説明

スクリーニング方法

【課題】
有用な摂食亢進作用、体重増加作用および肥満作用を有するポリペプチドを提供すること。
【解決手段】
本発明者らは、SALPRと結合するリラキシン−3をラット脳室内に投与し、投与後の摂食量、体重、脂肪量などを観察することにより、リラキシン−3が有用な摂食亢進作用、体重増加作用および肥満作用を有することを見出した。本発明により、有用な摂食亢進作用、体重増加作用および肥満作用を有するポリペプチド、当該ポリペプチドを含有する疾患治療剤、当該ポリペプチドの受容体の賦活化、抑制化をする化合物、物質もしくはその塩のスクリーニング方法、当該スクリーニング用キット、および当該ポリペプチドの発現を阻害する物質などを含有してなる摂食抑制剤、肥満治療剤、糖尿病治療剤などが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有用な摂食亢進作用、体重増加作用および肥満作用を有するポリペプチド、当該ポリペプチドを含有する疾患治療剤、当該ポリペプチドの受容体の賦活化、抑制化をする化合物、物質もしくはその塩のスクリーニング方法、当該スクリーニング用キット、および当該ポリペプチドの発現を阻害する物質などを含有してなる摂食抑制剤、肥満治療剤または糖尿病治療剤などに関する。
【背景技術】
【0002】
摂食は動物が生きていくために欠かせない行動である。肥満は飽食時代の現代社会にあって、摂食量とエネルギー消費の調節・バランスが崩れた結果として生じたものであると考えられている。肥満は生活習慣病を始めとする各種疾病の危険因子でもあるため、社会的な関心が高まってきている。食事療法や運動療法など、摂食量とエネルギー消費のバランスを改善する基本的な治療法はあるものの、現状では肥満患者・その予備群は増加している。最近では末梢組織での栄養吸収を抑制する薬剤や中枢性に作用し摂食量を減少させる薬剤も開発されているが、肥満治療剤として摂食量を抑制する有効かつ安全な薬剤の開発は望まれている。
【0003】
摂食行動は脳中枢神経からの指令と、末梢組織からのフィードバックによって中枢神経がさらに指令を送る循環で制御されていることがわかりつつあり、その主体である脳での摂食制御機構に焦点を当てた研究が盛んに行なわれている。脳の特定領域を破壊した動物の研究や、神経ペプチドや神経伝達物質を用いた機能解析により、視床下部領域が摂食行動に重要な役割を果たしていることが分かってきている。また、視床下部には多くの神経伝達物質や神経ペプチドおよびそれらに対する受容体(レセプター)が発現しており、これらと摂食行動との関連が示されている。例えば摂食の亢進には視床下部弓状核に存在するニューロペプチドYやアグーチ関連ペプチドなどが関わること、さらに摂食の抑制には同所に存在するメラノコルチンや視床下部室傍核から放出されるコルチコトロピン放出ホルモンやサイロトロピン放出ホルモンが関わっていることが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、摂食を制御する複雑な神経ネットワークには未だ不明な部分が多く、未だなお新規な神経伝達因子やその局在についての新たな知見が得られつつある状況である。
【0004】
摂食行動の制御に関わる神経伝達物質や神経ペプチドなどの生理活性物質は、細胞膜に存在する特異的なレセプターを介して機能を発揮する。これらのレセプターの中で細胞膜を7回貫通する構造を有し、細胞内で3量体Gタンパク質と共役するレセプターは特にGタンパク質共役型受容体(GPCR)と分類されている。GPCRは特異的なリガンドが結合した時に細胞内にシグナルを伝達し、細胞の賦活化や抑制化をすることで、各種臓器・器官での機能発現に重要な役割を担っている。それ故にGPCRを賦活化するアゴニストや抑制するアンタゴニストと呼ばれる物質は、医薬品として使用されている。GPCRに分類されるレセプターの中でもその特異的なリガンドが未同定のものが数多く知られており、それらはオーファンGPCRと呼ばれている。オーファンGPCRは新たな治療薬のターゲットとしての可能性を秘めており、生体内のリガンド同定や機能を賦活もしくは抑制する物質の研究が進められている。このようにして同定されたリガンドや物質を生体に投与してレセプターとそのリガンドの機能を解明することは、医薬品の開発を提供する上できわめて重要である。
【0005】
近年の遺伝子配列情報の充実により、既知のタンパク質・ペプチドの配列を元にその相同性や法則性を導きだし、未知のペプチドやタンパク質を予測して、GPCRの新たなリガンドとして同定する方法も可能となった。インスリン・リラキシン(Insulin・Relaxin)ファミリーに属するリラキシンは、黄体や胎盤から産生される分泌ペプチドであり、妊娠の維持と出産に関わる作用をもつことが以前から知られていた。それ以外の作用としては、例えばリラキシン−2のラット静脈内投与による摂水量の亢進という報告はなされているが(非特許文献2)、リラキシンの摂食行動との関連については知られていない。リラキシンをコードするDNAの塩基配列を元に遺伝子配列データベースから新たに同定されたDNAのコードするタンパク質が、リラキシン−3(Relaxin−3)(またはINSL7とも称される。)と名づけられたポリペプチドである(特許文献1)。成熟型または活性型のリラキシン−3は、リラキシン−3のプレプロプロテイン(preproprotein)から切断されたB鎖およびA鎖から構成され、当該B鎖および当該A鎖がジスルフィド結合により結合されているポリペプチドである。リラキシン−3(relaxin−3)は、免疫細胞系であるTHP−1の細胞内サイクリックAMP(cAMP)の上昇をともなって細胞を賦活化することが報告された(特許文献2、非特許文献3)。その後、リラキシン−3はリラキシン−2と共に、GPCRであるLGR7に結合するリガンドの一つであることが示された(非特許文献4)。LGR7は脳と末梢組織に発現しており、これまでには生殖器官の発達や妊娠・出産に関わることが示唆されているが、摂食との関連については良く分かっていない。
【0006】
最近、生体内のリガンドが未同定のGPCRであった、SALPR(GPCR135)と名づけられているレセプターや、GPR100(hGPCR11、GPCR142)と呼ばれるレセプターのリガンドがリラキシン−3であることが報告された(非特許文献5、6、特許文献3)。また、特許文献4〜7にもこれらのレセプターに関連する記載がある。SALPRは脳に局在することが知られており(非特許文献7)、特に視床下部の室傍核と視索上核に存在することが報告された(特許文献3、非特許文献6)。一方、GPR100は全身性に発現しているレセプターであることが報告されている(非特許文献8、9)が、その機能については不明なままである。
一方、リラキシン−3は脳内の特定の領域に存在することが報告されており(非特許文献6)、リラキシン−3が脳内ペプチドとして中枢性に何らかの機能を発揮している可能性は考えられていたが、これまでにリラキシン−3が摂食を調節するか否かについても、リラキシン−3が体重調節に関与するか否かについても報告されていなかった。また、リラキシン−3が肥満と関連するかについても知られていなかった。
【0007】
【特許文献1】国際公開第01/68862号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/81562号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/82598号パンフレット
【特許文献4】国際公開第00/24891号パンフレット
【特許文献5】国際公開第01/48189号パンフレット
【特許文献6】国際公開第02/31111号パンフレット
【特許文献7】国際公開第02/61087号パンフレット
【非特許文献1】Spiegelmanら、Cell, 104, p.541−543, 2001
【非特許文献2】Sinnayahら、Endocrinology, 140, p.5082−5086, 1999
【非特許文献3】Bathgateら、J. Biol. Chem., 277, p.1148−1157, 2002
【非特許文献4】Sudoら、J. Biol. Chem., 278, p.7855−7862, 2003
【非特許文献5】Takedaら、FEBS Letter, 520, p.97−101, 2002
【非特許文献6】Liuら、J. Biol. Chem., 278, p.50754−50764, 2003
【非特許文献7】Matsumotoら、Gene, 248, p.183−189, 2000
【非特許文献8】Liuら、J. Biol. Chem., 278, p.50765−50770, 2003
【非特許文献9】Boelsら、Br. J. Pharamacol., 140, p.932−938, 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、有用な摂食亢進作用、体重増加作用および肥満作用を有するポリペプチド、当該ポリペプチドを含有する疾患治療剤、当該ポリペプチドの受容体の賦活化、抑制化をする化合物、物質もしくはその塩のスクリーニング方法、当該スクリーニング用キット、および当該ポリペプチドの発現を阻害する物質などを含有してなる摂食抑制剤、肥満治療剤または糖尿病治療剤などに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、リラキシン−3をラット脳室内に投与し、投与後の摂食量を観察することにより、リラキシン−3が摂食亢進作用を有することを見出した。また、ラットにリラキシン−3を単回投与した後に、当該ラットから採取した血液を測定した結果、体脂肪増加の指標として知られるレプチン濃度が血液中で上昇していることを見出した。さらに、ラット脳室内へリラキシン−3の持続投与を行なったところ、リラキシン−3投与群では対照のvehicle投与群に比べて有意な摂餌量の増加と体重増加作用が認められた。リラキシン−3の持続投与によって両群において運動量に差はなかった。これらのことから、リラキシン−3は摂食亢進作用と共に体重増加作用も有することが初めて明らかとなった。さらに、リラキシン−3を投与し体重が増加したラットにおいては脂肪量の増加および、体脂肪含量と相関する血中レプチン濃度が上昇していた。また、糖尿病と関連するインスリン濃度も上昇していた。以上より、リラキシン−3は摂食亢進作用、体重増加作用、肥満作用を有するポリペプチドであると考えられる。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)リラキシン−3を含有してなる摂食亢進剤。
(2)リラキシン−3を含有してなる体重増加剤。
(3)リラキシン−3を含有してなる脂肪量増加剤。
(4)次の工程;被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする摂食を亢進する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
(5)次の工程;
リラキシン−3および被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
を含むことを特徴とする摂食を亢進または抑制する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
(6)次の工程;
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする前記(5)に記載の摂食を亢進または抑制する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
(7)リラキシン−3受容体が、SALPRまたはその部分ポリペプチドであることを特徴とする前記(4)〜(6)のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
(8)SALPRが、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであることを特徴とする前記(7)に記載のスクリーニング方法。
(9)次の工程;被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする摂食を亢進する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
(10)次の工程;
リラキシン−3および被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
を含むことを特徴とする摂食を亢進または抑制する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
(11)次の工程;
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする前記(10)に記載の摂食を亢進または抑制する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
(12)リラキシン−3受容体が、SALPRまたはその部分ポリペプチドであることを特徴とする前記(9)〜(11)のいずれか一項に記載のスクリーニング用キット。
(13)SALPRが、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであることを特徴とする前記(12)に記載のスクリーニング用キット。
(14)リラキシン−3を含有してなる体重増加を必要とする疾患の治療剤。
(15)疾患が拒食症または悪液質である前記(14)に記載の治療剤。
(16)次の工程;被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする体重増加作用を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
(17)次の工程;
リラキシン−3および被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
を含むことを特徴とする体重を増加または減少させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
(18)次の工程;
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする前記(17)に記載の体重を増加または減少させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
(19)リラキシン−3受容体が、SALPRまたはその部分ポリペプチドであることを特徴とする前記(16)〜(18)のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
(20)SALPRが、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであることを特徴とする前記(19)に記載のスクリーニング方法。
(21)次の工程;被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする体重増加作用を有する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
(22)次の工程;
リラキシン−3および被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
を含むことを特徴とする体重を増加または減少させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
(23)次の工程;
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする前記(22)に記載の体重を増加または減少させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
(24)リラキシン−3受容体が、SALPRまたはその部分ポリペプチドであることを特徴とする前記(21)〜(23)のいずれか一項に記載のスクリーニング用キット。
(25)SALPRが、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであることを特徴とする前記(24)に記載のスクリーニング用キット。
(26)次の工程;被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする肥満調節に係る化合物またはその塩のスクリーニング方法。
(27)次の工程;
リラキシン−3および被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
を含むことを特徴とする肥満調節に係る化合物またはその塩のスクリーニング方法。
(28)次の工程;
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする前記(27)に記載の肥満調節に係る化合物またはその塩のスクリーニング方法。
(29)リラキシン−3受容体が、SALPRまたはその部分ポリペプチドであることを特徴とする前記(26)〜(28)のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
(30)SALPRが、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであることを特徴とする前記(29)に記載のスクリーニング方法。
(31)次の工程;被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする肥満調節に係る化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
(32)次の工程;
リラキシン−3および被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
を含むことを特徴とする肥満調節に係る化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
(33)次の工程;
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする前記(32)に記載の肥満調節に係る化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
(34)リラキシン−3受容体が、SALPRまたはその部分ポリペプチドであることを特徴とする前記(31)〜(33)のいずれか一項に記載のスクリーニング用キット。
(35)SALPRが、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであることを特徴とする前記(34)に記載のスクリーニング用キット。
(36)SALPR阻害作用を有する化合物を含有する摂食抑制剤。
(37)SALPR阻害作用を有する化合物が、前記(7)または(8)に記載のスクリーニング方法により得られる化合物であることを特徴とする前記(36)に記載の剤。
(38)SALPR阻害作用を有する化合物を含有する体重減少剤。
(39)SALPR阻害作用を有する化合物が、前記(19)または(20)に記載のスクリーニング方法により得られる化合物であることを特徴とする前記(38)に記載の剤。
(40)SALPR阻害作用を有する化合物を含有する脂肪量減少剤。
(41)SALPR阻害作用を有する化合物が、前記(29)または(30)に記載のスクリーニング方法により得られる化合物であることを特徴とする前記(40)に記載の剤。
(42)SALPR阻害作用を有する化合物を含有する肥満治療剤。
(43)SALPR阻害作用を有する化合物が、前記(19)、(20)、(29)または(30)のいずれか一項に記載のスクリーニング方法により得られる化合物であることを特徴とする前記(42)に記載の剤。
(44)SALPR阻害作用を有する化合物を含有する糖尿病治療剤。
(45)SALPR阻害作用を有する化合物が、前記(19)、(20)、(29)または(30)のいずれか一項に記載のスクリーニング方法により得られる化合物であることを特徴とする前記(44)に記載の剤。
(46)SALPRが、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであることを特徴とする前記(36)〜(45)のいずれか一項に記載の剤。
(47)リラキシン−3受容体に作用する化合物をヒトまたはヒト以外の生物に投与し、投与後の摂食量を測定する工程を含むことを特徴とする、摂食を亢進または抑制する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
(48)リラキシン−3受容体に作用する化合物が、前記(4)〜(8)のいずれか一項に記載の方法により得られる化合物である、前記(47)に記載の方法。
(49)リラキシン−3受容体に作用する化合物をヒトまたはヒト以外の生物に投与し、投与後の体重を測定する工程を含むことを特徴とする、体重を増加または減少させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
(50)リラキシン−3受容体に作用する化合物が、前記(16)〜(20)のいずれか一項に記載の方法により得られる化合物である、前記(49)に記載の方法。
(51)リラキシン−3受容体に作用する化合物をヒトまたはヒト以外の生物に投与し、投与後の肥満の指標を測定する工程を含むことを特徴とする、肥満調節に係る化合物またはその塩のスクリーニング方法。
(52)リラキシン−3受容体に作用する化合物が、前記(26)〜(30)のいずれか一項に記載の方法により得られる化合物である、前記(51)に記載の方法。
などに関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】pBabeCL(SALPR)IHの構築図を示す。
【図2A】CRE4VIP/pBluescriptIISK(+)の構築図を示す。
【図2B】pBabeCLXの構築図を示す。
【図2C】pBabeCLcre4vPdNNの構築図を示す。
【図3】SALPRを発現させたSE302細胞におけるフォルスコリン添加によって上昇した転写活性のヒト型リラキシン−3による特異的な用量依存的抑制を示す。黒四角はヒト型リラキシン−3を添加した場合を示す。白四角はインスリンを添加した場合を示す。横軸の数字は添加した各リガンドの最終濃度(nmol/L)を示す。縦軸はフォルスコリン1μmol/Lを添加した細胞上清のアルカリフォスファターゼの活性を100、フォルスコリンを添加していない細胞上清の活性を0として算出した各活性の割合を示す。各点は平均値(N=3)と標準偏差を示す。
【図4】SALPR−SE302細胞を用いたリラキシン−3拮抗化合物の評価(スクリーニング)を示す図である。(A)は、SALPR−SE302細胞を使用し、(B)は、SE302細胞を使用した。図中、FK(−)はフォルスコリン無処置群、FK(+)は3μMフォルスコリン処置群、FK(+)&RLX−3はフォルスコリンと3nM ヒト型リラキシン−3の処置群、FK(+)&RLX−3&化合物1はフォルスコリンとヒト型リラキシン−3と化合物1を共存させた処置群を示す。
【図5】正常ラット脳室内へのヒト型リラキシン−3の単回投与による摂餌量への作用を示す。白四角はvehicle投与群(対照)を、黒四角はヒト型リラキシン−3投与群を示す。縦軸は各群の一匹あたりの摂餌量(g)の平均値と標準誤差を示す。
【図6】正常ラット脳室内へのヒト型リラキシン−3の単回投与による血中レプチン濃度への作用を示す。白四角はvehicle投与群(対照)を、黒四角はヒト型リラキシン−3投与群を示す。縦軸は各群の血中のレプチン濃度(ng/mL)の平均値と標準偏差を示す。
【図7】正常ラットの脳室内に持続投与したヒト型リラキシン−3による体重増加量への作用を示す。白四角はvehicle投与群(対照)を、黒四角はヒト型リラキシン−3投与群を示す。縦軸は各群の一匹当たりの体重増加量(g)の平均値と標準偏差を示す。
【図8】正常ラットの脳室内に持続投与したヒト型リラキシン−3による摂餌量への作用を示す。白四角はvehicle投与群(対照)を、黒四角はヒト型リラキシン−3投与群を示す。縦軸は各群の一匹あたりの摂餌量(g)の平均値と標準偏差を示す。
【図9】正常ラットの脳室内に持続投与したヒト型リラキシン−3による精巣周囲脂肪重量への作用を示す。白四角はvehicle投与群(対照)を、黒四角はヒト型リラキシン−3投与群を示す。縦軸は各群の一匹あたりの脂肪量(g)の平均値と標準偏差を示す。
【図10】正常ラットの脳室内に持続投与したヒト型リラキシン−3による血中ホルモンの変動を示す。(A)は血中レプチン濃度への作用を示す。白四角はvehicle投与群(対照)を、黒四角はヒト型リラキシン−3投与群を示す。縦軸は各群の一匹あたりの血中レプチン濃度(ng/ml)の平均値と標準偏差を示す。(B)は血中インスリン濃度への作用を示す。白四角はvehicle投与群を、黒四角はヒト型リラキシン−3投与群を示す。縦軸は各群の一匹あたりの血中インスリン濃度(ng/ml)の平均値と標準偏差を示す。
【図11】脳室内にヒト型リラキシン−3を持続投与した後、自発運動量を測定しながら飼育したラットの体重増加量の変化を示す。白四角はvehicle投与群(対照)を、黒四角はヒト型リラキシン−3投与群を示す。縦軸は各群の一匹当たりの体重増加量(g)の平均値と標準偏差を示す。図中の白三角は、明期の運動量測定日、黒三角は暗期の運動量測定日を示す。
【図12】脳室内にヒト型リラキシン−3を持続投与したラットの自発運動量に対する作用を示す。白四角はvehicle投与群(対照)を、黒四角はヒト型リラキシン−3投与群を示す。縦軸は各群の一匹あたりの全活動量(カウント)の平均値と標準偏差を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
リラキシン−3
本発明のリラキシン−3は、リラキシン−3(またはINSL7とも称される。)と名づけられたポリペプチドであり、成熟型または活性型のリラキシン−3を意味する。
具体的には、本発明のリラキシン−3は、配列番号2のN末端から第26番目(Arg)〜第52番目(Trp)のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたは当該ポリペプチドと機能的に等価な改変ポリペプチドもしくは当該ポリペプチドの相同ポリペプチド(以下、単に「B鎖」と略記する場合がある。)と配列番号2のN末端から第119番目(Asp)〜第142番目(Cys)のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたは当該ポリペプチドと機能的に等価な改変ポリペプチドもしくは当該ポリペプチドの相同ポリペプチド(以下、単に「A鎖」と略記する場合がある。)が、B鎖およびA鎖のシステイン残基がジスルフィド結合により結合されていることを特徴とするポリペプチドを意味する。ジスルフィド結合は、B鎖およびA鎖のシステイン残基が、分子間および分子内で結合していることが望ましい。
より具体的には、本発明のリラキシン−3は、配列番号2のN末端から第26番目(Arg)〜第52番目(Trp)のアミノ酸配列からなるポリペプチド(ヒト型B鎖)と配列番号2のN末端から第119番目(Asp)〜第142番目(Cys)のアミノ酸配列からなるポリペプチド(ヒト型A鎖)がジスルフィド結合により結合されていることを特徴とするポリペプチドを意味し、B鎖およびA鎖のシステイン残基が分子間および分子内でジスルフィド結合を形成しているポリペプチドである。当該ジスルフィド結合は、配列番号2のN末端から第35番目のB鎖のシステインおよび配列番号2のN末端から第129番目のA鎖のシステインが結合し、配列番号2のN末端から第47番目のB鎖のシステインおよび配列番号2のN末端から第142番目のA鎖のシステインが結合し、並びに配列番号2のN末端から第128番目のA鎖のシステインおよび配列番号2のN末端から第133番目のA鎖のシステインが結合していることが望ましい。
B鎖およびA鎖のアミノ酸配列は、本発明のリラキシン−3のプレプロプロテインのアミノ酸配列に含まれる。本発明のリラキシン−3のプレプロプロテインは、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(ヒト型プレプロプロテイン)(GenBankアクセッション番号NM_080864)または当該ポリペプチドと機能的に等価な改変ポリペプチドもしくは当該ポリペプチドの相同ポリペプチド(以下、単に「プレプロプロテイン」と略記する場合もある。)が挙げられる。本発明のリラキシン−3は、前記プレプロプロテインから切断されたB鎖およびA鎖が、B鎖およびA鎖のシステイン残基がジスルフィド結合により結合されていることを特徴とするポリペプチドを含む。
【0013】
本発明のリラキシン−3、B鎖、A鎖およびプレプロプロテインは、ヒトまたはヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]に由来する天然由来のポリペプチドであっても良く、組換えポリペプチド、合成ポリペプチドであっても良い。本発明のリラキシン−3には、本発明のリラキシン−3の塩が含まれ、さらには本発明のリラキシン−3またはその塩は糖鎖を有しないものと糖鎖を有するものとの両方が含まれる。塩については、後述の塩の記載を参照するとよい。また、本発明のリラキシン−3、B鎖、A鎖およびプレプロプロテインには、N末端環状グルタミン化、C末端アミド化など、分泌タンパクのプロセッシングを受けた形のポリペプチドを含む。
【0014】
上述の機能的に等価な改変ポリペプチドとは、配列番号2のN末端から第26番目(Arg)〜第52番目(Trp)のアミノ酸配列からなるポリペプチド(ヒト型B鎖)、配列番号2のN末端から第119番目(Asp)〜第142番目(Cys)のアミノ酸配列からなるポリペプチド(ヒト型A鎖)または配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(ヒト型プレプロプロテイン)において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であって、しかもB鎖およびA鎖のシステイン残基がジスルフィド結合により結合されていることを特徴とするポリペプチドが本発明のリラキシン−3と実質的に同じ活性[例えばリラキシン−3受容体との結合能およびそれにより生じる種々の細胞刺激活性(例えば細胞内のCa2+の遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン脂質生成、細胞膜電位変化、細胞膜近傍pH変化、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosおよびc−junの誘導活性、アラキドン酸遊離など)、摂食亢進作用、体重増加作用または肥満作用]を有するのであれば、上述の生物由来のポリペプチド、組換えポリペプチド、合成ポリペプチドのいずれであってもよい。
配列番号2のN末端から第26番目(Arg)〜第52番目(Trp)のアミノ酸配列からなるポリペプチド(ヒト型B鎖)、配列番号2のN末端から第119番目(Asp)〜第142番目(Cys)のアミノ酸配列からなるポリペプチド(ヒト型A鎖)または配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(ヒト型プレプロプロテイン)のアミノ酸配列が欠失、置換および/または挿入される場合は、その位置は、特に限定されないが、前記のアミノ酸配列中のシステイン残基以外のアミノ酸残基が挙げられる。
【0015】
本明細書において「置換」とは、ペプチドの活性を実質的に改変しないように、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行なうことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
【0016】
前記の欠失、置換、挿入および/または付加されてもよいアミノ酸残基の数は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個である。
【0017】
上述の相同ポリペプチドとは、配列番号2のN末端から第26番目(Arg)〜第52番目(Trp)のアミノ酸配列からなるポリペプチド(ヒト型B鎖)、配列番号2のN末端から第119番目(Asp)〜第142番目(Cys)のアミノ酸配列からなるポリペプチド(ヒト型A鎖)または配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(ヒト型プレプロプロテイン)のアミノ酸配列に関して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる限り、特に限定されるものではないが、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、そして最も好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、しかもB鎖およびA鎖のシステイン残基がジスルフィド結合により結合されていることを特徴とするポリペプチドが本発明のリラキシン−3と実質的に同じ活性(例えばリラキシン−3受容体との結合能およびそれにより生じる種々の細胞刺激活性、摂食亢進作用、体重増加作用または肥満作用)を有するのであれば、上述の生物由来のポリペプチド、組換えポリペプチド、合成ポリペプチドのいずれであってもよい。
【0018】
本明細書において、「相同性」の数値はいずれも、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であればよく、例えば全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、算出することができる。
【0019】
上述の機能的に等価な改変ポリペプチドまたは相同ポリペプチドのB鎖、A鎖、リラキシン−3またはプレプロプロテインの好ましい例としては、例えば、それ自体公知のマウス型、ラット型またはブタ型のB鎖、A鎖、リラキシン−3またはプレプロプロテインなどが挙げられる(国際公開第01/81562号パンフレット)。
【0020】
本発明のリラキシン−3、B鎖、A鎖またはプレプロプロテインは、種々の公知の方法、例えば遺伝子工学的手法、合成法などによって得ることができる。具体的には、遺伝子工学的手法の場合、本発明のリラキシン−3、B鎖、A鎖またはプレプロプロテインをコードするポリヌクレオチドを適当な宿主細胞に導入し、得られた形質転換体から発現可能な条件下で培養し、発現タンパク質の分離および精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から所望のポリペプチドを分離および精製することによって調製することができる。また、合成法の場合は、液相法、固相法など常法に従い合成することが可能であり、通常、自動合成機を利用することができる。化学修飾物の合成は常法により行なうことができる。
【0021】
リラキシン−3をコードするポリヌクレオチド
本発明のリラキシン−3、B鎖、A鎖またはプレプロプロテインをコードするポリヌクレオチド(以下、単に「本発明のリラキシン−3をコードするポリヌクレオチド」と略記する場合もある。)は、本発明のリラキシン−3、B鎖、A鎖またはプレプロプロテインをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではない。本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、DNAおよびRNAの両方を意味する。
本発明のリラキシン−3をコードするポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号1の5'末端から第76番目(c)〜第156番目(g)の塩基配列からなるポリヌクレオチド(ヒト型B鎖をコードするポリヌクレオチド)、配列番号1の5'末端から第355番目(g)〜第426番目(c)の塩基配列からなるポリヌクレオチド(ヒト型A鎖をコードするポリヌクレオチド)、配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド(ヒト型プレプロプロテインをコードするポリヌクレオチド)とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明のリラキシン−3、B鎖、A鎖またはプレプロプロテインと実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0022】
本明細書において、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドとは、具体的には、FASTA、BLAST、Smith−Waterman〔Meth. Enzym., 164, 765 (1988)〕などの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルト(初期設定)のパラメーターを用いて計算したときに、配列番号1の5'末端から第76番目(c)〜第156番目(g)の塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号1の5'末端から第355番目(g)〜第426番目(c)の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号1で表される塩基配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、そして最も好ましくは99%以上の相同性を有するポリヌクレオチドが挙げられる。また、「ストリンジェントな条件下」とは、当業者が通常使用し得るハイブリダイゼーション緩衝液中で、温度が40℃〜70℃、好ましくは60℃〜65℃などで反応を行い、塩濃度が15〜300mmol/L、好ましくは15〜60mmol/Lなどの洗浄液中で洗浄する方法に従って行なうことができる。温度、塩濃度は使用するプローブの長さに応じて適宜調整することが可能である。
【0023】
本発明のリラキシン−3をコードするポリヌクレオチドは、例えば天然由来のものであることもできるし、または全合成したものであることもできる。さらには、天然由来のものの一部を利用して合成を行なったものであることもできる。本発明のリラキシン−3をコードするポリヌクレオチドの典型的な取得方法としては、例えば市販のライブラリーまたはcDNAライブラリーから、遺伝子工学の分野で慣用されている方法、例えば本発明のリラキシン−3、B鎖、A鎖またはプレプロプロテインの部分アミノ酸配列の情報を基にして作成した適当なDNAプローブを用いてスクリーニングを行なう方法などを挙げることができる。
【0024】
B鎖(配列番号2のN末端から第26番目(Arg)〜第52番目(Trp)のアミノ酸配列を含むポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号1の5'末端から第76番目(c)〜第156番目(g)の塩基配列を含むポリヌクレオチドなどが挙げられる。
A鎖(配列番号2のN末端から第119番目(Asp)〜第142番目(Cys)のアミノ酸配列を含むポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号1の5'末端から第355番目(g)〜第426番目(c)の塩基配列を含むポリヌクレオチドなどが挙げられる。
プレプロプロテイン(配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドなどが挙げられる。
【0025】
プラスミド
前記形質転換に使用されるプラスミドは、上記のような本発明のリラキシン−3をコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターに、当該ポリヌクレオチドを挿入することにより得られるプラスミドを挙げることができる。また、分離および精製の操作を容易にするために、必要に応じて本発明のリラキシン−3、B鎖、A鎖またはプレプロプロテインを切り出す融合タンパク質として発現することのできるプラスミドであってもよい。
【0026】
形質転換体
また、前記形質転換体も、上記のような本発明のリラキシン−3をコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば当該ポリヌクレオチドが宿主細胞の染色体に組み込まれた形質転換体であることもできるし、あるいは、当該ポリヌクレオチドを含むプラスミドの形で含有する形質転換体であることもできるし、あるいは、本発明のリラキシン−3を発現していない形質転換体であることもできる。当該形質転換体は、例えば前記プラスミドにより、あるいは、前記ポリヌクレオチドそれ自体により、所望の宿主細胞を形質転換することにより得ることができる。また、別の態様によれば、前記形質転換体は、B鎖、A鎖が切り出される切断部位に作用するプロテアーゼを発現するプラスミドを同時に含んでいてもよい。
【0027】
前記宿主細胞としては、例えば通常使用される公知の微生物、例えば大腸菌(例えばEscherichia coli JM109株)または酵母(例えばSaccharomyces cerevisiae W303株)、あるいは、公知の培養細胞、例えば動物細胞(例えばCHO細胞、HEK−293細胞、またはCOS細胞)または昆虫細胞(例えばBmN4細胞)を挙げることができる。
【0028】
また、公知の前記発現ベクターとしては、例えば大腸菌に対しては、pUC、pTV、pGEX、pKK、またはpTrcHisを;酵母に対しては、pEMBLYまたはpYES2を;CHO細胞、HEK−293細胞およびCOS細胞に対しては、pcDNA3、pMAMneoまたはpBabe Puroを;BmN4細胞に対しては、カイコ核多角体ウイルス(BmNPV)のポリヘドリンプロモーターを有するベクター(例えばpBK283)を挙げることができる。
【0029】
前記形質転換体を、本発明のリラキシン−3、B鎖、A鎖またはプレプロプロテインの発現が可能な条件下で培養することにより得ることもできるし、あるいは、適当な細胞に、本発明のリラキシン−3、B鎖、A鎖またはプレプロプロテインをコードするRNAを注入し、本発明のリラキシン−3、B鎖、A鎖またはプレプロプロテインの発現が可能な条件下で培養することにより得ることもできる。
【0030】
本発明のリラキシン−3、B鎖、A鎖またはプレプロプロテインを、前記形質転換体の培養物から取得する場合は、培養後に、菌体、細胞または培養液を集め、分離および精製の公知の方法を組合せ、リラキシン−3、B鎖、A鎖またはプレプロプロテインの生化学的性質または物理的性質などを利用しながら行なうことができる。例えば、限外濾過、液体クロマトグラフィー(例えば、アフィニティクロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)など)、透析法などの技術を利用することができる。
【0031】
本発明のリラキシン−3のB鎖およびA鎖をそれぞれ独立に調製した場合、または融合タンパク質からB鎖またはA鎖を切り出して調製する場合は、生産されたまたは切り出されたB鎖およびA鎖を、常法に従い、単離精製し、それぞれ同士をジスルフィド結合で結合させることもできる。
【0032】
リラキシン−3を含有する医薬組成物
本発明のリラキシン−3は、摂食亢進作用、体重増加作用、肥満作用を有するため、摂食亢進剤として食欲不振や摂食量が低下した栄養障害などの治療、体重増加剤、脂肪量増加剤として体重増加を必要とする疾患の治療、肥満調節における何らかの異常に起因する疾患の治療、および本発明のリラキシン−3または本発明のリラキシン−3をコードするポリヌクレオチドの異常などに起因する疾患の治療の医薬として用いることができる。また、各種疾患の発症もしくは各種疾患の治療(例えば術中、術後)に伴い減少した摂食(もしくは食欲)および/または体重の回復を目的とする治療の医薬として用いることもできる。前記各種疾患は、例えば消化管の運動もしくは機能に係る疾患(例えば下痢、便秘、機能性便秘症、過敏性腸症候群、消化管検査時または手術前後における腸管内容物排除のための排便促進など)、免疫機能調節に係る疾患(例えば慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、腎疾患、強皮症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、多発性硬化症、リウマチ性間質性肺炎、サルコイド-シス、クローン病、炎症性大腸炎、肝硬変、慢性肝炎、劇症肝炎、脳脊髄炎、重症筋無力症など)、摂食障害、拒食症、AIDS、癌、または悪液質などが挙げられる。好ましくは、拒食症、悪液質が挙げられる。
【0033】
本発明のリラキシン−3または本発明のリラキシン−3をコードするポリヌクレオチドは塩を形成していてもよく、さらにそれらは水和物を形成していてもよく、本発明に含まれる。本発明のリラキシン−3または本発明のリラキシン−3をコードするポリヌクレオチドもしくはその塩またはそれらの水和物は単独で用いることも可能であるが、薬学的に許容され得る担体と配合して医薬品組成物として用いることもできる。
【0034】
本願明細書における前記の「塩」とは、本発明のリラキシン−3または本発明のリラキシン−3をコードするポリヌクレオチドと塩を形成し、かつ薬学的に許容され得る塩であれば特に限定されないが、好ましくはハロゲン化水素酸塩(例えばフッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩など)、無機酸塩(例えば硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩など)有機カルボン酸塩(例えば酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩など)、有機スルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩など)、アミノ酸塩(例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩など)などが挙げられ、当該「薬学的に許容され得る塩」として、より好ましくは塩酸塩、シュウ酸塩、などである。
【0035】
この時の有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。また、かかる薬剤は、ヒトまたはヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばウシ、サル、トリ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]に、種々の形態、経口または非経口(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で投与することができる。従って、本発明のリラキシン−3またはリラキシン−3をコードするポリヌクレオチドを含有する医薬組成物は、投与経路に応じて適当な剤形とされ、具体的には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、あるいはシロップ剤などによる経口剤、または注射剤、点滴剤、リポソーム剤、坐薬剤などによる非経口剤を挙げることができる。これらの製剤は通常用いられている賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性化剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤などを用いて常法により製造することができる。使用可能な無毒性の上記添加剤としては、例えば乳糖、果糖、ブドウ糖、デンプン、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、またはその塩、エタノール、クエン酸、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0036】
それらの投与形態としては、また、必要な投与量範囲は、本発明のリラキシン−3または本発明のリラキシン−3をコードするポリヌクレオチドの選択、投与対象、投与経路、製剤の性質、患者の状態、そして医師の判断に左右される。適当な投与量は患者の体重1kgあたり例えば約0.1〜500μg、好ましくは約0.1〜100μg、より好ましくは1〜50μg程度を投与するのが好ましい範囲である。投与経路の効率が異なることを考慮すれば、必要とされる投与量は広範に変動することが予測される。例えば経口投与は静脈注射による投与よりも高い投与量を必要とすると予想される。こうした投与量レベルの変動は、当業界でよく理解されているような、標準的経験的な最適化手順を用いて調整することができる。
【0037】
リラキシン−3受容体を用いた摂食調節に係る化合物のスクリーニング方法
リラキシン−3受容体
本発明のリラキシン−3に対する受容体としては、種々の受容体のうち、本発明のリラキシン−3と結合活性を有し、リラキシン−3受容体発現細胞の細胞刺激活性(例えば細胞内のCa2+の遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン脂質生成、細胞膜電位変化、細胞膜近傍pH変化、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosおよびc−junの誘導活性、アラキドン酸遊離など)を有するものであれば、その起源は特に限定されず、例えばヒトまたはヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]のリラキシン−3受容体を発現する臓器、組織、細胞などの天然由来のもの、公知の遺伝子工学的手法、合成法などにより人為的に調製したものも包含される。また、リラキシン−3受容体の部分ポリペプチドとして後述のスクリーニング方法に使用可能であれば特に限定されず、例えば本発明のリラキシン−3に対する結合能を有する部分ポリペプチド、細胞膜外領域に相当するアミノ酸配列を含む部分ポリペプチドなども使用することもできる。この場合、部分ポリペプチドを構成するアミノ酸数は、リラキシン−3受容体のアミノ酸数の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%である。
【0038】
具体的には、リラキシン−3受容体として、報告されている公知の受容体、例えばLGR7(GenBankアクセッション番号NM_021634)、SALPR(GenBankアクセッション番号NM_016568)(GPCR135とも称されている。)またはGPR100(GenBankアクセッション番号AB_083593)(hGPCR11、GPCR142とも称されている。)などを使用することが可能である。
【0039】
SALPRを用いた摂食調節に係る化合物のスクリーニング方法
以下、本明細書においては、本発明の好ましい一例として、リラキシン−3受容体としてSALPRを使用するスクリーニング方法について本発明の内容を詳述する。すなわち、本発明は、SALPRまたはその部分ポリペプチドに結合し、摂食調節(摂食を促進または抑制する)に係る化合物のスクリーニング方法を提供するものである。また、SALPRまたはその部分ポリペプチドに被験物質を作用させ、細胞刺激活性を測定することにより、当該被験物質に摂食を促進または抑制する作用を有するか否かを決定することができる。
【0040】
ここで、本発明のSALPRまたはその部分ポリペプチドは、種々の公知の方法により得ることができ、例えば本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチド(GenBankアクセッション番号NM_016568)を用いて公知の遺伝子工学的手法により調製することができる。また別の態様として、公知のポリペプチドの合成法により得ることができ、例えば液相法、固相法など常法に従い合成することが可能であり、通常、自動合成機を利用することができる。さらに、別の態様によれば、SALPRの部分ポリペプチドは、SALPRを適当なタンパク質分解酵素で切断することによって調製することができる。
【0041】
本発明のSALPRをコードするポリペプチドは、配列番号4で表されるアミノ酸を含むポリペプチド、配列番号4で表されるアミノ酸を含むポリペプチドと機能的に等価な改変ポリペプチド、または配列番号4で表されるアミノ酸配列に関して、70%以上の相同性、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、そして最も好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるアミノ酸配列であって、しかもSALPRと実質的に同じ活性(例えばリラキシン−3との結合能およびそれにより生じる種々の細胞刺激活性、または摂食調節作用)を有するポリペプチドを意味する。
【0042】
ここで、配列番号4で表されるアミノ酸を含むポリペプチドと機能的に等価な改変ポリペプチドとは、そのアミノ酸配列が、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であって、しかもSALPRと実質的に同じ活性(例えばリラキシン−3との結合能およびそれにより生じる種々の細胞刺激活性、または摂食調節作用)を有するポリペプチドを意味する。
【0043】
さらに、SALPRの部分ポリペプチドも、SALPRと実質的に同じ活性(例えばリラキシン−3との結合能およびそれにより生じる種々の細胞刺激活性、または摂食調節作用)を有する限り、使用することができる。
【0044】
以下、遺伝子工学的手法について、より具体的にはSALPRを使用する場合について詳述するが、その部分ポリペプチドについても、後述のスクリーニング方法に使用可能であれば特に限定されない。
【0045】
SALPRの調製方法
SALPRをコードするポリヌクレオチドを適当な宿主細胞に導入し、得られた形質転換体から発現可能な条件下で培養し、発現タンパク質の分離および精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から所望のポリペプチドを分離および精製することにより調製することができる。前記の分離および精製方法としては、例えば硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、または凍結乾燥などを挙げることができる。
【0046】
SALPRをコードするポリヌクレオチド
本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではない。
なお、本明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNAおよびRNAの両方が含まれる。本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドには、具体的には下記の(a)〜(e)からなる群より選択されるものが挙げられる。
(a)配列番号3で表される塩基配列からなる、ポリヌクレオチド;
(b)「配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(c)「配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(d)「配列番号4で表されるアミノ酸配列の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;および
(e)「配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチドに関する。
【0047】
本発明の一つの態様によれば、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドである。配列番号3で表される前記ポリヌクレオチドは、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるSALPRをコードする。
【0048】
本発明の別の一つの態様によれば、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、「配列番号4で表されるアミノ酸配列の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。ここで、欠失、置換、挿入および/または付加されてもよいアミノ酸の数は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個である。
【0049】
本発明の別の一つの態様によれば、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、「配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。さらに、本発明の別の一つの態様によれば、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、「配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。
【0050】
プラスミド
前記形質転換に使用されるプラスミドは、上記のようなSALPRをコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターに、当該ポリヌクレオチドを挿入することにより得られるプラスミドを挙げることができる。
【0051】
形質転換体
また、前記形質転換体も、上記のようなSALPRをコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば当該ポリヌクレオチドが宿主細胞の染色体に組み込まれた形質転換体であることもできるし、あるいは、当該ポリヌクレオチドを含むプラスミドの形で含有する形質転換体であることもできるし、あるいは、SALPRを発現していない形質転換体であることもできる。当該形質転換体は、例えば前記プラスミドにより、あるいは、前記ポリヌクレオチドそれ自体により、所望の宿主細胞を形質転換することにより得ることができる。
【0052】
前記宿主細胞としては、例えば通常使用される公知の微生物、例えば大腸菌(例えばEscherichia coli JM109株)または酵母(例えばSaccharomyces cerevisiae W303株)、あるいは、公知の培養細胞、例えば動物細胞(例えばCHO細胞、HEK−293細胞、またはCOS細胞)または昆虫細胞(例えばBmN4細胞)を挙げることができる。
【0053】
また、公知の前記発現ベクターとしては、例えば大腸菌に対しては、pUC、pTV、pGEX、pKK、またはpTrcHisを;酵母に対しては、pEMBLYまたはpYES2を;CHO細胞、HEK−293細胞およびCOS細胞に対しては、pcDNA3、pMAMneoまたはpBabe Puroを;BmN4細胞に対しては、カイコ核多角体ウイルス(BmNPV)のポリヘドリンプロモーターを有するベクター(例えばpBK283)を挙げることができる。
【0054】
SALPRを含有する細胞は、SALPRを細胞膜表面に発現している限り、特に限定されるものではなく、例えば前記形質転換体(すなわち、SALPRをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドで形質転換された細胞)を、SALPRの発現が可能な条件下で培養することにより得ることもできるし、あるいは、適当な細胞に、SALPRをコードするRNAを注入し、SALPRの発現が可能な条件下で培養することにより得ることもできる。
【0055】
細胞膜画分
また、SALPRを含有する本発明の細胞膜画分は、例えば本発明によるSALPRを発現する細胞を破砕した後、細胞膜が多く含まれる画分を分離することにより得ることができる。細胞の破砕方法としては、例えばホモジナイザー(例えばPotter−Elvehiem型ホモジナイザー)で細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーまたはポリトロン(Kinematica社)による破砕、超音波による破砕、あるいは、フレンチプレスなどで加圧しながら細いノズルから細胞を噴出させることによる破砕などを挙げることができる。また、細胞膜の分画方法としては、例えば遠心力による分画法、例えば分画遠心分離法または密度勾配遠心分離法を挙げることができる。
【0056】
SALPRを介する、本発明による摂食を促進または抑制する化合物のスクリーニング方法では、SALPRまたは前記細胞(すなわち、SALPRを含有する細胞)もしくは前記細胞膜画分(すなわち、SALPRを含有する細胞膜画分)を用いることができる。
【0057】
また、本発明によるスクリーニング方法においては、被験物質がSALPRに特異的に結合するか否かを調べる方法と、SALPRに被験物質が結合することにより生じる細胞刺激活性(例えば細胞内のCa2+の遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン脂質生成、細胞膜電位変化、細胞膜近傍pH変化、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosおよびc−junの誘導活性、アラキドン酸遊離など)を調べる方法とが挙げられ、それらを利用することができる。
【0058】
本発明によるスクリーニング方法においては、例えばSALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分と、被験物質とを接触させ、SALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分と、被験物質が結合するか否かを分析することにより、SALPRを介する摂食を促進または抑制する能力を区別せずに化合物をスクリーニングすることができる。
【0059】
具体的には、被験物質非存在下および被験物質存在下の各条件下において、SALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分と、標識した本発明のリラキシン−3とを接触させ、前記条件下におけるSALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分を介する当該リラキシン−3の特異的結合量を比較することにより、SALPRを介する摂食を促進または抑制する能力を区別せずに化合物をスクリーニングすることができる。すなわち、前記被験物質が、SALPRを介する摂食を促進または抑制する能力を有する場合には、被験物質非存在下におけるSALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分を介する当該リラキシン−3の特異的結合量に対して、被験物質存在下における前記特異的結合量が低下する。
【0060】
本発明によるスクリーニング方法において、SALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分を介する本発明のリラキシン−3の特異的結合量を比較する場合には、当該リラキシン−3として、標識した当該リラキシン−3を用いることができる。前記指標としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、[3H]、[14C]、[125I]、[35S]などを用いることができる。前記酵素としては、例えばβ−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼなどを用いることができる。蛍光物質としては、例えばフルオレセイソチオシアネート、BODIPYなどを用いることができる。発光物質としてはルシフェリン、ルシゲニンなどを用いることができる。場合によっては、本発明のリラキシン−3と標識物質を結合させるためにビオチン−アビジンの系を用いることもできる。
【0061】
このように、本発明によるスクリーニング方法において、SALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分に結合して、これらと本発明のリラキシン−3との結合を阻害する化合物を、SALPRを介する摂食を促進または抑制する能力を区別せずにスクリーニングすることができる。
【0062】
本発明によるスクリーニング方法における別の態様では、被験物質非存在下および被験物質存在下の各条件下において、前記細胞と標識化した本発明のリラキシン−3とを接触させ、前記各条件下における前記細胞を介する当該リラキシン−3の特異的結合量を比較し、さらに、前記条件下における当該リラキシン−3の特定の細胞刺激活性を比較することにより、SALPRを介する摂食を促進または抑制する能力を区別して化合物をスクリーニングすることができる。
【0063】
前記態様においては、前記細胞に結合し、前記細胞に含まれる受容体を介して細胞刺激活性を有する被験物質を、SALPRを介する摂食を促進する化合物として選択することができる。
【0064】
一方、前記態様において、前記細胞と当該リラキシン−3との結合を阻害するものの、細胞刺激活性を有しない被験物質を、SALPRを介する摂食を抑制する化合物として選択することができる。
【0065】
本発明によるスクリーニング方法は、細胞刺激活性として、例えばアデニル酸シクラーゼの活性抑制を利用することによって実施することができる。
【0066】
この態様のスクリーニング方法においては、例えばアデニル酸シクラーゼの活性化によって細胞内に生成するcAMPを公知の手法で測定すればよく、SALPRを介する摂食を促進または抑制する能力を区別して化合物をスクリーニングすることができる。この態様は、SALPRに本発明のリラキシン−3が結合することにより生じる細胞内シグナル伝達、すなわち、SALPRの細胞刺激活性の一つであるアデニル酸シクラーゼの活性抑制を利用するものである。具体的には、SALPRに当該リラキシン−3が結合すると、SALPRに共役しているGタンパク質ファミリーの一つであるGiファミリーが、アデニル酸シクラーゼを抑制し、細胞内に生成されるサイクリックAMP(cAMP:アデニル酸シクラーゼによりATPから生成される)量を減少させることによる。
【0067】
例えばSALPRを細胞膜上に発現(好ましくは、SALPRを含む発現ベクターを導入し過剰に発現)した哺乳動物由来細胞(例えばHEK−293細胞もしくはCHO細胞)にアデニル酸シクラーゼの活性化剤[例えばフォルスコリン(FSK)]を添加すると、細胞内のcAMPの濃度が上昇する。
【0068】
また、アデニル酸シクラーゼ活性化剤を添加する際に、本発明のリラキシン−3を加えると、アデニル酸シクラーゼ活性化剤に起因する前記のアデニル酸シクラーゼ活性促進に加え、当該リラキシン−3が本発明によるSALPRに作用して生じるアデニル酸シクラーゼの活性抑制も起こるため、結果として、アデニル酸シクラーゼ活性化剤を単独投与した場合に比べて、cAMPの生成量が減少する。従って、摂食を促進する作用を有する化合物をスクリーニングする場合には、このスクリーニング系でSALPRを介する当該リラキシン−3に代わり、被験物質を単独で接触させてcAMPの生成量を減少させる(すなわち当該リラキシン−3と同様の作用を有する)化合物を選択すると良い。
【0069】
摂食を抑制する作用を有する化合物をスクリーニングする場合には、アデニル酸シクラーゼ活性化剤、本発明のリラキシン−3、および被験物質をスクリーニング用細胞に添加するとよい。アデニル酸シクラーゼ活性化剤を単独で添加した場合に比べて、当該リラキシン−3の作用でcAMPの生成量が減少するが、被験物質が当該リラキシン−3の作用に拮抗する場合には、cAMP生成量の減少を抑制する。このときには、前記被験物質は摂食抑制作用を有する化合物として選択できる。
【0070】
細胞内cAMP量を測定する方法としては、例えばイムノアッセイなどがあるが、例えば市販のcAMP定量キットを使用することもできる。
【0071】
別の態様のスクリーニング方法においては、例えばSALPRを細胞膜上に発現(好ましくは、SALPRを含む発現ベクターを導入し過剰に発現)し、しかも、cAMP応答配列(CRE)が5’上流に位置するレポーター遺伝子(例えばアルカリフォスファターゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、ベータラクタマーゼ遺伝子、ニトロレダクターゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、ベータガラクトシダーゼ遺伝子など、またはGFP(Green Fluorescent Protein)などの蛍光タンパク質遺伝子など)を含有する細胞(以下、「スクリーニング用細胞」と称することもある)を用いることにより、SALPRを介する摂食を促進または抑制する能力を区別して化合物をスクリーニングすることができる。この態様は、前述のcAMPの生成が減少するとその結果、前記スクリーニング用細胞に導入されているCREをプロモーター領域に有するレポーター遺伝子の転写が抑制されることを利用している。
【0072】
以下、前記態様による、SALPRを介する摂食を促進または抑制する能力を区別して化合物をスクリーニングする手順について、より具体的に説明する。
すなわち、前記スクリーニング用細胞に導入されているCREは、細胞内のcAMPの濃度が上昇すると発現が亢進する遺伝子群(cAMP誘導性遺伝子)の転写調節領域に共通して存在する塩基配列である。従って、アデニル酸シクラーゼの活性化剤(例えばFSK)をスクリーニング用細胞に添加すると、細胞内のcAMPの濃度が上昇し、その結果、CREの下流に位置するレポーター遺伝子の発現量が増加する。レポーター遺伝子産物の発現量は、レポーター遺伝子産物と反応し基質から生成した発光物質の量に由来する発光を測定することによりもしくはレポーター遺伝子として産生された蛍光タンパク質由来の蛍光を測定することで容易に測定することが可能である。
【0073】
また、アデニル酸シクラーゼ活性化剤を添加する際に、本発明のリラキシン−3を加えると、アデニル酸シクラーゼ活性化剤に起因する前記のアデニル酸シクラーゼ活性促進に加え、当該リラキシン−3が本発明によるSALPRに作用して生じるアデニル酸シクラーゼの活性抑制も起こるため、結果として、アデニル酸シクラーゼ活性化剤を単独投与した場合に比べて、レポーター遺伝子産物の発現量が低下する。従って、摂食を促進する作用を有する化合物をスクリーニングする場合には、このスクリーニング系で、SALPRを介する当該リラキシン−3に代わり被験物質を単独で接触させてレポーター遺伝子産物の発現量を減少させる(すなわち当該リラキシン−3と同様の作用を有する)化合物を選択すると良い。
【0074】
摂食を抑制する作用を有する化合物をスクリーニングする場合には、アデニル酸シクラーゼ活性化剤、本発明のリラキシン−3、および被験物質をスクリーニング用細胞に添加するとよい。アデニル酸シクラーゼ活性化剤を単独で添加した場合に比べて、当該リラキシン−3の作用でレポーター遺伝子産物の発現量は減少するが、被験物質が当該リラキシン−3の作用に拮抗する場合には、レポーター遺伝子産物の発現減少を抑制する。このときには、前記被験物質は摂食抑制作用を有する化合物として選択できる。
【0075】
被験物質による作用が、SALPRに対する結合を介した作用であるか否かは、簡単に確認することができる。例えばスクリーニング用細胞(すなわち、SALPRを細胞膜上に発現し、しかも、CREが5’上流に位置するレポーター遺伝子を含有する細胞)を用いた前記試験と並行して、コントロール用細胞(例えばCREが5’上流に位置するレポーター遺伝子を含有するものの、SALPRを細胞膜上に発現していない細胞)を用いて同様の試験を実施する。その結果、前記被験物質による作用が、SALPRに対する結合による作用でない場合には、スクリーニング用細胞およびコントロール用細胞でレポーター遺伝子産物の発現量に関して同じ現象が観察されるのに対して、前記被験物質による作用が、SALPRに対する結合による作用である場合には、スクリーニング用細胞とコントロール用細胞とでレポーター遺伝子産物の発現量に関して異なる現象が観察される。
【0076】
また、別の態様として、被験物質、好ましくは上記のスクリーニング方法により選択された被験物質(以下、単に「被験物質」と略記する場合がある。)を被験動物、例えばヒトまたはヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばウシ、サル、トリ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]に投与し、投与後の摂食量や血中パラメーターの変動などの指標を解析することにより摂食調節に影響を与える被験物質を確認および決定することができる。上記哺乳動物としては、正常の動物に限らず、遺伝性の病態モデル動物(例えば肥満病モデルであるob/obマウス、db/dbマウス、Zucker fattyラットなど)や遺伝子改変動物でもよい。
【0077】
具体的には、本発明のリラキシン−3を投与することにより摂食を促進させる場合は、以下の工程により行なうことができる。
工程A:被験動物に所定量の被験物質を投与する。
工程B:被験動物に所定量のリラキシン−3を投与する。なお、リラキシン−3の投与は、一般的には、脳室内への投与が好ましい。
工程C:被験動物を摂食の有無(程度)を解析および評価する環境下に置く。
工程D:試験結果に基づいて被験動物の摂食の有無(程度)について解析および評価し、被験物質が摂食調節作用を有するものであるか否かを判断および選択する。
【0078】
または、
工程A:被験動物に所定量のリラキシン−3を投与する。なお、リラキシン−3の投与は、一般的には、脳室内への投与が好ましい。
工程B:被験動物に所定量の被験物質を投与する。
工程C:被験動物を摂食の有無(程度)を解析および評価する環境下に置く。
工程D:試験結果に基づいて被験動物の摂食の有無(程度)について解析および評価し、被験物質が摂食調節作用を有するものであるか否かを判断および選択する。
【0079】
または、
工程A:被験動物に所定量の被験物質および所定量のリラキシン−3を同時に投与する。なお、リラキシン−3の投与は、一般的には、脳室内への投与が好ましい。また、同時に投与するとは、被験物質およびリラキシン−3の両方を混合した状態で投与することには限定されず、実質的に同時と考えられる範囲内であれば、例えば、両方の投与に多少の時間差があってもよいし、また各々投与経路が異なっていてもよく、投与形態は適宜設定できる。
工程B:被験動物を摂食の有無(程度)を解析および評価する環境下に置く。
工程C:試験結果に基づいて被験動物の摂食の有無(程度)について解析および評価し、被験物質が摂食調節作用を有するものであるか否かを判断および選択する。
【0080】
被験物質の投与形態としては、経口的または非経口的に投与する。非経口的な投与経路の様態としては、例えば静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、気道内、直腸内、脳内、好ましくは視床下部近傍の脳室内投与が挙げられる。被験物質の被験動物の脳室内への投与方法は、薬物などを脳室内の所定の位置へ投与する際の常法に従えばよく、限定はされない。例えば、まず被験動物を麻酔した上で、ガイドカニューレを所定の位置に固定する手術を施しておき、適当な回復期間(例えば7日間〜14日間、好ましくは少なくとも1週間程度)の経過後、ガイドカニューレにインジェクションニードルを挿し込み、還流ポンプを接続したマイクロシリンジを用い、上記ニードルを介して被験物質を投与することが好ましい。被験物質の投与量は、限定はされず、適宜設定できる。被験物質は、一般的には人工的脳脊髄液(artificial cerebrospinal fluid)または生理食塩水などを用いて所望の濃度の溶液として調製しておく。人工的脳脊髄液としては、公知の常用されているものを用いればよく、限定はされないが、例えば、aCSF(glucose 10mM、KCl 2mM、NaCl 115mM、CaCl 2.5mM、MgSO 1.2mM、NaHCO 25mM、KHPO 2.2mM;pH7.4)などが好ましい。被験物質の投与回数は1日あたり一回でも数回に分けても良く、被験物質を投与する期間や観察する期間は1日から数週間にわたってもよい。
【0081】
リラキシン−3の被験動物への投与方法などは、前記の被験物質の場合と同様の方法が好ましい。また、リラキシン−3の被験動物の脳室内への投与方法も、前記の被験物質と同様に、一般的には人工的脳脊髄液を用いて所望の濃度の溶液となるよう調製しておくことが好ましい。
【0082】
スクリーニングのための指標としては摂食量のほかにも、例えば体重、運動量、エネルギー代謝量、血中の糖および脂質の量、またはホルモンや分泌ペプチドの量などを測定することも有効である。また、投与の際に絶食もしくは飽食、さらに脂質過剰食などの条件を課すこともできる。
【0083】
リラキシン−3受容体を用いた体重調節に係る化合物のスクリーニング方法
リラキシン−3受容体
本発明のリラキシン−3に対する受容体としては、種々の受容体のうち、本発明のリラキシン−3と結合活性を有し、リラキシン−3受容体発現細胞の細胞刺激活性(例えば細胞内のCa2+の遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン脂質生成、細胞膜電位変化、細胞膜近傍pH変化、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosおよびc−junの誘導活性、アラキドン酸遊離など)を有するものであれば、その起源は特に限定されず、例えばヒトまたはヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]のリラキシン−3受容体を発現する臓器、組織、細胞などの天然由来のもの、公知の遺伝子工学的手法、合成法などにより人為的に調製したものも包含される。また、リラキシン−3受容体の部分ポリペプチドとして後述のスクリーニング方法に使用可能であれば特に限定されず、例えば本発明のリラキシン−3に対する結合能を有する部分ポリペプチド、細胞膜外領域に相当するアミノ酸配列を含む部分ポリペプチドなども使用することもできる。この場合、部分ポリペプチドを構成するアミノ酸数は、リラキシン−3受容体のアミノ酸数の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%である。
【0084】
具体的には、リラキシン−3受容体として、報告されている公知の受容体、例えばLGR7(GenBankアクセッション番号NM_021634)、SALPR(GenBankアクセッション番号NM_016568)(GPCR135とも称されている。)またはGPR100(GenBankアクセッション番号AB_083593)(hGPCR11、GPCR142とも称されている。)などを使用することが可能である。
【0085】
SALPRを用いた体重調節に係る化合物のスクリーニング方法
以下、本明細書においては、本発明の好ましい一例として、SALPRを使用するスクリーニング方法について本発明の内容を詳述する。すなわち、本発明は、SALPRまたはその部分ポリペプチドに結合し、体重調節(体重を増加または減少する)に係る化合物のスクリーニング方法を提供するものである。また、SALPRまたはその部分ポリペプチドに被験物質を作用させ、細胞刺激活性を測定することにより、当該被験物質に体重を増加または減少する作用を有するか否かを決定することができる。
【0086】
ここで、本発明のSALPRまたはその部分ポリペプチドは、種々の公知の方法により得ることができ、例えば本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチド(GenBankアクセッション番号NM_016568)を用いて公知の遺伝子工学的手法により調製することができる。また別の態様として、公知のポリペプチドの合成法により得ることができ、例えば液相法、固相法など常法に従い合成することが可能であり、通常、自動合成機を利用することができる。さらに、別の態様によれば、SALPRの部分ポリペプチドは、SALPRを適当なタンパク質分解酵素で切断することによって調製することができる。
【0087】
本発明のSALPRをコードするポリペプチドは、配列番号4で表されるアミノ酸を含むポリペプチド、配列番号4で表されるアミノ酸を含むポリペプチドと機能的に等価な改変ポリペプチド、または配列番号4で表されるアミノ酸配列に関して、70%以上の相同性、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、そして最も好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるアミノ酸配列であって、しかもSALPRと実質的に同じ活性(例えばリラキシン−3との結合能およびそれにより生じる種々の細胞刺激活性、または体重調節作用)を有するポリペプチドを意味する。
【0088】
ここで、配列番号4で表されるアミノ酸を含むポリペプチドと機能的に等価な改変ポリペプチドとは、そのアミノ酸配列が、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であって、しかもSALPRと実質的に同じ活性(例えばリラキシン−3との結合能およびそれにより生じる種々の細胞刺激活性、または体重調節作用)を有するポリペプチドを意味する。
【0089】
さらに、SALPRの部分ポリペプチドも、SALPRと実質的に同じ活性(例えばリラキシン−3との結合能およびそれにより生じる種々の細胞刺激活性、または体重調節作用)を有する限り、使用することができる。
【0090】
以下、遺伝子工学的手法について、より具体的にはSALPRを使用する場合について詳述するが、その部分ポリペプチドについても後述のスクリーニング方法に使用可能であれば特に限定されない。
【0091】
SALPRの調製方法
SALPRをコードするポリヌクレオチドを適当な宿主細胞に導入し、得られた形質転換体から発現可能な条件下で培養し、発現タンパク質の分離および精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から所望のポリペプチドを分離および精製することにより調製することができる。前記の分離および精製方法としては、例えば硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、または凍結乾燥などを挙げることができる。
【0092】
SALPRをコードするポリヌクレオチド
本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではない。
なお、本明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNAおよびRNAの両方が含まれる。本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドには、具体的には下記の(a)〜(e)からなる群より選択されるものが挙げられる。
(a)配列番号3で表される塩基配列からなる、ポリヌクレオチド;
(b)「配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(c)「配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(d)「配列番号4で表されるアミノ酸配列の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;および
(e)「配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチドに関する。
【0093】
本発明の一つの態様によれば、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドである。配列番号3で表される前記ポリヌクレオチドは、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるSALPRをコードする。
【0094】
本発明の別の一つの態様によれば、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、「配列番号4で表されるアミノ酸配列の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。ここで、欠失、置換、挿入および/または付加されてもよいアミノ酸の数は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個である。
【0095】
本発明の別の一つの態様によれば、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、「配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。さらに、本発明の別の一つの態様によれば、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、「配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。
【0096】
プラスミド
前記形質転換に使用されるプラスミドは、上記のようなSALPRをコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターに、当該ポリヌクレオチドを挿入することにより得られるプラスミドを挙げることができる。
【0097】
形質転換体
また、前記形質転換体も、上記のようなSALPRをコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば当該ポリヌクレオチドが宿主細胞の染色体に組み込まれた形質転換体であることもできるし、あるいは、当該ポリヌクレオチドを含むプラスミドの形で含有する形質転換体であることもできるし、あるいは、SALPRを発現していない形質転換体であることもできる。当該形質転換体は、例えば前記プラスミドにより、あるいは、前記ポリヌクレオチドそれ自体により、所望の宿主細胞を形質転換することにより得ることができる。
【0098】
前記宿主細胞としては、例えば通常使用される公知の微生物、例えば大腸菌(例えばEscherichia coli JM109株)または酵母(例えばSaccharomyces cerevisiae W303株)、あるいは、公知の培養細胞、例えば動物細胞(例えばCHO細胞、HEK−293細胞、またはCOS細胞)または昆虫細胞(例えばBmN4細胞)を挙げることができる。
【0099】
また、公知の前記発現ベクターとしては、例えば大腸菌に対しては、pUC、pTV、pGEX、pKK、またはpTrcHisを;酵母に対しては、pEMBLYまたはpYES2を;CHO細胞、HEK−293細胞およびCOS細胞に対しては、pcDNA3、pMAMneoまたはpBabe Puroを;BmN4細胞に対しては、カイコ核多角体ウイルス(BmNPV)のポリヘドリンプロモーターを有するベクター(例えばpBK283)を挙げることができる。
【0100】
SALPRを含有する細胞は、SALPRを細胞膜表面に発現している限り、特に限定されるものではなく、例えば前記形質転換体(すなわち、SALPRをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドで形質転換された細胞)を、SALPRの発現が可能な条件下で培養することにより得ることもできるし、あるいは、適当な細胞に、SALPRをコードするRNAを注入し、SALPRの発現が可能な条件下で培養することにより得ることもできる。
【0101】
細胞膜画分
また、SALPRを含有する本発明の細胞膜画分は、例えば本発明によるSALPRを発現する細胞を破砕した後、細胞膜が多く含まれる画分を分離することにより得ることができる。細胞の破砕方法としては、例えばホモジナイザー(例えばPotter−Elvehiem型ホモジナイザー)で細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーまたはポリトロン(Kinematica社)による破砕、超音波による破砕、あるいは、フレンチプレスなどで加圧しながら細いノズルから細胞を噴出させることによる破砕などを挙げることができる。また、細胞膜の分画方法としては、例えば遠心力による分画法、例えば分画遠心分離法または密度勾配遠心分離法を挙げることができる。
【0102】
SALPRを介する、本発明による体重を増加または減少する化合物のスクリーニング方法では、SALPRまたは前記細胞(すなわち、SALPRを含有する細胞)もしくは前記細胞膜画分(すなわち、SALPRを含有する細胞膜画分)を用いることができる。
【0103】
また、本発明によるスクリーニング方法においては、被験物質がSALPRに特異的に結合するか否かを調べる方法と、SALPRに被験物質が結合することにより生じる細胞刺激活性(例えば細胞内のCa2+の遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン脂質生成、細胞膜電位変化、細胞膜近傍pH変化、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosおよびc−junの誘導活性、アラキドン酸遊離など)を調べる方法とが挙げられ、それらを利用することができる。
【0104】
本発明によるスクリーニング方法においては、例えばSALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分と、被験物質とを接触させ、SALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分と、被験物質が結合するか否かを分析することにより、SALPRを介する体重を増加または減少する能力を区別せずに化合物をスクリーニングすることができる。
【0105】
具体的には、被験物質非存在下および被験物質存在下の各条件下において、SALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分と、標識した本発明のリラキシン−3とを接触させ、前記条件下におけるSALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分を介する当該リラキシン−3の特異的結合量を比較することにより、SALPRを介する体重を増加または減少する能力を区別せずに化合物をスクリーニングすることができる。すなわち、前記被験物質が、SALPRを介する体重を増加または減少する能力を有する場合には、被験物質非存在下におけるSALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分を介する当該リラキシン−3の特異的結合量に対して、被験物質存在下における前記特異的結合量が低下する。
【0106】
本発明によるスクリーニング方法において、SALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分を介する本発明のリラキシン−3の特異的結合量を比較する場合には、当該リラキシン−3として、標識した当該リラキシン−3を用いることができる。前記指標としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、[3H]、[14C]、[125I]、[35S]などを用いることができる。前記酵素としては、例えばβ−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼなどを用いることができる。蛍光物質としては、例えばフルオレセイソチオシアネート、BODIPYなどを用いることができる。発光物質としてはルシフェリン、ルシゲニンなどを用いることができる。場合によっては、本発明のリラキシン−3と標識物質を結合させるためにビオチン−アビジンの系を用いることもできる。
【0107】
このように、本発明によるスクリーニング方法において、SALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分に結合して、これらと本発明のリラキシン−3との結合を阻害する化合物を、SALPRを介する体重を増加または減少する能力を区別せずにスクリーニングすることができる。
【0108】
本発明によるスクリーニング方法における別の態様では、被験物質非存在下および被験物質存在下の各条件下において、前記細胞と標識化した本発明のリラキシン−3とを接触させ、前記各条件下における前記細胞を介する当該リラキシン−3の特異的結合量を比較し、さらに、前記条件下における当該リラキシン−3の特定の細胞刺激活性を比較することにより、SALPRを介する体重を増加または減少する能力を区別して化合物をスクリーニングすることができる。
【0109】
前記態様においては、前記細胞に結合し、前記細胞に含まれる受容体を介して細胞刺激活性を有する被験物質を、SALPRを介する体重を増加する化合物として選択することができる。
【0110】
一方、前記態様において、前記細胞と当該リラキシン−3との結合を阻害するものの、細胞刺激活性を有しない被験物質を、SALPRを介する体重を減少する化合物として選択することができる。
【0111】
本発明によるスクリーニング方法は、細胞刺激活性として、例えばアデニル酸シクラーゼの活性抑制を利用することによって実施することができる。
【0112】
この態様のスクリーニング方法においては、例えばアデニル酸シクラーゼの活性化によって細胞内に生成するcAMPを公知の手法で測定すればよく、SALPRを介する体重を増加または減少する能力を区別して化合物をスクリーニングすることができる。この態様は、SALPRに本発明のリラキシン−3が結合することにより生じる細胞内シグナル伝達、すなわち、SALPRの細胞刺激活性の一つであるアデニル酸シクラーゼの活性抑制を利用するものである。具体的には、SALPRに当該リラキシン−3が結合すると、SALPRに共役しているGタンパク質ファミリーの一つであるGiファミリーが、アデニル酸シクラーゼを抑制し、細胞内に生成されるサイクリックAMP(cAMP:アデニル酸シクラーゼによりATPから生成される)量を減少させることによる。
【0113】
例えばSALPRを細胞膜上に発現(好ましくは、SALPRを含む発現ベクターを導入し過剰に発現)した哺乳動物由来細胞(例えばHEK−293細胞もしくはCHO細胞)にアデニル酸シクラーゼの活性化剤[例えばフォルスコリン(FSK)]を添加すると、細胞内のcAMPの濃度が上昇する。
【0114】
また、アデニル酸シクラーゼ活性化剤を添加する際に、本発明のリラキシン−3を加えると、アデニル酸シクラーゼ活性化剤に起因する前記のアデニル酸シクラーゼ活性促進に加え、当該リラキシン−3が本発明によるSALPRに作用して生じるアデニル酸シクラーゼの活性抑制も起こるため、結果として、アデニル酸シクラーゼ活性化剤を単独投与した場合に比べて、cAMPの生成量が減少する。従って、体重を増加する作用を有する化合物をスクリーニングする場合には、このスクリーニング系でSALPRを介する当該リラキシン−3に代わり、被験物質を単独で接触させてcAMPの生成量を減少させる(すなわち当該リラキシン−3と同様の作用を有する)化合物を選択すると良い。
【0115】
体重を減少する作用を有する化合物をスクリーニングする場合には、アデニル酸シクラーゼ活性化剤、本発明のリラキシン−3、および被験物質をスクリーニング用細胞に添加するとよい。アデニル酸シクラーゼ活性化剤を単独で添加した場合に比べて、当該リラキシン−3の作用でcAMPの生成量が減少するが、被験物質が当該リラキシン−3の作用に拮抗する場合には、cAMP生成量の減少を抑制する。このときには、前記被験物質は体重減少作用を有する化合物として選択できる。
【0116】
細胞内cAMP量を測定する方法としては、例えばイムノアッセイなどがあるが、例えば市販のcAMP定量キットを使用することもできる。
【0117】
別の態様のスクリーニング方法においては、例えばSALPRを細胞膜上に発現(好ましくは、SALPRを含む発現ベクターを導入し過剰に発現)し、しかも、cAMP応答配列(CRE)が5’上流に位置するレポーター遺伝子(例えばアルカリフォスファターゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、ベータラクタマーゼ遺伝子、ニトロレダクターゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、ベータガラクトシダーゼ遺伝子など、またはGFP(Green Fluorescent Protein)などの蛍光タンパク質遺伝子など)を含有する細胞(以下、「スクリーニング用細胞」と称することもある)を用いることにより、SALPRを介する体重を増加または減少する能力を区別して化合物をスクリーニングすることができる。この態様は、前述のcAMPの生成が減少するとその結果、前記スクリーニング用細胞に導入されているCREをプロモーター領域に有するレポーター遺伝子の転写が抑制されることを利用している。
【0118】
以下、前記態様による、SALPRを介する体重を増加または減少する能力を区別して化合物をスクリーニングする手順について、より具体的に説明する。
すなわち、前記スクリーニング用細胞に導入されているCREは、細胞内のcAMPの濃度が上昇すると発現が亢進する遺伝子群(cAMP誘導性遺伝子)の転写調節領域に共通して存在する塩基配列である。従って、アデニル酸シクラーゼの活性化剤(例えばFSK)をスクリーニング用細胞に添加すると、細胞内のcAMPの濃度が上昇し、その結果、CREの下流に位置するレポーター遺伝子の発現量が増加する。レポーター遺伝子産物の発現量は、レポーター遺伝子産物と反応し基質から生成した発光物質の量に由来する発光を測定することによりもしくはレポーター遺伝子として産生された蛍光タンパク質由来の蛍光を測定することで容易に測定することが可能である。
【0119】
また、アデニル酸シクラーゼ活性化剤を添加する際に、本発明のリラキシン−3を加えると、アデニル酸シクラーゼ活性化剤に起因する前記のアデニル酸シクラーゼ活性促進に加え、当該リラキシン−3が本発明によるSALPRに作用して生じるアデニル酸シクラーゼの活性抑制も起こるため、結果として、アデニル酸シクラーゼ活性化剤を単独投与した場合に比べて、レポーター遺伝子産物の発現量が低下する。従って、体重を増加する作用を有する化合物をスクリーニングする場合には、このスクリーニング系で、SALPRを介する当該リラキシン−3に代わり被験物質を単独で接触させてレポーター遺伝子産物の発現量を減少させる(すなわち当該リラキシン−3と同様の作用を有する)化合物を選択すると良い。
【0120】
体重を減少する作用を有する化合物をスクリーニングする場合には、アデニル酸シクラーゼ活性化剤、本発明のリラキシン−3、および被験物質をスクリーニング用細胞に添加するとよい。アデニル酸シクラーゼ活性化剤を単独で添加した場合に比べて、当該リラキシン−3の作用でレポーター遺伝子産物の発現量は減少するが、被験物質が当該リラキシン−3の作用に拮抗する場合には、レポーター遺伝子産物の発現減少を抑制する。このときには、前記被験物質は体重減少作用を有する化合物として選択できる。
【0121】
被験物質による作用が、SALPRに対する結合を介した作用であるか否かは、簡単に確認することができる。例えばスクリーニング用細胞(すなわち、SALPRを細胞膜上に発現し、しかも、CREが5’上流に位置するレポーター遺伝子を含有する細胞)を用いた前記試験と並行して、コントロール用細胞(例えばCREが5’上流に位置するレポーター遺伝子を含有するものの、SALPRを細胞膜上に発現していない細胞)を用いて同様の試験を実施する。その結果、前記被験物質による作用が、SALPRに対する結合による作用でない場合には、スクリーニング用細胞およびコントロール用細胞でレポーター遺伝子産物の発現量に関して同じ現象が観察されるのに対して、前記被験物質による作用が、SALPRに対する結合による作用である場合には、スクリーニング用細胞とコントロール用細胞とでレポーター遺伝子産物の発現量に関して異なる現象が観察される。
【0122】
また、別の態様として、被験物質、好ましくは上記のスクリーニング方法により選択された被験物質(以下、単に「被験物質」と略記する場合がある。)をヒトまたはヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばウシ、サル、トリ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]に投与し、投与後の摂食量、体重、肥満の指標(例えば体脂肪率、BMI(体格指数)、肥満度、体型、身体年齢、インピーダンス、体脂肪量、除脂肪量、体水分量、蛋白質量、筋肉量、無機質量、細胞量、部位別筋肉量、部位別水分量、BMR(基礎代謝量)、エネルギー所要量、腹部肥満率(VSR)、内臓脂肪量、皮下脂肪量、内臓脂肪量レベル、臓器重量、血中パラメーターの変動、血中のレプチン、糖および脂質の量、またはホルモンや分泌ペプチドの量など)を測定することにより体重調節に影響を与える被験物質を確認および決定することができる。上記哺乳動物としては、正常の動物に限らず、遺伝性の病態モデル動物(例えば肥満病モデルであるob/obマウス、db/dbマウス、Zucker fattyラットなど)や遺伝子改変動物でもよい。
【0123】
具体的には、本発明のリラキシン−3を投与することにより体重を増加させる場合は、以下の工程により行なうことができる。
工程A:被験動物に所定量の被験物質を投与する。
工程B:被験動物に所定量のリラキシン−3を投与する。なお、リラキシン−3の投与は、一般的には、脳室内への投与が好ましい。
工程C:被験動物を体重の増減を解析および評価する環境下に置く。
工程D:試験結果に基づいて被験動物の体重の増減について解析および評価し、被験物質が体重調節作用を有するものであるか否かを判断および選択する。
【0124】
または、
工程A:被験動物に所定量のリラキシン−3を投与する。なお、リラキシン−3の投与は、一般的には、脳室内への投与が好ましい。
工程B:被験動物に所定量の被験物質を投与する。
工程C:被験動物を体重の増減を解析および評価する環境下に置く。
工程D:試験結果に基づいて被験動物の体重の増減について解析および評価し、被験物質が体重調節作用を有するものであるか否かを判断および選択する。
【0125】
または、
工程A:被験動物に所定量の被験物質および所定量のリラキシン−3を同時に投与する。なお、リラキシン−3の投与は、一般的には、脳室内への投与が好ましい。また、同時に投与するとは、被験物質およびリラキシン−3の両方を混合した状態で投与することには限定されず、実質的に同時と考えられる範囲内であれば、例えば、両方の投与に多少の時間差があってもよいし、また各々投与経路が異なっていてもよく、投与形態は適宜設定できる。
工程B:被験動物を体重の増減を解析および評価する環境下に置く。
工程C:試験結果に基づいて被験動物の体重の増減について解析および評価し、被験物質が体重調節作用を有するものであるか否かを判断および選択する。
【0126】
被験物質の投与形態としては経口的または非経口的に投与する。非経口的な投与経路の様態としては、例えば静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、気道内、直腸内、脳内、好ましくは視床下部近傍の脳室内投与が挙げられる。被験物質の被験動物の脳室内への投与方法は、薬物などを脳室内の所定の位置へ投与する際の常法に従えばよく、限定はされない。例えば、まず被験動物を麻酔した上で、ガイドカニューレを所定の位置に固定する手術を施しておき、適当な回復期間(例えば7日間〜14日間、好ましくは少なくとも1週間程度)の経過後、ガイドカニューレにインジェクションニードルを挿し込み、還流ポンプを接続したマイクロシリンジを用い、上記ニードルを介して被験物質を投与することが好ましい。被験物質の投与量は、限定はされず、適宜設定できる。被験物質は、一般的には人工的脳脊髄液(artificial cerebrospinal fluid)または生理食塩水などを用いて所望の濃度の溶液として調製しておく。人工的脳脊髄液としては、公知の常用されているものを用いればよく、限定はされないが、例えば、aCSF(glucose 10mM、KCl 2mM、NaCl 115mM、CaCl 2.5mM、MgSO 1.2mM、NaHCO 25mM、KHPO 2.2mM;pH7.4)などが好ましい。被験物質の投与回数は1日あたり一回でも数回に分けても良く、被験物質を投与する期間や観察する期間は1日から数週間にわたってもよい。
【0127】
リラキシン−3の被験動物への投与方法などは、前記の被験物質の場合と同様の方法が好ましい。また、リラキシン−3の被験動物の脳室内への投与方法も、前記の被験物質と同様に、一般的には人工的脳脊髄液を用いて所望の濃度の溶液となるよう調製しておくことが好ましい。
【0128】
スクリーニングのための指標としては、体重の測定が挙げられ、さらに摂食量及び肥満の指標を測定することも有効である。また、投与の際に絶食もしくは飽食、さらに脂質過剰食などの条件を課すこともできる。
【0129】
リラキシン−3受容体を用いた肥満調節に係る化合物のスクリーニング方法
リラキシン−3受容体
本発明のリラキシン−3に対する受容体としては、種々の受容体のうち、本発明のリラキシン−3と結合活性を有し、リラキシン−3受容体発現細胞の細胞刺激活性(例えば細胞内のCa2+の遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン脂質生成、細胞膜電位変化、細胞膜近傍pH変化、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosおよびc−junの誘導活性、アラキドン酸遊離など)を有するものであれば、その起源は特に限定されず、例えばヒトまたはヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]のリラキシン−3受容体を発現する臓器、組織、細胞などの天然由来のもの、公知の遺伝子工学的手法、合成法などにより人為的に調製したものも包含される。また、リラキシン−3受容体の部分ポリペプチドとして後述のスクリーニング方法に使用可能であれば特に限定されず、例えば本発明のリラキシン−3に対する結合能を有する部分ポリペプチド、細胞膜外領域に相当するアミノ酸配列を含む部分ポリペプチドなども使用することもできる。この場合、部分ポリペプチドを構成するアミノ酸数は、リラキシン−3受容体のアミノ酸数の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%である。
【0130】
具体的には、リラキシン−3受容体として、報告されている公知の受容体、例えばLGR7(GenBankアクセッション番号NM_021634)、SALPR(GenBankアクセッション番号NM_016568)(GPCR135とも称されている。)またはGPR100(GenBankアクセッション番号AB_083593)(hGPCR11、GPCR142とも称されている。)などを使用することが可能である。
【0131】
SALPRを用いた肥満調節に係る化合物のスクリーニング方法
以下、本明細書においては、本発明の好ましい一例として、SALPRを使用するスクリーニング方法について本発明の内容を詳述する。すなわち、本発明は、SALPRまたはその部分ポリペプチドに結合し、肥満調節(肥満を促進または抑制する)に係る化合物のスクリーニング方法を提供するものである。また、SALPRまたはその部分ポリペプチドに被験物質を作用させ、細胞刺激活性を測定することにより、当該被験物質に肥満を促進または抑制する作用を有するか否かを決定することができる。
【0132】
ここで、本発明のSALPRまたはその部分ポリペプチドは、種々の公知の方法により得ることができ、例えば本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチド(GenBankアクセッション番号NM_016568)を用いて公知の遺伝子工学的手法により調製することができる。また別の態様として、公知のポリペプチドの合成法により得ることができ、例えば液相法、固相法など常法に従い合成することが可能であり、通常、自動合成機を利用することができる。さらに、別の態様によれば、SALPRの部分ポリペプチドは、SALPRを適当なタンパク質分解酵素で切断することによって調製することができる。
【0133】
本発明のSALPRをコードするポリペプチドは、配列番号4で表されるアミノ酸を含むポリペプチド、配列番号4で表されるアミノ酸を含むポリペプチドと機能的に等価な改変ポリペプチド、または配列番号4で表されるアミノ酸配列に関して、70%以上の相同性、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、そして最も好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるアミノ酸配列であって、しかもSALPRと実質的に同じ活性(例えばリラキシン−3との結合能およびそれにより生じる種々の細胞刺激活性、または肥満調節作用)を有するポリペプチドを意味する。
【0134】
ここで、配列番号4で表されるアミノ酸を含むポリペプチドと機能的に等価な改変ポリペプチドとは、そのアミノ酸配列が、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であって、しかもSALPRと実質的に同じ活性(例えばリラキシン−3との結合能およびそれにより生じる種々の細胞刺激活性、または肥満調節作用)を有するポリペプチドを意味する。
【0135】
さらに、SALPRの部分ポリペプチドも、SALPRと実質的に同じ活性(例えばリラキシン−3との結合能およびそれにより生じる種々の細胞刺激活性、または肥満調節作用)を有する限り、使用することができる。
【0136】
以下、遺伝子工学的手法について、より具体的にはSALPRを使用する場合について詳述するが、その部分ポリペプチドについても後述のスクリーニング方法に使用可能であれば特に限定されない。
【0137】
SALPRの調製方法
SALPRをコードするポリヌクレオチドを適当な宿主細胞に導入し、得られた形質転換体から発現可能な条件下で培養し、発現タンパク質の分離および精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から所望のポリペプチドを分離および精製することにより調製することができる。前記の分離および精製方法としては、例えば硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、または凍結乾燥などを挙げることができる。
【0138】
SALPRをコードするポリヌクレオチド
本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではない。
なお、本明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNAおよびRNAの両方が含まれる。本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドには、具体的には下記の(a)〜(e)からなる群より選択されるものが挙げられる。
(a)配列番号3で表される塩基配列からなる、ポリヌクレオチド;
(b)「配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(c)「配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(d)「配列番号4で表されるアミノ酸配列の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;および
(e)「配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチドに関する。
【0139】
本発明の一つの態様によれば、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドである。配列番号3で表される前記ポリヌクレオチドは、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるSALPRをコードする。
【0140】
本発明の別の一つの態様によれば、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、「配列番号4で表されるアミノ酸配列の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。ここで、欠失、置換、挿入および/または付加されてもよいアミノ酸の数は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個である。
【0141】
本発明の別の一つの態様によれば、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、「配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。さらに、本発明の別の一つの態様によれば、本発明のSALPRをコードするポリヌクレオチドは、「配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、前記SALPRと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードしてなるものである。
【0142】
プラスミド
前記形質転換に使用されるプラスミドは、上記のようなSALPRをコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターに、当該ポリヌクレオチドを挿入することにより得られるプラスミドを挙げることができる。
【0143】
形質転換体
また、前記形質転換体も、上記のようなSALPRをコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば当該ポリヌクレオチドが宿主細胞の染色体に組み込まれた形質転換体であることもできるし、あるいは、当該ポリヌクレオチドを含むプラスミドの形で含有する形質転換体であることもできるし、あるいは、SALPRを発現していない形質転換体であることもできる。当該形質転換体は、例えば前記プラスミドにより、あるいは、前記ポリヌクレオチドそれ自体により、所望の宿主細胞を形質転換することにより得ることができる。
【0144】
前記宿主細胞としては、例えば通常使用される公知の微生物、例えば大腸菌(例えばEscherichia coli JM109株)または酵母(例えばSaccharomyces cerevisiae W303株)、あるいは、公知の培養細胞、例えば動物細胞(例えばCHO細胞、HEK−293細胞、またはCOS細胞)または昆虫細胞(例えばBmN4細胞)を挙げることができる。
【0145】
また、公知の前記発現ベクターとしては、例えば大腸菌に対しては、pUC、pTV、pGEX、pKK、またはpTrcHisを;酵母に対しては、pEMBLYまたはpYES2を;CHO細胞、HEK−293細胞およびCOS細胞に対しては、pcDNA3、pMAMneoまたはpBabe Puroを;BmN4細胞に対しては、カイコ核多角体ウイルス(BmNPV)のポリヘドリンプロモーターを有するベクター(例えばpBK283)を挙げることができる。
【0146】
SALPRを含有する細胞は、SALPRを細胞膜表面に発現している限り、特に限定されるものではなく、例えば前記形質転換体(すなわち、SALPRをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドで形質転換された細胞)を、SALPRの発現が可能な条件下で培養することにより得ることもできるし、あるいは、適当な細胞に、SALPRをコードするRNAを注入し、SALPRの発現が可能な条件下で培養することにより得ることもできる。
【0147】
細胞膜画分
また、SALPRを含有する本発明の細胞膜画分は、例えば本発明によるSALPRを発現する細胞を破砕した後、細胞膜が多く含まれる画分を分離することにより得ることができる。細胞の破砕方法としては、例えばホモジナイザー(例えばPotter−Elvehiem型ホモジナイザー)で細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーまたはポリトロン(Kinematica社)による破砕、超音波による破砕、あるいは、フレンチプレスなどで加圧しながら細いノズルから細胞を噴出させることによる破砕などを挙げることができる。また、細胞膜の分画方法としては、例えば遠心力による分画法、例えば分画遠心分離法または密度勾配遠心分離法を挙げることができる。
【0148】
SALPRを介する、本発明による肥満を促進または抑制する化合物のスクリーニング方法では、SALPRまたは前記細胞(すなわち、SALPRを含有する細胞)もしくは前記細胞膜画分(すなわち、SALPRを含有する細胞膜画分)を用いることができる。
【0149】
また、本発明によるスクリーニング方法においては、被験物質がSALPRに特異的に結合するか否かを調べる方法と、SALPRに被験物質が結合することにより生じる細胞刺激活性(例えば細胞内のCa2+の遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン脂質生成、細胞膜電位変化、細胞膜近傍pH変化、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosおよびc−junの誘導活性、アラキドン酸遊離など)を調べる方法とが挙げられ、それらを利用することができる。
【0150】
本発明によるスクリーニング方法においては、例えばSALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分と、被験物質とを接触させ、SALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分と、被験物質が結合するか否かを分析することにより、SALPRを介する肥満を促進または抑制する能力を区別せずに化合物をスクリーニングすることができる。
【0151】
具体的には、被験物質非存在下および被験物質存在下の各条件下において、SALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分と、標識した本発明のリラキシン−3とを接触させ、前記条件下におけるSALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分を介する当該リラキシン−3の特異的結合量を比較することにより、SALPRを介する肥満を促進または抑制する能力を区別せずに化合物をスクリーニングすることができる。すなわち、前記被験物質が、SALPRを介する肥満を促進または抑制する能力を有する場合には、被験物質非存在下におけるSALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分を介する当該リラキシン−3の特異的結合量に対して、被験物質存在下における前記特異的結合量が低下する。
【0152】
本発明によるスクリーニング方法において、SALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分を介する本発明のリラキシン−3の特異的結合量を比較する場合には、当該リラキシン−3として、標識した当該リラキシン−3を用いることができる。前記指標としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、[3H]、[14C]、[125I]、[35S]などを用いることができる。前記酵素としては、例えばβ−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼなどを用いることができる。蛍光物質としては、例えばフルオレセイソチオシアネート、BODIPYなどを用いることができる。発光物質としてはルシフェリン、ルシゲニンなどを用いることができる。場合によっては、本発明のリラキシン−3と標識物質を結合させるためにビオチン−アビジンの系を用いることもできる。
【0153】
このように、本発明によるスクリーニング方法において、SALPRまたは前記細胞もしくは前記細胞膜画分に結合して、これらと本発明のリラキシン−3との結合を阻害する化合物を、SALPRを介する肥満を促進または抑制する能力を区別せずにスクリーニングすることができる。
【0154】
本発明によるスクリーニング方法における別の態様では、被験物質非存在下および被験物質存在下の各条件下において、前記細胞と標識化した本発明のリラキシン−3とを接触させ、前記各条件下における前記細胞を介する当該リラキシン−3の特異的結合量を比較し、さらに、前記条件下における当該リラキシン−3の特定の細胞刺激活性を比較することにより、SALPRを介する肥満を促進または抑制する能力を区別して化合物をスクリーニングすることができる。
【0155】
前記態様においては、前記細胞に結合し、前記細胞に含まれる受容体を介して細胞刺激活性を有する被験物質を、SALPRを介する肥満を促進する化合物として選択することができる。
【0156】
一方、前記態様において、前記細胞と当該リラキシン−3との結合を阻害するものの、細胞刺激活性を有しない被験物質を、SALPRを介する肥満を抑制する化合物として選択することができる。
【0157】
本発明によるスクリーニング方法は、細胞刺激活性として、例えばアデニル酸シクラーゼの活性抑制を利用することによって実施することができる。
【0158】
この態様のスクリーニング方法においては、例えばアデニル酸シクラーゼの活性化によって細胞内に生成するcAMPを公知の手法で測定すればよく、SALPRを介する肥満を促進または抑制する能力を区別して化合物をスクリーニングすることができる。この態様は、SALPRに当該リラキシン−3が結合することにより生じる細胞内シグナル伝達、すなわち、SALPRの細胞刺激活性の一つであるアデニル酸シクラーゼの活性抑制を利用するものである。具体的には、SALPRに当該リラキシン−3が結合すると、SALPRに共役しているGタンパク質ファミリーの一つであるGiファミリーが、アデニル酸シクラーゼを抑制し、細胞内に生成されるサイクリックAMP(cAMP:アデニル酸シクラーゼによりATPから生成される)量を減少させることによる。
【0159】
例えばSALPRを細胞膜上に発現(好ましくは、SALPRを含む発現ベクターを導入し過剰に発現)した哺乳動物由来細胞(例えばHEK−293細胞もしくはCHO細胞)にアデニル酸シクラーゼの活性化剤[例えばフォルスコリン(FSK)]を添加すると、細胞内のcAMPの濃度が上昇する。
【0160】
また、アデニル酸シクラーゼ活性化剤を添加する際に、本発明のリラキシン−3を加えると、アデニル酸シクラーゼ活性化剤に起因する前記のアデニル酸シクラーゼ活性促進に加え、当該リラキシン−3が本発明によるSALPRに作用して生じるアデニル酸シクラーゼの活性抑制も起こるため、結果として、アデニル酸シクラーゼ活性化剤を単独投与した場合に比べて、cAMPの生成量が減少する。従って、肥満を促進する作用を有する化合物をスクリーニングする場合には、このスクリーニング系でSALPRを介する当該リラキシン−3に代わり、被験物質を単独で接触させてcAMPの生成量を減少させる(すなわち当該リラキシン−3と同様の作用を有する)化合物を選択すると良い。
【0161】
肥満を抑制する作用を有する化合物をスクリーニングする場合には、アデニル酸シクラーゼ活性化剤、本発明のリラキシン−3、および被験物質をスクリーニング用細胞に添加するとよい。アデニル酸シクラーゼ活性化剤を単独で添加した場合に比べて、当該リラキシン−3の作用でcAMPの生成量が減少するが、被験物質が当該リラキシン−3の作用に拮抗する場合には、cAMP生成量の減少を抑制する。このときには、前記被験物質は肥満抑制作用を有する化合物として選択できる。
【0162】
細胞内cAMP量を測定する方法としては、例えばイムノアッセイなどがあるが、例えば市販のcAMP定量キットを使用することもできる。
【0163】
別の態様のスクリーニング方法においては、例えばSALPRを細胞膜上に発現(好ましくは、SALPRを含む発現ベクターを導入し過剰に発現)し、しかも、cAMP応答配列(CRE)が5’上流に位置するレポーター遺伝子(例えばアルカリフォスファターゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、ベータラクタマーゼ遺伝子、ニトロレダクターゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、ベータガラクトシダーゼ遺伝子など、またはGFP(Green Fluorescent Protein)などの蛍光タンパク質遺伝子など)を含有する細胞(以下、「スクリーニング用細胞」と称することもある)を用いることにより、SALPRを介する肥満を促進または抑制する能力を区別して化合物をスクリーニングすることができる。この態様は、前述のcAMPの生成が減少するとその結果、前記スクリーニング用細胞に導入されているCREをプロモーター領域に有するレポーター遺伝子の転写が抑制されることを利用している。
【0164】
以下、前記態様による、SALPRを介する肥満を促進または抑制する能力を区別して化合物をスクリーニングする手順について、より具体的に説明する。
すなわち、前記スクリーニング用細胞に導入されているCREは、細胞内のcAMPの濃度が上昇すると発現が亢進する遺伝子群(cAMP誘導性遺伝子)の転写調節領域に共通して存在する塩基配列である。従って、アデニル酸シクラーゼの活性化剤(例えばFSK)をスクリーニング用細胞に添加すると、細胞内のcAMPの濃度が上昇し、その結果、CREの下流に位置するレポーター遺伝子の発現量が増加する。レポーター遺伝子産物の発現量は、レポーター遺伝子産物と反応し基質から生成した発光物質の量に由来する発光を測定することによりもしくはレポーター遺伝子として産生された蛍光タンパク質由来の蛍光を測定することで容易に測定することが可能である。
【0165】
また、アデニル酸シクラーゼ活性化剤を添加する際に、本発明のリラキシン−3を加えると、アデニル酸シクラーゼ活性化剤に起因する前記のアデニル酸シクラーゼ活性促進に加え、当該リラキシン−3が本発明によるSALPRに作用して生じるアデニル酸シクラーゼの活性抑制も起こるため、結果として、アデニル酸シクラーゼ活性化剤を単独投与した場合に比べて、レポーター遺伝子産物の発現量が低下する。従って、肥満を促進する作用を有する化合物をスクリーニングする場合には、このスクリーニング系で、SALPRを介する本発明のリラキシン−3に代わり被験物質を単独で接触させてレポーター遺伝子産物の発現量を減少させる(すなわち当該リラキシン−3と同様の作用を有する)化合物を選択すると良い。
【0166】
肥満を抑制する作用を有する化合物をスクリーニングする場合には、アデニル酸シクラーゼ活性化剤、本発明のリラキシン−3、および被験物質をスクリーニング用細胞に添加するとよい。アデニル酸シクラーゼ活性化剤を単独で添加した場合に比べて、当該リラキシン−3の作用でレポーター遺伝子産物の発現量は減少するが、被験物質が当該リラキシン−3の作用に拮抗する場合には、レポーター遺伝子産物の発現減少を抑制する。このときには、前記被験物質は肥満抑制作用を有する化合物として選択できる。
【0167】
被験物質による作用が、SALPRに対する結合を介した作用であるか否かは、簡単に確認することができる。例えばスクリーニング用細胞(すなわち、SALPRを細胞膜上に発現し、しかも、CREが5’上流に位置するレポーター遺伝子を含有する細胞)を用いた前記試験と並行して、コントロール用細胞(例えばCREが5’上流に位置するレポーター遺伝子を含有するものの、SALPRを細胞膜上に発現していない細胞)を用いて同様の試験を実施する。その結果、前記被験物質による作用が、SALPRに対する結合による作用でない場合には、スクリーニング用細胞およびコントロール用細胞でレポーター遺伝子産物の発現量に関して同じ現象が観察されるのに対して、前記被験物質による作用が、SALPRに対する結合による作用である場合には、スクリーニング用細胞とコントロール用細胞とでレポーター遺伝子産物の発現量に関して異なる現象が観察される。
【0168】
また、別の態様として、上記のスクリーニング方法により選択された被験物質をヒトまたはヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばウシ、サル、トリ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]に投与し、投与後の摂食量、体重、肥満の指標(例えば体脂肪率、BMI(体格指数)、肥満度、体型、身体年齢、インピーダンス、体脂肪量、除脂肪量、体水分量、蛋白質量、筋肉量、無機質量、細胞量、部位別筋肉量、部位別水分量、BMR(基礎代謝量)、エネルギー所要量、腹部肥満率(VSR)、内臓脂肪量、皮下脂肪量、内臓脂肪量レベル、臓器重量、血中パラメーターの変動、血中のレプチン、糖および脂質の量、またはホルモンや分泌ペプチドの量など)を測定することにより肥満作用に影響を与える被験物質を確認および決定することができる。上記哺乳動物としては、正常の動物に限らず、遺伝性の病態モデル動物(例えば肥満病モデルであるob/obマウス、db/dbマウス、Zucker fattyラットなど)や遺伝子改変動物でもよい。
【0169】
具体的には、本発明のリラキシン−3を投与することにより肥満を促進させる場合は、以下の工程により行なうことができる。
工程A:被験動物に所定量の被験物質を投与する。
工程B:被験動物に所定量のリラキシン−3を投与する。なお、リラキシン−3の投与は、一般的には、脳室内への投与が好ましい。
工程C:被験動物を肥満の程度を解析および評価する環境下に置く。
工程D:試験結果に基づいて被験動物の肥満の程度について解析および評価し、被験物質が肥満調節作用を有するものであるか否かを判断および選択する。
【0170】
または、
工程A:被験動物に所定量のリラキシン−3を投与する。なお、リラキシン−3の投与は、一般的には、脳室内への投与が好ましい。
工程B:被験動物に所定量の被験物質を投与する。
工程C:被験動物を肥満の程度を解析および評価する環境下に置く。
工程D:試験結果に基づいて被験動物の肥満の程度について解析および評価し、被験物質が肥満調節作用を有するものであるか否かを判断および選択する。
【0171】
または、
工程A:被験動物に所定量の被験物質および所定量のリラキシン−3を同時に投与する。なお、リラキシン−3の投与は、一般的には、脳室内への投与が好ましい。また、同時に投与するとは、被験物質およびリラキシン−3の両方を混合した状態で投与することには限定されず、実質的に同時と考えられる範囲内であれば、例えば、両方の投与に多少の時間差があってもよいし、また各々投与経路が異なっていてもよく、投与形態は適宜設定できる。
工程B:被験動物を肥満の程度を解析および評価する環境下に置く。
工程C:試験結果に基づいて被験動物の肥満の程度について解析および評価し、被験物質が肥満調節作用を有するものであるか否かを判断および選択する。
【0172】
被験物質の投与形態としては経口的または非経口的に投与する。非経口的な投与経路の様態としては、例えば静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、気道内、直腸内、脳内、好ましくは視床下部近傍の脳室内投与が挙げられる。被験物質の被験動物の脳室内への投与方法は、薬物などを脳室内の所定の位置へ投与する際の常法に従えばよく、限定はされない。例えば、まず被験動物を麻酔した上で、ガイドカニューレを所定の位置に固定する手術を施しておき、適当な回復期間(例えば7日間〜14日間、好ましくは少なくとも1週間程度)の経過後、ガイドカニューレにインジェクションニードルを挿し込み、還流ポンプを接続したマイクロシリンジを用い、上記ニードルを介して被験物質を投与することが好ましい。被験物質の投与量は、限定はされず、適宜設定できる。被験物質は、一般的には人工的脳脊髄液(artificial cerebrospinal fluid)または生理食塩水などを用いて所望の濃度の溶液として調製しておく。人工的脳脊髄液としては、公知の常用されているものを用いればよく、限定はされないが、例えば、aCSF(glucose 10mM、KCl 2mM、NaCl 115mM、CaCl 2.5mM、MgSO 1.2mM、NaHCO 25mM、KHPO 2.2mM;pH7.4)などが好ましい。被験物質の投与回数は1日あたり一回でも数回に分けても良く、被験物質を投与する期間や観察する期間は1日から数週間にわたってもよい。
【0173】
リラキシン−3の被験動物への投与方法などは、前記の被験物質の場合と同様の方法が好ましい。また、リラキシン−3の被験動物の脳室内への投与方法も、前記の被験物質と同様に、一般的には人工的脳脊髄液を用いて所望の濃度の溶液となるよう調製しておくことが好ましい。
【0174】
スクリーニングのための指標としては、肥満の指標を測定することが挙げられ、さらに摂食量及び体重を測定することも有効である。また、投与の際に絶食もしくは飽食、さらに脂質過剰食などの条件を課すこともできる。
【0175】
被験物質
ここで、上述の被験物質はどのような化合物であってもよいが、例えば遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物ライブラリー、核酸(オリゴDNA、オリゴRNA)、合成ペプチドライブラリー、抗体、細菌放出物質、細胞(微生物、植物細胞、動物細胞)抽出液、細胞(微生物、植物細胞、動物細胞)培養上清、精製または部分精製ポリペプチド、海洋生物、植物または動物など由来の抽出物、土壌、ランダムファージペプチドディスプレイライブラリーを挙げることができる。当該化合物は塩を形成してもよく、さらに当該化合物およびその塩は水和物を形成していてもよく、これらは本発明の被験物質に含まれる。
【0176】
本願明細書において「塩」とは、薬学的に許容される塩を示し、化合物と薬学的に許容される塩を形成するものであれば特に限定されない。具体的には、例えば好ましくはハロゲン化水素酸塩(例えばフッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩など)、無機酸塩(例えば硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩など)、有機カルボン酸塩(例えば酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩など)、有機スルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩など)、アミノ酸塩(例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム塩、カルシウム塩など)などが挙げられる。
【0177】
スクリーニング用キット
本発明のスクリーニング用キットは、本発明のリラキシン−3、およびリラキシン−3受容体または前記細胞(すなわち、リラキシン−3受容体を含有する細胞)もしくは前記細胞膜画分(すなわち、リラキシン−3受容体を含有する細胞膜画分)とを少なくとも含有する。当該リラキシン−3は、標識した当該リラキシン−3であってもよい。前記スクリーニング用キットは、所望により、種々の試薬、例えば結合反応用緩衝液、洗浄用緩衝液、説明書、および/または器具などをさらに含むことができる。ここで、リラキシン−3受容体の好適な例は、SALPRである。
【0178】
本発明の別の態様のスクリーニング用キットは、本発明のリラキシン−3、およびリラキシン−3受容体を細胞膜上に発現(好ましくは、リラキシン−3受容体を含む発現ベクターを導入して過剰に発現)し、しかも、cAMP応答配列(CRE)が5’上流に位置するレポーター遺伝子(例えば、アルカリフォスファターゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子など)を含有する細胞とを少なくとも含有する。当該リラキシン−3は、標識した当該リラキシン−3であってもよい。前記スクリーニング用キットは、所望により、種々の試薬、例えばレポーター遺伝子産物(例えば、アルカリフォスファターゼもしくはルシフェラーゼなど)の基質、アデニル酸シクラーゼ活性化剤(例えばFSK)、結合反応用緩衝液、洗浄用緩衝液、説明書、および/または器具などをさらに含むことができる。また、前記スクリーニング用キットは、CREが5’上流に位置するレポーター遺伝子を含有するものの、リラキシン−3受容体を細胞膜上に発現していない細胞を含んでいてもよい。ここで、リラキシン−3受容体の好適な例は、SALPRである。
【0179】
本発明のスクリーニング方法により得られる化合物を含有する医薬
本発明のスクリーニング方法により得られる化合物は、摂食を促進もしくは抑制する化合物、体重を増加もしくは減少させる化合物、または肥満を促進もしくは抑制する化合物である。当該化合物は塩を形成してもよく、さらに当該化合物およびその塩は水和物を形成していてもよい。
【0180】
従って、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物もしくはその塩またはそれらの水和物は、摂食(もしくは食欲)調節における何らかの異常に起因する疾患の治療、体重調節における何らかの異常に起因する疾患の治療、肥満調節における何らかの異常に起因する疾患の治療、およびリラキシン−3またはリラキシン−3をコードするポリヌクレオチドの異常に起因する疾患の治療の医薬として用いることができる。また、各種疾患の発症または各種疾患の治療(例えば術中、術後)に伴い増加もしくは減少した摂食(もしくは食欲)および/または体重の回復を目的とする治療の医薬として用いることもできる。前記疾患は、例えば消化管の運動もしくは機能に係る疾患(例えば下痢、便秘、機能性便秘症、過敏性腸症候群、消化管検査時または手術前後における腸管内容物排除のための排便促進など)、免疫機能調節に係る疾患(例えば慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、腎疾患、強皮症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、多発性硬化症、リウマチ性間質性肺炎、サルコイド-シス、クローン病、炎症性大腸炎、肝硬変、慢性肝炎、劇症肝炎、脳脊髄炎、重症筋無力症など)、エネルギー代謝に係る疾患(例えば糖尿病、肥満性糖尿病、耐糖能障害、ケトーシス、アシドーシス、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、高脂血症、動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、肥満、肥満症、摂食障害、拒食症など)、AIDS、癌、または悪液質などが挙げられる。
【0181】
本発明によるスクリーニング方法によって、リラキシン−3受容体、好ましくはSALPRまたはその部分ポリペプチドを介した細胞刺激活性、より具体的には、SALPRまたはその部分ポリペプチドに本発明のリラキシン−3が結合すると引き起こされる細胞刺激活性(例えば細胞内のCa2+の遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン脂質生成、細胞膜電位変化、細胞膜近傍pH変化、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosおよびc−junの誘導活性、アラキドン酸遊離など)の阻害作用(SALPR阻害作用)を有する化合物が提供される。このような化合物を含有する薬剤として、摂食抑制剤、体重減少剤、脂肪量減少剤、肥満治療剤、糖尿病治療剤などが挙げられる。
【0182】
得られた化合物もしくはその塩またはそれらの水和物を単独で用いることも可能であるが、薬学的に許容され得る担体と配合して医薬品組成物として用いることもできる。この時の有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。また、かかる薬剤は、ヒトまたはヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばウシ、サル、トリ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]に、種々の形態、経口または非経口(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で投与することができる。従って、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物もしくはその塩またはそれらの水和物を含有する医薬組成物は、投与経路に応じて適当な剤形とされ、具体的には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、あるいはシロップ剤などによる経口剤、または注射剤、点滴剤、リポソーム剤、坐薬剤などによる非経口剤を挙げることができる。これらの製剤は通常用いられている賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性化剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤などを用いて常法により製造することができる。使用可能な無毒性の上記添加剤としては、例えば乳糖、果糖、ブドウ糖、デンプン、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、またはその塩、エタノール、クエン酸、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0183】
それらの投与形態としては、また、必要な投与量範囲は、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物もしくはその塩またはそれらの水和物の選択、投与対象、投与経路、製剤の性質、患者の状態、そして医師の判断に左右される。しかし、適当な投与量は患者の体重1kgあたり例えば約1.0〜1,500μg、好ましくは約10〜500μg程度を投与するのが好ましい範囲である。投与経路の効率が異なることを考慮すれば、必要とされる投与量は広範に変動することが予測される。例えば経口投与は静脈注射による投与よりも高い投与量を必要とすると予想される。こうした投与量レベルの変動は、当業界でよく理解されているような、標準的経験的な最適化手順を用いて調整することができる。
【0184】
リラキシン−3の活性を阻害する物質およびその使用
本発明のリラキシン−3の活性を阻害する物質によれば、摂食亢進作用、体重増加作用または肥満作用を抑制または阻害することができる。そこで、当該リラキシン−3の発現を阻害するものは、当該リラキシン−3のin vivo、ex vivoおよびin vitroにおける摂食制御および体重制御に伴う機能(例えばエネルギー代謝調節、成長など)、肥満を制限するのに利用できる可能性がある。
【0185】
本発明のリラキシン−3の活性を阻害する物質には、当該活性を有する限り特に制限はないが、例えば当該リラキシン−3をコードする塩基配列のアンチセンス配列を有するDNAや、当該リラキシン−3をコードする塩基配列を有する2本鎖RNA(small interfering RNA;siRNA)、リボザイムなど当該リラキシン−3の発現を阻害するもの、あるいは当該リラキシン−3の抗体や糖タンパク質、さらには上記スクリーニング方法により得られる化合物などの当該リラキシン−3もしくはリラキシン−3受容体(好ましくは、SALPR)と相互作用して当該リラキシン−3が有する活性を阻害する物質などが挙げられる。
【0186】
当該物質は塩を形成してもよく、薬学的に許容し得る塩が挙げられる。従って、本発明のリラキシン−3の活性を阻害する物質もしくはその塩またはそれらの水和物は、摂食(もしくは食欲)調節における何らかの異常に起因する疾患の治療、体重調節における何らかの異常に起因する疾患の治療、肥満調節における何らかの異常に起因する疾患の治療、およびリラキシン−3またはリラキシン−3をコードするポリヌクレオチドの異常に起因する疾患の治療の医薬として用いることができる。また、疾患の発症または疾患の治療(例えば術中、術後)に伴い増加した摂食(もしくは食欲)および/または体重の減少を目的とする治療の医薬として用いることもできる。前記疾患は、例えば消化管の運動もしくは機能に係る疾患(例えば下痢、便秘、機能性便秘症、過敏性腸症候群、消化管検査時または手術前後における腸管内容物排除のための排便促進など)、免疫機能調節に係る疾患(例えば慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、腎疾患、強皮症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、多発性硬化症、リウマチ性間質性肺炎、サルコイド-シス、クローン病、炎症性大腸炎、肝硬変、慢性肝炎、劇症肝炎、脳脊髄炎、重症筋無力症など)、またはエネルギー代謝に係る疾患(例えば糖尿病、肥満性糖尿病、耐糖能障害、ケトーシス、アシドーシス、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、高脂血症、動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、肥満、肥満症、摂食障害など)などが挙げられる。好ましくは、摂食抑制剤、体重減少剤、脂肪量減少剤、肥満治療剤、糖尿病治療剤などとして使用することができる。
【0187】
アンチセンス核酸が標的遺伝子の発現を抑制する機構としては、(1)3重鎖形成による転写開始阻害、(2)RNAポリメラーゼにより形成される局所的開状ループ構造部位とのハイブリッド形成による転写抑制、(3)合成中のRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、(4)イントロン−エキソン接合点におけるハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(5)スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(6)mRNAとのハイブリッド形成による、mRNAの細胞質への移行抑制、(7)キャッピング部位またはポリA付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(8)翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始抑制、(9)リボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳抑制、(10)mRNA翻訳領域またはポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長抑制、並びに(11)核酸と蛋白質の相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現抑制が挙げられる(平島および井上『新生化学実験講座2 核酸IV 遺伝子の複製と発現』日本生化学会編、東京化学同人、pp.319−347 (1993))。
【0188】
本発明のリラキシン−3のアンチセンス核酸は、上述の(1)〜(11)のどの機構により遺伝子発現を抑制する核酸であってもよい。すなわち、発現を阻害する目的の遺伝子の翻訳領域のみならず、非翻訳領域の配列に対するアンチセンス配列を含むものであってもよい。アンチセンス核酸をコードするDNAは、その発現を可能とする適当な制御配列下に連結して使用され得る。アンチセンス核酸は、標的とする遺伝子の翻訳領域または非翻訳領域に対して完全に相補的である必要はなく、効果的に当該遺伝子の発現を阻害するものであればよい。このようなアンチセンス核酸は、少なくとも15bp以上、好ましくは100bp以上、さらに好ましくは500bp以上であり、通常3000bp以内、好ましくは2000bp以内、より好ましくは1000bp以内の鎖長を有し、標的遺伝子の転写産物の相補鎖に対して好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上同一である。このようなアンチセンス核酸は、本発明のリラキシン−3の配列情報を基に、ホスホロチオネート法(Stein (1988) Nucleic Acids Res. 16: 3209−21)などにより調製することができる。
【0189】
リボザイムとは、RNAを構成成分とする触媒の総称であり、大きくラージリボザイム(large ribozyme)およびスモールリボザイム(small liboyme)に分類される。ラージリボザイムは、核酸のリン酸エステル結合を切断し、反応後に5’−リン酸と3’−ヒドロキシル基を反応部位に残す酵素である。ラージリボザイムは、さらに(1)グアノシンによる5’−スプライス部位でのトランスエステル化反応を行なうグループIイントロンRNA、(2)ラリアット構造を経る二段階反応により自己スプライシングを行なうグループIIイントロンRNA、および(3)加水分解反応によるtRNA前駆体を5’側で切断するリボヌクレアーゼPのRNA成分に分類される。それに対して、スモールリボザイムは、比較的小さな構造単位(40bp程度)であり、RNAを切断して、5’−ヒドロキシル基と2’−3’環状リン酸を生じさせる。スモールリボザイムには、ハンマーヘッド型(Koizumi et al. (1988) FEBS Lett. 228: 225)、ヘアピン型(Buzayan (1986) Nature 323: 349; Kikuchi and Sasaki (1992) Nucleic Acids Res. 19: 6751; 菊地洋(1992)化学と生物 30: 112)などのリボザイムが含まれる。リボザイムは、改変および合成が容易なため多様な改良方法が公知であり、例えばリボザイムの基質結合部を標的部位近くのRNA配列と相補的となるように設計することにより、標的RNA中の塩基配列UC、UUまたはUAを認識して切断するハンマーヘッド型リボザイムを作ることができる(Koizumi et al. (1988) FEBS Lett. 228: 225; 小泉誠および大塚栄子 (1990) 蛋白質核酸酵素35: 2191; Koizumi et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17: 7059)。ヘアピン型のリボザイムについても、公知の方法に従って設計、製造が可能である(Kikuchi and Sasaki (1992) Nucleic Acids Res. 19: 6751; 菊地洋(1992) 化学と生物 30: 112)。
【0190】
1998年に、線虫においてRNA同士が邪魔し合い働きを失う現象(RNA干渉)が観察された(Fire et al. (1998) Nature 391: 806−11)。RNA干渉とは、二本鎖の人工RNAを細胞に導入することにより、同じ塩基配列を有するRNAが分解される現象である。その後の研究により、RNA干渉などのRNAサイレンシングの現象は、欠陥を持つmRNAの排除、並びにトランスポゾン、ウイルスなどの寄生体に対する防御のための細胞機構であることが示唆されている。現在では、多くの遺伝子の発現を抑制するためのツールとして、二本鎖RNA(small interfering RNA; siRNA)が利用されており、病気の原因遺伝子などの発現抑制を、siRNAを用いて行なうことにより病気を治療・予防する方法も検討されている。本発明のsiRNAは、本発明のリラキシン−3のmRNAの転写を阻害する限り、特に限定されない。通常、siRNAは、標的mRNAの配列に対するセンス鎖およびアンチセンス鎖の組合せであり、少なくとも10個から標的mRNAと同じ個数までのヌクレオチド長を有する。好ましくは、15〜75個、より好ましくは18〜50個、さらに好ましくは20〜25個のヌクレオチド長である。本発明のリラキシン−3の発現を抑制するために、siRNAは公知の方法により細胞に導入することができる。例えばsiRNAを構成する二本のRNA鎖を、一本鎖上にコードするDNAを設計し、当該DNAを発現ベクターに組み込み、細胞を当該発現ベクターで形質転換し、siRNAを、ヘアピン構造を有する二本鎖RNAとして細胞内で発現させることができる。トランスフェクションにより持続的にsiRNAを産生するプラスミド発現ベクターも設計されている(例えばRNAi−Ready pSIREN Vector、RNAi−Ready pSIREN−RetroQ Vector(BD Biosciences Clontech社))。siRNAの塩基配列は、例えばAmbion website(http:///www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)のコンピュータープログラムを用いて設計することができる。機能的siRNAをスクリーニングするためのキット(例えばBD Knockout RNAi System(BD Biosciences Clontech社))なども市販されており利用可能である。
【0191】
患者の細胞内における遺伝子の発現を制御するための遺伝子治療において、本発明のアンチセンス核酸、リボザイムおよびsiRNAを、直接組織に投与してもよく、またはこれらを発現するように作成された構築物を有する任意のベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどのウイルス由来のベクター、リポソームなどを利用した非ウイルスベクター)を、直接組織に投与してもよい(in vivo法)。これらは、例えば筋肉注射、皮下注射、動脈内注射、静脈内注射などによって、組織部位へ注入することができる。
または、予め体外で、細胞に、本発明のアンチセンス核酸、リボザイムおよびsiRNAを発現するように作成された構築物を有するベクターを導入してもよい。得られた細胞を、例えば筋肉注射、皮下注射、動脈内注射、静脈内注射などにより患者の組織に注入する(ex vivo法)。使用細胞は、患者の細胞と異種または同種であってよいが、好ましくは同種、より好ましくは患者から採取した細胞である。
【0192】
本発明のアンチセンス核酸、リボザイムおよびsiRNA、またはこれらを発現するように作成された任意のベクターは、単独で用いることも可能であるが、薬学的に許容され得る担体と配合されて、医薬品組成物(例えば摂食抑制剤、肥満治療剤、糖尿病治療剤)として使用され得る。例えば、注射剤の形態で投与する場合には、医薬品組成物は、蒸留水、塩化ナトリウム又は塩化ナトリウムと無機塩との混合物などの塩溶液、マンニトール、ラクトース、デキストラン、グルコースなどの糖溶液、グリシン、アルギニンなどのアミノ酸溶液、有機酸溶液又は塩溶液とグルコース溶液との混合溶液などを含んでもよい。
これらの投与量は、患者の体重、年齢、症状、投与形態などにより変動するが、当業者であれば、必要に応じて適当な投与量を選択することができる。
【0193】
本発明の抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体および抗体フラグメントが含まれる。
本発明のモノクローナル抗体は、免疫用抗原およびスクリーニング用抗原として、本発明のリラキシン−3またはそれらの部分断片を用いることを除いて、それ自体公知の手段により得ることができる。例えば前記免疫用抗原を用いてマウスを免疫し、そのマウスから取得した脾臓細胞と、マウス骨髄腫細胞とを、細胞融合法(Nature,256,495(1975))、または電気細胞融合法(J.Immunol.Method,100,181−189(1987))を用いて細胞融合し、前記スクリーニング用抗原を用いてスクリーニングすることにより、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。
【0194】
前記ハイブリドーマを培養する培地としては、ハイブリドーマの培養に適した培地であればよく、好ましくはダルベッコ氏変法イーグル氏最小必須培地(Dulbecco's modified Eeagle's minimum essential medium)にウシ胎児血清、L−グルタミン、L−ピルビン酸および抗生物質(ペニシリンGおよびストレプトマイシン)を含む培地が用いられる。前記ハイブリドーマの培養は、培地中で行なう場合には、5%CO2濃度、37℃の条件下で約3日間行なうことができる。また、マウスの腹腔内で培養する場合には、約14日間で行なうことができる。
【0195】
このようにして得られた培養液またはマウスの腹水から、タンパク質の分離および精製常法に従って、前記モノクローナル抗体を分離および精製することが可能である。このような方法としては、例えば硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析または凍結乾燥などを挙げることができる。
【0196】
また、本発明のポリクローナル抗体も、免疫用抗原およびスクリーニング用抗原として、本発明のリラキシン−3またはそれらの部分断片を用いることを除いて、それ自体公知の方法、例えば以下に示す方法により調製することができる。すなわち、抗原を含む生理食塩水を等量のフロイント氏完全アジュバンドもしくは不完全アジュバンド、またはその等価物、例えばHunter's TiterMaxTM(フナコシ社)と乳化混合して、哺乳動物(特にはウサギまたはヤギなど)の皮下、腹腔内または筋肉内などのいずれかに投与する(初回免疫)。以後、2〜4週間の間隔で同様の操作を行い、数回免疫する。最終免疫から1〜2週間後に哺乳動物の頚動脈または心臓から血液を採取して血清を硫酸アンモニウムによって塩析することにより調製することができる。
【0197】
本発明の抗体フラグメントは、前記抗体(モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を含む)の部分断片であって、しかも、元の抗体と同じ反応特異性を有する限り、特に限定されるものではない。本発明による抗体フラグメントとしては、例えばFab、Fab'、F(ab')2 またはFvを挙げることができる。本発明の抗体フラグメントは、例えば前記によって得られることができるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を常法によりタンパク質分解酵素(例えばトリプシンなど)によって消化し、続いて、タンパク質の分離および精製の常法に従って得ることができる。
【0198】
また別の態様によれば、本発明の抗体は、国際公開第01/068862号パンフレット、特開2002−345468号明細書に記載の方法により得ることができる。また。公知となった抗リラキシン-3抗体を使用することができ、例えば特開2002−345468号明細書の実施例に記載された抗体(モノクローナル抗体:HK4−144−10)を挙げることができる。
【0199】
本発明の抗体は、医薬品組成物として用いることもでき、例えば摂食(もしくは食欲)抑制剤、肥満治療剤、糖尿病治療剤として使用することができる。本発明の抗体は、薬学的に許容され得る担体と配合して医薬品組成物として用いることができる。この時の有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。また、かかる薬剤は、ヒトまたはヒト以外の生物[例えば非ヒト哺乳動物(例えばウシ、サル、トリ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類など]に、種々の形態、経口または非経口(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で投与することができる。従って、本発明の抗体を含有する医薬組成物は、投与経路に応じて適当な剤形とされ、具体的には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、あるいはシロップ剤などによる経口剤、または注射剤、点滴剤、リポソーム剤、坐薬剤などによる非経口剤を挙げることができる。これらの製剤は通常用いられている賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性化剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤などを用いて常法により製造することができる。使用可能な無毒性の上記添加剤としては、例えば乳糖、果糖、ブドウ糖、デンプン、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、またはその塩、エタノール、クエン酸、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0200】
それらの投与形態としては、また、必要な投与量範囲は、抗体の選択、投与対象、投与経路、製剤の性質、患者の状態、そして医師の判断に左右される。しかし、適当な投与量は患者の体重1kgあたり例えば約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好ましい範囲である。投与経路の効率が異なることを考慮すれば、必要とされる投与量は広範に変動することが予測される。例えば経口投与は静脈注射による投与よりも高い投与量を必要とすると予想される。こうした投与量レベルの変動は、当業界でよく理解されているような、標準的経験的な最適化手順を用いて調整することができる。
【0201】
本発明のリラキシン−3もしくはリラキシン−3受容体(好ましくはSALPR)と相互作用し、本発明のリラキシン−3の活性を阻害する物質は、本発明のスクリーニング法によって得ることができる。前記スクリーニング方法によって得られる化合物の好適例として、後述する実施例に記載された1,2,5−oxadiazolo[3,4−a]1,2,5−oxadiazolo[3,4−e]1,2,5−oxadiazolo[3,4−i]1,2,5−oxadiazolo[3,4−m][16]annulene(以下、「化合物1」と称する場合もある。)を挙げることができる。当該化合物の投与形態は、前記本発明のスクリーニング方法により得られる化合物を含有する医薬に関する記載を参照すればよい。
【0202】
本明細書において「治療」とは、一般的に、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾病および/または症状を完全にまたは部分的に防止する点では予防的であり、疾病および/または疾病に起因する悪影響の部分的または完全な治癒という点では治療的である。本明細書において「治療」とは、哺乳動物、特にヒトの疾病の任意の治療を含み、例えば以下の(a)〜(c)の治療を含む:
(a)疾病または症状の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない患者において、疾病または症状が起こることを予防すること;
(b)疾病症状を阻害する、即ち、その進行を阻止または遅延すること;
(c)疾病症状を緩和すること、即ち、疾病または症状の後退、または症状の進行の逆転を引き起こすこと。
【0203】
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0204】
以下、実施例により本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何等限定されるものではない。
【0205】
[実施例1]SALPRをコードするポリヌクレオチドの調製
SALPRをコードするポリヌクレオチドの単離は、配列番号3で表される塩基配列を基にして、以下のように行った。配列番号3では1410塩基対が示されており、SALPRをコードする領域は、1番目から1407番目(1410塩基対,469アミノ酸残基)とされている(GenBank アクセッション番号NM_016568)。PCR(polymerase chain reaction)により遺伝子を単離するために、配列番号5および配列番号6で表されるPCRプライマーを常法に従い作製した。
【0206】
human genomic DNA(Roche Diagostics社)を鋳型として、配列番号5および配列番号6の組合せからなるPCRプライマーと、Expand High Fidelity PCR System(Roche Diagnostics社)を用い、(98℃ 1分−57℃ 1分−72℃ 3分)を添付の操作方法に従い、30回繰り返すことによりPCRを行った。その結果、約1,400塩基対のDNA断片を得た。
【0207】
このDNA断片を、pCR2.1(Invitrogen社)に挿入し、ABI prism DNA sequencing kit(Perkin−Elmer Applied Biosystems社)により配列を確認した。その結果、配列番号5および6からなるプライマーの組合せによって得られたpCR2.1−SALPRに挿入された1410塩基対の配列は、配列番号3における361番目から1770番目と長さは同一であったが、配列中には1つの変異が見られた。この変異は、該当部位の核酸配列から翻訳されるアミノ酸には影響を与えないことは明らかであったので、SALPRをコードするポリヌクレオチドを得ることができた。
【0208】
[実施例2]レトロウイルスベクタープラスミドの調製
pBabe Puro(Morgenstern, J.P. and Land, H. Nucleic Acids Res. vol.18 3587−3596(1990))(配列番号7)からSalIおよびClaIで切断することによりSV40 promoter−puro(r)領域を除き、末端をKlenow fragmentにより平滑化した。ここへpIREShyg(Clontech社)からNsiIおよびXbaIで切断することによりIRES−hyg(r)領域を切り出し、T4ポリメラーゼにより末端を平滑化したものを挿入しpBabeXIHを得た。
【0209】
pBabeXIHからSspIおよびBamHIで切断することにより5’−LTR−packaging signalを除いた。ここへpCLXSN(IMGENEX社)からSspIおよびBamHIで切断することにより切り出した5’LTR−CMV promoter−packaging signalを挿入しpBabeCLXIHを得た。
【0210】
[実施例3]SALPR遺伝子導入用レトロウイルスベクタープラスミドの調製
前記実施例2に記載のレトロウイルス発現用プラスミドpBabeCLXIHを制限酵素HpaIで切断した。ここへ前記実施例1で得たpCR2.1−SALPRからEcoRVで切断することによりSALPRをコードするポリヌクレオチドを切り出し、T4ポリメラーゼにより末端を平滑化したものを挿入しpBabeCL(SALPR)IHを得た(図1)。
【0211】
[実施例4]SALPR遺伝子導入用レトロウイルスベクターの調製
2×106個の293−EBNA細胞(Invitrogen社)を10cmコラーゲンコートディッシュ(IWAKI社)でDMEM(Sigma社)−10% fetal bovine serum (FCS)−ペニシリン(penicillin) 100units/ml ストレプトマイシン(streptomycin) 100μg/ml(PS)(以下、「EBNA培養液」と称する)10mlを用いて培養した。翌日、pV−gp(pVPack−GP(Stratagene社)からNsiIおよびXbaIで切断することによりIRES−hisDを除きT4ポリメラーゼによる平滑化後、自己環化したもの)、pVPack−VSV−G(Stratagene社)、および実施例3で得たSALPR遺伝子導入用レトロウイルスベクタープラスミド(pBabeCL(SALPR)IH)それぞれ3.3μgをリポフェクション試薬であるTransIT(Panvera社)を用いて、前記293−EBNA細胞にトランスフェクションした。その6〜12時間後にEBNA培養液を交換し、37℃で培養を続けた。
【0212】
トランスフェクション2日後に培養液を回収し、1,200×gで10分間遠心した。
その上清を0.45μmのフィルター(Millipore社)でろ過したものを非濃縮レトロウイルスベクターとして、さらにウイルスベクターの濃縮を以下のように行った。
超遠心用チューブ50 Ultra−Clear Tubes(Beckman社)を70%エタノールで消毒後に蒸留水ですすぎ、ここへ非濃縮ウイルスベクター約35mlを入れた。これを超遠心ローターSW28(Beckman社)に入れ、超遠心装置XL−90(Beckman社)を使って19,500rpm 100分間の遠心操作を行った。遠心後、上清を捨てたチューブを氷に入れて放置した。1時間後、チューブ壁面に残った培養液約100μl程度の濃縮ウイルスベクター溶液が得られた。
【0213】
[実施例5]サイクリックAMP応答配列を含むレポーター系導入細胞SE302の構築(1)サイクリックAMP応答配列を含むレポーターDNAの作成
公表された論文(Durocher et al. Anal Biochem 2000 284(2):316−26)を参考にcAMPに応じた転写がみられるunitを以下のように構築した。
cAMP responsive element(CRE)を含むunitの作成のために、CREx2hb用として配列番号8および配列番号9、CREx2bp用として配列番号10および配列番号11で表されるオリゴDNAを常法に従い作成した。
それぞれの組合せからなるオリゴDNAを95℃に熱処理後、徐々に温度を室温まで下げることにより二本鎖DNA(CREx2hb、CREx2bp)を形成させた。CREx2hbをHindIII,BamHI、CREx2bpをBamHI,PstIで消化するとともに、pBluescriptIISK(+)(Stratagene社)をHindIII,PstIで消化した。消化したDNAを電気泳動して両端に制限酵素消化部位をもつDNAを精製した後、これら3つのDNA(CREx2hb、CREx2bp、pBluescriptIISK(+))を一度に連結し(ligation)、得られたプラスミドの配列を解析して、CRE4/pBluescriptIISKを作成した。
【0214】
次にVIP(vasoactive intestinal peptide)プロモーターを含むDNAを得るために配列番号12および配列番号13で表されるPCRプライマーを常法に従い作成した。
Human genomic DNA(Roche Diagostics社)を鋳型とし、配列番号12および配列番号13の組合せからなるPCRプライマーと、recombinant Taq polymerase(Takara社)を用いて(94℃ 30秒−55℃ 30秒−72℃ 1分)を35回繰り返すことによりPCRしたところ、264塩基対のDNA(配列番号14)が得られた。この264塩基対のDNAをPstIで消化するとともにCRE4/pBluescriptIISK(+)のPstIサイトに挿入し、得られたプラスミドの配列を確認してCRE4VIP/pBluescriptIISK(+)を作成した(図2A)。得られたCRE4VIP/pBluescriptIISK(+)からHindIIIとSmaIで消化した後、得られたCRE4VIPプロモーター断片の末端平滑化を行なった。
【0215】
前述の発現用ウイルスベクタープラスミドpBabeCLXIHよりIRES〜hygro(r)領域を除去したpBabeCLXを作成した(図2B)。pBabeCLXよりレトロウイルス本来のエンハンサー活性(LTR)中のNheI〜NarI領域を除去することによって得られた外来性プロモーター導入用レトロウイルスベクタープラスミドに、CREとVIPプロモーターを含む配列と、レポーター遺伝子である胎盤由来アルカリフォスファターゼ(PLAP)(Gotoら, Molecular Pharmacology, 49, p.860−873, 1996)を導入し、pBabeCLcre4vPdNNを得た(図2C)。
【0216】
(2)サイクリックAMP応答配列を含むレポーター系導入細胞SE302の樹立
サイクリックAMP応答配列によりレポーター遺伝子PLAPが誘導されるレトロウイルスベクタープラスミドpBabeCLcre4vPdNNを用い、実施例4に記載の方法に準じてレトロウイルスベクターを調製した。調製したレトロウイルスベクターをHEK293細胞に導入し、限界希釈法により細胞をクローン化して、PLAP誘導の反応性が最も良かったクローン(以下、「SE302細胞」と称する)を以下の実験に供した。
【0217】
[実施例6]SALPR遺伝子導入用レトロウイルスベクターによるSALPR発現細胞の調製
前記の実施例4で調製したレトロウイルスベクターによる細胞へのSALPR遺伝子導入を以下のように行った。
前記実施例5で構築した3×103個のSE302細胞を96well plate(旭テクノガラス社)にDMEM(SIGMA社)−10% fetal bovine serum (FCS)−PS(以下、「培養液」と称する)100μlを用いて培養した。翌日、実施例4で調製したレトロウイルスベクターを適宜希釈し、その100μlを培養液で調製したpolybrene(最終濃度8μg/ml)(別名 hexadimethrine bromide Sigma社)とともにSE302細胞に加えた。その翌日、培養液を500μg/mlのハイグロマイシン(Hygromycin)(Invitrogen社)含有の培養液200μlと交換し培養した。この条件で増殖してきたSALPR遺伝子導入SE302細胞(以下、「SALPR−SE302細胞」と称する)を適時継代して実験に供した。
【0218】
[実施例7]SALPR−SE302細胞におけるフォルスコリン添加によって増加させた転写活性のリラキシン−3による抑制
前記実施例6で構築したSALPR−SE302細胞を、転写活性測定用培地(DMEM−10%FBS(65℃にて30分非働化)を加えたもの)にて縣濁した後、96 well plate(Beckton Dickison社)に1穴あたり1×104細胞となるようにまいた。翌日、アッセイ用培地(DMEMに0.1%ウシ血清アルブミンを加えたもの)で希釈した各濃度のヒト型リラキシン−3(Phoenix Pharamaceuticals社)またはインスリン(Invitrogen社)を添加し、その後フォルスコリン(Carbio Chem社)を最終濃度1μmol/Lとなるように添加した。さらに一日培養後、細胞上清を15μl回収して化学発光測定用の96well plate(住友ベークライト社)に移し、アッセイ用緩衝液(280mmol/L Na2CO3−NaHCO3、8mmol/L MgSO4、pH10)を60μl、Lumiphos530(Lumigen社)70μlを添加して、室温にて1時間反応させた後、各wellの化学発光をFusionプレートリーダー(Perkin Elmer社)にて測定し転写活性量とした。フォルスコリン1μmol/Lを添加した細胞上清の転写活性を100%ととし、フォルスコリンを添加していない細胞の上清の活性を0%として各被験サンプルを加えた細胞上清中の活性を%で表示した(図3)。
【0219】
その結果、フォルスコリンによる転写活性の上昇をリラキシン−3はSALPRの活性化を介して抑制することが分かった。この転写活性の上昇は関連ペプチドであるインスリンでは影響がなかったので、リラキシン−3特異的な反応であることが分かった。すなわちこの実験系を用いることで、リラキシン−3によるSALPRの活性化に影響を与える化合物、物質を判別できることが示された。
【0220】
[実施例8]SALPR−SE302細胞を用いたリラキシン−3拮抗物質のスクリーニング
実施例7で示した実験系を用いて、リラキシン−3の作用を拮抗する化合物のスクリーニングを実施し、拮抗作用を持つ化合物を見出した。
リラキシン−3は、株式会社ペプチド研究所にて合成されたヒト型リラキシン−3(以下、単に「ヒト型リラキシン−3(ペプチド研究所社製)」と略記する場合もある。)を用いて実験を行った。ヒト型リラキシン−3は、配列番号2のN末端から第26番目(Arg)〜第52番目(Trp)のアミノ酸配列からなるポリペプチド(ヒト型B鎖)と配列番号2のN末端から第119番目(Asp)〜第142番目(Cys)のアミノ酸配列からなるポリペプチド(ヒト型A鎖)が、配列番号2のN末端から第35番目のB鎖のシステインおよび配列番号2のN末端から第129番目のA鎖のシステインが結合し、配列番号2のN末端から第47番目のB鎖のシステインおよび配列番号2のN末端から第142番目のA鎖のシステインが結合し、並びに配列番号2のN末端から第128番目のA鎖のシステインおよび配列番号2のN末端から第133番目のA鎖のシステインが結合しているポリペプチドである。
【0221】
SALPR−SE302細胞を、転写活性測定用培地(DMEM−F12−10%FBS(65℃にて30分非働化)を加えたもの)にて縣濁した後、384 well plate(Greiner社)に1穴当たり5000細胞となるようにまいた。翌日、フォルスコリン(Fermentek社)溶液に被験化合物(1,2,5−oxadiazolo[3,4−a]1,2,5−oxadiazolo[3,4−e]1,2,5−oxadiazolo[3,4−i]1,2,5−oxadiazolo[3,4−m][16]annulene(化合物1))を溶解し、細胞上清に添加した(最終濃度:フォルスコリン3μmol/L、被験化合物20μg/mL,DMSO (dimethylsurfoxide)0.5%)。その後、アッセイ用培地(DMEM−F12に0.1%ウシ血清アルブミンを加えたもの)で希釈したヒト型リラキシン−3(ペプチド研究所社製)を最終濃度3nmol/Lとなるように添加した。
【0222】
さらに一日培養後、細胞上清5μlを回収して化学発光測定用の384well plate(Corning社)に移し、アッセイ用緩衝液を20μL、Lumiphos530を25μL添加して、室温にて2時間反応させた後、各wellの化学発光をARVOsx3プレートリーダー(Perkin Elmer社)にて測定し転写活性量とした。SALPRを発現していないSE302細胞についても同様に操作し、被験物質の特異性を確認した。
【0223】
その結果、SALPR−SE302細胞におけるフォルスコリンによる転写活性の上昇をリラキシン−3が抑制し、被験物質である化合物1がリラキシン−3による転写活性の抑制に拮抗した(図4(A))。また、SALPRを発現していないSE302細胞における検討では、化合物1は、転写活性を上昇させることはなかった(図4(B))。したがって被験物質による作用が、SALPRのリラキシン−3による活性化を特異的に抑制する化合物であることが確認できた。
【0224】
[実施例9]リラキシン−3脳室内投与による摂食量亢進作用
(1)被験ラットと脳室内投与のための前処置
Wistar雄性ラット(7週齢、日本チャールズリバー社)に実験動物用飼料MF(オリエンタル酵母社)を与えて馴化した。ラット(250〜300g)を麻酔下で、側脳室にカニューレを挿入した。その後一週間以上、前記ラットを飼育した後にリラキシン−3の投与実験を行った。
(2)リラキシン−3溶液の調製
60μgのヒト型リラキシン−3(Phoenix Pharmaceutical社)をDMSOにて溶解した後、最終濃度が200μmol/Lとなるように人工的脳脊髄液を添加して調製した。析出した沈殿は遠心操作をして取り除き、上清をヒト型リラキシン−3投与液として用いた。ラットへの投与量(投与液中のリラキシン−3濃度)は実施例7に示された実験系にて、リラキシン−3による標準曲線を用いて算出したところ、約50pmol/ラットであった。
(3)リラキシン−3溶液の脳室内投与
ガイドカニューレを装着した被験ラットを2群に分け(1群6匹)、ヒト型リラキシン−3投与液もしくはvehicle(ヒト型リラキシン−3を除いた前記(2)と同じ組成の溶液)を5μL/2分の速度でインフュージョンポンプを用いて被験ラットに投与した。
(4)摂餌量の測定
投与液の脳室内投与後すぐに、被験ラットは予め重量を測定した餌を入れてあるケージに入れ自由摂食させた。2時間後に餌の減少量を測定することで摂餌量を算出した。各群の平均摂餌量と標準偏差を図5に示す。その結果、投与後2時間の摂餌量は、ヒト型リラキシン−3を約50pmol投与したラットでは対照のvehicle投与のラットに比べて有意に増加していた(t−検定、p<0.01)。従って、リラキシン−3は摂食行動を増加させることが分かった。
【0225】
[実施例10]リラキシン−3の単回脳室内投与時の血中レプチン濃度上昇
血中レプチン濃度の測定
摂餌量測定後(投与後約3時間後)に前記ラットをネンブタールにて麻酔し、その腹部大動脈より血液を採取した。採取した血液を1,750×gで15分間遠心し、その上清を−80℃にて保存した。後日、上清中のレプチン量をラットレプチン定量ELISAキット(アマシャムバイオサイエンス社)により定量した。
その結果、単回のヒト型リラキシン−3投与ラットでは対照のvehicle投与のラットより血中のレプチン濃度が有意に上昇することが明らかとなった(t−検定、p<0.05、図6)。
【0226】
[実施例11]リラキシン−3持続投与による体重増加・肥満作用の亢進
(1)リラキシン−3溶液の調製
ヒト型リラキシン−3(ペプチド研究所社製)を生理食塩水にて100μmol/Lとなるように溶解し、vehicle(生理食塩水)またはヒト型リラキシン−3(ペプチド研究所社製)溶液を浸透圧ポンプ(alzet osmotic pump model1002(DURECT社) 投与量 6μL/日)とチューブ・投与用カニューレに注入しそれらを接続した。
(2)実験動物と脳室内投与のための処置
Wistar雄性ラット(6週齢、日本チャールズリバー社)に実験動物用飼料MF(オリエンタル酵母社)を与え、個別飼育で4日間馴化した。前記ラット(250〜270g)を麻酔下で、側脳室にガイドカニューレを挿入し、浸透圧ポンプを皮下に収めた。
(3)体重増加作用および摂餌量の測定
手術日を0日目として自由摂食下で飼育し、毎朝、体重と餌量を測定した。0日目からの体重の増加量を図7に示した。また、摂餌量は、手術前日から手術日までを0日目とし、一日当たりの餌の減少量を摂餌量として示した(図8)。
手術後1日目よりヒト型リラキシン−3(ペプチド研究所社製)投与ラット群では有意な体重の増加が確認された。また、ヒト型リラキシン−3(ペプチド研究所社製)投与群の摂餌量も1日目より有意に増加した(t−検定、** p<0.01、* p<0.05)。
(4)脂肪量、血中レプチン量およびインスリン量の定量
実験終了日(14日目)に体重と餌量を測定した後、ラットをネンブタールにて麻酔し、精巣周囲の脂肪を取り出し両精巣周囲の脂肪量を合わせて測定した(図9)。さらに、腹部大動脈より血液を採取した。採取した血液を1,750×gで15分間遠心し、その上清を−80℃にて保存した。後日、上清中のレプチン量をラットレプチン測定キット(L)(IBL社)により定量した(図10(A))。また上清中のインスリン量を超高感度ラットインスリン測定キット(森永生化学研究所社)により定量した(図10(B))。
その結果、精巣周囲脂肪量は対照のvehicle投与のラットに比較し、ヒト型リラキシン−3(ペプチド研究所社製)持続投与群で有意に増加していた。また、血中のレプチン濃度とインスリン濃度も、ヒト型リラキシン−3(ペプチド研究所社製)を持続投与したラットで有意に上昇していることが明らかとなった(t−検定、** p<0.01、* p<0.05)。従って、リラキシン−3投与により脂肪蓄積を伴う肥満作用が亢進するとともに、インスリン量が増加することが明らかとなった。
【0227】
[実施例12]リラキシン−3持続投与による体重増加、運動量への作用
(1)リラキシン−3溶液の調製
ヒト型リラキシン−3(ペプチド研究所社製)を生理食塩水にて100μmol/Lとなるように溶解し、vehicle(生理食塩水)またはヒト型リラキシン−3(ペプチド研究所社製)溶液を浸透圧ポンプ(alzet osmotic pump model1002(DURECT社) 投与量 6μL/日)とチューブ・投与用カニューレに注入しそれらを接続した。
(2)実験動物と脳室内投与のための処置
Wistar雄性ラット(5週齢、日本チャールズリバー社)に実験動物用飼料MF(オリエンタル酵母社)を与え、個別飼育で5日間馴化した。前記ラット(170〜200g)を麻酔下で、側脳室にガイドカニューレを挿入し、浸透圧ポンプを皮下に収めた。手術日を0日として運動量の測定日以外は自由摂食・飲水下で飼育し、毎朝体重を測定した(図11)。
前記実施例11と同様に、投与後1日後からヒト型リラキシン−3(ペプチド研究所社製)投与ラット群では有意な体重の増加が確認された(t−検定、** p<0.01、* p<0.05)。
(3)自発運動量の測定
前記(2)にて、ヒト型リラキシン−3(ペプチド研究所社製)投与ラットの体重増加作用に有意な差が認められた日の明期および暗期の自発運動量を、Versamax(Accuscan社)を用いて測定した。明期(投与開始後2、7日後)、暗期(投与開始後3、8日後)のラットを実験開始の1時間以上前に個別飼育台から実験室へ移動して馴化した後、Versamaxケージ内にラットを入れ直後から90分間の行動量を記録した。90分間の全活動量を図12に示した。
いずれの日においても各群のラットで運動量には有意な変化は認められなかった。すなわち、リラキシン−3による体重増加作用は自発運動量の変化が作用しているのではないことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0228】
本発明により、有用な摂食亢進作用、体重増加作用および肥満作用を有するポリペプチド、当該ポリペプチドを含有する疾患治療剤、当該ポリペプチドの受容体の賦活化、抑制化をする化合物、物質もしくはその塩のスクリーニング方法、当該スクリーニング用キット、あるいは当該ポリペプチドの発現を阻害する物質などを含有してなる摂食抑制剤、肥満治療剤または糖尿病治療剤などが提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リラキシン−3を含有してなる摂食亢進剤。
【請求項2】
リラキシン−3を含有してなる体重増加剤。
【請求項3】
リラキシン−3を含有してなる脂肪量増加剤。
【請求項4】
次の工程;被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする摂食を亢進する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項5】
次の工程;
リラキシン−3および被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
を含むことを特徴とする摂食を亢進または抑制する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項6】
次の工程;
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の摂食を亢進または抑制する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項7】
リラキシン−3受容体が、SALPRまたはその部分ポリペプチドであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項8】
SALPRが、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであることを特徴とする請求項7に記載のスクリーニング方法。
【請求項9】
次の工程;被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする摂食を亢進する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
【請求項10】
次の工程;
リラキシン−3および被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
を含むことを特徴とする摂食を亢進または抑制する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
【請求項11】
次の工程;
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする請求項10に記載の摂食を亢進または抑制する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
【請求項12】
リラキシン−3受容体が、SALPRまたはその部分ポリペプチドであることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載のスクリーニング用キット。
【請求項13】
SALPRが、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであることを特徴とする請求項12に記載のスクリーニング用キット。
【請求項14】
リラキシン−3を含有してなる体重増加を必要とする疾患の治療剤。
【請求項15】
疾患が拒食症または悪液質である請求項14に記載の治療剤。
【請求項16】
次の工程;被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする体重増加作用を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項17】
次の工程;
リラキシン−3および被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
を含むことを特徴とする体重を増加または減少させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項18】
次の工程;
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする請求項17に記載の体重を増加または減少させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項19】
リラキシン−3受容体が、SALPRまたはその部分ポリペプチドであることを特徴とする請求項16〜18のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項20】
SALPRが、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであることを特徴とする請求項19に記載のスクリーニング方法。
【請求項21】
次の工程;被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする体重増加作用を有する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
【請求項22】
次の工程;
リラキシン−3および被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
を含むことを特徴とする体重を増加または減少させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
【請求項23】
次の工程;
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする請求項22に記載の体重を増加または減少させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
【請求項24】
リラキシン−3受容体が、SALPRまたはその部分ポリペプチドであることを特徴とする請求項21〜23のいずれか一項に記載のスクリーニング用キット。
【請求項25】
SALPRが、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであることを特徴とする請求項24に記載のスクリーニング用キット。
【請求項26】
次の工程;被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする肥満調節に係る化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項27】
次の工程;
リラキシン−3および被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
を含むことを特徴とする肥満調節に係る化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項28】
次の工程;
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする請求項27に記載の肥満調節に係る化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項29】
リラキシン−3受容体が、SALPRまたはその部分ポリペプチドであることを特徴とする請求項26〜28のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項30】
SALPRが、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであることを特徴とする請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項31】
次の工程;被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする肥満調節に係る化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
【請求項32】
次の工程;
リラキシン−3および被験物質を、
(A)リラキシン−3受容体またはリラキシン−3受容体を含有する細胞もしくはその細胞膜画分に接触させる工程、
を含むことを特徴とする肥満調節に係る化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
【請求項33】
次の工程;
(B)リラキシン−3受容体を介した細胞刺激活性を測定する工程、
を含むことを特徴とする請求項32に記載の肥満調節に係る化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
【請求項34】
リラキシン−3受容体が、SALPRまたはその部分ポリペプチドであることを特徴とする請求項31〜33のいずれか一項に記載のスクリーニング用キット。
【請求項35】
SALPRが、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであることを特徴とする請求項34に記載のスクリーニング用キット。
【請求項36】
SALPR阻害作用を有する化合物を含有する摂食抑制剤。
【請求項37】
SALPR阻害作用を有する化合物が、請求項7または8に記載のスクリーニング方法により得られる化合物であることを特徴とする請求項36に記載の剤。
【請求項38】
SALPR阻害作用を有する化合物を含有する体重減少剤。
【請求項39】
SALPR阻害作用を有する化合物が、請求項19または20に記載のスクリーニング方法により得られる化合物であることを特徴とする請求項38に記載の剤。
【請求項40】
SALPR阻害作用を有する化合物を含有する脂肪量減少剤。
【請求項41】
SALPR阻害作用を有する化合物が、請求項29または30に記載のスクリーニング方法により得られる化合物であることを特徴とする請求項40に記載の剤。
【請求項42】
SALPR阻害作用を有する化合物を含有する肥満治療剤。
【請求項43】
SALPR阻害作用を有する化合物が、請求項19、20、29または30のいずれか一項に記載のスクリーニング方法により得られる化合物であることを特徴とする請求項42に記載の剤。
【請求項44】
SALPR阻害作用を有する化合物を含有する糖尿病治療剤。
【請求項45】
SALPR阻害作用を有する化合物が、請求項19、20、29または30のいずれか一項に記載のスクリーニング方法により得られる化合物であることを特徴とする請求項44に記載の剤。
【請求項46】
SALPRが、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであることを特徴とする請求項36〜45のいずれか一項に記載の剤。
【請求項47】
リラキシン−3受容体に作用する化合物をヒトまたはヒト以外の生物に投与し、投与後の摂食量を測定する工程を含むことを特徴とする、摂食を亢進または抑制する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項48】
リラキシン−3受容体に作用する化合物が、請求項4〜8のいずれか一項に記載の方法により得られる化合物である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
リラキシン−3受容体に作用する化合物をヒトまたはヒト以外の生物に投与し、投与後の体重を測定する工程を含むことを特徴とする、体重を増加または減少させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項50】
リラキシン−3受容体に作用する化合物が、請求項16〜20のいずれか一項に記載の方法により得られる化合物である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
リラキシン−3受容体に作用する化合物をヒトまたはヒト以外の生物に投与し、投与後の肥満の指標を測定する工程を含むことを特徴とする、肥満調節に係る化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項52】
リラキシン−3受容体に作用する化合物が、請求項26〜30のいずれか一項に記載の方法により得られる化合物である、請求項51に記載の方法。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−290826(P2006−290826A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115680(P2005−115680)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】