説明

スクリューポイント

【課題】 地盤調査法であるスウェーデン式サウンディング試験に用いるスクリューポイントで、耐久性能がこれまでよりも格段優れたポイントを提供する。
【解決手段】
本体1とスタットボルトをそれぞれ異種合金鋼で構成し、焼き嵌めで両者を一体化したスクリューポイントであって、スタットボルトは、その軸部4の焼き嵌めされた部分の断面形状が円形、楕円形、多角数を有する角形および周囲に凹凸条が交互に設けられた円形のうちのいずれかであって、スクリューポイント本体1に焼き嵌めされた部分より突き出た部分にはねじ5を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤調査法のひとつであるスウェーデン式サウンディング試験で使用するスクリューポイントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤調査法でのスウェーデン式サウンディング試験は、簡易で安価な調査法として近年多用されるようになっている。スウェーデン式サウンディング試験は、例えば特開平6−346429号に掲載されているものであり、図3で示すように、スクリューポイントにロッド10を図示の矢印方向にねじ締結して図4の状態で使用するものである。すなわち、規定寸法の外径と長さをもったロッド10先端のロッド雌ねじ11に、規定形状の外形、寸法および長さをもったスクリューポイントのねじ5を締結した構成の調査具を使用して、試験地盤の地点上で地盤に垂直に立てたロッド10の上方より荷重及び回転を加え、沈み深さと回転数値を基にし、地耐力を求める試験方法である。試験の際、ロッド10先端雌ねじ11に締結したスクリューポイントは地中の砂礫、粘土層等の地盤との擦れ合いで外周部が摩耗する工具であって、地上にあるロッド10の上方部には機械式回転装置、或いは手動による工具を装着しているものである。スクリューポイントが摩耗し、外径寸法が許容限界値を超えて減径したスクリューポイント3は、締結したスクリューポイントのねじ5をロッド雌ねじ11より取り外し、新しいスクリューポイントに取り替える。更に必要な地耐力に達する深さを求めて、規定寸法のロッドを順次継ぎ足して、必要な地耐力に達する深さを求めて試験をする調査方法である。また、スクリューポイントとロッド10は、各々のねじ締結部9へ繰り返しトルクが加わり、ロッドの雌ねじ11とスクリューポイントねじ5は強固に締結されていても、ロッド10に締結したスクリューポイントのねじ首部6付近には地中の砂礫、粘土層等の混在する層に至ってはトルクの他、曲げのモーメントが加わりスクリューポイントのねじ首部6は繰り返しの過大負荷が加わる調査方法である。
【特許文献1】特開平6−346429号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記ロッド10とスクリューポイントは、スクリューポイントが調査地盤との摩擦摩耗で、外径寸法が規定の限界値以下に減径するまでの間は繰り返し使用する。スクリューポイントのねじ5とロッド雌ねじ11のねじ連結部9には締め付けトルクと曲げのモーメントが繰り返し加わり、スウェーデン式サウンディング試験途上、スクリューポイントのねじ首部6には過大負荷が発生しスクリューポイントのねじ首部6付近で破断する事もあって、試験途上での破断はスクリューポイントが数メートルの深い地中に残り、回収不可能になると共に破損のため、新しいスクリューポイントへ交換を余儀なくされるとともに、同地点の再試験となり時間の大きなロスとなる。また地中でロッド10先端のスクリューポイントのねじ5が折損した際、地中より引き揚げたロッド雌ねじ11内にはスクリューポイントのねじ5が折れ込んでいて、この折れ込んだねじ5の除去が困難であって、新しいロッド10への交換も必要となり経済的な損失が発生している。スクリューポイントは、一般的に本体1とねじ部5は一体であって、本体1の耐摩耗性を求める材種及び熱処理と、ねじ首部6の高靱性の両特性を求める材種選択の範囲が少なく、スクリューポイント本体1の耐摩耗性を求めるとねじ首部6付近が破断し易く、ねじ首部6付近の破断を回避する材種と熱処理を選択するとスクリューポイント本体1が摩耗減径する速度が早まる材種となるように、それぞれ相反する材種及び熱処理となり、スクリューポイントとロッド10の消耗においても経済的な損失となっている。近年スウェーデン式サウンディング試験機械は、急激なハイテクノロジー化と試験機械の著しい技術革新と共に高トルク化の機械へ変革し、ロッド10とスクリューポイントの連結は更に強固な締め付けとなり、ねじ首部6への曲げのモーメントも益々増大傾向にあって、スウェーデン式サウンディング試験途上でスクリューポイントの減径摩耗と共に破損消耗も多くなっている、すなわちスクリューポイント本体1が求める耐摩耗性能と、ねじ首部6の耐破断靱性能を高めることが重要であって、スクリューポイントの首部6の破断による破損ロッド10の破損消耗においても経済的損失の問題は大きい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のスクリューポイントは、スクリュー状の溝1aを外周面に有した砲弾形状のスクリューポイント本体1と、このスクリューポイント本体1の後端に、焼き嵌めで一体化された軸部4と、その軸部4の突出部分に形成されたねじ5をもち、かつスクリューポイント本体1とは異種合金で構成されたスタットボルトとからなり、前記軸部4の焼き嵌めされた部分の断面形状は円形、楕円形、角形、及び周囲に凹凸条が交互に設けられた円形の何れかからなることを特徴とする。また、本発明のスクリューポイントは、ポイント本体1がCr−Mo−V合金鋼から構成され熱処理されたものであるか、または超硬合金から構成されていることを特徴とする。さらに本発明のスクリューポイントのスタットボルトは、引張強さが930N/mm2のCr−Mn−Mo合金鋼からなり、ねじの付け根であるねじ首部6は、焼き嵌めされた軸部4に向けて径寸法が拡大するラッパ状の形状を備えているものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明では、スクリューポイント本体1の材種をCr−Mo−V合金鋼とし、熱処理を施して耐摩耗性能、高靱性能に高めたことで耐久度を従来品と比較して格段に向上したものである。また本発明のスタットボルトにおいては、Cr−Mn−Mo合金鋼でその引張強さが約930N/mm2の鋼を選定し、高靱性能に特化させると共に、ねじ首部6での集中応力の分散を目的に、ねじ5から軸部4に向けて拡大径となるラッパ形状にして、この部分に集中する応力を分散させて耐破断強化を図り、耐久性に富んだ経済的なスクリューポイントの提供を可能とした。
本発明の焼き嵌めされたスタットボルトの軸部4の断面形状は、円形、楕円形、角形及び周囲に凹凸条が交互に設けられた円形のうちのいずれかからなり、相応するスクリューポイント本体1の後端に形成した内腔穴形状が、スタットボルト2の軸部4の断面形状と合致した形状で焼き嵌めされているものであり、軸方向の回転における滑りを拘束するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施の形態の一例を、図1及び図2を用いて説明する。図1はスタットボルトをスクリューポイント本体1に焼き嵌めする以前の部分破断図であり、図2は両者を焼き嵌めで一体化した後の破断図である。スタットボルトの軸部4の直径寸法は16mm、長さは22mmであり、ねじ5の外径寸法は14mmであって、ねじ5から軸部4に向いたねじ首部6は、直径で2mm拡大するラッパ状としている。本体1の後端の軸芯部8に直径16mm、深さ23mmの,スタットボルト2と同形状の内腔穴7を設けたものであって、スタットボルトの軸部4の長さと比較して1mm深くした23mmの深さの穴としている。焼き嵌めは、スクリューポイント本体1の後端を摂氏300度〜400度に加熱し、膨張させた内腔穴7に、スタットボルトの軸部4を図1で示す矢印方向に挿入した後、放置冷却して本体1の内腔穴7にスタットボルトの軸部4を焼き嵌めし、一体化させてスクリューポイントとしている。このスクリューポイント本体1は、長さ200mm、最大直径33mmの砲弾形状をしたCr−Mo−V合金鋼の熱処理されたものから形成されていて、その周囲には最大深さ約5mmの螺旋条の溝1aが長さ200mmにわたって1回転するひねりで4条設けられている。本体1とスタットボルト2を焼き嵌めした状態においては、スタットボルト2の材種はCr−Mn−Mo合金鋼で、引張強さ約930N/mm2のものを用いて、図4で示す締結部9のように、スタットボルトの軸部4は締結部9より本体の側へ1mm沈む仕様としていて、ロッド雌ねじ入り口13がスクリューポイントのねじ首部6と干渉を避けるようにしているので、スクリューポイントとロッド10の完全締結が図られ、従来品の摩擦消耗および破損消耗に比べて格段の耐久性能を実現した。
【産業上の利用可能性】
【0007】
調査地点の地質が砂礫、粘土層等の混在する層である場合は勿論のこと、砂礫や岩石の混在具合が少ない、軽度な衝撃の地質であっては、スクリューポイント本体1は前記の合金鋼で構成することで十分用に足りるが、スクリューポイント本体1を超硬合金仕様にすることによりさらに飛躍的に耐久度が増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す図。
【図2】同スタットボルトと本体の焼き嵌め状態を示す図。
【図3】ロッド10とスクリューポイント締結前の形態の一例を示す図。
【図4】調査に使用するロッド10とスクリューポイントの締結状態を示す図。
【符号の説明】
【0009】
1 本体
1a 溝
2 スタットボルト
3 スクリューポイント
4 軸部
5 ねじ
6 ねじ首部
7 内腔穴
8 軸芯部
9 締結部
10 ロッド
11 ロッド雌ねじ
12 ロッド雄ねじ
13 ロッド雌ねじ入り口



【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュー状の溝(1a)を有した砲弾形状のスクリューポイント本体(1)と、このスクリューポイント本体(1)の後端に焼き嵌めで一体化された軸部(4)と、その軸部(4)の突出部分に形成されたねじ(5)を持ち、かつスクリューポイント本体(1)とは異種合金で構成されたスタットボルト(2)からなり、前記軸部(4)の焼き嵌めされた部分の断面形状は円形、楕円形、角形および周囲に凹凸条が交互に設けられた円形のうちのいずれかよりなるスクリューポイント。
【請求項2】
スクリューポイント本体(1)は熱処理されたCr− Mo− V合金鋼または超硬合金からなる請求項1記載のスクリューポイント。
【請求項3】
スタットボルト(2)は、Cr− Mn− Mo合金鋼からなり、ねじ(5)の付け根であるねじ首部(6)は、焼き嵌めされた軸部(4)に向けて外径寸法が拡大するラッパ状の形状を備えている請求項1記載のスクリューポイント。
【請求項4】
スクリュー状の溝(1a)を外周面に有した砲弾形状で、Cr− Mo− V合金鋼又は超硬合金からなるスクリューポイント本体(1)と、このスクリューポイント本体(1)の後端に焼き嵌めで一体化された軸部(4)と、その軸部の突出部分に形成されたねじ(5)とをもち、かつCr−Mn− Mo合金鋼から構成されたスタットボルト(2)とからなるスクリューポイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−185472(P2009−185472A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24703(P2008−24703)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【特許番号】特許第4278698号(P4278698)
【特許公報発行日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(303002066)
【Fターム(参考)】