説明

スクリーン版用メッシュ織物の製造方法及びスクリーン版の製造方法

【課題】 網目が小さく且つ薄いメッシュ織物を容易に得ることができると共に、メッシュ織物における縦糸と横糸との強伸度差を低減することができるスクリーン版用メッシュ織物の製造方法及びスクリーン版の製造方法を提供する。
【解決手段】 印刷用スクリーンメッシュを構成するメッシュ織物の作製する場合は、織機及びおさを準備すると共に、縦糸及び横糸を構成する金属製の細線を用意する。そして、複数本の縦糸を1本ずつおさに通すと共に、織機により横糸の配列ピッチを設定した状態で、複数本の横糸を縦糸に対して直交(交差)させるように織り込み、織物中間体を形成する。このとき、横糸の配列ピッチが縦糸の配列ピッチよりも狭くなるように、縦糸に対して横糸を多く織り込むようにする。続いて、織物中間体における縦糸と横糸とが交差する部分を平坦化させるように織物中間体を圧延することにより、メッシュ織物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷を行うためのスクリーン版に使用されるスクリーン版用メッシュ織物の製造方法、及びスクリーン版の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリーン版は、積層型チップコンデンサ等の電子部品を製造する際に、電極パターン等を印刷するために用いられるものである。このようなスクリーン版の製造方法としては、例えば特許文献1に記載されているように、複数本の縦糸及び複数本の横糸から構成されるメッシュ織物を版枠に接着剤で接合したものが知られている。
【特許文献1】特開2001−171080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年では、電子部品の小型化・高集積化に伴い、電極パターンを薄く印刷するという要求が高まってきている。電極パターンを薄く印刷するためには、メッシュ織物の網目を小さくしたり、メッシュ織物自体を薄くする必要がある。しかし、上記従来技術では、その事が全く考慮されていない。
【0004】
また、上記従来技術のような一般的なスクリーン版用メッシュ織物においては、縦糸及び横糸の織り状態が異なるため、縦糸と横糸では強伸度特性が異なっている。この場合には、スクリーン版を用いてスクリーン印刷を行う際に、縦糸及び横糸のうち強伸度の弱いほうが伸びやすくなるため、スクリーン版を長く使用していると、印刷されたパターンが変形し、結果的にスクリーン版の耐刷性が低下してしまう。
【0005】
本発明の目的は、網目が小さく且つ薄いメッシュ織物を容易に得ることができると共に、メッシュ織物における縦糸と横糸との強伸度差を低減することができるスクリーン版用メッシュ織物の製造方法及びスクリーン版の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わるスクリーン版用メッシュ織物の製造方法は、金属からなる縦糸及び横糸を複数本ずつ交差させるように織って成る織物中間体を形成する工程と、織物中間体を圧延してメッシュ織物を形成する工程とを含み、織物中間体を形成する工程においては、横糸のピッチが縦糸のピッチよりも狭くなるように、縦糸に対して横糸を多く織り込むことを特徴とするものである。
【0007】
このようなスクリーン版用メッシュ織物の製造方法において、織物中間体を形成する際には、織機とおさ(織機の付属具)とを使用し、おさにより縦糸の位置を整えて、横糸を織り込むようにする。このとき、横糸の配列ピッチが縦糸の配列ピッチよりも狭くなるように、縦糸に対して横糸を多く織り込むことにより、特に縦糸及び横糸の線径を変えなくても、織物中間体において縦糸及び横糸により形成される網目が必然的に小さくなる。これにより、最終的に得られるメッシュ織物の網目が小さくなる。また、織物中間体を形成した後に、織物中間体を圧延してメッシュ織物を形成することにより、メッシュ織物自体が薄くなる。従って、網目が小さく且つ薄いメッシュ織物を容易に得ることができる。
【0008】
ところで、スクリーン版用メッシュ織物では、上述したように、縦糸と横糸との織り状態の違い等により、縦糸と横糸との強伸度差が生じる。具体的には、上述した縦糸及び横糸の織り方の違い等から、織物中間体の圧延前の状態では、通常は横糸の強伸度が縦糸の強伸度よりも高くなる。しかし、メッシュ織物を十分薄く形成すべく、織物中間体を強く圧延すると、逆に縦糸の強伸度が横糸の強伸度よりも高くなり易くなるとされている。他方、横糸の配列ピッチが狭くなるにつれて横糸の強伸度が増大することが、本発明者らの検討により明らかにされている。そこで、横糸の配列ピッチが縦糸の配列ピッチよりも狭くなるように、縦糸に対して横糸を多く織り込むことで、織物中間体における横糸の強伸度を予め高くしておく。そして、その状態で、織物中間体を強く圧延することで、横糸の強伸度が下がると共に縦糸の強伸度が上がっても、結果的に横糸の強伸度が縦糸の強伸度に近づくようになる。これにより、メッシュ織物を十分薄く形成しながらも、メッシュ織物における縦糸と横糸との強伸度差を低減することができる。
【0009】
好ましくは、織物中間体を形成する工程においては、横糸がほぼ真っ直ぐ延びると共に縦糸が横糸に対して交互に波打った状態となるように、縦糸に対して横糸を織り込む。上述したように横糸は縦糸に対して多く織り込まれることになるが、横糸の配列ピッチの調整としては織機のピッチ設定を変更するだけで良く、しかも横糸はほぼ真っ直ぐ延びる状態となるように織り込まれるので、縦糸及び横糸の織り込み作業が比較的簡単に行える。また、織物中間体を圧延した後には、横糸が波打つようになると共に縦糸の波打ち量が小さくなるため、メッシュ織物における縦糸及び横糸の波打ち状態を均一化することができる。
【0010】
また、好ましくは、織物中間体を圧延する工程においては、縦糸の強伸度特性と横糸の強伸度特性とが揃うように織物中間体を圧延する。これにより、最終的に得られたメッシュ織物において、縦糸と横糸との強伸度差を一層低減することができる。
【0011】
本発明に係わるスクリーン版の製造方法は、金属からなる縦糸及び横糸を複数本ずつ交差させるように織って成る織物中間体を形成する工程と、織物中間体を圧延してメッシュ織物を形成する工程と、メッシュ織物を版枠に固定する工程とを含み、織物中間体を形成する工程においては、横糸の配列ピッチが縦糸の配列ピッチよりも狭くなるように、縦糸に対して横糸を多く織り込むことを特徴とするものである。
【0012】
このようなスクリーン版の製造方法においては、上述したメッシュ織物の製造方法が採用されることにより、最終的に得られるメッシュ織物の網目を容易に小さくすることができると共に、メッシュ織物自体を容易に薄くすることができる。また、メッシュ織物における縦糸と横糸との強伸度差を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、網目が小さく且つ薄いメッシュ織物を容易に得ることができる。これにより、スクリーン印刷を行う際に、電極パターン等を薄く印刷することが可能となる。また、メッシュ織物における縦糸と横糸との強伸度差を低減することができる。これにより、印刷された電極パターン等の変形を抑制し、耐刷性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係わるスクリーン版用メッシュ織物の製造方法及びスクリーン版の製造方法の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係わるスクリーン版の製造方法の一実施形態により製造されるスクリーン版を示す概略平面図であり、図2は、図1のII−II線断面模式図である。各図において、スクリーン版1は、例えば積層型チップコンデンサの製造工程において、グリーンシートに電極パターンを印刷するために用いられるものである。
【0016】
スクリーン版1は、版枠2と、支持用スクリーンメッシュ3と、印刷用スクリーンメッシュ4とを備えている。版枠2は、例えばアルミニウムや軽合金等の軽量金属材料により形成されている。
【0017】
支持用スクリーンメッシュ3は、矩形のシート状をなしている。支持用スクリーンメッシュ3の中央部には、矩形状の開口3aが形成されている。支持用スクリーンメッシュ3は、所定の張力が付与された状態で、ポリエステル樹脂等の接着剤5により版枠2に固定されている。
【0018】
支持用スクリーンメッシュ3は、合成樹脂材料により形成されている。具体的には、支持用スクリーンメッシュ3は、ポリエステル等の合成樹脂繊維を縦糸及び横糸として織ったメッシュであり、例えば250メッシュ(♯250)程度のものである。なお、♯250とは、1インチに250本あるということである。支持用スクリーンメッシュ3は、織布及び不織布の何れであっても良い。
【0019】
印刷用スクリーンメッシュ4は、矩形のシート状をなしている。印刷用スクリーンメッシュ4は、支持用スクリーンメッシュ3の開口3aを覆うように、ポリエステル樹脂等の接着剤6により支持用スクリーンメッシュ3に固定されている。印刷用スクリーンメッシュ4には、支持用スクリーンメッシュ3を通して所定の張力が付与されている。
【0020】
印刷用スクリーンメッシュ4は、金属材料により形成されている。具体的には、支持用スクリーンメッシュ4は、ステンレスまたはステンレスにNiめっきを施した金属等からなる細線を縦糸及び横糸として織ったメッシュであり、例えば500〜600メッシュ(♯500〜♯600)程度のものである。印刷用スクリーンメッシュ4は、織布及び不織布の何れであっても良い。
【0021】
印刷用スクリーンメッシュ4は、支持用スクリーンメッシュ3に接着される部分の内側にパターン形成領域4aを含んでいる。このパターン形成領域4aには、縦糸及び横糸により形成される網目(オープニング)を乳剤等の目止め剤で塞いだ部分と塞いでいない部分とが存在しており、これによって所定の印刷パターンが形成されている。
【0022】
このようなスクリーン版1を用いて、グリーンシートに電極パターンを印刷する場合には、グリーンシートの被印刷面に対して所定の間隔をもってスクリーン版1の印刷用スクリーンメッシュ4を対面させる。そして、印刷用スクリーンメッシュ4に導電ペーストを供給し、印刷用スクリーンメッシュ4上でスキージを摺動させることにより、グリーンシートの被印刷面に印刷用スクリーンメッシュ4を接触させて、電極パターンを印刷する。
【0023】
次に、上述したスクリーン版1を製造する方法について説明する。まず、支持用スクリーンメッシュ3及び印刷用スクリーンメッシュ4を構成するメッシュ織物を作製する。印刷用スクリーンメッシュ4を構成するメッシュ織物の作製手順を図3に示す。
【0024】
図3において、まず図示しない織機及びおさを準備すると共に、縦糸(経糸)及び横糸(緯糸)を構成する金属製の細線を用意する(工程51)。おさは、織機の付属具であり、縦糸の位置を整えて、横糸を織り込むための道具である。
【0025】
そして、複数本の縦糸を1本ずつおさに通すと共に、織機により横糸のピッチを設定した状態で、複数本の横糸を縦糸に対して直交(交差)させるように織り込む。これにより、図4に示すような織物中間体7が形成される(工程52)。
【0026】
続いて、織物中間体7における縦糸8と横糸9とが交差する部分を平坦化させるように、織物中間体7を圧延する、いわゆるカレンダー加工を実施する。これにより、図5に示すようなメッシュ織物10が形成される(工程53)。
【0027】
ところで、上記のように横糸9は縦糸8に織り込まれる構造となるため、織物中間体7は、縦糸8及び横糸9の織り具合が異なった状態で形成されることになる。このため、織物中間体7では、縦糸8の強伸度特性と横糸9の強伸度特性とが異なるものとなる。
【0028】
このような縦糸及び横糸の強伸度特性を示す方法の一つとして、JIS L 1096-1990(一般織物試験方法)に規定されている引っ張り試験により得られる荷重−伸度線図というものがある。この引っ張り試験は、ストリップ幅が5cm、つかみ長さが20cm、引張速度が10cm/minという条件で実施される。荷重−伸度線図では、図6に示すように、縦軸が荷重値、横軸が伸び(ひずみ)量を表している。
【0029】
圧延前の織物中間体では、一般に図6(a)から分かるように、横糸の強伸度特性(図中のP参照)は縦糸の強伸度特性(図中のQ参照)よりも良好であるとされている。つまり、圧延を行う前の織物中間体の状態では、横糸の強伸度は縦糸の強伸度よりも高いため、横糸は縦糸よりも伸びにくいという事になる。
【0030】
ただし、織物中間体を圧延すると、横糸の強伸度は低くなり、縦糸の強伸度は高くなる傾向にある。このとき、織物中間体に付与される圧延力によって、縦糸及び横糸の強伸度が変わってくる。グリーンシートに電極パターンを薄く印刷するためには、メッシュ織物を薄く形成するのが効果的である。しかし、メッシュ織物を薄く形成するには、織物中間体を十分強い力で圧延する必要があるため、圧延により得られるメッシュ織物の状態では、縦糸の強伸度が横糸の強伸度よりも高くなりやすくなる。このように縦糸と横糸との強伸度差が生じると、縦糸及び横糸のうち強伸度の弱いほうだけが伸びやすくなる。このため、スクリーン版を長く使用しているうちに、印刷時にメッシュ織物が伸びきって元に戻らなくなる可能性があり、スクリーン版の耐刷性の悪化につながってしまう。
【0031】
他方、横糸の配列ピッチを狭くするほど横糸の強伸度が大きくなることが分かっている。また、横糸の配列ピッチを狭くするに従い、織物中間体の網目(オープニング)が必然的に小さくなる。このように織物中間体の網目を小さくすることによっても、グリーンシートに電極パターンを薄く印刷することが可能となる。このとき、縦糸及び横糸を構成する金属線の線径を特に変えなくても、横糸の配列ピッチを変えるだけで、織物中間体の網目の寸法を簡単に調整することができる。
【0032】
そこで、織物中間体7を形成する工程(図3の工程52)においては、図4に示すように、横糸9の配列ピッチが縦糸8の配列ピッチよりも狭くなるように、縦糸8に対して横糸9を単位長さ当たり多く織り込むようにする。これにより、織物中間体7における横糸9の強伸度が高くなる。つまり、上記のように横糸9の配列ピッチを縦糸8の配列ピッチよりも狭くした場合の強伸度特性(図6(a)中の実線P参照)は、横糸9及び縦糸8の配列ピッチを等ピッチとした場合の強伸度特性(図6(a)中の1点鎖線P参照)よりも良好になる。
【0033】
また、縦糸8及び横糸9を織り込む際には、図4に示すように、横糸9をほぼ真っ直ぐ延びるように張った状態で、縦糸8が横糸9に対して交互に波打った状態となるように、横糸9を縦糸8に対して編み込んでいく。横糸9の配列ピッチ調整は、織機の設定を変えるだけで行えるので、作業者にとってあまり手間がかかることは無い。また、横糸9をほぼ真っ直ぐに張った状態で編み込むことにより、縦糸8及び横糸9の織り込み作業が比較的容易に行える。
【0034】
その後、織物中間体7を圧延する工程(図3の工程53)においては、薄いメッシュ織物10を得るべく、織物中間体7を十分強い力で圧延する。織物中間体7を圧延すると、上述したように横糸9の強伸度は低くなり、縦糸8の強伸度は高くなる傾向にある(図6(a)中の矢印参照)。しかし、織物中間体7では、横糸9の配列ピッチを縦糸8の配列ピッチよりも狭くすることで、予め横糸9の強伸度を所定量だけ強制的に高くしている(図6(a)中のP→P)。このため、織物中間体7を十分強く圧延しても、縦糸8の強伸度が横糸9の強伸度よりも高くならずに、縦糸8の強伸度が横糸9の強伸度に近づくようになる。このとき、図6(b)に示すように、メッシュ織物10において縦糸8の強伸度特性と横糸9の強伸度特性とがほぼ揃うように、最適な強さで織物中間体7を圧延するのが好ましい。
【0035】
このように織物中間体7を圧延することによって、図5に示すように、横糸9のピッチが縦糸8のピッチよりも狭いメッシュ織物10が得られる。また、織物中間体7の圧延によって、ほぼ真っ直ぐ伸びている横糸9が波打つようになると共に、縦糸8の波打ち度合いが小さくなる。これにより、図5に示すように、メッシュ織物10における縦糸8及び横糸9の波打ち状態が均一化されるようになる。
【0036】
支持用スクリーンメッシュ3を構成するメッシュ織物を作製する場合には、上記のメッシュ織物10の作製方法と同様に、織機及びおさ(図示せず)を使用して、合成樹脂繊維により構成される縦糸及び横糸を複数本ずつ直交(交差)させるように織って成る織物中間体を形成する。そして、その織物中間体を圧延することにより、メッシュ織物を得る。支持用スクリーンメッシュ3を構成するメッシュ織物は、電極パターンの印刷には直接は関係ないので、縦糸及び横糸の配列ピッチとしては、等ピッチでも異なるピッチでも構わない。
【0037】
支持用スクリーンメッシュ3及び印刷用スクリーンメッシュ4を構成するメッシュ織物を作製した後、印刷用スクリーンメッシュ4を構成するメッシュ織物10をクランプ(図示せず)により引っ張り、メッシュ織物10に所定の張力を付与する。そして、そのメッシュ織物10を所定の形状に切断する。これにより、上記の印刷用スクリーンメッシュ4が得られる。
【0038】
また、支持用スクリーンメッシュ3を構成するメッシュ織物11(図7参照)をクランプにより引っ張り、当該メッシュ織物11に所定の張力を付与する。そして、その状態で、図7に示すように、台板(図示せず)に載置された枠版2にメッシュ織物11を接着剤5で貼り付ける。
【0039】
続いて、図8に示すように、メッシュ織物11に印刷用スクリーンメッシュ4を接着剤6で貼り付ける。このとき、印刷用スクリーンメッシュ4の周縁部の全周をメッシュ織物11に接着する。
【0040】
続いて、図9に示すように、メッシュ織物11における接着剤6の内側の部分を除去した後、メッシュ織物11における枠版2の外側部分を枠版2に沿って切断する。これにより、枠版2に固定された支持用スクリーンメッシュ3が形成され、上述したスクリーン版1が完成する。
【0041】
以上のように本実施形態によれば、横糸9の配列ピッチが縦糸8の配列ピッチよりも狭くなるように、縦糸8に対して横糸9を数多く織り込んで、織物中間体7を形成した後、この織物中間体7を圧延することにより、印刷用スクリーンメッシュ4を構成するメッシュ織物10を形成する。これにより、網目の寸法が小さく且つ厚みが薄い印刷用スクリーンメッシュ4を容易に作り上げることができる。その結果、グリーンシートに電極パターンを十分に薄く印刷することが可能となる。また、高密度のメッシュ品と同程度の透過体積を有する印刷用スクリーンメッシュ4を、安価に且つ生産性良く作ることが可能となる。
【0042】
このとき、横糸9の配列ピッチを変えることで、印刷用スクリーンメッシュ4の透過体積の微調整が行える。具体的には、横糸9の配列ピッチを広くすると、印刷用スクリーンメッシュ4の透過体積が増加し、横糸9の配列ピッチを狭くすると、印刷用スクリーンメッシュ4の透過体積が減少する。一般にメッシュの透過体積を減少させる場合には、縦糸及び横糸の本数を多くすることになるが、縦糸のおさ通しは難しいため、製法上非常に高価なものとなる。本実施形態によれば、横糸9の配列ピッチを機械的に調整するだけで対応可能となるので、印刷用スクリーンメッシュ4の透過体積を容易に減少させることができ、製法上も安価なものとなる。
【0043】
また、上述したように、印刷用スクリーンメッシュ4における縦糸8と横糸9との強伸度差を低減することができる。これにより、縦糸8及び横糸9の伸び具合が同等になるので、スクリーン版1を長く使用しているうちに、印刷時に印刷用スクリーンメッシュ4が伸びきって元に戻らなくなるといった不具合が防止される。このため、グリーンシートに印刷される電極パターンの形状・寸法の変形が抑えられるので、スクリーン版1の耐刷性を向上させることが可能となる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態に係わるスクリーン版1は、支持用スクリーンメッシュ3及び印刷用スクリーンメッシュ4を備えたものであるが、本発明は、支持用スクリーンメッシュの無いスクリーン版、つまり枠版に印刷用スクリーンメッシュが貼り付けられたスクリーン版の製造方法にも適用可能である。
【0045】
また、上記実施形態は、積層型チップコンデンサの製造工程において電極パターンを印刷するものであるが、本発明は、他の電子部品の電極印刷に使用するスクリーン版を始めとして、様々なスクリーン版の製造方法に適用可能である。ただし、本発明は、チップコンデンサの製造方法で、特に500メッシュ以上のメッシュ織物を有する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係わるスクリーン版の製造方法の一実施形態により製造されるスクリーン版を示す概略平面図である。
【図2】図1のII−II線断面模式図である。
【図3】図1及び図2に示す印刷用スクリーンメッシュを構成するメッシュ織物を製造する手順を示すフローチャートである。
【図4】図3に示す手順によって形成された織物中間体を示す斜視図である。
【図5】図3に示す手順によって形成されたメッシュ織物を示す斜視図である。
【図6】図4に示す織物中間体における縦糸及び横糸の強伸度特性の一例と、図5に示すメッシュ織物における縦糸及び横糸の強伸度特性の一例とを示す荷重−伸度線図である。
【図7】図1及び図2に示すスクリーン版の製造過程を示す断面模式図である。
【図8】図1及び図2に示すスクリーン版の製造過程を示す断面模式図である。
【図9】図1及び図2に示すスクリーン版の製造過程を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0047】
1…スクリーン版、2…枠版、4…印刷用スクリーンメッシュ、7…織物中間体、8…縦糸、9…横糸、10…メッシュ織物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる縦糸及び横糸を複数本ずつ交差させるように織って成る織物中間体を形成する工程と、
前記織物中間体を圧延してメッシュ織物を形成する工程とを含み、
前記織物中間体を形成する工程においては、前記横糸の配列ピッチが前記縦糸の配列ピッチよりも狭くなるように、前記縦糸に対して前記横糸を多く織り込むことを特徴とするスクリーン版用メッシュ織物の製造方法。
【請求項2】
前記織物中間体を形成する工程においては、前記横糸がほぼ真っ直ぐ延びると共に前記縦糸が前記横糸に対して交互に波打った状態となるように、前記縦糸に対して前記横糸を織り込むことを特徴とする請求項1記載のスクリーン版用メッシュ織物の製造方法。
【請求項3】
前記織物中間体を圧延する工程においては、前記縦糸の強伸度特性と前記横糸の強伸度特性とが揃うように前記織物中間体を圧延することを特徴とする請求項1または2記載のスクリーン版用メッシュ織物の製造方法。
【請求項4】
金属からなる縦糸及び横糸を複数本ずつ交差させるように織って成る織物中間体を形成する工程と、
前記織物中間体を圧延してメッシュ織物を形成する工程と、
前記メッシュ織物を版枠に固定する工程とを含み、
前記織物中間体を形成する工程においては、前記横糸の配列ピッチが前記縦糸の配列ピッチよりも狭くなるように、前記縦糸に対して前記横糸を多く織り込むことを特徴とするスクリーン版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−90634(P2007−90634A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282249(P2005−282249)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】