説明

スクリーン版及びスクリーン版の製造方法

【課題】平坦でない被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するのに適したスクリーン版を提供する。
【解決手段】スクリーン版132は、圧電/電歪体ペーストを透過するスクリーンメッシュ134の印刷面側に圧電/電歪体ペーストを透過しないマスク層136を形成した構造を有している。スクリーン版132の製造にあたっては、まず、スクリーンメッシュ134の印刷面側にスクリーンメッシュ134の印刷面側を覆う膜146を形成する。続いて、膜146をパターニングしてスクリーンメッシュ134の印刷面側を露出させる開口142,144を膜146に形成する。さらに続いて、非透過領域186,188の一部を占める非透過領域186に形成された膜150をスクリーンメッシュ134の印刷面側が露出しないように除去加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦でない被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するのに適したスクリーン版及び当該スクリーン版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図25は、従来のスクリーン版832の模式図である。図25は、スクリーン版832の断面図となっている。
【0003】
図25に示すように、スクリーン版832は、粘性物質を透過するスクリーンメッシュ834の印刷面側に粘性物質を透過しないマスク層836を形成した構造を有している。スクリーン版832は、スキージ面側に供給された粘性物質をマスク層836に形成された開口844から印刷面側に透過することにより、開口844と同一の平面形状を有する粘性物質のパターンを被印刷面に印刷する。
【0004】
なお、特許文献1には、本発明と関連する文献公知発明が記載されている。特許文献1の発明では、マスク層を複数の層(特許文献1では「感光性樹脂膜」)で構成し、各層を別々にパターニングすることにより、階段状半球面を有するマスク層を形成している。
【0005】
【特許文献1】特公平6−19573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のスクリーン版832では、被印刷面が平坦でない場合、印刷された粘性物質のパターンににじみを生じる。
【0007】
図26は、にじみの発生原因を説明する模式図である。図26は、従来のスクリーン版832及び平坦でない被印刷面894を有する被印刷物892の断面図となっている。
【0008】
図26に示すように、従来のスクリーン版832で平坦でない被印刷面894に粘性物質のパターンを印刷すると、被印刷面894の隆起している部分とマスク層836とが接触する一方で、被印刷面894の隆起していない部分とマスク層836との間に隙間896ができる。このため、開口844から隙間896に粘性物質が流れ出し、粘性物質のパターンがにじむことになる。
【0009】
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、平坦でない被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するのに適したスクリーン版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、スキージ面側に供給された粘性物質を印刷面側に透過し被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するスクリーン版であって、粘性物質を透過するスクリーンメッシュと、前記スクリーンメッシュの印刷面側に形成された粘性物質を透過しないマスク層と、を備え、前記マスク層の第1の部分の層厚と第2の部分の層厚とが異なっており、前記第1の部分及び前記第2の部分が印刷時に被印刷面に接触する。
【0011】
請求項2の発明は、スキージ面側に供給された粘性物質を印刷面側に透過し被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するスクリーン版の製造方法であって、(a) 粘性物質を透過するスクリーンメッシュの印刷面側に粘性物質を透過しない膜を形成する工程と、(b) 前記工程(a)の後に、粘性物質を透過する透過領域に形成された前記膜を除去して前記スクリーンメッシュの印刷面側が露出する開口を前記膜に形成する工程と、(c) 前記工程(b)の後に、粘性物質を透過しない非透過領域の一部を占める第1の領域に形成された前記膜を前記スクリーンメッシュの印刷面側が露出しないように除去加工する工程と、を備える。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2に記載のスクリーン版の製造方法において、前記工程(c)は、(c-1) 非透過領域の第1の領域以外を占める第2の領域を遮蔽し第1の領域を遮蔽しない遮蔽物を設置する工程と、(c-2) 前記工程(c-1)の後に、前記膜に向かってブラスト材を吹き付ける工程と、を備える。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3に記載のスクリーン版の製造方法において、前記ブラスト材が固体二酸化炭素である。
【0014】
請求項5の発明は、請求項3に記載のスクリーン版の製造方法において、前記遮蔽物は、第2の領域を内包し透過領域を含む領域を遮蔽する。
【0015】
請求項6の発明は、スキージ面側に供給された粘性物質を印刷面側に透過し被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するスクリーン版の製造方法であって、(a) 粘性物質を透過するスクリーンメッシュの印刷面側に粘性物質の透過を阻止する第1の膜を形成する工程と、(b) 前記工程(a)の後に、粘性物質を透過する透過領域に形成された前記第1の膜を除去して前記スクリーンメッシュの印刷面側が露出する開口を前記第1の膜に形成する工程と、(c) 前記工程(b)の後に、粘性物質を透過しない非透過領域の一部を占める領域に形成された前記第1の膜の印刷面側に第2の膜を付加加工する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、マスク層と被印刷面との間の隙間に粘性物質が流れ出すことを抑制することができるので、被印刷面に印刷された粘性物質のパターンがにじむことを抑制することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、開口の形状や位置に影響を与えることなく、被印刷面の凹凸に応じてマスク層の層厚を変化させることができるので、平坦でない被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するのに適したスクリーン版の寸法精度を向上することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、膜の一部を容易に除去加工することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、ブラスト材でスクリーン版を破損したり汚染したりすることを抑制することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、遮蔽物の位置が若干ずれても第2の領域に形成された膜を除去加工してしまうことがないので、遮蔽物の設置が容易になる。
【0021】
請求項6の発明によれば、開口の形状や位置に影響を与えることなく、被印刷面の凹凸に応じてマスク層の層厚を変化させることができるので、平坦でない被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するのに適したスクリーン版の寸法精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<1 第1実施形態>
<1−1 圧電/電歪素子1の全体構造>
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧電/電歪素子1の模式図である。図1は、圧電/電歪素子1の断面図となっている。圧電/電歪素子1は、インクジェットプリンタのヘッドに採用されるアクチュエータである。
【0023】
図1に示すように、圧電/電歪素子1は、基体102の薄肉部104の上に、電極膜110、圧電/電歪体膜112、電極膜114、圧電/電歪体膜116及び電極膜118をこの順序で積層した積層構造を有している。
【0024】
なお、図1は、基体102の上に形成された、電極膜110、圧電/電歪体膜112、電極膜114、圧電/電歪体膜116及び電極膜118を積層した積層体108が1層の電極膜114を内部に含む場合を示しているが、積層体108が2層以上の電極膜を内部に含む場合や積層体108が電極膜を内部に含まない場合にも本発明を適用することができる。また、図1は、基体102の上に積層体108を直接的に形成する場合を示しているが、不活性層を介して基体102の上に積層体108を間接的に形成してもよい。さらに、複数の圧電/電歪素子1を一定間隔をおいて規則的に配列して一体化することもできる。
【0025】
<1−2 屈曲振動領域182>
圧電/電歪素子1では、外部電極となる電極膜110,118と内部電極となる電極膜114との間に駆動信号を印加することにより、圧電/電歪体膜112,116に電界を印加し、薄肉部104及び積層体108を屈曲振動させる。以下では、この屈曲振動が励振される領域182を「屈曲振動領域」という。
【0026】
薄肉部104の平面形状、すなわち、屈曲振動領域182の平面形状は細長の矩形となっている。もちろん、屈曲振動領域182の平面形状は矩形に限られるわけではなく、楕円形、六角形その他の形状であってもよい。
【0027】
<1−3 基体102>
基体102は、積層体108を支持する。基体102は、磁器粉末のシート状成形体を積層したものを焼成した磁器である。
【0028】
基体102は、絶縁材料で構成される。絶縁材料としては、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化イットリウム(Y23)、酸化イッテルビウム(Yb23)、酸化セリウム(Ce23)その他の安定化剤を添加した酸化ジルコニウム(ZrO2)、すなわち、安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアを採用することが望ましい。
【0029】
基体102は、中央の薄肉部104を周縁の厚肉部106で囲んで支持したキャビティ構造を有している。キャビティ構造を採用し、板厚が薄い薄肉部104を板厚が厚い厚肉部106で支持するようにすれば、基体102の機械的強度を保ちつつ、薄肉部104の板厚を薄くすることができるので、薄肉部104の剛性を低下させることができ、圧電/
電歪素子1の変位量を増加させることができる。薄肉部104の板厚は、1μm以上15μm以下であることが望ましい。この範囲を下回ると薄肉部104が損傷しやすくなるからである。また、この範囲を上回ると圧電/電歪素子1の変位量が減少する傾向にあるからである。
【0030】
<1−4 圧電/電歪体膜112,116>
圧電/電歪体膜112,116は、磁器粉末の膜状成形体を焼成した磁器である。
【0031】
圧電/電歪体膜112,116は、圧電/電歪材料で構成される。圧電/電歪材料としては、鉛(Pb)系ペロブスカイト酸化物を採用することが望ましい。中でも、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(ZrxTi1-x)O3 若しくはジルコン酸チタン酸鉛とニッケルニオブ酸鉛(Pb(Ni1/3Nb2/3)O3)、マグネシウムニオブ酸鉛(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3)その他の鉛系複合ペロブスカイト酸化物との固溶体を主成分とするものを採用することが望ましい。
【0032】
圧電/電歪体膜112,116の平面形状は、細長の矩形となっている。また、圧電/電歪体膜112,116は、中央部から電極膜110,114,118の端部に向かって膜厚が厚くなってゆき、電極膜110,114,118の端部から圧電/電歪体膜112,116の端部に向かって膜厚が薄くなってゆく膜厚分布を有している。このような膜厚分布を採用すれば、電極膜110,114,118の端部において圧電/電歪体膜112,116の膜厚が厚くなるので、絶縁破壊を防ぐことができるとともに、屈曲1次モードの腹において圧電/電歪体膜112,116の膜厚が薄くなり圧電/電歪体膜112,116の剛性が低下するので、圧電/電歪素子1の変位量を増加させることができる。
【0033】
<1−5 電極膜110,114,118>
電極膜110,114,118は、導電材料で構成される。電極膜110,114を構成する導電材料としては、白金(Pt)若しくはパラジウム(Pd)又はこれらを主成分とする合金を採用することが望ましい。ただし、圧電/電歪体膜112,116との共焼成が可能であれば、他の導電材料で電極膜110,114を構成してもよい。電極膜118を構成する導電材料としては、金(Au)又はこれを主成分とする合金を採用することが望ましい。
【0034】
電極膜110と電極膜114とは、圧電/電歪体膜112を挟んで対向し、電極膜114と電極膜118とは、圧電/電歪体膜116を挟んで対向している。また、電極膜110と電極膜118とは、電気的に接続されている。これにより、外部電極となる電極膜110,118と内部電極となる電極膜114との間に駆動信号を印加すると、圧電/電歪体膜112,116を伸縮させ、屈曲振動領域182を屈曲振動させることができる。
【0035】
<1−6 圧電/電歪素子1の製造方法>
図2は、圧電/電歪素子1の製造方法を説明するフローチャートである。
【0036】
図2に示すように、圧電/電歪素子1の製造にあたっては、まず、基体102を作製する(ステップS101)。
【0037】
続いて、基体102の薄肉部104の上に積層体108を形成する(ステップS102〜S109)。
【0038】
積層体108の形成にあたっては、まず、導電体ペーストを薄肉部104の上面にスクリーン印刷法で塗布し(ステップS102)、得られた塗布膜を基体102と一体的に焼成する(ステップS103)。これにより、基体102と一体化された電極膜110を形成することができる。
【0039】
続いて、圧電/電歪体ペースト、導電体ペースト及び圧電/電歪体ペーストを電極膜110の上面にスクリーン印刷法で順次塗布し(ステップS104〜S106)、得られた塗布膜を基体102及び電極膜110と一体的に焼成する(ステップS107)。これにより、基体102及び電極膜110と一体化された圧電/電歪体膜112、電極膜114及び圧電/電歪体膜116を形成することができる。
【0040】
その後、導電体ペーストを圧電/電歪体膜116の上面にスクリーン印刷法で塗布し(ステップS108)、得られた塗布膜を基体102、電極膜110、圧電/電歪体膜112、電極膜114及び圧電/電歪体膜116と一体的に焼成する(ステップS109)。これにより、基体102、電極膜110、圧電/電歪体膜112、電極膜114及び圧電/電歪体膜116と一体化された電極膜118を形成することができる。
【0041】
最後に、電極膜110,118と電極膜114との間に電圧を印加して分極処理を行うことにより(ステップS110)、圧電/電歪素子1を得ることができる。
【0042】
ここで、導電体ペーストは、導電材料の粉末、有機溶剤、分散剤及びバインダを混練して調製した流動性のある粘性物質である。また、圧電/電歪体ペーストは、圧電/電歪材料の粉末、有機溶剤、分散剤及びバインダを混練して調製した流動性のある粘性物質である。圧電/電歪体の粉末は、圧電/電歪材料の構成元素の素原料の粉末の混合物を仮焼して粉砕することにより得た仮焼原料の粉末である。
【0043】
<1−7 圧電/電歪体膜112の形成方法>
図3〜図5は、圧電/電歪体膜112の形成方法を説明する模式図である。図3〜図5は、形成の途上の圧電/電歪体膜112の断面図となっている。なお、圧電/電歪体膜116は、圧電/電歪体膜112と同様の方法で形成することができるので、圧電/電歪体膜116の形成の方法についての説明は省略する。
【0044】
圧電/電歪体膜112の形成にあたっては、まず、図3に示すように、電極膜110の上面に圧電/電歪体ペーストの塗布膜120を形成する。塗布膜120は、圧電/電歪体ペーストをスクリーン印刷することにより形成する。このとき、スクリーン印刷を1回だけ行ってもよいし、スクリーン印刷を2回以上繰り返してもよい。図3に示すように、このようにして形成した塗布膜120は、上面の中央部が隆起している。
【0045】
続いて、図4に示すように、塗布膜120の上面にさらに圧電/電歪体ペーストの塗布膜122を形成する。塗布膜122は、塗布膜120の端部に沿って形成される。塗布膜122も、圧電/電歪体ペーストをスクリーン印刷することにより形成する。このとき、スクリーン印刷を1回だけ行ってもよいし、スクリーン印刷を2回以上繰り返してもよい。
【0046】
このようにして重ねて形成された塗布膜120,122を焼成すると、図5に示すように、塗布膜120の上面の隆起が陥没するとともに塗布膜120と塗布膜122とが一体化し、先述の膜厚分布を有する圧電/電歪体膜112を形成することができる。
【0047】
<1−8 スクリーン版124,132の構造>
図6〜図8は、塗布膜120の形成に使用するスクリーン版124の模式図である。図6は、スクリーン版124の平面図、図7は、図6のA−Aに沿うスクリーン版124の断面図、図8は、図6のB−Bに沿うスクリーン版124の断面図となっている。
【0048】
図6〜図8に示すように、スクリーン版124は、圧電/電歪体ペーストを透過するスクリーンメッシュ126の印刷面側に圧電/電歪体ペーストを透過しないマスク層128を形成した構造を有している。マスク層128には、開口130が形成されている。したがって、スクリーン版124のスキージ面に圧電/電歪体ペーストを供給しスキージ面に圧力を加えながらスキージを走行させると、スキージ面側に供給された圧電/電歪体ペーストを開口130から印刷面側に透過し印刷面側にある被印刷面に開口130と同一の平面形状を有する圧電/電歪体ペーストのパターンを印刷することができる。
【0049】
一方、図9〜図11は、塗布膜122の形成に使用するスクリーン版132の模式図である。図9は、スクリーン版132の平面図、図10は、図9のC−Cに沿うスクリーン版132の断面図、図11は、図9のD−Dに沿うスクリーン版132の断面図となっている。
【0050】
図9〜図11に示すように、スクリーン版132は、圧電/電歪体ペーストを透過するスクリーンメッシュ134の印刷面側に圧電/電歪体ペーストを透過しないマスク層136を形成した構造を有している。マスク層136には、開口142,144が形成されている。したがって、スクリーン版132のスキージ面に圧電/電歪体ペーストを供給しスキージ面に圧力を加えながらスキージを走行させると、スキージ面側に供給された圧電/電歪体ペーストを開口142,144から印刷面側に透過し印刷面側にある被印刷面に開口142,144と同一の平面形状を有する圧電/電歪体ペーストのパターンを印刷することができる。
【0051】
マスク層136の層厚は、枠形の平面形状を有するマスク層138と、矩形の平面形状を有するマスク層140とで異なっており、被印刷面が隆起している中央部と対向するマスク層140の層厚は、被印刷面が隆起していない非中央部に対向するマスク層138よりも薄くなっている。このように被印刷面の凹凸に応じて層厚が変化するマスク層136を備えるスクリーン版132を使用することにより、スクリーン印刷する時にマスク層138,140を被印刷面に接触させることができる。このため、塗布膜122をスクリーン印刷する時にマスク層136と被印刷面との間の隙間に圧電/電歪体ペーストが流れ出すことを抑制することができるので、被印刷面に印刷された圧電/電歪体ペーストのパターンがにじむことを抑制することができる。すなわち、スクリーン版132は、平坦でない被印刷面に圧電/電歪体ペーストを塗布するのに適している。
【0052】
スクリーンメッシュ126,134は、ステンレス製の織物である。ただし、このことは、ステンレス以外の材質や織物以外の形態を採用することを妨げるものではない。例えば、ニッケル製の電鋳物やポリアミド、ポリエステル、ポリアリレート等の樹脂製の織物をスクリーンメッシュ126,134に採用することができる。
【0053】
また、マスク層128,136は、感光性乳剤の硬化物の膜である。ただし、このことは、感光性乳剤の硬化物以外の材質を採用することを妨げるものでない。例えば、ニッケルのメッキの膜をマスク層128,136に採用することができる。
【0054】
<1−9 スクリーン版132の製造方法(製版方法)>
図12〜図17は、スクリーン版132の製造方法を説明する模式図である。図12〜図17は、製造の途上のスクリーン版132の断面図となっている。なお、スクリーン版124は周知の製造方法により製造することができる。
【0055】
スクリーン版132の製造にあたっては、まず、スクリーンメッシュ134の印刷面側に膜厚が略均一の感光性乳剤の膜146を貼り付け、スクリーンメッシュ134の印刷面側にスクリーンメッシュ134の印刷面側を覆う膜146を形成する(図12)。膜146の膜厚は、膜146を硬化させた時に膜146の膜厚が最厚のマスク層138の層厚と同じになるようにする。なお、流動性を有する感光性乳剤をスクリーンメッシュ134の印刷面側に塗布することにより、膜146を形成してもよい。
【0056】
続いて、膜146をパターニングしてスクリーンメッシュ134の印刷面側を露出させる開口142,144を膜146に形成する。開口142,144は、周知のフォトリソグラフィの技術により形成することができる。すなわち、圧電/電歪体ペーストを透過する透過領域184を遮蔽するフォトマスク190を膜146の印刷面側に設置し、フォトマスク190越しに膜146に光192を照射することにより(図13)、圧電/電歪体ペーストを透過しない非透過領域186,188に形成された膜150,152を選択的に露光し、膜150,152を硬化させる(図14)。そして、透過領域184に形成された膜148を現像により除去し、スクリーンメッシュ134の印刷面側を露出させる(図15)。なお、露光した部分を除去する方式のフォトリソグラフィにより開口142,144を形成してもよい。
【0057】
さらに続いて、非透過領域186,188の一部を占める非透過領域186に形成された膜150をスクリーンメッシュ134の印刷面側が露出しないように除去加工する。すなわち、非透過領域188を遮蔽し非透過領域186を遮蔽しない遮蔽板194を膜152の印刷面側に設置した後で、膜150に向かってブラスト材196を吹き付け(図16)、膜150の膜厚を薄くし、目的とするスクリーン版132を得る(図17)。ここで、膜152はマスク層138となり、膜厚を薄くされた後の膜150はマスク層140となる。
【0058】
これにより、開口142,144の形状や位置に影響を与えることなく、マスク層138とマスク層140とで層厚を変化させることができるので、スクリーン版132の寸法精度を向上することができる。すなわち、第1実施形態に係るスクリーン版132の製造方法によれば、1回のパターニングで開口142,144の形状や位置が決まるので、スクリーン版132の寸法精度を向上することができる。
【0059】
ここで、図16に示すように、遮蔽板194は、非透過領域188を遮蔽するだけでなく、非透過領域188に隣接する透過領域184を含む領域を遮蔽することが望ましい。このように非透過領域188を内包する領域を遮蔽するようにすれば、遮蔽板の位置が若干ずれても非透過領域188に形成された膜152を除去加工してしまうことがないので、遮蔽板194の設置が容易になる。
【0060】
また、ブラスト材196としてドライアイス(固体二酸化炭素)ペレットを用いること、すなわち、ドライアイスブラスト加工により膜150を除去加工することが望ましい。これにより、ブラスト材196でスクリーン版132を破損したり汚染したりすることを抑制することができる。
【0061】
なお、ブラスト加工により膜150を除去加工することは必須ではなく、例えば、レーザーアブレーション加工その他の方法により膜150を除去加工してもよい。
【0062】
<2 第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態に係るスクリーン版132に代えて採用することができるスクリーン版232に関する。
【0063】
<2−1 スクリーン版232の製造方法(製版方法)>
図18〜図23は、スクリーン版232の製造方法を説明する模式図である。図18〜図23は、製造の途上のスクリーン版232の断面図となっている。
【0064】
スクリーン版232の製造にあたっては、まず、スクリーンメッシュ234の印刷面側に膜厚が略均一の感光性乳剤の膜246を貼り付け、スクリーンメッシュ234の印刷面側にスクリーンメッシュ234の印刷面側を覆う膜246を形成する(図18)。膜246の膜厚は、膜246を硬化させた時に膜246の膜厚が最薄のマスク層240(図23)の層厚と同じになるようにする。
【0065】
続いて、膜246をパターニングしてスクリーンメッシュ262の印刷面側を露出させる開口242,244を膜246に形成する。開口242,244は、周知のフォトリソグラフィの技術により形成することができる。すなわち、圧電/電歪体ペーストを透過する透過領域284を遮蔽するフォトマスク290を膜246の印刷面側に設置し、フォトマスク290越しに膜246に光292を照射することにより(図19)、圧電/電歪体ペーストを透過しない非透過領域286,288に形成された膜250,252を選択的に露光し、膜250,252を硬化させる(図20)。そして、透過領域284に形成された膜248を現像により除去し、スクリーンメッシュ234の印刷面側を露出させる(図21)。
【0066】
さらに続いて、非透過領域286,288の一部を占める非透過領域288に形成された膜250の印刷面側にさらに膜254を付加加工する。すなわち、透過領域284及び非透過領域286を遮蔽し非透過領域288を遮蔽しない遮蔽板294を膜246の印刷面側に設置した後に、遮蔽板294越しに新たな膜254を蒸着で付加し(図22)、非透過領域288に形成された膜252,254の膜厚を厚くし、目的とするスクリーン版232を得る(図23)。ここで、膜252,254はマスク層238となり、膜250はマスク層240となる。
【0067】
これにより、開口242,244の形状や位置に影響を与えることなく、マスク層238とマスク層240とで層厚を変化させることができるので、スクリーン版232の寸法精度を向上することができる。
【0068】
<その他>
先述の説明では、中央部が隆起している被印刷面に圧電/電歪体ペーストを塗布するのに適したスクリーン版132,232について説明したが、本発明は、より複雑な形状の被印刷面に圧電/電歪体ペーストを塗布するのに適したスクリーン版及びその製造方法も含む。例えば、図24の断面図に示すように、隆起している部分を2ヶ所以上有し隆起の程度が異なっている被印刷面594に圧電/電歪体ペーストを塗布するのに適したスクリーン版532も、スクリーンメッシュ534の印刷面側に貼り付けられた膜に開口を形成してから膜の一部を除去加工することにより製造することができる。なお、図24に示すように、マスク層536の層厚を3段階以上に変化させる場合、除去加工又は付加加工を2回以上に分けて行えばよい。
【0069】
また、先述の説明では、圧電/電歪体ペーストを塗布する場合に使用するスクリーン版132,232について説明したが、圧電/電歪体ペースト以外の粘性物質、例えば、導電体ペースト等を塗布する場合に使用するスクリーン版及びこの製造方法も本発明に含まれる。
【0070】
上記の説明は、全ての局面において例示であって、本発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。特に、第1実施形態〜第2実施形態において説明した技術を組み合わせることは当然に予定されている。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】圧電/電歪素子の断面図である。
【図2】圧電/電歪素子の製造方法を説明するフローチャートである。
【図3】圧電/電歪体膜の形成方法を説明する断面図である。
【図4】圧電/電歪体膜の形成方法を説明する断面図である。
【図5】圧電/電歪体膜の形成手順を説明する断面図である。
【図6】スクリーン版の平面図である。
【図7】図6のA−Aに沿うスクリーン版の断面図である。
【図8】図6のB−Bに沿うスクリーン版の断面図である。
【図9】スクリーン版の平面図である。
【図10】図9のC−Cに沿うスクリーン版の断面図である。
【図11】図9のD−Dに沿うスクリーン版の断面図である。
【図12】スクリーン版の製造方法を説明する断面図である。
【図13】スクリーン版の製造方法を説明する断面図である。
【図14】スクリーン版の製造方法を説明する断面図である。
【図15】スクリーン版の製造方法を説明する断面図である。
【図16】スクリーン版の製造方法を説明する断面図である。
【図17】スクリーン版の製造方法を説明する断面図である。
【図18】スクリーン版の製造方法を説明する断面図である。
【図19】スクリーン版の製造方法を説明する断面図である。
【図20】スクリーン版の製造方法を説明する断面図である。
【図21】スクリーン版の製造方法を説明する断面図である。
【図22】スクリーン版の製造方法を説明する断面図である。
【図23】スクリーン版の製造方法を説明する断面図である。
【図24】スクリーン版の断面図である。
【図25】従来のスクリーン版の断面図である。
【図26】にじみの発生原因を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 圧電/電歪素子
102 基体
112,116 圧電/電歪体膜
110,114,118 電極膜
120,122 塗布膜
124,132,232 スクリーン版
126,134,234 スクリーンメッシュ
128,136,236 マスク層
130,142,144,242,244,330 開口
146,246 膜
194 遮蔽板
184,284,384 透過領域
186,188,286,288,386,388 非透過領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキージ面側に供給された粘性物質を印刷面側に透過し被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するスクリーン版であって、
粘性物質を透過するスクリーンメッシュと、
前記スクリーンメッシュの印刷面側に形成された粘性物質を透過しないマスク層と、
を備え、
前記マスク層の第1の部分の層厚と第2の部分の層厚とが異なっており、前記第1の部分及び前記第2の部分が印刷時に被印刷面に接触するスクリーン版。
【請求項2】
スキージ面側に供給された粘性物質を印刷面側に透過し被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するスクリーン版の製造方法であって、
(a) 粘性物質を透過するスクリーンメッシュの印刷面側に粘性物質を透過しない膜を形成する工程と、
(b) 前記工程(a)の後に、粘性物質を透過する透過領域に形成された前記膜を除去して前記スクリーンメッシュの印刷面側が露出する開口を前記膜に形成する工程と、
(c) 前記工程(b)の後に、粘性物質を透過しない非透過領域の一部を占める第1の領域に形成された前記膜を前記スクリーンメッシュの印刷面側が露出しないように除去加工する工程と、
を備えるスクリーン版の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のスクリーン版の製造方法において、
前記工程(c)は、
(c-1) 非透過領域の第1の領域以外を占める第2の領域を遮蔽し第1の領域を遮蔽しない遮蔽物を設置する工程と、
(c-2) 前記工程(c-1)の後に、前記膜に向かってブラスト材を吹き付ける工程と、
を備えるスクリーン版の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のスクリーン版の製造方法において、
前記ブラスト材が固体二酸化炭素であるスクリーン版の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のスクリーン版の製造方法において、
前記遮蔽物は、第2の領域を内包し透過領域を含む領域を遮蔽するスクリーン版の製造方法。
【請求項6】
スキージ面側に供給された粘性物質を印刷面側に透過し被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するスクリーン版の製造方法であって、
(a) 粘性物質を透過するスクリーンメッシュの印刷面側に粘性物質の透過を阻止する第1の膜を形成する工程と、
(b) 前記工程(a)の後に、粘性物質を透過する透過領域に形成された前記第1の膜を除去して前記スクリーンメッシュの印刷面側が露出する開口を前記第1の膜に形成する工程と、
(c) 前記工程(b)の後に、粘性物質を透過しない非透過領域の一部を占める領域に形成された前記第1の膜の印刷面側に第2の膜を付加加工する工程と、
を備えるスクリーン版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−166391(P2009−166391A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8213(P2008−8213)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】