説明

スクリーン紗用モノフィラメント

【課題】 印刷スクリーン用メッシュ織物に加工する際、寸法安定性が良好で、製織時や使用時の耐摩耗および耐疲労性に優れ、感光、露光工程でのハレーション防止に優れたスクリーン紗用モノフィラメントを安価に得る。
【解決手段】 単一のポリエステル成分からなるスクリーン紗用モノフィラメントにおいて、極限粘度[η]が0.70〜0.85であるポリエステルに、0.5〜1.0重量%の有機系顔料を混入したデラミ発生指数が10%以上、伸度10%時の強度が4.3cN/dtex以上であるスクリーン紗用モノフィラメントを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン紗用モノフィラメントに関する。更に詳しくは、モノフィラメントをメッシュ織物に加工する際、寸法安定性が良好で、製織時や使用時の耐摩耗および耐疲労性に優れ、感光、露光工程でのハレーション防止に優れたスクリーン紗用モノフィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン紗用モノフィラメントとしては、ステンレスモノフィラメントやナイロンモノフィラメントが挙げられるが、扱い易さや寸法安定性からポリエステルが多用されている。しかし、ポリエステルモノフィラメントには次のような問題があった。
a)製織したメッシュ織物への乳剤の塗布性が悪い、
b)メッシュ織物への均一な膜厚を形成させるためには職人的な手法で多くの塗り重ねが必要、
c)メッシュ織物と乳剤樹脂との密着性が悪く、耐印刷性に劣る、
d)生産性が悪い、
などである。
【0003】
従来、これらの問題は酸、又はアルカリ等による化学処理、火炎処理、コロナ処理など種々の方法が検討されてきたが、素材の強力低下を招くなどの弊害が生じ、十分な効果が得られず、実用的な改良がなされていないのが現状である。
【0004】
これらの問題を解決するべく、鞘成分にポリアミドすなわちナイロン6、ナイロン66等を使用し、その鞘成分に黄色顔料を混入したモノフィラメントからなる印捺スクリーン用メッシュ織物が提案されている(特許文献1参照)が、メッシュ織物を構成するモノフィラメントの鞘成分がポリアミドの場合、モノフィラメントが持つ破断強度が低く、寸法安定性に欠けるといった問題や製織時に目ずれが生じ、寸法安定性が悪くなりメッシュ織物の品位が低下するといった問題があった。また、芯成分にポリエステル、鞘成分にポリアミドを使用した場合にはメッシュ織物に加工する整経や製織の工程で複合界面での剥離現象が発生し、メッシュ織物の品位が低下するといった問題もあった。
【0005】
一方、鞘成分のポリエステルに紫外線吸収剤を添加した高強度で紫外線反射が少なく、印刷性能に優れた芯鞘複合モノフィラメントを使用したスクリーン紗が提案されている(特許文献2参照)が、芯鞘複合の形態では製織時や加工後のメッシュ織物を使用する際、繊維軸方向に45°傾いた方向に応力集中点が発生し、繊維の結晶界面方向、すなわち芯成分と鞘成分の間で界面剥離が起こり易く、耐摩耗、耐疲労性が劣るといった問題があった。また、紡糸工程において少なくとも2成分以上の複合紡糸装置が必要とされる上に、紫外線吸収剤を添加する特別な設備が必要であり、また大きなコストアップにもつながるといった問題があった。
【特許文献1】特開平1―47591号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2004−262007号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決し、モノフィラメントをメッシュ織物に加工する際、寸法安定性が良好で、製織時や使用時の耐摩耗および耐疲労性に優れ、感光、露光工程でのハレーション防止に優れたスクリーン紗用モノフィラメントを、安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明は、単一のポリエステル成分からなるスクリーン紗用モノフィラメントにおいて、極限粘度[η]が0.70〜0.85であるポリエステルに、0.5〜1.0重量%の有機系顔料を混入した、デラミ発生指数が10%以上、伸度10%時の強度が4.3cN/dtex以上であるスクリーン紗用モノフィラメントを得ることで解決される。
【発明の効果】
【0008】
本発明において得られたスクリーン紗用モノフィラメントは、寸法安定性が良好で、製織時や使用時の耐摩耗および耐疲労性に優れ、感光、露光工程でのハレーション防止に優れた特性を持つ。その優れたハレーション防止や寸法安定性を生かして、電子基板や写真印刷などの精密印刷に必要な印刷精度や耐印刷性を持つことから、印刷スクリーン紗用原糸として適した素材となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明においてモノフィラメントを構成するポリエステルは、モノフィラメントを製織後、加工段階での熱セットにおける寸法安定性を確実なものにするために、一般的に用いられるエチレングリコールをテレフタル酸で重合し、添加剤として酸化チタンを0.1〜0.5重量%添加したポリエチレンテレフタレートを使用するのが好ましく、なかでも酸化チタン添加量が0.3重量%のエチレンテレフタレートが好ましい。
【0011】
本発明のモノフィラメントは、ポリエステルの極限粘度[η]が0.70〜0.85である。極限粘度[η]が0.70を下回ると、モノフィラメントが持つ破断強度が低く、寸法安定性に欠けるといった問題や、製織時に目ずれが生じ、寸法安定性が悪くなり、織物の品位が低下するといった問題が生じることから好ましくない。一方、極限粘度[η]が0.85を超えると、モノフィラメントの製織時やスクリーン板として使用する際、繊維表面がフィブリル化し易くなることから品位が低下することから好ましくない。より好ましくは0.75〜0.80である。
【0012】
本発明のモノフィラメントに、ハレーション防止効果を付与するためにはポリエステルに有機系顔料を混入して原液着色する必要がある。この方法は、モノフィラメントを構成するポリエステル成分に、顔料を混入するだけでメッシュ織物の製造後に染色する必要がなく、安定したハレーション防止効果を得ることができる。また、ポリエステルに混入する有機系顔料濃度は、溶融紡糸する際の適当な粘性保持や、顔料を均一に混練するうえで0.5〜1.0重量%必要である。有機系顔料濃度が0.5重量%未満の場合、繊維長さ方向での色斑が発生し易くなり、ハレーション防止効果が十分に得られない。一方、有機系顔料濃度が1.0重量%を超えると、溶融紡糸する際にポリエステルの粘性を著しく低下させ、安定した製糸性が得られなくなる。より好ましくは0.6〜0.8重量%である。
【0013】
デラミ発生指数とは、圧縮剪断弾性率を示す。繊維内部の結晶が繊維軸方向に配向するほど、繊維の引っ張り強度や引っ張り弾性率は高くなるものの、繊維軸と垂直方向の強度や弾性率、更に圧縮剪断弾性率は低下し、繊維軸方向に対して45°傾いた方向に、応力集中点が発生し易くなる。それを軽減するために、繊維の結晶界面方向、すなわち繊維軸方向に界面剥離が起こる。従って、繊維軸方向への繊維の配向が少ないほど、すなわちデラミ発生指数が大きいほど、製織時や使用時の耐摩耗、および耐疲労性に優れると考えられる。
【0014】
デラミ発生指数は、後述しているJIS K−6251 ISO37に示されるように、モノフィラメントを交差させて任意の直径の輪を作製し、除々にモノフィラメントの両端を引き締めて輪の直径を小さくしていき、モノフィラメントの表面、または内部にキンクバンド(繊維表面の色の変化)が発生したときの輪の直径をRとしたときの、モノフィラメントの直径(D)とRとの比(デラミ発生指数(%)=(D/R)×100)である。この指数は、圧縮変形に対する繊維構造破壊の耐性を示すもので、この値が大きいほど、繊維に歪みがかかっても繊維構造破壊が発生し難いことを意味し、界面剥離が起きにくく、従って耐フィブリル性に優れていることを示す。
【0015】
本発明のデラミ発生指数は10%以上である。デラミ発生指数が10%以上であると、ハイメッシュスクリーン紗の製織工程や得られたスクリーン紗を印刷工程で使用する際に、繊維が受ける微少な間隔での屈曲圧縮負荷でも、繊維の破壊が起こらないので、品位が良好でかつ、耐摩耗性や耐疲労性に優れたスクリーン紗を得ることができる。より好ましくは15%以上、50%以下である。
【0016】
本発明のモノフィラメントは、精密印刷に適したスクリーン紗用モノフィラメントであり、製織性の低下や紗伸びなどの発生を抑え、高い寸法安定性を維持するには伸度10%時の強度は4.3cN/dtex以上、より好ましくは4.5cN/dtex以上、耐摩耗性の点から6.0cN/dtex以下である。
【0017】
本発明における有機系顔料は、出来るだけ均一に原液着色し、かつモノフィラメントを加工する際の工程を安定して通過させ、かつスクリーン板としての耐摩耗性や耐疲労性が良好なデラミ発生指数を備えるうえでは、Color Index Y193、化審法化学物質番号(5)−1259に示されるような粒子径が1.0μm以下であり、かつ隠蔽性が半透明で、見掛け比溶(ml/g)が8〜10を満足する、淡彩色純度50〜60%のアンスラキノンイエロー等が好ましい。
【0018】
本発明において、ポリエステルに有機系顔料を混入する方法は特に規定されるものではないが、ブレンダーを用いてペレットの状態でベースポリマーと混練した後、溶融する方法や、もしくはポリエステルと有機系顔料をそれぞれ溶融させ、溶融ポリマー状態で混練機器を通過させ、混練する方法が均一な混練性を得るために好ましい。
【実施例】
【0019】
以下実施例より本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何等限定されるものではない。なお、実施例中の各特性値は以下の方法を用いて測定した。
1.ポリエステルの極限粘度[η]
オルトクロロフェノール溶液とし、25℃で求めた。
2.デラミ発生指数(%)
JIS K−6251 ISO37に示されるように、モノフィラメントの直径(D)をマイクロメーターで測定する。一方、光学顕微鏡下でモノフィラメントを交差させて任意の大きさの円をつくる。次いで、交差点(X)の円の対面側に位置するポイント(P)を観察しながら、除々にモノフィラメントの両端を引き締めて円を小さくしていく。その際、観察ポイントの繊維の表面に繊維軸方向とほぼ45°の角度をなして発生するキンクバンド(繊維表面の色の変化)が確認された時の円の直径(R)を計測する。デラミ発生指数を下記式により算出した。
【0020】
デラミ発生指数(%)=(D/R)×100
3.伸度10%時の強度(cN/dtex)
オリエンテックス社製テンシロン引張試験機を用い、初期試料長20cm、引張速度2cm/分で測定した。
4.寸法安定性
モノフィラメントから経・緯織密度350メッシュ(350本/インチ)のメッシュ織物を得、タテ5000mm、ヨコ2000mmの枠に紗張りセットした際に生じる目地のずれた箇所の数を数えた。
【0021】
○…目地のずれが 5箇所未満
△…目地のずれが 5〜10箇所
×…目地のずれが11箇所以上
5.ハレーション防止効果
モノフィラメントから経・緯密度350メッシュ(350本/インチ)のメッシュ織物を得た後、微細パターンを露光焼き付けて電子顕微鏡で観察した。
【0022】
○…ハレーション防止効果有り。
【0023】
△…ハレーション防止効果少ない。
【0024】
×…ハレーション発生。
6.平織物への微細パターン焼き付け状態
モノフィラメントから得られた経・緯密度350メッシュ(350本/インチ)の平織物に微細パターンを露光焼き付けて電子顕微鏡で観察した。
【0025】
○…接着力が良く、パターンのエッジも良い。
【0026】
△…接着力に劣り、パターンのエッジが悪い。
【0027】
×…接着力がなく、パターンを形成しない。
7.スクリーン紗の耐久性
モノフィラメントから経・緯密度350メッシュ(350本/インチ)のメッシュ織物を得た後、メッシュ織物100mm×100mmの正方形に線幅0.1mm、長さ80mmの微細パターンを等間隔で300本になるように露光焼き付けし、スクリーン版を製版した。該スクリーン版を用いて、太陽インキ製造(株)製のエッチングレジストインキAS−400を印刷インキとし、紙に3000回印刷を繰り返した後の、スクリーン版上の微細パターンの断線部分を電子顕微鏡ですべて数えた。
【0028】
○…断線部分なし。
【0029】
△…断線部分1〜5箇所。
【0030】
×…断線部分6箇所以上。
【0031】
実施例1
酸化チタン含有量が0.3重量%、極限粘度[η]0.75のペレット状ポリエチレンテレフタレートに有機顔料濃度0.6重量%の割合でペレット状の黄色顔料(アンスラキノンイエロー:Y−193 65410)を添加し、紡糸温度300℃、巻き取り速度1000m/分で製造し、このフィラメントを延伸倍率4.4倍、延伸温度91℃、熱セット温度を130℃で延伸し、繊度13dtexのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントのデラミ発生指数は15%であった。また、伸度10%時の強度は4.5cN/dtexであり、実使用上特に問題のないレベルが得られた。得られたモノフィラメントをスルーザー型織機に掛け、経・緯密度350メッシュ(350本/インチ)、回転数250rpmでメッシュ織物を製織した後、微細パターンを焼き付けてスクリーン版を製版し顕微鏡で観察した結果、ハレーション防止効が高く、微細パターンの接着力が良く鮮明であった。また、該スクリーン版は3000回の印刷後でも微細パターンの断線部分は見られなかった。
【0032】
実施例2
極限粘度[η]0.80のペレット状ポリエチレンテレフタレートを使用した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0033】
得られたモノフィラメントのデラミ発生指数は15%であった。伸度10%時の強度は4.6cN/dtexであり、実使用上特に問題のないレベルが得られた。また、得られたスクリーン板は実施例1と同様にハレーション防止効果が高く、微細パターンの接着力が良く、鮮明であった。該スクリーン板は3000回の印刷後でも微細パターンの断線部は見られなかった。
【0034】
実施例3
極限粘度[η]0.70のペレット状ポリエチレンテレフタレートを使用した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0035】
得られたモノフィラメントのデラミ発生指数は12%であった。伸度10%時の強度は4.3cN/dtexであり、実使用上特に問題のないレベルが得られた。また、得られたスクリーン板は実施例1と同様にハレーション防止効果が高く、微細パターンの接着力が良く、鮮明であった。該スクリーン板は3000回の印刷後でも微細パターンの断線部は見られなかった。
【0036】
実施例4
極限粘度[η]0.85のペレット状ポリエチレンテレフタレートを使用した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0037】
得られたモノフィラメントのデラミ発生指数は14%であった。伸度10%時の強度は4.6cN/dtexであり、実使用上特に問題のないレベルが得られた。また、得られたスクリーン板は実施例1と同様にハレーション防止効果が高く、微細パターンの接着力が良く、鮮明であった。該スクリーン板は3000回の印刷後でも微細パターンの断線部は見られなかった。
【0038】
実施例5
酸化チタン含有量が0.1重量%のペレット状ポリエチレンテレフタレートを使用した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0039】
得られたモノフィラメントのデラミ発生指数は15%であった。伸度10%時の強度は4.5cN/dtexであり、実使用上特に問題のないレベルが得られた。また、得られたスクリーン板は実施例1と同様にハレーション防止効果が高く、微細パターンの接着力が良く、鮮明であった。該スクリーン板は3000回の印刷後でも微細パターンの断線部は見られなかった。
【0040】
実施例6
酸化チタン含有量が0.5重量%のペレット状ポリエチレンテレフタレートを使用した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0041】
得られたモノフィラメントのデラミ発生指数は15%であった。伸度10%時の強度は4.5cN/dtexであり、実使用上特に問題のないレベルが得られた。また、得られたスクリーン板は実施例1と同様にハレーション防止効果が高く、微細パターンの接着力が良く、鮮明であった。該スクリーン板は3000回の印刷後でも微細パターンの断線部は見られなかった。
【0042】
実施例7
有機顔料濃度0.5重量%の割合でペレット状の黄色顔料(アンスラキノンイエロー:Y−193 65410)を添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0043】
得られたモノフィラメントのデラミ発生指数は15%であった。伸度10%時の強度は4.6cN/dtexであり、実使用上特に問題のないレベルが得られた。また、得られたスクリーン版は実施例1と同様にハレーション防止効果が高く、微細パターンの接着力が良く、鮮明であった。該スクリーン版は3000回の印刷後でも微細パターンの断線部分は見られなかった。
【0044】
実施例8
有機顔料濃度0.8重量%の割合でペレット状の黄色顔料(アンスラキノンイエロー:Y−193 65410)を添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0045】
得られたモノフィラメントのデラミ発生指数は15%であった。伸度10%時の強度は4.5cN/dtexであり、実使用上特に問題のないレベルが得られた。また、得られたスクリーン版はハレーション防止効果が高く、微細パターンの接着力が良く、鮮明さも得られた。該スクリーン版は3000回の印刷後でも微細パターンの断線部分は見られなかった。
【0046】
実施例9
有機顔料濃度1.0重量%の割合でペレット状の黄色顔料(アンスラキノンイエロー:Y−193 65410)を添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0047】
得られたモノフィラメントのデラミ発生指数は13%であった。伸度10%時の強度は4.3cN/dtexであり、実使用上特に問題のないレベルが得られた。また、得られたスクリーン版はハレーション防止効果が高く、微細パターンの接着力が良く、鮮明さも得られた。該スクリーン版は3000回の印刷後でも微細パターンの断線部分は見られなかった。
【0048】
比較例1
極限粘度[η]0.50のポリエチレンテレフタレートを鞘、極限粘度[η]0.80のポリエチレンテレフタレートを芯とし、ペレット状の鞘成分のポリエチレンテレフタレートに顔料濃度10%の割合でペレット状の黄色顔料(ジスアゾエローHR:Y−83 21108)を添加し、芯:鞘の複合比率が8:2の円形同心複合フィラメントになるよう、紡糸温度300℃、巻き取り速度1000m/分で製造し、このフィラメントを延伸倍率4.4倍、延伸温度91℃、熱セット温度を130℃で延伸し、繊度13dtexの芯鞘複合モノフィラメントを得た以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0049】
得られたモノフィラメントのデラミ指数は5%であった。伸度10%時の強度は4.4cN/dtexであり、寸法安定性に必要十分な強度が得られた。また、ハレーション効果も見られ、微細パターンの接着力、鮮明さも得られたが、該スクリーン版は3000回の印刷後に微細パターンの断線部分が7箇所見られた。
【0050】
比較例2
極限粘度[η]0.60のペレット状ポリエチレンテレフタレートを使用した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0051】
得られたモノフィラメントのデラミ発生指数は11%であった。伸度10%時の強度は3.8cN/dtexであり、寸法安定性に必要十分な強度が得られなかった。また、ハレーション防止効果、微細パターンの接着力、鮮明さはやや劣るものであった。該スクリーン版は3000回の印刷後でも断線部分は見られなかった。
【0052】
比較例3
極限粘度[η]0.90のペレット状ポリエチレンテレフタレートを使用した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
得られたモノフィラメントのデラミ発生指数は8%であった。伸度10%時の強度は4.8cN/dtexであり、寸法安定性に必要十分な強度が得られた。また、ハレーション防止効果、微細パターンの接着力、鮮明さも得られた。しかし、該スクリーン版は3000回の印刷後で断線部分が3箇所見られた。
【0053】
比較例4
有機顔料濃度0.4重量%の割合でペレット状の黄色顔料(アンスラキノンイエロー:Y−193 65410)を添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0054】
得られたモノフィラメントのデラミ発生指数は16%であった。伸度10%時の強度は4.5cN/dtexであり、実使用上特に問題ないレベルが得られた。しかし、繊維長手方向での色斑が生じ、微細パターンの接着力、鮮明さは劣り、ハレーション防止効果もあまり見られなかった。該スクリーン版は3000回の印刷後でも断線部分は見られなかった。
【0055】
比較例5
有機顔料濃度1.1重量%の割合でペレット状の黄色顔料(アンスラキノンイエロー:Y−193 65410)を添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0056】
得られたモノフィラメントのデラミ指数は13%であった。伸度10%時の強度は3.5cN/dtexであり、寸法安定性を維持するのに必要な強度が得られなかった。また、有機顔料濃度が高く、繊維長手方向での色斑が生じたことから、微細パターンの接着力が弱く、またハレーション防止効果も得られなかった。
該スクリーン版は3000回の印刷後でも断線部分は見られなかった。
【0057】
比較例6
極限粘度[η]0.70のペレット状ポリエチレンテレフタレートを使用し、有機顔料を一切添加せず、白色のモノフィラメントとし、製織工程で得られたメッシュ織物を0.2%の中性洗剤で洗浄、乾燥させた後、PVA−酢酸ビニル系感光性樹脂NK−14(ヘキスト社製)を塗布、乾燥し、塗り重ねによって膜厚を10〜12μmとしてスクリーン板を得た以外は、実施例1と同様に実施した。
【0058】
得られたモノフィラメントのデラミ発生指数は9%であった。伸度10%時の強度は4.3cN/dtexであり、実使用上特に問題のないレベルが得られた。
【0059】
また、微細パターンの接着力はやや弱いものの、ハレーション防止効果は見られた。しかし、該スクリーン版は3000回の印刷後で6箇所の断線部分が見られた。
【0060】
結果をまとめて表1に示す。
【0061】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のポリエステル成分からなるスクリーン紗用モノフィラメントにおいて、極限粘度[η]が0.70〜0.85であるポリエステルに、0.5〜1.0重量%の有機系顔料を混入した、デラミ発生指数が10%以上、伸度10%時の強度が4.3cN/dtex以上であるスクリーン紗用モノフィラメント。
【請求項2】
有機系顔料がアンスラキノンイエローである請求項1記載のスクリーン紗用モノフィラメント。

【公開番号】特開2006−241632(P2006−241632A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59027(P2005−59027)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】