離層５を設け、この易剥離層５の上層にはオフセット印刷用の有色インキ３ａで形成した前記隠蔽層６を設け、この隠蔽層６の上層にはオフセット印刷によってオフセット印刷用の剥離ニス若しくはオーバープリントニスを印刷して形成した仕上げニス層７を被覆状態に設け、前記隠蔽層６としての有色インキ層３は、前記易剥離層５の上層に有色インキ３ａをオフセット印刷し、更にこの有色インキ３ａを覆うように前記仕上げニス層７をオフセット印刷し、この仕上げニス層７と前記易剥離層５とで有色インキ３ａを易剥離層５表面方向に圧延して形成した構成とすることを特徴とする請求項１１記載のスクラッチ印刷物に係るものである。
【発明の効果】
【００２５】
本発明は上述のようにしたから、易剥離層としての先刷り印刷層の上層に有色インキを印刷して着肉させた際に、たとえ該有色インキが該先刷り印刷層に弾かれて良好に着肉せず、細かな水玉模様のようになって非常に薄い色に印刷されてしまったとしても、この有色インキを覆うように後刷り印刷層を印刷して設けることで、有色インキを前記易剥離層としての先刷り印刷層表面方向に圧延して、通常のベタ刷り印刷のような濃い色の有色インキ層を形成することができ、しかも、たとえ該有色インキが通常の油系やシンナー系などの有色インキで、酸化重合乾燥によって硬化すると前記易剥離層からの剥離性を損ねるという性質を有していたとしても、この有色インキを覆うようにして設けられる後刷り印刷層が、乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れるという性質を有するが故に、前記有色インキ層は、先刷り印刷層及び後刷り印刷層によって、下地への浸透乾燥はもちろん、酸化重合乾燥も阻害されるから、乾燥による硬化が可及的に阻止され（極端に遅らされ）、極めて長期間、前記易剥離層からの秀れた剥離性を保持することができるものである。
【００２６】
よって、有色インキの性質や、この有色インキを前記易剥離層としての先刷り印刷層の上層に印刷する際の印刷方式に関わりなく、この先刷り印刷層の上層に、該先刷り印刷層からの剥離性に秀れ、且つ、該先刷り印刷層の下層に設けられる表示部を良好に隠蔽し得る隠蔽性に秀れた、スクラッチ印刷物の隠蔽層として採用するに十分な有色インキ層を、単に前記有色インキを覆うようにして、例えば、剥離ニスやオーバープリントニスなどで形成し乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層を設けるだけの低コスト且つ簡易手段によって設けることが可能となる、極めて実用性に秀れた画期的なスクラッチ印刷物の製造方法である。
【００２７】
また、本発明に係るスクラッチ印刷物の製造方法によれば、上述の通り、有色インキの性質や、印刷方式に関わりなく隠蔽層を設けることが可能なので、例えば、従来、スクラッチ印刷物のコスト性や量産性を損ねる原因となっていたシルクスクリーン印刷による前記隠蔽層の製造を行う必要がなく、従来では困難とされていたオフセット印刷による隠蔽層の製造が可能となり、よって、コスト安で、印刷時間が短縮でき、量産性に秀れることとなるなど、実用性に秀れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２８】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【００２９】
文字や絵柄などの表示部ｉを印刷して情報層１を設けた下地ａの、該情報層１の上層に、有色インキ３ａの下地ａへの浸透を阻止すると共に該有色インキ３ａとの剥離性に秀れた性質を有する易剥離層５としての先刷り印刷層２を印刷して設け、この先刷り印刷層２の上層に有色インキ３ａを印刷して着肉させる。
【００３０】
この際、前記易剥離層５としての先刷り印刷層２は、前記有色インキ３ａを弾いて該有色インキ３ａの前記下地ａへの浸透を阻止する性質を有するが故に、前記有色インキ３ａは、前記先刷り印刷層２の表面で弾かれて、該先刷り印刷層２の表面で無数の小さな液滴状になって着肉してしまう場合がある。即ち、該先刷り印刷層２の表面には、例えば、シルクスクリーン印刷など前記有色インキ３ａを厚盛りに印刷できる印刷方式で印刷しなければ良好にベタ刷り印刷されず、例えば、オフセット印刷によって印刷した場合などには、前記有色インキ３ａは弾かれて無数の小さな液滴状になって水玉模様のように印刷されてしまい、非常に薄い色となってしまう。
【００３１】
更に、この有色インキ３ａを覆うようにして、乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層４を印刷して設ける。
【００３２】
この際、前記有色インキ３ａは、前記先刷り印刷層２と前記後刷り印刷層４とによって挟まれて、先刷り印刷層２表面方向に圧延され、前記隠蔽層６としての有色インキ層３が前記易剥離層５の上層に形成されることとなる。
【００３３】
従って、たとえ有色インキ３ａが前記先刷り印刷層２によって弾かれて、上述のように無数の小さな液滴状となっていたとしても、これらの液滴状の有色インキ３ａは圧延されて該有色インキ３ａが着肉していない隙間の部分を埋めるように、該先刷り印刷層２表面方向に延べ広げられ、通常のベタ刷り印刷と略同様な濃い色の有色インキ層３となるから、つまり、どのような印刷方式で前記易剥離層５の上層に有色インキ３ａを着肉させても、前記表示部ｉを隠蔽する隠蔽性を有する隠蔽層６を前記易剥離層５としての先刷り印刷層２の上層に形成することが可能となる。
【００３４】
また、前記後刷り印刷層４は、有色インキ層３を覆うように設けられると共に、乾燥し皮膜化すると、空気遮断性に秀れる性質を有するが故に、前記有色インキ層３は、後刷り印刷層４を介しての空気との接触が阻害されることとなる。
【００３５】
よって、前記隠蔽層６としての有色インキ層３は、前記易剥離層５としての先刷り印刷層２によって下地ａへの浸透乾燥が阻止され、また、この先刷り印刷層２と前記後刷り印刷層４とで挟まれて、空気との接触が阻害され、酸化重合乾燥も阻害されることとなる。即ち、前記隠蔽層６としての有色インキ層３は、乾燥によって硬化することが極端に遅らされることとなる。
【００３６】
従って、酸化重合乾燥によって前記隠蔽層６が硬化してしまうと、該隠蔽層６の前記易剥離層５からの剥離性を損ねる原因となってしまう場合があり、有色インキ層３、即ち、前記隠蔽層６を前記易剥離層５の上層に設けただけでは、酸化重合乾燥による硬化によって隠蔽層６は経時的に前記易剥離層５との剥離性が損なわれてしまう場合があるため、従来では、例えば、乾燥しても剥離性を損ねない性質を有するゴム系の有色インキによって前記隠蔽層６を形成していたが、これに対して、本発明においては、前記隠蔽層６を覆うように後刷り印刷層４を設け、該隠蔽層６の酸化重合乾燥による硬化を極端に遅らせることが可能なので、たとえ、酸化重合乾燥によって前記易剥離層５との剥離性を損ねる性質を有する有色インキ３ａで前記隠蔽層６を形成したとしても、この隠蔽層６は極めて長期間、前記易剥離層５からの秀れた剥離性を保持することができることとなる。
【００３７】
つまり、スクラッチ印刷物の前記隠蔽層６を形成する際に一般的に用いられている、ゴム系インキなどの特殊なインキを用いる必要がなく、オフセット印刷用のプロセスインキなどの通常の印刷に用いられる一般的な有色インキ３ａで、剥離性に秀れた隠蔽層６を設けることが可能となる。
【００３８】
よって、本発明においては、上述の通り、有色インキ３ａの性質や印刷方式に関わりなく、前記易剥離層５としての先刷り印刷層２の上層に、前記表示部ｉを隠蔽する隠蔽性とコインや爪などの引掻体ｂで擦って前記剥離層５から容易に剥離可能な剥離性とを有する隠蔽層６としての有色インキ層３を簡単に設けられることとなる。
【実施例】
【００３９】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【００４０】
本実施例は、下地ａに文字や絵柄などの表示部ｉを印刷して情報層１を設け、この下地ａの情報層１の上層には易剥離層５が設けられ、この易剥離層５の上層には有色インキ３ａで形成され前記表示部ｉを隠蔽する隠蔽層６が設けられ、この隠蔽層６をコインや爪などの引掻体ｂで擦って前記易剥離層５から剥離除去することで前記表示部ｉを視認し得るように構成されたスクラッチ印刷物の製造方法であって、具体的には、前記下地ａの情報層１の上層に、有色インキ３ａの下地ａへの浸透を阻止すると共に該有色インキ３ａとの剥離性に秀れた性質を有する前記易剥離層５としての先刷り印刷層２を印刷して設け、この先刷り印刷層２の上層に前記有色インキ３ａを印刷し着肉させ、更に、この有色インキ３ａを覆うようにして、乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層４を印刷して設けると共に、該後刷り印刷層４と前記先刷り印刷層２とで有色インキ３ａを先刷り印刷層２表面方向に圧延して、前記隠蔽層６としての有色インキ層３を形成する。
【００４１】
また、本実施例においては、情報層１の表示部ｉ，先刷り印刷層２（易剥離層５），有色インキ層３（隠蔽層６）及び後刷り印刷層４を、様々な印刷方式の中でも圧倒的に多く利用されており最も一般的な印刷方式であるオフセット印刷によって印刷して設ける。
【００４２】
先ず、本実施例に係るスクラッチ印刷物の構成について図１に基づいて説明する。
【００４３】
本実施例は、図１に図示したように、文字や絵柄などの表示部ｉが印刷された情報層１が設けられた下地ａの、該情報層１の上層に易剥離層５としての先刷り印刷層２が設けられ、この易剥離層５としての先刷り印刷層２の上層には前記表示部ｉを隠蔽する隠蔽層６が設けられ、この隠蔽層６の上層には、該隠蔽層を覆うように後刷り印刷層４が設けられている。
【００４４】
下地ａは一般的なコート紙である。
【００４５】
易剥離層５としての先刷り印刷層２は、前記有色インキ３ａの下地ａへの浸透を阻止すると共に該有色インキ３ａとの剥離性に秀れた性質を有すものであって、具体的にはオフセット印刷用の剥離ニスで形成した構成である。
【００４６】
隠蔽層６は、有色インキ３ａで形成される有色インキ層３であって、この有色インキ３ａは、通常のオフセット印刷用の石油系インキであって前記情報層１の表示部ｉを良好に隠蔽できるように銀色の有色インキ３ａを採用している。
【００４７】
また、前記情報層１は、前記下地ａの上層に前記有色インキ３ａと同系色の淡い色の、オフセット印刷用の有色インキで表示部ｉをオフセット印刷によって印刷して設けたものである。
【００４８】
即ち、前記有色インキ３ａを介して表示部ｉが視認しにくくなるような配色に構成したものである。尚、有色インキ３ａ及び前記表示部ｉは、表示部ｉを隠蔽層６としての前記有色インキ層３を介して視認しにくくなるような配色であれば、どのような配色の構成でも良い。
【００４９】
後刷り印刷層４は、乾燥すると皮膜化して空気遮断性に秀れる性質を有するものであって、具体的には、前記易剥離層５としての先刷り印刷層２と同様、オフセット印刷用の剥離ニスで形成した仕上げニス層７として構成したものである。尚、この仕上げニス層７としての後刷り印刷層４は、剥離ニスに限られるものではなく、オフセット印刷用のオーバープリントニスなど、本実施例と同様の機能を発揮するものであれば良い。
【００５０】
次いで、本実施例に係る印刷物の製造方法について図１〜図５に基づいて説明する。
【００５１】
本実施例では、まず、図１に図示したように、前記下地ａの上層に文字や絵柄などの表示部ｉをオフセット印刷によって印刷して、情報層１を設ける。
【００５２】
この下地ａの情報層１の上層に、前記有色インキ３ａが下地ａに浸透することを阻止するように前記易剥離層５としての先刷り印刷層２をオフセット印刷によって印刷して設ける。
【００５３】
この易剥離層５としての先刷り印刷層２は、前記情報層１を覆うようにして、オフセット印刷により前記剥離ニスを可能な限り厚盛りに印刷して形成するのが好ましい。即ち、この易剥離層５を薄く形成した場合、この易剥離層５の上層に有色インキ３ａを印刷した際に、該有色インキ３ａが下層に位置する下地ａに浸透し、その結果、有色インキ３ａは前記下地ａからスクラッチオフ（剥離除去）できず、スクラッチ不良となってしまう。
【００５４】
この易剥離層５としての先刷り印刷層２の表面が乾燥した後、該先刷り印刷層２の上層に前記有色インキ３ａをオフセット印刷すると、この先刷り印刷層２によって、有色インキ３ａが下層の下地ａに浸透することが阻止される。更に、この先刷り印刷層２の表面に弾かれて、この有色インキ３ａは、図２に図示したように、前記先刷り印刷層２の表面で無数の小さな液滴状になって、該易剥離層５の表面に着肉することとなる。
【００５５】
この液滴状の有色インキ３ａを覆うようにして、乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する前記後刷り印刷層４をオフセット印刷により印刷して設けると共に該後刷り印刷層４と前記先刷り印刷層２とで該有色インキ３ａを先刷り印刷層２表面方向に圧延して前記隠蔽層６としての有色インキ層３を形成する。
【００５６】
具体的には、前記有色インキ３ａが酸化重合乾燥によって硬化することを阻害し得る（極端に遅らせる）ように、直ちにオフセット印刷により前記易剥離層５（先刷り印刷層２）に印刷した後、この有色インキ３ａを覆うようにして、剥離ニスをオフセット印刷して後刷り印刷層４（仕上げニス層７）を設ける。
【００５７】
このように、有色インキ３ａを覆うようにして後刷り印刷層４（仕上げニス層７）を設けることで、図２に図示したように無数の小さな液滴状に着肉していた前記有色インキ３ａを、図３に図示したように後刷り印刷層４（仕上げニス層７）と先刷り印刷層２（易剥離層５）とで挟んで、易剥離層５表面方向に圧延して、これらの液滴状の有色インキ３ａを延べ広げさせて、図４に図示したように、通常のベタ刷り印刷されたような濃い色の有色インキ層３、即ち、隠蔽層６を形成する。
【００５８】
尚、本実施例においては、前記有色インキ層３は、銀色の有色インキ３ａを用いた銀色一色刷りの有色インキ層３であるが、これに限らず、例えば、前記易剥離層５の上層にオフセット印刷によって異なる数色の有色インキ３ａを重ね刷りした後、前記後刷り印刷層４をオフセット印刷によって設け、２色カラーやフルカラーの有色インキ層３を形成しても良い。
【００５９】
本実施例は上述のようにするから、単に、前記易剥離層５としての先刷り印刷層２の上層に有色インキ３ａをオフセット印刷によって着肉させただけでは、この有色インキ３ａは、先刷り印刷層２の表面に弾かれ、図２に図示したように、極小さな液滴状になって前記易剥離層５の表面に無数に着肉することとなり、液滴状の有色インキ３ａが着肉した部分と、全く着肉していない隙間の部分とが生じ、細かな水玉模様のようになってしまい、下層の情報層１の表示部ｉが透けて見えてしまうような非常に薄い色にしか印刷されないが、本実施例では、更に、これらの無数の液滴状の有色インキ３ａを覆うように仕上げニス層７としての後刷り印刷層４をオフセット印刷によって設けることによって、この無数の液滴状の有色インキ３ａを、図３に図示したように、仕上げニス層７と易剥離層５とで挟んで圧延し、これらの液滴状の有色インキ３ａが、該有色インキ３ａが着肉していない前記隙間の部分を埋めるようにして易剥離層５の表面に延べ広げられて、図４に図示したような、前記易剥離層５の上層に略一様に有色インキ３ａが着肉した、通常のベタ刷り印刷のような濃い色で、前記表示部ｉを良好に隠蔽し得る隠蔽性を有する前記隠蔽層６としての有色インキ層３を形成できることとなる。
【００６０】
また、前記有色インキ３ａは、前記易剥離層５に着肉した後、酸化重合乾燥により硬化することを阻害し得るように、直ちに前記仕上げニス層７を設け、この仕上げニス層７と前記易剥離層５とで圧延するから、この有色インキ３ａが硬化して、良好に圧延することができなくなってしまう前に、この有色インキ３ａを良好に前記易剥離層５表面方向に圧延することができる。
【００６１】
しかも、この有色インキ３ａを圧延して形成される有色インキ層３、即ち、隠蔽層６は、易剥離層５と仕上げニス層７とに挟まれて密封状態になり空気との接触が阻害されるから、該有色インキ３ａの酸化重合乾燥が極端に遅れることとなり、前記有色インキ層３が前記易剥離層５からの剥離性を損ねる原因となる有色インキ３ａの酸化重合乾燥による硬化を可及的に阻害することとなる。
【００６２】
つまり、単に、前記易剥離層５に有色インキ３ａをオフセット印刷によって印刷しただけでは、この有色インキ３ａが酸化重合乾燥により硬化し、経時的に前記易剥離層５との剥離性を失ってしまい、短期間の内にコインや爪などの引掻体ｂで擦っても有色インキ３ａ（隠蔽層６）を前記易剥離層５から剥離するのが極めて困難になってしまいスクラッチ不良を起こしてしまうが、これに対して、本実施例においては、この有色インキ層３の酸化重合乾燥の進行を阻害でき、前記易剥離層５からの剥離性を極めて長期間保持でき、図５に図示したように前記引掻体ｂで擦ることで有色インキ層３を前記仕上げニス層７（後刷り印刷層４）と共に容易に易剥離層５から剥離除去し、下層の情報層１の表示部ｉを視認できることとなる。
【００６３】
よって、本実施例においては、前記易剥離層５の上層に、前記情報層１の表示部ｉを良好に隠蔽し得る隠蔽性及びコインや爪などの引掻体ｂで擦って易剥離層５から容易に剥離除去することが可能な剥離性とを有す隠蔽層６を、オフセット印刷によって簡単に形成することができるから、例えば、従来のスクラッチ印刷物を製造する際のコスト高や、量産性を損ねる原因となっていたシルクスクリーン印刷による前記隠蔽層６の印刷工程を無くすことができ、それだけ低コストで、印刷時間も短縮でき、量産性に秀れた、極めて実用性に秀れた画期的で商品価値の極めて高いスクラッチ印刷物を製造することができる極めて実用性に秀れた画期的なスクラッチ印刷物の製造方法である。
【００６４】
しかも、例えば、従来のシルクスクリーン印刷など、オフセット以外の印刷方式によって隠蔽層６を形成する場合は、オフセット印刷機で前記下地ａの上層に情報層１と易剥離層５をオフセット印刷して設けた後、一度作業を中断して、シルクスクリーン印刷機などの他の印刷方式の機械に移してから作業を再開しなくてはならず、非常に作業効率が悪かったが、この点、本実施例においては、隠蔽層６をオフセット印刷によって設け、情報層１，易剥離層５及び仕上げニス層７も、当然、オフセット印刷によって印刷して形成するので、一層作業性に秀れる。即ち、本実施例に係るスクラッチ印刷物は、下地ａの上層に、情報層１，易剥離層５，隠蔽層６及び仕上げニス層７を全てオフセット印刷によって行うことができ、インライン化が可能なので、極めて作業効率が良く、それだけ印刷時間を短縮でき、極めて量産性に秀れるなど、この点においても実用性に秀れる。
【００６５】
また、本実施例では、前記有色インキ３ａとしてオフセット印刷用の有色インキ３ａを用いており、前記先刷り印刷層２及び前記後刷り印刷層４としてオフセット印刷用の剥離ニスを用いている。即ち、スクラッチ印刷物を製造するために特別なインキなどは使用せず、一般的に用いられている通常のオフセット印刷用のインキや、最も一般的な印刷方式であるオフセット印刷機によって、極めて簡単且つコスト安にスクラッチ印刷物を製造することができ、この点においても実用性に秀れる。
【００６６】
従って、本実施例に係るスクラッチ印刷物の製造方法は、スクラッチ印刷物を、非常にコスト安に製造できるから、例えば、遊戯カードや簡単な抽選カードなどのスクラッチ印刷物を気軽に利用できることとなる。即ち、単なる印刷物ではなく、誰でも簡単にドキドキ感やゲーム感覚を楽しむことができるという付加価値を有するスクラッチ印刷物を、非常にコスト安で提供できることとなるから、例えば、店頭で配る販促目的の簡単な抽選カードやキャンペーン用カードなど様々な目的で、スクラッチ印刷物を手軽に採用できることとなる極めて実用性に秀れたものである。
【００６７】
尚、本実施例に係るスクラッチ印刷物の製造方法は、上述の通り有色インキ３ａの性質や、印刷方法に関わらず、良好に前記易剥離層５の上層に隠蔽層６としての有色インキ層３を形成することが可能である。よって、前記有色インキ３ａは、オフセット印刷用の有色インキ３ａに限られるものではなく、例えば、シルクスクリーン印刷用のシンナー系の有色インキ３ａなど、オフセット印刷用の有色インキ３ａ以外の有色インキ３ａを採用た場合においても、前記易剥離層５としての先刷り印刷層２の上層に良好に有色インキ層３を形成することが可能である。また、印刷方式に関わらず、単に有色インキ３ａを覆うように前記後刷り印刷層４を印刷して設けることで、上述の通り、有色インキ３ａを隠蔽層６としての有色インキ層３とすることが可能である。よって、有色インキ３ａを前記先刷り印刷層２の上層に印刷するの印刷方式は、本実施例のオフセット印刷に限らず、例えば、グラビア印刷，フレキソ印刷又はシルクスクリーン印刷など、他の印刷方式によっても、良好に前記易剥離層５としての先刷り印刷層２の上層に前記隠蔽層６としての有色インキ層３を形成することが可能である。
【００６８】
また、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【００６９】
【図１】本実施例に係るスクラッチ印刷物の製造方法を示す説明斜視図である。
【図２】本実施例に係るスクラッチ印刷物の製造方法の説明図である。
【図３】本実施例に係るスクラッチ印刷物の製造方法の説明図である。
【図４】本実施例に係るスクラッチ印刷物の製造方法の説明図である。
【図５】本実施例に係るスクラッチ印刷物の使用態様を示す概略図である。
【符号の説明】
【００７０】
１ 情報層
２ 先刷り印刷層
３ 有色インキ層
３ａ 有色インキ
４ 後刷り印刷層
５ 易剥離層
６ 隠蔽層
７ 仕上げニス層
ａ 下地
ｂ 引掻体
ｉ 表示部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
下地に文字や絵柄などの表示部を印刷して情報層を設け、この下地の情報層の上層には易剥離層が設けられ、この易剥離層の上層には有色インキで形成され前記表示部を隠蔽する隠蔽層が設けられ、この隠蔽層をコインや爪などの引掻体で擦って前記易剥離層から剥離除去することで前記表示部を視認し得るように構成されたスクラッチ印刷物の製造方法であって、前記下地の情報層の上層に、有色インキの下地への浸透を阻止すると共に該有色インキとの剥離性に秀れた性質を有する前記易剥離層としての先刷り印刷層を印刷して設け、この先刷り印刷層の上層に前記有色インキを印刷し着肉させ、更に、この有色インキを覆うようにして、乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層を印刷して設けると共に、該後刷り印刷層と前記先刷り印刷層とで有色インキを先刷り印刷層表面方向に圧延して、前記隠蔽層としての有色インキ層を形成することを特徴とするスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項２】
前記有色インキはオフセット印刷用の有色インキであって、前記先刷り印刷層の上層にオフセット印刷によって着肉させることを特徴とする請求項１記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項３】
前記有色インキは、前記先刷り印刷層が乾燥した後、この先刷り印刷層の上層に印刷し着肉させることを特徴とする請求項１，２のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項４】
前記後刷り印刷層は、前記有色インキを前記先刷り印刷層の上層に着肉させた後、該有色インキが酸化重合乾燥により硬化することを阻止し得るように、直ちに該有色インキを覆うようにして設けることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項５】
前記先刷り印刷層は、剥離ニスで形成した構成とすることを特徴とする請求項１〜４のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項６】
前記後刷り印刷層は、剥離ニス若しくはオーバープリントニスで形成した仕上げニス層であることを特徴とする請求項１〜５のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項７】
前記後刷り印刷層は、オフセット印刷によって前記有色インキを覆うようにして設けることを特徴とする請求項１〜６のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項８】
前記先刷り印刷層は、オフセット印刷によって前記下地の情報層の上層に設けることを特徴とする請求項１〜７のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項９】
前記情報層は、オフセット印刷によって前記下地の上層に表示部を印刷して設けることを特徴とする請求項１〜８のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項１０】
下地の上層に文字や絵柄などの表示部を印刷した情報層を設け、この下地の情報層の上層には易剥離層が設けられ、この易剥離層の上層には前記表示部を隠蔽する隠蔽層が設けられ、隠蔽層をコインや爪などの引掻体で擦って前記易剥離層から剥離除去することで前記表示部を視認し得るように構成されたスクラッチ印刷物の製造方法であって、前記下地の情報層の上層に、オフセット印刷によって剥離ニスを印刷して易剥離層を設け、この易剥離層が皮膜化した後、この易剥離層の上層にオフセット印刷によって前記有色インキを着肉し、更に該有色インキを覆うようにしてオフセット印刷によって剥離ニス若しくはオーバープリントニスを印刷して仕上げニス層を設けると共に、該仕上げりニス層と前記易剥離層とで前記有色インキを易剥離層表面方向に圧延して前記隠蔽層としての有色インキ層を形成することを特徴とするスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項１１】
下地に文字や絵柄などの表示部を印刷して情報層を設け、この下地の情報層の上層には易剥離層が設けられ、この易剥離層の上層には有色インキで形成され前記表示部を隠蔽する隠蔽層が設けられ、隠蔽層をコインや爪などの引掻体で擦って前記易剥離層から剥離除去することで前記表示部を視認し得るように構成されたスクラッチ印刷物であって、前記下地の情報層の上層に、前記有色インキの下地への浸透を阻止すると共に該有色インキとの剥離性に秀れた性質を有する易剥離層としての先刷り印刷層を設け、この先刷り印刷層の上層には前記有色インキで形成した前記隠蔽層を設け、この隠蔽層の上層には乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層を被覆状態に設け、前記隠蔽層は、前記先刷り印刷層の上層に有色インキを印刷し、更にこの有色インキを覆うようにして前記後刷り印刷層を印刷し、この後刷り印刷層と前記先刷り印刷層とで有色インキを先刷り印刷層表面方向に圧延して形成した有色インキ層であることを特徴とするスクラッチ印刷物。
【請求項１２】
前記下地の情報層の上層にオフセット印刷によってオフセット印刷用の剥離ニスを印刷して形成した前記易剥離層を設け、この易剥離層の上層にはオフセット印刷用の有色インキで形成した前記隠蔽層を設け、この隠蔽層の上層にはオフセット印刷によってオフセット印刷用の剥離ニス若しくはオーバープリントニスを印刷して形成した仕上げニス層を被覆状態に設け、前記隠蔽層としての有色インキ層は、前記易剥離層の上層に有色インキをオフセット印刷し、更にこの有色インキを覆うように前記仕上げニス層をオフセット印刷し、この仕上げニス層と前記易剥離層とで有色インキを易剥離層表面方向に圧延して形成した構成とすることを特徴とする請求項１１記載のスクラッチ印刷物。
【請求項１】
下地に文字や絵柄などの表示部を印刷して情報層を設け、この下地の情報層の上層には易剥離層が設けられ、この易剥離層の上層には有色インキで形成され前記表示部を隠蔽する隠蔽層が設けられ、この隠蔽層をコインや爪などの引掻体で擦って前記易剥離層から剥離除去することで前記表示部を視認し得るように構成されたスクラッチ印刷物の製造方法であって、前記下地の情報層の上層に、有色インキの下地への浸透を阻止すると共に該有色インキとの剥離性に秀れた性質を有する前記易剥離層としての先刷り印刷層を印刷して設け、この先刷り印刷層の上層に前記有色インキを印刷し着肉させ、更に、この有色インキを覆うようにして、乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層を印刷して設けると共に、該後刷り印刷層と前記先刷り印刷層とで有色インキを先刷り印刷層表面方向に圧延して、前記隠蔽層としての有色インキ層を形成することを特徴とするスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項２】
前記有色インキはオフセット印刷用の有色インキであって、前記先刷り印刷層の上層にオフセット印刷によって着肉させることを特徴とする請求項１記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項３】
前記有色インキは、前記先刷り印刷層が乾燥した後、この先刷り印刷層の上層に印刷し着肉させることを特徴とする請求項１，２のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項４】
前記後刷り印刷層は、前記有色インキを前記先刷り印刷層の上層に着肉させた後、該有色インキが酸化重合乾燥により硬化することを阻止し得るように、直ちに該有色インキを覆うようにして設けることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項５】
前記先刷り印刷層は、剥離ニスで形成した構成とすることを特徴とする請求項１〜４のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項６】
前記後刷り印刷層は、剥離ニス若しくはオーバープリントニスで形成した仕上げニス層であることを特徴とする請求項１〜５のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項７】
前記後刷り印刷層は、オフセット印刷によって前記有色インキを覆うようにして設けることを特徴とする請求項１〜６のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項８】
前記先刷り印刷層は、オフセット印刷によって前記下地の情報層の上層に設けることを特徴とする請求項１〜７のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項９】
前記情報層は、オフセット印刷によって前記下地の上層に表示部を印刷して設けることを特徴とする請求項１〜８のいずれか１項に記載のスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項１０】
下地の上層に文字や絵柄などの表示部を印刷した情報層を設け、この下地の情報層の上層には易剥離層が設けられ、この易剥離層の上層には前記表示部を隠蔽する隠蔽層が設けられ、隠蔽層をコインや爪などの引掻体で擦って前記易剥離層から剥離除去することで前記表示部を視認し得るように構成されたスクラッチ印刷物の製造方法であって、前記下地の情報層の上層に、オフセット印刷によって剥離ニスを印刷して易剥離層を設け、この易剥離層が皮膜化した後、この易剥離層の上層にオフセット印刷によって前記有色インキを着肉し、更に該有色インキを覆うようにしてオフセット印刷によって剥離ニス若しくはオーバープリントニスを印刷して仕上げニス層を設けると共に、該仕上げりニス層と前記易剥離層とで前記有色インキを易剥離層表面方向に圧延して前記隠蔽層としての有色インキ層を形成することを特徴とするスクラッチ印刷物の製造方法。
【請求項１１】
下地に文字や絵柄などの表示部を印刷して情報層を設け、この下地の情報層の上層には易剥離層が設けられ、この易剥離層の上層には有色インキで形成され前記表示部を隠蔽する隠蔽層が設けられ、隠蔽層をコインや爪などの引掻体で擦って前記易剥離層から剥離除去することで前記表示部を視認し得るように構成されたスクラッチ印刷物であって、前記下地の情報層の上層に、前記有色インキの下地への浸透を阻止すると共に該有色インキとの剥離性に秀れた性質を有する易剥離層としての先刷り印刷層を設け、この先刷り印刷層の上層には前記有色インキで形成した前記隠蔽層を設け、この隠蔽層の上層には乾燥すると皮膜化し空気遮断性に秀れる性質を有する後刷り印刷層を被覆状態に設け、前記隠蔽層は、前記先刷り印刷層の上層に有色インキを印刷し、更にこの有色インキを覆うようにして前記後刷り印刷層を印刷し、この後刷り印刷層と前記先刷り印刷層とで有色インキを先刷り印刷層表面方向に圧延して形成した有色インキ層であることを特徴とするスクラッチ印刷物。
【請求項１２】
前記下地の情報層の上層にオフセット印刷によってオフセット印刷用の剥離ニスを印刷して形成した前記易剥離層を設け、この易剥離層の上層にはオフセット印刷用の有色インキで形成した前記隠蔽層を設け、この隠蔽層の上層にはオフセット印刷によってオフセット印刷用の剥離ニス若しくはオーバープリントニスを印刷して形成した仕上げニス層を被覆状態に設け、前記隠蔽層としての有色インキ層は、前記易剥離層の上層に有色インキをオフセット印刷し、更にこの有色インキを覆うように前記仕上げニス層をオフセット印刷し、この仕上げニス層と前記易剥離層とで有色インキを易剥離層表面方向に圧延して形成した構成とすることを特徴とする請求項１１記載のスクラッチ印刷物。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２００６−４３９６４（Ｐ２００６−４３９６４Ａ）
【公開日】平成１８年２月１６日（２００６．２．１６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００４−２２５９０５（Ｐ２００４−２２５９０５）
【出願日】平成１６年８月２日（２００４．８．２）
【出願人】（５０４２９４８９１）有限会社 アニモ (1)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年２月１６日（２００６．２．１６）
【国際特許分類】
【出願日】平成１６年８月２日（２００４．８．２）
【出願人】（５０４２９４８９１）有限会社 アニモ (1)
【Ｆターム（参考）】
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