説明

スクリーン及び投射システム

【課題】局所的なゲインの低下を抑制して、面内での輝度ムラの低減されたスクリーン及び当該スクリーンを用いた投射システムを提供すること。
【解決手段】光制御層3の第1部分3Lと第2部分3Rとが、入射光PLの角度範囲の基準となる基準方向SDに対応して、互いに異なる方向でかつ入射光の光源に近い側から遠い側に向けて広がるようにそれぞれ傾いている第1方向D1と第2方向D2とをそれぞれ制御方向としている。これにより、光制御層3は、第1部分3Lと第2部分3Rとにおいて、入射光PLの入射時に入射光PLを拡散させることなく直進透過させて光反射層2に向かわせることができ、光反射層2は、入射した光を所望の角度で反射させることが可能となる。従って、本スクリーン10は、ゲインの低下を抑制して、輝度ムラの低減されたものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方のプロジェクター等の画像投射装置からの投射光を反射して投影画像を映し出すスクリーン及び当該スクリーンを用いた投射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター等からの投射光を反射することで投影画像を映し出すスクリーンとして、所定範囲内の角度領域から入射した光を散乱又は拡散透過させ、かつ、所定範囲外の角度領域から入射した光を直進透過させる光制御機能を有する特殊な構造の高分子膜からなる光制御層を備えるものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
例えば、上記特許文献1のような光制御層を用いて、プロジェクター等からスクリーンに入射した入射光を制御するにあたって、入射時には光制御層を直進透過させ、当該入射光を所望の角度で反射させ、反射後の射出時には光制御層を拡散透過させるように制御することで、光を拡散させつつもより確実に観察者側に反射させることが考えられる。しかしながら、例えば近接投射のように角度のついた状態で投射を行う場合、スクリーン上の入射位置によって各入射光間の入射角の差が大きくなるため、当該入射光の中には光制御層に対して拡散透過する想定外の入射角となるものが生じてしまう。これにより、ねらい通りに入射光を反射させることができず、視野外へ向かってしまう成分が生じる領域が、スクリーン上に局所的にできてしまう可能性がある。この場合、当該領域でゲインが低下することで、スクリーン面全体として輝度ムラが生じることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−69836号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、局所的なゲインの低下を抑制して、輝度ムラの低減された画像を投影可能なスクリーン及び当該スクリーンを用いた投射システムを提供することを目的とする。
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るスクリーンは、(a)基板と、(b)基板の主面上に配列されるように形成され当該配列される方向について断面鋸歯状である複数のプリズム部分と、複数のプリズム部分の表面部分にそれぞれ形成され入射した光を反射する複数の光反射部とを有する光反射層と、(c)光反射層の表面側に形成され、基板の主面に平行な方向のうち所定の制御方向において基板の主面に対する傾きが所定範囲内にある第1の角度領域から入射した光を拡散透過させ、かつ、所定範囲外にある第2の角度領域から入射した光を直進透過させる光制御層と、を備えるスクリーンであって、(d)光制御層が、第1部分と第2部分とを有し、第1部分では、所定の制御方向が第1方向に設定されており、第2部分では、所定の制御方向が第1方向と異なる第2方向に設定されている。
【0007】
上記スクリーンでは、光制御層の第1部分と第2部分とにおいて、制御方向が、入射光の角度に対応して、互いに異なる方向にそれぞれ傾いている第1方向と第2方向となっている。これにより、光制御層は、第1部分と第2部分とにおいて、入射光を第1の角度領域の外側から入射させ、拡散させることなく直進透過させて光反射層に向かわせることができ、光反射層において入射した光を所望の角度で反射させることが可能となる。従って、本スクリーンは、ゲインの低下を抑制して、表示される面内での輝度ムラの低減された画像を映し出せるものとなる。特に、比較的入射角が大きくなりやすい近接した投射にスクリーンを用いる場合に、入射光を第1の角度領域の外側から入射させ、拡散させることなく直進透過させて光反射層に向かわせることで、入射光を適切に反射及び拡散させることができる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、光制御層において、第1部分に設定された第1方向と第2部分に設定された第2方向とが、入射光の光源に対応し基板の主面に平行な基準方向に対して、入射光の光源に近い側から遠い側に向けて広がるようにそれぞれ傾いている。この場合、入射光の入射の標準的な方位を表す基準方向に合わせて、入射光が上記第1の角度領域になるように、第1及び第2方向を最適なものとすることができる。
【0009】
本発明の別の側面では、光制御層は、第1部分と第2部分との間に配置されるとともに所定の制御方向が基準方向に平行な第3方向に設定されている第3部分を有する。この場合、より細かい区分で制御方向の調整を行うことができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、基板における基準方向が、入射光のうち基板の中心部分を通る基準光の光路を基板の主面に正射影した方向である。この場合、光源から所定の角度範囲で入射する入射光の中心を基準として第1及び第2方向を定めることができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、基板の対称性に関する中心軸が、基準方向に対して平行である。この場合、基板の中心軸を基準として対称性のある光の拡散及び反射の制御を行うことができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、光制御層において、第1部分と第2部分とが、中心軸に対して軸対称に配置されている。この場合、第1部分と第2部分とで対称性を持たせた光の拡散及び反射の制御ができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、光制御層において、第1部分が、基板の長手方向についての一端側で、かつ、入射光の光源に最も近い側を含み、第2部分が、長手方向についての一端側と反対の他端側で、かつ、入射光の光源に最も近い側を含む。この場合、最も光制御の条件が厳しい光源に最も近い側の領域を基準として光制御を行うことで、スクリーン全体について適切な光の拡散及び反射の制御を行うことができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、光反射層において、複数のプリズム部分が、所定の角度範囲で入射する入射光に対応して同心円弧状に配列される。この場合、スクリーンの中央だけでなく大きく外れた周辺でも入射光を傾きが少ない正面側に折り返すことが可能になる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、光反射層において、複数の光反射部の各反射面が、光制御層を経た入射光を折り返すことで得られる反射光の傾きを光制御層に対して第1の角度領域内にするように傾いている。この場合、各反射面において折り返され光制御層に向かう反射光が、光制御層に対して第1の角度領域内の角度となるので、光制御層において確実に拡散されて射出される。
【0016】
上記課題を解決するため、本発明に係る投射システムは、(a)上記いずれかに記載の
スクリーンと、(b)投影画像となる入射光をスクリーン上に向けて所定の角度範囲で投射する画像投射装置と、を備える。この投射システムは、上記いずれかに記載のスクリーンに画像投射装置からの投射光を投射することにより、局所的なゲインの低下を抑制して、面内での輝度ムラの低減された画像を映し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係るスクリーン及び投射システムを示す図である。
【図2】スクリーンの構造を説明するための側断面図である。
【図3】スクリーンの光制御層について説明するための図である。
【図4】スクリーンの光反射層について説明するための図である。
【図5】スクリーンの動作の概要について説明するための図である。
【図6】スクリーンによる投射光の拡散について説明するための一部拡大図である。
【図7】(A)〜(E)は、入射光の入射角と光制御層における直進透過及び拡散透過との関係について説明するための図である。
【図8】(A)〜(D)は、光制御層の制御方向と入射光の入射角との関係について説明するための図である。
【図9】第2実施形態に係るスクリーンの構造を説明するための正面図である。
【図10】第3実施形態に係るスクリーンの構造を説明するための側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るスクリーン及びスクリーンを含む投射システムについて説明する。
【0019】
〔A.投射システムの構造〕
図1に示すように、本実施形態の投射システム100は、スクリーン10と、プロジェクター50とを備える。
【0020】
プロジェクター50は、室内の天井に天吊り支持された状態でスクリーン10に近接して設置されている。つまり、プロジェクター50による投射は、上側からの近接投射すなわち−Y方向に偏った−Z方向への極端な斜め投射となっている。
【0021】
スクリーン10は、図1から図4に示すように、図中水平方向すなわちX方向を長手方向とし、垂直方向すなわちY方向を短手方向とする横長の長方形状を有する。スクリーン10は、その正面側すなわち略+Z側に設置されたプロジェクター50からの入射光PLを、折り返すことによって正面側すなわち略+Z側に反射光として射出させる反射型スクリーンである。より具体的には、プロジェクター50から斜め下方に射出される入射光PLが、スクリーン10のXY面に平行な主面1aに向けて投射され、主面1a上に設けたフレネル形状を有する微細構造によって、正面側に反射されることで、略+Z側にいる観察者EYに投影画像が提供される。なお、図1等に示すように、近接投射であることから、入射光PLの入射角ξは、ある程度の角度範囲をもった状態となっている。また、図中において、主面1aの法線方向(Z方向)については、法線ZXにより示すものとし、入射光PLの入射角ξは、法線ZXに対する角度で規定される。
【0022】
図3及び図4に示すように、プロジェクター50からの投射光であるスクリーン10への入射光PLは、プロジェクター50の投射点SSからスクリーン10の主面1aの中央を通ってY方向に延びスクリーン10を対称に2分する中心線である中心軸LXを基準としてX方向について対称な状態で投射されている。見方を変えると、入射光PLの投射点SSは、プロジェクター50のレンズから主面1aに対して下した垂線が中心軸LXと交差する位置にあり、入射光PLは、スクリーン10の中心軸LX上のスクリーン中心点Oを基本として、スクリーン10に投影される範囲に応じた特定の角度範囲で入射するものとなっている。なお、スクリーン中心点Oは、主面1a上の点であり、Y方向に延びる中心軸LXとX方向に延びる軸MXとの交点である。つまり、基板1の中心部分である。
【0023】
ここで、図1に示すように、角度範囲をもって入射する入射光PLのうち、スクリーン中心点Oに向かう成分を基準光PLcとする、この基準光PLcの光路方向を、基準入射方向SIとし、さらに、基準入射方向SIを基板1の主面1aに正射影した方向を、入射光PLのスクリーン10における入射方向の基準となる基準方向SDとする。この場合、基準方向SDは、入射光PLの光源の基準となる点である投射点SSに対応し、また、主面1aに平行であり、特に、中心軸LXに平行な方向すなわちY方向となっている。また、プロジェクター50による投射は上方からの近接投射であるため、プロジェクター50からスクリーン10の各点に入射する入射光PLの入射角ξの大きさは、スクリーン10の上方側すなわちプロジェクター50の光源側に近づくほど小さくなる。
【0024】
〔B.スクリーンの構造〕
以下、図2等を参照して、スクリーン10の構造の詳細について説明する。まず、図2〜図4に示すように、スクリーン10は、横長の長方形状の外観を構成するシート状の基板1を備える。さらに、図2に示すように、スクリーン10は、基板1の表面側に形成される光反射層2と、光反射層2の表面側に形成される光制御層3と、光制御層3の表面側を覆う保護層20とを備える。また、図3に示すように、光制御層3は、右半分すなわち−X側を占める第1部分3Lと+X側を占める第2部分3Rとを有する。
【0025】
基板1は、+Z側の面としてスクリーン10の基準面となる主面1aを有する。この主面1aは、XY面に平行で、スクリーン10への入射光PLの入射や反射の基準となる表示平面となっている。なお、基板1は、例えば光吸収性の樹脂材料で作製されており、可撓性を有する。
【0026】
光反射層2は、基板1の主面1a上に形成される複数のプリズム部分2aと、複数のプリズム部分2aの表面部分にそれぞれ形成される複数の光反射部PPと、入射した光を吸収するための光吸収部ASと、これらを保護するとともに光反射層2の表面2cを形成する平準化層2bとを有する。光反射層2の表面2cは、XY面に平行な表示平面としての主面1aに平行な面となっている。
【0027】
複数のプリズム部分2aは、図4等に示すように、同心円弧状に隙間なく配列されたフレネル形状を形成している。ここで、図2に示すように、当該同心円弧状の中心CFは、主面1aを周囲に延長した平面H1上にあり、入射光PLの投射点SSに対応して、スクリーン10の中心線である中心軸LX上に設定されている。つまり、投射点SSから表示平面である主面1aに対して垂直に下ろした線L1と平面H1との交点を交点SXとすると、中心CFと交点SXとは、ともに中心軸LX上に配置されている。
【0028】
また、光反射層2のうち、例えば図5に示すスクリーン10の中央部分において、隙間なく配列された各プリズム部分2aの表面部分は、主面1aよりも上方すなわち+Y方向に傾いている面である第1傾斜面S1と、主面1aよりも下方すなわち−Y方向に向けて傾いた面である第2傾斜面S2とで形成されている。各プリズム部分2aが連続することで、各傾斜面S1,S2が交互に連なった状態となっている。これにより、複数のプリズム部分2aは、スクリーン10の中央部分での配列方向であるY方向について上端から下端までの全体として、断面鋸歯状となっている。さらに、プリズム部分2aは、中心CFを基準として同心円弧状に配列されているため、中心CFを通る他の断面についても同様の形状を有している。つまり、複数のプリズム部分2aは、スクリーン10全体に亘って断面鋸歯状となっている。両傾斜面S1,S2のうち第1傾斜面S1上にアルミ蒸着等によって反射膜が設けられることで、光反射部PPが形成されている。なお、第2傾斜面S2である光吸収部ASは、入射する不要光を基板1側に通過させる。光吸収部ASを通過した不要光は、基板1で吸収される。これにより、スクリーン10は、コントラスト低下を抑制することができる。光吸収部ASは、例えば黒色塗料の塗布等で形成されるものとでき、この場合、光吸収部AS自体によって入射する不要光を吸収することができる。このほか、例えば各プリズム部分2a及び基板1を光透過性樹脂とし、基板1の裏面側に黒色塗料を塗布するものとしてもよい。
【0029】
光制御層3は、平準化層2bの表面2c上に形成されている。光制御層3は、特殊な高分子膜と透明プラスチック材料とを複合化することで構成され、内部に当該高分子膜と透明プラスチック材料とによる回折格子状の特異的な規則構造を有する。この構造により、光制御層3は、基板1の主面1aに平行な方向のうち所定の方向について光の入射する角度によって光の透過状態を拡散透過させるものとするか直進透過させるものとするかをドラスティックに変化させるという光学特性を有する(詳細については、特許文献1参照)。ここでは、上記のように光制御層3において光制御の基準となる所定の方向を制御方向と呼ぶこととする。光制御層3は、光学特性として以上のような入射角選択性を有することにより、制御方向における入射角が規定の範囲内の角度で入射する光を拡散透過させ、かつ、制御方向における入射角が規定の範囲外の角度で入射する光を直進透過させるものとなっている。なお、光制御層3において、表側すなわち+Z側の表面3bは、表示平面である主面1aに平行な面となっている。
【0030】
ここで、図3に示すように、光制御層3は、中心軸LXより左側すなわち−X側の半分である第1部分3Lと、中心軸LXより右側すなわち+X側の半分である第2部分3Rとで構成されている。このうち、第1部分3Lでは、上述した制御方向が、基準方向SDに対して傾斜角βだけ傾いて、入射光PLの光源である投射点SSに近い側から遠い側に向けて広がる方向である第1方向D1に設定されている。また、第2部分3Rでは、上述した制御方向が、基準方向SDに対して傾斜角βだけ第1方向D1とは逆向きに傾いて、入射光PLの光源である投射点SSに近い側から遠い側に向けて広がる方向である第2方向D2に設定されている。つまり、光制御層3において、中心軸LXを軸として、第1部分3Lと第2部分3Rとが対称に配置され、かつ、各部分3L,3Rにおいて、光を拡散透過させる方向を定める制御方向である第1及び第2方向D1,D2が、Y方向すなわち基準方向SDに対して対称に傾いている。このように、第1部分3Lと第2部分3Rとで制御方向を異なるものとすることで、光制御層3は、基板1の入射位置によって異なる角度で入射する入射光PLの各成分のいずれについても確実に直進透過させるように入射させることを可能にしている。
【0031】
保護層20は、光制御層3の表面3b上すなわち+Z側に形成され、スクリーン10の主要部をなす光反射層2及び光制御層3を保護している。なお、保護層20が不要で省略される場合には、表面3bが、スクリーン10の最表面となる。
【0032】
〔C.スクリーンによる入射光に対する動作〕
以下、図5を用いてスクリーン10による入射光PLに対する動作の概要について説明する。なお、図5は、中心軸LXに沿った断面を示している。
【0033】
まず、スクリーン10の中心軸LX上の位置において、法線ZXに対して+Y側から特定の入射角ξで入射する入射光PLは、保護層20を通過し、さらに光制御層3においても、規定の範囲外の角度で入射する光として拡散されることなく直進透過する。次に、入射光PLは、光反射層2の反射面PSに入射する。ここで、反射面PSは、主面1aに対して、微小な傾斜角度αだけ+Y側を向くように傾いている。これにより、入射光PLは、Y方向についての入射角が変えられた反射光RLとなって光制御層3に向けて折り返される。この反射光RLは、往路の入射光PLとは入射角が異なる状態で光制御層3に入射する。これにより、反射光RLは、所望の範囲内の角度で入射する光として光制御層3を拡散透過する。つまり、反射光RLは、適度に拡散された状態の投影画像光FLとなってスクリーン10から略+Z方向の特定方向を中心として射出される。
【0034】
以下、図6により、スクリーン10のうち光制御層3を中心に上記動作についてより詳しく説明する。ここで、図6は、一例として、スクリーン10の−X側を占める第1部分3Lを第1方向D1に沿った断面の一部分について拡大した図である。つまり、図5の場合と比べて、切断する方向が傾斜角β(図3等参照)の分だけ傾いている。なお、この断面での反射面PSの傾斜角度は、傾斜角度α'であるものとする。
【0035】
まず、光制御層3は、第1の角度領域ωから入射した光を規定の範囲内の角度で入射する光として拡散透過させ、かつ、これ以外の範囲である第2の角度領域ηから入射した光を直進透過させる性質を有する膜で構成されている。ここでは、第1の角度領域ωは、法線ZXの方向を基準の入射角0°として、第1方向D1に関して例えば約30°の角度範囲に亘っており、法線ZXを挟んで法線ZXから上方側すなわち+Y側について角度ωHまでの領域と、法線ZXから下方側すなわち−Y側について角度ωLまでの領域とで構成されているものとする。この場合、角度ωHが上方側についての拡散透過させる範囲の臨界角度を示し、角度ωLが下方側についての拡散透過させる範囲の臨界角度を示すものとなる。なお、ここでは、法線ZXの方向を基準となる入射角0°として角度ωH側を正の角度、角度ωL側を負の角度とし、角度ωHと角度ωLとの大きさは等しい又はほぼ等しいものとする。
【0036】
以上のような光制御層3に対し、入射角ξ(図5等参照)の入射光PLが直進透過するか否かは、入射角ξをYZ面について正射影した成分角ξ'の値が臨界角度ωH,ωLに対して大きいか否かによって定まる。ここでは、図示のように、成分角ξ'は、第1の角度領域ωのうち臨界角度ωHより角度εだけ大きいものとなっている。つまり、成分角ξ'は、角度εの分だけ第1の角度領域ωより外側となっており、第2の角度領域ηの内側の領域に含まれる角度となっている。これにより、入射時における入射光PLは、光制御層3において拡散されることなく直進透過して、光反射層2に向かうものとなる。この場合、入射光PLは、光制御層3の通過後においても拡散していないので、屈折により角度の変化はあっても、角度分布の広がりを持つことなく光反射層2に入射するので、入射光PLの反射面PSでの反射角度は、設計通りの比較的正確なものとなる。光制御層3を経た入射光PLは、光反射層2の反射面PSにおいて、反射面PSにより方向を変えられて光制御層3側に折り返される。この際、反射面PSが表示平面に対して傾斜角度α'だけ傾いている。傾斜角度α'が適宜調整されていることにより、入射光PLを折り返した成分である反射光RLは、法線ZXに対して+Z方向を基準として時計回りの方向に微小な角度γだけ傾いた状態となって光制御層3に入射する。入射角γは、傾斜角度α'の調整によって臨界角度ωHより小さいものになっている。つまり、入射角γは、第1の角度領域ω内の角度となっており、反射光RLは、光制御層3の通過時において拡散透過して正面側に射出される。以上のような動作がスクリーン10上に入射するすべての入射光PLに対してなされることで、例えば図5に示すように、投影画像光FLが、適度に拡散された状態で射出される。
【0037】
〔D.光制御層の制御方向と制御方向に関する入射光の入射角との関係〕
入射光PLが、上述したように、入射時には光制御層3で直進透過され、反射後においては、反射光RLとして拡散作用を受けて投影画像光FLとして射出されるためには、光制御層3において、第1及び第2部分3L,3Rにおける制御方向である第1及び第2方向D1,D2と、第1及び第2方向D1,D2に関する入射光PLの入射角との関係が、適切に定まっていることが、非常に重要となる。
【0038】
本実施形態のように、近接の下方投射の場合においては、例えば図2等に示すように、+Y側すなわち投射点SSに近い側ほど入射角ξの値が小さくなり、光制御層3を直進透過させにくくなる。さらに、スクリーン10の周辺側において入射角ξを射影した成分角の値が小さくなりやすい。具体的には、図3に示す基板1の長手方向(X方向)についての一端側で、かつ、入射光PLの投射点SSに最も近い側である周辺領域DLと、長手方向についての一端側と反対の他端側で、かつ、入射光PLの投射点SSに最も近い側である周辺領域DRとにおいて、入射光PLの正射影成分の角度が最も小さくなりやすい。従って、周辺領域DL,DRに入射する入射光PLにおいて、図6に示したような関係が満たされるように光制御層3での第1及び第2方向D1,D2等が調整されることで、スクリーン10の全体において、入射光PLを所望のように直進・拡散させる制御ができるものにできる。なお、図3の場合、第1部分3Lが周辺領域DLを含み、第2部分3Rが周辺領域DRを含むものとなっている。
【0039】
以下、光制御層3の制御方向である第1及び第2方向D1,D2と第1及び第2方向D1,D2に関する入射光PLの入射角との関係について説明する。なお、第1方向D1と第2方向D2とは、中心軸LXに関して対称であり、説明が同様のものとなるため、以下では、入射光PLと第1方向D1との関係のみについて説明し、入射光PLと第2方向D2との関係については説明を省略する。
【0040】
まず、図7(A)〜7(C)により、入射光PLの入射角の方向の特定について説明する。図7(A)等において、点XOは、図1のスクリーン10上における入射光PLの入射位置を示すものであり、ここでは、光制御層3(図6等参照)との関係を説明するために概念的に示している。なお、図7(B)は、図7(A)において、視点E1から方向R1すなわちZ方向について点XOに向かう入射光PLを観察した様子を示しており、図7(C)は、図7(A)において、視点E2から方向R2すなわちXY面に平行で直線cdに垂直な方向について点XOに向かう入射光PLを観察した様子を示している。ここでは、図7(A)〜7(C)に示すように、入射光PLとZ軸とのなす角を入射光PLの極角φとし、入射光PLをXY面について射影して得られる直線cdとY軸とのなす角を入射光PLの方位角θとしており、これらを極座標として捉えている。つまり、この場合の入射光PLの光制御層3に対する入射方向すなわち入射角は、これら極角φと方位角θとによって定まる。
【0041】
次に、図7(D)及び7(E)により、入射光PLの入射角の満たすべき条件について説明する。ここで、図7(D)は、本実施形態での入射光PLと光制御層3(図6等参照)との関係を示す概念図であり、基準軸DXがY軸に対して傾斜角βだけ傾いていることが、図3において制御方向である第1方向D1が基準方向SDに対して傾斜角βだけ傾いていることに相当する。一方、図7(E)は、比較例の図である。図7(E)では、制御方向D1'がY方向に平行であり、基準方向SDに対して傾いていないことに相当する。つまり、図7(D)と図7(E)では、図7(D)の第1方向D1が図7(E)の制御方向D1'の状態から傾斜角βの分だけY方向からX方向に傾けているすなわち傾斜角βだけ回転させていることのみが異なる。また、図7(D)と図7(E)とにおいて、入射光PLの入射角の状態は同じである。なお、図7(D)等においては、半径Rの長さが1である単位球SPを用いて説明することとする。
【0042】
図7(D)において、単位球SP上の円HCと円LCとは、図6における+Y側の臨界角度ωHと−Y側の臨界角度ωLとにそれぞれ対応するものである。つまり、円HC,LC上の任意の点と点XOとを通る直線のXZ面に対する傾き角度が、図6の臨界角度ωH,ωLに等しいものとなっている。従って、点XOに向かう光線のうち、単位球SP上において、円HCと円LCとによって挟まれる帯状の領域BB外を通過して点XOに向かう光線は、臨界角度ωH,ωLより大きい角度で光制御層3に入射するすなわち図6の第2の角度領域ηから入射することに相当するため、光制御層3で直進透過される。一方、領域BB内を通過して点XOに向かう光線は、臨界角度ωH,ωL以内の角度で光制御層3に入射するすなわち図6の第1の角度領域ωから入射することに相当するため、光制御層3で拡散透過される。例えば、図7(D)に示す状態では、点XOに向かう入射光PLは、単位球SP上において、領域BB外の点Pを通過するものとなっている。この場合、入射光PLは、図6の光制御層3で直進透過されることになる。一方、図7(E)に示す状態では、図7(D)のときとは領域BBが変わるため、点XOに向かう入射光PLの単位球SP上の通過点である点Pは、領域BB内の点となってしまう。従って、この場合の入射光PLは、図6の光制御層3で拡散透過されることになる。以上のことから、図7(E)のような状態から図7(D)の状態に変更する、すなわち光制御層3の制御方向をY方向に平行な状態から必要な角度傾ける、例えば傾斜角βだけ傾けることで、入射光PLの入射角が同じであっても、光制御層3において拡散透過される状態から直進透過される状態となるように調整することができる。言い換えると、入射光PLの入射角の大きさに応じて光制御層3において制御方向を調整することで入射光PLを入射時に直進透過させることができる。
【0043】
以下、図8(A)〜8(D)により、単位球SPを利用した第1方向D1の傾斜角βと入射光PLとの関係について詳細に説明する。ここで、図中において円HC,LCの外側の円HCa,LCaは、臨界角度ωH,ωLにマージン角度Δω(>0°)を加えた値である角度ωH+Δω,ωL+Δωに対応する単位球SP上の点の集合を示すものである。従って、入射光PLは、円HCa,LCaに対応する角度かそれよりも大きい角度で入射するものとなっていれば、確実に直進透過されるものとなる。ここでは、円HCaに入射光PLが対応するものとなるような条件について考察する。まず、図8(A)に示すように、傾斜角βと方位角θとについて、補正後の方位角を方位角θとすると、

となる。また、図8(A)及び8(B)に示すように、入射光PLの単位球SP上の点P1において、直線cd上でのZ軸からの距離を距離Aとすると、極角φを用いて、

と表される。また、Y軸に対して傾斜角βだけ傾いた直線efの軸方向すなわち基準軸DXの延びる方向は、第1方向D1に平行なものとなっている。点P1の図8(C)において対応する点は、射影点PP1である。この場合、図8(A)及び8(C)に示すように、直線ef上で射影点PP1のZ軸からの距離Bを、

とする。式(3)における角度δが、

となっていれば、上述した所望の条件すなわち円HCaに入射光PLが対応するものになるという条件を満たすことになる。ここで、図8(A)より、点XOを含むXY面で見ると、補正後の方位角θと、距離Aと、距離Bとの関係は、

となっている。以上の式(2)〜(4)を式(5)に適宜代入し変形すると、

が得られる。上記式(6)を(1)に代入すると、

となる。従って、図3に示す光制御層3の第1部分3Lにおいて、最も小さな入射角で入射する入射光PLに対して、入射光PLの極角φ、方位角θの値及び+Y側の臨界角度ωHとマージン角度Δωとに応じて上記式(7)から得られる傾斜角βだけ中心軸LXに対して傾けることで、第1部分3Lに入射するすべての入射光PLを直進透過させることができるものとなる。また、同様に、第2部分3Rにおいても、傾斜角βだけ中心軸LXに対して傾けることで、第2部分3Rに入射するすべての入射光PLを直進透過させることができるものとなる。なお、本実施形態のように、近接下方投射によって画像投影を行う場合、第1部分3L及び第2部分3Rのいずれにおいても、スクリーンSRの周辺側で+Y側すなわち光源SRに近い側の領域DL,DRの入射角の成分が最も小さいものとなりやすい。従って、領域DL,DRでの入射光PLを直進透過させるように、傾斜角βを調整することで、ゲインの低下を抑制し、スクリーン面内での輝度ムラを低減することができるものとなる。なお、以上の場合において、図8(C)が、図6に対応する図である。すなわち、図8(C)の角度δが図6の成分角ξ'に相当し、また、図8(C)のマージン角度Δωが、図6の角度εの最小値に相当するものとなっている。また、図8(D)は、図2又は図5から見たスクリーン10の側面に対応する図である。なお、図8(D)の断面から見た場合における臨界角度ωH,ωLに相当する角度ωH',ωL'は、ωH'<ωL'となっている。
【0044】
ここで、マージン角度Δωの値すなわち角度εの最小値は、5°以上とすることが望ましい。つまり、角度δすなわち成分角ξ'が、第1の角度領域ωの上限である臨界角度ωHの値より5°以上大きいものとなっていれば、第1の角度領域ωの臨界角度ωHに対して十分なマージンを有し、光制御層3への外部からの通過時において、拡散されることなく、確実に直進透過するものとなる。なお、以上は一例であり、マージン角度Δωとして十分な値は、これに限らず、光制御層3として用いる材料・構造等によって異なる。つまり、上述のように、全ての入射光PLを実質的に直進透過させることが確保される範囲において、マージン角度Δωを適宜定めることができる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係るスクリーン10では、光制御層3の第1部分3Lと第2部分3Rとが、入射光PLの角度範囲の基準となる基準方向SDに対応して、互いに異なる方向でかつ入射光の光源に近い側から遠い側に向けて広がるようにそれぞれ傾いている第1方向D1と第2方向D2とをそれぞれ制御方向としている。これにより、光制御層3は、第1部分3Lと第2部分3Rとにおいて、入射光PLの入射時に入射光PLを拡散させることなく直進透過させて光反射層2に向かわせることができ、光反射層2は、入射した光を所望の角度で反射させることが可能となる。従って、本スクリーン10は、ゲインの低下を抑制して、輝度ムラの低減されたものとなる。
【0046】
また、図2等では、中心CFと交点SXとは、中心軸LX上において離間した状態のものを示している。この距離は、図1のようにプロジェクター50を設置する環境等に対応するためのマージンに相当し、ある程度の範囲を許容している。ただし、当該距離が0すなわち中心CFと交点SXとを一致させることができれば、そのような配置としてもよい。この場合、入射光PLの入射角ξとスクリーン10の各光反射層2の傾斜角度αとの関係が最適化され、入射光PLをより確実に観察者EYのいる正面側すなわち略+Z側へ折り返すことができる。
【0047】
また、光反射層2において、円弧状に沿って配列される複数のプリズム部分2aの曲率半径を必要により適宜調整して、複数の光反射部PPの各反射面PSの傾きのスクリーン10内における分布を調整してもよい。一般に、フレネルプリズム反射面の収差の影響は、スクリーンの周辺側ほど受けやすい。このため、スクリーン10においても、周辺側において入射角γの角度のズレが生じやすいが、曲率半径を調整することで、このズレを補正することができる。
【0048】
なお、詳しい説明を省略するが、プロジェクター50を室内の床側に設置して下方からの近接投射とする場合にも、同様の投射システム100を構成することが可能である。
【0049】
また、光反射部PPの表面は、光を反射する反射面PSとなっている。第1傾斜面S1の主面1aに対する傾斜角度αは、光反射部PPの傾きすなわち反射面PSの傾きを決定する。つまり、同心円弧状に配列される各プリズム部分2aにおいて、傾斜角度αは、入射光PLの入射角ξの差に応じて異なるものとなっていてもよい。この場合、円弧状に形成される1つのプリズム部分2aの反射面PSに入射する入射光PLは、略同一の入射角ξを有する。傾斜角度αは、この入射角ξに応じて設定されているので、当該プリズム部分2aに入射する入射光PLは、スクリーン10の中央側だけでなく周辺側で入射するものについても確実に略+Z側の特定方向に折り返される。以上のことは、全てのプリズム部分2aについて同様である。つまり、すべての入射光PLは、各プリズム部分2aの反射面PSによって確実に略+Z側の特定方向に折り返されるものにできる。この場合、傾斜角度αが入射光PLの入射角ξに応じてそれぞれ調整されていることにより、いずれの角度で入射する入射光PLについても、正面側すなわち略+Z側の特定方向を中心に確実に折り返して略正面側へ適切に射出させることができる。
【0050】
〔第2実施形態〕
以下、図9により、第2実施形態に係るスクリーンについて説明する。なお、本実施形態に係る投射システムは、第1実施形態の投射システム100の変形例であるので、スクリーンの構造についてのみ説明し、全体の図示を省略する。
【0051】
図9に示すように、スクリーン10の変形例であるスクリーン110において、光制御層103は、右半分すなわち−X側の一部を占めるとともに制御方向が基準方向SDに対して傾いた第1方向D1である第1部分103Lと、+X側の一部を占めるとともに制御方向が基準方向SDに対して傾いた第2方向D2である第2部分103Rとに加え、第1部分103Lと第2部分103Rとの間の中央部分に配置されるとともに制御方向が基準方向SDに平行な第3方向D3に設定されている第3部分103Cを有する。
【0052】
本実施形態の場合、光制御層103において、中心軸LXから遠い周辺側の部分である第1及び第2部分103L,103Rについては、第1実施形態の場合と同様に、制御方向である第1及び第2方向D1,D2を基準方向SDに対して傾斜角βだけ傾けていることで、入射光PLを確実に折り返して略正面側へ適切に射出させるようにしている。これに対して、光制御層103において、中心軸LXに近い中央側の部分である第3部分103Cでは、入射角の条件が周辺側の部分ほど厳しくないため、必ずしも制御方向を基準方向SDに対して傾ける必要がない。従って、本実施形態のように、光制御層103をより細かく3つの部分に分割し、制御方向を傾ける必要のある周辺側の部分103L,103Rについて制御方向を基準方向SDに対して傾けることで、スクリーン10の全体に入射する入射光PLの適切な制御を行うことができる。
【0053】
また、以上では、一例として光制御層103をX方向について並ぶように3つに区分しているが、分割の仕方はこれに限らず、入射光PLの角度範囲等に応じて種々のものが考慮でき、例えば、4つ以上の部分に分かれてそれぞれ異なる制御方向となっているものとしてもよい。また、Y方向について並ぶように区分されていてもよい。
【0054】
〔第3実施形態〕
以下、図10により、第3実施形態に係るスクリーンについて説明する。なお、本実施形態に係る投射システムは、第1実施形態の投射システム100の変形例であるので、スクリーンの構造についてのみ説明し、全体の図示を省略する。
【0055】
図10に示すように、スクリーン10の変形例であるスクリーン210は、光反射層2と光制御層3との間に、光制御層3と同一の構造である第2の光制御層4をさらに有するものとなっている。ただし、第2の光制御層4は、主面1aの法線方向に対するX方向の傾きについて入射角選択性を示すすなわちX方向を制御方向とする点で光制御層3と異なる。これにより、スクリーン210は、X方向すなわち横方向についてより広く光を拡散させることが可能となっている。
【0056】
第2の光制御層4については、このほか、入射角選択性を示すことなくすなわち入射角によらずX方向について拡散させる特性を有する光拡散性の層を用いるものとしてもよい。
【0057】
〔その他〕
以上各実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0058】
上記では、光反射層2において、複数のプリズム部分2aは、同心円弧状に隙間なく配列されフレネル形状を有するものとしているが、入射光PLを確実に正面側に折り返すものであれば、複数のプリズム部分2aの配列や形状は、これに限らず、例えば同心円弧を変形した楕円状の曲線に沿って平行に配列されるものであってもよい。また、各プリズム部分2aも輪帯状のもの以外でもよく、例えば複数のブロック状のプリズムを同心円弧状の曲線に沿って並べることで、1つのプリズム部分としての機能を持たせる構成としてもよい。
【0059】
また、上記では、入射光PLを正面側あるいは略正面側に観察者がいることを想定しているため、折り返すべき方向についても正面側あるいは略正面側としているが、観察者が正面側以外の位置にいる場合には、これに応じて入射光PLを折り返す方向を適宜変更できる。
【0060】
また、上記では、図10に示す第3実施形態ンのスクリーン210において、光反射層2と光制御層3との間に第2の光制御層4を設ける構成としているが、光制御層3と第2の光制御層4とを入れ替えた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10,110,210…スクリーン、 1…基板、 1a…主面、 2…光反射層、 2a…プリズム部分、 2b…平準化層、 3,103…光制御層、 4…第2の光制御層、 3L,103L…第1部分、 3R,103R…第2部分、 103C…第3部分、 20…保護層、 PP…光反射部、 PS…反射面、 AS…光吸収部、 50…プロジェクター、 100…投射システム、 PL…入射光、 D1…第1方向、 D2…第2方向、 D3…第3方向、 SD…基準方向、 DL,DR…周辺領域、 ξ…入射角、 α…傾斜角度、 β…傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面上に配列されるように形成され当該配列される方向について断面鋸歯状である複数のプリズム部分と、前記複数のプリズム部分の表面部分にそれぞれ形成され入射した光を反射する複数の光反射部とを有する光反射層と、
前記光反射層の表面側に形成され、前記基板の主面に平行な方向のうち所定の制御方向において前記基板の主面に対する傾きが所定範囲内にある第1の角度領域から入射した光を拡散透過させ、かつ、所定範囲外にある第2の角度領域から入射した光を直進透過させる光制御層と、
を備えるスクリーンであって、
前記光制御層は、第1部分と第2部分とを有し、前記第1部分では、前記所定の制御方向が第1方向に設定されており、前記第2部分では、前記所定の制御方向が前記第1方向と異なる第2方向に設定されているスクリーン。
【請求項2】
前記光制御層において、前記第1部分に設定された前記第1方向と前記第2部分に設定された前記第2方向とは、前記入射光の光源に対応し前記基板の主面に平行な基準方向に対して、前記入射光の光源に近い側から遠い側に向けて広がるようにそれぞれ傾いている、請求項1に記載のスクリーン。
【請求項3】
前記光制御層は、前記第1部分と前記第2部分との間に配置されるとともに前記所定の制御方向が前記基準方向に平行な第3方向に設定されている第3部分を有する、請求項2に記載のスクリーン。
【請求項4】
前記基板における前記基準方向は、前記入射光のうち前記基板の中心部分を通る基準光の光路を前記基板の主面に正射影した方向である、請求項2及び請求項3のいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項5】
前記基板の対称性に関する中心軸は、前記基準方向に対して平行である、請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項6】
前記光制御層において、前記第1部分と前記第2部分とは、前記中心軸に対して軸対称に配置されている、請求項5に記載のスクリーン。
【請求項7】
前記光制御層において、前記第1部分は、前記基板の長手方向についての一端側で、かつ、前記入射光の光源に最も近い側を含み、前記第2部分は、前記長手方向についての前記一端側と反対の他端側で、かつ、前記入射光の光源に最も近い側を含む、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項8】
前記光反射層において、前記複数のプリズム部分は、前記所定の角度範囲で入射する入射光に対応して同心円弧状に配列される、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項9】
前記光反射層において、前記複数の光反射部の各反射面は、前記光制御層を経た前記入射光を折り返すことで得られる反射光の傾きを前記光制御層に対して前記第1の角度領域内にするように傾いている、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載のスクリーンと、
投影画像となる前記入射光を前記スクリーン上に向けて前記所定の角度範囲で投射する画像投射装置と、
を備える投射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−242536(P2012−242536A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111095(P2011−111095)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】