スクリーン製版装置
【課題】サーマルヘッドの発熱量を増加させずにフィルムの開孔率を高くすること。
【解決手段】モータ6によりマスタ2を搬送しつつ紗3に貼着したフィルム4をサーマルヘッド(TPH)10で感熱穿孔する際に、モータ6によるマスタ2の搬送速度を増減させたり、TPH10の各加熱素子の加熱駆動周期を増減させて、穿孔間隔を不等間隔とする。これにより、一部の穿孔を同じ位置又は近い位置で重ねて行わせ、一度の加熱では溶融せず穿孔が形成されないフィルム4の部分にも穿孔を形成させ、フィルム4の開孔率を高める。
【解決手段】モータ6によりマスタ2を搬送しつつ紗3に貼着したフィルム4をサーマルヘッド(TPH)10で感熱穿孔する際に、モータ6によるマスタ2の搬送速度を増減させたり、TPH10の各加熱素子の加熱駆動周期を増減させて、穿孔間隔を不等間隔とする。これにより、一部の穿孔を同じ位置又は近い位置で重ねて行わせ、一度の加熱では溶融せず穿孔が形成されないフィルム4の部分にも穿孔を形成させ、フィルム4の開孔率を高める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紗に熱溶融性のフィルムを貼着したマスタをサーマルヘッドで感熱穿孔するスクリーン製版装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷で用いる孔版は、縦糸と横糸を格子状に編み上げた紗に熱溶融性のフィルムを貼着したマスタを用いて製版される。マスタを用いた製版作業では、紗の密度を検出してマスタの解像度を判別し、その解像度に応じて発熱量を適切な値に調整しながらサーマルヘッドでフィルムを熱溶融させて穿孔する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−184310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した製版作業で得られる孔版を用いて印刷を行う場合、ベタ画像について高い再現性を得るためには、穿孔できない紗と重ならない格子の内側のフィルム部分の開孔率をできるだけ高くする必要がある。そして現在は、穿孔面積を拡げるためにサーマルヘッドの発熱量を高くしてフィルムをより多く溶かすという指向が強い。
【0005】
しかし、サーマルヘッドの発熱量を高くすれば、その分サーマルヘッドの耐久性が落ちるというデメリットが生じる。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、サーマルヘッドの発熱量を増加させずにフィルムの開孔率を高くすることができるスクリーン製版装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明のスクリーン製版装置は、
紗に熱溶融性のフィルムを貼着したマスタを搬送方向に搬送しつつ、間欠的に駆動される固定のサーマルヘッドにより前記フィルムを熱溶融させて穿孔するスクリーン製版装置において、
前記フィルムの前記搬送方向における前記サーマルヘッドの穿孔間隔を制御する制御手段を備えており、
前記制御手段は、前記マスタが前記搬送方向に所定距離搬送される間に前記サーマルヘッドが、前記搬送方向における穿孔間隔を不等間隔として前記フィルムを所定回穿孔するように制御する、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載した本発明のスクリーン製版装置によれば、マスタの搬送方向(副走査方向)における所定距離毎に繰り返して、サーマルヘッドによるフィルムの穿孔が不等間隔で所定回ずつ行われる。そして、所定回の穿孔が不等間隔で形成されると言うことは、搬送方向における間隔が短い穿孔と長い穿孔とがフィルムの所定距離の部分に混在することになる。
【0009】
ところで、穿孔間隔が短ければ短いほど、フィルムの近接した部分が繰り返してサーマルヘッドにより加熱されることになる。サーマルヘッドによりフィルムが繰り返し加熱されると、サーマルヘッドからの距離が遠く加熱が不十分で溶融せずに残ったフィルム部分も、さらに加熱されて溶融し穿孔されるようになる。したがって、サーマルヘッドの加熱量を増加させずにフィルムの開孔率を高くすることができる。
【0010】
しかも、搬送方向における所定距離毎に所定回の穿孔が行われるため、搬送方向における所定距離周期での穿孔の密度は一定となる。このため、マスタにより形成する画像の解像度を、搬送方向における所定距離の範囲内で所定回の穿孔を等間隔で行う場合と同等にすることができる。したがって、マスタにより形成する画像の解像度に影響を与えることなくフィルムの開孔率を高くすることができる。
【0011】
また、請求項2に記載した本発明のスクリーン製版装置は、請求項1に記載した本発明のスクリーン製版装置において、前記制御手段は、前記所定距離搬送される間における前記マスタの単位時間当たりの搬送量を増減制御することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載した本発明のスクリーン製版装置によれば、請求項1に記載した本発明のスクリーン製版装置において、前記マスタの搬送駆動源の動作を制御する等して、マスタの単位時間当たりの搬送量を所定距離の搬送中に増減制御することで、所定距離の搬送中に所定回形成される穿孔の間隔を、容易に不等間隔とすることができる。
【0013】
さらに、請求項3に記載した本発明のスクリーン製版装置は、請求項1又は2に記載した本発明のスクリーン製版装置において、前記制御手段は、前記マスタが前記所定距離搬送される間における前記サーマルヘッドの発熱駆動周期を増減制御することを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載した本発明のスクリーン製版装置によれば、請求項1又は2に記載した本発明のスクリーン製版装置において、サーマルヘッドの発熱駆動周期をマスタの所定距離の搬送中に増減制御することで、所定距離の搬送中に所定回形成される穿孔の間隔を、容易に不等間隔とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サーマルヘッドの発熱量を増加させずにフィルムの開孔率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るスクリーン製版装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るスクリーン製版装置の概略構成を示す説明図である。
【図3】図2の紗の一部を拡大して示す平面図である。
【図4】図2のサーマルヘッドとマスタの位置関係を示す説明図である。
【図5】図2の紗とサーマルヘッドの加熱素子との位置関係を示す説明図である。
【図6】図2のセンサにより取得するマスクの所定領域の画像情報を示す説明図である。
【図7】図1及び図2のコントローラの制御によるサーマルヘッドの発熱タイミングとマスタの搬送量との関係を示すグラフである。
【図8】図2のサーマルヘッドの加熱素子によるフィルムの穿孔箇所(穿孔間隔)と開孔率との関係を示す説明図である。
【図9】図2のサーマルヘッドの加熱素子によるフィルムの穿孔間隔を等間隔とした場合を示し、(a)はマスタの搬送量と経過時間との関係を示すグラフ、(b)はフィルムに形成された開孔の拡大写真である。
【図10】図2のサーマルヘッドの加熱素子によるフィルムの穿孔間隔を不等間隔とした場合を示し、(a)はマスタの搬送量と経過時間との関係を示すグラフ、(b)はフィルムに形成された開孔の拡大写真である。
【図11】図2のサーマルヘッドの加熱素子によるフィルムの穿孔間隔を不等間隔とした場合を示し、(a)はマスタの搬送量と経過時間との関係を示すグラフ、(b)はフィルムに形成された開孔の拡大写真である。
【図12】図1及び図2のコントローラが行うモータの駆動制御を示し、(a)は従来の制御パターンを示すタイミングチャート、(b)は本実施形態の制御パターンを示すタイミングチャートである。
【図13】図1及び図2のコントローラが行うサーマルヘッドの加熱素子の加熱駆動制御を示し、(a)は従来の制御パターンを示すタイミングチャート、(b)は本実施形態の制御パターンを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1及び図2は本発明の一実施形態に係るスクリーン製版装置の概略構成を示す説明図である。図1に示す本実施形態のスクリーン製版装置1は、マスタ2の後述するフィルム4(図2参照)を感熱穿孔して製版するための装置である。
【0018】
図2に示すように、製版対象であるマスタ2は、多数の線によって所定の解像度で構成された紗3と、紗3の片面側に貼着された熱溶融性のフィルム4を有している。紗3は、図3の平面図に一部拡大して示すように、所定間隔で配置されて格子状に交差した多数の縦線3a及び横線3bによって所定の解像度で構成されている。紗3の縦線3aは、マスタ2の搬送方向(版移動方向、副走査方向)Xに延在し、横線3bは搬送方向Xと直交する主走査方向Y(図1参照)沿ってに延在している。なお、図2には、図示方向の関係上、図3の横線3bのみを紗3として図示している。
【0019】
図2に示すように、マスタ2は、搬送方向Xにおける上流側と下流側とにそれぞれ配置した2組の搬送ローラ5a,5aによって挟持される。また、2組の搬送ローラ5a,5aの間でマスタ2は、サーマルヘッド(サーマルプリントヘッド、以下、「TPH」と称する。)10とプラテンローラ5とによって挟持される。このプラテンローラ5は、コントローラ20(請求項中の制御手段に相当)が制御するモータ6によって回転駆動される。これにより、各組の搬送ローラ5a,5aに挟持されたマスタ2が、モータ6で駆動されたプラテンローラ5により搬送方向Xにおける上流側から下流側に搬送される。このとき、フィルム4は上方に配置され、紗3は下方に配置される。
【0020】
フィルム4は、TPH10によって感熱穿孔される。TPH10は、図4の説明図に示すように、マスタ2の上方に配置されており、主走査方向Yに複数の加熱素子(図示せず)を列設して構成されている。
【0021】
なお、本実施形態では、図3に示すように、紗3の縦線3a及び横線3bの線径が70μmであり、紗3の線数の縦線3aや横線3bの線数(単位長さ当たりの線数)は70lpi(本数/インチ)である。そして、図5の説明図に示すように、TPH10は、本実施形態では、主走査方向Yにおいて隣り合う2つの縦線3a,3a間に8個配置されるピッチで、複数の加熱素子を有している。TPH10は、コントローラ20によって間欠的に駆動されることで、フィルム4を主走査方向Yの1ライン分ずつ同時に感熱穿孔させる。
【0022】
図1及び図2に示すように、マスタ2の下方には、紗3を検出する光源7とセンサ8が設けられている。光源7は、マスタ2の下面に光路を斜めに向けて配置され、センサ8は光源7からの光がマスタ2に反射した反射光を受ける位置に配置されている。センサ8は、例えばCCDカメラのように面積を認識しうる2次元センサでもよいし、複数のセンサ素子がライン状に集積され、センシングのために所定方向に移動可能とされた1次元センサであってもよい。
【0023】
例えばセンサ8が2次元センサの場合は、図6に模式的に示すように、マスタ2中の所定領域の画像情報を取得し、この画像情報を適宜に画像処理することにより紗3の線数を算出する。この紗3の線数とは、例えば70lpi(本数/インチ)のような単位で示される。この値(線数)は、マスタ2中の所定方向についての紗の間隔を示す値であって、マスタ2によって形成可能な画像の解像度に対応する数値である。なお、紗3の線数が70lpiであり、紗3の縦線3a及び横線3bの線径が72μmである場合、縦線3aどうしや横線3bどうしの間隔は、それぞれ292μmとなる。
【0024】
一方、センサ8が1次元センサの場合は、センサ8又はマスタ2を搬送方向Xに移動し、画像処理を行なってマスタ2の相対的な移動距離に対応した紗3の数を計測して線数を算出する。
【0025】
センサ8からの検出信号を受けたコントローラ20(図1、図2参照)は、マスタ2の紗3の線数に対応する解像度に応じた製版エネルギーで各加熱素子(図示せず)を加熱駆動する。なお、本実施形態では、図5に示すように、マスタ2が362μmだけ搬送方向Xに搬送される間に、TPH10の各加熱素子が16回加熱駆動される。
【0026】
次に、コントローラ20の制御によるマスタ2の搬送量とTPH10の各加熱素子の加熱駆動との関係について、図7のグラフを参照して説明する。TPH10によりマスタ2のフィルム4を感熱穿孔する場合、従来は、マスタ2を一定速度で搬送しつつTPH10の各加熱素子を一定周期毎に加熱駆動している。したがって、マスタ2の搬送量(送り量)と加熱素子の加熱駆動のタイミング(発熱タイミング)との関係は、図7の実線で示すような直線の傾きを持つ関係となる。
【0027】
しかし、マスタ2を低速で搬送しつつTPH10の各加熱素子を一定周期毎に加熱すると、フィルム4のうちTPH10からの距離が遠い部分(例えば、紗3の格子の中心部分)が、加熱不十分のため溶融せずに残り、フィルム4の開孔率が低く止まってしまう。したがって、ベタ画像用の孔版を製版する場合には、ベタ画像の再現性が十分に得られない。
【0028】
そこで、本実施形態では、図7の破線で示すように、マスタ2の搬送量(送り量)を適宜増減させて、マスタ2の搬送量(送り量)を時折少なくするようにしている。これにより、TPH10の加熱素子による穿孔間隔が短くなった部分において、ある穿孔時に加熱不十分で溶融せずに残ったフィルム4部分を、次の穿孔時にTPH10の加熱素子でさらに加熱して、穿孔することができる。
【0029】
先に説明したように、TPH10の各加熱素子は、マスタ2が搬送方向Xに362μm搬送される間に16回加熱駆動される。そこで、本実施形態では、おおよそ4分の1の搬送距離(請求項中の所定距離に相当)を区切りとし、この搬送距離だけマスタ2が搬送される間にTPH10の各加熱素子でフィルム4を4回(=16/4)穿孔する間隔を、等間隔から不等間隔に変更する。
【0030】
図8はコントローラ20の制御によって、4回の穿孔間隔を等間隔から不等間隔に変えた場合のフィルム4上における穿孔箇所と開孔率との関係を示す説明図である。図8に示すように、穿孔間隔を等間隔とした従来のパターン((1)等間隔))で、4回の穿孔によりマスタ2を64μm搬送した場合は、フィルム4の開孔率が27.9%となる。これに対し、一部の穿孔間隔を短くするパターン((2)2度打ちその1、(3)2度打ちその2)で、4回の穿孔によりマスタ2をそれぞれ59μm、39μmだけ搬送すると、フィルム4の開孔率はそれぞれ29.2%、36.9%となる。
【0031】
以下、各パターンについて詳説する。まず、穿孔間隔を等間隔とする従来のパターン((1)等間隔))では、図9(a)のグラフに示すように、1つ目の穿孔位置(0μm)から4つ目の穿孔位置(64μm)までマスタ2を64μm搬送する間、フィルム4をほぼ等間隔で穿孔している。この場合は、図9(b)の拡大写真に示すような感熱穿孔がフィルム4に形成され、その開孔率は27.9%となる。
【0032】
なお、このパターンでは、4つ目の穿孔位置からマスタ2を23μm搬送した位置(81μm)で5つ目の穿孔を行っている。つまり、16回の穿孔で搬送する距離の大体4分の1の距離だけ搬送された位置から5つ目以降の穿孔を開始している。したがって、このパターンでは、マスタ2を362μm搬送する間に16回の穿孔を行うペースが維持されている。
【0033】
次に、穿孔間隔を不等間隔とする1つ目のパターン((2)2度打ちその1))では、図10(a)のグラフに示すように、1つ目の穿孔位置(0μm)から4つ目の穿孔位置(59μm)までマスタ2を59μm搬送する間、フィルム4を一部不等間隔で穿孔している。
【0034】
具体的には、1つ目の穿孔位置(0μm)から2つ目の穿孔位置(32μm)まではマスタ2を32μm搬送した後、さらに、2つ目の穿孔位置から3つ目の穿孔位置(54μm)までマスタ2を22μm搬送しているが、3つ目の穿孔位置から4つ目の穿孔位置(59μm)まではマスタ2を5μmしか搬送していない。つまり、このパターンでは、3つ目と4つ目の穿孔位置をほぼ同じ位置としている。この場合は、3つ目の穿孔で十分に加熱されなかった部分のフィルム4が4つ目の穿孔でさらに加熱されて溶融し穿孔される。
【0035】
したがって、この場合は図10(b)の拡大写真に示すように、図9(b)の拡大写真では穿孔されずに残っていたフィルム4の部分にも小さい感熱穿孔が形成され、その開孔率は29.2%に増える。
【0036】
なお、このパターンでは、4つ目の穿孔位置から5つ目の穿孔位置(81μm)までマスタ2を22μm搬送し、1つ目の穿孔位置(0μm)からマスタ2を81μm搬送した位置で5つ目の穿孔を行っている。つまり、16回の穿孔で搬送する距離の大体4分の1の距離だけ搬送した位置から5つ目以降の穿孔を開始している。したがって、このパターンでは、3つ目と4つ目の穿孔がほとんど重ねて行われるように穿孔間隔を不等間隔にしているが、5つ目以降の穿孔については、マスタ2を362μm搬送する間に16回の穿孔を行うペースが維持されている。
【0037】
続いて、穿孔間隔を不等間隔とする2つ目のパターン((3)2度打ちその2)では、図11(a)のグラフに示すように、1つ目の穿孔位置(0μm)から4つ目の穿孔位置(39μm)までマスタ2を搬送する間、フィルム4を一部不等間隔で穿孔している。
【0038】
具体的には、1つ目の穿孔位置(0μm)から2つ目の穿孔位置(16μm)までマスタ2を搬送した後、さらに、2つ目の穿孔位置から3つ目の穿孔位置(37μm)までマスタ2を21μm搬送しているが、3つ目の穿孔位置から4つ目の穿孔位置(39μm)まではマスタ2を2μmしか搬送していない。つまり、このパターンでは、3つ目と4つ目の穿孔位置を図10(a)のグラフに示すパターンよりもさらにほぼ同じ位置としている。この場合は、3つ目の穿孔で十分に加熱されなかった部分のフィルム4が4つ目の穿孔でより一層加熱されて溶融し穿孔される。
【0039】
したがって、この場合は図11(b)の拡大写真に示すように、図10(b)の拡大写真でフィルム4に形成されていた小さい感熱穿孔がさらに増え、その開孔率は36.9%まで増加する。
【0040】
なお、このパターンでは、4つ目の穿孔位置から5つ目の穿孔位置(90μm)までマスタ2を51μmも一気に搬送し、1つ目の穿孔位置(0μm)からマスタ2を81μm搬送した位置で5つ目の穿孔を行っている。つまり、16回の穿孔で搬送する距離の大体4分の1の距離だけ搬送した位置から5つ目以降の穿孔を開始している。したがって、このパターンでも、3つ目と4つ目の穿孔がほとんど重ねて行われるように穿孔間隔を不等間隔にしているが、5つ目以降の穿孔については、マスタ2を362μm搬送する間に16回の穿孔を行うペースが維持されている。
【0041】
図8に示すパターン((2)2度打ちその1、(3)2度打ちその2)のように一部の穿孔間隔を短くするためにコントローラ20が行う処理は、大きく分けて2通りある。つまり、1つ目から5つ目までの各穿孔を行う間の、モータ6の速度調整によりマスタ2の単位時間当たりの搬送量を増減制御する方法と、TPH10の各加熱素子の発熱駆動周期を増減制御する方法とがある。前者と後者のそれぞれを、従来の等間隔で穿孔する場合と比較するのが、図12(a),(b)及び図13(a),(b)のタイミングチャートである。
【0042】
まず、モータ6の速度調整によりマスタ2の単位時間当たりの搬送量をコントローラ20が増減制御する場合を、図12(a),(b)を参照して説明する。穿孔間隔を等間隔とする従来のパターンで制御する場合は、図12(a)に示すように、コントローラ20は、不図示のタイミングクロックに同期して一定周期毎にローアクティブのストローブ信号が発生する毎に、TPH10の各加熱素子を加熱駆動する。また、コントローラ20は、ステッピングモータで構成されるモータ6の各相の駆動パルス信号を常時出力し、モータ6によりマスタ2を一定速度で常時搬送させる。これにより、フィルム4には、TPH10の各加熱素子により等間隔で穿孔が形成される。
【0043】
一方、穿孔間隔を不等間隔とするパターンで制御する場合は、図12(b)に示すように、コントローラ20は、ストローブ信号が発生する毎にTPH10の各加熱素子を加熱駆動する一方で、モータ6の各相の駆動パルス信号を限られた期間にしか出力しない。また、コントローラ20は、フィルム4が4回穿孔される間に従来のパターンの場合と同じ距離だけマスタ2が搬送されるように、駆動パルス信号の単位時間当たりのパルス数を増やして搬送速度を従来のパターンよりも増加させる。これにより、モータ6が間欠駆動され、フィルム4には、TPH10の各加熱素子により短い間隔と長い間隔とが混じった不等間隔で穿孔が形成される。
【0044】
次に、TPH10の各加熱素子の発熱駆動周期をコントローラ20が増減制御する場合を、図13(a),(b)を参照して説明する。TPH10の各加熱素子の発熱駆動周期を一定周期とする従来のパターンで制御する場合は、コントローラ20は、マスタ2が常時一定速度で搬送されるようにモータ6の駆動を制御する。また、図13(a)に示すように、コントローラ20は、タイミングクロックに同期して一定周期毎にTPH10の駆動データを発生させ、これをラッチして生成したストローブ信号の出力中にTPH10の各加熱素子を発熱駆動させる。これにより、フィルム4には、TPH10の各加熱素子により等間隔で穿孔が形成される。
【0045】
一方、穿孔間隔を不等間隔とするパターンで制御する場合は、コントローラ20は、マスタ2が常時一定速度で搬送されるようにモータ6の駆動を制御する。また、図13(b)に示すように、コントローラ20は、タイミングクロックに同期し短周期と長周期とを交互に繰り返してTPH10の駆動データを発生させ、これをラッチして生成したストローブ信号の出力中にTPH10の各加熱素子を発熱駆動させる。これにより、フィルム4には、TPH10の各加熱素子により短い間隔と長い間隔とが混じった不等間隔で穿孔が形成される。
【0046】
以上に説明した本実施形態のスクリーン製版装置1によれば、モータ6によりマスタ2を搬送しつつ紗3に貼着したフィルム4をTPH10で感熱穿孔する際に、モータ6によるマスタ2の搬送速度を増減させたり、TPH10の各加熱素子の加熱駆動周期を増減させて、穿孔間隔を不等間隔とするようにした。これにより、一部の穿孔を同じ位置又は近い位置で重ねて行わせて、一度の加熱では溶融せず穿孔が形成されないフィルム4の部分にも穿孔を形成させ、フィルム4の開孔率を高めることができる。
【0047】
そして、本実施形態のスクリーン製版装置1によれば、TPH10の各加熱素子の発熱量を増やさずにフィルム4の開孔率を高めることができるので、TPH10の耐久性の劣化を抑制し長寿命化を図ることができる。
【0048】
しかも、フィルム4に等間隔で穿孔する場合と同じ距離だけ、4回の穿孔毎にマスタ2を搬送方向Xに搬送するので、4回の穿孔中に穿孔間隔を増減させても、4回の穿孔を1つのブロックと考えると、ブロック間での穿孔密度は一定に保たれる。このため、マスタ2により形成する画像の解像度を、フィルム4に等間隔で穿孔する場合と同等にすることができる。したがって、マスタ2により形成する画像の解像度に影響を与えることなくフィルム4の開孔率を高くすることができる。
【0049】
なお、コントローラ20は、図12(b)に示すモータ6の間欠的な駆動制御と図13(b)に示すTPH10の各加熱素子の駆動周期の増減制御とを組み合わせて行って、フィルム4に不等間隔で穿孔を形成させるようにしてもよい。
【0050】
また、図12(b)に示すようにモータ6を間欠的に駆動する代わりに、モータ6からプラテンローラ5,5までの動力伝達経路中に、ギア列の切り替え等による変速機構を設け、これをコントローラ20によって制御して、モータ6を一定速度で駆動させつつマスタ2の搬送速度を増減させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 スクリーン製版装置
2 マスタ
3 紗
3a 縦線
3b 横線
4 フィルム
5 プラテンローラ
5a 搬送ローラ
6 モータ
7 光源
8 センサ
10 サーマルヘッド(サーマルプリントヘッド、TPH)
20 コントローラ
X 搬送方向
Y 主走査方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、紗に熱溶融性のフィルムを貼着したマスタをサーマルヘッドで感熱穿孔するスクリーン製版装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷で用いる孔版は、縦糸と横糸を格子状に編み上げた紗に熱溶融性のフィルムを貼着したマスタを用いて製版される。マスタを用いた製版作業では、紗の密度を検出してマスタの解像度を判別し、その解像度に応じて発熱量を適切な値に調整しながらサーマルヘッドでフィルムを熱溶融させて穿孔する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−184310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した製版作業で得られる孔版を用いて印刷を行う場合、ベタ画像について高い再現性を得るためには、穿孔できない紗と重ならない格子の内側のフィルム部分の開孔率をできるだけ高くする必要がある。そして現在は、穿孔面積を拡げるためにサーマルヘッドの発熱量を高くしてフィルムをより多く溶かすという指向が強い。
【0005】
しかし、サーマルヘッドの発熱量を高くすれば、その分サーマルヘッドの耐久性が落ちるというデメリットが生じる。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、サーマルヘッドの発熱量を増加させずにフィルムの開孔率を高くすることができるスクリーン製版装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明のスクリーン製版装置は、
紗に熱溶融性のフィルムを貼着したマスタを搬送方向に搬送しつつ、間欠的に駆動される固定のサーマルヘッドにより前記フィルムを熱溶融させて穿孔するスクリーン製版装置において、
前記フィルムの前記搬送方向における前記サーマルヘッドの穿孔間隔を制御する制御手段を備えており、
前記制御手段は、前記マスタが前記搬送方向に所定距離搬送される間に前記サーマルヘッドが、前記搬送方向における穿孔間隔を不等間隔として前記フィルムを所定回穿孔するように制御する、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載した本発明のスクリーン製版装置によれば、マスタの搬送方向(副走査方向)における所定距離毎に繰り返して、サーマルヘッドによるフィルムの穿孔が不等間隔で所定回ずつ行われる。そして、所定回の穿孔が不等間隔で形成されると言うことは、搬送方向における間隔が短い穿孔と長い穿孔とがフィルムの所定距離の部分に混在することになる。
【0009】
ところで、穿孔間隔が短ければ短いほど、フィルムの近接した部分が繰り返してサーマルヘッドにより加熱されることになる。サーマルヘッドによりフィルムが繰り返し加熱されると、サーマルヘッドからの距離が遠く加熱が不十分で溶融せずに残ったフィルム部分も、さらに加熱されて溶融し穿孔されるようになる。したがって、サーマルヘッドの加熱量を増加させずにフィルムの開孔率を高くすることができる。
【0010】
しかも、搬送方向における所定距離毎に所定回の穿孔が行われるため、搬送方向における所定距離周期での穿孔の密度は一定となる。このため、マスタにより形成する画像の解像度を、搬送方向における所定距離の範囲内で所定回の穿孔を等間隔で行う場合と同等にすることができる。したがって、マスタにより形成する画像の解像度に影響を与えることなくフィルムの開孔率を高くすることができる。
【0011】
また、請求項2に記載した本発明のスクリーン製版装置は、請求項1に記載した本発明のスクリーン製版装置において、前記制御手段は、前記所定距離搬送される間における前記マスタの単位時間当たりの搬送量を増減制御することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載した本発明のスクリーン製版装置によれば、請求項1に記載した本発明のスクリーン製版装置において、前記マスタの搬送駆動源の動作を制御する等して、マスタの単位時間当たりの搬送量を所定距離の搬送中に増減制御することで、所定距離の搬送中に所定回形成される穿孔の間隔を、容易に不等間隔とすることができる。
【0013】
さらに、請求項3に記載した本発明のスクリーン製版装置は、請求項1又は2に記載した本発明のスクリーン製版装置において、前記制御手段は、前記マスタが前記所定距離搬送される間における前記サーマルヘッドの発熱駆動周期を増減制御することを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載した本発明のスクリーン製版装置によれば、請求項1又は2に記載した本発明のスクリーン製版装置において、サーマルヘッドの発熱駆動周期をマスタの所定距離の搬送中に増減制御することで、所定距離の搬送中に所定回形成される穿孔の間隔を、容易に不等間隔とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サーマルヘッドの発熱量を増加させずにフィルムの開孔率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るスクリーン製版装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るスクリーン製版装置の概略構成を示す説明図である。
【図3】図2の紗の一部を拡大して示す平面図である。
【図4】図2のサーマルヘッドとマスタの位置関係を示す説明図である。
【図5】図2の紗とサーマルヘッドの加熱素子との位置関係を示す説明図である。
【図6】図2のセンサにより取得するマスクの所定領域の画像情報を示す説明図である。
【図7】図1及び図2のコントローラの制御によるサーマルヘッドの発熱タイミングとマスタの搬送量との関係を示すグラフである。
【図8】図2のサーマルヘッドの加熱素子によるフィルムの穿孔箇所(穿孔間隔)と開孔率との関係を示す説明図である。
【図9】図2のサーマルヘッドの加熱素子によるフィルムの穿孔間隔を等間隔とした場合を示し、(a)はマスタの搬送量と経過時間との関係を示すグラフ、(b)はフィルムに形成された開孔の拡大写真である。
【図10】図2のサーマルヘッドの加熱素子によるフィルムの穿孔間隔を不等間隔とした場合を示し、(a)はマスタの搬送量と経過時間との関係を示すグラフ、(b)はフィルムに形成された開孔の拡大写真である。
【図11】図2のサーマルヘッドの加熱素子によるフィルムの穿孔間隔を不等間隔とした場合を示し、(a)はマスタの搬送量と経過時間との関係を示すグラフ、(b)はフィルムに形成された開孔の拡大写真である。
【図12】図1及び図2のコントローラが行うモータの駆動制御を示し、(a)は従来の制御パターンを示すタイミングチャート、(b)は本実施形態の制御パターンを示すタイミングチャートである。
【図13】図1及び図2のコントローラが行うサーマルヘッドの加熱素子の加熱駆動制御を示し、(a)は従来の制御パターンを示すタイミングチャート、(b)は本実施形態の制御パターンを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1及び図2は本発明の一実施形態に係るスクリーン製版装置の概略構成を示す説明図である。図1に示す本実施形態のスクリーン製版装置1は、マスタ2の後述するフィルム4(図2参照)を感熱穿孔して製版するための装置である。
【0018】
図2に示すように、製版対象であるマスタ2は、多数の線によって所定の解像度で構成された紗3と、紗3の片面側に貼着された熱溶融性のフィルム4を有している。紗3は、図3の平面図に一部拡大して示すように、所定間隔で配置されて格子状に交差した多数の縦線3a及び横線3bによって所定の解像度で構成されている。紗3の縦線3aは、マスタ2の搬送方向(版移動方向、副走査方向)Xに延在し、横線3bは搬送方向Xと直交する主走査方向Y(図1参照)沿ってに延在している。なお、図2には、図示方向の関係上、図3の横線3bのみを紗3として図示している。
【0019】
図2に示すように、マスタ2は、搬送方向Xにおける上流側と下流側とにそれぞれ配置した2組の搬送ローラ5a,5aによって挟持される。また、2組の搬送ローラ5a,5aの間でマスタ2は、サーマルヘッド(サーマルプリントヘッド、以下、「TPH」と称する。)10とプラテンローラ5とによって挟持される。このプラテンローラ5は、コントローラ20(請求項中の制御手段に相当)が制御するモータ6によって回転駆動される。これにより、各組の搬送ローラ5a,5aに挟持されたマスタ2が、モータ6で駆動されたプラテンローラ5により搬送方向Xにおける上流側から下流側に搬送される。このとき、フィルム4は上方に配置され、紗3は下方に配置される。
【0020】
フィルム4は、TPH10によって感熱穿孔される。TPH10は、図4の説明図に示すように、マスタ2の上方に配置されており、主走査方向Yに複数の加熱素子(図示せず)を列設して構成されている。
【0021】
なお、本実施形態では、図3に示すように、紗3の縦線3a及び横線3bの線径が70μmであり、紗3の線数の縦線3aや横線3bの線数(単位長さ当たりの線数)は70lpi(本数/インチ)である。そして、図5の説明図に示すように、TPH10は、本実施形態では、主走査方向Yにおいて隣り合う2つの縦線3a,3a間に8個配置されるピッチで、複数の加熱素子を有している。TPH10は、コントローラ20によって間欠的に駆動されることで、フィルム4を主走査方向Yの1ライン分ずつ同時に感熱穿孔させる。
【0022】
図1及び図2に示すように、マスタ2の下方には、紗3を検出する光源7とセンサ8が設けられている。光源7は、マスタ2の下面に光路を斜めに向けて配置され、センサ8は光源7からの光がマスタ2に反射した反射光を受ける位置に配置されている。センサ8は、例えばCCDカメラのように面積を認識しうる2次元センサでもよいし、複数のセンサ素子がライン状に集積され、センシングのために所定方向に移動可能とされた1次元センサであってもよい。
【0023】
例えばセンサ8が2次元センサの場合は、図6に模式的に示すように、マスタ2中の所定領域の画像情報を取得し、この画像情報を適宜に画像処理することにより紗3の線数を算出する。この紗3の線数とは、例えば70lpi(本数/インチ)のような単位で示される。この値(線数)は、マスタ2中の所定方向についての紗の間隔を示す値であって、マスタ2によって形成可能な画像の解像度に対応する数値である。なお、紗3の線数が70lpiであり、紗3の縦線3a及び横線3bの線径が72μmである場合、縦線3aどうしや横線3bどうしの間隔は、それぞれ292μmとなる。
【0024】
一方、センサ8が1次元センサの場合は、センサ8又はマスタ2を搬送方向Xに移動し、画像処理を行なってマスタ2の相対的な移動距離に対応した紗3の数を計測して線数を算出する。
【0025】
センサ8からの検出信号を受けたコントローラ20(図1、図2参照)は、マスタ2の紗3の線数に対応する解像度に応じた製版エネルギーで各加熱素子(図示せず)を加熱駆動する。なお、本実施形態では、図5に示すように、マスタ2が362μmだけ搬送方向Xに搬送される間に、TPH10の各加熱素子が16回加熱駆動される。
【0026】
次に、コントローラ20の制御によるマスタ2の搬送量とTPH10の各加熱素子の加熱駆動との関係について、図7のグラフを参照して説明する。TPH10によりマスタ2のフィルム4を感熱穿孔する場合、従来は、マスタ2を一定速度で搬送しつつTPH10の各加熱素子を一定周期毎に加熱駆動している。したがって、マスタ2の搬送量(送り量)と加熱素子の加熱駆動のタイミング(発熱タイミング)との関係は、図7の実線で示すような直線の傾きを持つ関係となる。
【0027】
しかし、マスタ2を低速で搬送しつつTPH10の各加熱素子を一定周期毎に加熱すると、フィルム4のうちTPH10からの距離が遠い部分(例えば、紗3の格子の中心部分)が、加熱不十分のため溶融せずに残り、フィルム4の開孔率が低く止まってしまう。したがって、ベタ画像用の孔版を製版する場合には、ベタ画像の再現性が十分に得られない。
【0028】
そこで、本実施形態では、図7の破線で示すように、マスタ2の搬送量(送り量)を適宜増減させて、マスタ2の搬送量(送り量)を時折少なくするようにしている。これにより、TPH10の加熱素子による穿孔間隔が短くなった部分において、ある穿孔時に加熱不十分で溶融せずに残ったフィルム4部分を、次の穿孔時にTPH10の加熱素子でさらに加熱して、穿孔することができる。
【0029】
先に説明したように、TPH10の各加熱素子は、マスタ2が搬送方向Xに362μm搬送される間に16回加熱駆動される。そこで、本実施形態では、おおよそ4分の1の搬送距離(請求項中の所定距離に相当)を区切りとし、この搬送距離だけマスタ2が搬送される間にTPH10の各加熱素子でフィルム4を4回(=16/4)穿孔する間隔を、等間隔から不等間隔に変更する。
【0030】
図8はコントローラ20の制御によって、4回の穿孔間隔を等間隔から不等間隔に変えた場合のフィルム4上における穿孔箇所と開孔率との関係を示す説明図である。図8に示すように、穿孔間隔を等間隔とした従来のパターン((1)等間隔))で、4回の穿孔によりマスタ2を64μm搬送した場合は、フィルム4の開孔率が27.9%となる。これに対し、一部の穿孔間隔を短くするパターン((2)2度打ちその1、(3)2度打ちその2)で、4回の穿孔によりマスタ2をそれぞれ59μm、39μmだけ搬送すると、フィルム4の開孔率はそれぞれ29.2%、36.9%となる。
【0031】
以下、各パターンについて詳説する。まず、穿孔間隔を等間隔とする従来のパターン((1)等間隔))では、図9(a)のグラフに示すように、1つ目の穿孔位置(0μm)から4つ目の穿孔位置(64μm)までマスタ2を64μm搬送する間、フィルム4をほぼ等間隔で穿孔している。この場合は、図9(b)の拡大写真に示すような感熱穿孔がフィルム4に形成され、その開孔率は27.9%となる。
【0032】
なお、このパターンでは、4つ目の穿孔位置からマスタ2を23μm搬送した位置(81μm)で5つ目の穿孔を行っている。つまり、16回の穿孔で搬送する距離の大体4分の1の距離だけ搬送された位置から5つ目以降の穿孔を開始している。したがって、このパターンでは、マスタ2を362μm搬送する間に16回の穿孔を行うペースが維持されている。
【0033】
次に、穿孔間隔を不等間隔とする1つ目のパターン((2)2度打ちその1))では、図10(a)のグラフに示すように、1つ目の穿孔位置(0μm)から4つ目の穿孔位置(59μm)までマスタ2を59μm搬送する間、フィルム4を一部不等間隔で穿孔している。
【0034】
具体的には、1つ目の穿孔位置(0μm)から2つ目の穿孔位置(32μm)まではマスタ2を32μm搬送した後、さらに、2つ目の穿孔位置から3つ目の穿孔位置(54μm)までマスタ2を22μm搬送しているが、3つ目の穿孔位置から4つ目の穿孔位置(59μm)まではマスタ2を5μmしか搬送していない。つまり、このパターンでは、3つ目と4つ目の穿孔位置をほぼ同じ位置としている。この場合は、3つ目の穿孔で十分に加熱されなかった部分のフィルム4が4つ目の穿孔でさらに加熱されて溶融し穿孔される。
【0035】
したがって、この場合は図10(b)の拡大写真に示すように、図9(b)の拡大写真では穿孔されずに残っていたフィルム4の部分にも小さい感熱穿孔が形成され、その開孔率は29.2%に増える。
【0036】
なお、このパターンでは、4つ目の穿孔位置から5つ目の穿孔位置(81μm)までマスタ2を22μm搬送し、1つ目の穿孔位置(0μm)からマスタ2を81μm搬送した位置で5つ目の穿孔を行っている。つまり、16回の穿孔で搬送する距離の大体4分の1の距離だけ搬送した位置から5つ目以降の穿孔を開始している。したがって、このパターンでは、3つ目と4つ目の穿孔がほとんど重ねて行われるように穿孔間隔を不等間隔にしているが、5つ目以降の穿孔については、マスタ2を362μm搬送する間に16回の穿孔を行うペースが維持されている。
【0037】
続いて、穿孔間隔を不等間隔とする2つ目のパターン((3)2度打ちその2)では、図11(a)のグラフに示すように、1つ目の穿孔位置(0μm)から4つ目の穿孔位置(39μm)までマスタ2を搬送する間、フィルム4を一部不等間隔で穿孔している。
【0038】
具体的には、1つ目の穿孔位置(0μm)から2つ目の穿孔位置(16μm)までマスタ2を搬送した後、さらに、2つ目の穿孔位置から3つ目の穿孔位置(37μm)までマスタ2を21μm搬送しているが、3つ目の穿孔位置から4つ目の穿孔位置(39μm)まではマスタ2を2μmしか搬送していない。つまり、このパターンでは、3つ目と4つ目の穿孔位置を図10(a)のグラフに示すパターンよりもさらにほぼ同じ位置としている。この場合は、3つ目の穿孔で十分に加熱されなかった部分のフィルム4が4つ目の穿孔でより一層加熱されて溶融し穿孔される。
【0039】
したがって、この場合は図11(b)の拡大写真に示すように、図10(b)の拡大写真でフィルム4に形成されていた小さい感熱穿孔がさらに増え、その開孔率は36.9%まで増加する。
【0040】
なお、このパターンでは、4つ目の穿孔位置から5つ目の穿孔位置(90μm)までマスタ2を51μmも一気に搬送し、1つ目の穿孔位置(0μm)からマスタ2を81μm搬送した位置で5つ目の穿孔を行っている。つまり、16回の穿孔で搬送する距離の大体4分の1の距離だけ搬送した位置から5つ目以降の穿孔を開始している。したがって、このパターンでも、3つ目と4つ目の穿孔がほとんど重ねて行われるように穿孔間隔を不等間隔にしているが、5つ目以降の穿孔については、マスタ2を362μm搬送する間に16回の穿孔を行うペースが維持されている。
【0041】
図8に示すパターン((2)2度打ちその1、(3)2度打ちその2)のように一部の穿孔間隔を短くするためにコントローラ20が行う処理は、大きく分けて2通りある。つまり、1つ目から5つ目までの各穿孔を行う間の、モータ6の速度調整によりマスタ2の単位時間当たりの搬送量を増減制御する方法と、TPH10の各加熱素子の発熱駆動周期を増減制御する方法とがある。前者と後者のそれぞれを、従来の等間隔で穿孔する場合と比較するのが、図12(a),(b)及び図13(a),(b)のタイミングチャートである。
【0042】
まず、モータ6の速度調整によりマスタ2の単位時間当たりの搬送量をコントローラ20が増減制御する場合を、図12(a),(b)を参照して説明する。穿孔間隔を等間隔とする従来のパターンで制御する場合は、図12(a)に示すように、コントローラ20は、不図示のタイミングクロックに同期して一定周期毎にローアクティブのストローブ信号が発生する毎に、TPH10の各加熱素子を加熱駆動する。また、コントローラ20は、ステッピングモータで構成されるモータ6の各相の駆動パルス信号を常時出力し、モータ6によりマスタ2を一定速度で常時搬送させる。これにより、フィルム4には、TPH10の各加熱素子により等間隔で穿孔が形成される。
【0043】
一方、穿孔間隔を不等間隔とするパターンで制御する場合は、図12(b)に示すように、コントローラ20は、ストローブ信号が発生する毎にTPH10の各加熱素子を加熱駆動する一方で、モータ6の各相の駆動パルス信号を限られた期間にしか出力しない。また、コントローラ20は、フィルム4が4回穿孔される間に従来のパターンの場合と同じ距離だけマスタ2が搬送されるように、駆動パルス信号の単位時間当たりのパルス数を増やして搬送速度を従来のパターンよりも増加させる。これにより、モータ6が間欠駆動され、フィルム4には、TPH10の各加熱素子により短い間隔と長い間隔とが混じった不等間隔で穿孔が形成される。
【0044】
次に、TPH10の各加熱素子の発熱駆動周期をコントローラ20が増減制御する場合を、図13(a),(b)を参照して説明する。TPH10の各加熱素子の発熱駆動周期を一定周期とする従来のパターンで制御する場合は、コントローラ20は、マスタ2が常時一定速度で搬送されるようにモータ6の駆動を制御する。また、図13(a)に示すように、コントローラ20は、タイミングクロックに同期して一定周期毎にTPH10の駆動データを発生させ、これをラッチして生成したストローブ信号の出力中にTPH10の各加熱素子を発熱駆動させる。これにより、フィルム4には、TPH10の各加熱素子により等間隔で穿孔が形成される。
【0045】
一方、穿孔間隔を不等間隔とするパターンで制御する場合は、コントローラ20は、マスタ2が常時一定速度で搬送されるようにモータ6の駆動を制御する。また、図13(b)に示すように、コントローラ20は、タイミングクロックに同期し短周期と長周期とを交互に繰り返してTPH10の駆動データを発生させ、これをラッチして生成したストローブ信号の出力中にTPH10の各加熱素子を発熱駆動させる。これにより、フィルム4には、TPH10の各加熱素子により短い間隔と長い間隔とが混じった不等間隔で穿孔が形成される。
【0046】
以上に説明した本実施形態のスクリーン製版装置1によれば、モータ6によりマスタ2を搬送しつつ紗3に貼着したフィルム4をTPH10で感熱穿孔する際に、モータ6によるマスタ2の搬送速度を増減させたり、TPH10の各加熱素子の加熱駆動周期を増減させて、穿孔間隔を不等間隔とするようにした。これにより、一部の穿孔を同じ位置又は近い位置で重ねて行わせて、一度の加熱では溶融せず穿孔が形成されないフィルム4の部分にも穿孔を形成させ、フィルム4の開孔率を高めることができる。
【0047】
そして、本実施形態のスクリーン製版装置1によれば、TPH10の各加熱素子の発熱量を増やさずにフィルム4の開孔率を高めることができるので、TPH10の耐久性の劣化を抑制し長寿命化を図ることができる。
【0048】
しかも、フィルム4に等間隔で穿孔する場合と同じ距離だけ、4回の穿孔毎にマスタ2を搬送方向Xに搬送するので、4回の穿孔中に穿孔間隔を増減させても、4回の穿孔を1つのブロックと考えると、ブロック間での穿孔密度は一定に保たれる。このため、マスタ2により形成する画像の解像度を、フィルム4に等間隔で穿孔する場合と同等にすることができる。したがって、マスタ2により形成する画像の解像度に影響を与えることなくフィルム4の開孔率を高くすることができる。
【0049】
なお、コントローラ20は、図12(b)に示すモータ6の間欠的な駆動制御と図13(b)に示すTPH10の各加熱素子の駆動周期の増減制御とを組み合わせて行って、フィルム4に不等間隔で穿孔を形成させるようにしてもよい。
【0050】
また、図12(b)に示すようにモータ6を間欠的に駆動する代わりに、モータ6からプラテンローラ5,5までの動力伝達経路中に、ギア列の切り替え等による変速機構を設け、これをコントローラ20によって制御して、モータ6を一定速度で駆動させつつマスタ2の搬送速度を増減させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 スクリーン製版装置
2 マスタ
3 紗
3a 縦線
3b 横線
4 フィルム
5 プラテンローラ
5a 搬送ローラ
6 モータ
7 光源
8 センサ
10 サーマルヘッド(サーマルプリントヘッド、TPH)
20 コントローラ
X 搬送方向
Y 主走査方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紗に熱溶融性のフィルムを貼着したマスタを搬送方向に搬送しつつ、間欠的に駆動される固定のサーマルヘッドにより前記フィルムを熱溶融させて穿孔するスクリーン製版装置において、
前記フィルムの前記搬送方向における前記サーマルヘッドの穿孔間隔を制御する制御手段を備えており、
前記制御手段は、前記マスタが前記搬送方向に所定距離搬送される間に前記サーマルヘッドが、前記搬送方向における穿孔間隔を不等間隔として前記フィルムを所定回穿孔するように制御する、
ことを特徴とするスクリーン製版装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記所定距離搬送される間における前記マスタの単位時間当たりの搬送量を増減制御することを特徴とする請求項1記載のスクリーン製版装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記マスタが前記所定距離搬送される間における前記サーマルヘッドの発熱駆動周期を増減制御することを特徴とする請求項1又は2記載のスクリーン製版装置。
【請求項1】
紗に熱溶融性のフィルムを貼着したマスタを搬送方向に搬送しつつ、間欠的に駆動される固定のサーマルヘッドにより前記フィルムを熱溶融させて穿孔するスクリーン製版装置において、
前記フィルムの前記搬送方向における前記サーマルヘッドの穿孔間隔を制御する制御手段を備えており、
前記制御手段は、前記マスタが前記搬送方向に所定距離搬送される間に前記サーマルヘッドが、前記搬送方向における穿孔間隔を不等間隔として前記フィルムを所定回穿孔するように制御する、
ことを特徴とするスクリーン製版装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記所定距離搬送される間における前記マスタの単位時間当たりの搬送量を増減制御することを特徴とする請求項1記載のスクリーン製版装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記マスタが前記所定距離搬送される間における前記サーマルヘッドの発熱駆動周期を増減制御することを特徴とする請求項1又は2記載のスクリーン製版装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−99854(P2013−99854A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243492(P2011−243492)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
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