説明

スクリーン印刷装置、スクリーン印刷方法および液晶パネルの製造方法

【課題】スキージによる印刷動作前に印刷ペーストをスクリーン版上に印刷ペーストが無い部分であるボイドなどを発生させることなく均一に広げることができ、安定した印刷処理が可能なスクリーン印刷装置を得ることができる。
【解決手段】スクリーン印刷装置において、基板1上に対向配置され、複数の方向に延在する開口パターン4を有するスクリーン版3と、印刷ペースト2を塗り広げるコート動作を行うメインスクレッパ5と、塗り広げられた印刷ペースト2の表面に接しながら、メインスクレッパ5のコート動作方向に対して平行でなく角度を有した方向に移動する補助コート動作を行う補助スクレッパ6と、スクリーン版3の表面に塗り広げられた印刷ペースト2を開口パターン4を介し基板1表面に印刷するスキージ7とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷装置、スクリーン印刷方法およびこれらを用いた液晶パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールパターンによって囲まれたセル構造をもった表示装置として一般的なものに液晶パネルがある。液晶パネルは、主にガラス基板を元に作成され、液晶を駆動するスイッチング素子を載せたスイッチング素子基板と、カラーフィルタの役割を果たすカラーフィルタ基板とを備える。液晶パネルの製造プロセスにおけるパネル組み立て工程は、スイッチング素子基板、カラーフィルタ基板の其々の基板表面に配向膜を塗布し、ラビング処理する工程と、間隔をあけて貼り合わせる工程と、所定のパネルサイズに切断する工程と、その間隔内に液晶を注入する工程がある。
【0003】
基板を貼り合せる為に、スイッチング素子基板或いはカラーフィルタ基板上に、パネルの表示部分を囲むような枠状にシールパターンを形成する。この方法としては、スクリーン版に形成されたシールパターンの形状の開口部からシール材を押し出すスクリーン印刷方式とノズル走査によってパターンを描くシールディスペンス方式の二つが一般的である。両者のうちスクリーン印刷方式は、基板あたり形成されるパネル数が多い場合において生産性に優れるなどの点から、近年は主流となっている。
【0004】
この様なスクリーン印刷方式を用いたシールパターン形成工程においては、予めスクリーン版に形成されたシールパターンの形状に対応した開口部よりなる開口パターンを介して基板上にシール材を塗布しパターン形成するため、スクリーン版面と間隔をあけて走査するスクレッパによりシール材をスクリーン版上に均一に押し広げるコート工程と、スクリーン版面を所定の圧力で押しながら走査するスキージにより前述のシール材を開口パターン内より押し出して基板上に転写して塗布する印刷工程が交互に繰り返される。スクレッパを走査するコート工程ではシール材がスクリーン版上を回転しながら移動して広げられるためシール内に気泡が巻き込まれやすく、この気泡は複数統合するなどして大きくなることによりスクリーン版上に均一に拡げられるシール材中でシール材が無い部分(空間)であるボイド(或いはコート層を貫通している場合、ピンホールとも呼ぶ)の発生原因となる。このシール材の無い部分であるボイドが開口パターンにかかると印刷工程で押し出されるシール材の量が不足するため、形成されるシールパターンの形状が安定せずに所望の線幅より細く形成される場合や断線する場合が発生するという問題があった。
【0005】
上述のような問題に対し、例えば、特許文献1においては、スクレッパを通常の一段ではなく二段にし、さらに二段目が一段目よりもスクリーン版との隙間を狭く配置することにより、一段目により発生した気泡によるピンホールが二段目により充填させるというスクリーン印刷方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−9587号公報(第1頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
然しながら、スクリーン版の開口パターンにかかるボイド部分では、開口パターン内部にまで気泡が入り込みシール材が充填されない部分が形成される。この様に、一旦、開口パターン内に充填されない部分が形成された場合、特許文献1のように、二段目のスクレッパにより充填しようとしても、開口パターンの形状により十分に充填できない場合がある。具体的には、先に説明したとおり液晶パネルのシールパターンは枠状に形成されることから、主に直交する二方向のシールパターンを持つことになる。従って、スクリーン版においてもスクレッパの走査方法と一致する方向と直交する方向の主に二方向の開口パターンが形成されることになる。この様な状況において、スクレッパの走査方向と一致する方向の開口パターンにかかるボイド部分に対してはスクレッパは開口パターンに沿って進むことから、二段目のスクレッパにより開口パターン内のシール材も含めて回転しながら連続的にシール材がパターン内に再充填されていく。従って、開口パターン内にかかるボイドに対しても新たにシール材を充填できる。つまり、シール材の充填されない部分、即ちボイドを解消できる。一方、スクレッパの走査方向に直交する方向の開口パターンにかかるボイド部分に対しては、二段目のスクレッパはスクリーン版における開口パターン部以外の平坦部のシール材、つまりスクリーン版の表面のシール材のみを回転しながら開口パターンにかかるボイド部分に到達することになる。従って、突然、深さのある開口パターン上を走査されることになり、シール材の表面のボイド内しか再充填することができない。つまり、開口パターン内のシール材の充填されない部分を解消することができない。その結果、部分的にシールパターン形状の不安定性が残り、シールパターン形状の十分な安定化を実現できないという問題があった。また、以上の様な問題は、少なくとも二方向の延在方向を有する印刷パターンを形成するスクリーン印刷処理においては、液晶パネルのシールパターン形成工程に限らず、共通の問題点である。
【0008】
本発明は、以上説明のような問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、少なくとも二方向の延在方向を有する印刷パターンを形成する印刷処理において、印刷パターンを安定して形成できるスクリーン印刷装置、スクリーン印刷方法および液晶パネルの製造方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスクリーン印刷装置においては、被印刷物上に対向配置され、複数の方向に延在する開口パターンを有するスクリーン版と、このスクリーン版の表面に沿った第一の方向に移動して、印刷ペーストを塗り広げるコート動作を行うメインスクレッパと、このメインスクレッパにより塗り広げられた印刷ペーストの表面に接しながら、メインスクレッパのコート動作方向に対して平行でなく角度を有した方向に移動し、メインスクレッパのコート動作を補助する補助コート動作を行う補助スクレッパと、このスクリーン版の表面に沿った印刷方向に移動して、塗り広げられた印刷ペーストを開口パターンを介し被印刷物表面に印刷するスキージとを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスクリーン印刷装置を使用することによって、スキージによる印刷動作前に印刷ペーストをスクリーン版上に印刷ペーストが無い部分であるボイドなどを発生させることなく均一に広げることができ、安定した印刷処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態におけるスクリーン印刷装置を示した斜視図および上面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置のコート動作時の状態を説明する上面図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置の印刷動作時の状態を説明する上面である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置のコート動作および補助コート動作の作用を説明する上面図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置の補助コート動作の作用を説明する側面図である。
【図6】本発明の実施の形態1変形例におけるスクリーン印刷装置の補助コート動作時の状態を説明する上面図である。
【図7】本発明の実施の形態2におけるスクリーン印刷装置の補助コート動作時の状態を説明する上面図である。
【図8】本発明の変形例におけるスクリーン印刷装置のコート動作および補助コート動作時の状態を説明する上面図である。
【図9】本発明のスクレッパ移動機構回転機構の上面図および側面図である。
【図10】本発明の実施の形態3における液晶パネルの断面図である。
【図11】本発明の実施の形態3における液晶パネルの製造方法での組み立て工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
ここでは、本発明を液晶パネルの枠状シールパターンの様に主に二方向に延在するパターンを形成するスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に適用した実施形態である実施の形態1について説明を行う。まず、本実施の形態1におけるスクリーン印刷装置の構成について図1を用いて説明する。ここで、図1(a)はスクリーン印刷装置全体を示した斜視図、図1(b)は装置上部側から見た平面図である。なお、図は模式的なものであり、示された構成要素の正確な大きさなどを反映するものではない。また、図面が煩雑とならない様、発明の主要部以外の省略や構成の一部簡略化などを適宜行っている。以下の図においても同様とする。更に、以下の図においては、図中、既出の図において説明したものと同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、本発明においてシールパターン形状を現す表現として用いる枠状とは、概ね矩形の形状を指すものであり、一部矩形の四隅の角を曲線により丸めた形状や液晶を注入する為の注入口近傍での局所的な開口や突出部を有するものも含んだ形状を総称して指すものとし、四隅や注入口近傍などの局所的な例外を除いて、主に二方向の延在方向を持つものである。
【0013】
図1において、1は被印刷物となる基板、2は印刷される印刷ペースト、3はスクリーン版、4はスクリーン版3に形成された開口パターン、5はメインスクレッパ、6は補助スクレッパ、7はスキージ、8は被印刷物を保持するステージである。本実施の形態1のスクリーン印刷装置は、図1に示される様に、基板1を保持するステージ8と、基板1の上部に対向配置されるスクリーン版3と、スクリーン版3上に印刷ペースト2を塗り広げるコート動作を行うメインスクレッパ5と、メインスクレッパ5によるコート動作を補助する補助コート動作を行う補助スクレッパ6と、スクリーン版3上に塗り広げられた印刷ペースト2を開口パターン4を介して基板1表面に印刷するスキージ7を備えている。なお、図中において、印刷ペースト2は、既にメインスクレッパ5によるコート動作を経て、スクリーン版3上に塗り広げられた状態で示している。また、本実施の形態1においては、図中のX方向とY方向(スクリーン版3表面に沿う方向で、フレーム3における長手方向と短手方向に其々対応)に対し、メインスクレッパ5とスキージ7がY方向に沿う方向に、補助スクレッパ6がX方向に沿う方向に、其々配置されている。なお、スクリーン印刷装置には、印刷動作時においてスキージ7、メインスクレッパ5、および補助スクレッパ6を水平に移動させる移動機構、印刷前後における基板1の搬入搬出時などにステージ8を搬入搬出位置まで移動動作させるステージ移動機構やステージ8と装置外間の基板1の搬入搬出をする基板搬送機構なども備えるが、発明の主要部では無いので、ここでは図示と説明を省略する。
【0014】
スクリーン版3については、図1に示される様に、アルミなどの金属からなるフレーム3aと、フレーム3aに貼り付けられた開口パターン4を有するスクリーン3bとから構成されており、スクリーン3bについては、金属メッシュと乳剤層より構成される場合と、ごく薄い金属板により構成される場合があるが、本実施の形態1においては、何れの構成を用いても良い。また、開口パターン4については、複数の方向に延在する開口パターン4の場合に本発明の効果が得られるが、本実施の形態1においては、一般的な液晶パネルに用いられる枠状シールパターンに対応する開口パターンとした。また、複数の液晶パネルを多面取りできる様に、枠状の開口パターン4をマトリクス状に、ここでは、例えば縦四列かつ横四行に配列している。また、個々の液晶パネルについて、液晶パネルの二辺の方向に対応する二方向の開口パターンよりなるが、全ての液晶パネルの方向をスクリーン版3のフレーム3aの二辺方向に揃えて配置することで、全ての液晶パネルのシールパターンに対応する開口パターン4を主に図中のX方向とY方向の特定の二方向に延在する様に配置することができる。
【0015】
続いて、本実施の形態1におけるスクリーン印刷装置の動作について、図2の装置上部側から見た平面図を用いて説明する。先ず、図2(a)に示す様に、メインスクレッパ5が図中(+X)方向、即ち、スクリーン版3の表面に沿ったスクリーン版3の長手方向に平行な方向となる図中矢印CT1の方向に、スクリーン版3の表面と所定の間隔に保ちながら移動することにより、スクリーン版3上に印刷ペースト2を塗り広げるコート動作が行われる。従って、コート動作の方向はスクリーン版3における開口パターン4の延在する二方向における一方向とも平行である。これにより、少なくとも開口パターン4の配置される部分を含む領域においてスクリーン版3上に印刷ペースト2が略均一に塗り広げられる。
【0016】
続いて、図2(b)に示す様に、補助スクレッパ6が図中(−Y)方向、即ち、スクリーン版3の表面に沿ったスクリーン版3の短手方向に平行な方向となる図中矢印CT2の方向に、スクリーン版3上に塗り広げられた印刷ペースト2の表面に接しながら移動する補助コート動作が行われる。従って、補助コート動作の方向はメインスクレッパ5によるコート動作の方向と垂直な方向であり、スクリーン版3における開口パターン4の延在する二方向における一方向とも平行である。これにより、少なくとも開口パターン4の配置される部分を含む領域において、表面より印刷ペースト2が攪拌され均一化されることにより、メインスクレッパ5によるコート動作で発生するコート状態の不良部などの改善や修復が行われる。従って、この補助コート動作はメインスクレッパ5によるコート動作を補助する役割をする。また、スクリーン版3上に塗り広げられた印刷ペースト2の表面に接しながら移動することは、装置動作的にはメインスクレッパ5がコート動作する際のスクリーン版3の表面との所定の間隔に比べ、やや狭い所定の間隔を保ちながら移動することと実質的に等しい。この様にして、メインスクレッパ5によるコート動作と補助スクレッパ6による補助コート動作を経ることにより、メインスクレッパ5のみによる場合と比較して、印刷ペースト2がスクリーン版3上に、より均一に塗り広げられたコート状態が得られる。
【0017】
続いて、図3に示す様に、スキージ7が図中(−X)方向、即ち、スクリーン版3の表面に沿ったスクリーン版3の長手方向に平行な方向となる図中矢印PRの方向を印刷方向として、スクリーン版3の表面に押し付けられながら移動することにより、スクリーン版3上に塗り広げられた印刷ペースト2が開口パターン4を介して基板1の表面に塗布される。より具体的にはスクリーン版3上に塗り広げられた印刷ペースト2が開口パターン4内に充填された後、充填された印刷ペースト2が基板1の表面に転写され、開口パターン4の形状に対応した印刷が行われる。また、印刷方向は図中(−X)方向であることから、メインスクレッパ5によるコート動作の方向と平行な逆方向であり、スクリーン版3における開口パターン4の延在する二方向における一方向とも平行である。また、印刷時には、前もってスクリーン版3或いはステージ8が移動することにより、スクリーン版3とステージ8は接触する間際まで近接され、スクリーン版3とスクリーン版3の下部に配置された基板1の表面も同様に近接され、スクリーン版3と基板1の表面は対向配置される。このスクリーン版3と基板1の近接動作は、少なくともスキージ7の動作時において近接されていれば良いことから、スキージ7の動作直前であっても良いし、補助スクレッパ6による補助コート動作の前、或いはメインスクレッパ5によるコート動作の前であっても良い。
【0018】
続いて、本実施の形態1のスクリーン印刷装置による作用について、図4および図5を用い説明する。図4(a)は、メインスクレッパ5によるコート動作後の状態、図4(b)は、補助スクレッパ6による補助コート動作中の状態を示すものである。図は何れも装置上部側から見た平面図で示している。図4(a)に示す様にメインスクレッパ5によるコート動作後には、開口パターン4にかかった気泡や印刷ペースト2の充填不足などよりなる印刷ペースト2の存在しない部分或いは不足する部分であるボイド9が生ずる場合がある。特に、ボイド9はメインスクレッパ5のコート動作方向と垂直方向に延在する開口パターン4部に生じ易い。これは、スクリーン版3表面の印刷ペースト2を回転攪拌しながら進むコート動作に対し、コート動作方向と垂直方向に延在する開口パターン4部では、短時間に深さの異なる溝に該当する開口パターン4を横切ることになる。従って、回転攪拌されている一定の印刷ペースト2量に対し、突然、開口パターン4の溝内に印刷ペースト2を多量に充填する必要が発生することになることから、印刷ペースト2が短期的に不足し、開口パターン4への充填不足によるボイド9を発生し易くなる。この様にして、図4(a)中に示すボイド9が生じた場合においても、本実施の形態1においては、図4(b)に示す様に補助スクレッパ6による補助コート動作が、メインスクレッパ5によるコート動作に続いて行われることから、生じたボイド9に印刷ペースト2が再充填されて修復される。
【0019】
続いて、このボイド9に印刷ペースト2が再充填される修復作用について、図5を用いて詳細に説明する。図5(a)は、補助コート動作中における開口パターン4部以外の位置を移動される補助スクレッパ6近傍の状態を示すものであり、図5(b)は、開口パターン4部の特にボイド9発生部を移動される補助スクレッパ6近傍の状態を示すものである。図は何れも補助スクレッパ6の補助コート動作方向CT2に対して側面側から見た場合に相当する。図5(a)に示す様に、補助スクレッパ6が開口パターン4部以外の位置を移動される際には、スクリーン版3の表面の印刷ペースト2が図中矢印R1に示す様に回転攪拌されながら進む。一方、図5(b)に示す様に、補助スクレッパ6が開口パターン4部を移動される際には、スクリーン版3の表面に加えて開口パターン4内の印刷ペースト2まで図中矢印R2に示す様に回転攪拌される。また、補助コート動作中において回転攪拌される印刷ペースト2の量も多くなる。従って、図5(b)の位置より更に補助スクレッパ6の移動が進み、ボイド9部に差し掛かった場合にも、開口パターン4の内部まで回転攪拌される。その結果、ボイド9内に印刷ペースト2が再充填されて、ボイド9を修復することができる。この効果は補助スクレッパ6がボイド9部に差し掛かる前に開口パターン4部をある程度の区間移動することにより得られるものであり、補助コート動作方向CT2に対して開口パターン4の延在する方向が一致する場合が最大となる。逆に補助コート動作方向CT2に対して開口パターン4の延在する方向が垂直な場合には、図5(a)に示す開口パターン4部以外の移動から、突然、開口パターン4部に差し掛かる。従って、その開口パターン4内にボイド9が存在する場合、図中矢印R1に示す程度の印刷ペースト2のごく表面の回転攪拌では開口パターン4内のボイド9全てを再充填して修復することは困難となる。本実施の形態1のスクリーン印刷装置では、メインスクレッパ5のコート動作方向と垂直方向に延在する開口パターン4部に生じたボイド9に対して、補助スクレッパ6の補助コート動作方向CT2を前記の開口パターン4の延在方向と一致させていることから、十分なボイド9の修復効果を得ることができる。
【0020】
以上説明の様に、本実施の形態1のスクリーン印刷装置においては、二方向に延在する開口パターン4を有するスクリーン版3に対して、印刷ペースト2をスクリーン版3上に塗り広げるコート動作を行うメインスクレッパ5と、メインスクレッパ5の移動するコート動作方向に対して平行でなく角度を有した方向に移動することによりメインスクレッパ5のコート動作を補助する補助スクレッパ6を有することにより、スキージ7による印刷動作前に印刷ペースト2をスクリーン版3上にボイド9などを発生させることなく均一に広げることができ、安定した印刷処理が可能となる。また、開口パターン4の延在する二方向に対して、メインスクレッパ5のコート動作方向と補助スクレッパ6の補助コート動作方向が其々平行とされることで、開口パターン4の延在方向に沿って、コート動作或いは補助コート動作を行うことができる。従って、ボイド9の発生のし難いコート動作と、発生したボイド9の修復効果の高い補助コート動作を行うことができ、結果的にボイド9発生の防止効果を向上することができる。
【0021】
本実施の形態1では、メインスクレッパ5の移動するコート動作方向とスキージ7の移動する印刷方向を平行な逆方向とした。更に、メインスクレッパ5とスキージ7の向きを平行とした。スクリーン版3上における印刷ペースト2の移動量の大部分は、メインスクレッパ5とスキージ7の動作により決定される。従って、両者の動作により、印刷ペースト2が往復動作され、往復動作による印刷ペースト2の移動量が概ね等しいことが、印刷処理枚数が増えた場合でも印刷ペースト2をスクリーン版3上で均一に分布させる為に有効となる。本実施の形態1では、この様にメインスクレッパ5とスキージ7の向きを揃え、移動を反対方向とすることで、印刷ペースト2の移動量を等しくして、スクリーン版3上の印刷ペースト2をより均一化できる。また、この様にメインスクレッパ5とスキージ7の動作方向および向きを揃える場合には、メインスクレッパ5およびスキージ7其々とスクリーン版との距離を変える上下の移動機構を別に備えることにより、メインスクレッパ5とスキージ7を水平移動させる移動機構を共通化することが可能となる。メインスクレッパ5とスキージ7の何れかをコート動作或いは印刷動作に適当なスクリーン版との距離に交互に上下移動させ、両者を同時に水平移動させれば、水平移動させる共通の移動機構の往復動作により、一回のコート動作と一回の印刷動作を行うことができる。結果として、独立した水平移動機構を備える場合より装置構成を単純化できる。以上の様にメインスクレッパ5とスキージ7の動作方向および向きを揃えることにより、上記説明のいくつかの付加的な効果が得られる。但し、印刷処理枚数が少ない場合など印刷ペースト2の偏りが問題とならない場合や、逆に補助スクレッパ6によるスクリーン版3上の印刷ペースト2の偏りまでを考慮する場合には、偏りを補正する為に、適宜メインスクレッパ5とスキージ7の向きを傾けたり移動方向を傾けたりするなど、必ずしも本実施の形態1と同じでなくとも良く、これら付加的な効果を除く実施の形態1の効果は得ることができる。
【0022】
また、本実施の形態1においては、メインスクレッパ5の動作方向と補助スクレッパ6の動作方向が垂直な場合を例に取って説明を行ったが、本発明はこれに限られない。つまり、メインスクレッパ5のコート動作方向に対して、補助スクレッパ6の補助コート動作方向が平行でなく角度を有していれば、二方向に延在する開口パターン4を有するスクリーン版3に対して、メインスクレッパ5のコート動作方向と補助スクレッパ6の補助コート動作方向の何れかが、開口パターン4の延在方向と平行に近い角度でコート動作或いは補助コート動作を行うことができる。従って、ボイド9発生のし難いコート動作或いは発生したボイド9の修復効果の高い補助コート動作を行うことができるなど、互いに補い合う効果が得られ、結果的にボイド9発生の防止効果が得られる。また、以上の効果は形成する印刷パターンの延在方向が少なくとも二方向、即ち複数の方向であれば同様の効果を有する。なお、本発明の効果が得られる為の装置構成として、被印刷物とスクリーン版3が印刷動作時において近接して対向配置できるのであれば、必ずしも被印刷物を保持するステージ8は必要ではなく、適宜省略や代替が可能である。
【0023】
また、実施の形態1において説明したとおり、補助スクレッパ6の動作によってスクリーン版3上の印刷ペースト2に偏りが発生することから、補助スクレッパ6の補助コート動作について、動作方向が逆方向に交互に切り替わる往復動作とすると良い。以下において、実施の形態1の変形例として、往復動作する補助スクレッパを備えたスクリーン印刷装置について図6を用いて説明する。図6(a)は、実施の形態1で説明した補助スクレッパ6をそのまま往復動作させる第一の変形例、図6(b)は、補助スクレッパ6に加えて、逆方向に動作する別の補助スクレッパ6aを有する第二の変形例である。図は何れも装置上部側から見た平面図で示している。
【0024】
第一の変形例においては、図6(a)に示す様に、実線で図示される様に、補助スクレッパ6の補助コート動作方向CT2が図中(−Y)方向となる場合と、点線で図示される様に、補助スクレッパ6の補助コート動作方向CT2が図中(+Y)方向となる場合とを有する。即ち、補助スクレッパ6は補助コート動作について、動作方向が逆方向に交互に切り替わり往復動作される。これによって、補助スクレッパ6の動作によって発生するスクリーン版3上の印刷ペースト2の偏りを防止し、より均一に広げられた印刷ペースト2を得ることができる。更に、偏りにより、印刷に利用されずにスクリーン版3上に残り廃棄されてしまう印刷ペースト2も無くなることから、印刷ペースト2が無駄無く有効利用される。また、メインスクレッパ5による一回のコート動作に対して、図中(−Y)方向および図中(+Y)方向の何れかの補助コート動作を交互に一回行い、メインスクレッパ5による二回のコート動作に対して、補助スクレッパ6が一往復される様にしても良いし、メインスクレッパ5による一回のコート動作に対して、補助スクレッパ6が一往復される様にしても良い。何れの場合においても、実施の形態1と同様にメインスクレッパ5による一回のコート動作に対して、補助スクレッパ6の補助コート動作が行われた後、一回のスキージ7の印刷動作が行われる。また、後者の方法を用いた場合、開口パターン4の端部に発生するボイド9の防止に効果的である。これは、実施の形態1において、図5を用いて説明したように、開口パターン4内部に発生するボイド9を修復するには、補助スクレッパ6がボイド9部に差し掛かる前に開口パターン4部をある程度の区間移動する必要がある。従って、たとえ開口パターン4の延在方向に沿って補助スクレッパ6を動作したとしても、動作方向手前側の開口パターン4の端部に発生するボイド9に対しては、必要な開口パターン4部での移動区間を取ることが出来ない。これに対して、メインスクレッパ5による一回のコート動作に対して、補助スクレッパ6を一往復させる場合には、一往復の何れかの方向への補助コート動作により、端部に発生するボイド9に対しても、必要な開口パターン4部での移動区間を取ることができる。つまり、端部に発生するボイド9を修復することができる。また、補助スクレッパ6の往復動作は本変形例の様に往復動作による補助コート動作を行わなくとも、補助スクレッパ6が定位置に戻る場合には必要となることから、必要な動作時間を大きく増加することなく、上記の往復動作する補助コート動作による効果を得ることができる。
【0025】
第二の変形例においては、図6(b)に示す様に、補助コート動作方向CT2が図中(−Y)方向となる第一の補助スクレッパである補助スクレッパ6と、補助コート動作方向CT2が図中(+Y)方向、即ち、補助スクレッパ6の補助コート動作方向と逆方向の移動となる第二の補助スクレッパである補助スクレッパ6aの二本の補助スクレッパを有し、補助スクレッパ6と補助スクレッパ6aの両者の補助コート動作を併せて一回の往復動作が行われる。これによって、第一の変形例と同様に、補助スクレッパ6の動作によって発生するスクリーン版3上の印刷ペースト2の偏りを防止し、より均一に広げられた印刷ペースト2を得ることができる。本変形例においても、第一の変形例と同様に、メインスクレッパ5による一回のコート動作に対して、補助スクレッパ6の補助コート動作と補助スクレッパ6aの補助コート動作を交互に一回行っても良いし、メインスクレッパ5による一回のコート動作に対して、補助スクレッパ6と補助スクレッパ6aの両者の補助コート動作を併せて一回の往復動作が行われる様にしても良く、其々、第一の変形例の場合と同様の効果を得ることができる。また、メインスクレッパ5による一回のコート動作に対して、補助コート動作が行われた後、スキージ7による一回の印刷動作が行われる点などは、第一の変形例と同様である。
【0026】
実施の形態2.
実施の形態1においては、一般的な液晶パネルに用いられる枠状シールパターンなど主に二方向に延在する開口パターンに対応して、其々の延在方向に対応して動作するメインスクレッパと補助スクレッパを備えるスクリーン印刷装置について説明を行った。ここでは、例えば三方向に延在する開口パターンによる印刷にも対応できる様に補助スクレッパの補助コート動作方向を平行でない二方向に動作できる様に変形を行った実施の形態2のスクリーン印刷装置について説明を行う。本実施の形態2のスクリーン印刷装置および動作について図7を用いて説明する。図は装置上部側から見た平面図で示している。図7(a)は、本実施の形態2のスクリーン印刷装置での動作中の状態を示すものであるが、本実施の形態2のスクリーン印刷装置においては、五角形を有するような異形の液晶パネルに対応して、三方向に延在する開口パターン4aが形成されているスクリーン版30である点と、更に、三方向に延在する開口パターン4aに対応して、メインスクレッパ5の動作方向を除いた二方向に移動可能な補助スクレッパ6bを備えている点が異なる。
【0027】
本実施の形態2のスクリーン印刷装置の動作としては、先ず、実施の形態1と同様にメインスクレッパ5が図7(a)の図中(+X)方向、即ち、三方向に延在する開口パターン4aの第一番目の延在方向と平行な方向に、スクリーン版3の表面と所定の間隔に保ちながら移動することにより、スクリーン版30上に印刷ペースト2を塗り広げるコート動作が行われる。続いて、図7(a)に示す様に補助スクレッパ6aが、実施の形態1と同様に図中(−Y)方向、即ち、三方向に延在する開口パターン4aの第2番目の延在方向と平行な方向である図中矢印CT2の方向に、スクリーン版30上に塗り広げられた印刷ペースト2の表面に接しながら移動する補助コート動作が行われる。続いて、図7(b)に点線で示される補助スクレッパ6bの位置にまで移動された補助スクレッパ6bは、図中回転矢印CWで示される方向に、移動機構と一緒に回転移動され、更に若干量スクリーン版3表面と近接する様に移動され、実線で示される補助スクレッパ6bの位置に配置される。更に、図中矢印CT2で示される方向、即ち、三方向に延在する開口パターン4aの第三番目の延在方向にスクリーン版30上に塗り広げられた印刷ペースト2の表面に接しながら移動する補助コート動作が行われる。
【0028】
また、本実施の形態2においては、三方向に延在する開口パターン4aの第二番目の延在方向に移動する補助スクレッパ6bを回転して、三方向に延在する開口パターン4aの第三番目の延在方向に移動する補助コート動作を行ったが、三方向に延在する開口パターン4aの第二番目の延在方向に移動する補助スクレッパ6bと別に第三番目の延在方向に移動する補助スクレッパを備えても構わない。
【0029】
また、実施の形態2においては、移動機構と共に回転移動され、二方向に移動可能な補助スクレッパ6bを備えるスクリーン印刷装置について説明を行った。この移動機構を回転移動させる方法を応用すれば、メインスクレッパにおいて移動機構を回転移動させ、スクリーン版3の表面との間隔を変え、メインスクレッパによるコート動作の方向と異なる方向に移動させることにより、本発明における補助スクレッパとして機能させる様に変形することも可能である。以下、メインスクレッパに補助スクレッパ機能も代用させ、メインスクレッパと別に設けられる補助スクレッパを省略した変形例について、図8を用いて説明する。図は装置上部側から見た平面図で示している。図8(a)は、本変形例のスクリーン印刷装置でのコート動作中の状態を示すものであるが、本変形例のスクリーン印刷装置においては、実施の形態1や実施の形態2と比べ、メインスクレッパと補助スクレッパの両方の機能を兼ねるメインスクレッパ5aを備えている点が異なる。
【0030】
本変形例のスクリーン印刷装置の動作としては、先ず、実施の形態1と同様にメインスクレッパ5aが図8(a)の図中(+X)方向、即ち、開口パターン4aの第一番目の延在方向と平行な方向に、スクリーン版3の表面と所定の間隔に保ちながら移動することにより、スクリーン版3上に印刷ペースト2を塗り広げるコート動作が行われる。続いて、図8(b)に点線で示されるメインスクレッパ5aの位置にまで移動されたメインスクレッパ5aは、図中回転矢印RCWで示される方向に、移動機構と共に回転移動され、更にメインスクレッパ5aのコート動作時におけるスクリーン版3表面との所定の間隔よりもスクリーン版3表面と近接する様に移動されることにより、図中実線で示される補助スクレッパ6cに変更される。更に、この様にメインスクレッパ5aから変更された補助スクレッパ6cが、図中矢印CT2で示される方向、即ち、開口パターン4aの第二番目の延在方向にスクリーン版3上に塗り広げられた印刷ペースト2の表面に接しながら移動することにより補助コート動作が行われる。
【0031】
以上説明のとおり、本変形例のスクリーン印刷装置においては、補助スクレッパ6cは、スクリーン版3上に印刷ペースト2を塗り広げるコート動作後に、移動方向を異なる角度に回転し、このスクリーン版3上に塗り広げられた印刷ペースト2の表面に接する様にスクリーン版3との間隔を変えることによりメインスクレッパ5aより変更される。従って、メインスクレッパと別に設けられる補助スクレッパを省略することができる。また、実施の形態2と同様に、例えば三方向に延在する開口パターンによる印刷にも対応して、メインスクレッパ5aより変更された補助スクレッパ6cについて、更に移動方向を異なる角度に回転することにより、補助コート動作方向を平行でない二方向に動作できる様に変形を行っても良い。この変形は、メインスクレッパ5aの移動機構を回転させる回転機構を有していることから、動作シーケンスの変更のみで容易に実現可能である。
【0032】
続いて、実施の形態2や上記説明の変形例において説明した移動方向を回転可能な補助スクレッパ6bやメインスクレッパ5aについて説明を補足する。これらスクレッパの移動方向を回転する手段であるスクレッパ移動機構を回転させる具体的機構については、スクレッパを水平移動させる移動機構と移動機構を回転する回転機構を備えれば、どの様な形態であっても良く、公知の移動機構が用いることができる。具体的機構の一例について、図9を用いて簡単に説明を行う。図9(a)および図9(b)は、其々、スクレッパと、スクレッパ移動機構と、スクレッパ移動機構回転機構について示す装置上部側から見た平面図および側面側から見た側面図である。
【0033】
図9(a)および図9(b)において、スクレッパ60は、実施の形態2や上記説明の変形例における移動方向を回転可能な補助スクレッパ6bやメインスクレッパ5aに対応するスクレッパである。図示される様に、スクレッパ60は、スクレッパ移動機構20により水平移動可能であり、スクレッパ移動機構20は、具体的には、フレーム21と、ボールネジ22、フレーム21にボールネジ22を回転可能に保持する軸受けとボールネジ22を回転させる回転モータよりなるボールネジ回転機構23と、スクレッパ60をボールネジ22に取り付け、ボールネジ22の回転によりスクレッパ60を水平移動するスクレッパ保持部24よりなる。なお、スクレッパ移動機構20としては、本実施形態の様に、ボールネジのほか、水平ギヤなどを使っても良く、その他、水平移動可能な機構であれば、どの様な構成であっても良い。更に、スクレッパ移動機構20は、移動機構を回転する回転機構10により保持される。回転機構10は、具体的にはスクレッパ移動機構20を回転可能に保持する取り付け軸11と取り付け軸11を介してスクレッパ移動機構20を回転させる回転モータ12とからなる。更に、補助コート動作前にはスクリーン版3表面とスクレッパとの間隔を変更する必要があるので、回転機構10を上下方向に動作させる移動機構を備えると良い。
【0034】
これら、スクレッパ移動機構20と、スクレッパ移動機構20を回転する回転機構10の動作としては、ボールネジ回転機構23によりボールネジ22を回転させることにより、スクレッパ60は図中矢印CTの方向にコート動作あるいは補助コート動作することが可能である。更に、ボールネジ回転機構23により、スクレッパ移動機構20が図中の回転軸Z−Zに対し矢印CWの方向に回転することが可能である。この様にして、スクレッパ60のコート動作あるいは補助コート動作の方向を任意の方向(角度)に変更することが可能である。また、回転機構10の回転中心は、スクリーン版の中央付近に配置すると良い。
【0035】
実施の形態1、実施の形態2およびこれらの変形例においては、複数の方向に延在するシールパターンを形成する必要のある液晶パネルにおけるシール材形成工程に用いるスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を例にとって説明したが、あくまでも例示的なものであり、複数の方向に延在するシールパターンを形成する必要のある工程を有していれば、例えば、電子ペーパーや有機EL表示装置など、液晶パネル以外の表示装置にシール材を形成する工程に用いるスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法でも良く、同様の効果が得られる。更に、同様に複数の方向に延在するシールパターンを形成する必要のある工程を有していれば、表示装置の製造工程に限らずスクリーン印刷に用いられるあらゆる被印刷物を対象とするスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に適用することも可能である。また、印刷ペーストに関しても、シール材に限定されず、スクリーン印刷に用いられるあらゆる印刷ペーストに適用できる。
【0036】
実施の形態3.
続いて、本発明を液晶パネルの製造方法に適用した実施形態である実施の形態3について説明を行う。まず、本実施の形態3の液晶パネルの製造方法により製造される液晶パネルの構成について図10を用いて説明する。なお、ここでは、一例としてTFT(hin ilm ransistor)方式の液晶パネルについて説明する。この液晶パネル200は、図に示される様に、スイッチング素子基板210、カラーフィルタ基板220、およびスイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220との間に充填された液晶230から構成されている。
【0037】
上述のスイッチング素子基板210は、ガラス基板211の一方の面に液晶230を配向させる配向膜212、配向膜212の下部に設けられ液晶230を駆動する電圧を印加する画素電極213、画素電極213に電圧を供給するTFTなどのスイッチング素子214、スイッチング素子214を覆う絶縁膜215、スイッチング素子214に供給される信号を外部から受け入れる端子216、端子216から入力された信号を対向電極へ伝達するためのトランスファ電極217等を有している。また、ガラス基板211の他方の面には偏光板231を有している。一方、上述のカラーフィルタ基板220は、ガラス基板221の一方の面に液晶230を配向させる配向膜222、配向膜222の下部に配置され、スイッチング素子基板210上の画素電極213との間に電界を生じ液晶230を駆動する共通電極223、共通電極223下部に設けられるカラーフィルタ224および遮光層225等を有している。また、ガラス基板221の他方の面には偏光板232を有している。
【0038】
また、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220はシールパターン233を介して貼り合わされている。更にトランスファ電極217と共通電極223は、トランスファ材234により電気的に接続されており、端子216から入力された信号が共通電極223に伝達される。この他に、液晶パネル200は駆動信号を発生する制御基板235、制御基板235を端子216に電気的に接続するFFC(lexible lat able)236、光源となるバックライトユニット(図示せず)等を備えている。
【0039】
この液晶パネル200は次の様に動作する。例えば、制御基板235から電気信号が入力されると、画素電極213および共通電極223に駆動電圧が加わり、駆動電圧に合わせて液晶230の分子の方向が変わる。そして、バックライトユニットの発する光がスイッチング素子基板210、液晶230およびカラーフィルタ基板220を介して外部へ透過あるいは遮断されることにより、液晶パネル200に映像等が表示される。
【0040】
なお、この液晶パネル200は一例であり他の構成でも良い。液晶パネル200の動作モードは、TN(wisted ematic)モードや、STN(upper wisted ematic)モード、強誘電性液晶モード等でも良く、駆動方法は、単純マトリックスやアクティブマトリックス等でも良い。また、画素電極213を透過電極とする透過型液晶パネルに限られず、画素電極213を反射電極とする反射型液晶パネルや、反射電極と透過電極の双方とする半透過型液晶パネルでも良い。更にカラーフィルタ基板220に設けた共通電極223をスイッチング素子基板210側に設置して、画素電極213との間に基板面に対して横方向に電界をかけ液晶230を動作させる横電界方式を用いた液晶パネルでも良い。
【0041】
次に、本実施の形態3の液晶パネルの製造方法について説明する。スイッチング素子基板210およびカラーフィルタ基板220の製造方法については一般的な方法を用いても良いため、簡単に説明する。スイッチング素子基板210は、ガラス基板211の一方の面に、成膜、フォトリソグラフィー法によるパターンニング、エッチング等のパターン形成工程を繰り返し用いてスイッチング素子214や画素電極213、端子216、トランスファ電極217を形成することにより製造される。また、カラーフィルタ基板220は、同様に、ガラス基板221の一方の面に、カラーフィルタ224や共通電極223を形成することにより製造される。また、一対のスイッチング素子基板210およびカラーフィルタ基板220から多数の液晶パネル200が効率良く製造できる様に、ガラス基板211、221の短辺および長辺と平行に液晶パネルの面付けが並ぶ様に規則正しく整列して配置されている。
【0042】
続いて、本実施の形態3において特徴的な組み立て工程について図11に示すフローチャートにしたがって説明する。まず、基板洗浄工程において、画素電極213が形成されているスイッチング素子基板210を洗浄する(S1)。次に、配向膜材料塗布工程において、スイッチング素子基板210の一方の面に、配向膜材料を塗布形成する(S2)。この工程は、例えば、印刷法により有機膜からなる配向膜材料を塗布し、ホットプレートなどにより焼成処理し乾燥させる。その後、ラビング工程において配向膜材料にラビングを行い、配向膜材料表面を配向処理し配向膜212とする(S3)。また、S1からS3と同様に、共通電極223が形成されているカラーフィルタ基板220についても、洗浄、配向膜材料の塗布、ラビングを行うことにより配向膜222を形成する。
【0043】
続いて、シール材塗布工程において、実施の形態1で説明したスクリーン印刷装置により、シール材を印刷ペーストとして、スイッチング素子基板210あるいはカラーフィルタ基板220の一方の面にシール材の塗布を行いシールパターン233を形成する(S4)。この工程では、ガラス基板211あるいはガラス基板221の短辺および長辺と平行に規則正しく配置された液晶パネルの面付けに対応して、液晶パネルの周辺に配置されるシールパターン233も短辺および長辺と平行に規則正しく整列して形成する。従って、形成するシールパターン233に対応して、実施の形態1において図1を用いて説明したとおり、スクリーン版に形成する枠状の開口パターンについても、マトリクス状に、規則正しく整列して配置する。また、実施の形態1において説明した基板1の代わりにガラス基板211あるいはガラス基板221を被印刷物として印刷を行う。その他、具体的なスクリーン印刷装置による印刷処理については、実施の形態1で説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【0044】
次に、トランスファ材塗布工程において、スイッチング素子基板210あるいはカラーフィルタ基板220の一方の面にトランスファ材234の塗布処理を行う(S5)。そして、スペーサ散布工程において、スイッチング素子基板210あるいはカラーフィルタ基板220の一方の面にスペーサを散布する(S6)。この工程は、例えば、湿式法や乾式法によりスペーサを分散させることにより行われる。なお、スペーサとして有機樹脂膜をパターニングして形成された柱状のスペーサを用いる場合には、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220の何れかの上に組み立て工程前に形成しておくことが望ましく、その場合においては、このスペーサ散布工程は省略可能である。その後、貼り合わせ工程において、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220を貼り合わせる(S7)。続いて、シール硬化工程において、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220を貼り合わせた状態で、シールパターン233を完全に硬化させる(S8)。この工程は、例えば、シールパターン233の材質に合わせて熱を加えることや、紫外線を照射することにより行われる。次に、セル分断工程において、貼り合わせた基板を多数の個別セルに分解する(S9)。そして、液晶注入工程において、個々のセルに対して液晶注入口から液晶を注入する(S10)。この工程は、例えば、液晶230を液晶注入口から真空注入により充填することにより行われる。更に、封止工程において、液晶注入口を封止する(S11)。この工程は、例えば、光硬化型樹脂で封じ、光を照射することにより行われる。
【0045】
以上のS7〜S11の貼り合わせから液晶封止までの工程については、通常の真空中において注入口から液晶を注入する真空注入法を一例として説明した。しかし、別の液晶注入方法として、注入口の無いシールパターン233の形状とし、液晶230をスイッチング素子基板210或いはカラーフィルタ基板220の上に液滴状態で滴下して形成し、この滴下した液晶230を挟む様にスイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220を貼り合わせた後にシールパターン233を硬化させる方法、所謂、液晶滴下(ODF)法を用いてもかまわない。最後に、偏光板貼り付け工程において、セルに偏光板231、232を貼り付け(S12)、制御基板実装工程において、制御基板235を実装する(S13)ことによって、液晶パネル200が完成する。
【0046】
以上説明した実施の形態3の液晶パネルの製造方法においては、上述の通り、シール材塗布工程において、実施の形態1で説明したメインスクレッパのコート動作方向に対して平行でなく角度を有した方向に補助コート動作を行う補助スクレッパを有するスクリーン印刷装置を用い、更に、メインスクレッパのコート動作方向と補助スクレッパの補助コート動作方向を、基板上に規則正しく整列して配置される複数面の液晶パネルにおける枠状のシールパターン233の延在する二方向に其々一致して、シールパターン233を形成することにより、シール材が無い部分であるボイドを起因とするシールパターン形状の不安定を発生することがなく、安定したシールパターン233形成が可能となる。その結果、液晶パネル200の製造工程におけるシールパターン形状不良を起因とする不良品発生による歩留りの低下や、製造される液晶パネル200におけるシールパターン形状が細線化することによる信頼性の低下などを防止することができる。従って、不良品となり工程内で脱落される基板を削減できることから、原材料費の削減につながる。更に不良品の代替品を再度作りなおす無用な処理の削減を実現できることから製造にかかるエネルギー消費量の削減につながる。
【0047】
また、本実施の形態3においては、実施の形態1のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法をシール塗布工程に用いた液晶表示パネルの製造方法について説明した。然しながら実施の形態1のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に代えて、実施の形態1の変形例や実施の形態2および実施の形態2の変形例において説明したスクリーン印刷装置を用いた場合においても本実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【0048】
本実施の形態3においては、実施の形態1、実施の形態2およびこれらの変形例にかかるスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を、複数の方向に延在するシールパターンを形成する必要のある液晶パネルにおけるシール材形成工程に用いた液晶パネルの製造方法を例として説明したが、あくまでも例示的なものであり、複数の方向に延在するシールパターンを形成する必要のある工程を有していれば、例えば、電子ペーパーや有機EL表示装置など、液晶パネル以外の表示装置にシール材を形成する工程に用いても良く、本実施の形態3と同様の効果が得られる。更に、同様に複数の方向に延在するシールパターンを形成する必要のある工程を有していれば、表示装置の製造工程に限らずスクリーン印刷を用いるあらゆる製品の製造工程に適用することが可能である。また、印刷ペーストに関しても、シール材に限定されず、スクリーン印刷を用い形成可能なあらゆる材料に適用でき、これら材料を用いた複数の方向に延在する印刷パターンを形成するスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に適用できる。
【0049】
以上の説明は、本発明の実施の形態を説明するものであり、本発明が以上の実施の形態に限定されるものではない。また、当業者であれば、以上の実施の形態の各要素に対して、本発明の効果の得られる範囲において、容易に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 基板、2 印刷ペースト、3 スクリーン版、4 開口パターン、
5、5a メインスクレッパ、6、6a、6b、6c 補助スクレッパ、
7 スキージ、200 液晶パネル、233 シールパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物上に対向配置され、複数の方向に延在する開口パターンを有するスクリーン版と、前記スクリーン版の表面に沿った第一の方向に移動して、印刷ペーストを前記スクリーン版上に塗り広げるコート動作を行うメインスクレッパと、前記メインスクレッパにより前記スクリーン版上に塗り広げられた印刷ペーストの表面に接しながら、前記メインスクレッパの移動するコート動作方向に対して平行でなく角度を有した方向に移動し、前記メインスクレッパによるコート動作を補助する補助コート動作を行う補助スクレッパと、
前記スクリーン版の表面に沿った印刷方向に移動して、前記スクリーン版上に塗り広げられた印刷ペーストを前記開口パターンを介し前記被印刷物表面に印刷するスキージとを備えたことを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項2】
メインスクレッパの移動するコート動作方向とスキージの移動する印刷方向が平行な逆方向であることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
メインスクレッパの移動するコート動作方向および補助スクレッパの移動する補助コート動作方向が、開口パターンの延在する複数の方向と其々平行となることを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】
補助スクレッパは、動作方向が逆方向に交互に切り替わる往復動作により補助コート動作されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項5】
メインスクレッパの一回のコート動作に対し、補助スクレッパが一回の往復動作により補助コート動作されることを特徴とする請求項4に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項6】
補助スクレッパは、第一の補助スクレッパと、前記第一の補助スクレッパの補助コート動作方向と逆方向の移動による補助コート動作を行う第二の補助スクレッパよりなり、両者の補助コート動作を併せて一回の往復動作が行われることを特徴とする請求項4或いは請求項5に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項7】
補助スクレッパは、メインスクレッパの移動するコート動作方向に対して平行でなく複数の異なる角度を有した方向に移動する補助コート動作を行うこと特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項8】
補助スクレッパは、移動方向を異なる角度に回転可能な一つのスクレッパよりなることで、メインスクレッパの移動するコート動作方向に対して平行でなく複数の異なる角度を有した方向に移動する補助コート動作を行うこと特徴とする請求項7に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項9】
補助スクレッパは、異なる角度の移動方向を有する複数の補助スクレッパよりなることで、メインスクレッパの移動するコート動作方向に対して平行でなく複数の異なる角度を有した方向に移動する補助コート動作を行うこと特徴とする請求項7に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項10】
一つの補助スクレッパは、スクリーン版上に印刷ペーストを塗り広げた後、移動方向を異なる角度に回転し、前記スクリーン版上に塗り広げられた印刷ペーストの表面に接する様にスクリーン版との間隔を変えたメインスクレッパよりなること特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項11】
複数の方向に延在する開口パターンを有するスクリーン版を被印刷物上に対向配置する工程と、前記スクリーン版の表面に沿った第一の方向にメインスクレッパを移動して、印刷ペーストを前記スクリーン版上に塗り広げるコート動作を行う工程と、前記メインスクレッパにより前記スクリーン版上に塗り広げられた印刷ペーストの表面に接しながら、前記メインスクレッパの移動するコート動作方向に対して平行でなく角度を有した方向に補助スクレッパを移動し、前記メインスクレッパによるコート動作を補助する補助コート動作を行う工程と、前記スクリーン版の表面に沿った印刷方向にスキージを移動して、前記スクリーン版上に塗り広げられた印刷ペーストを前記開口パターンを介し前記被印刷物表面に印刷する工程とを備えたことを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項12】
複数の方向に延在する開口パターンが液晶パネルの液晶を封止する枠状シールパターンに対応して該枠状シールパターンが全て特定の二方向に延在する様に配列された開口パターンである請求項11のスクリーン印刷方法により、前記枠状シールパターンを形成する工程を含むことを特徴とする液晶パネルの製造方法。
【請求項13】
メインスクレッパの移動するコート動作方向および補助スクレッパの移動する補助コート動作方向が、開口パターンの延在する特定の二方向と其々平行となることを特徴とする請求項12に記載の液晶パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−88403(P2011−88403A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245408(P2009−245408)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】