説明

スタッカークレーン用の振動検出装置及びスタッカークレーン

【課題】歪ゲージをスタッカークレーンに装着することを迅速に行うことができるスタッカークレーン用の振動検出装置を提供する。
【解決手段】走行車体部分に立設されたマスト4の車体前後方向での振動を歪ゲージにて検出するように構成され、板状の被検出体13が、マスト4の車体前後方向の振動によって伸縮応力及び曲げ応力のうちの少なくとも一方が作用されて変形する状態に、その両端の取付け部13Aをスタッカークレーン側に取付け自在に設けられ、歪ゲージが、被検出体13の変形を検出すべくその被検出体13に装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体部分に立設されたマストの車体前後方向での振動を歪ゲージにて検出するように構成されたスタッカークレーン用の振動検出装置、及び、その振動検出装置を装備したスタッカークレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
かかるスタッカークレーン用の振動検出装置は、スタッカークレーンが走行する際におけるマストの車体前後方向の振動を歪ゲージにて検出するものであり、その検出情報は種々の目的に用いられることになる。
【0003】
例えば、歪ゲージの検出情報に基づいてマストの固有振動数を演算して、その固有振動数の経時変化を監視することにより、マストの劣化を監視する等、使用に伴うマストの状況を監視することがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
又、歪ゲージの検出情報に基づいて、スタッカークレーンの基準走行速度パターンを補正して、マストの車体前後方向での振動を抑制するのに用いられることがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
さらに、歪ゲージの検出情報に基づいてマストの振動モデルを求めて、マストの車体前後方向での振動を抑制するのに好適な制振走行速度パターンを生成するのに用いられることがある(例えば、特許文献3参照。)。
尚、特許文献3においては、スタッカークレーンの走行中のマストの振動を歪ゲージにて検出して、制振走行速度パターンを補正することが行なわれているが、このような補正を行わない場合においては、制振走行速度パターンを生成する段階でのみ、歪ゲージをスタッカークレーンに装着して、その後は、歪ゲージをスタッカークレーンから取り外すようにすることもできる。
【0006】
そして、歪ゲージをスタッカークレーンに装備するにあたり、従来では、上記特許文献に記載されているように、歪ゲージをマストに貼り付けるように構成されている。
ちなみに、上記特許文献には詳細な説明はないが、一般に、歪ゲージは、薄い電気絶縁物として構成されるベース材の上面に、箔ひずみゲージ等のひずみゲージを形成したものであり、専用の接着剤を用いて、ベース材をマストに貼り付けることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−240866号公報
【特許文献2】特開平9−272605号公報
【特許文献3】特開2008−285269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来では、歪ゲージをマストに貼り付けるようにしているため、つまり、接着剤を用いてマストに貼り付けるようにしているため、接着剤が乾くのに必要となる時間が、例えば一昼夜を必要とする等、長くなることに起因して、歪ゲージを装着するのに要する時間が長くなる不都合があった。
ちなみに、歪ゲージを装着するのに要する時間が長くなると、新規に歪ゲージを装着する場合や、既設の歪ゲージが故障して、新たな歪ゲージを装着する場合において、スタッカークレーンを歪ゲージの装着が完了するまで静止状態で保管する必要がある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、歪ゲージをスタッカークレーンに装着することを迅速に行うことができるスタッカークレーン用の振動検出装置を提供する点にある。
また、本発明の別の目的は、マストの振動を適切に検出できるスタッカークレーンを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスタッカークレーン用の振動検出装置の第1特徴構成は、走行車体部分に立設されたマストの車体前後方向での振動を歪ゲージにて検出するように構成されたものであって、
板状の被検出体が、前記マストの車体前後方向の振動によって伸縮応力及び曲げ応力のうちの少なくとも一方が作用されて変形する状態に、その両端の取付け部をスタッカークレーン側に取付け自在に設けられ、
前記歪ゲージが、前記被検出体の変形を検出すべくその被検出体に装着されている点を特徴とする。
【0011】
すなわち、板状の被検出体における両端の取付け部をスタッカークレーン側に取り付けて、その被検出体がマストの車体前後方向の振動によって伸縮応力及び曲げ応力のうちの少なくとも一方が作用されて変形する状態にすれば、その変形が歪ゲージにて検出されるものとなる。
つまり、マストの車体前後方向の振動によって変形する被検出体の変形を、マストの車体前後方向での振動であるとして、歪ゲージにて検出できるものとなる。
【0012】
そして、被検出体に歪ゲージを装着することは、被検出体をスタッカークレーン側に取り付ける時点よりも以前に予め行えるものとなり、また、歪ゲージが装着された被検出体の両端の取付け部をスタッカークレーン側に取り付けることは、例えば、被検出体の両端の取付け部をスタッカークレーン側に形成した取付け箇所にボルト等の締付け具を用いて締付け固定することにより行なう等、取付け作業を迅速に行える構成を用いることができるため、歪ゲージが装着された被検出体の両端側をスタッカークレーン側に取り付ける作業は迅速に行えるものとなる。
【0013】
つまり、歪ゲージが装着された被検出体を予め作成しておき、その被検出体をスタッカークレーン側に取付けることによって、歪ゲージをスタッカークレーンに装着できるものとなるため、歪ゲージをスタッカークレーンに装着することを迅速に行うことができるのである。
【0014】
したがって、本発明のスタッカークレーン用の振動検出装置の第1特徴構成によれば、歪ゲージをスタッカークレーンに装着することを迅速に行うことができるスタッカークレーン用の振動検出装置を提供できる。
【0015】
本発明のスタッカークレーン用の振動検出装置の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記被検出体が、両端の取付け部の間の中間部分を湾曲させた状態に形成され、
前記歪ゲージが、前記被検出体における前記中間部分の変形を検出すべくその中間部分に装着されている点を特徴とする。
【0016】
すなわち、被検出体が、両端の取付け部の間の中間部分を湾曲させた状態に形成されているから、マストの車体前後方向の振動によって伸縮応力及び曲げ応力のうちの少なくとも一方が被検出体に作用すると、その被検出体における湾曲する中間部分が変形することになる。
そして、歪ゲージが、被検出体における中間部分の変形を検出すべくその中間部分に装着されているから、被検出体における中間部分のマストの車体前後方向の振動による変形が、歪ゲージにて検出されるものとなる。
【0017】
被検出体における湾曲させた状態に形成された中間部分は、伸縮し易く又屈曲し易いものであるため、被検出体に作用する伸縮応力又は曲げ応力にて、大きく変形するものとなるため、マストの振動により大きく変形するものとなり、その大きな変形を歪ゲージにて検出できるものとなる。
つまり、マストの振動により大きく変形する被検出体の中間部分の変形を歪ゲージにて検出することにより、マストの振動を適切に検出することが可能となる。
ちなみに、被検出体における湾曲させた状態に形成された中間部分が、マストの振動により大きく変形するものとなるため、検出分解能を高くすることが可能となり、車体前後方向の振動が少ないマスト、例えば、ラチス構造やトラス構造のマストの車体前後方向の振動を検出させるのにも好都合となる。
【0018】
また、被検出体の中間部分を屈伸させるのには大きな力が必要でないため、被検出体の両端の取付け部をスタッカークレーン側に取り付ける強度を小さな強度にすることができるため、被検出体の両端の取付け部をスタッカークレーン側に取り付ける構成の簡素化を図ることができる。
【0019】
したがって、本発明のスタッカークレーン用の振動検出装置の第2特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、マストの振動を適切に検出することが可能となり、しかも、取付け構成の簡素化を図ることができるスタッカークレーン用の振動検出装置を提供できる。
【0020】
本発明のスタッカークレーン用の振動検出装置の第3特徴構成は、上記第1又は第2特徴構成に加えて、
前記歪ゲージが、前記被検出体の表裏両面に装着されている点を特徴とする。
【0021】
すなわち、歪ゲージは、一般に、ホイートストンブリッジ回路を構成する4つの抵抗のうちの1つとして、ブリッジ回路に組み込まれて使用されることになるが、被検出体の表裏両面に歪ゲージが装着されているから、この同一特性の一対の歪ゲージを、ホイートストンブリッジ回路を構成する4つの抵抗のうちの2つとして、ホイートストンブリッジ回路に組み込む、いわゆる、2ゲージ法を用いて、温度補正を行わせながら、ホイートストンブリッジ回路からの出力を増大させることが可能となり、マストの車体前後方向の振動の検出精度を向上させることが可能となる。
【0022】
つまり、被検出体の表裏両面に装着された一対の歪ゲージの抵抗値の変化は、被検出体が変形したときに、一方の歪ゲージの抵抗値が増加すると他方の歪ゲージの抵抗値が減少することになり、このように抵抗値が逆方向に変化する一対の歪ゲージを、ホイートストンブリッジ回路を構成する4つの抵抗のうちの2つとして、ホイートストンブリッジ回路に組み込むことにより、温度補正に加えて、ホイートストンブリッジ回路からの出力を増大させることが可能となるのである。
【0023】
したがって、本発明のスタッカークレーン用の振動検出装置の第3特徴構成によれば、上記第1又は第2特徴構成による作用効果に加えて、マストの車体前後方向の振動の検出精度を向上させることが可能となるスタッカークレーン用の振動検出装置を提供できる。
【0024】
本発明のスタッカークレーンの第1特徴構成は、上記第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかのスタッカークレーン用の振動検出装置が、前記マストの下端部と前記走行車体部分側との間に前記被検出体を傾斜姿勢で取付ける状態で設けられている点を特徴とする。
【0025】
すなわち、走行車体部分に立設されたマストが、走行車体部分に対して前後に揺動する形態で車体前後方向に振動することになるため、被検出体におけるマストに取付けられる一端側の取付け部と被検出体における走行車体部分側に取付けられる他端側の取付け部とが、マストの車体前後方向の振動に伴って大きく相対変位するものとなり、マストの下端部と走行車体部分側との間に傾斜姿勢で取付けられた被検出体は、マストの車体前後方向の振動により、大きく変形し易いものとなるから、マストの車体前後方向の振動を歪ゲージにて良好に検出できる。
【0026】
つまり、被検出体をスタッカークレーンに装着する形態として、被検出体の両端の取付け部の夫々を、マストの上下方向に離れた箇所に取付けることが考えられるが、マストの被検出体の下端部が取付けられる箇所とマストの被検出体の上端部が取付けられる箇所とは、マストの車体前後方向の振動に伴って相対変位するものの、両箇所はマストの車体前後方向の振動に伴って走行車体部分に対しては変位する箇所であるため、その相対変位量が小さいものとなり、被検出体は、マストの車体前後方向の振動により、大きく変形し難いものとなって、マストの車体前後方向の振動を歪ゲージにて適切に検出し難い傾向となる。
【0027】
これに対して、マストにおける被検出体の一端側の取付け部が取付けられる箇所と、走行車体部分側における被検出体の他端側の取付け部が取付けられる箇所との、マストの車体前後方向の振動による相対変位量は、走行車体部分側における被検出体の他端側の取付け部が取付けられる箇所が、マストの車体前後方向の振動によっては変位しないため、被検出体の両端の取付け部の夫々をマストの上下方向に離れた箇所に取付ける場合と比べると、大きくなるものであり、被検出体は、マストの車体前後方向の振動により、大きく変形し易いものとなって、マストの車体前後方向の振動を歪ゲージにて適切に検出し易い傾向となる。
【0028】
したがって、本発明のスタッカークレーンの第1特徴構成によれば、マストの車体前後方向の振動を適切に検出できるスタッカークレーンを提供できる。
【0029】
本発明のスタッカークレーンの第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記マストに、前記被検出体の一端側の取付け部を当て付けた状態で締付け具にて締め付け固定するマスト側取付け座が設けられ、前記走行車体部分側に、前記被検出体の他端側の取付け部を当て付け状態で締付け具にて締め付け固定する車体側取付け座が設けられている点を特徴とする。
【0030】
すなわち、被検出体の一端側の取付け部をマスト側取付け座に当て付けた状態でボルト等の締付け具にて締め付け固定し、且つ、被検出体の他端側の取付け部を車体側取付け座に当て付けた状態でボルト等の締付け具にて締め付け固定することにより、被検出体をスタッカークレーンに装着することができる。
【0031】
つまり、予め装備されたマスト側取付け座及び車体側取付け座に対して、被検出体の両端の取付け部を当て付けた状態で締付け具を締め付け固定することによって、被検出体をスタッカークレーンに装着することができ、また、締付け具を緩めて被検出体の両端の取付け部をマスト側取付け座及び車体側取付け座から離脱させることによって、被検出体をスタッカークレーンから離脱させることができるため、被検出体の着脱を良好に行えるものとなる。
【0032】
また、被検出体は、その両端の取付け部がマスト側取付け座及び車体側取付け座に当て付けられた状態で固定されるため、マストの車体前後方向の振動により伸縮応力や曲げ応力が適切に作用し易いものとなって、大きく変形し易いものとなるから、その大きな変形を歪ゲージにて検出することにより、マストの車体前後方向の振動を適切に検出できるものとなる。
【0033】
したがって、本発明のスタッカークレーンの第2特徴構成によれば、第1特徴構成による作用効果に加えて、被検出体の着脱を良好に行え、しかも、マストの車体前後方向の振動を適切に検出できるスタッカークレーンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】スタッカークレーンの側面図
【図2】振動検出装置の装着部の側面図
【図3】振動検出装置の正面図
【図4】振動検出装置の側面図
【図5】歪ゲージの縦断側面図
【図6】振動検出装置の検出作用状態を示す概略側面図
【図7】ホイートストンブリッジ回路を示す図
【図8】別の実施形態を示す側面図
【図9】別の実施形態を示す側面図
【図10】別の実施形態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のスタッカークレーン及び振動検出装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
図1に示すように、スタッカークレーンKは、床面側の走行レール1を沿って往復走行自在な走行車体部分2、その走行車体部分2から立設されかつ上部が天井側の案内レール3にて案内される前後一対のポスト4、5、それらポスト4、5上端部同士を連結する連結枠6、前後一対のポスト4、5にて昇降自在に案内された状態で昇降駆動される昇降台7、及び、その昇降台7に装備された物品移載用のフォークFを備えている。
【0037】
走行車体部分2には、走行用電動モータ8にて駆動される走行用車輪9及び遊転車輪10が前後に備えられ、また、昇降台7を昇降駆動するための昇降用電動モータ11や、スタッカークレーンKの運転を制御する制御装置Hが備えられている。
また、走行車体部分2には、走行レール1に対する横方向での位置を規制する横位置規制用ローラが装備されている。尚、例示はしないが、走行車体部分2には、走行レール1からの浮き上がりを規制するために走行レール1の下面側に接当する浮き上がり規制ローラも装備されることになる。
【0038】
図2〜図4に示すように、スタッカークレーンKにおける走行車体部分2に立設された前後のマスト4、5のうちの前方のマスト4の車体前後方向での振動を歪ゲージGにて検出する振動検出装置Sが、前方のマスト4の下端側箇所に装備されている。
すなわち、振動検出装置Sは、歪ゲージGを、板状の被検出体13の表裏両面に装着して構成されるものであり、被検出体13が、前方のマスト4(以下、検出対象マストと呼称する)の車体前後方向の振動によって伸縮応力及び曲げ応力のうちのすくなくとも一方が作用されて変形する状態に、その両端の取付け部13Aをスタッカークレーン側に取付け自在に設けられて、一対の歪ゲージGが、被検出体13の変形を検出するように構成されている。
【0039】
以下、振動検出装置Sについて説明を加える。
被検出体13が、バネ鋼にて、両端の取付け部13Aの間の中間部分13Bを円弧状に湾曲させた状態に形成され、一対の歪ゲージGが、被検出体13における中間部分13Bの変形を検出すべくその中間部分13Bの表裏両面に装着されている。
被検出体13の両端の取付け部13Aの夫々には、左右一対のボルト挿通孔Tが形成されている。
【0040】
そして、被検出体13が、検出対象マスト4の下端部と走行車体部分側との間に傾斜姿勢で取り付けられている。
具体的には、検出対象マスト4の下端部に、被検出体13の一端側の取付け部13Aを当て付けた状態で締付け具としてのボルト14にて締め付け固定するマスト側取付け座15が設けられている。また、検出対象マスト4の下端に溶接され且つ走行車体部分2にボルト固定されるマスト取付け用板体16に、被検出体13の他端側の取付け部13Aを当て付けた状態で締付け具としてのボルト14にて締め付け固定する車体側取付け座17が設けられている。
【0041】
マスト側取付け座15は、検出対象マスト4に溶接等により取付けられ、車体側取付け座17は、マスト取付け用板体16に溶接等により取付けられ、マスト側取付け座15及び車体側取付け座17の夫々には、ボルト14の螺合孔が形成されている。
尚、マスト側取付け座15及び車体側取付け座17の夫々には、被検出体13の端面を受止める受止め用凸部Uが形成されて、マスト側取付け座15及び車体側取付け座17に対する被検出体13の位置決めを行うようになっているが、中間部分13Bを円弧状に湾曲させた状態に形成された被検出体13は、中間部分13Bを屈伸させるのには大きな力を必要としないものであるから、被検出体13の端面を受止める受止め用凸部Uを省略して、ボルト14の締結による摩擦力のみにて被検出体13の位置決めを行うようにしてもよい。
ちなみに、上述の如く、被検出体13の中間部分13Bを屈伸させるのには大きな力を必要としないものであるから、ボルト14の締結トルクも特別に高める必要はない。
【0042】
そして、被検出体13が、一端側の取付け部13Aをマスト側取付け座15に当て付けた状態でボルト14にて締め付け固定し、且つ、他端側の取付け部13Aを車体側取付け座17に当て付けた状態でボルト14にて締め付け固定する状態で、検出対象マスト4の下端部と走行車体部分側との間に傾斜姿勢で取り付けられている。
ちなみに、本実施形態では、被検出体13を、中間部分13Bが車体前後方向の後方側に凹入する姿勢で取付ける場合を例示するが、被検出体13を、中間部分13Bが車体前後方向の前方側に突出する姿勢で取付ける形態で実施しても良い。
【0043】
歪ゲージGは、図5に示すように、薄い電気絶縁物として構成されるベース材20の上面に、箔ひずみゲージ等のひずみゲージ21を形成し、上部の全体をラミネートフィルム22にて被覆し、さらには、ひずみゲージ21に接続された一対の信号線23を備える状態に構成されるものである。
尚、図中24は、ひずみゲージ21と信号線23を接続するはんだ部分である。
【0044】
このような歪ゲージGは、専用の接着剤を用いて、ベース材20を被検出体13に貼り付けることにより、被検出体13に装着されることになる。
ちなみに、本実施形態においては、被検出体13における歪ゲージGの装着箇所をシリコン樹脂等の被覆材25にて覆うことにより、歪ゲージGの保護を図るようにしながら、信号線23を固定するように構成されている。
【0045】
一対の歪ゲージGは、検出対象マスト4の振動に伴って、抵抗値が逆方向に変動するものとなる。
つまり、図6(a)に示すように、検出対象マスト4が前方に揺動して、被検出体13の中間部分13Bが大きく湾曲すると、表側の歪ゲージGは、大きく曲がるようになって圧縮が発生し、かつ、裏側の歪ゲージGは、引っ張られるようになって引っ張りが発生する。
また、図6(b)に示すように、検出対象マスト4が後方に揺動して、被検出体13の中間部分13Bが伸びると、表側の歪ゲージGは、曲がりが小さくなって引っ張りが発生し、かつ、裏側の歪ゲージGは、短縮させる力が作用して圧縮が発生する。
尚、図6(a)(b)は、被検出体13の変形状態を誇張して示すものであり、そのために検出対象マスト4の振動を誇張して、被検出体13の変形状態を誇張してある。
【0046】
図7に示すように、一対の歪ゲージGの夫々の抵抗値の変化は微小であるため、一対の歪ゲージGと一対の抵抗Rとによりホイートストンブリッジ回路を形成して、一対の入力端子Nの間にブリッジ電圧Eを入力して、一対の出力端子Dの間に出力される出力電圧Vを計測することになる。つまり、本実施形態においては、いわゆる2ゲージ法により、出力電圧Vを計測することになる。
【0047】
そして、このホイートストンブリッジ回路の場合においては、一対の歪ゲージGが、検出対象マスト4の振動に伴って、抵抗値が逆方向に変動するものであるため、出力電圧Vの変化ΔVは下記式にて表すことができる。
ΔV=1/2・Q・E・ε
εは、求めるひずみであり、Qは、歪ゲージGの感度を表す比例常数である。
尚、例示はしないが、一対の出力端子Dは増幅アンプに接続され、その増幅アンプにて増幅された出力が制御装置Hに入力されることになる。
【0048】
上記の通り、本実施形態においては、歪ゲージGを装着した被検出体13をスタッカークレーンKに装着することにより、検出対象マスト4の車体前後方向の振動を歪ゲージGにて検出することができる。
そして、被検出体13の両端の取付け部13Aが、スタッカークレーン側に取付け自在であるから、振動検出装置Sの着脱、つまり、被検出体13の着脱を迅速に行うことができる。
【0049】
また、被検出体13が、検出対象マスト4の下端部と走行車体部分2との間に傾斜姿勢で取付けられるものであるから、検出対象マスト4の前後方向の振動にて被検出体13が大きく変形するものとなり、検出対象マスト4の前後方向の振動を精度良く検出し易いものとなる。
しかも、スタッカークレーンKには、マスト側取付け座15及び車体側取付け座17が設けられて、被検出体13の両端の取付け部13Aが、マスト側取付け座15及び車体側取付け座17に当て付けた状態でボルト14にて締付け固定されるように構成されているから、被検出体13の着脱を迅速に行え、しかも、被検出体13を検出対象マスト4の車体前後方向の振動により伸縮応力や曲げ応力が適切に作用する状態に装着できる。
【0050】
さらに、被検出体13が、両端側の取付け部13Aの間の中間部分13Bを円弧状に湾曲させた状態に形成され、一対の歪ゲージGが、被検出体13における中間部分の変形を検出すべくその中間部分に装着されているから、検出対象マスト4の振動により大きく変形する被検出体13の中間部分の変形を歪ゲージGにて検出することにより、検出対象マスト4の振動を適切に検出することが可能となるのである。
【0051】
加えて、被検出体13の表裏両面に装着される一対の歪ゲージGの抵抗値が、検出対象マスト4の振動に伴って、逆方向に変動するものであるから、ホイートストンブリッジ回路の出力の変化を大きくして、検出精度の向上を図ることができる。
【0052】
〔別の実施形態〕
(1)上記実施形態においては、被検出体13が、両端側の取付け部13Aの間の中間部分13Bを円弧状に湾曲させた状態に形成される場合を例示したが、図8に示すように、被検出体13を湾曲させない平板状に形成して、実施してもよい。
【0053】
(2)上記実施形態においては、被検出体13を、マスト4の下端部と走行車体部分側との間に傾斜姿勢で取付ける場合を例示したが、図9及び図10に示すように、被検出体13を、マスト4に装着する形態で実施してもよい。
【0054】
図9は、上下一対の取付け座18A、18Bを、マスト4の側面からの突出量が同じ量となる状態で、溶接等によりマスト4に装着し、その上下一対の取付け座18A、18Bに、平板状の被検出体13を、マスト4と平行する姿勢で取付ける場合を例示するものである。
【0055】
図10は、上下一対の取付け座19A、19Bを、マスト4の側面からの突出量が下側の方が大きくなる状態で、溶接等によりマスト4に装着し、その上下一対の取付け座19A、19Bに、湾曲状の中間部分13Bを備える被検出体13を、マスト4に対して傾斜する姿勢で取付ける場合を例示するものである。
ちなみに、図9及び図10で示すいずれの場合にも、被検出体13の端面を受止める受止め用凸部Uが設けられている。
【0056】
(3)上記実施形態では、歪ゲージGを被検出体13の表裏両面に装着する場合を例示したが、被検出体13の表裏両面の一方に、歪ゲージGを装着する形態で実施してもよい。
【0057】
(4)上記実施形態では、スタッカークレーンKにおける前後一対のマスト4、5のうちの前方側のマスト4を検出対象マストとする場合を例示したが、後方側のマスト5を検出対象マストとしても良く、また、前後のマスト4、5の夫々に対して振動検出装置Sを装備して実施してもよい。
【0058】
(5)上記実施形態では、前後一対のマスト4、5を備えるスタッカークレーンに振動検出装置Sを装備する場合を例示したが、一本のマストを備えるスタッカークレーンに振動検出装置Sを装備しても良いことは勿論である。
【0059】
(6)上記実施形態では、被検出体13の両端の取付け部13Aをスタッカークレーン側の取付け座15、17に当て付けた状態でボルトなどの締付け具4にて締付け固定する場合を例示したが、取付け座15、17に代えて、被検出体13の両端の取付け部13Aが嵌合する嵌合孔を備えた取付け部をスタッカークレーン側に備えさせて、被検出体13の両端の取付け部13Aを取付け部の嵌合孔に嵌合させた状態で、ビス等により固定する形態で装着するようにしてもよく、被検出体13の両端の取付け部13Aをスタッカークレーン側に取付ける構造は種々の構成を用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
2 走行車体部分
4 マスト
13 被検出体
13A 取付け部
13B 中間部分
15 マスト側取付け座
17 車体側取付け座
G 歪ゲージ
K スタッカークレーン
S 振動検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体部分に立設されたマストの車体前後方向での振動を歪ゲージにて検出するように構成されたスタッカークレーン用の振動検出装置であって、
板状の被検出体が、前記マストの車体前後方向の振動によって伸縮応力及び曲げ応力のうちの少なくとも一方が作用されて変形する状態に、その両端の取付け部をスタッカークレーン側に取付け自在に設けられ、
前記歪ゲージが、前記被検出体の変形を検出すべくその被検出体に装着されているスタッカークレーン用の振動検出装置。
【請求項2】
前記被検出体が、前記両端の取付け部の間の中間部分を湾曲させた状態に形成され、
前記歪ゲージが、前記被検出体における前記中間部分の変形を検出すべくその中間部分に装着されている請求項1記載のスタッカークレーン用の振動検出装置。
【請求項3】
前記歪ゲージが、前記被検出体の表裏両面に装着されている請求項1又は2記載のスタッカークレーン用の振動検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のスタッカークレーン用の振動検出装置が、前記マストの下端部と前記走行車体部分側との間に前記被検出体を傾斜姿勢で取付ける状態で設けられているスタッカークレーン。
【請求項5】
前記マストに、前記被検出体の一端側の取付け部を当て付けた状態で締付け具にて締め付け固定するマスト側取付け座が設けられ、前記走行車体部分側に、前記被検出体の他端側の取付け部を当て付け状態で締付け具にて締め付け固定する車体側取付け座が設けられている請求項4記載のスタッカークレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−121678(P2011−121678A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279647(P2009−279647)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】