説明

スクリュデカンタ型遠心分離機

【課題】フィードパイプ端部での逆流を効果的に防止するとともに、逆流した混合物による堆積物の形成も効果的に防止することができるスクリュデカンタ型遠心分離機を提供すること。
【解決手段】円筒部と円錐部で構成された回転ドラムと、該回転ドラム内に回転可能に設けられたスクリュコンベヤと、放出開口部44を有する放出空間42へ臨むフィードパイプ30とを備えて成る、流体を異なる密度層に継続的に分離するスクリュデカンタ型遠心分離機において、前記フィードパイプ30を内包するリング状空間38を設けるとともに、該リング状空間38内で排気方向に定常的な流れを形成する排気手段58を流体搬送方向32に見て前記放出空間42の直前に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に基づく、流体を異なる密度層に継続的に分離するスクリュデカンタ型遠心分離機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなスクリュデカンタ型遠心分離機においては、混合物がフィードパイプから放出空間へ放出される領域において、乱流或いは過剰な流量によって混合物が中空軸内部の中空室内へ逆流するとともに、中空室内に堆積物が形成されてしまうという問題がある。
【0003】
又、中空軸の壁面部に複数の開口部を形成し、この開口部からスクリュ部へ堆積物を排出させるものが知られているが、この場合も、堆積物が時間経過に伴って中空室内の特に滞流域に付着し、スクリュコンベヤの回転に不均衡が生じてしまうという問題がある。
【0004】
そこで、フィードパイプを、ガイドパイプを貫通させつつ放出空間まで延設させて上記問題を解消しようとしたものが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この場合も、上記問題はその一部が解消されるにとどまり、ガイドパイプとフィードパイプの間の比較的狭いリング状空間が逆流する混合物によってつまってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、フィードパイプ端部での逆流を効果的に防止するとともに、逆流した混合物による堆積物の形成も効果的に防止することができるスクリュデカンタ型遠心分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、フィードパイプを内包するリング状空間を設けるとともに、該リング状空間内で排気方向に定常的な流れを形成する排気手段を流体搬送方向に見て放出空間の直前に設けたことを特徴としている。
【0008】
又、本発明の一実施形態は、排気手段の中心部に空気の流入口を設けるとともに、該流入口にフィードパイプの放出空間側の自由端を挿入したことを特徴としており、又、特に簡単且つ有効な解決手段として、排気手段を回転ポンプの可動翼で形成したことを特徴としている。
【0009】
更に、本発明は、可動翼を中空軸と一体に形成するとともに、該中空軸の回転方向へ回転する際にスクリュ部方向へ排気できるよう流入口から径方向へ向かって湾曲させた排気通路を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記のようなフィードパイプ外周における排気方向の流れにより混合物の逆流が阻止される。即ち、このような簡単な手段によりリング状空間への逆流を防止することができる。
【0011】
又、フィードパイプが貫通するガイドパイプを設けるとともに、該ガイドパイプでリング状空間を中空軸内部の中空室から画成すれば、リング状空間の断面が比較的小さいことにより排気方向の流れが加速され、より効果的に混合物の逆流を防止することができる。
【0012】
本発明によれば、比較的大きな中空室内に堆積物が形成されることがなく、逆流してくる混合物が比較的狭いリング状空間につまることもない。即ち、スクリュコンベヤの回転中は、リング状空間内には常に流れが生じており、堆積物が形成されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示すように、ケーシング10内で第1の原動機16により駆動される回転ドラム14が軸受12により支持されている。この回転ドラム14は円筒部18及び円錐部20で構成されており、その内部には、第2の原動機24で駆動され、通常当該回転ドラム14より僅かに高速で回転するスクリュコンベヤ22が回転可能に支持されている。又、このスクリュコンベヤ22のスクリュ部26は、搬送方向が円筒部18から円錐部20の方向となるよう中空軸28上に立設されている。
【0015】
又、中空軸28の内部にはフィードパイプ30が延設されており、分離されるべき混合物は、該フィードパイプ30内を矢印32方向へ流通する。又、フィードパイプ30は、中空軸28に固着されたガイドパイプ34を貫通して設けられているとともに、当該フィードパイプ30を内包するリング状空間38を画成している。
【0016】
そして、フィードパイプ30の自由端40は中空軸28内に形成された放出空間42に臨んでおり、混合物は、放出空間42からこの径方向に開口した放出開口部44からスクリュ部26へ案内される。
【0017】
又、回転ドラム14の円筒部18は低密度層50用の第1の排出開口部48に設けられた堰46によって画成されており、この第1の排出開口部48は更にケーシング10の排出管路52に接続されている。一方、円錐部20には高密度層52用の第2の排出開口部54が設けられており、高密度層52はスクリュ部26から図1中の矢印方向へ搬送される。
【0018】
ところで、図2及び図3には図1における一部の拡大図が示されており、これら図2及び図3に示すように、放出空間42のフィードパイプ30における混合物の流通方向32に見た直前に排気手段58が配置されている。この排気手段58はその中心部に流入口60を備えており、該流入口60にフィードパイプ30の自由端40が挿入されている。
【0019】
又、図3に示すように、排気手段58は回転ポンプの可動翼62として中空軸28に一体的に形成されており、排気手段58の排気通路64は、これが中空軸28の回転方向rへ回転する際にスクリュ部26方向へ排気できるよう流入口60から径方向へ向かって湾曲して形成されている(図3)。即ち、図2及び図3に示すように、排気通路64は中空軸28に刻設されている。
【0020】
尚、本実施の形態によるスクリュデカンタ型遠心分離機は、スクリュコンベヤ22及び可動翼62の回転時にガイドパイプ34とフィードパイプ30の間に設けられたリング状空間38に常に図2中に破線の矢印で示す排出方向への流れが発生するよう設定されているとともに、スクリュコンベヤ22及び可動翼62の回転により混合物の流通方向32への流れが定常的となるよう設定されている。
【0021】
而して、上記のような排気方向への流れを発生させることにより、フィードパイプ30の自由端40から放出される混合物を完全に放出空間42へ運搬することが可能であり、リング状空間38への逆流が防止される。そのため、リング状空間38内には常に流れが生じており、堆積物が形成されることがない。又、仮にフィードパイプ30からの流入流量Vが放出開口部44からの流出流量V1より大きいとしても、可動翼62が発生させる排気方向への流れによる背圧によってリング状空間38への逆流を阻止することができる。
【0022】
更に、本実施の形態による破線の矢印で示す方向への流れの形成により、放出開口部44からの流出流量V1を回転ポンプによりスクリュ部26へ圧送するようフィードパイプ30からの流入流量Vを大きくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるスクリュデカンタ型遠心分離機のその軸方向断面図である。
【図2】図3のII−II線に沿って示す放出空間近傍の拡大断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿って示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 ケーシング
12 軸受
14 回転ドラム
16 第1の原動機
18 円筒部
20 円錐部
22 スクリュコンベヤ
24 第2の原動機
26 スクリュ部
28 中空軸
30 フィードパイプ
32 混合物流通方向
34 ガイドパイプ
36 中空室
38 リング状空間
40 フィードパイプの自由端
42 放出空間
44 放出開口部
46 堰
48 第1の排出開口部
50 低密度層
52 排出管路
54 第2の排出開口部
56 高密度層
58 排気手段
60 流入口
62 可動翼
64 排気通路
r 中空軸の回転方向
V フィードパイプからの流入流量
V1 放出開口部からの流出流量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を異なる密度層に継続的に分離するスクリュデカンタ型遠心分離機であって、
低密度層を排出する第1の排出開口部を備えた円筒部と、高密度層を排出する第2の排出開口部を備えた円錐部とで構成された回転ドラムと、
該回転ドラム内に回転可能に設けられるとともに、中空軸を備え、該中空軸に設けられたスクリュ部により高密度層を前記第2の排出開口部へ搬送するスクリュコンベヤと、
前記中空軸内にこれと同軸に設けられるとともに、該中空軸内に形成されつつ前記スクリュ部へ開口した放出開口部を有する放出空間へ臨むフィードパイプと
を備えて成る前記スクリュデカンタ型遠心分離機において、
前記フィードパイプ(30)を内包するリング状空間(38)を設けるとともに、該リング状空間(38)内で排気方向に定常的な流れを形成する排気手段(58)を流体搬送方向(32)に見て前記放出空間(42)の直前に設けたことを特徴とするスクリュデカンタ型遠心分離機。
【請求項2】
前記フィードパイプ(30)が貫通するガイドパイプ(34)を設けるとともに、該ガイドパイプ(34)で前記リング状空間(38)を前記中空軸(28)内部の中空室(36)から画成したことを特徴とする請求項1記載のスクリュデカンタ型遠心分離機。
【請求項3】
前記ガイドパイプ(34)を前記中空軸(28)に固設したことを特徴とする請求項2記載のスクリュデカンタ型遠心分離機。
【請求項4】
前記排気手段(58)の中心部に空気の流入口(60)を設けるとともに、該流入口(60)に前記フィードパイプ(30)の前記放出空間側の自由端(40)を挿入したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のスクリュデカンタ型遠心分離機。
【請求項5】
前記排気手段(58)を回転ポンプの可動翼(62)で形成したことを特徴とする請求項4記載のスクリュデカンタ型遠心分離機。
【請求項6】
前記可動翼(62)を前記中空軸(28)と一体に形成するとともに、前記中空軸(28)の回転方向(r)へ回転する際に前記スクリュ部(26)方向へ排気できるよう前記流入口(60)から径方向へ向かって湾曲させた排気通路(64)を設けたことを特徴とする請求項5記載のスクリュデカンタ型遠心分離機。
【請求項7】
前記排気通路(64)を前記中空軸(28)に刻設したことを特徴とする請求項6記載のスクリュデカンタ型遠心分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−542011(P2008−542011A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514052(P2008−514052)
【出願日】平成18年5月3日(2006.5.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062026
【国際公開番号】WO2006/131425
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(507397135)ヒラー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】